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1 知にはどんなものがあるのか?

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1 知にはどんなものがあるのか?
共通教育科目「
共通教育科目「哲学基礎 B」の2008年度
2008年度2
年度2学期木
学期木曜1時限
「認識するとはどういうことか
認識するとはどういうことか?
するとはどういうことか?」
§0 導入
1、講義計画 (あくまでも予定
あくまでも予定で
予定で、変更の
変更の可能性が
可能性が高いです。
いです。)
§1 知にはどんなものがあるのか?
にはどんなものがあるのか?
究極的に
根拠付けられた
けられた知
存在するのか
するのか?
§2 究極的
に根拠付
けられた
知は存在
するのか
?
アプリオリな
獲得するのに
するのに経験
経験を
必要としない
としない知識
知識)
はあるのか?
§3 アプリオリ
な知識(獲得
するのに
経験
を必要
としない
知識
)はあるのか
?
§4 全ての知識
ての知識は
知識は経験に
経験に基づくのか?
づくのか?
イギリス経験論
経験論(
経験主義)
大陸合理論
合理論(
理性主義)
イギリス
経験論
(経験主義
)対大陸
合理論
(理性主義
)
§5 論理実証主義
§6 新科学哲学
§6 分析哲学における
分析哲学における経験主義批判
における経験主義批判
§7 ゲティア問
ゲティア問題
内在主義vs
vs外在主義
§8 内在主義
vs
外在主義
§9 感覚と
感覚と判断はどのように
判断はどのように関係
はどのように関係しているのか
関係しているのか?
しているのか?
§10 心身問題
§11 テスト
§12 予備日
2、講義の
講義の趣旨説明
では上野先生
上野先生が
存在論について
について講義
講義されたました
されたました。
・ 「哲学基礎 A」では
上野先生
が存在論
について
講義
されたました
。
「哲学基礎 B」では入江
では入江が
入江が認識論について
認識論について講義
について講義します
講義します。
します。
・ 認識論
認識論は
は、epistemology ないし theory of knowledge の訳です。
です。
これは私見
私見ですが
ですが、
哲学の
基本的な
問題は
これは
私見
ですが
、哲学
の最も基本的
な問題
は、おそらく
「世界がどのようになっているのか
世界がどのようになっているのか(
がどのようになっているのか(How does the world exist?
exist?)」
きることには、
どのような意味
意味があるのか
があるのか(
「我々が生きることには
、どのような
意味
があるのか
(What is the
meaning in which we live?)」
live?)」
という2
つの問
いに答
えることだろうと思
います。
という
2つの
問いに
答えることだろうと
思います
。
しかし、
これらの問
いに答
えるためには、
しかし
、これらの
問いに
答えるためには
、
「我々はどのようにして認識
はどのようにして認識するのか
認識するのか」
するのか」
という問
えることが不可欠
不可欠です
です。
この問
いに取
という
問に答えることが
不可欠
です
。この
問いに
取り組むのが、
むのが、認識論
です
・ 古代中世の
古代中世の哲学では
哲学では、
では、存在論が
存在論が中心でしたが
中心でしたが、
でしたが、近代になって
近代になって認識論
になって認識論の
認識論の重要
性が指摘され
指摘され、
され、認識論が
認識論が言わば第一哲学
わば第一哲学と
第一哲学と見なされるようになったとされ
なされるようになったとされ
ています。
もっとも、
プラトン(ph
(photo)
oto)の
対話編でもすでに
でもすでに認識論
認識論がかなり
ています
。もっとも
、プラトン
(ph
oto)
の対話編
でもすでに
認識論
がかなり
議論されています
議論されています。
されています。
・ そして、
そして、認識について
認識について意識
について意識の
意識の反省、
反省、内省、
内省、内観によ
内観によって
によって考察
って考察するという
考察するという方
するという方
限界から
から、
言語分析による
による方法
方法が
登場しました
しました。
現代哲学は
20世
法の限界
から
、言語分析
による
方法
が登場
しました
。現代哲学
は、20
世
紀初頭の
紀初頭の フレーゲ(photo)
フレーゲ(photo)による
(photo)による言語論的転回
による 言語論的転回によって
言語論的転回 によって始
によって始 まると考
まると考 えられ
ており、
その後
言語哲学が
第一哲学とみなされるようになりました
とみなされるようになりました。
ており
、その
後は言語哲学
が第一哲学
とみなされるようになりました
。
この講義
この講義のねらいは
講義のねらいは、
のねらいは、次の二つです。
つです。
・認識論における
認識論における最
における最も重要な
重要な現代的問題と
現代的問題と議論、
議論、そしてその歴史的背景
そしてその歴史的背景につ
歴史的背景につ
いての理解
理解を
学生が
ること、
いての
理解
を学生
が得ること
、
・講義を
講義を終わった後
わった後に学生がこの
学生がこの問題
がこの問題を
問題を自分で
自分で考えるようになって欲
えるようになって欲しいと
いうこと、
いうこと
、
§1 知にはどんなものがあるのか?
にはどんなものがあるのか?
1、「知」「認識
「認識」
認識」「知識
「知識」
知識」などの言葉
などの言葉の
言葉の差異について
差異について
認識(
cognition、
Erkenntnis)
知識(
knowledge、
Wissen)
認識
(cognition
、Erkenntnis
)は、知識
(knowledge
、Wissen
)と異なる。
なる。
ある文脈
ある文脈では
文脈では、
では、区別の
区別の必要が
必要が無いが、
いが、ある文脈
ある文脈では
文脈では区別
では区別すべきである
区別すべきである。
すべきである。「認識
「認識」
認識」
は、「獲得
「獲得された
獲得された知識
された知識」
知識」という意味
という意味で
意味で使用されることがあるが
使用されることがあるが、
されることがあるが、「知識
「知識を
知識を獲得す
獲得す
ること」
という意味
意味で
使用されることもある
されることもある。
また、
「彼
映画マニア
マニアで
ること
」という
意味
で使用
されることもある
。また
、
「
彼は、映画
マニア
で、映
画について非常
「彼
について非常に
非常に詳しい知識
しい知識を
知識を持っている」
っている」ということはいえても
ということはいえても、
「彼は映画
について非常
非常に
しい認識
認識をもっている
をもっている」
とは言
わない。
失敗したときに
したときに、
について
非常
に詳しい
認識
をもっている
」とは
言わない
。何か失敗
したときに
、
判断が
かった」
認識が
かった」
ということはあっても、
「私
「私の判断
が甘かった
」とか「私の認識
が甘かった
」ということはあっても
、
「
私
の知識が
知識が甘かった」
かった」ということはない。
ということはない。
認識」
には、
「認識
認識する
する作用
作用」
という意味
意味で
いられることがあるが、
「認識
」には
、
「
認識
する
作用
」という
意味
で用いられることがあるが
、しか
し「知識」
知識」や「知」には「
には「知る作用」
作用」という意味
という意味で
意味で用いられることはない。
いられることはない。こ
作用の
意味を
くと、
「認識
認識」
知識」
では、
「知
の作用
の意味
を除くと
、「
認識
」と「知識
」と「知」の中では
、「
知」 が最も 広
意味で
いられている。
い意味
で用いられている
。
認識論で
認識論で伝統的に
伝統的に扱われてきた「
われてきた「認識」
認識」ないし「
ないし「知識」
知識」は、以下に
以下に説明する
説明する
「命題
命題知
たるものである。
知」に当たるものである
。しかし、
しかし、知には、
には、それ以外
それ以外の
以外の種類のものもあ
種類のものもあ
る。
2、知の分類
「知」ないし「知識」と呼ばれているものを、次のように分類できるだろう。
(1)命題知
命題知 (know(know-that):
that) 「日本の通貨は円である」などの命題形式をもつ知
識
(2)技能知
技能知 (know(know-how)
how):自転車の乗り方を知っている(photo)。ネクタイの
結び方を知っている、など。この知はやり方を知っているという意
味であって、やり方を言葉で説明できるという意味ではない。
(3)再認
再認知
「ベジマイト」(photo)「芥子漬け」(photo)の味を
再認知 (know(know-what) :
知っている。
もし、彼女が、ベジマイトの味を味わったならば、それがベジマイ
トの味だと再認(recognition, recognize)できる。もし、彼女がナ
ナカマド(photo)を見れば、それがナナカマドだと再認できる。もし、
彼女が、彼の友達を見れば、それが彼の友達だと再認できる。
(以上の区別は、戸田山和久『知識の哲学』産業図書、第一章、を参考にして
いる。戸田山氏は、そこで次の体験知を第四のものとしてあげている。)
他にも知と呼べるものがあるだろうか。曖昧な事例を考えてみよう。
*体験知(
(例えば、山登りの楽しさを知っている)のよ
体験知(knowknow-whatwhat-itit-isis-like)
like)
うなものもあるだろうが、それらは(1)(2)(3)のいくつかを混合したも
のであると考えられる。戸田山氏は、これを(2)の一種だと述べている。私
には、これは(3)と殆ど同じではないかと思われたので、別立てしないこと
にした。「コウモリであるとはどのようなことか」(ネーゲル)
言葉の
意味の
「権利」という言葉の意味を知っているというのは、
*言葉
の意味
の知、例えば、
「権利とは、
・・・である」というような命題知
命題知を持っているということである
命題知
か、あるいは、
「権利」という言葉の使い方を知っている、という意味の技能知
技能知
を持っているということである(言葉の意味は用法である)。
*人物を
人物を知っている、
っている 例えばxさんを知っているというのは、xさんに会えば、
xさんだとわかる(人物を同定できる)という意味の再認知
再認知を持っているとい
再認知
うことであるか、あるいは、
「xさんは、どこに住んでいる」とか「xさんの専
門は・・・である」とか「xさんは独身だ」とかの命題知
命題知を持っているという
命題知
ことである。
*言葉を
言葉を話すのは技能知
すのは技能知である
技能知である。
である。技能知は、身体運動の技能に限らない。たと
えば、暗算をすることは、技能知である。さらにいえば、筆算をすることも技
能知であり、数を数えることも技能知である。そして、このように拡張するな
らば、文法に適った日本語を話したり、書いたり、読んだり、聞き取ったりす
ることもまた技能知である。
*聞き取った音
った音を、楽譜に
楽譜に書き込むことは技能知
むことは技能知だろう
技能知だろう。
だろう。しかし、それは例え
ば「これは、ラの音だ」という知を必要とする。その意味では、音を楽譜に書
き取るには、再認知
再認知も
再認知も必要だ
必要だ。
*「これは、
これは、ラの音だ」と分かるのは、
かるのは、再認知か
再認知か?
これは、
この音
あの鳥
「これは
、ラの音だ」「この
音は、あの
鳥の鳴き声と同じ音程だ
音程だ」「これは
「これは、
これは、
これらは、
再認知であろう
であろう。
これらは、
命題形式の
でもある。
私の傘だ」これらは
、再認知
であろう
。これらは
、命題形式
の知でもある
。
再認知というのは
というのは、
命題形式をとるのだろうか
をとるのだろうか?
問題「
「再認知
というのは
、常に命題形式
をとるのだろうか
?」
問題
そうすると、
そうすると、再認知は
再認知は命題知の
命題知の一種なのだろうか
一種なのだろうか?
なのだろうか?
再認知というものが
というものが成立
成立するのだろうか
するのだろうか?
立に再認知
というものが
成立
するのだろうか
?
それとも命題形式
それとも命題形式とは
命題形式とは独
とは独
■これら全
これら全てに共通
てに共通する
共通する性質
する性質は
性質は何か?
命題知には
命題知には、
には、真偽がある
真偽がある。
がある。
技能知にも
にも、
真偽がある
がある。
うまくいけば真
である。
技能知
にも
、真偽
がある
。うまくいけば
真である
。
再認知にも
にも、
真偽がある
がある。
再認に
成功すれば
すれば真
である。
再認知
にも
、真偽
がある
。再認
に成功
すれば
真である
。
注:ポランニー『
ポランニー『暗黙知の
暗黙知の次元』
次元』(佐藤敬三訳
佐藤敬三訳、
三訳、紀伊国屋書店、
紀伊国屋書店、1980 年)
Michael Polanyi “The Tacit Demension” Routlede & Kegan Paul, London,
1966.
潜在知覚」
「潜在知覚
」(subception)p.20
「暗黙知という行為においては、あるものへと注目する(attend to)ため、ほか
のあるものから注目する(attend from)と表現することにしよう。つまり、暗黙
的関係の第一項から第二項へと注目するのである。この関係の第一項が我々に
対してより近くにあり、第二項が遠くにあることは、さまざまなかたちで明ら
かにされるであろう。解剖学の言葉をもちいて、我々は第一項を近接的、第二
項を遠隔的と呼ぶことが出来るだろう。そこで、我々が語ることができない知
識を持つということには、それは近接的項目についての知識を意味している。」
(訳 p.24)
<ミニレポートの
ミニレポートの課題>
課題>
命題知、
技能知、
1、 命題知
、技能知
、再認知の
再認知の混合したものの
混合したものの例
したものの例、あるいはそれら3
あるいはそれら3つのど
れにも属
さないと思
われる知
げよ。
れにも
属さないと
思われる
知の例を挙げよ
。
2、 再認知は
再認知は常に命題形式をとるのかどうか
命題形式をとるのかどうか、
をとるのかどうか、考えをのべよ。
えをのべよ。
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