Comments
Description
Transcript
慢性肺気腫 特に気流抵抗増加のメカニズムについて
Title Author(s) Citation Issue Date 慢性肺気腫 特に気流抵抗増加のメカニズムについて 大崎, 饒 結核の研究 = TUBERCULOSIS RESEARCH, 21-22: 33-36 1964_1965 DOI Doc URL http://hdl.handle.net/2115/26755 Right Type bulletin Additional Information File Information 21_22_P33-36.pdf Instructions for use Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 3 3 慢性肺気腫特に気流抵抗増加のメカニズムについて 大 崎 鰻 (北海道大学医学部第 l内 科 学 教 室 主 任 山 田 豊 治 教 授 〉 (昭和4 0年 2月 1日受付) 近年, 大気汚染, 気道疾患の増加及び生存年数の延 長等,種々の因子が重なり慢性肺気腫は増加の傾向にあ 学的状態に対して用いられた肺気 る。そもそも肺の解剖j 腫なる名称が臨床診断名にも用いられたことと, その 1 ) 完全閉塞 ( c o r k i n g )(図1Ia) 閉塞部より末梢部の 空気は完全に吸収される。 2 ) 部分的閉塞 ( p a r t i a lb l o c k a g e ) この場合は閉塞部 に空気が流通する時に,ラ音が生ずる r、 (図1Ib) 複雑な病理解剖学的所見の統一的な区分を欠いたことが 3 ) B a l lv a l v eO b s t r u c t i o n 吸気に気道が閉塞し呼気 相倹って,臨床的所見と病理解剖所見の不一致等混乱を 時には空気の流通がある。この場合は完全閉塞時より速 招来し 1) , その字義, に閉塞部より末梢部にアテレクターゼが生ず、る。(図 E 定義及ひ、分類について論議され た2) 。現在,慢性肺気腫とは広汎性閉寒性肺疾患の内の 4 ) Check v a l v eo b s tr u c t i o n 不可逆性閉寒性肺疾患を意味するものである。 この疾患においては換気,肺胞毛細管及び肺循環機能 が障害されるが,基本的な,必須な機能障害は呼出障害 である。この現象は肺機能所見ではキー秒率の減少、で 前記の B a l lv a l v e O b s t r u c t i o n とは逆に吸気時に気道は開き, 呼気時に閉 塞する。(図1Id) この c h e c kv a l v 巴作用による気道の閉塞は, 古く 代表されるが呼出時の気流への抵抗の増大により惹起さ L a e n n e c により肺気腫の発生機転と考えられた。この説 れる現象である。このことは肺気臆患者の特徴的な理学 は肺気腫の機械的発生論者, 的所見に反映される。即ち,呼吸(呼出〉困難,補助呼吸筋 発展した。 e g a l の論拠に迄 例えば S の肥大,樽状胸郭,横隔膜上下運動の消失及び下降,居 そもそも呼気時において,気道が肺組織を介して及ぼ p u r s e dl i p s )て行う呼気,パラド‘ヅクスな呼吸 をすほめ ( される胸腔内圧に抵抗して,閉塞状態にならぬ様働く機 運動あるいはマッチテストで吹き消し不能等が見られる 転は次の三つが考えられる。 訳である。 1 ) 気管支または小気管支墜の剛性 呼出障碍呼気時の抵抗増大ーは気流曲線を絵かせる と特徴的なカーヴを見ることが出来る。図 I( a )は縦軸に 気流速,横軸に肺容量をとったいわゆる気流・肺容量ル 2 ) 肺組織の遠心性拡張 3 ) 空気による気管支腔内圧 気道閉塞の場所については第 1に,小気管支または毛 ープ (V ・V I o o p ) で健康者の強制呼吸時の成績である。 細気管支に起るとし、う説を 4)5)6)挙げなければならない。 ループから判明する如く気流は最大ピークに達した後, 即ち,軟骨支持のないこれ等の気管支は病的変化が有れ 殆んど直線を描いて呼気終末位に至る。これに反し肺気 ば容易に胸腔内圧上昇により庄迫閉塞され得るという訳 b ) ),気流速の著明な低下が有り, 腫例では(図 I( また である。内因的な因子としては炎症による粘膜肥厚,腫 L e o p o l d,Gough,りある 最大ピークに達した後,急激に低下し,殆んど安静呼気 張,粘液貯溜等が挙げられる。 位に達する。このことは,呼出運動の早期に呼気流が抵 nderson ,F o r a k e r めは病的機転により細気管支周 いは A 抗のため急速にその速度が低下したことによるものであ 聞の肺胞が破壊されクッション様の機転が障害されて胸 る 。 腔内圧が直接的に細気管支に及び,ために閉塞を来たす この呼気時の抵抗増大は“C keckv a l v emechanism"な る現象に由来すると考えられているがそのメカユズム及 び出現個所に関する説について論及する。 一般に気道の狭窄,閉塞は,次の四つの型に分類され る3)。 といっている。 c h e c kv a l v e " は前述の如え呼気時の閉塞状態を指す “ が,しかしながら,その解剖学的確証を欠き飽迄も生体 内現象の仮説的説明に用いられている訳である。気流抵 o i s e i l l e の法則で明かな如く気道狭窄があれば著 抗は p 34 明に増大する(駆山庄は気j 丘内径の四乗に反比例する〉。 肺気腫における気流抵抗のよ並大を斯の如き気道狭窄現 象で説明せんとする第 2の説がある。 用いて気近内径を測定し肺気臆患者において強制I J r予気時 に、大きな気管交もの極度の虚脱を J~ た。また同時に気 管支内圧を測定しこの気道の狭窄が気流抵抗の治大に主 M日cklem,F r a s e r 及び B a t 巴仰は C inehronchogramを 要な役割を果たしていることを明らかにし,閉塞性肺気 l Q 1 ー 一 一J 呼気→!?←吸気 5Q j s e c . 図 1a 健 康 I N S P . EXP. フ﹁︼ ポ フ ( a ) 図 1b 肺 気 臆 患 者 者 全 閉 塞 j I N S P . EXP. ( d ) Checkv a l v eo b s t r u c t i o n 図 E 気道狭窄,閉塞の種々相 3 5 腫の場合細気管支が閉塞あるいは狭年の唯一の例所では るを仰ない。 最近唱えられているみ(}3の説として気近狭窄個所が気 ないと結;治した。 0)が2 また病理解剖面よりは Wright1 0例の剖検例にお 管分岐部の上部であるという説である。即ち R a i n e rl2) いて中等大の気管支(区域気管支から第 1,第 2及び第 はやはり Cinebronchogram を用いて検索し正常の呼気 3分校まで)に著明な変化を認めている。即ち気管支壁 性狭窄が 18~32)?ó' て、あったが肺気l腫患者では該部に 72% は極度に薄くなり,軟骨板は仲びて妖の如くなりまた軟 もの狭窄を観た。この事実より狭窄部,即ち呼気時に抵 骨板が消失したこれの支持のない様な気管支壁が認めら 抗増大する部は気管であり,気管の膜様部の虚脱がその れた。 原因であると結論した。 囲りの肺組織を取り除くとこれ等の気管支は虚脱状態 Herzog, 13¥Ni 田e nI4)等もこれ等と同様の所見を得, となり内腔を膨らませると気管支拡張が明らかであり, boneg r a f tの薄い板を用いて気管の膜様部を支持する手 顕微鏡的にも萎縮が著明であった。これよりも大きな気 術を行~ " これにより患、者の肺機能の改善を認めてい 管支では内腔が正常で円形であるのに対し,肺気腫の場 る 。 合は楕円形となり,膜様部は薄く広くそして弛緩してい 斯の如く,閉塞または狭窄個所が細気管支のみでなく る。検径が 2mm以下の小気管支にも変化が見られたが 中等大の気管支または気管にさえも起り得ると L、う報告 前記の中等大の気管支程ではなくこれ等の所見より呼気 が見られる様になってきた。 時における狭窄は中等大の気管支に起り,気管支壁の萎 縮がその原因であると結論している。 肺気腫患者呼気流速度の低下は特徴的な所見であり, 気流抵抗の増加がその原因であるが,その低抗増大のメ 気管支の虚脱は,肺気腫患者の気管支造影で,強制呼 カハズムについて論及した。 気時に明らかに認めることが出来る。(写真 1a,及び 1b) 本論文は第 1 0回北海道結核談話会における講演要旨で R田 t r e p o及び Heardll)の , 肺気腫症例の気管支軟骨 板は全く正常で,壁の萎縮は認められなかったという Wright とは全く逆の所見の報告があるが, ある。 山田豊治教授の御校聞を深謝致します。同時に本講演 この気管支 の機会を与えて下さった北海道結核病学会会長高橋義夫 の虚脱が壁の萎縮によるのか,あるいは前記の如き夕、y 教授,国立札幌療養所長宮城行雄博士に謝意を表しま ション様械作の低下によるものか,あるいはまた真に気 す 。 管支の虚脱による所見であるのか 15J,未だ不明といわざ 写真 1a 肺気腫患者:安静吸気時 写真 1b 全例:強制吸気時 6 3 文 献 d n .,a ,A.S h c s i r .,F .P .,Wyatt,S ,H.C 田 t ) Sw 1 . 5 6 ed. 55; 5 .M n r e t n .I n n . A E . r,P e l l e s n i K ) 1 6 9 1 ( f no o i t a c i f i s s a l dc n sa n o i t i n i f e y,D g o l o n i m r e )T 2 d e t a l e d r n y emphysema a r a n o m l u c p i n o r h c ) 9 5 9 1 6( 8 4;2 . Thorax,1 s n o i t i d n o C 9 3 95; 6 . s s A . d e m . Amer. .;J n,C o s k c a )J 3 ) 0 3 9 1 ( ) 1 5 9 1 5( 7 1 ;1 0 t,3 s e v n .I n i l .C ,H. :J ) Dayman 4 ) 4 5 9 1 0( ;8 6 .1 d e .m .J :Amer l ta .,e .L ) Fry,D 5 s n i k p o H s n h o lJ l u B l: ta .M. e .] lE ) Campbel. 6 ) 7 5 9 1 9( 2 1,3 0 .1 p s o H 2, . :Thorax,1 Gough. J d n a , . G . J , d l o p o ) Le 7 ) 7 5 9 1 9( 1 2 .:Amer. .G A r, e k a r o dF n .a r .J ,A.E n o s r e d n )A 8 ) 2 6 9 1 8( 1 2,2 .,3 d e .m ] ,D.V.・ s e t a dB n .,a .G r,R e s a r .,F T . ) Macklem,P 9 ) 3 6 19 9( 9 8;6 l1 o i s y h lp . p p .a ] 3 7,6 y3 g o l o h t a P . .:Amer. J R . ,R ) Wright 0 1 ) 0 6 9 1 ( . v e .R r e m . A .E ,B d .andH白 r .L o,G p e r t 田 R ) 1 1 ) 4 6 9 1 5( 9 0,3 .,9 s i .D R白 p c i c a r o h .t :J . l ta .e ,D n o s n i h c t u H , rW.G e n i a )R 2 1 ) 3 6 9 1 9( 5 6,5 g,4 r u lS . u 田c v o i d r a C ) 3 6 9 1 5( l,6,8 e g n a i r .:T ) Herzog,H 3 1 9 1 r.84,2 h c s h c W . d e m . z i e w h c . S ,R n e s s i )N 4 1 ) 4 5 9 1 ( n u o af b i C n( o i t c n u df n ea r u t c u r t ) Pulmonarys 5 1 , l l i h c r u h C . A & . T . , 4 9 . p ) m u i s o p m y ns o i t a d ) 2 6 9 1 London (