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首里地区の歩行者回遊性向上に向けた実証実験について 内閣府 沖縄

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首里地区の歩行者回遊性向上に向けた実証実験について 内閣府 沖縄
首里地区の歩行者回遊性向上に向けた実証実験について
内閣府 沖縄総合事務局 開発建設部 建設行政課
課長補佐
大城 照彦
企画指導係長
鳥井 譲太
1.はじめに
青い空、青い海、美しい自然、琉球の歴史・文
那覇市首里地区
化を求めて毎年多くの観光客が、沖縄を訪れてい
る。しかし、県内において歩行者の視点に立った
道案内は不十分であり 、「人にやさしい道案内」
が求められている。
県内観光集客地のうち4地区をモデル候補地区
として選定し、各地区の特徴、課題を把握すると
ともに歩行者へのニーズ調査を実施した。その結
果、訪問回数が初めての歩行者(特に県外観光客)
が多く道案内の必要性が高いこと及び周辺の観光
資源も多く、モノレール駅からの道案内の必要性
が高いと考えられる那覇市首里城周辺(首里地区)
図1 首里地区の位置と首里城正殿
を当実証実験のモデル地区として選定した。
2.首里地区における実証実験の背景
首里地区には、首里城、玉陵、園比屋武御嶽石門の世界遺産、また、金城町の石畳道、龍潭池、
円覚寺などの琉球王国時代を彷彿させる歴史的な観光資源が点在しており、年間250万人の観光客
が訪れる首里城を中心に、多くの
観光客が地区内を訪れている 。(首
里城までの利用交通手段から首里
城来園者の12%にあたる約30万人
が徒歩で首里城周辺を回遊してい
ると想定される)観光客の主な回
遊ルートは、首里駅から龍潭通り
を経て、首里城に至るルートであ
り、平成17年の道路交通センサス
によると首里駅周辺における歩行
者通行量は2,897人/12hとなってい
凡 例
る。
歴史的資源
(琉球王国関連史跡 等)
300
民族的資源
(御嶽、樋川 等)
(万人)
250
215
200
184
186
177
210
189 197
236
212
268 263
257
251
247
246
文化的資源
(泡盛酒造所、紅型工房、菓子店)
204
自然・景観資源
150
114
案内・休憩施設
100
その他
50
0
H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20
図3 首里城公園の入園者数
図2 首里地区の主な観光資源
3.首里地区回遊における課題
首里地区を回遊するにあたって、以下のような情報提供における課題があげられる。
課題①
首里駅から首里城までの安全・円滑な誘導
●観光客の主要動線である首里駅から首里城の経路上には、多くのサインが設置されてはいるも
のの、統一性が無く更新がなされていないものや設置箇所が目立たないなど不適切なものもあ
り、円滑な誘導に向けた観光客への情報提供が必要となっている。
●「道路の移動円滑化整備ガイドライン」で示されている有効幅員2mを満たす歩道は、龍潭通りの一
部工事済み区間のみと限られており、安全・安心な回遊に向けた情報提供が必要となっている。
図4 モノレール駅【儀保駅・首里駅】から首里城までの案内表示の現状と課題
課題②
観光客の回遊エリア拡大
●観光客の回遊エリアは首里駅~龍潭通り~首里城に集中しており、周辺の玉陵や金城町の石畳
道等の観光資源訪問を促す道しるべ的な情報提供が必要となっている。
課題③
公共交通等を活用した回遊促進
●首里地区には、地元のNPOが電動アシスト自転車のレンタルを実施していることや首里駅~龍
潭通り~首里城~金城町の石畳道を結ぶ150円バスが運行されているが、150円バスに関する情
報は首里駅で提供されている程度であることから、公共交通等による地区内の回遊促進に向け
た更なる情報提供が必要となっている。
課題④
体系的な観光情報の提供
●首里地区には総合案内板や観光
資源の紹介板及び回遊マップ等
を各々の団体が個別に作成して
いるため、首里地区全体を一体
的に扱ったものになっていない
ほか、掲載情報が古く更新が必要なも
図5 各団体が作成している総合案内板や散策マップ
のもあり、観光客にわかりやすい統一された情報提供やその体制づくりが必要となっている。
4.平成22年度第1期実証実験の概要
(1)実施目的及び概要
これまで課題を基に第1期の実証実験では、「モノレール首里駅から首里城公園までの安全か
つ円滑な誘導」を目的とした情報提供を行うこととした。また、観光・まちづくりに関わる団体
が連携した体制づくりに向け、実証実験の実施計画の検討・実施・実験結果の評価等は首里地区
の自治会やNPO団体、バス・モノレール事業者、行政機関等で構成される「首里地区歩行者IT
S実証実験実行委員会」を開催し、具体の取り組み方策について検討を実施した。
表1 第1期実証実験の内容
項目
目的
実験期間
対象エリア(誘導経路)
実験メニュー
案内板の配置箇所
調査
広報
内容
モノレール(首里駅)から首里城公園までの来訪者の円滑な誘導
平成22年11月1日(月)~30日(火)の1ヶ月間
首里駅~龍潭池経由(鳥堀交差点~当蔵交差点~池端交差点~首里城公園入
口)~守礼門~首里城のルート
●案内板(首里城公園の方向、経路、距離、時間、現在地を表示)
●実験チラシ(実験の概要、案内板の設置位置、首里城までの経路図を表示)
●携帯電話QRコード(案内板と同じ情報を表示)
誘導経路上の分岐部10箇所に配置
実験前(9月)と、実験中(11月)に首里城公園の久慶門において聞き取り調
査を実施。首里地区の案内誘導の満足度や、首里駅から首里城までの経路、実
験で設置した案内板のわかりやすさ等を把握
記者発表、自治会での実験案内図の回覧を実施
⑨池端交差点
⑥-2当蔵交差点
⑩首里城公園入口
③琉銀前
④-2上の毛入口
①―2首里駅
①―1首里駅
④-1上の毛入口
委鳥堀交差点
②鳥堀交差点
図6 首里駅から首里城までの誘導ルートと案内版設置箇所
図7 実験(お知らせ)チラシと
携帯電話QRコードによる案内
(2)委員会での主な検討内容及び意見
景観を考慮しベ
ージュ系を採用
委員会を開催し、首里地区の現状(案
地名等にルビ
内板の設置状況及び内容、歩道の整備状
況と歩行者通行上の課題、公共交通を活
用した回遊に関する課題等)を情報共有
することで、今後の首里地区回遊促進に
向けた課題に対する共通認識を醸成する
古都首里らしく
毛筆体で表示
現在地を示した
ポンチ絵を表示
ことができた。
○首里駅からの首里城への誘導ルート
・首里城への道としては芸大前を通る
ルートが近道ではあるが、観光客を
首里城までの距
離・時間を表示
首里城の正門である守礼門からお迎
QRコード表示
えする龍潭池経由のルートがよい。
・龍潭池経由のルートは、観光客から
すれば遠回りする印象が考えられる
が、芸大前の首里城の裏側から誘導
進行方 向がわ か
りやす いよう 矢
印と文字を表示
すると感動が薄れてしまうし、龍潭
池から見る首里城が一番よい。
案内板のサイズ
縦90cm×横30cm
○案内板及びデザイン
図8 内容やデザインに拘った案内板を検討
・既設の総合案内板や案内板(道しるべ)
の中には、観光客に対して解りにくい(レンタカーが迷い込む等)ものがあるほか、交差点
等必要な箇所への不足が見られる。
・沖縄の地名は独特であることから標識や地図の地名にはルビが必要であり、総合案内板の向
きにも配慮が必要。また、首里地区の景観に配慮したデザインも重要である。
(3)第1期実証実験の結果
結果①
首里城までの経路の変化
●モノレール駅から首里城までの経路をみてみると、実験前は「芸大ルート」が60%と最も
多く、次いで「上の毛ルート」19%、「龍潭ルート」16%の順であったが、案内板の設置
により、「案内板認識者」の経路は「龍潭ルート」61% 、「芸大ルート」17%、「上の毛ル
ート」16%と誘導対象である「龍潭ルート」の利用率が45%も増加した。
●実験お知らせチラシの配布により、「実験案内図認識者」の「龍潭ルート」利用率は72%
にまで高まった。
上の毛ルート
0%
10%
実験前調査
20%
芸大ルート
30%
40%
龍潭ルート
50%
儀保ルート
60%
70%
その他
80%
60%
19%
不明
90%
16%
モノレール
儀保駅
100%
1%
N=202
2%
1%
儀保ルート
龍潭ルート
実験中計
実験中内訳
非認識者
16%
4%
17%
3%
3% N=227
4%
58%
31%
21%
案内板認識者
実験案内図認識者
実験チラシ認識者
20%
11%
23%
15%
10%
61%
17%
4%
N=48
N=75
モノレール
首里駅
芸大ルート
守礼門
1%
4%
72%
3% N=104
首里城
○非認識者:実験チラシを受け取っておらず、案内板に気づかなかった方
○案内板認識者:実験チラシを受け取っておらず、案内板に気づいた方
○実験チラシ認識者:実験チラシを受け取っており、案内板にも気づいた方
図9 モノレール駅から首里城までの移動経路とその変化
上の毛ルート
結果②
誘導のわかりにくさに対する変化
●実験前、モノレール駅か
問題指摘率
(%)
ら首里城公園までの経路
迷った場所として指摘が
多かった、「上の毛入口」
では、問題指摘率(問題
指摘者数/当該箇所通行
6%
6%
5%
2% 2%
1% 0%
城西小学校入口
当蔵交差点
万松院入口
上の毛入口
上の毛入口
図10 経路のわかりにくさに対する変化
は11%へと5%減少した。
結果③
11%
4%
少し、「当蔵交差点」では
実験前の16%から実験中
16%
9%
琉銀前
ら実験中は9%へと7%減
10%
9%
鳥堀交差点
者数)が実験前の16%か
実験中
16%
首里駅
18%
16%
14%
12%
10%
8%
6%
4%
2%
0%
でわかりにくかった場所、
実験前
実験ツールに対する評価
●案内板のわかりやすさに対して、54%の方は「わかりやすい」、23%の方は「ややわかり
やすい」と約8割の方が概ねわかりやすいと回答している。
●案内板の大きさに対して66%の方が「ちょうど良い」と回答している一方で、「やや小さ
すぎる」が23% 、「小さすぎる」が4%とあわせて27%の方が案内板の大きさが小さいと
感じている。
小さすぎ 不明, 6%
る, 4%
わかりにく 不明, 3%
い, 8%
ややわか
りにくい, 12%
ややわか
りやすい, 23%
わかりや
すい, 54%
図11 案内板のわかりやすさに対する評価
大きすぎ やや大き
る, 1%
すぎる, 1%
やや小さ
すぎる, 23%
ちょうど良
い, 66%
図12 案内板の大きさに対する評価
図13 案内板の利用・確認状況と首里城(久慶門)での聞き取り調査状況
(4)第1期実証実験結果のまとめ
今回の実証実験の大きな目標であった「龍潭ルート」の利用率が利用者全体の約6割に増加し
たこと及び実験ツール(案内板等)に対して約8割の方がわかりやすいと判断していることから、
一定の成果が得られたと考えている。
5.平成23年度第2期実証実験に向けた取り組み
今年度の第2期実験では、第1期で一定の
成果を得た「首里城公園までの円滑な誘導」
から「首里城から周辺(首里地区)への回遊
促進」や「公共交通等による回遊促進」への
展開を目的とした情報提供を行うこととした。
また、実証実験の実施計画の検討・実施・実
験結果の評価等は学識者、首里地区の自治会
やNPO団体、バス・モノレール事業者、行政
機関等で構成される
「首里地区回遊促進策実証実験検討委員会」
を開催し、11月の実証実験実施に向けて現在
検討中である。
図14 第2期実証実験「首里地区回遊ルート」のイメージ
表2 第2期実証実験の内容(案)H23.10時点
項目
目的
実験期間
回遊策
実験メニュー
調査
内容
首里城から周辺(首里地区)への回遊促進
平成23年11月1日(火)~30日(水)の1ヶ月間
●回遊ルートを示す期間:11月1日(火)~ 16日(水)
●回遊ルートを示さない期間:11月17日(木)~ 11月30日(水)
首里地区の特色を活かし、首里城を起点とした5つの回遊ルートを設定
●総合案内板(首里地区全体地図に主な観光資源やその概要、各ルートの概略図や経路、距
離、所用時間、縦断図(高低差)を表示)を12箇所設置
●案内板(各コースの方向、経路、距離、時間、現在地を表示)を36箇所設置
●散策マップ(実験の概要、公共交通等の案内、総合案内板の情報を表示)
●携帯電話QRコード(各ルートの案内板位置や観光資源の概要を表示)
●実験用ホームページ(実験趣旨、散策マップ、施設概要、アンケート等の表示)
実験前(10月)と、実験中(11月6日・20日)に首里駅や儀保駅、首里杜館など4箇所で聞
き取り調査及びGPS機器を活用し、観光客の回遊経路や訪問先、滞在時間を調査予定。
6.今後の展開(案)
第1期及び第2期の実証実験では主に「歩行観光者をモノレール駅等から首里城まで誘導し、首
里地区の回遊性を高めるための方策」について検討・実施してきた。
【首里地区における今後の展開】
●実験結果を踏まえ、関係者間での共通認識(問題意識や整備の必要性等)のもと、本格実施
に向けた案内板のスタイルや整備手法及び首里地区全体のインフォメーションのあり方を検
討する。
●ベースマップの共有化、案内・誘導のルールづくり等により、各種団体による体系的な情報
提供の体制構築を図る。
【他地区での展開】
●第1期・第2期の実証実験結果を踏まえ、歩行者の回遊促進策検討に向けたマニュアル等を
作成し、首里地区以外の地区でも取り組めるよう情報提供を促す。
最後に、観光集客地における今後の道しるべとして、歩行者の安全・的確な誘導や回遊が可能と
なるよう、関係行政機関(道路・公園・文化財・観光部局)や公共交通事業者(バス・モノレール)
と地域が共働で検討・実施できる仕組みづくりが構築されることを望んでいる。
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