...

平成15年度科学研究費補助金(基盤研究(S))研究

by user

on
Category: Documents
11

views

Report

Comments

Transcript

平成15年度科学研究費補助金(基盤研究(S))研究
S中間−1
平成15年度科学研究費補助金(基盤研究(S)
)研究状況報告書
ふ
り
が
な
やすなが
①研究代表者
氏
名
③研
究
課
題
名
安永
ひさし
尚志
②所属研究機関
・部局・職
国文学研究資料館・研究情報
部・教授
和文 国際コラボレーションによる日本文学研究資料情報の組織化と発信
英文
④ 研究経費
15年度以降は内約額
金額単位:千円
The Organization and Circulation System for Japanese Literary Research
Information based on International Collaboration
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
21,700
18,100
18,100
21,500
21,700
総 合 計
101,100
⑤研究組織(研究代表者及び研究分担者)
氏
安永
原正
武井
堀川
鈴木
田渕
柴山
名
尚志
所属研究機関・部局・職
国文学研究資料館・研究情
報部・教授
一郎
同・研究情報部・助教授
協三
同・研究情報部・教授
貴司
同・研究情報部・助教授
淳
同・整理閲覧部・教授
句美子 同・文献資料部・教授
守
大阪市立大学大学院・創造
都市研究科・教授
現在の専門
情報工学、
情報文学
情報工学
国文学
国文学
国文学
国文学
情報工学
役 割 分 担(研究実施計画に対する分担事項)
総括
メタデータ・データベース、データ共有化
総合軸の推進、ディレクトリ構築
著者軸の推進、コンテンツ構築
概念軸の推進、コンテンツ構築
著書軸の推進、コンテンツ構築
コラボレーション、国際ネットワーク
⑥当初の研究目的(交付申請書に記載した研究目的を簡潔に記入してください。)
インターネットの普及により、海外においても日本語のデジタル化文献資料等を入手することは比較
的容易になってきているが、学術研究に足る資料あるいは情報については、質および量の面で大きな課
題が残されている。とくに、日本文学教育、研究のための日本語によるコンテンツの充実と発信が問題
である。
インターネットを活用した日本文学研究資料および情報のためのデジタル資料館システム(国文学研
究資料館)の構築が進んでいる。本研究はここに基礎を置き、海外の研究者を交えたコラボレーション
(電子的協調作業方式)による日本文学研究のためのコンテンツの充実、すなわちデジタル・アーカイ
ブズの共同構築とその流通促進を目的とする。本研究では、欧米に共同研究拠点を設け、コラボレーシ
ョン・システムを構築し、次の 3 課題を研究する。
1. 日本文学のための国際化コンテンツの整備
研究ディレクトリ、研究論文目録データベース、翻訳作品目録データベースの構築を行う。可能な限
り全文のデジタル化をはかる。
2. 日本文学研究資料情報アーカイブズの共同構築と利用
現在のデジタル資料館システム(国文学研究資料館)のコンテンツの種類、範囲、機能を拡張し、コ
ラボレーションによる双方向運用可能な国際共同利用型システムの具体化を目指した研究を行う。
3. 資源共有化システムの構築による情報の共有化
人文科学系研究機関等の日本文学に関わる資料および情報のメタデータ・データベースの共同構築を
はかる。研究機関間での国際標準に準拠したメタデータを設計するとともに、国際標準である検索プ
ロトコルによる相互接続を実現し、実証実験を進める。
S中間−2
⑦これまでの研究経過(研究の進捗状況について、必要に応じて図表等を用いながら、具体的に記入してください。)
本研究組織は 2 研究班から構成される。
さらにシステム研究班は 2 層、コンテン
総括(安永)
ツ研究班は 3 軸から構成される。研究分
担者、研究協力者(20 名、海外 3 名)は、
各層および各軸を分担する。システム研
システム研究班
コンテンツ研究班(武井)
究班はコラボレーション・システム、資
源共有化システムの開発研究にあたり、
コラボレーション層(柴山)
概念軸(鈴木)
コンテンツ研究班は文学研究課題の概念
に関わる情報(概念軸)、作家、研究者
共有化層(原)
著者軸(堀川)
等の人物に関わる情報(著者軸)、作品、
研究論文等に関わる情報(著書軸)の収
研究組織図
著書軸(田渕)
集と組織化をはかった。とくに、欧米の
研究者とのコラボレーションによる日本文学とその周辺のためのコンテンツの充実と流通促進をはかっ
た。3 課題の研究を進めるため、欧米に共同研究拠点を設けた。また、国文学研究資料館ホームページ
に専用のホームページ(http://www.nijl.ac.jp/~kiban-s/)を立ち上げ、収集整理した情報の公開を順次進め
た。
具体的な研究計画を各国と共同して固めることから始めた。共同研究の対象としてイギリス、フラン
ス、イタリア、アメリカとの枠組が整いつつある。イギリスでは、ロンドン大学、オックスフォード大
学を研究拠点とし、ケンブリッジ大学、リーズ大学、シェフィールド大学、大英図書館等の協力を得て
いる。フランスでは、研究拠点をコレジュドフランスに置き、パリ第 7 大学等の協力を得ている。イタ
リアでは、研究拠点をフィレンツェ大学、ヴェネチア大学に置き、ローマ大学、ナポリ東洋大学等の参
加を得ている。アメリカは規模が大きいため、次年度以降の重点対象としているが、現在までに
UCLA、コロンビア大学等の協力を得つつある。その他、インド、台湾、中国、韓国等との調整が進ん
でいる。
さらに、英国日本研究協会(BAJS:British Association for Japanese Studies)、伊日研究学会
(AISTUGIA:Associazione Italiana per gli Studi Giapponesi)、フランス日本研究学会(SFEJ:
Societe Française des Etudes Japonaises)等、各国の日本学関連学協会の支援を得て、研究者ディレ
クトリ等の組織化も進行中である。国際学会では、米国が主催するアジア学研究学会(AAS:The
Association for Asian Studies)、欧州日本研究学会(EAJS:European Association for Japanese
Studies)等の支援を得ている。
研究は定例研究会を中心に推進し(10 回)、課題に応じてミーティングを随時開催した。定例研究会
では研究連絡、調整を行っている。なお、研究推進は通常メーリングリストにより行っている。海外と
のコラボレーションのため、研究分担者が可能な限り海外に出張し、研究を推進している。さらに、関
連する様々な研究会やシンポジウム(国内、海外)に積極的に参加し、研究発表を行い、研究者、学協
会の評価を得ている。年度毎の研究成果報告書を作成および配布し、評価を得ている。
具体的な研究経過について、システム関連を(1)から(4)、コンテンツ関連を(5)から(9)にまとめる。
(1)サーバ等の基幹設備を導入し、さらにネットワーク上でのコラボレーションを実現するためのプロ
トタイプ・システムの設計を行った。これにより実証実験を進める環境を整えた。(2)システム設計に際
しては各国の研究拠点において要求をまとめ、仕様に反映させた。(3) 国文学研究資料館デジタル資料
館システムの各データベースの内容を Dublin Core に従ってメタデータベース化するとともに、国際標
準検索規約である Z39.50 を実装した資源共有化システムを試作した。このシステムでは、いわゆる渡り
検索が可能である。現在このシステムには、日本文学、史学に関する文献資料、諸本、研究論文目録、
全文データ、画像等のデータベースが統合されている。(4)国内人文系研究機関等の情報資源の共有化を
目指して研究会を組織し、現状の把握と分析を進め、資源共有化の方策を議論した。国内の関連研究
者、大学等研究機関(東京大学史料編纂所、国立歴史民俗博物館、国立民族学博物館等)、民間企業が
参集した。(5)デジタル資料館システムで運用中の日本古典文学本文データベースについて、研究者の利
用形態等について調査、分析を行った。その結果、日本古典文学作品の全文記述は国際標準である
SGML/XML に従うことが肝要であるとの結論を得た。(6)これにしたがって、約 100 作品について
DTD の定義と XML 化をはかり、これらは順次試験公開している。日本古典文学作品の XML 化は国際
的にも初めての研究成果といえる。(7)本研究の対象とする人文科学における学術資料、史料のための研
究会を(関連研究者、研究機関、企業等)開催し、諸要件をつめ、XML 化の方策をとりまとめた。(8)
国際コラボレーションにより、研究機関ディレクトリ、研究者ディレクトリ、研究論文目録、翻訳され
た日本文学作品目録等のデータを収集しデータベース化した。これらはホームページより公開してい
る。概して評判が高く、データ種類と量の充実が期待されている。(9)各国の研究者との調整により、網
羅的かつ高品質の学術研究情報を選び、収集法、デジタル化法を検討し、具体的な情報、データ収集を
スタートした。
S中間−3
⑧特記事項(これまでの研究において得られた、独創性・新規性を格段に発展させる結果あるいは可能性、新たな知見、学問的・学術的なインパ
クト等特記すべき事項があれば記入してください。)
各国において、日本文学研究がどのように進められてきたか、最近のあるいは今後の研究課題は何
か、研究活動の状況はどうか、どのような研究機関や研究者がいるのか等については、あまり知られ
ていない。最近ではインターネット等により関連する情報を得ることはかなり容易となってきている
が、内容は概して貧弱である。本研究は、各国の第一線の研究者とのコラボレーションにより、まず
これらの基礎的な情報の収集、整理、公開を目指している。その成果として、例えばイタリアにおい
ては研究者ディレクトリ、研究機関ディレクトリ、発表された研究論文目録、翻訳された日本文学作
品目録などが、専用ホームページから公開されるに至っている。その他の国においても順次データベ
ースの構築が進んでいる。このように網羅的な研究情報の組織化は国際的にも初めての事例である。
さらに、海外の研究者は、このような研究情報を切実に望んでいる。例えば、米国の日本文学研究者
にとってはイタリアの研究状況を把握することが実際に困難である。以下、要点を列挙する。
一方、海外における日本研究の高まりにより、日本語による良質かつ多様な日本情報が望まれるよ
うになってきた。とりわけ日本における研究動向は重要であり、各国が注視している。この観点か
ら、上記と同じにように日本国内の情報を組織化し提供する必要がある。
(1) 日本古典文学作品の全文データベース化に当たり、データ記述に国際標準であるXMLを適用し、そ
の可能性の実現を初めて明確化した。約100作品ものDTDの定義とXML化を実現し、ホームページか
ら公開しつつある。これにより、XMLによる日本古典文学作品のデータ記述法が確立した。同時に、
いくつかの解決しなければならない課題も明確になった。これは、国文学研究資料館デジタル資料館
システムにおける日本古典文学本文データベースの本研究における利用調査に基づいた要件の実現で
もある。
(2) 日本文学研究における様々な学術資料、情報は、国文学研究資料館デジタル資料館システムの中の
個別データベースとして組織化、提供されてきた。一方、各人文科学系研究機関で構築され、公開さ
れている各種の情報資源やデータベースも膨大なものとなりつつある。研究者が研究を進めるに当た
り、これらの研究資料、情報を縦横に利活用することは極めて重要な要件である。現在、研究資料、
情報を縦横に利活用しようとすると、各研究機関の個々の仕様、事情、制限などに従って、その都度
データベースを切り替えなければならない。この手続きは、一般に大変煩雑なものとなっている。と
りわけ、同一概念、件名などを手がかりに、関連するデータベース群を渡り歩くことは極めて困難な
状況にあり、ほとんど不可能といっても過言ではない。本研究の柱の1つである国際コラボレーション
のための資源共有化システムは、関連する情報資源を個々に切り替えて利用するのではなく、言わば
一度にシームレスに横断的に万遍なく検索し、利活用する仕組を構築し、実用化を図ることを目的と
する。これにより、研究者は自前のパソコンなどから、多くの研究機関のデータベースの所在や詳細
な仕様を知らなくても、研究内容に関連するあらゆる資料、データを簡単かつ網羅的に集約し、研究
を進めることが可能となる。このような関連する資料、情報の横断利用は、学際領域研究を進展さ
せ、さらに今までにない新たな知見を得ることを容易とすると期待される。技術的要件としては、国
際標準情報検索プロトコルであるZ39.50プロトコル、並びに事実上の国際標準であるDublin Coreメ
タデータを前提とする。これらを人文科学研究素材である多種多様な情報資源に適用し、具体的なデ
ータベースの相互運用をはかる。この方式によるデータベースの相互運用は、我が国においても初め
ての試みであり、かつ国際的にも新しい。とくに、両者の結合による研究例はなく、技術移転を含
め、多くの分野で研究成果が直ちに役立つと期待されている。
(3) 国際コラボレーションは、各国の大学等研究機関に所属する研究者を中心に進めている。ところで
各国の日本学学会の活動は活発であり、多くの研究者はこれらの学協会にも所属している。したがっ
て、これら学協会との連携は不可欠である。本研究では、前述の伊日研究学会、英国日本研究協会、
仏日本研究学会等の支援を得て、共同研究を進める体制を整えつつある。
(4) コラボレーション・システムの研究では、プロトタイプ・システムの作成が終了した。今年度以降
に具体的な研究課題に対して、適用する予定である。例えば、従来の研究テーマでは「研究論文目録
の作成」において、様々な図書、雑誌、あるいは学位論文等の選定と採取情報項目、データ記述の方
式、使用言語等の研究を、メーリングリストやホームページ、あるいは電子メールによる方法で行っ
ている。これに加えて、今後は新たに文学研究の研究課題を進める必要がある。
(5) 研究成果は、研究成果報告書(平成13年度、14年度)として印刷し、関係者に配布するとともに、
ホームページからも公開している。同時に、国内外の研究会、シンポジウムに積極的に参加し、研究
発表を通じて評価を得つつ、さらにコラボレーションを進める環境の構築を行っている。
S中間−4
⑨研究成果の発表状況(この研究費による成果の発表に限り、学術誌等に発表した論文(発表予定のものを記入することも可能。)の全著者
名、論文名、学協会誌名、巻(号)、最初と最後のページ、発表年(西暦)、及び国際会議、学会等における発表状況
について記入してください。)
[1] 安永尚志:日本文学研究資源情報のディジタルアーカイブの利用体制、日本学術会議情報学研究連
絡委員会学術文献情報専門委員会シンポジウム、2001
[2] 原正一郎、安永尚志:メタデータによるマルチメディアデータ統合の試み、情報処理学会研究報
告、2001-CH-51、vol.2001、No.67、 pp.47-54、2001
[3] 原正一郎、安永尚志: 国文学研究支援のためのデータベース統合の試み、人文科学とコンピュー
タシンポジウム論文集、vol.2001、No.18、pp.125-132、2001
[4] 原正一郎、安永尚志:文学研究のためのデータベースシステムの諸問題、日本語学、vol.20、
pp.48-60、2001
[5] 山西史子、安永尚志:データベースは研究に影響を与えるか―日本古典文学本文データベース利用
者調査―、情報知識学会第 10 回研究報告会講演論文集、pp.1-4、2002
[6] 安永尚志:日本文学研究情報組織化のための国際コラボレーション計画、情報知識学会第 10 回
研究報告会講演論文集、pp.57-60、2002
[7] 原正一郎、安永尚志:国文学研究支援のための SGML/XML データシステム―国文学データ共有の
ための標準化―情報知識学会論文誌、Vol.11、No.4、pp.17-34、2002
[8] 原正一郎:Z39.50 とメタデータによる研究機関間連携、情報処理、Vol.43、No.9、pp.968~974、2002
[9] 後藤 真、柴山守:正倉院文書復原過程の XML/XSLT による記述、情報知識学会誌、
Vol.11、No.4、pp.2-16、2002
[10] 山田奨治、柴山守:古文書を対象にした文字認識の研究、情報処理、Vol.43、No.9、pp.950955、2002
[11] 後藤 真、柴山守:正倉院文書のデータベース化と XML による復原過程研究、正倉院文書研究、
吉川弘文館、9 号、2003 (印刷中)
[12] 武井協三:The Onnagata in Kabuki:from Kamigata to Edo(歌舞伎の女形―上方から江戸へ―)、2002
年度科研報告書 国際コラボレーションによる日本文学研究資料情報の組織化と発信 pp.181-198、2003
[13] 堀川貴司:瀟湘八景―詩歌と絵画に見る日本化の様相―、臨川書店、pp.226、2002
[14] 堀川貴司:詩懐紙について、国文学研究資料館紀要、第 29 号、pp.37-52、2003
[15] 鈴木淳:『光琳画譜』考、浮世絵芸術、145 号、pp.3-22、2003
[16] 田渕句美子:鎌倉時代の歌壇と文芸、日本の時代史9モンゴルの襲来、吉川弘文館、
pp.151-189、2003
海外での研究発表
[1] H. Yasunaga : Progetto di Collaborazione Internatzionale del Kokubungaku Kenkyu Shiryoukan
( 国 文 学 研 究 資 料 館 の 国 際 コ ラ ボ レ ー シ ョ ン 計 画 ), AISTUGIA (Associazione Italiana per gli
Studi Giapponesi) Conference, XXV, pp.23-28, 2001 (2003.2 発行)
[2]
H. Yasunaga : A feasibility study on the International sharing and standardization of information
resources for Japanese literature research and education(日本文学教育研究資料情報の国際共有
と標準化), AIDLG (Associazione Italiana Didattica Lingua Giapponese), Ⅱ-2002, 2002(印刷中)
[3]
S. Hara, H. Yasunaga : Resource Sharing System for Humanity Researches, LREC Conference
(3rd International Conference on Language Resources and Evaluation), 3. LREC2002, pp.51-58,2002
[4] H. Yasunaga:International Collaboration Research for Japanese Literature, 2002 PNC Conference
(Pacific Neighborhood Consortium) Abstract, pp.18-23, 2002
[5] H. Yasunaga, S.Hara and K. Takei : A Request for Participation on the Project ICJS :International
Collaboration for Japanese literary Studies, BAJS (British Association for Japanese Studies)
Conference 2003, 2003
[6] H.Yasunaga, Bonaventura Ruperti and Ikuko Sagiyama : An interim reports on the project
ICJS: International Collaboration for Japanese literary Studies, AISTUGIA Conference, XXVII, 2003
(発表予定)
[7] Makoto Goto, Mamoru Shibayama: Description of “Shoso-in Monjo” Restoration Process using the
XML/XSLT, Proceedings of PNC Annual Conference and Joint Meetings 2002 (forthcoming)
【研究成果報告書】
[1] 安永尚志編著:平成 13 年度版研究成果報告書、248 頁、2002
[2] 安永尚志編著:平成 14 年度版研究成果報告書、382 頁、2003
【ホームページ】
[1] http://www.nijl.ac.jp/~kiban-s/
Fly UP