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過去の地震被害から学ぶ西己管系の耐震設計

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過去の地震被害から学ぶ西己管系の耐震設計
過去の地震被害 から学ぶ配管系の耐震設計
l■ lプ
ラ ン ト地 震防災ア ソシエ イツ
稲葉
忠
酉己僧書支術 Vol.47 Nol1 2005 月1昴 1
配管
‐
=■
ら'学 ぶ配管摯│の 耐震設.計 ‐
● ●│││
が あ る .配 管 の 揺 れ が 波 及 す る場 今 に 同 じ く、 設
計 建 設 の 時 点 で これ を予 見 す る こ とは 容 易 で な い
プ ラ ン トの耐 震 設 計 の 目的 が 地 震 災 害 の リス ク
が 、 過 去 の 被 害 例 を学 び 、 また構 造 物 の 動 的応 答
の 低 減 に あ る こ とは い う まで もな い c兵 庫 県 南 部
の 特 徴 や 地 盤 の 液 状 化 の 影 響 を理 解 し、 想 像 力 を
地 震 の 経 験 を教 訓 に、 高 圧 ガ ス設 備 の 耐 震 設 計 に
養 えば可 能 とな る。
お い て も、 漏 洩 が な け れ ば塑 性 変 形 は あ っ て も よ
い と して 、 発 生 確 率 の 小 さ な破 壊 的 地 震 まで 想 定
本 稿 で は、 まず 初 め に配 管 系 の 構 造 的特 長 と地
震 に よ る影 響 を一 般 論 と して述 べ 、 次 に配 管 の エ
す る よ うに な った。
ネ ル ギ ー 吸 収 能 力 と変 位 吸 収 能 力 に つ い て基 本 的
に よ る もの と相 対 変 位 に よ る も の とが あ る。 相 対
な こ とを説 明 し、 次 い で 実 際 の 地 震 被 害 の 特 徴 と
耐 震 設 計 にお け る構 造 種 別 留 意 点 を述 べ 、 最 後 に
変 位 に は 、 支 持 構 造 物 の 応 答 変 位 に よ る も の と、
地 震 に よ る 影 響 の 軽 減 方 法 と軽 減 例 に つ い て述 べ
地 盤 の 液 状 化 が 起 きた と きの 基 礎 の 移 動 (沈 ド、
る こ と とす る。
配 管 系 が 地 震 に よ っ て 受 け る影 響 に は、 慣 性 力
水 平移 動 、 傾斜 )に よる もの とが あ る。
慣性力 の影響 を、支持構造物 との共振 を考慮 に入
れて厳密 に評価 しようとすると、大変に難 しい こと
になるc幸 い に鋼製の配管 は塑性変形 によるエ ネル
す
│1鎮認襲す
繹
2-1
配管系 の構造的特長 と
地震 による影響
ギーll■ 収能力 に優 れ、局所 に構造的弱点 があった場
合お よび大 きな揺れが波及 した場合 を除けば、過去
の地震 にお いて慣性力 によるとみ られる漏洩事故 は
石 油 精製 ・石油化 学 プ ラ ン ト (以 下 、 プ ラ ン トと
い う)に は様 々 な構 造 を した設 備 、構 造物 が あ り、
ほ とん ど発生 して い ない。構造的弱点 を残 さず、配
管 固有 のエ ネル ギ ー 吸収能力 を生かす設計 を行 い、
それ らに接 続 され る配管 も、 そ れ らの構 造 に応 じて
様 々 な形状 を成 して い る。 配管 を貯槽 配管 、 プ ロセ
また大 きな揺れに注意すれば、破壊的地震に際 して
も漏洩事故 の発生 は避 け られ よ う。
相対変位 の 影響 につ い て も、幸 い に エ ルボに優
ス Lld管 、地 上 ・地 卜配管 、計 装 配管 に分類 して 第 1
図 に示 す。
貯槽 配管 は貯槽 と地 表面 間 の 相 対変 位 の 影響 を受
けやす く、 プ ロセ ス 配管 は慣 性 力 の 影響 の 他 に、設
れた塑性 変形能力 が あって、 これが適所 に配 置さ
れ た配 管系 で は、局所 に構造 的弱点が あ った場 合
備 、構 造 物「Hlの 相 対 変 位 の 影 響 を受 けや す い 。 地
を除 き、漏洩事故 はほ とん ど発生 して い な い。構
造 的弱 点 を残 さず、可撓性 の確保 にエ ルボの塑性
配管 は 緊急 遮 断弁 を含 め た 設備 、構 造物 間 の 相対 変
変形能力 を生かす設 計 を行 えば、破壊 的地震 に際
し、同様 に漏洩事故の発生 は避 け られ よ う。
位 の 影響 を受 けやす いっ 地 盤 の 液状 化 が起 きた場 合
は全 ての配 管 が そ の 影響 を受 け、護 岸 に近 い ほ ど影
配管系 の 被害 には、 この他 に隣接 構造物 との衝
突 に よる損傷 がみ られ、時 に漏洩 事故 を招 くこ と
響 は大 き くな るc
L・
地 ド配管 は地盤振 動 の影響 を受 けやす く、計 装
過去 の地震 被 害 か ら学 ぶ配 管 系 の耐 震 設計 12)
蜻 ]』贔 品4
贔 ││_
平底円筒形貯槽配管
球形貯槽配管
熱交換器配管 コンプレッサー配管 ボンプ配管
低温 二重殻 平底円筒形貯槽配管
措置円筒形貯槽配管
塔配管
架構支持塔配管 エアフインクーラ配管 ラック配管
加熱炉配管
緊急遮断弁周 り計装配管
第 1図
配管の種類
2-2
構 造 物 に支 持 さ れ た配 管 系 の
地 震 に よ る影 響
塔槽類、架構等 の設備や構造物 (以 下、支持構造
物 とい う)に 支持 された配管系が地震 によって受け
る影響には、次の ものがある。
① 支持構造物 の応答加速度に励振 される ことに
よる自らの慣性力 による影響
点間の相
● 支持構造物 の応 答変位 に基づ く支持′
地震の発生
地盤の液状化
/地 盤変状
地表面の揺れ
↓
支持構造物の地震応答
寺
基礎の移動
l
(応 答加速度の影響
) (応 答変位の影響)
十
ヤ
慣性力の発生
(交 番荷重 )
相対変位の発生
(交 番 荷 重
(基 礎の移動の影響
)
↓
相対変位の発生
(一 方向荷重 )
対変位 による影響
O 地盤変状 (地 盤の移動、地盤定数の低下)が 起
きたときの支持構造物 の基礎 の沈 ド、水平移動、
傾斜 に基づ く支持点間の相対変位 による影響
0
隣接す る揺れの大 きい構造物 (大 日径配管 な
ど)に 衝突 された り、相対変位 を加 え られた り
する ことによる影響
配管 の耐震設計 では、0に 留意 しつつ 、0、 ② 、
0の 影響 を軽減す る こ とを主 体 に考 える こ とにな
るっ ここで、② と0は いずれ も相対変位 による影響
であるが、自
t者 は交番 (繰 り返 し)の 荷重 であるの
に対 し、後者 は 1方 向 の荷重 であることに違 いがあ
る。大 │]径 配管か ら小 口径配管が分岐 して い れば、
小口径配管 にとって大口径配管 は支持構造物 に等 し
く、②、0の 影響 を考慮す ることが必要 となる。 こ
第 2図
構造物に支持された配管系の地震による影響
111
れ らの影響 の軽減 方法 につ いて は 第 5章 で述 べ るc
地震 の影響 か ら配管 を守 るに は、次 の 損 傷 モ ー ド
を考 えてお くこ とも必要 となるc
O
0
0
支持構造物の伊1壊 、崩壊に伴う配管系の損壊
周辺構造物の倒壊、崩壊 による損壊
上方からの物の落下による損壊
0を 避けるには、支持構造物の重要度を配管の重
要度に合わせたり、破壊に至るまでのエネルギー吸
収能力を高めたりすることが考えられる。0を 避け
るには0に 同じか、あるいはレイアウ トにおいて配
過 去 の地 震 被 害 か ら学 ぶ配 管 系 の耐震 設 計 … (3)
管か ら離すな どの対策 が考 え られる.0を 避 けるに
は、L方 の積載物、付属物 の落下防止策 (耐 震設言
F:力
δ :変 形
│
M:曲 げモーメン ト
を含む)を 考えてお くこととなる。
My:降 伏モーメン ト
Mp:全 塑性モーメン ト
θ :変 位角
E :吸 収 エネルギー
陽:寡峯酬 弩
M=F・
L
θ=δ /L
構造物 には固有のエ ネルギ ー吸収能力があ り、繰
り返 し入って くる地震のエ ネルギ ーの総量が エ ネル
M
ギ ー吸収能力 よ りも小 さければ、破壊 に至 ることは
ない。 このエ ネルギ ー吸1又 能力 は弾性 弾性振動 の
M
エ ネルギ ー、減衰力によるエ ネルギー吸収量お よび
塑性変形 によるエ ネルギー吸収能力 の和 で表 される
が、 この うちで特 に大 きいのが塑性変形 によるエ ネ
3-1
θ
δ
ルギー吸収能力である。
第 4図
材料の靭性 と延性
一 端固定一端 自由配管のカ ー変形曲線
材 料 の特 性 は、 降伏 点 、 引張 強 さに代 表 され る強
度 と、 伸 び、 絞 りに代 表 され る延性 に よって 表 わ さ
れ る.降 伏 点 の 引張 強 さに対 す る比 は降伏 比 と呼 ば
れ、加 工 硬 化 の特 性 を表 す もの とな る。 こ こで、応
カ ー歪 曲線 が作 る面 積 (第 3図 の シェ イデ イング部
分 )は 、試験 片が破 断す る まで に 収 され る単位 体
積 あた りの エ ネル ギ ー量 を意 味 し、靭性 と呼 ばれ る.
ll■
力 を加 えて い くと、力 に比 例 して変位 が大 き くな っ
て い く。 やが て 固定端 の最 外縁 が 降伏 し始 め る。 こ
の と きの モ ー メ ン トを降伏 モ ー メ ン トとい う。 さ ら
に力 を加 えて い くと全 断面 が 降伏す る。 この と きの
モ ー メ ン トを全 塑性 モ ー メ ン トとい う。 固定端 が 降
伏 して材 料 の加 工 硬化 が始 まる と、 曲げ モ ー メ ン ト
が小 さい 隣接 部位 も降伏 し始 め、 力 と変形 の 関係 が
S :応 カ
Sy:降 伏点
SA:引 張強 さ
ε :EE
εy:降 伏歪
非線 形 とな り、変形 量 が増 大 し始 め る。 そ の まま力
を加 え続 け る と、固定点 に近 い部位 で座 屈 が始 ま り、
暫 くして当該部位 に亀裂が発 生す る。
力 と距離 の積 はエ ネ ル ギ ー で あ り、配管 は亀 裂 を
生 じる まで に第 4図 の シェ イデ イ ング部 分 の 面積 分
の エ ネ ル ギ ー を吸収 した こ とに なるc線 形 部 分 、非
線 形部分 の エ ネ ル ギ ー は、それぞれ弾性 エ ネル ギ ー 、
3-2
配管の エネルギー 吸収能力 と
変位吸収能力
配管系 の 形状 は様 々 で あ るが 、 ここで は最 も単純
な一 端 固定 ^端 自由 の 配管 と、 固定端側 にエ ル ボが
付 い た配 管 につ い て 説 明す る。 鋼 管 の 変形特性 は実
祀
験 で確 認 され 、容 器構 造 に つ い て は エ ネ ル ギ ー 吸
1又 能力 に関す る定式化
塑性 変形 に よるエ ネ ル ギ ー n/t収 能力 を意 味す る (第
5図 )。 配 管 は、 この エ ネ ルギ ー 吸収 能 力 が大 きけ
れ ば大 きい ほ ど大 きな慣 性 力 に耐 え られ 、変形量 が
大 きけれ ば大 きい ほ ど大 きな相対 変位 (累 積 )を ll■
1又 で きる。
・ t
も行 われ て い る
Ee:弾 性 エネルギー
Ep:塑 性変形 によるエネルギー吸収能力
3-2-1 -端
固定 一 端 自由配管 の カ ー 変形 曲線
(1)一 端 固定一端 自由配管のカ ー変形曲線
一 端 固定 、 ^端 自由 の 配管 の カ ー変形 曲線 (復 元
力特 性 と もい う)お よび これ を曲げ モ ー メ ン トと角
変位 の 関係 で 表 した 曲線 を第 4図 に示 す .自 由端 に
δ
第 5図
弾性エネルギーと
塑性変形によるエネルギー吸収能力
過去 の地 震 被 害 か ら学 ぶ配 管 系 の耐震 設 計 ― (4)
(2)直 径 ―板厚比 がエネルギー吸収能力 に及ぼす
影響
部位 、配管 要素 が あ る と、 配管 本 来 の エ ネ ル ギ ー 吸
収 能力 が発揮 されず 、構 造物 と して は脆性 的特 徴 を
座屈 の 発 生 は、直 径 ―板 厚 比 が大 きい 配管 ほ ど早
く始 ま り、これ力Ⅵ ヽさい もの ほ ど遅 くな る (第 6図 )。
示 す よ う に な る (第 8図 )。 そ の よ うな部位 、 配 管
要素 と して は、溶接 効 率 の低 い 溶接 継 手、 ね じ込 み
小日径配管におけるように直径 ―板厚比が小さくな
ると座屈 は発生 しな くな り、固定端 の応力が引張強
さに達するまで変形が進行す る。
継 手、 フラ ンジ継 手、鋳鉄弁 な どが 挙 げ られ る。
M:曲
①脆弱部がある場合のエネルギー吸収能力
②脆弱部がない場合のエネルギー吸収能力
げモーメン ト
。
y
M
︲ M一
My:降 伏モーメン ト
θ :変 位角
D :配 管外径
t i配 管板厚
θ
第 6図
第 8図
脆弱部がエネルギー吸収能力に及ぼす影響
直径 ―板厚比とカー変形曲線
3-2-2
カ ー変 形 曲線
(3)材 料特性 がエネルギー吸収能力 に及ぼす形響
固 定 端 の 材 料 が 塑 性 化 して加 工 ilI化 が は じま る
と、 曲げ モ ー メ ン トの増 大 と と もに隣接 部位 の材 料
エル ボ付 き一 端 固 定 一 端 自由 配 管 の
(1)エ ルボの塑性変形能力
エ ル ボ に曲げ モ ー メ ン トが加 わ る とエ ルボの 断面
も塑性 化 し始 め 、 降伏 比 が小 さい ほ ど塑 性 化 の 領域
は拡 大 す る。 したが って、 配管 の エ ネ ル ギ ー 吸収 能
が楕 円化 し、 この効 果 に よって、梁 と して計算 した
と きに比 べ て大 きな角変位 が得 られ る (こ の比 を フ
力 、変位 吸収 能力 は、 そ れぞ れ材 料 の 靭性 、延性 の
レキ シ ビ リテ イフ ァク ター と呼 ん で い る)。 エ ル ボ
他 に、 降伏比 に も依存 す る。
脆性 材 料 (靭 性 に乏 しい)を 用 い た配 管 は、構 造
の 局部 が塑性 化 し始 め る とこの効 果 は一段 と顕著 に
物 と して も脆性 的特 徴 を示 す (第 7図 )。 降伏 比 が
10に 近 い材料 を用 い た場 合 に も、塑性 化 す る領域 が
拡 が らず、構 造 に よって は脆性 的特 長 を示 す よ う に
な る。特 殊 な プ ロセ ス 条件 下 にあ って材 料 の脆化 が
な り、 角変位 を加 え続 け る と直管 の 降伏 モ ー メ ン ト
よ りも小 さな 曲げ モ ー メ ン トで塑性 変 形 が 進 行 し、
発 生 す る歪 も容 易 に は亀 裂 に至 る レベ ル に達 しな
い。 この 曲げ モ ー メ ン トの低 減効 果 は、 直径 ―板 厚
進 む場 合 に も、 エ ネ ルギ ー 吸収 能 力 に影響 す る こ と
比 が大 きいエ ル ボ ほ ど大 き くな る。 エ ルボの 変形特
性 の例 を、直径 一板 厚比 が比 較 的小 さい 4B、 Sch 40
に注 意 を必要 とす る。
の 配管 の場 合 につ い て 第 9図 に示 す 。 角変位 に抵抗
す る曲げ モ ー メ ン トの大 きさは角 変位 の 方 向 で異 な
´
り、面 内伸展 が 番大 き く、面 内屈 曲が ^番 小 さい。
脆性材料の配管 延性材料の配管
0
y
M 一M
M:曲 げ モ ー メ ン
My:降 伏 モ ー メ ン
θ
M:曲 げモーメン ト
ト
:変 位 角
,
15
My:降 伏モーメン ト
ノ
M一
M
第 7図
ト
10
05
材料特性とエネルギー吸収能力
00
00
5
角変位
(4)脆 弱部がエネルギー吸収能力 に及ぼす影響
固定端 近傍 に、配管 の全塑 性 モ ー メ ン トよ りも小
さい曲げモーメン トで破断した りしてしまうような
面内伸展
面内屈曲
第 9図
エルボの変形特性 │'
過去 の地震 被 害 か ら学 ぶ配 管 系 の耐震 設計 … (5)
(2)エ ルボ付き一端固定一端 自由配管のカ ー変形曲線
固定端 側 にエ ルボ が付 い た配管 の 自由端 に力 を加
えて い くと、 エ ルボの 効 果 に よ り、 降伏 モ ー メ ン ト
と
配1管 系│の 地震被害‐
1構 造種別留意点
よ りも小 さな 曲げ モ ー メ ン トで塑性 変形 が進 行 す る
4-1
よ うにな る (第 10図 )。 過去 の地 震 で 溶接 部 が亀 裂 、
配管 系 の地 震被 害 は、 これ まで に新 潟地震 、十勝
配管系 の地震被害
て い る こ とに加 えて、 この 効 果 もあ った もの とみ ら
沖 地震 、宮 城 県 沖地震 、千 葉 県束 方 沖地震 、兵庫 県
南部地震 、2004年 卜勝 沖地 震 な どで 経験 し、損傷 モ
`J.こ
ー ドを含 め て 報 告 され て きて い る・ ¨
れ まで に
れ る。可 撓 性 の な い 配管 に大規模 な地盤 変状 の 影響
経験 した地 震被 害 を、 主 た る要 因が 配管 要素 にあ る
が及 ん だ場 合 な どを除 け ば、 配管 固定点 の座 屈 や フ
場 合 と配管 系 にあ る場合 とに分 けて次 に ま とめ る。
破 断 した事 例 が 少 な く、溶接 欠 陥が あ った とみ られ
る場 合 な どに限定 され るの は、 溶接 強度が確 保 され
ラ ンジか らの漏 洩 (微 少漏 洩 を除 く)の 事例 が 少 な
4-1-1
いの も、 同様 の理 由 と考 え られ る。
(1)配 管要素 に要因がある地震被害
配 管 要 素 に 要 因 が あ る地 震 被 害
配管 要素 あ る い は局部 の構 造 に要 因が あ る もの と
して は、以 下の事例 が報告 されて い る。
δ
陥
M一
①
②
θ
第 10図
エルボ付き一端固定一端 自由配管のカ ー変形曲線
O
0
0
0
突合せ 溶接部 の亀裂、破断
フランジ継手 の 開 口
計装配管ね じ込み部の亀裂、破断、引 き抜 け
配管サポー ト直付け溶接部管壁 の亀裂
硬質塩化 ビニル配管 の割れ
鋳鉄弁 の割れ
0は 、溶接欠陥があ って、溶接部 の強度が母管 に
に よる相 対 変位 の場 合 と基 本 的 に同 じで あ り、相 対
つエ ルボによる曲げモー メン ト低減
比べ て低 く、 日本
で
効果が期待 きない場合 に起 こ りうるc板 厚方向 に
変位 に直 角 な方 向 の 直管 とこれ を挟 む 2つ の エ ル ボ
の組 み合 わせ 、 あ る い はそ の複 数 の 組 み合 わせ に よ
割れ、溶け込 み不良な どの面状欠陥があって、低温
の気候条件が重 なれば、低温脆性 による破断 も起 こ
る。これ につ い て は地震 の影響 の軽減例 の 中 で示 す。
りうる。
② は、フラ ンジの漏洩 モー メン ト (漏 洩 し始める
モーメン ト)が 鋼管 の降伏 モーメン トよりも小 さく、
なお、相対 変位 に対 す る可撓性 の確 保 は、 熱膨 張
(3)エ ルボの効果が期待できない配管
エ ルボの効果 はエ ルボの構 造 (形 J大 、寸法、材 質)
と直管 部 との 相 対 的強 度 で決 ま り、次 に示す 配管 に
つ い て は期 待 で きな い。
O
直径 ―板厚比 の小 さい突合せ 溶接 の配管
え│ゴ 、2B、 sch 80)
② エルボが過剰板厚 の配管
15倍
O
0
0
(例
(例
えば、直管部 の
)
差込み溶接 の配管
ね じ込み継手 の配管
塩化 ビニ ル配管
小日径 の溶接継手 の配管 はエ ルボによる曲げモー
メン ト低減効果が期待 で きないが、幸 い に座屈す る
ことがないので、溶接部 に母材 と同等 の強度 を確保
すれば、直管部 の塑性変形 をもって相応 の相対変位
を吸収す ることがで きる。ね じ込み継手、塩化 ビニ
ル配管 には本質的な弱点があ り、 これについては後
述する。
かつエルボによる曲げモー メン ト低減効果 が期待で
きない場合 に起 こ りうる。
0は 、ね じ谷部 の配管断面積が小 さいため、当該
部位 だけで塑性変形 が進行する ことによる。
0は 、加熱炉、ボイラーのヘ ッダー配管や長大 な
大口径薄肉液配管 な どにお いて、熱膨張上 の理由か
ら配管軸方向 の移動 を 1点 で拘束 して いる場合 にお
いて、管壁 に比べ て相対的に岡1強 なサポ ー トが管壁
局部に溶接 されてい る場合 に起 こ りうる.
0は 、硬質塩化 ビニ ル は鋼材 に比べ て延性 に乏 し
く、 エ ルボの塑性変形 も期待 で きない ことによるc
高速 の歪速 度 下では延性がほとん どな くな り、衝撃
にも弱 い。
Oは 脆性羽料 であることによる.
これ らの多 くは、相対的強度が弱 いことなどか ら
配管固有 のエ ネルギ ー吸収能力、変位吸収能力 が生
過去の地震被害 か ら学ぶ配管系の耐震設計 … (6)
か され なか った こ とに よる損傷 であ る。
(2)サ ポー トの構造 に要因がある地震被害
サ ポ ー トの構 造 に要 因が あ る地 震 被 害 と して は、
漏 洩事 故 に は至 らなか った もの を含 め る と、 以下 の
事例 が報告 され てい る。
①
強度不足 によるサポー トの損傷 とこれに伴 う
配管 の揺れ、小口径配管な どへ の波及
② 劣化 によるサポー ト機能 の喪失 とこれに伴 う
配管 の揺れ、小 口径配管 などへ の波及
O
塔 と架構 間 の相対変位 による配管の損傷 (支 持
構造物 の応答変位
③ 大 口径配管 の揺れに基 づ く相対変位 による小
)
日径配管 の損傷 (配 管 の応 答変位 )
④ 配管 のパ イプラックか らの落下 (配 管 の滑動
0
0
による計装配管の損傷
⑦
懸垂型 ボイラー揺 れ │卜 めの損傷 とこれに伴 う
ボイラー と架構 間の相対変位 の発生、 これによ
る配管の損傷
④ 架構 支持 の塔 の揺 れ止めの損傷 とこれに伴 う
塔 と架構 間 の相対変位 の発生、 これによる配管
の損傷
①、② は配 管用 のサポー ト、O、 ④ は機器用 のサ
ポー トの機能喪失 による。 いず れ も、揺れ止めの配
(弁
の応答変位 )
防振架台上 の発電機 の移動 に基 づ く相対変位
による接続配管 の損傷 と発電機能停止 (支 持構
造物 の滑 り
)
実際例 は見聞 してい ないが、次の もの も可能性 と
して考 えられる。
③ 配管 の揺 れによる吊 り下げ式 ハ ンガーのジ ョ
イ ン ト部 の損傷 とこれに伴 う配管 の落下
(配 管
の応 答変位 )
O
慮 はされていた ものの、意図通 りには機能 しなかっ
たことによる損傷 である。隅肉溶接 部 の破断に よる
ものを含む。
)
パ イプシューの脱落 (配 管 の滑動 )
緊急遮断弁駆動部 の大揺れに基 づ く相対変位
過大 な ノズル反力 による回転機 ケーシングの
変形 とこれに伴 うブ レー ドとケー シングの衝突
(配 管反力 )
平底 タ ンクのア ップリフ トに基づ く相対変位
による配管の損傷
Oに つい てはい くつ かのパ ター ンが考 え られ、例
⑩
なお、地震 に襲 われたプラ ン トの現場 では、揺れ
止め のサポー トが曲がった りしているのをみかける
ことがある。 これは地震 のエ ネルギー を吸収 して配
管へ の入力 を軽減 した ことに相当す る。 この効果 を
えば第 11図 の ような配管 があった とする。大口径管
が大 きく揺れた らどのような ことが起 きるか、想像
利用 しようとす るのが エ ネルギ ー吸収型サポー トで
ある。また、地盤変状 による大 きな相対変位 に対 し、
サポー トが大 きく変形 した りして配管へ の影響 が軽
に難 くない。高圧 ガスの配管が破断すれ ば、圧縮 さ
れたガ スが 音速 で噴出す るので、2B、 lBの 配管 と
い えども疎かにはで きない。④ は配管 自体 に損傷 は
減 された例 をみかける ことがある。 この効果 を取 り
入れ よう とす るのが解放サポー ト (5-3-1項 参照)
な くて も落下方向の弱小構造物 を損傷 させ る原因 と
な りうる。0は プラ ン トのシャッ トダウ ンに伴 って
である。
配管が冷 え、反対方向に収縮 した ときに損傷 の原因
となる。脱落の原因が支持構造物 の揺れ であれば、
4-1-2
配 管 系 に 要 因 が あ る地 震 被 害
配管系 に要因があった と見 られる地震被害 を、慣
性力、相対変位 (応 答変位 に基 づ くもの)に よるも
の と地盤変状 によるもの とに分けて説明する。
(1)慣 性力 相対変位による地震被害
慣性力 ・相対変位 による損傷 には、次の ものが報
告 されてい る。配管の揺れや移動 に基 づ く 2次 的な
ものを含 めれば、多 くは相対変位 によるもので、配
管要素 に構造 的弱点 を残 した場合 を除 き、高応力、
高歪 で 母管 自体 に亀 裂が 入 った事例 はほ とん どな
い
rl
O
塔 とこれに隣接する架構間の相対変位による
配管 の損傷 (支 持構造物 の応答変位)
② ラグ支持の塔の揺れ (ロ ッキ ング)に 基づ く
第 11図
弱点が潜在 している小口径管の例
│コ
´
b
過去の地震被害 か ら学ぶ配管系の耐震設計 ¨ (7)
第 11図 (a)と 同様 な事態 となる。被 害 の 多 くは、揺
れ止めな どの構造的配慮 が してあれば避け られた こ
計、耐震診断 を効率 よ く行 うには、それぞれの配管
系 の構造種 別 に応 じ、的 を絞 ることが大 切 である。
とであ り、大 きな揺れには注意が必要 で あるc
配管系 の構造種別 に応 じた耐震設計上 の留意点 を第
1表 に示す。
(2)地 盤変状による損傷
地盤変状 による損傷 には、次の ものが報告 されて
い る。地盤の液状化が原因で発生す る相対変位 は一
方向荷重 で あ って疲 労 の心 配はないが、兵庫県 南部
第 1表
配管系の耐震設計 における構造種別留意点
配管系の種別
地震 におけるように規模が大 きい と深刻 な被害 を与
低温平底貯槽周 り
える。
O 直接基礎 のポ ンプ・貯槽 の沈下 に基 づ く相対
変位 による配管 の損傷 (基 礎 の沈下)
②
O
貯槽配管
杭基礎 の貯槽周 りの地盤 沈下、水平移動 に基
づ く相対変位 による配管 の損傷 (地 盤 の沈 ド、
移動
)
独立基礎 のポ ンプの沈下 に基 づ く相対変位 に
よる鋳鉄製 ポ ンプのノズル、ケー シングの害Jれ 、
プロセス
配管
管 の損傷 (基 礎 /地 盤の沈下、移動
0
ジか らの漏洩
⑦
)
可撓管 の変位吸収 限界 を超 える相対変位が加
わった場合 の配 管系 の可撓性不足 によるフラ ン
(基 礎
/地 盤の沈下、移動
)
独立基礎 の空 気溜 めの沈下、移動 に基 づ く相
対変位 による計装配管 の損傷 (基 礎 /地 盤 の沈
)
地盤沈下
危険物タンク周 り
タ ン ク沈 下 、地 盤 沈 下
球形貯槽周 り
球殻の揺れ、地盤沈下
横置貯槽周 り
地盤沈下
塔周 り
塔頂の大きな揺ね
架構支持塔周 り
塔と架構間の相対変位
加熱炉・ボイラー配管
熱 1彰 張 対 策 と の 調 和
コンプレッサー周 り
配管反力緩和
ポ ン プ周 り
基礎の沈下
熱交換器周 り
芯狂 い (基 礎 の沈 下)
④ 地盤変状に基づ く母管 の移動時の小日径分岐管
の隣接構造物へ の衝突による損傷 (配 管 の移動)
⑤ 設計 を超 える相対変位が加 わった場合の可撓
耐震設計の留意点 に
ノズル熱収縮対策との調和、
地上・地下
配管
計装配管
エ ア フ ィン クー ラ周 り
熱膨張対策との調和
パイプラ ック上
配管の滑動、落下
地下配管 (特 に立ち上 り部)
地 盤 の 沈 下 、移 動
ビッ ト配管
ビッ トの浮上 り
護岸近傍の配管
護岸のせ り出 し
大国径導管
軸方向の滑動抑市」
緊急遮断弁周 り
相対変位
(頭 部の揺れ、独立基礎移動 )
空 気 溜 め周 り
相対変位 (独 立基礎移動 )
(注 )地 盤の液状化が起きるところでは、種別に関係な く地盤変状に
対する配慮が必要。
下、移動 )
⑤ 、Oに ついて、可撓管 の変位吸収限界を超 える
相対変位 に備 えるには、 バ ックア ップとして配管系
にも可撓性 を付与 してお くことが好 ましいこととな
る。0に つい ては、空気溜め と緊急遮断弁 の 間で引
き抜 けた りす ることのない よ う、共通基礎 にす るな
どの配慮が必要 となる。
4-2
配管系 の耐震設計 における
構造種別留意点
顆雛 1協‐
前節 にお い て、 配管系 の 地 震被 害 をそ の主 た る原
因が配管 要 素 にあ る場 合 と配管 系 にあ る場 合 とにつ
い て説 明 した。 配管系 の地 震 被 害 をな くす には、配
的特性 を有 し、 地震 時 に はそ の構 造 的特 長 に応 じた
管 要素 に弱 点 を残 さず 、配管 の エ ネ ル ギ ー 吸収 能力 、
変位 吸収 能力 を高 め る と と もに、 入 って くる地震 の
挙 動 を示 す 。 これ らに支 持 され た配管 系 の損傷 モ ー
エ ネ ル ギ ー を小 さ くす る工夫が必要 で あ る。
設備 ・構 造物 はそ れ ぞ れ の構 造 的特 長 に応 じた動
ドも、地盤 の 液
化 の 影響 を含 め、 そ れ ら支持構 造
に応 じた もの とな る。過去 の 地 震 被
物 の構 造 的特 長 '大
こ こで は初 め に配管要 素 の 弱 点 の 回避 につ い て述
べ 、続 いて構 造 物 に支持 され た配 管系 につ いて 、慣
害 の経験 も、 この こ とを表 して い る。
石 油 精 製 ・ 石油化 学 プ ラ ン トに見 られ る配 管系 の
性 力 お よび応 答変位 に よる影響 の軽 減 方法 と軽 減例
種類 は 2-1節 で 説 明 した。
膨 大 な量 の 配 管 系 に つ い て 信 頼 性 の 高 い 耐 震 設
説 明す る。
お よび基礎 の移 動 に よる影響 の軽 減 方 法 と軽 減例 を
57
過去の地震被害 か ら学ぶ配管系の耐震設計 … (8)
5-1 配 管 要素 の弱 点 の 回避
5-1-1 配管要素の弱点の回避
下の とお りである。
①
配管 要素 の 弱 点 を回避 す る には以 下 の こ とに注 意
防止する。
が必要 で あ る。
溶接管理 :溶 接欠陥を残 さない。寒冷地 にあ
っては低温脆性 にも注意す る。
② 脆性材料 の使用制限 :地 震時にあ って破 断を
避 けたいラインには鋳鉄弁、硬質塩化 ビニ ル配
①
管 の使用 を控 える。
O ね じ込み継手の養生 :地 震時 にあって破 断を
避 けた い場合 は溶接継手 にする。ね じ込み継手
④
O
また、応答変位 による影響 を軽減す る基本的な考
え方は以下 の とお りである.
①
可撓性 を付与 して相対変位 を吸収す る。
応答変位 の小 さい位 置、高 さで連絡す る。
②
O 支持構造物 の揺れを抑+1す る。
5-2-2 耐震 設 計用 サポ ー ト
フランジ継手 の管理 :過 大 な曲げモーメン ト
が発生す る領域 では使用 を控 えるか、過大 な曲
げモーメン トが発生 しない よう配慮す る。
過剰板厚 のエルボの不使用 :高 スケジュール
の ものの転用 を避 ける (エ ルボが直管部 に比 べ
サポー ト反力受荷部 の適切 な構造 :サ ポー ト
反力が大 きい場合 には、受荷部の構造 はサポー
ト反力が管壁 の広 い範囲 に分散 される構造 とす
る。
配管腐食の管理 :溝 状腐食など、狭 い領域 の
減肉に特 に注意。耐震性維持の観点からの保全
の 1つ .
③ 断面縮小部 の 回避 :局 所的に断面縮小部が で
きる ことを避 ける (例 えば、不必要 に厚 い配管
を使 い、開先 をウェルデ ィングネ ック式 フラン
ジのネ ックに合 わせ ると、狭 い ネック部が断面
縮小部 となる)。
サポ ー トの 構 造上 の 欠 陥 の 回避
サポー トについては以下の点に注意 を必要 とする。
5-1-2
①
ーの損傷 などを防止する。
す る。
なる)。
⑦
適切 な位置 にサポー トを設 けて配管 の過大 な
揺 れや滑動 を抑制 し、小 日径管へ の影響、他 の
構造物 との衝突、サ ポー トか らの落下、ハ ンガ
②
にす る場合 は、相対変位が作用 しない よう配慮
て過剰 に厚 い と曲げモーメン ト低減効果 がな く
O
適切 な位置 にサポー トを設けて配管 の揺れを
抑制 し、過大 な曲げモー メン ト、軸力 の発生 を
サポー トの溶接管理 :架 構 などに揺 れ止めを
隅肉溶接 で取 り付 ける場合 は、溶接部で破 断す
ることがない よう、設計、施 工で注意す る。
② サポー ト劣化 の管理 :保 全の一環 として、設
配管 の揺れや滑動 を抑制す るサポー トには、 ア ン
カー (固 定 )、 レステ ィ ング (自 重支持 )、 ガイ ド
(軸 直角方向 の変位拘束)、 ス トッパー (軸 方向の変
位拘束)な どが一般 に用 い られる。特殊 な もの とし
て、油圧式防振器、ばね式防振器、 エ ネルギ ー吸収
サポー トなどがある (詳 しい説明 は省略する)。
熱膨張 の ある配管 にお いては、サポー トが配管の
移動 を拘束 し、高応力 を発生 させ るような ことがあ
ってはな らない。 ガイ ド、 ス トッパー は、 目的が達
成 されるので あれば、多少 のガタ (配 管 とサポー ト
の 間隙)は 許容 され よう。
5-2-3 慣性 力 ・ 応 答 変位 に よる
影 響 の軽減例
慣性力、応答変位 の影響 の軽減例 を第 12図 に示す。
例 1で は、大 日径の配管が架構 上を滑動 して付属
の小口径配管に相対変位 を与 えた り、隣接す る弱小
構造物 に衝突 した り、 さらには架構か ら落下す るこ
とのない よう、 ガイ ドを設けている。
例 2で は、 コンプ レッサーのノズルに大 きな地震
荷重が作用 しない よう、 コンス タ ン トハ ンガーで 吊
られた配管の配管軸方向の揺れを ロ ッ ドで抑市1し て
い る。
計 の意図通 りに支持機能が維持 されるよう管理
例 3で は、スカー ト支持 の塔か ら架構 に渡る配管
が相対変位の影響 を受 けない よ う、応答変位 の小 さ
い位置 まで降ろ してか ら架構側 に渡 してい る。また、
す る。
ラグ支持の塔の頭部 に振れ止めを設けて ロ ッキ ング
5-2
5-2-1
慣性力 。応答変位 による影響 の軽減
1貫 性 力・ 応答変位 による影響 の
軽減方法
慣性力による影響 を軽減する基本的な考え方は以
を抑制す るとともに (重 心か ら離れた位置で梁 に定
着 されたラグ支持 の塔 は、振 れ止めがない と梁 を回
転 ばね として揺れる)、 振 れ止めの間隙分の相対変
位 を吸収で きるように してい る。
過去の地震被害 か ら学ぶ配管系の耐震設計 …19)
No
に数 10cmを 越 え る こ とが あ る。 この よ うに大 きな
相対 変位 の Il■ 収 も、エ ル ボの塑性 変形 能力 を利用 し、
影響の軽減
影響大
さ らには解 放 サ ポ ー トを採 用 す る こ とに よって可 能
とな る。 こ こで解 放 サ ポ ー トとは、 配管 反力 に対 し
ラ ック 上 の 配 管
て配管 が損傷 す る前 に壊 れ る よ うに設 計 したサ ポ ー
トの こ とを言 う。
5-3-2
基 礎 の 移 動 に よ る影 響 の 軽 減 例
基礎 の移動 に よる影響 の軽 減例 を第 13図 に示 す。
例 1で は、 直接 基礎 の ポ ンプの 沈 下 に対 し、基礎
を共通 に して ノズルヘ の影響 を軽 減 して い るc
コ ン プ レ ッサ ー 周 り配 管
地盤変状前
地盤変状後
ポンプ配管
架構支持塔周 り配管
→
共通基礎
例
2
ガイ ドサポー ト
例
第 12図
ψ
地盤沈下
3
慣性力・応答変位による影響の軽減例 中
│
固 定 サ ポー ト
5-3
5-3-1
基 礎 の移 動 に よ る影 響 の軽 減
基 礎 の 移 動 に よる影 響 の軽 減方 法
地盤変状 に基 づ く基礎 の移動 による影響 を軽減す
例
4
□―カル基礎沈下
る基本的な考 え方 を次 に示す。地盤変状が起 きない
よ うにす るのが本質的な解決策であるが、 これにつ
いては触れない。
(D
地上配管道路横断部
共通基礎 に して基礎 の移動 の影響 をな くす か
軽減す るc
12 可撓性 を確保 して相対変位 を吸収する。
例
5
0 0と ② の組み合 わせ
大規模 な地盤変状が発生 した ときの基礎 の移動 に
基 づ く支持点間 の相対変位 は、水平、鉛直方向 とも
第
13図
地盤変状 による影響の軽減例 │
59
過 去 の地 震 被 害 か ら学 ぶ配 管 系 の耐震 設 計 "10
例 2で は、杭 基礎 の 支持構 造物 間 を渡 る配管 の ロ
ー カルサ ポ ー トを ガ イ ドまた レス テ イ ングに して地
crll■ ■■
温 度、圧 力 、管 内流 動 に対 す る設計 の場 合 とは違
盤 の沈 Fに よる影響 を軽減 して い る.
例 3で は、 横 置 円筒 形 貯 槽 の 払 出配 管 に つ い て 、
緊急 遮 断弁 の 後 を貯槽 と共通 の基 礎 上 に固定 し、地
盤 変状 が起 きて も重 要 部位 (緊 急 速 断弁 か らノ ズル
まで )に 影響 が 及 ば な い よ うに して い る。 LHE定 サ ポ
ー トの後 の 配管 につ い て は、 エ ル ボ と直管 で 可撓 性
を確 保 し、 配管 反力 を小 さ くして 階1定 サ ポ ー トの設
計 を楽 に して い る。
例 4で は、 低 温 ir底 貯槽 の 受払 配管 につ い て、 上
J^
下 、水 平方 向 の 大 きな相 対 変位 を吸収 す るため の 日
撓 性 をエ ルボ と直管 お よび解 放 サ ポー トに よって確
保 した上 で、 ノズルの 変位 (液 化 ガ ス受 人時 に ノズ
い 、耐 震 設計 が適 切 に行 われ たか ど うか は、試 運転
で は確 認 で きな い c弱 点 を残 して は い な い か、 設計
で 意 図 した とお りに工 事が 行 われ たか ど うか を確 か
め るには、保温 ・ 保 冷 工 事 の 前 に現 場 で確 認 す るの
が確 実 な方法 であ る。
設 計時 点 で 弱 点 の な い構 造 を考 え、 あ る い は現場
を見て潜 在 的 な弱 点 に気 づ くに は、 配管 の エ ネ ル ギ
ー 吸収 能 力 、変 位 ll■ 収 能力 に関す る基 本 的知識 を持
ち、実 際 の地 震 被 害例 を知 り、 どん な ところ に弱 点
を残 しやす い か を知 って い る こ とが必 要 で あ る.さ
らには、各種設備 、構造物 の地 震応答 の特徴 を女Πり、
ルの収 縮 、倒 れ を生 じる)を「lt収 す るための配管 ル
ー プ に共 通基礎 Lで つ な ぎ、重 要 部位 へ の 影響 を軽
地盤 変状 の影響 を含 め て、設備 、構 造物 の 地震 時 の
減 して い る。
描 くこ とので きる能力が求 め られ る。
プ ラ ン トの配管系 の 耐 震設 計 は、 この よ うな エ キ
例 5で は、 道路 横 断部 を利 用 して水平 方 向 の 相対
変位 を吸収 して い る。地盤 の水平移動 が大 きい場 合、
挙動 お よびそ の影響 を受 け る配管 の 挙動 を頭 の 中 で
して
ス パ ー トレベ ルの 知識 ・ 経験 を必要 とす る。 配管 設
計 者 自身が エ キ スパ ー トになれ ば、 感覚 的、 定性 的
お けば、設備 周 りに及 ぶ 影響 を軽 減 で きる。
最 後 に、地盤 変状 に基 づ く大 きな相 対 変位 を吸収
に信 頼性 の 高 い 耐 震設 計 が で きる よ うに な り、詳細
な耐震 計 算 を必 要 とす るケ ー ス も少 な くな るで あ ろ
した実例 を写真 1に 示 す 。兵庫 県南 部地震 の 直後 に
護岸 近 くで撮 影 され た もの で、 エ ル ボの塑性 変形 能
う。
エ キ スパ ー トの知識 を持 った配 管 設計 者が 、設計
力 を示す貴重 な写真 で あ る。
建 設 の 後 に現場 を見 て 歩 き、必 要 に応 じて手直 しを
行 えば、耐 震設 計 の 信 頼性 は一 層 高 め られ る こ とに
移動 量 の 大 きい 護岸 近 くで 相対 変位 を
^旦 吸収
なる。 また、工 務 ・ 保 全 の担 当者 が エ キ スパ ー トの
知識 を持 て ば、既 設 プ ラ ン トの 配管 系 の 耐震 診 断 を
自 ら実施 で きる よ うにな り、耐震性 を維 持 、 向 Hし
畿
てい くこ とが で きる よ うにな る。
磋
議鷺菫 轟 鷹
本稿 が 、配管 系 の設 計 、保 全 を担 当 され る方 、 エ
キ スパ ー トを 目指 そ う とされ る方 の 参 考 になれ ば幸
いで あ ります。
<参 考文献 >
11)稲 葉 :“ 石油精製 ・石油化学 プラ ン トの配 管系 の耐震
Ⅲ
技術 、高圧 ガス、Vo1 41、 20046
(21 原 ・竹 内 ・緒方 ・他 :“ 鋼管 の塑性 変形能 を利用 した
導管設計 "、 日本鋼管技法、No 86、 1980
13)日 本建築学会 :“ 容器構造設計指針 ・同解説 "、 199610
141 機械耐震設計 グループ
写真 1 大きな水平方向相対変位を吸収 した配管系
(兵 庫県南部地震 田上氏写)
60
:“ 新潟地震 における li場 施 設
Ⅲ
の被害につい て 、生産椰1究 、 16巻 10号 、196410
Ⅲ
15, 佐藤壽芳 :“ 機械 ・配管関係 の震害について 、生産研
究 ―十勝沖地震 ・震害小特集 一、20巻 12号 、196812
16, 柴 田碧 :“ 産業施設 の地震被害 "、 日本機械学会誌、75
考S6431チ 、19728
過去の地震被害 か ら学ぶ配管系の耐震設計 …い0
配管系 の地震被害 について"、 日本機械学会
講演論文集、No 840-11、 198410
(8)柴 田碧編著 :“ 化学 プラ ン トの耐震設計 "
(7)柴 田碧
:“
(9)東 京 通商産業 局
:“
千 葉県東 方沖地震 影響調査 報告
レベ ル 1耐 震性 能評価 (配 管系 )編 付録 Ⅱ配管系 の耐
震構造計画 "、 199711
00 高圧 ガス保安協 会 “高圧 ガス 設備 等耐震 設計指針
レベ ル 2耐 震性能評価 角旱訪 尋"、 20009
:
書 "、 昭 6312、 高圧 ガス保安協会
00 日本機械学会 :“ 阪神 ・ 淡路大震災 での機械設備 の被
害調査写真集 "、 1996
10 通商産業省 :“ 兵庫県南部地震 に伴 うLPガ ス貯蔵設備
ガス漏洩調査 中間報告書 "、 平 75、 高圧 ガス保安協会
02 通商産業省 :“ 兵庫県南部地震 に伴 うLPガ ス貯蔵設備
ガス漏洩調査最終報告書 "、 平 76、 高圧 ガス保安協会
00 稲葉 :“ 耐震性 を考慮 した配管の構造設計 "、 千葉県高
圧 ガス事業所地震対策指針 Ⅱ、19983
高圧 ガス保 安協 会 :“ 高圧 ガス 設備 等耐震 設計指針
0り
`漸
稲葉
」
志
(ぃ なばまこと)
mプ ラン ト地震防災アソシエ イツ 代表
〒2600024 千葉県千葉市中央区中央港 1131
E―
mail i inaba@pedpa cOjp
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