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街づくり支援ツールとしてのGISの展開

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街づくり支援ツールとしてのGISの展開
ヨコハマ
ビジュアル
シンキング
街づくり支援ツールとしてのGISの展開
最終報告書
メンバー:
石黒
徹
古谷 雅孝
井上 友博
遠藤 明子
入江 佳久
(都市計画局)
(総務局)
(環境保全局)
(緑政局)
(市立大学事務局)
概
要
1
事業概要
地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は、いろいろな地図データを重ね合わせ
たり、多角的に地域の情報を集計・分析したり、地域の福祉計画や防災計画図の作成や公共施設の管理な
どを、ビジュアルに効率的に処理できるコンピュータシステムです。
横浜市におけるGISは、当初都市計画や固定資産税等の固有事務が中心でしたが、現在はGISの基
盤となる地形図データが整備されていることや、コンピュータの低価格化に伴い、区役所を含め様々な業
務で広く導入されています。その一方、個々のGISは局区の所管内利用にとどまり、十分に活用されて
いるとはいえません。さらに、計画策定など非日常的な業務の処理を目的にGISを導入した場合、その
運用が休止しているケースが多いのが現状です。
このような状況を改善するために、本事業では、全庁的な視点で個々のシステム間のコーディネートや
システム運用を有効にサポートする担当部署を設置し、行政内部のGIS利用環境改善や行政運営の効率
化・高度化を図ります。さらに、このGISを市民協働の街づくりを支援する有効なツールとして、市民
自らの地域情報図の作成や地域情報の共有化など広く利用される環境を整備していきます。
2
事業の具体的な内容
【平成17年度事業内容】
(1) 庁内に分散するGISデータについて所在を明らかにし、基盤となるGISデータを市民及び庁内に
向けて公開する準備(基盤データの選択、公開方法及び公開ルールの制定等)
(2) モデル区(3区程度)を設け、市民協働の街づくりでのGISの有効な活用方法についての検討
(3) WebGISで情報書込型地図情報システムを検討し、モデル区への導入に向けた調査
(4) (3)のシステムを区役所内の地図情報共有ツールとして活用するための調査
(5) GISに関連したノウハウを持つ企業等と協働でGIS環境の展開について検討するとともに、外部
を含めたGIS連絡会議の設立準備
(6) 街づくりで利用される既成地図のデジタル化を検討
3
4
事業費
【平成17年度事業費】
地理情報システム(GIS)活用推進事業費
5,000 千円(5,000 千円)
※カッコ内は一般財源
18年度
備
3か年計画
事
業
項
目
17年度
19年度
考
庁内GISデータ目録の作成
データの所在を明らかにする
基盤データの評価・選定・収集・提供
データバンク機能
行政内GISの整備・運用のサポート
GISを用いた行政コストの削減
市民の街づくり活動のサポート
市民向け講習会など
区役所へのサポート
3 区
8 区
全 区
モデル区を選定
提供データ形式の検討
利用しやすい形でのデータ提供
GIS職員研修
GISの普及・教育・サポート
学習教材としてのGISデータの整備
地域情報マップの作成サポート
新たな利用技術の導入検討
コスト削減手法の研究
共同研究
歴史的な地図のデジタル化・保存等
ⅰ
●
概
目
要
次
··························································· ⅰ
第Ⅰ章 地理情報システムとは
第Ⅱ章 事業展開の背景
······································ 1
············································ 2
第Ⅲ章 横浜市におけるGISの取組経緯と現状
1 横浜市のGISの取組経緯
2
横浜市におけるGISの現状
(1)GISの現状
······················ 4
··································· 4
································· 4
············································· 4
(2)意見交換・アンケートのまとめ
3 GIS展開上の問題点
(1)GISの利用状況
······································· 6
········································· 6
(2)GISデータの流通状況
(3)GISデータの所在
····························· 5
··································· 6
······································· 6
第Ⅳ章 横浜市におけるGISの新たな展開に向けて
1
取組方向
2
事業イメージ
3
事業概要
·················· 7
··················································· 7
··············································· 8
··················································· 9
(1)位置付け
················································· 9
(2)事業計画
················································· 9
おわりに
·························································· 10
参考資料 ··············································· (1)
1
作成事例(プレゼンテーション用に作成した事例)
··· (2)
a.
横浜今昔 ∼根岸住宅地区接収前の土地利用の復元∼
b.
横浜今昔 ∼造成住宅地の盛土部分∼
c. 現状分析 ∼メッシュ(250m四方)統計∼
d.
街づくり ∼異なる事業の一体的な把握∼
e.
街づくり ∼地域に密着した情報の作成・提供∼
f.
業務改善 ∼地図を使う業務への利用∼
2
事業協力者一覧 ··································· (5)
3
用語解説
········································ (6)
第Ⅰ章
地理情報システムとは
社会における社会ツールとして認識され、その基盤
情報となる数値地図データは新たな社会インフラに
位置づけられています。
高度情報化社会を迎えつつある中で、付加価値の
ある情報を創り出し、また大量な情報の中から必要
とされる情報を選び出すことが求められています。
このような状況に対応する技術の1つとして、地
理情報システム(Geographic Information System
以下「GIS」という)があります。
GISは、地理的位置(座標)を手がかりに、位
置に関する情報を持ったデータ(空間データ)とそ
の内容などを記述したデータ(属性データ)をレイ
ヤ(階層)別に総合的に管理し、編集・加工するこ
とで、各種主題図を平易に作成するとともに、従来
手間や経費がかかった都市計画、地域福祉計画、防
災計画、環境管理計画などの計画策定や様々な定量
的な集計・分析、さらに、道路等の各種都市施設や
地域の施設管理が、コンピュータ上で効率的に行え
るようにした技術です。
さらに、GISは他の技術との融合により、カー
ナビゲーションなど、広範囲な事業に適応する機能
を有しています。このようなGISは、高度情報化
GISの機能を整理すると、概ね次のようになり
ます。
① 表示・印刷機能
地図表示、位置検索、スクロール(移動)、属性検
索、属性表示、印刷
② 編集・管理機能
拡大・縮小、オーバーレイ、属性入力・編集、画
像入力・編集、レイヤ(階層)管理
③ 集計・分析機能
面積計算、距離計算、時系列変化、ネットワーク
解析等
④ その他(他のツールとの連携)
GPSやCAD、CG等他のソフトウェアとの融
合による新たな処理機能
← メッシュ統計などの統計データ
← 建物、通学区域、自治会町内会
などの地域データ
← 道路などの基盤データ
← 航空写真データ
図1
GISの空間データのレイヤー(階層)概念
1
第Ⅱ章
事業展開の背景
ISを展開しています。
地方自治体においても様々な取組みが行われてお
り、最近では、Web ブラウザ上で空間情報を扱うこ
とができるWebGIS技術が注目されています。仙
台市の歴史や文化、自然などの情報を収める「まち
資源データベース」をはじめ、三重県の「M-GIS」、
藤沢市の「ふじさわ電縁マップ」[図4]などのよう
に、インターネット上に地図情報を公開し、付箋を
張る感覚で地域の情報を書き込み、それらを地図上
で共有できる利用環境の提供が試みられています。
また、このWebGISは、インターネットの双方
向性を活かして、市民・NPO・企業からの行政施
策に対する意見集約のツールとしての利用が期待さ
れます。
1995 年の阪神・淡路大震災は、多くの被害をもた
らしましたが、GISは被災状況の把握や復旧作業
[図2]に利用され、その有効性が広く認識されるよ
うになりました。2004 年 10 月に発生した新潟県中
越地震においても、被災・復旧状況の把握手段[図3]
として、活用されています。
国においては、阪神・淡路大震災の反省などを契
機として、全省庁を巻き込んだGISの本格的な取
組みを始めました。1995 年GIS関係省庁連絡会議
を設置し、翌年「国土空間データ基盤の整備及びG
ISの普及に関する長期計画」を策定しています。
2001 年 1 月には「高度情報通信ネットワーク社会形
成法(IT基本法)」が施行され、同法に基づく
「e-Japan 重点計画」を決定、公共分野におけるG
ISの推進を打ち出しました。現在、2001 年度末に
終了した長期計画に代わり策定された GISによ
り豊かな国民生活を実現するための行動計画「GI
Sアクションプログラム 2002-2005」に基づいてG
図2「阪神・淡路大震災の被災状況」の事例
出典:GISソースブック(古今書院 1996 年発行)
2
GISによる災害時対応
(中越地震復旧・復興GISプロジェクト)
図3「新潟県中越地震の被災・復旧状況」の事例
新潟県中越地震復旧・復興GISプロジェクト(http://chuetsu-gis.nagaoka-id.ac.jp/)
市民がつくる地図
(ふじさわ電縁マップ/藤沢市)
地域密着情報を市民が共有できる
図4「ふじさわ電縁マップ」の事例
ふじさわ電縁マップ(http://gis01.city.fujisawa.kanagawa.jp/ecommunity/index.jsp)
3
第Ⅲ章
1
横浜市におけるGISの取組経緯と現状
このDMデータは、GIS基盤データとして庁内
での目的に応じたGIS構築を容易にしました。
横浜市のGISの取組経緯
現在の横浜市におけるGISの特徴は、取組開始
当時に建設省が進めていたUIS(アーバンインフ
ォメーションシステム)を検証した結果、個別の業
務での課題と対応方策が明らかでない中で、全庁
的・統合的システム(総花的対応)を目指すことは
リスクが大きいと判断し、まず基幹的業務対応のG
IS構築を通して、行政GIS展開における共通課
題の解決を図ることにより、それぞれ所管業務の目
的に応じて、それぞれのGISが「分散」した状況
で「自立」的に構築できる環境整備を目指したこと
です。
GISのベースデータとなる都市計画基本図
(1/2,500 地形図)は、当初アナログ既成図をスキ
ャニングしたラスター形式で取得し、主題データの
背景として利用しました。しかし、作成時点が異な
る基本図を重ね合わせると、公共測量法の許容誤差
の範囲で座標のズレが生じるため、GISのベース
データとしての利用には限界がありました。環境整
備の中核は、この基本図の位置精度を担保するため
に、基本図の作成方法を直接ベクター形式の数値地
図データとして生成するデジタルマッピング
(Digital Mapping 以下「DM」という)手法に切
り替えたことです。
更に、DM化に際しては、位置精度を 1/2,500 か
ら 1/1,000、家形の総描や道路形状のスムージング
の禁止などデータ精度の向上に努めています。
2
(1) GISの現状
GISの取組みから約20年経過する中で、GI
Sは当初は都市計画や固定資産税務事務等の局対応
の定型的な業務を中心に導入されましたが、現在は
GISの基盤データが整備されていることや、コン
ピュータの低廉化に伴い、区役所にも様々な目的で
広く利用されています。導入されたGISの処理ソ
フトウェアは、現在400本以上となっています。
このような横浜市におけるGISは、次の3つに
区分された基盤データの基本形式によって運用され
ています。
① DMデータを基本形式とする都市計画情報シス
テム、税務地図情報システム等
なお、DMデータは線・点データであるため、
都市計画基礎調査の土地利用現況調査[図4]及び
建物利用現況調査[図5]を通して、道路や家形の
構造化(ポリゴンの生成)を行っています。
② 道路管理センターのデータ仕様に基づく道路台
帳(縮尺 1/500)データを基本形式とする道路、
上・下水道の管理システム
③ 横浜市標準メッシュ(250m×250m)をデータ
集計の基本単位に、国勢調査等の指定統計データ
を同定させたメッシュ統計システム
また、GISを利用した市民等への情報提供は、
法令に基づく縦覧窓口業務をシステム化し、検索し
た場所の情報を有償で図面出力できるマッピー(都
市計画情報提供システム)やセセライン(下水道台
帳管理システム)と、インターネットを通じて無償
公開している「行政地図情報システム」があります。
行政地図情報システムは、2002 年運用開始のアイ
マッピーから順次提供情報の範囲を広げています。
◇i−マッピー(都市計画地図情報/2002∼)
◇よこはまの地価(地価情報/2002∼)
◇環境ビュー(環境地図情報/2003∼)
◇よこはまのみち(道路台帳図情報/2005∼)
◇わいわい防災マップ(横浜市民地震防災情報
/2005∼)
表1 横浜市における主要な GIS の取組経緯
1980 年
「市政・地域情報システム」検討の中で、地図
頃
情報のコンピュータ処理を試行(実用化に至
らず)
1983 年
都市計画分野でGISの取組開始
既成土地・建物現況図のベクターデータ化等
1987 年
既成都市計画基本図をラスターデータ化
1988 年
マッピー(都市計画情報提供システム)運用
開始
1991∼
GISの基盤データとしてDMデータ整備
1993 年
1995 年
都市計画情報システム運用開始
税務地図情報システム運用開始
1997 年
消防総合情報管理システム運用開始
1998 年
リアルタイム地震防災システム運用開始
横浜市におけるGISの現状
4
表2 横浜市のGIS
税務地図情報
システム
港湾施設情報
管理システム
都市計画情報
提供システム
(マッピー)
消防総合情報
管理システム
リアルタイム
地震防災
システム
公園情報
システム
下水道台帳管理
システム(セセ
ライン)
環境情報管理
システム
農振農用地
地理情報
システム
雨水浸透施設
整備支援
システム
各種地理情報
システム
(区役所等)
メッシュ統計システム
都市計画情報
システム
・道路管理
・下水道管理
・水道施設管理
マッピング
システム
道路管理センタ
ーデータ仕様に
基づくシステム
(二重線内はDMデータを基盤としているシステム)
図5
土地利用現況図の事例
図6
建物利用現況図の事例
(2) アンケート・意見交換のまとめ
横浜市のGISについて、現状把握、課題の抽出
や今後の展開に向けてのポイントを探るために、市
民・NPO、関連企業、職員の方々へのアンケート
やヒアリング・意見交換を行いました。
その中で、様々な部署での実情がうかがえるとと
もに、有益な指摘やアドバイスをいただき、検討の
方向性を決める際の重要な要素ともなりました。
まず庁内を対象とした調査では、GISの導入状
況、各業務における地図の利用状況、地図(データ)
のニーズといった観点から、関連局区課に対してヒ
アリング及びアンケートを行いました。
GISの導入状況については前述したとおりです。
地図の利用状況、地図のニーズに関しては、特に市
5
民と密接に関わる区役所での必要性が明らかになり
ました。またデジタル化された地図を利用している
(利用したい)と回答した担当者の中でも、"GIS
を知っている"とした者は少ない状況であり、業務上
のツールとして利用を促進するためにも、GISに
関する需要を喚起する必要性がうかがえました。
市民活動団体へのヒアリングでは、それぞれの団
体の活動テーマ(地元商店街の活性化や生活に密着
した周辺環境の充実、ヨコハマの観光案内)の中で、
「地域情報の蓄積・共有・発信手段として地図を利
用したい」
、その際には「行政が持っている地図情報
を提供してもらいたい」という声が聞かれました。
これらの地図に関した要望を実現するには、最新
的な業務の処理を目的にGISを導入した場合、そ
の運用を休止しているケースが多いのが現状です。
その理由としては、
①他のオフィスソフトと異なり、操作が複雑で扱い
にくく、担当職員の異動により、操作できなくな
ったため
②導入目的が、計画策定など非定型的業務で日常的
な利用がなく、業務から遊離したため
③データのほとんどを都市計画局等の他部署からの
提供でまかない、システムを活用するため必要な
独自のコンテンツが不足していたため
④庁内的にはGISそのものの理解が醸成されてい
ない(というより知る機会がない)ため
⑤全庁的視点をもってGISの展開を計画したり、
局区横断的な調整やハード・ソフト両面のサポー
トなど、横浜市のGISを下支えする部署が存在
していないため
などがあげられます。
今後の街づくりは区役所が中心となる方向のなか
で、市民協働の街づくりの支援ツールとして、市民
が利用できるGIS環境の整備の必要性も高まって
います。
のGISの動向を知ることが不可欠と考え、GIS
関連企業等にヒアリングを行いました。昨今のIT
化の波に乗りGISも急速に進展し、その技術を利
用したサービスは、カーナビゲーションや携帯電話
による位置情報の配信など、身近なものとなってき
てます。また、防災、防犯、福祉及び観光など様々
な事業展開に取り組んでいるとういう状況であると
のことでした。
以上の結果を踏まえて、検討の中に反映した主要
な内容は次のとおりです。
① 区役所を中心とした展開
最近は、区役所においても様々な目的をもって
GISが導入されていますが、日常的に利用しな
いため局と同じような運用は困難です。その結果、
単一目的に一部署が導入した場合には、多くのG
ISがその運用を休止しています。
その一方、区のそれぞれの担当課では、地区マ
スタープラン(魅力資源マップ等)、地域福祉計画
(バリアフリーマップ等)
、ハサードマップ、防犯
地図などを策定・作成しています。このような作
業で用いる地域情報は、多くの部分で共通するも
のです。しかし、現状は紙ベースのアナログ作業
となっているため、同じ地域情報が事業ごとに作
成される状況です。
このような状況把握から、区においてGISの
展開を図ることが、市民協働の街づくりを支援す
ることにつながると考えました。
② 市民が作成した情報の共有化
現在横浜市では、様々な伝達媒体を利用して情
報提供をしていますが、概ね行政からの一方的な
提供形態です。WebGISなどインターネットの
双方向性を生かすと、市民や企業からの情報収
集・把握が容易になります。この特性を生かし、
市民が自ら地域情報を作成し、共有化できる環境
を創造することが市民サービスを向上させると考
えました。
(2) GISデータの流通状況
現在、GISの基盤データのデータ形式は、DM
のデータ仕様と道路管理センターのデータ仕様の2
つが並存しています。道路管理センターのデータ仕
様のデータは道路、下水、上水(民間では電気・ガ
ス)といったライフラインのデータで、災害時には
特に重要なデータです。しかし、現状ではデータの
相互流通が行われていません。
(3) GISデータの所在
GISデータが庁内に分散しており、新たにGI
Sを構築する際に、どのような種類のデータがどこ
にあるかも分からない状況です。
そのため、異なる部署で同一データを作成すると
いった二重投資が一部見受けられます。
(アンケートの詳細は参考資料を参照)
3
GISの展開上の問題点
(4) GISデータの提供方法
現在、GISを利用した市民等への情報提供方法
は、次のとおりです。
(1) GISの運用状況
これまでの横浜市のGISは「自立・分散」型の
方針で整備されてきました。たとえば、都市計画情
報システム、税務地図情報システムなど、定型的な
固有事務に適応し導入されたGISは、日常的に利
用され有効でした。その一方、計画策定など非定型
①マッピー(都市計画情報提供システム)やセセラ
イン(下水道台帳管理システム)のように、市民
が市役所内の窓口に出向き、縦覧・閲覧し、必要
6
に応じて出力図を有償で提供
限定的です。
②「行政地図情報システム」として、インターネッ
市民協働の街づくりを展望し、WebGISの機能
トを通じて、情報を無償で提供
を有効に利用する仕組みを整備することなどが必要
一方、これらの情報提供は、概ねGISを使った
とされています。
従来の窓口業務の改善で、提供されるコンテンツは
自立・分散型 空間情報利用
横浜市における空間情報の現状
A局
MO
行政内課題①
データ提供事務
が職員の負担
市民ニーズ
地域密着型の情報が
ほしい、作りたい。
企業ニーズ
横浜に進出するため
データがほしい。
行政内課題②
利便性を考えた
データ提供がさ
れていない
B局
C区
紙の
地図
市民・企業・NPOなど
印刷物の欠点
活用の範囲が狭い
ヨコハマ ビジュアルシンキング(街づくり支援ツールとしてのGISの展開)
図7
横浜市のGISの現状
7
第Ⅳ章
1
横浜市におけるGISの新たな展開に向けて
取組みの方向性
現状の問題点についての対応、新たな展開を図示すると次のようになります。
【問題点】
z
GISの認識はまだ低い。(「新時代行政プラン・アクションプラン」にもGISの取組ビジ
ョンがない。
)
z
GIS導入後に運用を休止したり、その存在さえ確認できないシステムがある。(非定型業
務で日常的な利用が行われない場合は、システムが継承されにくい。多くのシステムが組織内
で遊離している。)
z
優秀なオープンソースソフトもあるが、そのソフトを知らしめ、その有効性を実証する部署
もない。(価格の競争性がない状況が生じている。)
z
地図データの内容・所在が分からない。(同一データへの二重投資が行われている。
)
z
データ形式が異なるシステム間でデータ流通の仕組みがない。
z
地図データの提供は、該当部署の本来業務でなく、提供件数の増加は職員の負担の増加につ
ながる。(提供までの時間がかかり、ユーザーが利用しやすい形式での提供ができない。)
z
市民は分かりやすい情報として地図情報を求めており、特に地域に密着した区レベルでの要
望が多い。(現在提供されている地図情報は、都市レベルの情報が多い。
)
z
街づくりにおいて市民は、閲覧だけではなく、自由に加工できる地図データを求めている。
(市民・NPO・企業へのデータ提供ルールがない。
)
z
横浜市のGISの全庁的な展開や庁内を調整する部署がない。
【対 応】
z
GISの共通基盤データの選択とデータ提供要望に対応するワンストップサービスの実施
z
庁内GISデータのデータ目録作成
z
データ形式が異なるシステム間での円滑なデータ流通の仕組みの確立
z
市民・NPO・企業ニーズに応えるGISの基盤データの提供とサポートの充実
z
GISを新たに展開する将来イメージの構築と具体の取組み
z
費用対効果の優れたソフトウェアの選定
z
需要の喚起及びPR(講習会・実務研修)
z
市民との協働の仕組みの整備
など
以上の対応を効果的に推進するために
横浜のGISをコーディネート・サポートする担当部署の設置
図8
取組方向
8
2
事業イメージ
げることではなく、相互に協働する「自律」したシ
ステムとし、かつ、街づくりへの市民参加の支援ツ
ールとして生かしていくことが重要です。
そのようなGISを展開するには、システム間の
コーディネートやシステム運用を有効にサポートす
る担当部署の存在が必要です。
横浜市のGISの現状は、前述したように個々が
「自立」
「分散」しているスタンドアローン的状態で
す。
今後のGISの利用は、市民の街づくりを展望し
た「協働」へ展開する必要があります。その展開を
円滑に進めるには、各システムを単に物理的につな
自律・協働型 空間情報活用
GISによる空間情報の新たな展開
A局
協働によるまちづくり
ビジュアルシンキング窓口
サポート&
データ流通
地域に密着した、
デジタルな情報
が共有できる。
・基盤データバンク
・システム構築・運用支援
・GIS研修
・市民活動サポート etc…
B局
C区
市民・企業・NPOなど
ヨコハマ ビジュアルシンキング(街づくり支援ツールとしてのGISの展開)
図9
今後の横浜市のGISのイメージ
9
3
事業概要
(1) 位置付け
GISを、市民・企業・行政協働の街づくり支援
ツールとして展開するには、その調整機能を担う部
署(GIS担当)を、実際の街づくりと密接に関連
したポジションに設置することが必要とされます。
まず、現在進められている局区再編の中で、街づ
くり関連の部署に位置付けることが最適であると考
えます。
z 人員
・GISコーディネーター
・システムコーディネーター
・データコーディネーター
z 導入機器
・PC(業務用、研修用、市民用) 8台
(うちサーバー用1台、市民対応用2台)
・大判印刷用カラープリンター
1台
・スキャナー
1台
・プロジェクター
1台
など
(2) 事業計画
GISの将来への展開を確実に図るため、必要な
事項を3か年計画で取り組みます。[表3]
z 事業費[表4]
【17年度事業内容】
① 庁内に分散するGISデータについて所在を明らかにし、基盤となるGISデータを市民
及び庁内に向けて公開する準備(基盤データの選択、公開方法及び公開ルールの制定等)。
② モデル区(3区程度)を設け、市民協働の街づくりでのGISの有効な活用方法について
の検討。
③ WebGISで情報書込型地図情報システムを検討し、モデル区への導入に向けた調査。
④ ③のシステムを区役所内の地図情報共有ツールとして活用するための調査。
⑤ GISに関連したノウハウを持つ企業等と協働でGIS環境の展開について検討すると
ともに、外部を含めたGIS連絡会議の設立準備。
⑥ 街づくりで利用される既成地図のデジタル化を検討
表3
事
業
項
目
17年度
3か年事業計画
18年度
19年度
備
考
庁内GISデータ目録の作成
データの所在を明らかにする
基盤データの評価・選定・収集・提供
データバンク機能
行政内GISの整備・運用のサポート
GISを用いた行政コストの削減
市民の街づくり活動のサポート
市民向け講習会など
区役所へのサポート
3 区
8 区
全 区
モデル区を選定
提供データ形式の検討
利用しやすい形でのデータ提供
GIS職員研修
GISの普及・教育・サポート
学習教材としてのGISデータの整備
地域情報マップの作成サポート
新たな利用技術の導入検討
コスト削減手法の研究
共同研究
歴史的な地図のデジタル化・保存等
表4
1
2
3
4
3か年事業費
17年度
作業用パソコン、ソフトのリース費
1,860
GISデータの整備に関する委託費
2,000
既成地図のデジタル化に関する委託費
1,000
その他の事務費
140
合
計
5,000
10
18年度
1,860
2,000
1,000
140
5,000
19年度
1,860
2,000
1,000
140
5,000
おわりに
私たちのチームは、
「GIS」を共通のキーワードに、集まりました。
このメンバーで半年間、毎週水曜日を作業日とし、
それぞれが持つ経験や技術的ノウハウを持ち寄り検討しました。
その協力の成果が今回の結果に現れたと思います。
GISの行政的な位置付ですが、全国の自治体を見渡しても、
様々なIT関係システムの一部にしか捉えられていないのが現状です。
その中で、今回事業採用されたこと、
GISを業務の中心とした担当部署が設置されるのは、
全国でもはじめてで、
横浜市の先見性を示すものだと思います。
そのため、市民協働の街づくりの支援ツールとしての基盤をしっかりと築くことは当然のことですが、
担当する業務の中身も先端性をもって進めていきたいと考えています。
最後になりますが、
市民活動団体の皆様、関連企業の皆様、そして職員の皆様には
検討に際しては、意見交換会やアンケートを通して
多大なるご協力をいただきました。
ありがとうございました。
ヨコハマビジュアルシンキングチーム(街づくり支援ツールとしてのGISの展開)
石黒
徹(都市計画局南部開発課)
入江佳久(市立大学事務局学務課鶴見キャンパス担当)
古谷雅孝(総務局統計解析課)
井上友博(環境保全局環境科学研究所)
遠藤明子(緑政局北部農政事務所)
11
参考資料
(1)
1 作成事例
a 横浜今昔
∼根岸住宅地区接収前の土地利用の復元∼
(土地の権利関係を把握する)
平成14年 昭和8年
範囲を示す枠
地形の変化を視覚的に表現できる
b 横浜今昔
∼造成住宅地の盛土部分∼
造成前の地形
現在の地形
地形の変化を視覚的に表現できる
(2)
c 現状分析
∼メッシュ(250m四方)統計∼
(20歳以上人口の分布)
昭和55年
平成12年
数値を視覚的に表現できる
d 街づくり
∼異なる事業の一体的な把握∼
(将来の市街地像がより明確になる)
事業計画1
事業計画2
地区の未来像をわかりやすく表現できる
(3)
e 街づくり
∼地域に密着した情報の作成・提供∼
(地域の生活道路に関する情報)
歩道幅員による色分け
道路幅員による色分け
福祉・防災関係への活用ができる
f 業務改善
地図を使う業務への利用
住宅地図を使う場合
GISを使う場合
切り貼りが必要
欲しい範囲を自由な大きさで表現できる
(4)
3 事業協力者一覧
(1) サポート課
(3) 職員アンケートに
回答していただいた皆様
都市経営局政策課
総務局IT活用推進課
総務局情報・技術課
(4) NPO団体等
都市計画局都市計画課
都市計画局地域まちづくり推進担当
横浜シティガイド協会(嶋田氏)
道路局道路調査課
暮らしいきいきサポートの会(横木氏)
下水道局事業計画課
港南台マロニエ祭実行委員会(田辺氏)
財政局固定資産税課
H.O.米山(米山氏)
フェリス女学院大学講師太田氏
(2) ヒヤリング等協力課(順不同)
(5) 財団法人
福祉局地域福祉課
南区福祉保健課
(財)日本建設情報総合センター
金沢区福祉保健課
(財)データベース振興センター
総務局IT活用推進課
緑政局北部公園緑地事務所
南区区政推進課
(6) ヒヤリング企業
南区地域振興課
(株)パスコ
青葉区サービス課
(株)ドリームテクノロジーズ
建築局建築企画課
(株)オークニー
衛生局医療政策課
都市計画局都市デザイン室
(7) サポート企業
緑政局北部農政事務所
都市計画局事業管理課
(株)パスコ
総務局統計解析課
(株)オークニー
水道局配水課
(5)
4 用語解説
国土数値情報
○
国土庁が国土地理院とともに、昭和 49 年度から作成している日本全域をカバーする数値地理デー
タである。内容は地形、土地分類、指定地域、行政界、湖沼、島、文化財、土地利用、砂防等指定
地域、流域などからなる。標準メッシュ(JISメッシュ)を基盤としたデータが主体だが、行政
界、海岸線などベクタ型のデータも含まれる。3 次メッシュを4×4等分した格子点の標高データは、
広域的なDEMデータとしてしばしば利用される。
○
空間データ
座標や住居表示などで地球上の位置と関連付けられるデータのこと。地図データのほか台帳類、
統計資料類やその他画像データ、音声データも、位置の情報を含んでいれば、空間データとなる。
属性情報(属性データ)
○
地理情報を表現したデータの中で、空間の構造を表現する位置などの情報(図形情報)以外のも
のを属性情報(属性データ)と呼んでいる。たとえば、土地(筆)の形状は図形情報であり、その
土地の価格は属性情報となる。属性情報は関係データベースなど標準的データベースシステムで管
理し、利用にあたって図形情報と結合される方式が一般的である。
地理情報システム(GIS : Geographic Information Systems)
○
人文・自然の環境情報と社会経済的な情報の地理的位置分布状況をデータベース化し、データの
入力及び更新、データの検索、さらにデータの統計的手法や分析手法によって地域の特異性を顕在
化する。また、データの編集や融合を通してさまざまなシミュレーションを行ったりして、多くの
人々へのビジュアルなプレゼンテーションが可能な出力表示機能を兼ね備えたシステムである。
標準メッシュ
○
メッシュを標準化しておいて、様々な情報をそうした共通単位毎にデータ化しておけば、地域解
析などに好都合である。こうした目的で定められたメッシュを標準メッシュと呼ぶ。
わが国では 20 万分の 1 地勢図の区画の 1 次メッシュ、それを 8x8 に区分した 2 万 5000 分の
1 地形図の区画の 2 次メッシュ、更にそれを 10x10 に区分した区画の 3 次メッシュ(経度で 45 秒、
緯度で 30 秒の幅となる)などのメッシュ系が定められ、JIS メッシュなどと呼ばれている。このメ
ッシュ系は経緯度で区画が決められるから緯度によって区画の面積は異なる。これに対し自治体な
どでは公共座標系に基づくメッシュを用いている場合が多く、こちらは等幅メッシュなどと呼ばれ
る。
(6)
ベクタ(ベクトル)
○
ベクタデータは長さと方向を持ち、それぞれの点、線、面に属性データを付加することができる。
幾何データの自動生成では、最初にスキャナで読み込まれたラスタ型データをベクタ型に変換す
る技術が重要である。
ポイント
○
長さや幅のない対象物を指すある種の空間定義。地図表示の例としては、井戸、気象観測点、航
空灯などがある。
ポリゴン
○
直線で管理されている多角形を言う。ポリゴン生成にはチェーンファイル毎にID、FROM−
TO、LEFT−RIGHTを設定し、個々にラベリングすることが必要である。入力ミスをつぶ
しながら正しいチェーンファイルを作成してからポリゴンを生成する。
メタデータ
○
データの所在、内容、品質、条件などを記述したデータのこと。メタデータは定まった書式で記
述されることが望ましいため、ISO/TC211 や国土交通省の官民連帯共同研究などで標準化のための研
究がすすめられている。
メッシュ
○
地理情報の一表現手法であり、地表面を一定のルールに従い、多数の正方形などに分割したもの。
分割の方法により、正方形、長方形、三角形、六角形などが利用される。こうしたメッシュごとに
データを与えることで、その分布などを表現できる。
欧米ではメッシュ即ち面的単位の集計値を記述する場合をグリッド・セル(grid cell)方式、結
び目即ち点の属性を記述する場合をグリッド(grid)方式と呼ぶのが普通のようだが、わが国では
双方を併せてメッシュ方式と呼んでいる。
ラスタ(Raster)
○
ラスタ(Raster)とはもとはドイツ語の印刷用語で網目スクリーンを指し、転じてテレビジョン
で用いられている画面走査を指す語となった。コンビュータ用語ではグラフィック画面をビットマ
ップで構成・走査する方式をラスタ方式とう。
GIS では位置や形状を等型要素(普通は矩型)の配列で表す方式をラスタ方式という。
メッシュないしグリッド・セルによるデータや画像データはラスタ方式ということができる。
(7)
レイヤ
○
地理情報システム(GIS)において、同じ地域に対して建物や道路などデータの内容別にファイル
を作成することがある。これらのファイルは個別に見ると、その地域における建物だけを抜き出し
た地図、道路だけを描いた地図に対応する。こうしたテーマ別ファイルをレイヤという。こうした
レイヤにより、データを表現・管理する構造をレイヤ構造という。
CAD (Computer Aided Design)
○
グラフィックス・ディスプレイを介して設計者がコンピュータの支援を得ながら設計を行うシス
テム。図形処理技術を基本としており、平面図形の処理を製図用途に応用したものを 2 次元 CAD、3
次元図形処理を製品形状の定義に利用したものを 3 次元 CAD という。
GPS (Global Positioning System)
○
人工衛星からの電波を受けて、位置を測定する技術。また、その装置。測量やカーナビゲーションなどに利
用される。
米国防省が運営・管理している衛星ナビスター(NAVSTAR:Navigation System with Time and Ranging)を
利用した位置測定システムである。地球上空約 20,000km の高度の 6 つの軌道面上にアクティブな衛星 21 個と
バックアップ用の予備衛星 3 個が配置されている。各衛星は原子時計を搭載し、これに基づく正確な時刻と、
軌道計算に基づく正確な位置情報を持っている。各衛星は、この時刻と位置とを符号化して発信する。最も受
信しやすい 4 機以上の衛星から電波を受信し、各々の衛星から電波が届くまでの時間を測定することにより、
正確な位置、移動方向、移動速度を 24 時間リアルタイムで知ることができる。
[出典:JACIC用語集 http://www.jacic.or.jp/yougo/frameset.html ]
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