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脳死臓器提供者の管理

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脳死臓器提供者の管理
Crit Care Med. 2015 Jun;43(6):1291-­‐325.
脳死臓器提供者の管理
慈恵ICU火曜勉強会 2015年8月18日 飯島正紀 本日のメニュー
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臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 本日のメニュー
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臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 アメリカの臓器移植の現状
•  2013年データでは、120,000人以上が臓器移
植待機患者 •  8,143人の死後患者で22,187件の臓器移植が
行われ、一方で6,467人は臓器提供を待つ間
に死亡 •  在住のおよそ46%の成人で、臓器提供の意
思表示をしている •  近年の多くの場合、臓器提供は脳死患者で
あり、集中治療医は臓器提供者の管理に精
通しているべきである Crit Care Med 2015; 43:1291–1325.
アメリカの臓器移植の現状
•  2013年データでは、120,000人以上が臓器移
植待機患者 •  8,143人の死後患者で22,187件の臓器移植が
Organ Procurement and TransplantaNon Network 行われ、一方で6,467人は臓器提供を待つ間
(OPTN) に死亡 / United Network for Organ Sharing •  在住のおよそ46%の成人で、臓器提供の意
(UNOS) 思表示をしている からのデータ
•  近年の多くの場合、臓器提供は脳死患者で
あり、集中治療医は臓器提供者の管理に精
通しているべきである Crit Care Med 2015; 43:1291–1325.
各国の臓器移植ネットワーク
・Euro Transplant:オーストリア、ドイツ、ベルギーなど ・UK Transplant: イギリス、アイルランド ・Scandia Transplant: デンマーク、フィンランド、ノルウェーなど ・Agence de la biomédecine: フランス ・UNOS ( United Network for Organ Sharing):アメリカ(58団体) ・The Canadian Transplant AssociaNon: カナダ ・日本臓器移植ネットワーク: 日本 2010.10.19.齋藤敬太先生 勉強会スライド一部変更
Crit Care Med. 2015 Jun;43(6):1291-­‐325.
•  Society of CriNcal Care Medicine (SCCM), American College of Chest Physicians (ACCP), AssociaNon of Organ Procurement OrganizaNons (OPO)の合同コンセンサス ステートメント
死の判定
•  Criteria for death determinaNon 1)  Circulatory-­‐respiratory criteria set いわゆる三徴候(循環・呼吸・神経)の消失に
よる死亡 2)  Neurologic criteria set 不可逆的な皮質と脳幹機能の消失による死
亡、脳死 The Steps in a Clinical ExaminaNon to Assess Brain Death.
Coma or unresponsiveness (深昏睡) Absence of brainstem reflexes (脳幹反射の欠如) 2010.10.19.齋藤敬太先生 勉強会スライドより
Apnea-­‐test (無呼吸テスト)
N Eng J Med 2001;344:1215-­‐21
脳死判定の補助検査
1)  脳血管造影 2)  脳波 3)  経頭蓋超音波検査 4)  脳シンチグラフィー はあくまで補助検査であると位置付けた Neurology. 1995 May;45(5):1012-­‐4. 二つの死の定義と臓器提供
•  循環的死亡後の臓器提供( DCDD: DonaNon a`er circulatory determinaNon of death ) •  神経学的死亡後の臓器提供( DNDD: DonaNon a`er neurologic determinaNon of death) 本日のメニュー
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臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 DCDD腎移植
•  DCDDは特に腎移植で多く実施されてきた •  DNDD移植と合併症は同等であるが、DCDD
腎移植で生着遅延を認める •  生着遅延移植でみると、その後の生着率は
(DCDD vs. DNDD)、3年後は84% vs. 73%で、6
年後は84% vs. 62% Am J of Transplant 2003; 3: 614–618. •  腎の長期生着率はDCDDとDNDDで同等 グラフト虚血時間
•  早期生着不全は(摘出前の)高温虚血時間と
(摘出後の)低温虚血時間に関係する •  30分以上の高温虚血時間は早期生着不全
の独立関連因子(100例のDCDD検討) TransplantaNon 2005;79: 1195–1199. •  低温虚血時間は移植後腎機能の予測因子
(2,562例のDCDD検討) Am J Transplant. 2007 Jul;7(7):1797-­‐1807. •  DCDDでは生着遅延由来のコストが上がる
(透析の必要性、入院日数、再入院) DCDD肝移植
•  DCDD肝移植はDNDD肝移植と同等成績 •  若いドナー(≦47歳)で、高温虚血時間が15分
以内・低温虚血時間が10時間以内(874例の
DCDD検討)の肝移植で最良成績 Liver Transpl. 2007 Dec;13(12):1736-­‐42. •  DCDD肝移植では、DNDDと比して胆道狭窄や
感染症、再灌流後の高カリウム血症などの合
併症が起きやすい DCDD肺移植
•  2008年まで、統計的な予後報告なし •  8例のDCDD肺移植後患者では、平均311日目
まで良好な肺機能であった Am J Transplant. 2008 Jun;8(6):1282-­‐9. •  DCDD肺移植の2年生存率は87%程度 J Thorac Cardiovasc Surg. 2008 Oct;136(4):1061-­‐6. •  近年、DCDD肺移植時の体外灌流コンディショ
ニング適応が拡大
DCDD膵移植
•  腎・膵同時移植についての検討では、DCDDと
DNDDで5年後の膵臓グラフト生存率に差を認
めない •  (DCDD vs. DNDDで)89% vs. 77% Transplant Proc. 2008; 40(2):502-­‐505.
DCDD臓器提供の実際
•  同意取得後の患者はwithdrawalが決定した
のちに、手術室で循環機能の監視を実施さ
れたのちwithdrawalとなる •  60分以内に循環停止を来たさない場合には
再びICUに戻り、適応から外れる •  ある程度確実性を持った「死」の予測が重要
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無呼吸 呼吸回数 カテコラミン 心補助デバイス VAまたはVV ECMO PEEP下で低酸素 徐脈 IABP これらのUNOSクライテリアを満たす数 •  0個:29% •  1個:52% •  2個:65% •  3個:82% →生命維持のwithdrawalによって、60分以内
に死亡に至る割合が推定可能 人工呼吸器からのwithdrawalは60分以内死
亡の独立したリスクファクター DCDDにおけるECMO
•  Extracorporeal membrane oxygenaNon (ECMO)
適応は、DCDD移植を増やすが慎重検討すべき •  心停止後、大動脈閉鎖バルーンが膨らみ心臓と
脳へ還流させなくする •  反対に、腹部など他臓器には回路血流がまかな
われるために臓器虚血時間を与えない •  高温虚血時間は、臓器機能に重要な要素となる
ためにECMOが重要な役割を担う可能性は高い
移植に対する家族の同意
•  本人の生前臓器提供意思が曖昧であった家
族からは、移植同意を得にくい •  アフリカ系アメリカ人では、Caucasianに比して
移植同意を得にくい →家族背景や人種に関わらずICUスタッフは、
臓器提供に関する平等な機会を与えるべきで
あり、そのタイミングも重要 上記1つ以上に該当する場合には1時間以内
に家族に伝え、臓器提供の可能性を説明 →移植への意思を固め、準備しやすくし、離
別(decoupling)の時間を設けることが可能 AuthorizaNon
•  早期に臓器提供の説明が可能な移植チーム
が存在すると、「認可された」移植を増やすこ
とが可能 •  可能な限りすべてのICUと外傷センターにコー
ディネーター配置が望まれる •  個人の移植意思表示が最も優先されるため、
その旨を早く遺された家族に伝えることが重
要
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臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 腫瘍・感染症ドナーの移植
•  2つのデータベース 1)  Israel Penn InternaNonal Transplant Tumor Registry (IPITTR) 2)  United Network for Organ Sharing (UNOS)
Israel Penn InternaNonal Transplant Tumor Registry (IPITTR)
•  絨毛癌:93% •  悪性黒色腫:74% •  肺癌:43% •  腎細胞癌:63% •  大腸癌:19% でレシピエントに腫瘍伝播の可能性 ü しかし、14例の腎細胞癌脳死ドナーからの移植
では未発症 ü 最大規模のデータベースと言われているが、腫
瘍のステージや治療などのデータは不十分 United Network for Organ Sharing (UNOS)
•  一方、UNOSデータではより低い伝播の報告 •  140件の悪性黒色腫ドナーからの移植で、既往ド
ナー(32年前発症、治療後) の、1件のみで伝播 •  乳癌、肺癌、卵巣癌、大腸直腸癌ドナーからの
伝播はこの報告からは認めない TransplantaNon 2007;84: 272–274. ü 腫瘍のステージや治療などのデータは不十分 中枢神経腫瘍ドナー
•  原発性脳腫瘍の神経外転移は0.4-­‐2.3%とさ
れ、臓器提供には問題ないとされる •  UNOSデータでは、642件のCNS腫瘍患者から
の臓器移植で3件(0.5%)の伝播報告があり、
全て同一のglioblastomaドナーからであった TransplantaNon 2007;84: 272–274. •  一方でIPITTRのデータでは、伝播率はより高
い(23%程度)
中枢神経腫瘍ドナー
•  Grades I-­‐IIの低グレードで、開頭術・放射線治
療・VPシャントを実施されていなければ移植ド
ナーとして適合 •  Grades III-­‐IVの高グレードで、上記手術実施
後であれば各移植コーディネーターや移植セ
ンターとの合議が必要 •  最終的には、移植のリスク・ベネフィット次第 •  脳出血原因が脳腫瘍の疑いのある場合には、
移植後早期の限局性病理検査を検討
Bacteremia/Sepsisドナーの移植
•  Bacteremia・Bacterial sepsisは臓器移植適応
の禁忌とはならない •  ドナーに速やかに適合した抗菌薬投与を実
施することが大切 •  抗菌薬投与から最低限48時間の治療を実施
するまで臓器提供は待つことが推奨 •  真菌血症の報告は未だされていない
髄膜炎ドナーの移植
•  髄膜炎起因菌:Neiserria meningiNdis、
pneumococcus、Haemophilus influenzaeなど •  抗菌薬治療を適切に行い、レシピエントにも
同じ治療を継続することにより伝播しない •  Listeria monocytogenesの場合には、長期治
療が必要 •  LymphocyNc choriomeningiNs virus(リンパ球
性脈絡髄膜炎)とrabies virus(狂犬病)の伝播
報告は認めるため注意 •  細菌性髄膜炎のドナーは、適正な抗菌薬治
療を受けていることで臓器移植適応となる •  「適切な抗菌薬治療の期間」は、 1)  ドナーでは概ね24-­‐48時間 2)  レシピエントでは概ね5-­‐10日間 HIVドナーの移植
•  血清学的HIV陽性ドナーから、HIV陰性レシピ
エントへの移植は臓器移植の適応外 •  陽性ドナーから陽性レシピエントへの移植に
関しても、HIVによる余命と比較して移植後余
命が長ければ実施可能 •  慎重適応は、血清学的陰性であるがHIV感染
リスクの高いドナー(viremic windowの存在) ドナー10,000人あたりの伝染リ
スクとしては、 •  経静脈薬物使用者では12.1 •  男性同士の性交をする男性
では10.2 •  性労働者では6.6 •  刑務所服役者では2.3 •  過去12ヶ月以内にHIV陽性
の血液暴露にあった者では
1.5 •  過去12ヶ月以内にハイリス
クな相手と性交した者では
0.7 •  血友病患者では0.09 •  Nucleic-­‐acid amplificaNon test (NAT: 核酸増
幅検査法)により、認識不能であったviremiaド
ナーを排除することが可能 •  アメリカではドナーへのNAT検査のうち 1)  68%は全ドナーに対する定期検査 2)  30%はハイリスク群に対する検査 •  ハイリスク群の把握のためには、移植チーム
はドナーの行動(趣向)も把握すべき
B・C肝炎ドナーの移植
•  HCV陽性ドナーからの移植は、HCV陽性レシ
ピエントに限定 •  HBs抗原陽性ドナーは、臓器移植の適応外 •  HBc抗体陽性ドナーであれば臓器移植の適
応を実施している施設もある •  HBe抗体陽性ドナーは、臓器移植の慎重適応 本日のメニュー
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臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 輸液管理目標
•  循環動態モニタリングツールを使用しながら
管理すると摘出後の臓器状態を改善 •  推奨値: 「通常通り」を推奨 1)  平均血圧 MAP > 60 mmHg 2)  最低尿量 1 mL/kg/hr 3)  左室駆出率 EF > 45% 4)  最低量の血管作動薬 (e.g., Dopamine ≦ 10 μg/kg/min)
Crystalloids or colloids
•  ドナーの循環管理への初期輸液の選択に関
する結論は出ていない •  Crystalloidsとしては生理食塩水と乳酸リンゲ
ル液が推奨 •  Hydroxyethyl starch (HES)のルーチン使用は
推奨しない(生着遅延をきたすため、使用は
500-­‐1,000ml以内に限定) •  赤血球輸血の目標値は7 g/dL以上 ドナーへの血管作動薬
•  ノルアドレナリン、フェニレフリン、ドブタミン、
アドレナリン使用はsevere shockで考慮 •  バソプレシン投与は難治性shockでは考慮す
べき追加治療である •  ドパミンは、脳死患者で十分なデータが存在
せず他血管作動薬よりも弱い推奨 •  血管作動薬で不十分な場合のみHormone replacement therapy (HRT)の併用を検討
内分泌不全とHRT
•  脳死移植ドナーでは特に、脳浮腫などにより
内分泌機能不全をきたしやすい •  脳死患者の80%程度で、バソプレシン (AVP: Arginine vasopressin)減少による尿崩症をき
たす •  同様に、脳死患者では下垂体前葉ホルモン
減少による下垂体機能不全をきたす
AVP補充開始基準
•  尿崩症基準を満たさなくても、適正な輸液管
理下での低血圧を認めたらAVP補充開始 •  下記は臨床的尿崩症と診断 1)  多尿: 3-­‐4 L/day or 2.5-­‐3.0 mL/kg/hr 2)  血清浸透圧正常 3)  尿比重低下: < 1.005 4)  高ナトリウム血症: > 145 mmol/L
AVP/デスモプレシン補充
•  低血圧かつ体血管抵抗の低下を認める場合
にはAVP 0.01-­‐0.04 IU/minで開始 •  低血圧を認めず尿崩症のみであれば、デス
モプレシンを使用する(初期量は1-­‐4 μg) •  尿量、電解質は正常を維持できるよう適宜変
更
ステロイド補充
•  脳死後のコルチコステロイド不足への対応 •  高容量コルチコステロイドは、脳死によるド
ナー臓器機能への有害な炎症を軽減する •  Methylprednisolone 1)  1,000 mg IV 2)  15 mg/kg IV 3)  250 mg IV bolus + 100 mg/hr
甲状腺ホルモン補充
•  血行動態不安定な場合や心機能低下ドナー
では、AVP・コルチコステロイドなどのHRT併用
治療として、甲状腺ホルモン補充を検討 •  T3 / T4 ともにHRTに使用可能である 1)  T4 IV with a 20 μg bolus + 10 μg/hr 2)  T3 IV with a 4.0 μg bolus + 3 μg/hr 脳死ドナーの血糖補正
•  72%の脳死ドナーで血糖値が200 mg/dL以上、
39%では250 mg/dLにまで達する Anesthesiology. 2009 Feb;110(2):333-­‐41. •  ドナー高血糖は、集中治療患者の血糖補正
同様に 180 mg/dL以内に補正することを推奨
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臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 小児ドナーの管理
•  小児における成人とのドナー管理相違点 1)  提供臓器の大きさ、重量 2)  小さな臓器に対する外科的手技 3)  年齢によるバイタルサインの違い、それによ
る神経学的死亡の判断 4)  小児ドナーのマネジメントが未確立 5)  本人による意思表示が不可能
小児ドナー管理の推奨
•  非小児専門施設に重篤な小児症例が発生し
た場合には、速やかに小児専門施設への搬
送を考慮 •  搬送が不可能であれば、小児ドナー管理に
慣れている施設へのコンサルトが重要
小児における神経学的死亡宣告
•  SCCM・American Academy of Pediatrics・Child Neurology Societyの合同ガイドライン(1987年)
6つの推奨事項を提言
6つの推奨
1.  満期新生児・乳児・小児での脳死決定は昏
睡の原因すべてを除外した上で行う 2.  低血圧・低体温・代謝障害を補正し、検査に
影響する薬剤を中止して神経学的検査や無
呼吸検査を行う 3.  無呼吸検査を含む二つ以上の検査は、間隔
をおいて実施すべき(新生児で24時間以上、
乳児以降の小児で12時間以上; 日本基準
は全小児で24時間以上の間隔) 4.  無呼吸検査でPaCO2が基礎値より20mmHg
以上上昇するか、60mmHg以上になることは
脳死支持所見 5.  補助検査は脳死判定に必須ではない(ただ
し、より年少の際には検討すべき) 6.  すべての基準を満たせば死亡宣告が可能 小児脳死ドナーの管理
•  基本管理方法は成人と同様に実施する •  年齢によるバイタルサインの違いが、循環・
呼吸管理で問題 •  甲状腺ホルモン、AVPによる管理は報告が少
なく、低いEvidenceであるが検討しても良い
一般的には・・・ PALSガイドライン上、 最低限SBP ≧ Age×2 + 70 mmHg 新生児・乳児では、 最低限MAP ≧ 在胎週数 (+5) mmHg 外傷小児ドナー
•  非交通外傷小児がドナーとなる可能性の時
に、常に虐待を鑑別 •  鑑別に難渋する際には、地域の弁護士や専
門の鑑定人を交えて検討すべき •  医師・移植チーム・移植コーディネーター・医
療鑑定人の協力が不可欠 •  (小児)法医学者との連携も重要
小児DCDDドナー
•  近年、小児でもDCDDドナーが増加傾向となり
アメリカでは全DCDDドナーの10%に達する •  長期的な移植後予後は良いと見込まれてい
るが、継続した調査が未だ不十分 無脳症
•  現時点では研究や経験が少なく、慎重に適
応を検討すべき •  日本国内でも移植実施がされた報告あり 近畿大医誌. 1989; 第14巻4号: 149-­‐150.
hnp://www.cdc.gov/ncbddd/birthdefects/anencephaly.html
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臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 Organ system specific consideraNons for DNDD
心臓移植ドナー
•  ドナーの移植適応年齢は原則55歳未満 •  55歳以上も移植メリットが高ければ慎重適応 •  軽度左室肥大(wall thickness ≦ 1.4 cm)は移
植適応 •  心停止20分以内の ROSCは移植適応 •  レシピエントに肺高血圧があり、ドナー心が小
さい場合は、移植は推奨されない (ドナーBMI < レシピエントBMIの80%) •  胸部外傷ドナーからの心臓移植に関しては、
情報が少なく慎重適応 検査
•  心筋逸脱酵素、BNPの数値は移植適応判断
に関連しない •  ドナー決定後は、特に連続したエコー検査が
重要 •  冠動脈造影検査は、ドナーが40歳以上であ
るか3個以上のリスクファクターがある場合に
推奨 CMAJ. 2006 Mar 14;174(6):S13-­‐32. 検査
• 
年齢 •  心筋逸脱酵素、BNPの数値は移植適応判断
•  性別 に関連しない •  家族歴 •  ドナー決定後は、特に連続したエコー検査が
•  喫煙 重要 •  高血圧 •  冠動脈造影検査は、ドナーが40歳以上であ
•  高コレステロール血症 るか3個以上のリスクファクターがある場合に
•  糖尿病 推奨 •  肥満 CMAJ. 2006 Mar 14;174(6):S13-­‐32. •  高ストレス 腎臓移植ドナー
•  腎生検:クレアチニン値正常のドナーへの
ルーチンは推奨されない •  画像検査:ルーチンでの検査は推奨されない
が、以下では検討が必要 1)  多発性嚢胞腎の家族歴 2)  腎結石の既往歴 3)  尿路奇形の既往歴 肝臓移植ドナー
•  近年の肝臓ドナー不足により、適応基準が緩
和されてきている •  30%程度の脂肪変性肝臓は、移植によるメ
リットが高ければ移植適応 •  移植において高ナトリウム血症は、早期グラ
フト不全の独立したリスクファクター Transplant Proc. 2004 Oct;36(8):2215-­‐8. •  ナトリウム管理目標値: 155 mEq/L以下 肝ドナーの補液・栄養管理
•  肝移植ドナーでの血圧管理は明確に定義さ
れていないが、MAP 60-­‐70 mmHgが推奨 •  血管作動薬使用は、移植成績に直接関与し
ない •  肝移植直後は、肝機能障害により低血糖が
生じるために確実な糖質投与が重要 肺移植ドナー管理
このクライテリア
を満たさない肺
移植は、15-­‐25%
程度しか成功し
ない
•  PaO2/FIO2 ≧ 300 mmHgが広く推奨され、満
たさない場合には慎重に検討 •  PaO2/FIO2 < 300 mmHgである場合、補液管
理や利尿薬治療による改善を試みる •  さらに改善が乏しい場合には、体外灌流(高
張性灌流液使用)を試みてから移植すること
も検討
肺移植ドナーの呼吸器管理
•  Lower Ndal volume and higher PEEPが推奨 •  肺移植ドナーの呼吸器管理はARDSに対する
肺保護戦略と同様 JAMA 2010; 304: 2620-­‐27. •  誤嚥や感染の可能性がある場合や、気道ク
リーニングを実施する際には気管支鏡検査を
が必須
肺移植ドナーの補液管理
•  目標 conservaNve strategy 1)  CVP: < 4mmHg かつ 2)  PAOP(Pulmonary artery occlusion pressure): < 8mmHg が推奨される (CVP: 10-­‐14mmHg, PAOP: 14-­‐18mmHgと比較) 膵移植ドナーの管理
•  膵浮腫を防ぐことが重要 •  通常通りの輸液管理が必要であり、過剰輸
液は生着不全をきたす •  低灌流による血栓症のリスクもあり、補液管
理に難渋することもある •  ドナー高血糖は膵グラフト不全のリスクファク
ターとなるため、180 mg/dL以下に保つ Ann Surg. 1992 Mar; 215(3): 217–230. 小腸移植ドナー
•  過剰補液により小腸も浮腫をきたす •  また、過剰な循環作動薬を使用したり遷延し
た心停止後のドナーは、移植適応外とすべき •  経腸栄養は可能な限り続け、粘膜構造を保
つことが重要 •  広域スペクトラム抗菌薬投与により、小腸移
植後の感染を防ぐ •  消化管出血や潜血便を認める場合には、小
腸移植ドナー不適合となる
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臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 日本臓器移植ネットワーク
hnps://www.jotnw.or.jp/index.html
脳死下臓器提供の実際
脳死下臓器提供の実際
まとめ
•  脳死臓器移植は増加傾向にあり、集中治療
医は臓器提供者の管理に精通しているべき
である •  臓器移植はDCDDとDNDDに分けられる •  DCDD移植では虚血時間が特に重要となる •  悪性腫瘍患者・感染症ドナーからの移植で、
適応外となるものは多くない •  ドナー臓器の循環呼吸管理は「通常通り」が
中心となる •  臓器移植においてHRTは重要となる •  小児ドナーでは、虐待の鑑別が必須である •  各種臓器別管理方法に関しても、さらなるエ
ビデンスの蓄積が必要である 
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