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アジア諸国の協力による環境およびエネルギー問題
アジア諸国の協力による環境およびエネルギー問題のソリューション:井上孝太郎 私達のセンター、Research and Development Strategy の目標は、「社会のビジョンを達成す る」、「社会のニーズを充足する」、「そのための研究開発の提案」を実行していくことです。具 体的には国で推進すべき研究開発、戦略を作り上げてそれを政府や社会の皆様に伝えていくこ とを使命としております。 研究者の立場から今世紀最大の課題を取り上げるとすれば、 「持続可能な発展」と「持続可能な 社会の構築」の 2 つになると考えます。そのための科学技術が非常に重要であると認識してい ます。 1 年半ほど前に、国内の有識者に集まってもらい、戦略に関する講習会ワークショップという ものを開催しました。そのワークショップ講習会の中で 2050 年ごろの持続可能な社会のビジ ョンを作り上げ、そこに至るシナリオ、そのシナリオを実現するための研究開発課題を列挙す る作業を行いました。 そこには大きな仮定や制限制約条件がありますが、。その 1 つは人口の問題です。2050 年時点 で現在の 1.4 倍の 90 億人程度に達する見込みで、これから計算するとをベースにして、GDP は世界全体では現在の 4.7 倍、1 人平均 3.3 倍増加すると予測できますしています。 さらに様々な制約条件が考えられます。議論をするときに非常に大きな枠組みとして必要な条 件、これは制約条件の 1 つになりますが、二酸化炭素の発生度発生量です。地球温暖化の抑制 という観点からこれに制限を加える必要があります。2050 年時点で現在の 1.3 倍以内、1 人当 たりで現在よりむしろ低い 10%くらい低い値にしなければならないということです。 このような条件の中でエネルギー資源の問題、水や食料の問題、あるいは生態系の保全の問題、 さらに特に視点を変えて特にアジア諸国との共同研究をいかにすべきか、共同作業をいかに進 めるべきかを議論したいと考えています。 次に二酸化炭素の問題です。各国には様々な主張がありますが、私達は、今世紀の末 2100 年 に気温の上昇を 2 度以内に抑えるという IPCC の B1 シナリオをベースに検討しました。 (スラ イド 4 を参照) そのためにこのような 1 つの排出量の推移を考えたわけです。ここが 2050 年時点です。 (スラ イド 5 を参照) 二酸化炭素の排出は非常にやっかいな問題で、これは経済発展と非常に密接な関係があります。 横軸に 1 人当たりの GDP(経済の 1 つの指標)、縦軸に 1 人当たりの二酸化炭素の排出量を示 しています。これを国ごとに作成してみると、あきらかに右上がりの傾向があります。 1 現在の世界平均がここですが、これを 2050 年までに GDP を増加させるわけですからここに持 っていくわけです。しかも二酸化炭素の排出量は現在よりも 10%下げなければなりません。赤 で示したところがアジアの国々です。現在猛烈な勢いで右上がりの傾向を示しています。 この辺の国々(スライド 5 を参照)は下げる必要がありますし、この辺の国はできるだけ二酸 化炭素の排出量を増やさずに豊かになっていくというシナリオを取る必要があります。これは 石油価格の高騰などの資源的な問題も関わってきますが、環境問題から非常に大きな制約にな ってくるということです。 石油価格の高騰に代表されるように、エネルギー資源の問題は今非常に深刻化しています。そ れと併せて環境問題を考えると、エネルギーシステムとしては以下のようにしていかざるを得 ないと考えます。 1 つはエネルギーの活性化高度利用、それから商品すなわちの需要、供給が双方にとって効等 で効率よく利用していかなければならないということです。省エネ対策を実行する、効率を上 げると言うことです。 もう 1 つは、原子力あるいは再生可能エネルギーと呼ばれる環境に負荷の少ないエネルギー源 の開発および実用化を達成するということです。私達は再生可能エネルギーに注目しています。 再生可能エネルギーの中でバイオマスというものに大きなポテンシャルがあると考えています。 これは茅さん先生のところの RITE で 2000 年に作成されたものです。どれくらいのバイオマ スのポテンシャルがあるかということです(スライド 7 を参照)。各地域別にそのポテンシャ ルが示されていますが、世界全体から見ると現在の一次エネルギーの約 70%位のエネルギー量 を代替できる可能性があります。年間の生育量からこれの 10%あるいはそれ以上ありますが程 度が使えれば、現在の一次エネルギーの 70%くらいに相当するエネルギーがまかなえるのでは ないかといことです。2050 年時点で見てもこれは約半分くらい、必要な一次エネルギーの 50% 位、その程度のポテンシャルがあるということになります。ただし、現在のバイオマスは先ほ ど説明がありましたが、ほとんど使用されていないのが現状で、使用しづらいものであること とも確かです。現在のバイオマスの利用状況率が向上しない理由はこれらが原因です。バイオ マスは効率が低い使い方しかできていないので、これを高める必要があります。 もう 1 つは効率が低い、使いにくい、コストが高い、利用するとなると非常にコスト高になる ということで普及が進まないのが現状です。これは利用率を示していますが、上記のような理 由から利用率が非常に低いということです。この効率を上げる、あるいはコストなどの改善を して、利用率を得る必要があります。 もう 1 つ、資源量を増やすような工夫、土地の有効利用、育種等もあるかもしれませんが、そ のような方策により資源量を増やしていかなければなりません。これが非常に重要な研究開発 課題になるかと思います。それでこういうことも含めて、アジアの共同研究は今一例を示しま 2 したが、非常に重要だと考えています。 1 つは地球規模の課題の解決のため、アジア各国の共通の利益、共通の課題の解決をしていく ため、アジア各国が安全で安定した繁栄を継続する必要があります。このようにためにアジア 各国の利益のためにアジア間の共同研究作業がいるのではないかと考えています。 私達もはこういうことを提案して、日本でもが二国間の共同研究、あるいは多国間の共同研究 の枠組みを増やしていくように働きかけているわけです。それと同時に新しい枠組み、エネル ギー環境をベース中心とした共同研究機構が考えられないかと検討しています。 従来の共同研究は各研究で個別になりがちで非常に効率が悪く、情報が蓄積されないというの が現状です。中央集約的な中核となる機能を持った 1 つの組織機構が必要ではないかと考えて います。 ここでやるものは主に社会モデル、発展シナリオの研究を一緒にやったらどうか。様々な安全 基準、環境基準、工業規格というものを共同で策定したらどうか。私達はこれをアジアンスタ ンダードと呼んでおりますが、こういうスタンダードを策定してグローバルスタンダードに育 てていければと考えています。 情報/観測網の共有、あるいは共同研究の設備を共同で使用できないか、さらに人材の育成/ 教育などの機能を持った組織を設立できないか提案書をまとめています。 今日、4 カ国の方々が現状と研究開発の状況、あるいは将来の展望について非常に貴重なお話 がありましたが、これらエネルギー、環境についての課題、共通の課題、あるいは解決方法に ついて議論していきたいと考えています。もう 1 つそれをどのように解決していくのか議論で きれば非常に有意義だと思います。今回で終わりではなく、昨年から始めて今年が 2 年目です。 来年もう 1 回ありますがその間に少しずつでもこのようなことが積み上がっていけばよいと思 います。 3