...

米国環境情報

by user

on
Category: Documents
3

views

Report

Comments

Transcript

米国環境情報
情報報告
シカゴ
●米国環境情報
世界の CO2 排出量は 2009 年に減少したものの、依然として急速な増加途上
7月 20 日、アースポリシー研究所(Earth Policy Institute)は、2009 年の世界の二酸
化炭素(CO2)排出量について、中国で約 9%増加したが、ほとんどの工業国では減少し、化
石燃料の使用による CO2 排出量は 2008 年の 85 億トンから 2009 年に 84 億トンへ減少したと
発表した。しかし過去 10 年間で見ると、CO2 排出量は年平均 2.5%で増加しており、1990 年
代の約 4 倍のスピードである。世界的な経済停滞によって、過去 2 年間で CO2 排出量は米国
と英国で約 10%減、ドイツで 8%減、フランスで 5%減、日本では約 12%減少した。一方、
2007 年には米国を抜いて世界最大の CO2
中国の CO2 排出量は過去 10 年間で年平均 8%増加し、
排出国となり、2009 年には世界の化石燃料による排出量の 4 分の 1 に相当する 18 億 6,000
万トンを排出した。またインドは、過去 10 年間で年平均 5%増加し、2007 年にロシアを抜い
て世界第 3 位の排出国となった。1人当りの排出量で見てみると、先進国の中ではオースト
ラリア、米国、カナダが多く、中国の 3 倍、世界平均の約 4 倍に相当する。また、英国、ド
イツ、フランスなど欧州先進国は、生活水準は米国と同レベルながら、1 人当たり排出量は
米国の半分となっている。
ノーベル化学受賞者ら、CO2 排出コストを試算して炭素税の導入を提唱
炭素税を導入し、石炭発電から天然ガスを基盤とするシステムへの移行を促進するよう政
策立案者に提言する論文が、ノーベル化学受賞者を含むライス大学の研究者から 7 月 2 日に
発表された。米国は昨年 12 月の国連気候変動コペンハーゲン会議において、2020 年までに
CO2 排出量を 2005 年比で 17%削減することを公約している。今回の論文では、石炭発電から
天然ガスシステムへ移行するモデルを用いて CO2 排出量コストを試算し、石炭発電所を天然
ガスへ転換することは、
クリーン石炭よりも、
目標達成に最も経済的な方法だと述べている。
また、CO2 価格が 1 トン当り$30 かかると石炭発電所の 10%が閉鎖し、1 トン$45 になると
90%が閉鎖されると予想され、石炭から天然ガスへ移行するには炭素税の導入が有効である
という。
2010 年第 2 四半期の風力発電の新規敷設量、前年同期比で 71%後退
米国で新しく敷設された風力発電の発電量が、
2010 年第 2 四半期にはわずか 700MW となり、
2008 年同期と比べて 57%減少し、2009 年同期比では 71%減少したことが、米国風力エネル
ギー協会(AWEA)から7月 27 日に発表された。この背景には経済の停滞があるが、再生可能
エネルギー開発に関する不安定な政策が大きな要因になっていると、AWEA は指摘している。
現在のところ、5,500MW の風力発電が建設中であり、本年後半の動きは今よりも活発化する
とはいえ、2010 年の新規敷設量は 2009 年に比べて 25~45%減少する可能性が高いという。
DOE、CO2 回収・貯留技術の開発に 6,700 万ドル拠出
エネルギー省(DOE)は 7 月 7 日、CO2 回収・貯留(CCS)技術に関する先端技術開発プロジ
ェクト 10 件に 3 年間で 6,700 万ドルを助成することを発表した。今回のプロジェクトは、既
存および新しい発電所に現在可能な CCS 技術を導入した際の、効率低下とコスト上昇を抑え
ることに焦点を絞っている。CCS システムの効率性を向上させ、上昇コストを微粉石炭火力
― 80 ―
情報報告
発電所で 30%、石炭ガス化発電所で 10%以内に押さえるために、2016 年までに 5~10 件の
商業用実証プロジェクトを実施することを目指している。今回のプロジェクトでは、0.5~
5MWe という中小規模の開発に加え、膜、溶媒、固体吸着剤といった燃焼後 CO2 回収技術の実
証試験に重点を置いている。
オバマ大統領、画期的な最新薄膜ソーラーパネル製造の最新技術を助成
オバマ大統領は 7 月 3 日、アバウンド・ソーラー・マニュファクチャリング(Abound Solar
Manufacturing)社の最新薄膜ソーラーパネルの製造に対して、4 億ドルの条件付融資保証を
行うことを発表した。このテルル化カドミウムパネル向けの新製造技術が商業的に採用され
るのは世界初となる。同社は、コロラド州立大学、国立再生可能エネルギー研究所、国立科
学財団と共同で開発した特許技術を用いて、テルル化カドミウムの薄膜をガラスパネルに堆
積させる。この薄膜ソーラーパネルは、結晶シリコンパネルよりも製品コストが安いうえ、
品質、効率性、安定性、産出量に優れている。2013 年までに全面稼動され、年間数百万台の
ソーラーパネルを生産できる予定である。
DOE、ニューヨーク州の電池エネルギー貯蔵に融資保証
エネルギー省(DOE)は 8 月 2 日、AES エネルギー貯蔵(AES Energy Storage)社による先
端リチウムイオン電池を利用した 20MW のエネルギー貯蔵システムの建設を支援するため、
1,710 万ドルの条件付融資保証を行うことを発表した。これは、同省にとって初の電池ベー
スエネルギー貯蔵システムへの融資保証となる。同プロジェクトはニューヨーク州ジョンソ
ンシティで行われ、同州の高圧送電ネットワーク向けに、より安定して効率の良い電力グリ
ッドを提供する手助けとなる。
ハワイのオアフ島に、30MW のカフク風力発電所を建設
エネルギー省は 7 月 27 日、ハワイのカフク風力発電(Kahuku Wind Power)社に対して 1
億 1,700 万ドルの融資保証を行い、30MW の革新的な風力発電所の開発を支援することを発表
した。この発電所はオアフ島北岸に建設される予定で、2.5MW のリバティ風力タービン発電
機 12 基と 10MW の電池エネルギー貯蔵システムを利用し、7,700 世帯の電力需要を賄うと推
定される。同プロジェクトを開発するファーストウィンド・ホールディングス社は、既にマ
ウイ島においてハワイ最大の 30MW 風力発電所を建設し運営しており、同島の電力ニーズの
9%を発電している。
メイン州、カナダのノバスコシア州と大陸エネルギー開発に協力する覚書
メイン州知事は 7 月 12 日、カナダのノバスコシア州首相と、大陸棚での再生可能エネルギ
ー発電において協力していく覚書(MOU)に署名した。これは、大陸潮流エネルギーと沖合風
力エネルギーに重点を置いて情報の共有を図っていくもので、この秋には研究機関や政策立
案者、民間セクターなども招集する予定である。この覚書は、エネルギー安全保障と効率性、
この地域の再生可能エネルギー開発を検討するために、マサチューセッツ州レノックスで開
かれたニューイングランド知事およびカナダ東部州首相第 34 回会議において署名された。
マ
サチューセッツ州には、長く幅広い激論を戦わせているケープコッド沖合風力発電プロジェ
クトがある。
― 81 ―
シカゴ
情報報告
シカゴ
スマートグリッド市場、2015 年までに 450 億ドルを超える
スマート計測器、送電網、配電インフラの性能向上といった自動制御電気出力ネットワー
ク、いわゆる“スマートグリッド”への世界の投資は、2015 年までに 450 億ドルを超えると
いう予測が ABI リサーチ社から 7 月 8 日に発表された。
先進国の電力インフラのほとんどは、
60~80 年前に建設されたもので老朽化が進んでおり、電力需要がますます増加する中で、イ
ンフラを単純に交換するよりも、今日の膨大な電力量を安全に信頼して管理できる先端通信
システムへの移行が進むと予想される。2015 年までの投資の大半は送電網や配電インフラへ
の投資でおよそ 410 億ドル、
一方スマート計測器の購入や取付けは 48 億ドルと推定されてい
る。
DOE、米国再生・再投資法による先端自動車・電池投資への経済的影響について報告
DOE は7月 14 日、米国再生・再投資法が先端自動車と電池への投資に与えた経済的影響に
ついて新たな報告書『再生法投資:米国の輸送部門の変換(Recovery Act Investments:
Transforming America's Transportation Sector)
』を発表した。同法による先端電池と電気
自動車への 24 億ドルの投資は、同額以上の民間資金と相まって、雇用創出、新しい工場や製
造ラインの建設、全米の電気自動車充電ステーションの敷設などに貢献している。とりわけ
米国が先端自動車用電池を生産する能力は、同法以前には世界のわずか 2%だったのが、2012
年までに 20%、2015 年までに 40%の生産能力を持つことになり、国内での大量生産が可能
となる。また、先端電池のコストが$33,000 から 2013 年末までに$16,000、2015 年までに
$10,000 へ大幅に低下するとともに、
全国で 500 以下だった電気自動車充電ステーションが、
2012 年までに 2 万ヶ所以上で設置される。同法から 1 億 5,100 万ドルの助成を受けたリチウ
ム電池メーカー、コンパクト・パワー社では、年間 52,000 台のシボレー・ボルトやフォード・
フォーカス向けの電池を生産する予定である。
EPA、2011 年再生可能燃料基準のパーセント比率を提案
環境庁(EPA)は 7 月 12 日、再生可能燃料基準(RFS2)プログラムに基づき、4 カテゴリ
ーの燃料の比率基準を提案した。2007 年エネルギー自給・安全保障法(Energy Independence
and Security Act)の下で、2022 年に再生可能燃料が 360 億ガロンに達するように年次目標
値が定められ、それに基づいて EPA は翌年のパーセント基準を計算している。バイオマスベ
ースのディーゼルが燃料全体の 0.68%で計 8 億ガロン、先端バイオ燃料が 0.77%で計 13 億
5,000 万ガロン、セルロース系バイオ燃料が 0.004~0.015%で計 500~1,710 万ガロン、再生
可能燃料全体としては 7.95%で合計 139 億 5,000 万ガロンとする。また、菜種油、穀実モロ
コシ、パルプ材、ヤシ油を再生可能燃料の原料として認めること、海外の原料を利用する際
の基準を設定することが提案された。
ソーラー動力無人飛行機、14 日間のノンストップ飛行記録
太陽光を動力源とした無人飛行機ゼファー(Zephyr)は、14 日間のノンストップ飛行を終
えて 7 月 23 日にアリゾナ州の陸軍基地に無事に着陸したことが、製造元クワインティック
(QinetiQ)社から発表された。これは、同機が持つ 2008 年の非公式の無人飛行最長記録 82
時間 37 分の 4 倍に当たる。ゼファーは、74 フィートの翼上の非結晶シリコン太陽光アレイ
で生産される太陽光電力を動力とし、日中のエネルギーをリチウム硫黄電池に充電すること
によって、暗い中でも燃料補給をせずに飛び続ける。ゼファーの超軽量カーボンファイバー
構造は、重さ約 50kg である。
― 82 ―
情報報告
XL ハイブリッド社、商用ガソリン車をハイブリッド車に転換
MIT の卒業生らが創業した XL ハイブリッド社は、商用ガソリン車を電気ハイブリッド車へ
転換する技術を開発した。現在は顧客向けの試験と生産開始を目指しており、年内にタクシ
ーから始め、来年半ばまでに配達トラック、シャトルバンへ移行していく予定である。タク
シーは一般的に年間 8 万マイル走行し、燃料費は約 2 万ドルとなるが、この改造システムに
よって燃料消費量が 15~30%削減できるという。システムは、電気モーター、リチウムイオ
ン電池、制御器で構成され、重さは 175 ポンドである。4 時間以内に取り付けられ、費用は 1
万ドル、現状の燃料価格では 2~3 年で元が取れる計算である。
DOE、同省と連邦省庁ビルにクール・ルーフ計画
エネルギー省は 7 月 19 日、同省をはじめとした連邦省庁ビルにクール・ルーフ技術を導入
するイニシアティブを推進中であることを発表した。都市部では、表面積の 50~65%を屋根
と舗装道路が占めており、ヒートアイランド現象の大きな原因とされている。クール・ルー
フとは、屋根表面に明るい色を使ったり特別なコーティングを施すことで太陽熱を反射させ
るもので、冷房費を削減し炭素排出量を相殺するための極めて容易で安価な方法である。オ
バマ大統領の持続可能性に関する大統領令(Executive Order on Sustainability)のもとで、
連邦政府は 2020 年までに温暖化ガス排出量を 28%削減することを表明しており、既に DOE
の国家核安全保障庁(NNSA)では、200 万平方フィートの屋根をクール・ルーフ化してエネル
ギーコストを年間 50 万ドル節減している。
一戸建住宅のサイズが 2009 年に縮小
2009 年に新築された一戸建住宅のサイズが 30 年ぶりに減少したことが、全国住宅建造者
協会(National Association of Home Builders:NAHB)から報告された。最近公表された国
政調査によると、
新築の一戸建住宅の全国平均サイズは2009年に2,438平方フィートとなり、
前回調査の 2007 年よりも約 100 平方フィート減少した。これは、エネルギーコスト管理に対
する意識の高まりが原因と考えられる。一方、エアコンの普及を背景に、エネルギー使用量
は増加を続けている。セントラルエアコン住宅は、1973 年には新築住宅の半分以下だったの
に対して、2009 年には 9 割以上となった。地域的には、最多の南部が 99%、中西部が 90%、
北東部が 75%、西部が 69%となる。
バーモント州のリゾート、牛糞発電を利用
エクィノックス・リゾート(Equinox Resort)は、中央バーモント公益事業のカウ・パワ
ー(Cow Power)プログラムに参加することで、約 212 トンもの CO2 排出量を削減できると見
込んでいる。
同リゾートは、
近隣の牧場の牛糞から生成される電力を必要に応じて取り込み、
リゾート内 1811 戸の建物に供給する。
牛 1 頭の糞によって 2 つの 100W 電球を 24 時間点灯さ
せる電力を生成でき、
約62頭の牛で同リゾートの2施設の電力ニーズを充たすことができる。
カウ・パワーによって、水質や大気の質といった環境への影響を軽減するとともに、悪臭を
90%削減し、病原菌や雑草の管理といった運用コストの軽減にも役立つ。EPA によると、全
米で現在 150 の牧場において家畜糞を使ったオンサイト発電を行っているという。
― 83 ―
シカゴ
情報報告
シカゴ
ペーパーメイト社から、生分解可能なペンとシャープペン
文房具大手メーカーのペーパーメイト(Paper Mate)社から、使用後に捨てても土壌に戻
る生分解可能なペンとシャープペンが登場したことが、
7 月26 日にUSA TODAY で報じられた。
グリップとクリップの付いたペンは価格が$1.70、シャープペンは$2.70 と若干高めだが、
品質は想像以上に良いという。また、中小メーカー数社では数年前から、生分解可能な文房
具を販売している。C ライン・プロダクツ社では、生分解可能なページ保護カバー、フォルダ
ー、ペンケースなどを製造しており、大手ブランドの参入によって消費者の関心が高まること
を歓迎している。
― 84 ―
Fly UP