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人口減少対策と多文化共生

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人口減少対策と多文化共生
人口減少克服プロジェクト編
PROJECT 1
人口減少対策と多文化共生
~八戸市外国籍者の事例を中心として~
青森大学社会学部
- 3 -
佐々木研究室
川村
一真
福士
紗恵
阿部
駿人
榊
孝太
外崎
直人
吉沢
幾哉
1
はじめに
青森県の人口は、減少傾向にある。それは、青森県に住む私たちにとって様々な影響を
及ぼすだろう。現在、その対策が各方面から考案されており、私たちの所属する佐々木研
究室でも、平成 26 年度の学生発未来を変える挑戦プロジェクトから人口減少問題の対策
に取り組んでいる。本調査でも引き続き、専門領域である多文化共生の視点から人口減少
への対策について考察を試みた。
今回の調査地である青森県八戸市には、多くの外国籍者が滞在しているが、生活の形態
や来日した経緯、雇用状況など、その実態は明らかにされていない。よって、本調査では
聞き取り調査を中心に、実態について調査し、外国籍者にとって「住みやすい町」とはな
にか明らかにしていく。そこから、今後、外国籍者の定住を増加させ、人口減少問題への
対策としてなにができるか考案を行った。
2
先行研究
今回の調査対象地の八戸市の人口、外国籍者、世帯数、面積を調べた。詳しくは表 1 の
通りである。八戸市の人口は 236,159 人となっており、青森県で 2 番目に人口が多い市町
村となっている。
(平成 22 年 10 月 1 日現在)また、外国籍者は 871 人が在籍しており、男
性が 399 人、女性が 472 人となっている。八戸市では男性より女性の方が多く在籍してい
ることがわかる。
次に、八戸市の特徴は雪が他の市に比べて少なく、海産物も豊富であるといえる。また、
新幹線の停車駅もあり、青森市ほどではないが交通の便も良く、人の行き来がしやすいと
推測できる。
表1 八戸市先行研究(2015年9月現在)
八戸市全体人口
236,159
男性
113,251
女性
122,908
世帯数
106,961世帯
面積
305.54平方㎞
(八戸市HP、八戸市人口データより筆者作成)
図1 外国籍者数(2015年9月現在)
女性
472人
男性
399人
男性
女性
(八戸市役所HPより筆者作成)
- 4 -
最後に県内の他の地域と比較すると、青森市は青森県の県庁所在地であり、人口も多く、
外国籍者の在籍者数も青森 県の中では一番在住している。また、新青森駅をはじめ、青森
空港や青森港など交通の拠点となっているといえる。次に、三沢市は米軍基地があり、米
軍関係者が多く在住しているため、外国の文化も強く根付いている。三沢市でも英語教育
の政策や文化交流の推進や、日常生活のサポートが充実していた。
ここから、八戸市は青森市と同じように人の行き来がしやすく、外国籍者を呼びやすい
環境にはあるが、三沢市のようにサポートが充実しているとはいえず、さらに改善するこ
とができるといえる。
図2 青森市外国籍者数(平成22年10月現在)
男性
382人
女性
521人
男性
女性
(青森県統計データランドから筆者作成)
図3 三沢市外国籍者数(平成22年10月現在)
男性
99人
女性
217人
男性
女性
(青森県統計データランドから筆者作
3
八戸市の外国籍住民の概要
昨年度は三沢市を対象に調査し、米軍基地関係者の方や三沢市に住む方からお話を聞き、
共生をしていくうえでの問題や共生していくという難しさを学んだ。その中でも交流人口、
循環人口、共生人口が重要だと感じた。
- 5 -
(1) 交流人口
交流人口とは、一般的には観光客のことを指す。それ以外にも通勤通学、買い物をする
ために来る人も含まれているが、私たちの言う交流人口は観光客に焦点を充てている。例
えば、八戸市ではイベントやお祭りごとが豊富で特に朝市や三社大祭が有名であり、これ
ほど交流人口に対して適したイベントはないといえる。こ れは十分観光資源と呼べるだろ
う。
(2) 循環人口
循環人口とは、出身地と居住地を往復する人々を指す。例として、単身赴任や出稼ぎな
どがそれに該当する。実際に八戸市では、北日本造船やみちのく中小企業組合で働く、研
修生がいる。研修生は現在、中国人やベトナム人が中心で、近年はベトナム人が増加傾向
にあるようだ。今回の調査対象であるフィリピン人の研修生は少ないといえる。また、研
修生として日本に来ても最長で 3 年で帰らなくてはならないため、日本語を勉強する余裕
がなく、ほとんどの方が話せず、日本に馴染めず帰国してしまうと のことだ。
(3) 共生人口
共生人口とは、生活の居所を日本にする、永住する人々のことを指す。八戸市ではネパ
ール人の方が経営しているカレー屋が多く、話を伺うことにした。ネパール人カレー屋の
方々はコックビザを取得して来日し、最初は東京や大阪などで生活していた。現在では友
人の紹介や、在住するための申請が下りるのが早かったため八戸で生活している。話を伺
ってきたネパール人の方は子供も一緒に生活していて日本の学校に通っている。日本語も
上手く日本で生活している時間も長いので日本に馴染んでいる印象を受けた。
今回の調査対象者であるフィリピン人の方は、青森県の生活に慣れ、日本人男性と結婚
し、子供も産み日本で長く生活をしている。彼女たちは日本社会の良いところ、悪いとこ
ろをよく知っているのではないかと考えたため、本調査では彼女たちの意見を中心に考察
を試みた。
4
調査概要
聞き取り調査に協力していただいた方は表 2 の通りである。調査は 2015 年 9 月 4 日か
ら 6 日までの 3 日間行った。予備調査として、八戸市内の散策を一日行い、聞き取り調査
は行っていない。調査対象者は、八戸市近郊に在住する 3 人のフィリピン人女性の方々で、
本学学生の知り合いや関係者の知り合いであった。他にもネパール人の方が経営するカレ
ー屋さん、外国人技能実習制度で日本に来ている中国人の方にも調査を行った。
聞き取り調査は 1 時間~2 時間程度行った。まず、来日した経緯や現状の生活などのお
話をしていただき、その後、疑問や質問を 問いかけてみた。次で詳しく述べるが、今回の
聞き取り調査では 3 つのポイントを持ち、重点的にお話を伺うことができた。今回は、そ
の中でもフィリピン人の方を中心に考察を試みる。また、本人たちの希望により仮名での
報告となる。
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表2 訪問先一覧
氏名
日時
時刻
ソニアさん(仮名)
2015年9月4日 10:20~11:30
マリーダさん(仮名) 2015年9月5日 10:00~11:30
マリアさん(仮名)
2015年9月6日 13:40~15:00
5
場所
八戸地域地場産業振興センター
八戸地域地場産業振興センター
パンションアットホームイン八戸
(筆者作成)
分析枠組み
私たちは今回の調査で 3 つのポイントが必要であると考えた。それは教育、雇用、生活
である。実際に現地に赴き、生活している方々からお話を聞き、人口減少対策に向けて輝
ける未来のために目指すべき青森県の姿は、「共生県・青森」なのだと言える 。「共生県・
青森」とは、その 名の通り外国籍者の方との共生に特化した青森県のことを指す。「共生
県・青森」では、「教育・雇用・生活」の3つのポイントを充実させることにより、共生
するうえでの不自由を軽減 できるのではないかと考 えた。
(1) 教育
教育では、昨年の調査では意思の疎通の大変さを学んだ。調査の際に英語でインタビ
ューをする機会があったが、いままで習ってきた英語では通じず、短時間のインタビュ
ーであったが、うまく思いを伝えることができず苦労したことを覚えている。まして
や、生活をともにすることになった場合、中学校で習うような英語より、日常生活での
コミュニケーションに困らないような英語教育が必要だと感じた。
また、青森県は様々な方言が混在していて、日本人である私たちもわからない時があ
る。やはり日本語や方言が分からないと生活しにくいだろう。現在も、弘前大学の 「や
さしい日本語」など外国籍者の方への日本語教育も行われているが、今以上に力を入れ
ていくべきではないかと思い、教育が重要なのではないかと考えた。
(2) 雇用
次に、雇用である。昨年調査した三沢市では、調査対象者の方は、来日する前から
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仕事が決まっており、日本での雇用の問題に直面している方の話を聞くことはできなか
った。しかし、中には日本に来日してから職に就く人もいると考えた。その場合、どの
ような職業につくのか、また、どのような経緯で来日しているのか、興味を持ち調査し
たいと考えた。現在も研修制度を活用し、日 本に技術を学ぶために来日している方もい
るが、現状では、その実態は明らかにされていない。そこで、実態を調査することによ
り、日本の外国籍者に対する雇用の課題を知り、共生に向かって目指すべき姿が見えて
くるのではないかと考えた。
(3) 生活
生活するうえで、宗教上や文化に関連する違いが大きな壁になっていることがわかっ
た。例えば、日本ではマナー違反とされるような行動でも、他国ではその行動は当たり
前に何ら問題なく行われている場合がある。この他にも宗教上の問題により食べること
のできない食材があるなど、お互いの文化に対 する理解を深めることが重要になる。現
状で、問題となっていることを実際に日本に住む外国籍者の方にお話を聞くことで、こ
れから日本に永住してもらえるようにどのような取り組みが必要なのかわかってくるの
ではないかと考えた。
6
事例分析:共生人口の視点から
次に共生人口の視点から分析する。今回の調査対象者であるフィリピン人の方は、青森
県の生活に慣れ、日本人男性と結婚し、子供も産み日本で長く生活をしている。彼女たち
は日本社会の良いところ、悪いところをよく知っているのではないかと考えたため、本調
査では彼女たちの意見を中心に「教育」「雇用」「生活」の3つの視点から考察を試みた。
また、調査対象者の方の希望により仮名での報告とする。
(1) ソニアさん(仮名)
はじめに、1 人目の調査対象者であるソニアさんに聞き取り調査をした。ソニアさん
はフィリピンマニラ市出身の 30 歳の女性で ある。2015 年に来日し、名古屋で 2 週間い
たあと八戸に来たそうだ。現在は、英語教室の先生をしており、仕事はたまに楽しいと
語っていた。
まず教育面では、ソニアさんは日本の英語教育について「 L と R の発音ができない生
徒が多いです。しかし、教室の生徒たちはとても優秀です。英語を理解しているし、コ
ミュニケーションをとることができます。年下の子供達は月に1、2時間でも成長して
います。5、6歳から続けて英語を勉強しているとかなりレベルは上がります。両親の
関心の問題もありますが、以前に比べたら外国語を学ぶ意欲は上がったと思 います。日
本は割と平和で良い国なので出たがらない印象でしたが、最近はちょっと変わってきて
いる気がします。4、5年前に比べて英語を学ぶ意欲が上がったと思います。」と話し
ていた。また、フィリピンと日本の英語教育を比べると「フィリピン人の方が率直で
す。なぜなら、私はフィリピンの学校で子供たちに中国語を教えていました。彼らは外
国語を覚えることで生活が向上するからです。なので、両親を含めて熱心です」と語っ
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ていた。
聞き取り調査から、小さい頃から英語を学ぶことが大切であることや、以前、日本は
平和であまり出たがらない印象 だったが最近英語を学ぶ意欲があがっていることを知る
事ができた。そしてフィリピンでは英語を学ぶことが生活の向上につながるという点に
ついて、教養として英語を学んでいる日本と大きく異なる点であると感じた。
次に雇用面では、マリーダさんはプロダクションに派遣され日本に来たそうだ。ソニ
アさんいわく「会社が選びました。日本も私ではありません。会社が見て選んでいま
す。」と話していた。また、「家賃補助はありません。会社が安いアパートを見つけてく
れます」とも話していた。フィリピンから日本へ出稼ぎに来る理由として「フィリピン
よりも治安はいいし、給料が良いからだと思います。」と語っていた。プロダクション
については「フィリピンにあるたくさんの代理店は不親切なところです」と話してお
り、ソニアさんの所属しているリクルーターでは「たくさんのフィリピン人を缶詰工場
や魚の加工工場で働かせています」と語っていた。入管管理局などのシステムについて
は「リクルーターが全部やってくれます。しかし保険が3割でなく全額負担です。」と
語っていた。他国での雇用について「家政婦として働いている人もいます」と話してい
た。
雇用について、フィリピンではメイドがおり日 本に来てから初めて料理をしたという
点にとても驚いた。さらに、他の国でもメイドとして働くフィリピン国籍の方がいると
いう。日本へはエンターテイメントとして来るフィリピン国籍者が多いという事や、ソ
ニアさんの所属しているプロダクションでは缶詰工場や魚の加工工場で働くフィリピン
国籍者が多いことがわかった。
最後に生活面では、ソニアさんにこれから日本にどれくらいいる予定か尋ねると「1
年はいるつもりです。あとは会社や国が依頼してくれたら居る予定です」と話してい
た。理由を聞くと「私はアメリカにもどることを考えています。なぜ なら両親が永住権
を取っていて、母親が私のために私の分も取ろうとしているからです。6、7年したら
アメリカに行くつもりです。 2010 年に申請しました。もう5年もたっています。両親
はずっとアメリカに住んでいます。しかしわたしは日本、アメリカ、中国、台湾を転々
としているのでなかなかとりづらいです」と話していた。日本の生活について伺うと
「安全です。フィリピンだとカバンをいつ盗られるか分からないので、胸のところでし
っかり持っていなければなりません。日本だと床に置いておいても大丈夫です。あと、
日本人はとても良い人です。例 えばタクシーだとフィリピンでは運転手を待たせるとと
ても怒られ罵声を浴びせられます。日本だと10分待たせても彼らは笑顔です」と語っ
ていた。
この聞き取りの内容から、日本はフィリピンに比べて治安がよく安全な国であること
を知った。しかし、いずれ家族の居る国へ帰ると言っていたことから、安全な国だとい
うことだけでは永住はしない事がわかった。
(2) マリーダさん(仮名)
マリーダさんは 47 歳の女性でフィリピンのマニラ市の出身で、来日 25 年で東京、青
森市、八戸市、岩手県でも働いた経験があるそうだ。来日した経緯は、マリーダさんの
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大学生時代の友人が「歌手になるために日本に行く」と言い、それについて来たとのこ
とだ。現在は、永住権を取得済みで、日本で結婚し、子どもも生まれている。仕事は、
煙草農家で働いており生計を立てている。
まず、教育について、マリーダさんは、日本に来日した際は日本語が全然わからず、
「最初は、東京に来て本当にもう帰りたくなりました。言葉なにしゃべってるのかわか
りません」と感じたそうだ。日本語は、日本語教室に通わず独学で覚えたとのことで、
「東京ラブストーリー」などのテレビや映画などで覚えていったようだ。日本語に対
し、いい印象を持っていて「日本の言葉が面白い」「愛してるとか大好きだよ」などの
言葉が気持いいという。しかし、方言について、「言葉が違う。イントネーションも違
うし」「青森の人と東京の人は全然違った」とのことで、青森に来た当初は方言が分か
らず、とても苦労したようだ。彼女は「やっぱりコミュニケーションが一番大事」とお
っしゃっていた。
教育に関して、来日当初、日本語が分 からず苦労した経験が多いようで、日本語教育
の充実は必ずと言っていいほど重要なものだといえる。しかし、青森県は方言もあり、
覚えた日本語だけではうまく意思疎通が取れなかったという話もあり、日本語教育だけ
ではなく、方言教育やサポートが必要であると考えられる。
次に、雇用について、フィリピンのプロダクションを経由して紹介してもらったよう
だ。青森に来るきっかけもプロダクションで「田舎に行ってみないか」という紹介があ
ったからだそうだ。働いているときは、住む部屋もプロダクションに準備してもらって
いたが、1部屋3人で言葉が わからない状況で、大変苦労したと語っていた。また、仕
事では「チップが給料よりも多い」時もあり、「いまはちょっと厳しい」とのことだ。
現在は、プロダクションに紹介してもらっていた仕事はやめていて、息子の中学校の先
生の紹介で現在の仕事について働いている。
雇用では、日本に来る前に職が決まってから来る方が多いのが分かる。しかし、歳を
取って引退したり、結婚して子育てのために辞めた方の仕事先が少ないのではないかと
感じた。ここから、日本に来た後、仕事を辞めた際や定住した際に働けるように、雇用
機会を提供することが必要だと考 えられる。
最後に生活について、子どもが生まれた時、フィリピンに戻って子育てをしようとは
考えていなかったようだ。それは「やっぱり子供の環境も考えて」と、安全であり、育
てやすいと感じる日本で育てたいと思ったそうだ。フィリピンにはあまり帰ることがで
きず 20 年近く帰っていないとのことでした。そして、八戸市に住んでいるフィリピン
人の方は、「お見合い結婚とか。ほとんどうちの村とかも結構多い」とおっしゃってお
り、友人にもお見合いで結婚した方もいるそうだ。大変だったのは「嫁、姑の関係」
「幼稚園の親同士の会話が大変だった」 とのことで、文化の違いや、農家の仕事の手伝
いで早朝起きたりすることがいままでなく驚いたようだ。
生活について、日本は安全で、子育てに適した環境だということがわかる。この面は
これから多文化共生に当たり大きな利点になるのではないかと考える。しかし、文化の
違いから結婚後子育てや嫁いだ先で苦労することが多く、お互いに文化を理解できる
様々な工夫が必要なのではないかと考える。
- 10 -
(3) マリアさん(仮名)
3人目の調査対象者はマリアさんで、 45 歳の女性でフィリピンのマニラ市の出身
だ。初来日は 1987 年。場所は北海道芦別。レジャーランドのステージでショーをやっ
ていたそうだ。この時は半年と3ヶ月の契約で 12 人ほどの団体で来ていたとのこと
で、その後、鹿児島に渡り3ヶ月過ごし、帰国してベース(基地)でショーをしてい
た。そしてアブダビ→鹿児島→帰国→八戸の経緯ではじめて八戸に訪れた。
まず、教育について、日本は治安がよく、子供が安全に勉強できるため日本がよいと
思っていた。マリアさんからの意見では、日本の文化を紹介するた めに短期交流などの
名目で一週間という短い期間でも日本の学校に来てもらい一緒に勉強し交流することで
お互いの文化に対する理解を深めることができるのではないか。また、海外派遣のシス
テムは良いものであるので、利用することによって海外から来てくれる人が増えるので
はないかというご意見をいただくことができた。
教育面では日本語を覚えることが大変で、書くことは難しい。言葉を間違えると相手
の不快にさせることもあるのでちゃんと覚えようと思った。覚えるのは見て聞いて覚え
るのが一番いいとのことだった。そこから、教育施設の充実を図っ ていかなければなら
ないことや、交流に場を増やす必要性を感じた。
次に雇用について、マリアさん曰く「がんばれば仕事はいくらでもあるし人も温かい
から、やっぱり一生懸命やることで認められる」とか、「ちゃんと見ている人がいるん
だなと思うと気持ちよく頑張ることができる」と言っていた。「頑張っていることを理
解してくれる人がいると思うことで、一生懸命働くことができた」という声を聴くこと
ができた。日本で行える政策としてはハウスキーパーやベビーシッターなどの仕事があ
れば外国籍者の方も雇用先ができてよいと思うのではないかとのこ とだった。
雇用について、頑張れば仕事はなんでもある。人も温かい。一生懸命頑張れば認めら
れる。と話していた。環境に左右されず努力している人の声を聴き、そのような人が活
躍できる場を提供していかなければならないと感じた。
最後に生活では、「日本は治安がよく盗難などの心配がないし、サービスや対応がい
いためフィリピンで生活するよりも安心できる。その上、家電など便利なものがいっぱ
いだし、食べ物がおいしく、生活するうえでのストレスが少ないので住みやすい、優し
い人が多い」と言っていた。言語については、「言葉を間違えること で相手を不快にさ
せてしまうことがあるのでちゃんと覚えようと思った。覚えるのにはじめは苦労したが
ドラマやニュースなど、見て聞いて覚えるのが一番だ」とのことだった。
生活面では、日本は安全なイメージが強く、子育ても安心してできることが大きなポ
イントとして挙げられるとのことだった。この生活での良さを推していくことが青森県
の人口減少の対策の1つとして考えられる。
7
政策提言
~輝ける未来のために ~
(1) 八戸の外国人子弟向けの教育制度の現状と課題
聞き取り調査からわかったことは、日本語教室はあっても通う人は少ないということ
である。働いていて通う余裕が無いことや、お金がかかるから独学で覚えるなどが理由
- 11 -
として考えられる。しかし、マリーダさんも「コミュニケーションが一番大事」とおっ
しゃっていた通り、外国籍者の方は日本語教室に通っていなくとも、コミュニケーショ
ンが大切と思っている。そこで、日本語教室も、日本の方の講師だけではなく、母国の
方にも講師をしてもらうことにより、日本語の勉強についてだけでなく、生活面での不
安や、悩んでいることも相談しやすくなり、通いや すくなるのではないかと思う。ま
た、日本語教室以外でも日本語を学べるような機会を新たに提供する必要があるのでは
ないかと考える。例えば、学校側が外国籍者の方を招いて、生徒たちに外国の文化、言
葉などを教えてもらう、外国籍者の方に対しては俳句や短歌、百人一首など、日本の文
化や言葉に触れ、体験してもらう。よって、日常生活で自然と覚えるような形で、日本
語も楽しく学ぶことができるのではないかと考える。それがきっかけとなり、日本の文
化や言語に興味持ってもらえると考えた。
(2) 雇用の創出を考える
聞き取り調査から、日本に在住している人はプロダクションを引退した後、アルバイ
トや派遣などで仕事をしており、生活が安定しないということだった。青森で生活しよ
うにも収入が安定しなければ、永住をしようとは思わないだろう。
そこで、私たちは外国籍者の方々が働ける1つのモデルとして、横浜中華街のような
エスニックタウンを作ることを提案する。現在、青森県では、外国で技能を学びビザを
習得していても、それを活用できる現場が少ないのではないかと感じた。また、ビザで
青森に仕事しに来ても体力的な面で長期間できないという問題もある。そこで、エスニ
ックタウンを作ることで、ビザを活用し生活できる環境を提供できるのではないかと考
える。エスニックタウンを通し、地域の方と外国籍者の方の交流の場が増えるだろう。
その結果、地域の方から職業を紹介してもらえるような環境ができ、永住につながるの
ではないかと感じた。
(3) 外国人市民にとって住みやすい街とは
実際に住んでいる方々は、日本は治安がよく安全で、子育てをする環境も整ってい
るため、フィリピンより日本で子育てがしたいと話していた。この面は、青森県の強み
であり、アピールポイントになるだろう。それを国内だけではなく海外 にも発信してい
くことが必要であると考える。例として、日本に住む外国籍者の方が、母国に日本を紹
介するイメージビデオや雑誌などを作成することで、外国籍者目線の紹介ができると思
う。
他にも、青森県は世界に誇るねぶたがある。しかし、ねぶたは青森県民以外が参加し
にくくなっている。外国籍者の方で、ねぶたに参加したいと思っている人は少なからず
いるのではないだろうか。そのような人々も気軽に参加できるような取り組みをすれ
ば、お祭りやイベントを、青森をアピールする場だけではなく、外国籍者の方と文化交
流の場として設けることもできるのではないかと考える。
しかし、問題点もある。現状として、県庁所在地の青森市でもまだまだ多言語化が進
んでいないと感じる。バスや電車といった公共交通機関や市役所の窓口など、外国 籍者
に優しくない環境といえると思う。実際に、道路標識や案内板など、2か国語で表示さ
- 12 -
れているものもあるが、それに加えて、メニューや広告・スーパーなどの表示などを日
本語だけではなく英語など多言語化することが必要である。また、国内に住む外国籍者
向けのネットショッピングサイトを作成することによって、生活しやすくなるのではな
いかと考える。
8
結論:可能性への挑戦
本調査で触れた、教育、生活、雇用についての政策は、人口減少対策において避けて通
ることはできない。「共生県・青森」を目指すことは簡単ではないかもしれないが、循環
人口や交流人口が青森県へ定住し、共生人口になるような政策を行うことが必要といえ
る。人口減少は日本全体の問題であり、特に地方は何とか解決しようと政策を考えてい
る。「共生県・青森」の実現のためには、人口が集中しており、観光資源の多い地域をお
さえて、「住むなら青森」と外国籍者に言ってもらえるような魅力のある県にしていかな
ければならない。
今回の調査を踏まえ、 定住への理想モデルの提示や、プロダクションの側面についても
調査することで、さらに、共生への可能性を示すことができるのではないだろうか。また
その際には、「自分がもし、外国に住むなら」というように、相手の立場になり考えるこ
とが重要である。
本調査から、「教育」「雇用」「生活」を充実させることによって、人口減少対策につな
がると、私たちはここに提言する。
- 13 -
9
参考文献等
【参考文献】
○
青森県基本計画未来を変える挑戦~強みをとことん、課題をチャンスに~(青森県企
画政策部企画調整課)
○
平成 26 年度学生発未来を変える挑戦プロジェクト 成果報告書(青森県企画政策部)
・ 人口減少対策と多文化共生~青森県三沢市を事例として~」
(青森大学佐々木研究室
2015)
【参考 web サイト URL】
○
八戸市役所HP 2015 年 9 月 住民基本台帳人
http://www.city.hachinohe.aomori.jp/
○
青森県庁 HP
http://www.pref.aomori.lg.jp/
○
青森県国際交流協会HP
http://www.kokusai-koryu.jp/information/foreigner/foreigner.html
○
青森県統計データランド
http://www6.pref.aomori.lg.jp/tokei/catdate.php?syori_no=3&key1=%B9%F1%C0%AA
%C4%B4%BA%BA&key2=
○
弘前大学人文学部社会言語研究室
http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/kokugo/
- 14 -
○
調査研究に参加しての感想
川村一真
今回の調査で、日本は安全で子育てがしやすいというお話がとても印象的だった。それ
は、私が暮らしていて感じる青森の良さとは全く別の視点であり、特に意識して感じたこ
とのなかったことだったからだ。新しい青森の良さを知ることができ、とても良かった。
これから、その青森の良さをなくさないように、またさらに素晴らしくしていけるように
頑張っていきたい。
福士紗恵
3名の方に聞き取り調査をして、外国籍者から視た日本の印象や外国籍者の雇用につい
て知ることができた。日本での印象では、日本は優しい国だと答えていた事がとても印象
的で、日本は外国籍者に対してあまり優しい国ではないと思っていたのでとても驚いた。
また、永住について既婚者と独身者では永住の意思が異なることが分かった。今後、男性
の外国籍者やフィリピン国籍以外の外国籍者の方々のお話も聞いてみたいと思った。
阿部駿人
実際に長い期間、日本で暮らしている外国籍の方からお話を聞けたのは貴重であり、驚
きも多かった。話を聞けば聞 くほど「もっとこうだったらいいのに」という思いが強くな
った。人口減少に対する危機感も昨年の調査以上に強く感じ、どうにかしなければいけな
いと思った。今回の調査は自分ことで精いっぱいの私を、人として次のステージに立たせ
てくれたと思う。このプロジェクトに参加できたことは私の財産である。
榊孝太
青森県の人口減少対策について考えるにあたり、今回は八戸市に焦点を当てて調査を行
った。三沢市や青森市に比べ八戸市は外国籍者の方のための取り組みは少ない印象を受け
た。八戸市だけに言えることではないが、より良い共生環境を作り上 げていくために、も
っと青森県全体で外国籍者の受け入れ態勢を充実させる必要がある。 日本語学習の支援や
雇用の場を積極的に与え るなど、まだまだできることはたくさんあるのではないだろうか。
外崎直人
今回の調査で、外国から移住し、日本で生活する方の声を直接聞けたことはいい経験だ
った。その中でも注目すべきは日本の生活の良さで、これを青森県で推していくことで、
今の環境を少しでもよくすることができると考えた。今回の調査で得た知識や経験をこれ
から活かしていき、青森県の人口減少対策に関わっていきたい。
吉沢幾哉
本調査を通じて、私は、外国籍者との共生するうえで問題となるコミュニケーションや
文化の違いなどに対する理解を深めることができた。今回の調査で得た知識からこれから
も人口減少対策など社会問題について考えていきたいと思う。
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