Comments
Description
Transcript
3.4.1 火山災害の想定
3.4 火山災害 3.4.1 火山災害の想定 3.4.1.1 火山災害の種類 火山災害には、火山噴出物による直接的災害(溶岩流、火山灰、火山ガス等) 、火山活動に伴う二次的 災害(火山性地震、地殻変動)、火山地域独特の地盤災害などがある。 火山災害の多くは火山噴火と同時に発生するが、火山ガスによる災害は噴火終了後に発生する可能性 もある。また、火山地域の地盤災害の発生は降雨などの気象条件と関連がある場合が多い。 近年の人間活動範囲の拡大、特に観光開発の進展に伴い、以前よりも火山に接近する機会が増えてお り、火山活動が起これば、より大規模な災害が発生する可能性がある。 火山(かざん、英: volcano) 地殻の深部にあったマグマが地表または水中に噴出することによってできる、特徴的な地形をい う。文字通りの山だけでなく、カルデラのような凹地形も火山と呼ぶ。 (フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia) 1)より。 表 3.4.1 火山災害の種類と要因 (1) 火山活動 受けやすい災害 マグマが地表に噴出されたものを溶岩と呼び、こ れが 1000℃前後の温度で液体として地表を流動し たものが溶岩流である。 家屋・耕地・山林の 崩壊・埋積、火災 溶岩流 火山噴出物による直接的被害 (国土交通省ホームページ)2)より。 軽石・スコリア・火山弾・岩塊・火山灰などの破 片状火山噴出物(火砕物)や溶岩片など、高温状 態にある大小の噴出物破片が一団となって、高速 で斜面を掃過する現象である。 人的被害、家屋・耕 地・山林の崩壊・埋 積、洪水 火砕流 (国土交通省ホームページ)2)より。 219 表 3.4.2 火山災害の種類と要因 (2) 火山活動 受けやすい災害 マグマと水が接触して起こるマグマ-水蒸気爆発 の際、上空へ噴き上がる噴煙柱の基部に、環状に 広がる高速で横なぐりの噴煙が生じる。この現象 は原爆の“きのこ雲”の基部に生じる噴煙「ベー スサージ」という言葉で呼ばれていた。最近ベー スサージ以外のサージがあることがわかり、全体 を火砕サージと呼ぶ。これは広い意味で火砕流に 含まれる。 人的被害、家屋・耕 地・山林の崩壊・埋 積 火砕サージ (神通川水系砂防ホームページ)3)より。 噴火、地震に誘発され火山体斜面が崩壊し、多量 の土砂、岩石が流れ下る現象。 火 山 噴 出 物 に よ る 直 接 的 被 害 人的被害、家屋・耕 地・山林の崩壊・埋 積、津波誘発 山体崩壊 (岩屑なだれ) (国土交通省ホームページ)2)より。 噴火で斜面を降下する砕屑物が、火口湖の水や氷 河・積雪を巻き込んで発生するものと、噴火によ って噴出された砕屑物が一度堆積した後、降水の ために流動する二次的なものとがある。 人的被害、家屋・耕 地・山林の崩壊・埋 積、洪水、水系汚染 火山泥流 火山礫・ 火山岩塊噴出 (消防防災博物館ホームページ)4)より。 火山噴火に伴い、空中に噴出される火山砕屑物の うち、 粒径 2mm 以上 64mm までのものを火山礫、 64mm 以上のものを火山岩塊と呼び、それらは火山灰(粒 径 2mm 以下)と同様にほとんどの噴火で噴出され る。 220 人的被害、家屋・耕 地・山林の崩壊・埋 積 表 3.4.3 火山災害の種類と要因 (3) 火山活動 受けやすい災害 噴火により灰・石が降ってくる現象。 火 山 噴 出 物 に よ る 直 接 的 被 害 人的被害、家屋・耕 地・山林の埋積、植 生変化、二次泥流誘 発、健康障害 降灰/噴石 (消防防災博物館ホームページ)4)より。 火山ガス放出 火山性地震 噴煙、噴気には、有害な火山ガスが含まれる。 ガス中毒、大気・水 質汚染、植生変化 火山活動に伴う地震。 震源が火山直下 1~20km 程度にあり地震波の性質 などが一般の地震と似た A 型地震、火口付近の浅 いところ(1km 以浅)で発生する B 型地震、噴火 と同時に発生する爆発地震とに区別されている。 家屋破壊、山体崩 壊・地盤災害誘発、 人的被害 急激な地盤変動・変形。 地下から上昇してきたマグマの挙動に伴い、急激 な隆起または沈降が生じる。 火山活動による二次的災害 地形変化、家屋破壊、 地盤災害誘発 地殻変動 (消防防災博物館ホームページ)4)より。 爆風・空振 地熱変化 津 波 火山噴火のうち、爆発的な噴火の場合に発生する 風、空気振動。 マグマの熱による地熱の上昇。 火山性地震により山体が崩壊し、崩壊した土砂が 海に流れ込み発生するものと、海面下浅いところ での海底火山の噴火により発生するものとがあ る。 家屋・山林の破損、 破壊 温泉・地下水の温度 変化 人的被害、洪水、家 屋・耕地の破壊・荒 廃 表 3.4.3 は,消防防災博物館ホームページ,火山の基礎知識を参考に作成。 (http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/hp/index2.cgi?ac1=B103&Page=hpd2_tmp) 221 3.4.1.2 火山災害の事例 表 3.4.4 火山災害の事例 北陸地方における火山災害 (国土交通省 砂防部,平成 19 年 4 月, 火山噴火緊急減災対策砂防計画策定ガイドライン) 5)より。 222 3.4.1.3 日本の活火山分布 日本の活火山分布は以下に示すとおりである。 活火山 平成 15 年(2003 年)に火山噴火予知連絡会は「概ね 1 万年以内に噴火した火山及び現在活発な 噴気活動のある火山」を活火山と定義した。平成 23 年(2011 年)6 月現在、活火山の数は 110 で ある。 図 3.4.1 日本の活火山分布 (気象庁ホームページ)6)より。 北陸地方における活火山 新潟県:妙高山、新潟焼山 富山県:弥陀ヶ原(立山)、岐阜県:焼岳・アカンダナ山・乗鞍山(神通川流域で富山県に影響) 石川県:白山 図 3.4.2 焼岳の位置 (神通川水系砂防事務所,神通川水系直轄砂 防事業平成 23 年度事業概要) 7)より。 223 3.4.1.4 被害想定 (1) 新潟焼山 「新潟焼山」は、今から 3,000 年前の縄文時代に誕生した若い活火山であり、1773 年に発生した噴火以 降は、火砕流や火山泥流を伴うような噴火は認められていないが、最近では 1983 年、1997 年~1998 年 に小規模な水蒸気爆発が発生し、現在でも時折、噴気をあげているのが確認されている。 被害想定は、平成 13 年新潟焼山火山防災の心得では 989 年(早川火砕流)に発生した大規模噴火を想 定していたが、平成 16 年火山防災マップ 9) では、大規模噴火よりも発生する確率が高い、中規模噴火 を想定し、1773 年噴火の時に発生した火砕流(大谷火砕流Ⅱ)を想定し、ハザードマップを作成してい る(図 3.4.3)。 表 3.4.5 主な火山活動 嘉永 5~安政元年 (1852 年~1854 年) 昭和 24 年 (1949 年) 昭和 37 年 (1962 年) 昭和 38 年 (1963 年) 昭和 49 年 (1974 年) 昭和 58 年 (1983 年) 昭和 62 年~平成 7 年 (1987~1995 年) 噴火 1852 年 11 月 1 日夜 噴火、翌年 5 月頃まで続く。1854 年 にも噴火。噴火地点は北西山腹の割れ目で多くの噴気孔を 生成し多量の硫黄を噴出。 噴火 2 月 5 日 噴火 爆発音、北関東に降灰。2 月 8 日にも噴火、 爆発音。 噴火 5 月 19 日 鳴動、爆発音。雪解けに伴い 5 月 14 日から早 川変色。 7 月 30 日 泥流。大雨のため泥流となり被害。 9 月 13 日 噴火 3 月 14 日 小噴火 降灰。 2、3 月ごく小規模な爆発。山頂付近に降灰。 7、8 月異常音響。 7 月 28 日 噴火 28 日未明に割れ目噴火の水蒸気爆発。降灰域は北東 100 ㎞に及ぶ。降灰 65 万トン。泥流流出。噴石のため山頂付 近にキャンプ中の登山者 3 名死亡。 4 月 14~15 日 噴火 焼山中央火口の西寄りの古い噴気孔で、極めて小規模な水 蒸気爆発。山頂付近降灰。 山頂付近で噴気活発。特に 1987 年 5 月、1989 年 3~4 月 に活発で、灰色味の噴煙や雪面変色も見られた。 (気象庁編,2005,日本活火山総覧(第 3 版)8)より。 224 図 3.4.3 新潟焼山の生い立ち (新潟焼山ハンドブック)10)より。 225 (2) 焼 岳 焼岳火山は数千年~千数百年の間隔で大きな噴火を繰り返してきており、いちばん新しい大きな噴火 は、約 2,300 年前のマグマ噴火であり、それ以降は水蒸気噴火を繰り返している。 被害想定は、そのマグマ噴火による中尾火砕流と同規模の噴火(一方向最大 3,000 万 m3)が起こった ものとしている(図 3.4.4)。 表 3.4.6 ここ 100 年間の主な火山活動 明治 40 年~明治 45 年 (1907 年~1912 年) 大正 15 年 (1915 年) 水蒸気噴火活発化 水蒸気噴火、長野県側に大正池を形成 水蒸気噴火活発化 大正 14 年~15 年 (1925 年~1926 年) 昭和 37 年 (1962 年) (神通川水系砂防事務所ホームページ)10)より。 水蒸気噴火、火口付近の山小屋で負傷者 2 名 (神通川水系砂防事務所,神通川水系直轄砂防事業 平成 23 年度事業概要)7) より。 昭和 38 年 (1963 年) 水蒸気小噴火と地震群発 中ノ湯水蒸気噴火 平成 7 年 (1995 年) (焼岳噴火と防災の本)11)より。 226 図 3.4.4 (神通川水系砂防事務所ホームページ)12)より。 被害想定規模 図 3.4.5 焼岳の噴火危険範囲 (焼岳火山防災マップ)13)より。 227