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化学工学II

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化学工学II
化学工学II
講義時間:水曜6限 場所 :旧化3
担当 :山村
1
分子拡散 (1)ポリマー拡散によるフィルム形成
両面粘着テープ
ポリマー微粒子
(~100nm)
図出典:紙塗工,室井宗一,高分子刊行会,pp.46,1992
http://www.nitto.co.jp/product/datasheet/double/035/index.html
2
分子拡散 (2) Drug Delivery System (DDS)
薬物を皮膚から投与
複雑な皮膚構造
血液流れ
利点 肝臓での代謝を回避
注射による痛みがない
目的の部位に薬物を効果的に与える
薬剤の皮膚への拡散
出典: 九工大東條研究室 www.bse.kyutech.ac.jp/~tojo/research/index.htm
プラスチック成形加工学会成形加工シンポジア2004要旨集A106
3
対流拡散
モル分率0.1のNH3を含む直径5mmの
気泡からガスを水へ吸収させ、 NH3モル
分率を0.001まで下げるのに必要な装置高さ
5.56 m
透析器に血液を0.2m3/s、透析液を0.4m3/sで
流す。有害成分濃度を7mol/m3から4mol/m3へ
低下させるのに必要な透析膜長さ
0.53 m
透析器
http://www.nikkiso.co.jp/next/next07.html
4
http://www.nininkai.com/gif/hdf.jpg
ミッション:
□ 質量平均速度とモル平均速度を質量分率とモル分率の関数として記述することができる
□ 質量流束とモル流束を固定座標系および質量(モル)平均速度基準で記述することができる
□ 濃度場のシェルバランスを取ることができる
□ フィルム中への等モル相互拡散の濃度分布を求めることができる
□ フィルム中への一方拡散の濃度分布を求めることができる
□ 均一反応を伴う拡散の濃度分布を求めることができる
□ 表面反応を伴う拡散の濃度分布を求めることができる
□ 円柱面上における拡散の濃度分布を求めることができる
□ 球面上における拡散の濃度分布を求めることができる
□ 物質移動係数の物理的意味を述べることができる
□ 等モル相互拡散および一方拡散の物質移動係数を記述することができる
□ 異相界面を横切る質量流束を記述することができる
□ 総括物質移動係数を用いて質量流束を記述することができる
□ ガス吸収装置内の物質収支を取ることができる
□ 設計条件を満たすガス吸収装置の高さを求めることができる
□ 吸着装置内の物質収支を取ることができる
□ 設計条件を満たす吸着装置の高さを求めることができる
□ 膜分離装置内の物質収支を取ることができる
□ 設計条件を満たす膜分離装置の長さを求めることができる
□ 乾燥装置内の物質収支を取ることができる
5
教科書
参考書
橋本健治・荻野文丸編:現代化学工学(産業図書)
•水科篤郎・桐栄良三:化学工学概論(産業図書)
•大矢晴彦・諸岡成治:移動速度論
•Bird R.B., Stewart, W. E., Lightfoot, E.N.:
TRANSPORT PHENOMENA (Wiley)
•水科篤郎・荻野文丸:輸送現象(産業図書)
•平岡正勝:移動現象論(朝倉書店)
•甲藤好郎、佐藤俊、西川兼康、水科篤郎、森康夫:
伝熱学特論(養賢堂)
•日本機械学会:伝熱工学資料
•Cussler, E. L.:Diffusion (Cambridge)
•ウェブラーニングプラザhttp://weblearningplaza.jst.go.jp
6
単位認定基準:
[試験]
中間試験と期末試験の結果から理解度を判断し評価
試験は筆記式で、式の導出・設計計算が主体
単位に誤りのある回答には部分点を与えない
[講義]
講義中にクイズを与えることがある。回答の正否は単位認定基準に含まない
[レポート]
レポート課題の結果は最大20%を限度に成績に反映される
納期に遅れたレポートは採点対象から外される
7
講義資料公開のお知らせ
http://www.che.kyutech.ac.jp/chem22/
(注) pdfファイルです 8
お願い
携帯電話
途中入室
講義中の食事
9
単成分の原子運動 ーアルゴンの例ー
Ar原子
(16ヶのAr
軌跡を計算)
10K
50K
熱ゆらぎ
液体へ遷移
70K
90K
図出典:原子・分子モデルを用いる数値シミュレーション,日本機械学会,コロナ社,1996
10
分子動力学シミュレーション:拡散を直接“見る”
CO2-Propane系
http://www.cheme.kyoto-u.ac.jp/6koza/taki/researchjpn.htm
分子の移動速度をどう表現すればよいか?
11
モル流束(1):定義
最も単純な2成分系を考える。
y
x
平均速度v
固定座標系における成分Aの
モル流束(molar flux)の定義
NA=CA vA
成分B
速度(vBx, vBy)
x方向では NAx=CA vAx
y方向では NAy=CA vAy
成分A
速度(vAx, vAy)
単位チェック
12
モル流束(2):モル平均速度
多成分系に含まれる成分は一般に異なる速度を持つ
簡単のため2次元平面上での2成分系を考えよう
固定座標系
x
y
モル平均速度vの定義
v=
CA vA+ CBvB
平均速度v
C A + CB
x方向では
成分B
速度(vBx, vBy)
vx= CA vAx+ CBvBx
C A + CB
y方向では
成分A
vy= CA vAy+ CBvBy
速度(vAx, vAy)
C A + CB
13
モル流束(3):モル平均速度
モル平均速度基準座標系での
モル流束(molar flux)の定義
JA=CA (vA – v)
x方向では JAx=CA (vAx – v)
y方向では JAy=CA (vAy – v)
v=0なら固定座標系でのモル流束に一致
JA= NA=CA vA
14
モル流束(4):単原子分子Quiz
Q1. 大気圧・温度T=300 Kの窒素の分子速度はいくらか
A. ~20m/s
B.~200m/s
C.~2000m/s
Q2.大気圧・温度T=300 Kの窒素の固定座標系での
モル流束はいくらか。ただしモル濃度C=P/(RT)
(理想気体を仮定)
A. ~1mol/(cm2·s)
B.~ 10mol/(cm2·s)
C.~ 100mol/(cm2·s)
15
単成分ガスの分子運動(1)
気体分子運動論より(詳細は他の成書を見よ)
分子平均速度
v Ax
温度T=300 Kの窒素の場合
1分子の質量m=
2kT
=
πm
28g/mol
6.02×1023/mol
=4.65×10-26 kg
Boltzmann定数k=1.38×10-23 J/K なので
v Ax
2(1.38 × 10 −23 )(300)
=
= 238m / s
− 26
(3.14)(4.65 × 10 )
238 m/s
16
単成分ガスの分子運動(2)
P
1.013 × 105
C=
=
= 40.6 mol/m3
RT (8.314)(300)
よって固定座標基準のモル流束N Aは定義から
N A ≡ C Av Ax
= (40.6)(238)
= 9.66 × 103 mol /( m 2 ⋅ s )
= 0.966mol /(cm 2 ⋅ s )
1mol
1cm
1cm
17
モル流束の和
簡単のため2成分系を考える。モル流束の定義から
JA=CA (vA – v), JB=CB (vB – v)
流束の和をとると
JA+ JB =CA (vA – v)+CB (vB – v)
= CA vA +CB vB - (CA + CB) v
(CA vA+ CBvB)
=CA vA +CB vB - (CA + CB)
(CA + CB)
=0
(モル平均速度の定義から)
従って、平均速度基準のモル流束の和は0に等しい
同様に質量流束の和=0である
(さらに3成分以上の系についても同様)
18
モル濃度Ciと質量濃度ρi
簡単のため成分A,Bからなる2成分溶液を考える
各成分のモル数は
成分A:nA /N[mol]、成分B:nB /N[mol]
ただしN [mol-1]はアボガドロ数
従って成分Aのモル濃度CAは
CA= (nA / N) /V [mol/m3]
同様に成分Bの質量濃度CBは
CB= (nB / N ) /V [mol/m3]
体積V
成分A
成分B
また成分Aの質量濃度ρAは
ρA= (MAnA / N) /V [kg/m3]
分子量MA[kg/mol]、個数nA
分子量MB [kg/mol]、個数nB同様に成分Bの質量濃度ρBは
ρB= (MBnB / N ) /V [kg/m3]
19
モル分率xi
成分iのモル分率x iを次式で定義する
x i = C i / Ct [-]
成分A、Bのモル分率はそれぞれ
x A = C A / Ct [-]
x B = C B / Ct [-]
一方、2成分のモル濃度の和は全濃度
Ct = CA + CB
従って全成分のモル分率の和は1である
x A + x B =1
20
モル平均速度:モル分率を用いた表記
モル平均速度は
vx= CA vAx+ CBvBx
C A + CB
一方モル分率x i は定義から
x i = C i / Ct
従ってモル平均速度はx i を
用いて次のように書ける
vx= xA vAx+ xBvBx
vy= xA vAy+ xBvBy
21
質量分率ωi
成分iの質量分率ω iを次式で定義する
ω i = ρ i / ρt [-]
成分A、Bの質量分率はそれぞれ
ω A = ρ A / ρt [-]
ω B = ρ B / ρt [-]
一方、各成分の質量濃度の和は全濃度 ρt= ρA + ρB
従って全成分の質量分率の和は1である
ω A + ω B =1
22
質量分率とモル分率の変換
成分iの質量濃度ρ Iとモル濃度C I との関係は
ρ A = CA MA,
ρ B = CB MB
(単位チェック)
従って質量分率ω Iをモル分率x Iで表現すれば
ω A = ρ A / (ρ A +ρ B )
= CA MA/ (CA MA + CB MB )
= xA MA/ (xA MA + xB MB )
逆にモル分率x Iは
xA = (ωA /MA)/ (ωA /MA + ωB /MB)
23
Fickの法則(1) -モル平均速度基準座標- モル平均速度基準座標における2成分系を考える。
成分Aのz方向のモル流束JAは一般に
J A = − DAB
dp
d ln T
dC A
− DT
− Dp
−L
dz
dz
dz
濃度勾配
圧力勾配
温度勾配
Soret(ソレー)効果
多くの混合系では第2項以降は無視小
J A ≅ − DAB
dC A
dz
(Fickの法則)
24
Fickの法則(2) -モル平均速度基準座標- モル平均速度基準座標における2成分系を考える
成分Aのz方向の モル流束JAは成分Aの濃度勾配に比例する
と仮定 すれば(Fickの法則)、モル流束は
DAB>0
dC A CA
J A = − DAB
JA
dz
(相互)拡散係数
z
単位チェック
JA [mol/(m2s)]、DAB [m2/s]、 CA [mol/m3]、z[m]だから
[m2/s] [mol/m3]
=[mol/(m2s)]
[m]
でありモル流束の
単位と一致 25
様々な物質の相互拡散係数
系 拡散係数[m2/s]
(常温)
-5
気相 H2O-air 2.6×10 1.6×10-5 (3年実験)
N2-CH3OH
液相 水-CH3OH 1.3×10-9
高分子-溶剤 ~10-9 (希薄高分子溶液)
糸まり領域
~10-14 (濃厚高分子溶液)
固相 アルミニウム-銅 ~10-34
絡み合い領域
26
Fickの法則(3)-運動量輸送・熱伝導とのアナロジー- 運動量輸送
dv x
τ zx = − µ
dz
粘度×速度勾配
熱伝導
拡散
dT
q = −k
dz
熱伝導度×温度勾配
J A = − DAB
dC A
dz
Fick’s Law
拡散係数×濃度勾配
3つの輸送操作が同じ数学的構造をもつことがわかる
27
Fickの法則(4)Quiz
減圧膜蒸留法:微量な有機成分が溶解した水溶液を、高分子膜の片側
に流し、もう一方を減圧すると、有機成分のみが膜を透過し、純水が得られる
有機成分
水
透過膜
モル流束JA
Q. 透過モル流束を3倍に増加
させる方法を示せ
1.透過膜厚みを3倍へ
2.透過膜厚みを1/3倍へ
3.膜両側の圧力差を3倍へ
28
出典:http://www.petrosepmembrane.com/mtech/w_is_vmd.htm
ミッション:
□ 質量平均速度とモル平均速度を質量分率とモル分率の関数として記述することができる
□ 質量流束とモル流束を固定座標系および質量(モル)平均速度基準で記述することができる
□ 濃度場のシェルバランスを取ることができる
□ フィルム中への等モル相互拡散の濃度分布を求めることができる
□ フィルム中への一方拡散の濃度分布を求めることができる
□ 均一反応を伴う拡散の濃度分布を求めることができる
□ 表面反応を伴う拡散の濃度分布を求めることができる
□ 円柱面上における拡散の濃度分布を求めることができる
□ 球面上における拡散の濃度分布を求めることができる
□ 物質移動係数の物理的意味を述べることができる
□ 等モル相互拡散および一方拡散の物質移動係数を記述することができる
□ 異相界面を横切る質量流束を記述することができる
□ 総括物質移動係数を用いて質量流束を記述することができる
□ ガス吸収装置内の物質収支を取ることができる
□ 設計条件を満たすガス吸収装置の高さを求めることができる
□ 吸着装置内の物質収支を取ることができる
□ 設計条件を満たす吸着装置の高さを求めることができる
□ 膜分離装置内の物質収支を取ることができる
□ 設計条件を満たす膜分離装置の長さを求めることができる
□ 乾燥装置内の物質収支を取ることができる
29
質量流束とモル流束-report1-
氏名
[問1] 成分A,Bからなる2成分系を考える。 各成分のモル濃度をCA, CB、速度をvA, vB 、モル分率をxA, xBとすれば、
固定座標系におけるモル流束はNA(=CA vA)、モル平均速度vに対する座標系でのモル流束はJA=CA (vA – v)であ
が成り立つことを示せ。ただしモル平均速度v=xA vA+
る。この2つのモル流束の間に JA= NA - xA (NA+ NB)
xBvBである。
J A = − DAB dC A / dz
[問2]フィックの法則 が成り立つと仮定する。成分Aのモル分率が十分に小さければ(x
A<<1)次式
が成立することを示せ。
N A = − DAB
dC A
dz
30
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