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第 1 回健康寿命日本一戦略会議(H25.7.2)議事録

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第 1 回健康寿命日本一戦略会議(H25.7.2)議事録
第 1 回健康寿命日本一戦略会議(H25.7.2)議事録
●辻座長
私はたまたま厚労省におりましたときに、健康日本 21 の仕事に携わらせていただい
たり、特定健診保健指導というか、生活習慣病予防の仕事もさせていただいたこともあ
って、ご指名いただいたと思います。
誠に僭越でございますけどよろしくお願いいたします。
ではこれから、議事に入りますが、この議題にございますように、まず最初に、黒岩
知事より、本戦略会議の会議趣旨等を交えてご説明いただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
●知事
本日は大変お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。
そもそもこの健康寿命日本一戦略会議で何をしたのかという私の思いを簡単にご説明
させていただきたいと思います。
私もいのち輝くマグネット神奈川を目指すということで2年数ヶ月経ちました。
今年のはじめ、いのち全開宣言ということを掲げまして、健康寿命日本一を目指そう
という大きな目標を掲げました。
その背景でありますけれども、神奈川県の人口の動態では 1970 年、ご覧のように見
事な具合のピラミッドの形でありました。
それが今から 40 年後、2050 年にはまさに逆ピラミッド、なんと一番多いところが 85
歳以上ということで、超高齢化があっという間に進んでいく流れであります。
この図を見ていただいて一つわかることは、これまでのシステムでは絶対に通用しな
いということであります。
そのためには、我々神奈川県としては二つのアプローチで臨んでいこうと思っていま
す。
一つは、最先端の医療、先端技術を追求してまいります。そのために我々は神奈川県
内に二つの特区を認定していただいております。
川崎、横浜地区を中心としました、ライフイノベーション国際戦略総合特区及び県央
地域ロボット産業特区を連動させることによって、まさにその最先端の医療、先端技術
をどんどん追求したいという中で、そこにさらに、情報革命というものも起こしたいと
思っています。
すでに、その特区とは別にしまして、マイカルテという事業を始めております。
マイカルテ、まずはそのお薬手帳の電子化という最も低いハードルのところから入っ
ておりまして、これが進んでいくことによって、将来的には、一人一人が自分のカルテ
を電子情報として持ち歩くというところまで持っていきたい。
さらにその先には、個人情報と切り離した形で、これを企業のビッグデータとして扱
って、その中で様々な分析を行うことによって、個別化医療というものを切り出してい
きたいと、いうふうに考えているところであります。
もう一つは未病を治すという発想であります。
未病を治すということはいわゆる漢方の考え方ですけども、この未病と考え方はまだ
一般的に馴染んでない部分もありますけれども、あえてこの考え方を積極的に売ってい
きたいと思っています。
ライフスタイルの見直しというふうな日常生活を現場から改善していくというアプロ
ーチと最先端の医療、先端技術の追求とともに、この未病を治すというライフスタイル
の見直しというアプローチの二つを融合させることにより、健康寿命日本一を目指し、
病気にならなくしていく。そのプロセスそのものが、経済のエンジンを回すという、新
たな市場産業の創出につながっていくのだろうとの考え方であります。
実は、先日、アメリカに行って参りました。
ニューヨーク、ボストン、ワシントンDC、そして我々はこの取り組んでいる神奈川
の超高齢社会に向かって乗り越えていこうとするモデルについて、アピールをして参り
ました。
あなたは健康ですかと問いかけると聴衆の多くはうなずきました。
あなたは完全に健康ですかと聞いたところ、観衆は笑っていました。
病気と健康というのはこのようなふうに捉えていませんか。
病気か、あるいは健康かということであります。
我々はとかく、医療を論ずるときには、いつの間にかこういう発想をしているのでは
ないかと、いうふうなことを常々感じておりました。
実はそうではなくて、この病気と健康というのは、しっかりとこの線が引かれている
わけでなく、だんだん健康からからグラデーションによって病気になっていくというこ
とではないでしょうか。
このグラデーションの部分を未病といいます。
未病のところからこのなるべくグラデーションの薄いほうに向かって改善していくと
いうことを未病を治していくといいます。
病気を治すというのを西洋医学とするならば、未病を治す、すなわち未病のところか
ら健康へ持っていこうとする、それが東洋医学、漢方の考え方です。
そのために有効なのは、医食農同源とかエクササイズ等々体を動かすというような日
常の生活そのもののあり方によって健康に戻していくということであります。
未病を治すこと、最先端の医療の融合に関し、未病という考え方について、現段階で
は、そのエビデンスについて議論があるところです。
しかし、高度な情報革命によりこの未病についてもエビデンスが解明されてくること
を見越しながら、この二つの統合を目指していくということです。
こういうことを総合的に進めることによって、健康寿命日本一、みんながいのち輝く
ようなこの超高齢社会を作っていくということができるならば、これこそがまさに神奈
川モデルとして世界に発信できるモデルになり得るだろうというふうな確信を持ってア
メリカから戻ってきた次第でありました。
そして皆さまにお願いしたいことは、そのような思いの中で、具体的に何をすればい
いのか、具体策について、いろいろなお知恵を、いろいろな立場の中からいただきたい
と思っています。
ということが私からのまずプレゼンテーションということで思いを述べさせていただ
きました。ありがとうございました。
●内田賢一委員
理学療法士の立場で、参加をさせていただいております。
専門は、呼吸器疾患に対する理学療法リハビリテーションです。
生活習慣の改善ということで、減塩なりそれから糖尿病というものが周知されて、い
ろいろな取り組みが行われておりますけれども、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の取り扱い
やその方策というものがあまり見えてきていないということを日頃感じております。
10 年近く前のデータがまだ使われておりますけれども、国内に約 530 万人 COPD の患
者さんがいると言われている中で、日本全国の人口分布から考えますと、神奈川県内に
はおそらく 30 万から 40 万人の病院を受診をしていない COPD の患者さんがいらっしゃ
るだろうと思います。
それをどのようにピックアップすればいいのか方策が見えてきていないこの現状の中
ですが、例えば横浜市が行うウオーキング等様々な健康関連のプログラムをいろいろな
自治体で行っています。その中で、COPD の一番最初のスクリーニングでありますスパイ
ロメトリ(呼吸器の機能等、空気の通り道が狭い、広がっているなど、肺活量が少ない
というものは 1∼2分で計測できるもの)を行うことで、健康に興味がある、最近息切
れが出てそれはたばこの吸い過ぎかなとか、年を重ねたのかなという方が、隠れている
疾患を見つけ、早いうちから病院を受診し、薬でコントロールする。薬を使っていも本
人が健康と感じることができるよう、健康寿命という観点から精力的に進めていけるの
ではないかなと考えております。
実際、以前、10 年前ぐらいに COPD の診断がついたばかりの方々に対する早期のリハ
ビリテーションを研究課題に行ったことがあるのですが、60 代の体力としては、健常成
人の体力と COPD の診断がついた直後の体力とほとんど変わりがありませんでした。
診断時点の患者に運動介入を行うこと、初期の薬の投与を 3 ヶ月継続し、薬が不要に
なった患者さんもいました。
理学療法士の立場からでは、埋もれている運動困難、呼吸器疾患の方をピックアップ
して、日常生活の息苦しさの改善にぜひつなげたい。
厚生労働省は 10 年間かけて、現在の COPD の認知率、24%を 80%に引き上げたいと考
えています。
神奈川において是非情報発信していけるような方策を考えていきたい。
●内田健夫委員
もう近い将来(超高齢化により医療など社会システムが)危機的な状況になるという
のは医療にかかっている人、或いはこういう社会保障や健康政策にかかわる方の共通の
認識ではないかと思いますが、現場ではなかなかそういう認識が共有化されていないし、
動きとして見えてこないというところがあると思います。
これから幾ら頑張ってもなかなか間に合わないというところが実感でして、私がちょ
うど昭和 23 年のベビーブームの真最中に生まれていますが、この世代、本当に悲惨な
将来を待っているというふうに思っていますが、自分の死に方が見えないとかですね、
自分が将来どうなってくるだろうということが全く見えない世代であると、いうように
思っています。
共通理解が現場までなかなか届かないというところと、そうであるからにはますます
住民の方にはですね、そういう認識は伝わっていないし、危機的な意識もないだろうと
いうように思います。
医療の現場、医師の立場から言いましても、現場では患者さんが来るのを待っている
というか、これから高齢社会になれば患者が増えてくるというように、ごくごく安易な
認識であるし、日々診療に追われていることでそれが完結していくというように考えて
いらっしゃる方が多分多いと思うのですが、病院に通えない患者さんがすごく増えてく
るという中で、地域でこの対策をどうして行くか、そして(高齢化率が)、30%、40%
を超えていく高齢化の社会の中で、どういう医療を提供し、介護を提供し、或いはその
社会生活、社会参加を提供していくかということが重要な課題になってくると思ってい
ます。
最終的には一人一人個別化というところに繋がっていかなくてはいけないし、またテ
ーラーメイドの事業も含めて個別化というところになっていくのですけれども、その提
供体制が非常に遅れているということです。
ですから今日、医師会の方がお見えになっていないというのは非常に残念です。
医師会こそがこういう共通認識を持って一緒に行政のパートナーとして、また現場を
代表するカウンターパートナーとしてこの問題に関わっていかなくていけないというこ
とを強く医師会の先生方に訴えていかなければいけない、というように思っています。
ちょうど今、私は(厚生労働省の)地域医療再生基金の有識者会議のメンバーをやっ
ておりまして、今日、明日と 47 都道府県からヒアリングするということで始まってい
ます。
その柱は、人材確保、それから在宅医療、そして災害対策というこの 3 本の柱ですが、
その中の在宅医療をざっと目を通しますと、ほとんどのところが都道府県から市町村へ、
或いは医師会への丸投げの構図になっていまして、どういう取り組みを、どの時点まで
にどれだけ達成するかという具体的な目標の記述がほとんどなく、これは非常に大きな
問題だと思います。
神奈川を先頭にして、そういうところで社会のモデル事業として、ぜひこの会議を通
じて立ち上げていきたいなというように思っています。
●大道委員
実は病院の時代が終わったとよく言われますが、現在、医療の現場の中で病院が健康
寿命を延ばすためにできることはせいぜいこの程度ですと受けとめていただいた方がい
いのではないかとすら思うわけです。
是非今後、健康寿命を延ばすというより、今後も地域社会を支えていく上での県とし
ての基本的なあり方をこの会議で是非お取りまとめいただきたいと思います。
そういうことで改めて医療現場、病院で取り組んで健康寿命の延伸に多少とも役立っ
ているようなところは何かということで拾い挙げると以下のようになりました。
病院ですから、私の病院は中華街、元町を背負って真向かいは寿町という特異な病院
です。そういう中で 60 数年やってきた中で、いい意味でも悪い意味でも地域のニーズ
を拾い上げて、生き延びてきているところがあります。
そういう中で今日の課題に関連するものの一つは健診事業です。
2 次予防とはいいながら、疾病の早期発見、早期治療といった言い方がされて長いで
すけども、もともと政管健保の社会保険庁の病院であったということもありまして、健
診事業については事業規模としても小さくない。現在、2 万人弱の旧政管健保の適用の
事業者からの受診者を受けて健診活動をやっています。
従来は医療の結びつき等が当然のことながら、所見がある、或いは疑いがあれば、医
療に結び付けましょうという発想が主眼点でした。しかし今後は、これ以上悪くならな
いようにするため、あるいは生活習慣をどういうふうに直していくかと。しかし現場か
ら見ますと、なかなかそう思うようにいかない。
特定健診はともかく、特定保健指導になりますと、なかなかこういうふうな性格の病
院という事業の枠組みの中で健診事業を行うことの難しさは痛切に感じているところで
あります。健康診断事業というものが、健康寿命の延伸にどういうふうに活用されるべ
きかは、一般論的に受けとめられているのですが、現場的に言うと、なかなか難しいで
す。
2番目、これは私どもの病院の方もそれなりの取り組みということですが、CKDセ
ンターという、組織をかねてから立ち上げておりまして、透析患者は全国規模では 30
万人を超えている状況でありますが、今後ますます増加するとされております。
医療費の問題はまずはわかりやすいので、取り上げられますが、しかしご本人の QOL
ないしは、健康寿命という観点から見ると、なんとも言えない状況が永遠と続くわけで
すね。そのため、透析医療に依存しないような形での医療、保険のあり方にも取り組む
べきということで、慢性腎臓病センターということで、かなりの腎機能を保持する、改
善するということでの取り組みを進めているところです。
もうすでに全国各地でこの種の取り組みは行われておりますが、この事例が最初にや
り始めた病院だということで、いまだに見学をされる方がそこそこある事業です。
3 番目はこれもどちらの病院も行っていることですが、糖尿病教室等を開いて地域向
けの啓発活動を進めようということです。
生活習慣病に病院等がどう対応できるかというと、冒頭申し上げましたように教育と
称して、食事療法の具体的な手順、段取り、或いは、知識、それを入院という形で、ご
本人または家族にしっかり受け止めてもらうということです。
4 番目は、これはもう健康寿命というべきか、すでに要介護の状況または結果的にこ
れのために医療が必要になったような患者様を受け入れるというのが今の病院の主たる
役割です。
そういう中で、冒頭の知事の説明における人口ピラミッドの形を見るまでもなく、今
病院というのは、20 年、30 年前と基本的に患者構造も違いますし、診療機能も違うん
ですね、何より患者の病態も違います。
単純な疾病構造はまれです。若い方が交通事故にあって、怪我して運ばれたというは
わかりやすいですけれども、実際は 80、90 歳で、日常生活の中で転倒した、それで動
けなくなった後に日常生活できなくなった、まずは医療だということでお見えになる患
者さんがその代表である。
病院の果たす役割は、急性期医療とは言いながら、複合的でかつそれぞれが重症化し
て、入院するときは体調がおかしいということで、歩いて入院したが、帰るときには歩
けなくなって立てなくなり、車椅子で帰る。病気としてはしっかり対処しました。しか
し生活能力(IADL)そのものが回復できない。
これが現代医療、病院というものの一つの形である。
病院としては車椅子で家で生活できるようにするためにどうしたらいいでしょうか。
病院は関係ないですといえるかというと、そうは言えないでしょう。
こういうことが一つの流れですね。病院の時代は終わったというのはある意味で説得
力のあるテーゼですけれども。
これからの医療の基本的なありようの中で、一つの鮮明な切り口が健康寿命の延伸だ
と思いますが、具体的なことがこの会議において、個人的にも方向性をしっかりと見さ
せていただきたいと思っているところです。
一医師の立場では若干のご提案とかその他いくつか材料を持ち合わせないわけであり
ますが、例えば、キーワードだけですけれども、健康な、あるいは元気高齢者をより長
く元気でいただくための一般的にアクティビティセンターみたいな言い方が多いですけ
れども、元気高齢者を何とか地域の中で場を共有する、ある種の共同体みたいなものを
構築するような仕組みについて自治体が関与していただくと大変いいけれども、税金で
動かすわけにいかない場合は事業者を組織するコンソーシアムを作ろうという動きが全
国で始まっているところだが、神奈川県で検討するのか。その他、シニアサイドの方々
を今後どうするか、まちづくりとかですね住宅関連とか、そういうところに関し立ち戻
らざるを得ないと思います。
2025 年問題がよく言われておりますけど、2040 年、更に 2060 年まで関係者は目を向
けざるを得ない場面があり、そういう時の住宅問題、あたらしい地域づくり、街づくり
まで手をかけざるを得ない。それが行政、特に県の役割ではないかというのが思いでご
ざいます。
●座長
私は行政システム論の観点からどう見たらいいのか、この未病という概念に特に焦点
を合わせて資料を用意しました。
これは厚労省の生活習慣病予防の施策を進めたときの基本的な構造なのですが、病気
が重症化し、それで生活習慣病で血管がダメージを受け、それで要介護になるというこ
とから、生活習慣病予防というのは究極の介護予防となります。
更に病気になって見つけて薬を投与する手前に境界領域という概念を用意しました。
病気ではないけれどもこれは危ないですよという概念です。
これは知事のお示しになった未病とよく似ています。
戦略的には、これをハイリスクアプローチと言っていますけども、境界領域の方も対
象とした特定健診、特定保健指導を実施したのですが、実はもう一つ非常に大きなもの
として、個人の生活習慣の変化だけでなく地域そのものを丸ごと変えていくというポピ
ュレーション(健康づくりのための環境整備)アプローチがあります。
基本的な介入方法は、一言で言うと運動とそれから適正な食事です。
薬は症状を抑えられますけれども、代謝が悪くなるという構造そのものは治せないの
で、1 に運動、2に食事というのは最高の薬です。
新概念、食の加齢症候群の目指すものですが、高齢者の虚弱です。心身の自立の継続
のため、虚弱は最近国際的にも、老年学会等でも重要視されておりまして、私は東大で
食の加齢症候群のという概念の開発をしております。
一言で言えば、サルコペニアといいますが、だんだん筋力が減っていくのですね、筋
肉が減っていく兆候を早く見つけて、その段階から食べるということについて介入する、
このようなことの介入基準、いわば発見をするため、2千のサンプルデータを今蓄積し
ています。食による介入が重要です。
この未病への対応、これについては食の内容をしっかりする、正しく食べる。食べる
力を確保する。
もう一つが「動く」ですね、身体活動、筋肉を動かす。それからこの二つが自然に行
われるためには社会慣行、参加活動を増すと、今の「健康日本 21」はこういう構造にな
っております。
介入の方法としてはですね、一つは社会システムを開発するということですけれども、
最近は街の構造や、出歩きたくなる街ですね、社会参加をどんどん進めていく街という
のが最近の政策の非常に大きな肝です。
大都市と地方都市を比べると地方都市の方が糖尿病が少ないのですね。
街の構造が車を乗る必要になっているからです。
出歩き易い町の構造ということと、それから食、身体活動、社会参加について、様々
なプレイヤーがいい食にしようね。動こうね、参加しようねという運動を繰り広げるこ
とが重要で、市町村と企業ですね、これは大きなプレーヤーになっていくと思います。
市町村では NPO とか民生委員とか様々な民間組織との連携が考えられます。
もう一つは、この食とか身体活動などを楽しんで行える、よい食を進めるですね、最
近は健康によい弁当の表示を厚労省が検討していますが、そういうことを含めて、企業
による良質な食とか運動のカウンセリングとかですね、こういうものをもっと開発して
いき、この社会システム中に組み込んでいくことです。
健康寿命日本一を推進するために何をすればよいかというかという知事のご下問もな
のですが、ハイリスクアプローチの手前の境界領域に対するシステムアプローチをどう
するかということで、基本的には目標(食・身体活動・社会参加)を設定してPDCA
で動かす、どのあたりに焦点をあててこの未病という概念に特に注目した場合に、運動
論を展開するか、その辺について参考までに少し頭の整理をさせていただきました。
●中﨑委員
大磯町長です。今私は行政におりますが、前職は少し、医者をしておりました。
今日ここにお招きいただいたのはそういう意味もあったかと思うのと、3 万 3000 人の
町で社会実験がやりやすい規模なのだというように考えました。
大磯町は 3 万 3000 人で狭い範囲に24の地区があり、それぞれの地区に公民館、集
会を持っています。そこで保健師が参加する健康サロンを 2 年前から、スタートいたし
ました。
2 年間で 330 回行いました。保健師 2 人、栄養師1人、職員1人、都合 3 人か 4 人。
延べ 4600 人がこういう集会に集まってまいりました。そして、いろいろな質問が 750
回出まして、それにはきちっと答えています。
また、その後に、身体機能の低下予防など若い世代も入ってくれるような集会を作っ
ていくということになります。
財政と健康、この二つを同時ねらいで私は始めました。
もちろん職員には非常に強い負担をかけてしまいました。
今、彼女、彼らは頑張ってやってくれています。
しかし、本当にニコニコしながら皆やっているのですね。
そして高齢者の引きこもりが減って参りました。
最近は自分のデータがどうなっているのだと、健康結果を説明する、こういうことも、
健康サロン(オアシス)の中ではやりだしたわけです。
いかにこれらの情報を伝えていくか、医師会ともうまくやれるように県にお話をいた
だいて一緒になってやっていけば、数倍の広がりが出てくるのではないか、そういうふ
うに思います。
私は大磯町がどういうふうに情報発信をしているかということで、卓話(ひざを交え
た対話)集会を始め、24 区町長から職員もグルグル回りまして、オアシスとは別に今、
町はこのようなことをやっているのだよというように発信し続けています。
「オアシス新聞」、「磯食だより」という媒体も作りました。
ころんでも、ちょっとふみとどまって骨折しないための体操も作りました。
人が集まると
かならずこの「大磯こゆるぎ体操」を行います。
大磯は自然がたくさんあります。この資産を、大磯の景観を見ながら歩くためにウオ
ーキングマップも作成しました。朝、夕、高齢者が歩いています。みながんばってやっ
ていく、そのうち、子供や孫にもやってもらう。いいことばかり言いましたが、なかな
かに時間をかけながらやっていかなくてはいけない。
断片的な社会実験を 2 年前から始めどういう手がかりがあるか、今、それはスポーツ
健康課が担当し、まとめています。
そこへこのたび県の方から久常先生がかながわ保健指導モデルというものを言ってい
ただきました。もっと我々は突っ込んで医学的な立場から、町の保健師だけではなく、
県からそういうご意見をいただきながらやっていけるのではないかなと。
新しい切り口ができて、職員も大喜びです。町の人にも、大磯町は 3 万 3000 の小さ
な町なのです、しかし、これを何か一つ取っ掛かりにして、特に神奈川県の西の方は、
大なり小なり大磯町とあまり変わりません。面積も非常に広いです。横浜、川崎、相模
原という非常に大きなところにどういうふうに広げていくか、皆さんが英知を絞り一緒
にやっていくことであります。一つの考え方のたたき台としてはお考えいただければい
いかな、そういう思いで御挨拶させていただきました。以上です。
●中村委員
私は栄養とか食事を専門にしておりますので、その観点から、健康寿命日本一の戦略
についてお話させていただきたいと思います。
一昨年、WHOは、世界の保健機関に向けて、人類はダブルボーディングマルニュー
トリションに突入したというキーワードを発表いたしました。
ダブルボーディングマルニュートリションというのは、日本語で訳しますと、栄養障
害の 2 重苦と言えます。
これは過剰栄養と低栄養が共存した社会になりつつあるということであります。
かつて発展途上国は低栄養、先進国は過剰栄養と、非常にわかりやすく分けられたの
ですが、現在は、同じ国に、同じ地域に、同じ家族に、低栄養と過剰栄養が共存してし
まったという社会になったということであります。
つまり、栄養の問題が、個人化、個別化してしまったということになります。
このようなダブルボーディングマルニュートリションの社会において国や行政が肥満
は気をつけろ、やせは大変だとかという、一方的な情報を流しても、それは役に立つ人
と役に立たない人が存在し、逆に、やせる必要がない人までやせてしまうという、新し
い形の栄養障害が今、現れ始めてきているのです。
特に、これから高齢社会になると、低栄養の問題というのはとても大きな問題になり、
例えば蛋白質が欠乏しますと、サルコペニアは悪化し、筋力が低下し活動力は低下して
きます。
ミネラルが不足しますと骨格が悪くなり、骨粗しょう症が出現し、また活動力が低下
します。
逆に、太ったままの高齢者だと関節に障害が起こって歩行することが困難になり、生
活習慣病のリスクになっていきます。
このような状況の中でどういうふうに対応していくかというのが一つの問題です。
二つ目の大きな問題は、先ほど辻先生から話がありましたが、生活習慣病のリスク管
理であります。
まだ病院で病気という診断を受けてないハイリスク者の人達は、おそらく先ほど知事
がおっしゃった未病の領域になるんではないかなと思います。
このリスクを発見しリスクをマネージメントしていく仕組みを作らなければいけない
と思います。
私は、栄養の問題からこのことを考えていたのですが、最近、ちょっとした新しい考
えを導入しなければいけないなと思っております。
それは今まで、食生活の問題を栄養素やカロリーの議論をしたのですが、そうではな
くて食材や、食事として評価することです。
一つの食品には沢山の成分が入って、この食品が一緒になると食事になり、もっと多
くの多様な成分が含まれています。
最近計算すると約 1 万種類の成分が食物には入っていると言われています。
この 1 万の成分が体内にありとあらゆる影響をおよぼして我々のリスクを低くしたり、
高くしたりしているわけです。
従って、日常の食材や伝統的な食品、ひょっとしたらこの中に漢方や、薬膳がはいる
のかもしれないのですが、そういうものの持つ機能を、総合的に考えた後に、新たな食
生活をデザインする必要があると思うのです。
厚労省では健康な食事とはなにかという検討会が発足しました。
おそらくその検討会でもこういう議論が起こってくるだろうと思っております。
実は、栄養素や食品の評価は世界中で議論されておりますが、具体的にどういう食事
がいいのかという研究については、わが国の論文は少ないのです。。
最もこの研究をやったのは地中海ダイエットです。
従って現在、栄養の専門家が考えている最も健康的な食事をしている地域は地中海地
域だと考えられています。
では日本食はどうなっているのかというと、国際的には日本食のよさは議論されてい
ません。理由が論文が少ないからです。
でも、平均寿命は、地中海の地域よりも日本人の方が長いのです。
従って、もし、日本食のエビデンスを世界に向けて出したら、おそらく世界一健康的
な食事をしている国は、日本人だろうという話になりますが、今はまだ断定できません。
おそらく日本人の食事は健康にいいに違いないが、エビデンスが少なすぎるというの
が国際的な評価です。
そういうことを含めて、私は、これから、健康的な食生活を新たな視点でデザインし、
エビデンスを蓄積していくことだと思います。
また、高機能食材をもっと食生活に入れたらいいだろうと思っています。
そして、そのような新たな情報が手に入った時に、多くの人々が生活の中で気楽に相
談ができる仕組みを作るべきだと思っています。
私はいろいろなところに正しい情報の発信基地となるステーションを作ったらいいと
思っております。
具体的に言いますと、消費者が食事と最も関係する例えばスーパーマーケットだとか
コンビニだとか、直売所だとかレストランだとか、そういうところにちょっと相談がで
きるステーションをつくっていくことです。
そして個人の健康状態栄養状態に即した食事が指導できるシステムを、県内に作って
いったらどうかと考えております。以上でございます。
●久常委員
まず、先ほど知事からご説明がありました未病ですが、漠然とした表現ではなく、具
体的な数値として見え出したのが、今回の特定健診の結果ではないかなと思います。
このことにより、見える数値から予測がつくようになりますので、これを生かしてい
くような活動をしていくべきと思っております。
「全記載傷病に見る生活習慣病
被保険者一人当たりの医療費の保険者間比較」の平
成 20 年と平成 24 年の対比ですが、県内 A、B、C という三つの町と市がありますけれど
も、4 年前には、生活習慣病が占める割合は 30%から 40%くらい、平均には 36%でし
た。それがたった 4 年間の間に、51%に増えました。
例えば C 市を見てみますと 34%だったのが 53%に増えました。。
つまりたったこの4年間で、生活習慣病でこれだけの医療費が増えていったのです。
ここにいかに焦点を定めるべきかと、ここをしない限りには医療費だけの視点でなく
て、先程の健康寿命を延ばすという視点を考えたとき、ここが一番重要ではないかと思
います。
非常に未病の段階からかかわることが大事だと思うし、特定保健指導、特定健診がそ
ういうことを可能にしております。
けれども、健診結果では、少々悪くても何ともないため、その人たちに医者に行って
お薬を飲みなさいという指導は比較的成功いたしますけれども、生活を変えていくとい
うことに関しましては、なかなか成功しておりません。
今度、私たちが今やろうとしている特定健診、特定保健指導の対象者は国保の対象者
なのですね、今のところ。国保の対象者というのは神奈川県で大体 3 割ぐらいですね、
その 3 割ぐらいの方の中で保健指導の対象者が決まり、健診を受けるのはそのうちの 3
割ぐらいなのです。
健診を受けた方たちは比較的高いパーセントで、医者にかかった方がいいような対象
者が決まっていきます。
今回、私どもは、すぐお医者さんにかかったほうがよいですよという人を対象にして
みました。
直接これからやるわけですけれども、まずは今、自分がどのような状況にあるかとい
う、健診の値を見て自分がどのような状況にあるかを少し振り返ってもらう。皆さん健
診値を言われても、その時は大変だと思うかもしれませんが、プロセスで見ておりませ
んので、自分のプロセスがどうなってきているかは見えない。そういう意味で、いつご
ろから肥えはじめたのか、そしていつごろから血圧が高いといわれ始めたのか、そうい
うことを保健師が一緒になってここで確認しながら書きます。
そして、結果の状況のどのあたりかを確認します。
これが最初の訪問です。これから、月に1回開かれる勉強会に来てもらうのですけれ
ども、その中で自分の健診値がどこにあたり、そしてこれからどうなっていくのかとい
う予測をしてもらいます。
そして先ほど中村先生がおっしゃったように、その中で、次の段階としては朝起きて
から寝るまでの間に口に入れるものをすべて出していきます。
必ずしも食事に限りません。いろいろなものが口にはいります。それを整理して、栄
養で言えば 80kcal を1単位として丸一つとして表しながら、お皿に書いてみます。そ
うすると、あるものはすごくとっています。しかし、あるものは足らないのです。
だから、足りる人と足らない人がいるという話がありましたが、1 人の人間をみても、
非常に取りすぎているものと、ほとんど足らないものがはっきりしてきます。
それをどう修正するかを皆さんそれぞれ決めていただいて、そして意識的に生活を変
えていただいて、3 ヶ月ごとに健診値がどう変化していくのか。
皆さん頑張りましたとおっしゃいましたが、頑張った結果が本当に数値がどう変化し
たかを見ていきながら生活を変えていくと、そういうことはやっていこうと思っており
ます。
そういうことで、知事がおっしゃった健康寿命の延伸は、今、クオリティ・オブ・デ
スが言われていますが、そのものにもかかわってくるではないか。透析の患者を見てみ
ましたが、とんでもない。透析をおこしてから、さらに脳梗塞をおこしたり、心筋梗塞
を起こしたり、がんを起こしたり、次々起こっていっています。
そういう意味で、生活習慣病の特に糖尿病とかこういう脳梗塞を起こした人たちの状
況というのは決してクオリティ・オブ・デスはないかいうことがよく見えましたし、本
当にこうなりたくないという人生の終わり方ですので、お金だけの問題ではなくて、そ
の人の人生の問題として、やはりいい死を迎えるためにも、この健康寿命を長くしてい
く、一番にしていくが非常に重要だと、しかし、生活習慣を変えるというのは、指導し
たら変わるというのではないです。習慣になっておりますので、レビンという方はその
習慣を 1 回、今、病気をおこしている習慣を溶かして、新しいものを入れて、正しい習
慣を固めさせていくというプロセスが必要だと言っています。
そこに私は保健師、栄養師のかかわる役割があるのではないかと思って、それを意図
的にやってみようと思っております。
4年間で、生活習慣病だけでも、たった数千人の世界で 6 億とか 7 億お金が必要にな
るため、これからのことを考えるともっと大変なことになるのではないかと思います。
●武藤委員
私どもの法人は 2010 年 1 月に東京の文京区、そして震災後 2011 年 9 月に、宮城県石
巻に拠点を持つ在宅医療専門診療所です。
現在医師が 33 名、述べ 60 名のスタッフで運営しております。
今までに約 1500 名位の患者様を拝見しており、現在 600 名ぐらいの方を看ておりま
す。
また年間百数十名の方を看取りさせていただいておりますので、かなり終末期に特化
をした在宅医療専門のクリニックです。
私も在宅医療に出るまではあまりよく理解できておりませんでしたけれども、実際に
患者様のお家を回るようになりまして、実感したことがいくつかあります。まず、高齢
者の孤立の問題です。非常に多くの方が社会的に孤立した状態にいらっしゃるというこ
とです。そして知事も先ほどお話なさいましたけれども、やはり、これからの高齢者を
基本的に公的資金で賄っていくということは、あれだけの高齢者が増えていくこと考え
ましても、かなり困難であろうということです。メリハリの利いた公費の使い方という
ものを考えていかなければならないということと、もう一つはやはり高齢者は様々な身
体的・精神的な状態に置かれているものですから、身体的、精神的多様性に対応した医
療や介護の提供というものを考えていかなければいけないと考えます。
その解決の方向性ということでは、まず、公的な課題の解決に民間の力をいかしてい
くかというものを考えていく必要があるであると思います。技術やサービスに加え、い
かに経済循環性ある取り組みとするかは命題です。それからもう一つはやはり高齢者の
社会的孤立ということを考えますと、コミュニティをもう 1 回どうやって作っていくの
かといった点が非常に重要な方向性ではないかと考えました。そこで我々は高齢先進国
モデル構想会議というコンソーシアムを立ち上げました。現在省庁との連携のもと、50
社ぐらいの企業様と連携をしながら、構想を進めています。
基本的なコンセプトとしましてはとにかく高齢者を中心に、高齢者が必要とする健康
や生活を支える包括的なサービスプラットフォームを構築、それらを有機的につなぐ情
報インフラや、物流を組み込み、高齢者の生活を寄り豊かにする地域コミュニティをも
う一度作っていこうと考えています。
今回、健康寿命ということでかかわらせていただくにあたり、やはり健康という概念
を、「身体的精神的に健やかな状態にいる」と定義しますと、私共としましては、徹底
的に高齢者の生活の質といったところを考えてまいりたいと思っております。
したがいまして、孤立化予防ですとか、あとは高齢者の生活を健やかなるものにして
いくコミュニティをどうやって作っていくのか。そして、先程委員からもお話がありま
したけれども、クオリティ・オブ・デスをどうやってあげていくかということも重要な
テーマです。こういったことを考えますと、やはり在宅医療をきちんと提供していく社
会を作っていくというのが一つのあり方ではないかと思っています。
次に、高齢者の状況をいくつか紹介します。高齢者の短期記憶等が年とともに落ちて
くるというご指摘は当然でありますけれども、一方で日常問題解決能力ですとか、言語
能力というのは実は年齢とともに、上がっていくことが研究で証明されています。単に
すべての能力が落ちていくわけではないという観点があります。
もう一つはですね。歩行のスピードが今高齢者の身体的能力を評価する一つの指標と
されていますが、2002 年と 1992 年を比較しますと実は 10 歳ほど若返っているという研
究結果があります。高齢者の身体機能が若返っているということが窺えます。
ただ、とはいえ一方で、虚弱化していくのは当然でして、2007 年、2020 年、2030 年
と考えますと、やはり当然ながら介護を必要としていく方々が増えていきます。そして
70 代前半の自立度を見ますと、男性は約 10%が生涯、基本的には自立されますが、残る
7 割の方が人の助けを必要としたり、2 割ぐらいの方が寝たきりになってしまうという調
査結果が出ています。
現在、女性は 85 歳以上の女性の高齢者が増えてきたわけでありますけれども、やはり
9 割近くの方が生活に助けを必要とする方、1 割以上の方が寝たきりということで、元気
な高齢者がいらっしゃるのも事実ですが、やはり、介護を必要とする方々がこれから大
変なスピードで増えていくということはいえると思います。
そのような中、高齢者はどうしても、日常生活にいろいろな不安を感じておられ、特
にその不安を感じている方が 7 割ぐらいいらっしゃいます。具体的には「自分や配偶者
の健康や病気への不安が 78%、健康のことを一番に心配に思っておられます。
また別の切り口ですが、非常に興味深いデータとして世帯主年齢別金融資産を紹介
しますと、平均は約 1000 万円近くということなのですが、実は 40 代ぐらいまでほとん
ど金融資産を持っていない。
お金を持ってらっしゃるのは、もうほとんど 60 代 70 代の方が持っているということ
で、こういった方々が不安でお金を使っていらっしゃらないという事実がございます。
いかに安心を提供するとともに、ご自身の安心とQOL向上のためにお金を使っていた
だいて、社会として経済が循環する仕組みを作っていくことが重要なのではないかと思
っています。
そのために、社会としてのサービスを用意することが求められますが、その際に重要
なことは、身体の状況に合わせた生活サポートのアクセサビリティを丁寧に考えていく
必要があります。アクティブシニアが増えるとは言われていますが、要介護への移行期
そしてサポートを必要とする要介護高齢者の方たちへ細かくどのようにサービスにリー
チしていただくかが大事だと思っています。
では、私どもがやっていることを最後に簡単にご説明いたします。私は在宅医療とい
うものを通じて高齢者が非常に安心して過ごせる社会システムを作っていきたいと考え
ているのですが、それは一朝一夕では難しいことです。3つの段階で推進したいと思い
ます。一つは在宅医療をきちんと提供する体制をつくること、それから医療と介護の情
報連携、それから生活を支えていく仕組みを作って最終的には、社会システムまで進め
ていきたいと考えております。
まず始めに、在宅医療提供体制の構築です。私どもは在宅療養を容易にするようなク
ラウドのシステムを開発しておりまして、在宅医療クラウドもしくはコンタクトセンタ
ーそしてクラウド化された電子カルテの開発、こういったものを進めて参ります。
次に在宅医療と介護の情報連携も進めております。情報システムを開発し、項目や運
用ルールは、東京大学の辻先生にいろいろとご指導賜りながら進めておるところでござ
います。
そして今回、東京大学との共同のプロジェクトということで開始しておりますけれど
も、その情報連携の中にご家族様、それも離れて暮らす御家族様も含めて入れていくこ
とによって、より高齢者サポートに家族の力をお借りすることを推進していきます。
最後に、生活も含めた支援につきまして、私どもが被災地・石巻にて行っている活動を
ご紹介します。被災直後に石巻に行き、求められていた在宅医療診療所を新規開設、その
後支援の手が薄かった在宅被災世帯を支援する石巻医療圏健康・生活復興協議会を開設し
ました。ここでは、津波の被害があった世帯を 1 戸 1 戸訪問し、住民の健康状態や生活の
状況を聞き取りしていきました。約2万軒を訪問し、1万世帯から話を伺いました。得ら
れた健康・生活情報はすべてデータベース化し、専門職により精査、必要と判断された世
帯に健康・生活の支援を行いました。その数は、アセスメント対象の3割を占める300
0世帯にのぼりました。
この中でどういったことを行ってきたかという概念図が下にございますが、やはり被災
地の住民、その多くが高齢者でございましたが、その方々1世帯1世帯に訪問して話をお
伺いする、ということがどうしても必要でした。
アセスメントしてそれをデータベース化することに IT システムの威力があります。デー
タベースすることにより、複数の支援者が継続的、複合的に支援をすることを円滑にしま
した。さらに、データを分析することにより、地域の状況がひと目で分かるようになりま
した。定量的かつ地図上にプロットするなど直感的に理解することができます。原因や背
景を理解することにも繋がりました。それは行政施策にも活かして頂いたと思います。
もちろん、医療や介護は重要です。しかしそれは、住民の生活あってこそであり、生活、
例えば住まい、移動支援、買い物支援それからお金や法律の相談、生きがいや社会参加な
どなど、必要なものは多岐にわたります。
また、行政サービスにつなげて保健師さんに訪問いただくといった公的な支援との連携
は大変貴重なものでした。
現在私どもが進めておりますのは、孤立する高齢者の状況を対面把握し、必要なサービス
に繋げるという試みです。もちろん、民生委員さんのような方々がやっておられると思い
ますが、被災地のように問題が噴出している地域ではとても足りないと思います。そして
それは、来たる超高齢社会でも同様に思います。そこで、例えば郵便局員さんや宅配の方
など、すでに地域にある既存の網の目ネットワークを持つ方々が高齢者を見守るような仕
組みを作ることはできないだろうかと構想しており、すでに話は進んでいます。もう一つ
は、地域の資源、それは医療介護支援だけではなく NPO や企業などの生活を支える地域資
源も含めたサービスプラットフォームを構築し、適正にインフォメーションできる機能を
構築したいと思います。今はほとんどどこにもないように思います。ですから、包括的な
コーディネートもできない。そういった機能を生み出すことが重要なのではないかと考え
ています。
繰り返しになりますが、これは公に依存しすぎるのではなく、官民のプラットフォーム
にすることが重要です。そういった仕組みの経済循環性のために、離れて暮らすご家族の
力をお借りしたいと思っています。
こういった複合的な仕組みを通じて、少しでも質の高い、高齢者が安心して暮らしていけ
る社会を実現していきたいと思っています。
●座長
以上皆さんのプレゼン本当にありがとうございました。
お伺いし、非常に幅の広い視点が出ております。
何をすればよいかという具体的な提言というのは最初の知事からのご下問なのですが、
極めて危機的な状況にあると。
医師会のかかわり、急性期病院のかかわり、それからハイリスクの方についての個別
の行動変容へのかかわり、それから地域における、あえて申しますとポピュレーション
アプローチのありかた、或いはモデルから県全体に広げていくとていう手法はいかがと
いうこと、或いは健康という概念を虚弱な高齢者の生活の質という点にも広げて考える
という視点。
それから大きなポイントの一つは食です。これは栄養に着目しました食事の問題と、
それからもう一つはICTを通したコーディネート機能をどう活用するか。
それから企業の位置付けについて非常に幅の広い視点が出たと思います。
今日はそれをまとめる必要はないわけですけども、知事の未病という概念も聞いてみ
ますとクオリティ・オブ・デスにまで至るぐらい非常に幅の広い、研究では生活の質と
いうことだと思うのですけども、病気になるのは誰だって嫌なことで、未病の段階で止
めるという思想は、あえて申しますけども、病気になった方が、虚弱になってもやはり
よかったねという生活をどう確保するかという思想とつながっていると感じました。
今日はフリーディスカッションということで、お互いの質問とか、知事との意見交換
とか非常に貴重な機会ですので、自由にご発言いただきたいと思います。
どうぞどなたか御発言をお願いします。
●中﨑委員
みなさんへの問題提起ということで一つお話ししたいのですけれども、われわれは、
みんなですね、情報網サービスを提供する側の人間なのです。
実際にそれを受ける立場の人の発言ではなかった。
今回検討を進める上で、医療にしても行政にしても、そういう提供する立場での効率
的なポピュレーションアプローチであり、ハイリスクアプローチであり、これからの社
会をこういうように作っていくという提案でありましたが、一つ是非検討していただき
たいのは、高齢者サービスを受ける人というか、その社会の中で暮らしている方たちが
どういうふうな関わりを持って行きたいのかというところで考えるとですね、今の現実
の社会では 60 歳、65 歳で社会的な役割は終わったと、引退するという時代があるわけ
で、その中で実際に高齢化して、本当に人の世話にならなくてはいけない、もちろん個
人差ありますけども、やっぱり 80 歳とか 85 歳とか、そういうところから入っていくの
ですね。
その間、やはりその引退した人達の能力とか、パワーとか知識とか、そういうものを
活用して、循環させるような、そういう場がなければ、或いはそういうものを活用して
いかなければ、おそらくこれからの時代は回っていかないのではないかということを非
常に強く思っています。
そういう引退した方々の 70 歳になるまで非常に元気で、それぞれ蓄積もあるし、能
力が高いと思いますので、そういう方が社会参加していく、かかわっていくということ
を可能にするような枠組みというのが提供できればと思いました。
●座長
ありがとうございます。
ちなみに私は東京大学におりますけれども、高齢者の就労ですね、これはもう非常に
システムとして有効な健康づくりで虚弱化予防であるということで取り組んでおります。
どうぞ自由にご発言いただき、視点をいっぱい出していただきたいと思います。
●大道委員
今日、委員の皆さんがたのお話を聞いていて思ったのですが、この健康寿命日本一と
いうのは、健康寿命が長ければいいというものでもないとはいうものの、基本的には健
康寿命を延ばしましょうというふうな単純な発想を視点にして議論を深めるのか、それ
とも、高齢社会、超高齢社会がくる中で、ちょっと誤解を恐れずに言えば医療介護のよ
うな社会システムを円滑に機能させるようなことに視点をおいて議論を深めるのか、ち
ょっとこれはおそらく表裏の問題で、どちらも大事ですよってなことになるのかなとい
う気がしますが、今の問題意識を改めていたしました。
私は必ずしも立場を負っているわけでありませんが、医療の現場から見るとどうして
も、すでに健康が破綻した状況で、つまり健康寿命が尽きたわけではないですよ、健康
寿命がもう保てないがゆえに医療の場面にくるという、そういう立場で物を見ていくこ
とで先ほどのお話をしたけれども、そうでない視点でむしろ健康寿命を延ばしましょう
ということで、県が健康寿命を延ばすのか、これからだと思うのですけど、問題意識と
してはまず感じました。端的に言って予防ということに力点を置いて、医療自体もまた
介護予防も含めた予防的な視点での議論を深めるのか、地域包括ケア、これまで各地域
であれこれ喧伝されているわけですから、地域包括ケア体制なるものを構築してそこの
円滑な運用をしていこうというような視点をとるのか、両方とはいえ、どちらに力点を
置くのかを一つ適当な時期に、ある程度示していただければいいのかなという気がしま
した。
●座長
まったく同感であります。
ご指摘ありがとうございます。
ぜひ補完的な発言も含めて、時間はありますのでお願いします。
●内田委員
私自身、大学に赴任する前 14 年間ほど、県内の藤沢市民病院で臨床についていまし
たが、身体活動というところに着目する理学療法士の立場で見ると病気になって病院を
受診した患者さんに対し身体活動、理学療法はフォローできるのですが、理学療法士の
立場としては、医師からの指示がなければ、動けないという状況がありまして、実際、
医師の指示が出た時点で患者さんを診ると、何故もっと早い段階から関かわらせていた
だけなかったのだろうかと現場から意見が出ています。
もちろんそれは今の診療報酬体系の中でまた理学療法士という法律の中での立場もあ
るのですけれども、この地域の中で理学療法という疾患に対する身体活動のアプローチ
もできますし、もともとあるその高齢者に対する能力の維持改善というところに関する
筋力や身体活動にアプローチできるこの我々の関わりについて、医療から社会にもっと
出て行けるようなアプローチが神奈川からできないのかと考えています。
●座長
ありがとうございます。
いががでしょうか、今日は一回目ですので、極力幅のある視点を出していただければと
存じます。
●久常委員
今回、初めて神奈川県の重症な状況を見て思ったのは、まず一番、すぐ医者に行き、
治療を始めないといけない人をまず対象にしてやっていく中で、70 歳から 75 歳の介護
予防の対象者が沢山いるわけですね、その人たちをどうしていけばいいかを考えると今
40 歳からの、いわゆる未病の段階の方たちにどうして行けばよいか見えてくる。
つまり、未病でも一番重症なところのやり方を変えてみて、そこを変えていく中で、
これからの特定健診、特定保健指導のあり方も変えていかないと効果がでないため、そ
このところを変えていかないといけないなと思います。
私たち、保健師は、医療にかかってはお薬を飲み始めるように必ずすすめております
が、昔のことを思い出しますと、沢内村(現岩手県和賀郡西和賀町)等について、(厚
生労働省)保健室が健康問題として本気で取り上げたときには、医療費は一回ぐんとあ
がりました。けれどもその後医療費は下がってきました。
けれども今回のこの生活習慣病というものは、生活そのものを変えるというところま
で持っていかないと、今確かにいろいろな医療費がぐっとあがりました。例えば4年間
の医療費を見ますと血圧疾患だけでも5倍に増えています。いろいろな医療費も1.5
倍になっています。それであとの問題が解決していくかというと、必ずしもそうじゃな
いかなあと、先ほど言いましたが、透析になっても更に次の問題を起こしている状態を
見ますと、まずは特定健診、特定保健指導をやりながら保健師の役割のあり方を変えて
いかないと、お医者さんに行くことは薦めますが、それだけでは決して健康寿命を延ば
せないなという気がしました。
●座長
ありがとうございました。
一般論的にですが、私も予防政策をやったのですが、やはりリスクの重い人から危機
に近づいているのですね。
個人の幸せを考えるとリスクの高い人から手をつけてあげないと、いわば優先順位と
しては一番大変だし、あえていいますが、医療費の対効果も高いです。
そういうことで危機に近い人から助けるという発想、それと生活習慣をかえるという
ことで助けないと、本当に戻れないというお話があったわけですが、一方において、そ
こへ行く人を減らすというポピュレーションアプローチとの関係がよくこの話で見えた
と思います。
どちらも非常に重要でして、特に貴重な人的資源を投入するのは、やはり危機の高い
人についての投入は、私は妥当だと思いますし、それからポピュレーションアプローチ
は民間企業を含めてより幅の広い戦略が可能であるとの印象を持ちました。
●中﨑委員
くだらないことを言うかと思われますが、やる気をどういうふうに作っていくか、こ
れが一番難しい。
ここで、その道の卓越した方がいろんなアイデアを、いろいろなことはやり尽くして
いる。恐らく、予防指導もいろんな地域でやっていまして、この資料2を見まして、長
野県、静岡県、石川県、横浜市、みんなそれぞれすごい人たちが考えてやって、それを
営々と続けているだろうと思うのですが。
でもまた、部分的だよと、知事がこれをやるぞと言われたのであれば、褒めてもらわ
なければいけないと思うのです。どう褒めるか、少し言葉がわるいですが、どういうふ
うにプライドをもたせるか、これが大事です。
それにはやはり公平でなくていはいけない。
数値化をどういうふうにしていくかということを、どういうふうにやっていくかとい
うところで、それぞれの取り組みの中にそういうものを求めるとわかりやすいと思いま
す。
自分の地域のことばかり言っているわけではないです。
子供たちにも、体力、1 年前は落ちていたね、でも運動場が小さいけれども君らがん
ばったから少し伸びたよというと子供はがんばるのです。
だから、そういう小さな、私は実験版と言いましたけれども、ぜひ県として知事の方
から、やる気と褒めるということがちょっと誤解のないように、ことにがんばった、そ
れを誇りを持つようなそういうものを、同時に考えていけば、明るくなると思います。
●座長
ありがとうございます。特に個人レベルですね、ICTを活用して、あなた平均から
上がりました、下がりました、それだけでも全然違うのですね。
ですからその意味で個人レベルでの数値化、数値化というのはICTの技術と、もっ
と言うとICTを通したPHR(パーソナル
ヘルス
レコード)の蓄積に伴う巨大な
データによるカウンセリング、そういうようなことを、私は今、感じました。
それからもう一つは内田先生からの御指摘にありましたが、COPD の御指摘のようにマ
クロの目標値を置いて本気で行うかという課題もいただきましてありがとうございます。
●武藤委員
我々は在宅医療介護というところから始まっていますけども、問題意識としては、虚
弱化予防というものに対しても強くもっております。そこにICT側が力を発揮する場
面では沢山ございます。
ですが、今いくつかお話もございましたように、「褒める」とか「数値化する」とか、
何かしらその本人の中でやるような気持ちをいかに組み立てていくかという仕掛けが必
要です。病気の方は比較的にお困りの方が多いものですから、何か少しでも良くなろう
という気持ちが強いわけでありますが、例えば生活習慣病の方のように、今ひとつ痛み
がないですとか、将来のことを言われても何となく実感がわかないというような場合に
は特にそうでしょう。そういった方々にどのようにアプローチをするのかといった観点
が大変重要ではないかと思っています。
もう一つだけ話をいたしますと、神奈川県は健康寿命日本一を掲げているわけですが、
そこには様々な観点が含まれます。しかし、それでは比較的総花的にあれもこれもいい
ということになりかねない。そうすると今ひとつ焦点が絞れない可能性もございます。
これだけは少なくとも実現するのだということを知事に決めていただき、まずはそれに
向かって動くことが重要だと、そのためには可視化されたエビデンス、例えばこのポピ
ュレーションの個々の寿命を伸ばせば1位になるのだとか、逆算をしてのアプローチと
いうことも重要ではないかと思っていますので、その辺りもぜひ、議論をさせていただ
きたいと思います。
●中﨑委員
大磯町には保健師が6人おります。
できたときから1ヶ所に集めて、その力を測っていましたし、わかっておりました。
しかし今回、モデル的に久常先生が町に来ていろいろな話をしてくださったのです。
驚いたことに彼女たちが変わってしまったのです。
これはすごく大きかった。だからこのことをやると同時に、県のほうで一つの組織と
いうようなものができれば、当然座長はお作りになると思うが、中心になる人たちがそ
れぞれの地区においてやっていただいて、少し目を覚ます、それは驚きでした。職員も
変わりましたし、保健師も変わりました。町の人たちもそういう人が来てくれるのだと
いう思いももちまして、そういうのも併せて誇りとしました。
●座長
まだわかっているようで、現実に住民レベルで住民がはっとするところまでわかって
いるのかといえば、なかなかわかってないと、逆にわかれば住民は変容するというそう
いう本質的な戦略的な課題をおっしゃったと思います。
それから中村委員にご発言いただきたいのですが、私が最近ジェロントロジー(老人
学・加齢学)みたいなことを行っていますので、世界的には病気の予防ということもあ
るのですが、虚弱化の予防ですね、年をとって身体の自立さが落ちていくことへの予防、
英語ではフエルティというようですが、そういう概念が最近大きなテーマになってきて
おります。
そういう中で年をとると、しっかり食べるということですね、やせたほうがいいんだ
という目標が、ある年齢以上では危険というお話がありましたけども、しっかり食べる
というのを相当本格的に行わないと生活の質は守れないということで、この食の問題は
非常に大きいと思っておりまして、このあたりについて、食べる力を守るということを
含めてですね、歯を含めて、そのあたりのコメントを中村委員からいただきましたと思
います。
●中村委員
栄養のバイブルになっているのに「食事摂取基準」というものがございます。
これは、性別年齢別に日本人がエネルギーと、栄養素をどの位とったらいいかという
基準値を国が定めたものであり、どの国も定めております。
ところが、高齢者になってくると、だんだんその数字のエビデンスが薄くなっていき
ます。
先日、日野原先生とちょっとお話したことがあるのですが、100 歳老人がこれだけ増
えてきて、100 歳老人の食事の栄養基準値があるのかというと、ありません。
なぜかというと 100 歳老人の基礎代謝の量もまだわからないからです。
従って、エビデンスは薄いのです。もう一つは基本的な食事のあり方の哲学みたいな
ことがあるのです。私たちが習ったときには、高齢者は、自然に木が枯れるがごとく死
を迎えたほうがよい、だから年をとってまで沢山栄養を取るというのは体に鞭打つよう
なものなのでやるべきではないという考え方がありました。
最近になって先生がおっしゃったように生きている限り、アクティビティが高くて健
康で活力のある年寄りを迎えようという概念は、栄養の世界では、近年できた概念でし
て、もし、この概念が人の生き方を変えるのであったら、それに対応するエビデンスを
提供していかなければいけないと思っています。
従って、なぜこのようなことを言うかというと、実は筋肉を作る蛋白質は、合成と分
解を繰り返していくのですが、若いときには蛋白の摂取量を多くすると合成能は高くな
って筋力は増えてきます。
ところが 80 歳前後になると、蛋白の摂取量が増えても蛋白の合成能は増えません。
つまり、外環境に対するレスポンスが少なくなっていくわけです。
逆に言えば、生体は死に向かって少しずつブレーキをかけていくのかもわからない。
こういう時に、年をとってもステーキを食べて蛋白質の摂取を多くしたら今度は、蛋
白質の負荷が多くなり、腎臓への負担がかかってきます。
●座長
最後に振りましてすみません。どうしても高齢期の問題というのも位置付けないと、
内田先生がおっしゃっていましたように、危機的状況というのは正しいと思うのです。
高齢期の健康という、相対的な意味での健康について振ってみました。
議事運営上押してしまいました。ちょっと独断専行の議事運営でしたが、みなさま大
体御発言いただきましたので、知事から最後コメントをいただきたいと思います。
●知事
非常に多角的な面からそして専門的なそれぞれのご領域からの御意見、本当にありが
とうございました。
第 1 回目で本当にここまで深い議論ができたなと、本当に感動という感じであります。
私はずっと聞いていまして、この問題、入口と出口というのは非常に大事なことだと
ずっと思っていました。
何のためにここでやるのかということですが、入口と出口といっているのはそれを勘
違いして言ってしまうと大変な誤解を受けるということですね。
冒頭に人口動態のグラフをお見せしましたけれども、目標としては持続可能なシステ
ムを作らなければいけないということですね。
先程の大道先生からありましたけれども、病院の時代は終わったのだという表現があ
りましたけど、非常にショッキングなことであり、それは見えてきており、持続可能は
破綻しようとしている。
何とか持続可能な形を作らなければいけないために、やはり健康寿命日本一を目指す
のだということですけれども、例えばこれを出口として言い方を変えますと医療費用の
伸びを抑えないといけないと、財政的な面でこれを守らなければいけないということ、
これは出口であるのですけれども、これを、ちょっと言い方を間違えると、医療費を伸
ばさないようにするために、いろいろなことをやらなければいけないという話になりま
すと、切捨てかというような議論にいきなり行ってしまいますので、ここは結果として
医療費が伸びなかった、そして皆さんが元気に過ごせたというところ、そのあたりは慎
重に議論して進めていかなければと思っているところです。
その中で中﨑委員のお話があったポイントは非常に大事だと思っておりまして、何と
かしなければいけないから何とかするのだというふうな話を持っていっても、恐らくこ
の話は前に進まないと思うのですね。
一番大事なことは、お一人お一人がその中に参加したくなる、やることが楽しくなる
という、みながそこに向かってプラスの志向で集まってくる、その結果として、大きな
目標に向かって出口につながっていくという、そういう仕掛けをつくるということです
ね。
だから言葉を変えれば、インセンティブの見せ方は非常に重要なことなのではないか
なと思っているのですね。
そういう目で見てみますと、今、日本人の関心事、例えばテレビなど番組を見ていた
だいても、タレントさんがダイエットに挑戦して何キロやせたといって大騒ぎしている
というような番組がありますが、どのようなダイエットを行ったか、女性が美しくなる
ためにどうするのか、などいろいろな情報があふれていますが、実は見方を変えればイ
ンセンティブのつけ方をいろいろな形で提示しているのかなという感じもするわけです
ね。
ですからぜひ、これからの議論にあたってインセンティブをどうつけて、みなが楽し
くどうやったらその世界に入ってきて、結果として見たら、こういう持続可能なシステ
ムができているかなというところにたどり着く、それこそが我々が目指すべき神奈川モ
デルだということをお話をして、今回の私の感想として申し上げたいと思いました。あ
りがとうございました。
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