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流行性耳下腺炎性睾丸炎の 5例 - Kyoto University Research

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流行性耳下腺炎性睾丸炎の 5例 - Kyoto University Research
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流行性耳下腺炎性睾丸炎の5例
片村, 永樹; 新井, 永植; 福山, 拓夫; 小松, 洋輔
泌尿器科紀要 (1967), 13(1): 35-41
1967-01
http://hdl.handle.net/2433/113086
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
35
泌 尿紀 要13巻1号
,昭 和42年1月
流行性耳下腺 炎性睾 丸炎 の5例
大阪府済生会中津病院泌尿器科(院 長:間 島良二博士)
片
村
永
樹
新
井
永
植
京都大学医学部泌尿器科学教室(主 任;稲 田 務教授)
FIVE
福
山
拓
夫
小
松
洋
輔
OF
MUMPS
CASES
Eizyu
KATAMURA and
From the Department
ORCHITIS
Eisyoku
ARM
of Urology, Saiseikai Nakatu Hospital, Osaka
(Chief : Dr. E. Katamura)
Takuo
FUKUYAMAand Yosuke
From the Department
of Urology, Faculty of Medicine, Kyoto University
(Director : Prof.
Five
cases
one was
of adult
bilateral.
mumps
orchitis
T. Inada)
were presented.
Testicular
biopsy was
performed
which findings were described.
Consecutive
seminal
after orchitis revealed
oligozoospermia
1緒
Four were affected unilateral
言
analysis
examined
現病 歴:5日
流 行 性 耳 下 腺 炎 は ウイ ル ス に よ る伝 染 性 疾 患
時 代 か ら知 られ,広
く一 般 成 書
に記 載 され て い る が,わ れ わ れ 泌尿 器科 医 が か
か る症 例 に遭 遇 す る こ とは 比較 的稀 で あ る.
る.近 年 ウイ ル ス学 の進 展 に よ り ム ン プス
ウ
イル ス は 唾 液 腺 と くに 耳 下 腺 を 侵 す の み な ら
し,4日
前 よ り右耳 下 腺 部 の 腫 脹,発 熱 を来 た
前 よ り右 睾 丸 部 に激 痛 お よび 腫 脹 が あ る.
局所 所 見=右 側睾 丸 は超 鶏 卵 大 に 腫 脹 し,陰 褒 皮 膚
は 発赤,浮 腫 状 で あ る.右 副 睾 丸 お よび 左 畢 丸 副睾 丸
に は 異 常 を認 め ない.
聖 丸Biopsy所
見:間 質 に は浮 腫 お よび 炎 症 性 細胞
精細 管壁 に は変 化 は 少 な い が,精 細 管 内腔 へ の 細 胞
浸 潤 と精 細 胞 系 の 脱 落 変性 が み られ る.Spermatogenesisは 減 少 して い る(Fig.1,2).
ず,そ の他 の腺 組 織,神 経 組 織 に も強 い 親 和 性
精 液 検 査所 見:表1に
を有 し,全 身 感 染 症 と して 扱 わ れ る よ うに な っ
治 療:ア
こで は一 般 的 に 流 行 性 耳 下 腺 炎 性 睾 丸
炎(以 下M.Orchitisと
略)と
of
during 2 to 28 months
浸 潤,出 血 性 変 化 を 認 め る.
最 近 そ の5例 を 経 験 した の で こ こに 報 告 す
た が,こ
and
at acute stage in three of five cases,
in four cases.
で あ る.こ れ に 睾 丸 炎 を 併 発 す る こ とは 既 に
Hippokratesの
KOMATSU
して記 載 す る.
一 括 す る.
ク ロマ イシ ンV静 注750mg×3日
タ ソデ
リーノ
レ3錠 ×7日.
症 例2肥
○ 政031才,洋
服 仕 立 人.
初 診:昭 和41年4月13日.
■
症例1高
自
験
○亀○郎31才,建
例
設労務.
主 訴:右 下 腹 部 の 激 痛.
現 病 歴:1週
間前 子 供 が 流 行 性 耳 下 腺炎 に罹 患 し,
初診:昭 和41年8月1日.
4日 前 右 の ち 左 の耳 下 腺 の 腫 脹 を きた した.1日
主訴:右 睾 丸部の激痛,
り右 睾 丸 部 の 激 痛 あ り,今 朝 よ り右 下 腹 部 に激 痛 を来
前よ
36
片村他:流 行性耳下腺炎性聖丸炎の5例
表1自
症 例
L高
年令
患側
急性剃
右
6×106
Mob(一)
WBC(+)
○ 亀 ○ 郎31
2,肥 ○
政031
右
5。3×106
Mob50%
WBC(+)
3.四 〇
俊030
両
1×106
Mob(一)
WB(+)C
4.長 ○
賢021
左
5,前 ○
孝022
左
験例の精 液所見
・ヵ月後1・ 力服1・
力咽15カ
月後 28ヵ
月後
治
療1備
考
一子あ り
罹患後妊
娠(一)
一子 あ り
24×106
Mob70%
6.8×106
Mob(一)
無精子症
罹 患後 妊
娠(+)
一 子あ り
15×106
Mob良
5×loe
Mob良
4.2×10e
Mob良
5×106
Mob(一)
WBC(+)
RBC(+)
セ ロトロ
ピ ソ90本
VB12
90本
ゴナ ス テ
ロ ソ22本
VB,2
22本
6.3×106
Mob良
36×106
Mob良
Mob:運
動 性,WBC:白
血 球,RBC:赤
血球
る,
た した.
局所 所 見:右 睾 丸 は 超 鶏 卵 大 に腫 大 し,圧 痛 著 明 で
局 所 所 見:左 睾 丸 は 超鶏 卵 大 に 腫 大 し,弾 性 硬 に 触
あ る.右 副 睾 丸 及 び 左睾 丸 副 睾 丸 に は異 常 を 認 め な い.
れ る.左 副 聖 丸 及 び 右 副睾 丸聖 丸 は 異常 を認 め な い.
聖 丸Biopsy所
見:間 質 に 浮 腫 と リンパ 球,プ ラズ
・
マ細胞
,好 中 球 な どの炎 症 性 細 胞 浸潤 がっ よい.間 質
3錠 ×6日.
細胞 は 不 明瞭 とな って い る,精 細 管壁 は肥 厚 し,細 胞
症 例5前
が増 加 し てい る.精 細 管 は 不 規 則 に侵 され,内 腔 が炎
初 診:昭 和40年1月24日.
治 療=ア
ク ロマ イ シ ソ1.09×6日,タ
○ 孝022才,自
ソ デ リール
動 車運 転 手.
症 性細 胞 で満 され た もの と,精 上 皮細 胞 が 残 存 して い
主訴:左 寒 丸 の有 痛 性腫 脹.
る精細 管 が 混 在 して い る.
現 症=初 診 の1週 間 前 に 両側 耳 下 腺腫 脹 を来 た し,
そ の腫 脹 が 消 腿 した と ころ,1月24日
巨大 細 胞 は 認 め られ ない(Fig。3,4).
治 療:ア
ク ロマ イ シ ン1.09×7日,タ
ソ デ リール
局所 所 見 言右 睾 丸 に 比べ て 左睾 丸 は僅 かに 腫 大 して
6錠 ×7日.
症 例3四
〇 俊030才,会
い る.左 副 睾 丸 に は 異 常 を 認 め な い.
社 員.
治療:ア
初 診:昭 和41年5月27日.
ク ロマ イ シ ソ1.09×6日.
皿
主訴:両 側 翠 丸 の有 痛 性 腫 脹.
現 病 歴310日
前 に 左耳 下 腺 腫 脹 し,同 時 に 両 皐 丸 痛
が あ り,翌 日 よ り両耳 下 腺 腫 脹 し,両 睾 丸 が 腫 大 して
考
ウ イ ル ス に よ る.1934年
Johonson&Goodpasturei〕
近医 に て抗 生 物 質 の投 与 を うけ て い た.
局所 所 見:両 睾 丸 と も軽 度 に 腫脹 して い た,
睾 丸Biopsy所
按
病源問題
本症は ムンプス
きた.
見 ・リンパ 球,好 中球,プ
ラズ マ 細
が始め てムソプス
・ウ イ ル ス の 分 離 に 成 功 し た .甲
野2)(1952)
は ム ン プ ス ・ウ イ ル ス 感 染 は1つ
のsystemic
胞 の浸 潤 が つ よ く,精 細 管 は 萎 縮,破 壊 され てい る.
diseaseで
間 質 に は線 維 素 の 沈 着 が認 め られ る(Fig.5,6).
度 の た か い も の に す ぎ ず,ム
治 療:ア
ク ロマ イ シ ソ1.09×7日,タ
ン デ リール
3錠 ×7日.
症 例4長
よ り左睾 丸 部 が
有 痛性 に 腫 大 して 来 た.
○ 賢021才,自
初 診:昭 和39年4月22日
動 車 運 転 手.
。
あ っ て,耳
ン プ ス ・ウ イ ル ス
感 染 の全 貌 を表 現 す るの に 流 行 性 耳 下 腺 炎 とい
う 呼 称 は 不 適 当 で あ り,ま
の2次
た 睾 丸 炎 を耳 下 腺 炎
的 合 併 症 と 見 徴 す こ と も 妥 当 で な い と主
主訴:左 下 腹 部 痛.
張 し て い る.そ
現病 歴=左 耳 下腺 炎 発症 後1週 間 目に左 睾 丸 部 の 激
臨 床 的 に2型
痛,の ちに 左 下 腹 部痛 を来 た した.高 熱が っ つ い て い
下 腺 炎 は そ の う ち 最 も頻
して ム ンプ ス
に 分 け,第1型
ウ イ ル ス感 染 を
は 腺 組 織 系 統 を侵
して 症 状 を 呈 す る も の で 耳 下 腺 炎,睾
丸 炎,卵
片村他:流 行性耳下腺炎性睾丸炎 の5例
巣 炎,膵 臓 炎 等 を 起 し,第2型
は神経系統を侵
して症 状 を呈 す る もの で,髄 膜 炎,神 経 炎 等 を
起 す もの と し,第1型
で は 耳 下 腺 炎 以 外 の もの
で は思 春 期 以 後 の 成 人 に み られ,小 児 では 稀 で
あ り,第2型
は小 児 に 多 く成 人 に 少 な い との べ
て い る.
人 の 耳 下 腺 炎 罹 患 者 の5分
の1に
睾丸炎合併 を
み た と 述 べ て い る.
一 方 本 邦 に お い て は 矢 野8}(1953)の110例
合 工o)(1957)の188
例,矢
と各 々 流行 時 に お け
野11)(1964)の296例
は11例(5.8%)(成
流 行 性 耳 下 腺 炎 は小 児 期 に罹 患 す る こ とが 多
く,梢 男 子 に 多 く.4才
い.患 者 の80%ま
以 下40才 以 上 に は 少 な
でが15才 以下 で あ る.Fried-
免 疫 学 的 検 査 に よ り,成 人 で は60%
に耳 下腺 炎 の既 往 が あ り,30%は
を経 過 し,10%が
不 顕 性 に感 染
未 感 染 の状 態 に あ る と推 定 さ
認 め,吉
人7例)に
ま で 田 村12)の18例,昭
また 発生 した 集 団 に よ りか な りの差 を 認 め る よ
表2流
報 告
者
年代 量一
難
Wesselhoeft
1920
8,153
18.O
Benard
1927
5,000
l5.O
Radin
1918
4,397
l3.9
報 告 例 もか な りあ る と
れ に して も欧米 に 比 して 頻 度 は
病理
急 性 期 の 所 見 に っ い て は,Ga1114},Charnyi5},
Scottが
廃澱%
川 の 記 載 が あ る.後
陰 嚢 皮 下 組 織 は 肥 厚 し 浮 腫 状 で あ る.鞘
膜腔
に は 多 少 滲 出 液 が 増 加 し て い る 程 度 で,陰
嚢水
腫 は 認 め な い.鞘
質 が 付 着 し,表
膜 内 板 に は斑 点 状 に線 維 性 物
面 の 血 管 は 拡 張 努 張 し て い る.
1944
Candel
1944
1,037
17.6
睾 丸 は 全 体 に 硬 く触 れ,青
Gellis
1945
502
32.0
を 加 え て も 内 容 は 圧 出 さ れ な い,
Rambar
1946
249
Eargel
1947
Werner
1950
35.0
24.5
期 の 所 見 は,
報 告 し て い る.
Dermon&LeHew
126
∼ 昭 和30
低 い よ う で あ る.
酒 徳16).小
行性耳下腺炎性睾丸炎発生頻度
和18年
以 降 現 在 ま で われ わ れ の調 べ え た範 囲 で は報 告
思 わ れ る が,そ
行 によ り
本 邦報 告 例 は
年 ま で 小 川131等 の12例 の 集 計 が あ る が(表3),
が,稀 に 再 感 染 を 起 す こ とも あ る.
い て は多 数 の報 告 が あ る(表2).流
の合 併 が
は 全 く睾 丸 炎 の 合 併
を 認 め て い な い.M.Orchitisの
例 を 見 出 さ な か っ た.未
発 の頻 度 に関 し て は外 国 に お
巣 炎1例
あ っ た と報 じ て い る が,他
昭 和18年
の うち 落 合
睾 丸 炎 の合 併 を
田 は 睾 丸 炎1例,卵
れ る と述 べ て い る.終 生 免 疫 を得 る よ うで あ る
M.Orchitis併
,
吉 田9)(1955)の307例,落
る流 行 性 耳 下 腺 炎 の 観 察 が あ る.こ
発生頻度
wald3)は
37
組 織 学 所 見:一
味 を お び,被
膜切 開
般 に 巣 状 に 変 化 が 起 る とい わ
25.5
1,086
4,9
れ,間
質 の 浮 腫 に 始 り,間
し,リ
ソ パ 球,プ
Riggs
1962
(成 人19)
14∼35
Scott
1963
(成 人20)
質の血管は拡張充盈
ラ ズ マ 細 胞,組
浸 潤 が 認 め ら れ る.自
験 症 例1の
織 球様 細 胞 の
ご と く,精
細
管 壁 の変 化 は未 だ 少 な い
う で あ る.
第2∼
一 般 に幼 小 児 期 に睾 丸 炎 を合 併 す る こ とは 稀
で あ るが,思
春 期 以 後 で は睾 丸 炎 合 併 の頻 度 が
第3病
日に な る と問質 の細 胞 浸潤 は さ
らに 高 度 と な り,う
る.こ
っ 血,線
維素沈着を 認 め
の 頃 に な る と精 細 管 壁 は 肥 厚 し,精
高 く な る.Wesselhoeft4)(1942),Cande15)
の 中 心 部 に,リ
(1951)はM.Orchitisは
等 の 炎 症 性 細 胞 浸 潤 が 始 ま り,精
思 春 期 お よび成 人 期
ソ パ 球,プ
に 限 っ て 発 生 し10才 以 下 に は 発 生 し な い と述 べ
落,変
て い る が,Werner6}は
系 は 全 く 消 失 し,セ
小 児 期 に4例(小
流 行 性 耳 下 腺 炎 患 老 のO.5%)を
い て も小 児 期2例
認 め,本
児期
邦 にお
の 報 告 が あ る.Wernerは13
才 以 後 に 罹 患 し た も の で は19%にM.Orchitis
の 合 併 を 認 め,Scott7〕(1960)は25,000名
の成
性 破 壊 が 起 る.一
自 験 症 例2に
細 管
ラ ズ マ 細 胞,好
中球
細 胞 系 の脱
部 の精 細 管 で は精 細 胞
ル ト リ ー 細 胞 の み と な る.
お い て,精
細 管 壁 の肥 厚 お よび精
細 管 内 腔 に 炎 症 性 細 胞 浸 潤 が 著 明 で あ る.精
細
胞 系 の 残 存 し て い る精 細 管 も 認 め られ る.さ
ら
に 進 行 す る と精 細 管 内 腔 は 全 く リ ン パ 球,プ
ラ
38
片村他:流 行性耳下腺炎性睾 丸炎 の5例
表3流
番号擁 潴
年代 匡
行性耳下腺炎性睾 丸炎本邦報告例
令1。雑 議
患
側
と 合 併
記載な し
左 側(血 尿 一尿 意 頻 数)
記載な し
小
林1924
19
5日
代
田1926
20
7日
3
池
上1928
23
8日
4
北
野1929
43
5
伊
藤
18
記載な し
6
片
平1931
32
7
藤
田1932
26
8
大
両側
右側
5日
両側
5日
右側(右 乳腺炎)
20日
両側
記載な し 記載 な し
耳 下腺 炎
左側
の1日 前
7日
両側
記載な し 記載 なし
〃
右側
耳 下腺 炎
右側(出
血性腎炎)
の1日 前
5日
右側
9
〃
32
〃
21
山
〃
10
増
田1933
11
鵜
沢1934
5
12
長
竹1937
29
13
稲
垣1938
32
14
倉
垣
23
15
大
藤1939
39
16
本
村1940
6年4カ
17
田
村1942
27
〃
22
〃
18
2∼3日
〃
月
睾 丸 炎 治 療 日数
左側(両 側難聴)
右側(両 側難聴)
左側
患側不明(脳 膜炎)
1
2
〃
症
5日 後 下 熱
3日 目 よ り下 熱腫 脹 去 り始
む
18日
10日
21日
4日
10日 目に下 熱 同時 に 腫 脹 消
腿
13日
12日
工5日
数 日
17日
4日 間 で 稽 々腫 脹 消 腿
記載な し
〃
18日
9日
24
3日
〃
5日
〃
12日
27
5日
20
〃
〃
26
9日
〃
9日
21
〃
〃
24
7日
〃
不明
20
10日
左側
7日
22
6日
右 側(右 副 睾 丸 ・精 嚢 炎)
15日
村1955
22
7日
右側(右
右側
両側(両
両側(両
右側
両側(両
左側
7日
5日
19
22
近
鈴
23
24
藤1949
木1951
〃
野
〃
25
酒
徳1958
24
26
小
川
〃
22
同時
〃
'
〃
30
3日
〃
〃
24
4日
〃
29
2日
〃
28
7日
〃
29
同時
31
1日
27
28
〃
29
30
31
32
鈴
木
〃
自験例1966
副睾丸炎淋巴球性髄膜炎)
記載 なし
副睾丸炎)
副睾丸炎)
10日
8日
5日
副睾丸炎)
7日
14日
〃
8日
右側
10日
〃
7日
7日
7日
両側
左側
7日
〃
12日
33
〃
〃
3正
3日
34
〃
〃
30
同時
35
〃
〃
21
36
〃
〃
22
7日
1
ズ マ細 胞,組 織 球 様 細 胞 で 占 め られ,こ れ らの
徴 で あ る封 入 体 を認 め た との 記 載 は ない.自 験
細 胞 浸 潤 のた め,精 細 管 構 造 は 不 明瞭 となっ て
例 に おい て も認 め る こ とは で き なか っ た.
了 う.間 質 細 胞 も不 明瞭 とな り認 め られ な くな
る.自 験 症 例3で は 細 胞 浸 潤 が 高 度 とな り精 細
管 構 造 は 不 明 瞭 と な り萎 縮 して い た,
炎 症 が 軽 度 の 場 合 は 治 癒 に お もむ き精 細 管 は
診断
急 性 耳 下 腺 炎 が存 在 し,し か も流 行 時 に は診
断 は 容 易 で あ る.
散 発 的 で耳 下 腺 腫 脹 を 欠 く場 合 は1)赤
再 生 す るが,高 度 の場 合 は精 細 管 壁 は硝 子 様 に
凝 集 抑 制 試 験2)補
肥 厚 し,精 細 胞 系 は 全 く消 失 す る.間 質 に は線
離4)皮
維 増 殖 が 起 る.な お,ウ イ ル ス に よ る病 変 の 特
な らな い.
体 結合 反 応3)ウ
血球
イ ル ス分
内反 応 な どの特 異 的 診 断 法 に よ らね ば
片村他=流 行性耳下腺炎 性睾丸炎の5例
この他 患 者 の病 歴 で耳 下 腺 炎 患 者 との接 触 機
会 の 有 無 を 参 考 に し な け れ ぱ な ら な い.
悪 寒,高
復 期 患 者 血 清 の γ一グ ロ ブ リソ が 予 防 的
な 効 果 を も っ て い る よ う で あ る(Gellis,194518)
熱,悪
心 嘔 吐 お よ び耳 下 腺 腫 脹 に 始
り,通 常 耳 下 腺 腫 脹 後5∼7日
い 疹 痛 を 訴 え,睾
目に睾 丸 に激 し
丸 は 腫 大 す る.
;Risman,1956;Scott,1963).Gellisは
照 群27.4%の
7.8%に
し か し睾 丸 炎 の 症 状 が 耳 下 腺 腫 脹 に 先 行 す る
例,睾
べ て い る.
唯,回
症 状 お よび経 過
39
丸 炎 の み で 経 過 す る 例 の 報 告 も あ る.一
対
睾丸 炎 併 発 の 頻 度 が投 与 群 で は
減 少 し た と報 告 し て い る.
合併症
副 睾 丸 炎,前
立 腺 炎,精
管 炎 な どの隣 接 臓 器
般 に 偏 側 性 に 来 る こ と が 多 い が,約5分
の1に
へ の 波 及 が 認 め ら れ る が,問
両 側 性 罹 患 が 認 め ら れ る(Werner).本
邦例 で
丸 萎 縮 な ら び に そ の 後 に 起 る不 妊 症,そ
は36例 中7例
に 両 側 性 罹 患 を 認 め る .他 覚 的 に
は 陰 嚢 皮 膚 は 発 赤 浮 腫 状 に 腫 脹 し,罹
内 容 は2∼3倍
患側陰嚢
の 大 ぎ さ に 腫 大 す る.睾
痛 が 著 明 で あ り弾 性 硬 に 触 れ,局
丸 は圧
所 体 温 上昇 を
認 め る.検
査 所 見 と し て は 耳 下 腺 炎 の 結 果 第1
週 ま で,血
清 ア ミ ラ ー ゼ,尿
中 ア ミラー ゼ の上
昇 を 認 め る.
め て 稀 で あ る が 腫 瘍 の 発 生 で あ る.睾
炎 症 消 失 後1∼6ヵ
して極
丸萎縮 は
月 の 間 に 起 り(Werner),
そ の 発 生 頻 度 は36∼55%と
い わ れ る(Wessel-
hoeft,1920;Cande1,1945;DermonandLe
Hew,1944;Werner,1950).男
性 不 妊 症 の病 因
と し て 本 症 の 占 め る 割 合 は 小 さ い よ う で あ る.
これ は 先 述 し た よ う に 耳 下 腺 炎 に は 大 部 分 は 小
Mongani7)(1959)は30例
のM,Orchitisに
児 期 に 罹 患 し,思
つ い て,そ
の 自然 経 過 を 観 察 し て い る が,発
後2∼3日
で 最 高 潮 に 達 し,有
第4日
題 と な る の は,睾
ま で つ づ き,第6∼
病
熱 期 間 は 第3∼
第8日
目か ら睾 丸 の
腫 脹 が 消 腿 す る と述 べ て い る 。
春 期 後 の 罹 患 は 少 な い こ と,
ま た 小 児 期 に お い て は 睾 丸 炎 を 来 す こ とが 稀 で
あ る こ と か ら首 肯 で き る.WemerはMOrchitisの13%は
不 妊 と な る が,耳
下 腺炎全体 の
数 か ら み れ ば 非 常 に 少 な く男 性 不 妊 の 原 因 と し
予 防 お よび 治 療
て 本 症 は 重 要 で な い と 述 べ て い る.
未 だ 決 定 的 な予 防 お よび治 療 法 は な い
以前
本 邦 で は 石 神19}(1957)が
は浮 腫 に よ る睾 丸 実 質 の圧 迫 萎 縮 を 防 ぐ 目 的
例,酒
で,睾
が80例 中4例
丸 被 膜 穿 刺,陰
嚢 水 腫 液 の 除 去等 の 外科
的 療 法 が 行 な わ れ た が,既
にCharnyが
した ご と く精 細 管 の 変 性,破
指摘
壊 は 浮 腫 に よる圧
徳(1958)が102例
不 妊 男 子67例 中1
中5例,志
にM.Orchitisに
る も の を 認 め て い る.最
田20,(1950)
よ る と思 わ れ
近 の本 邦諸 家 の 男 性 不
妊 症 の 臨 床 統 計 を み て も,そ
あ15∼20%に
流行
迫 萎 縮 よ りも炎 症 性細 胞 浸 潤 に よ る方 が 大 で あ
性 耳 下 腺 炎 の既 往 が み られ るが 不 妊 との 因 果 関
る の で,今
日 で は 最 早 行 な わ れ な い.
痛解熱剤投与 な
係 は 明 ら か に さ れ て い な い(石 神2n,1962;加
藤
22}
,1965;入
沢23},1966)Heinke24}が
述べて
どの従 来 か らの対 症療 法 の他 に 種 々 の抗 生 物 質
い る よ う に 流 行 性 耳 下 腺 炎 に 罹 患 し て も不 顕 性
が 投 与 さ れ る が,予
に 睾 丸 炎 を 経 過 し て い る場 合 も推 測 さ れ,こ
安 静,挙
睾,局
所 冷 湿 布,鎮
防 お よび治 癒経 過 に 著 効 は
な い.Diethylstilbestrol投
与 に つ い て もそ の 効
果 は 不 定 で あ る(Savran,ユ946;Norton,
1950;Hoyne,DiamondandChristian,1949).
Cortisonの
が,予
防 的 な効 果 は な い が対 症 的 に著 効 を 示 す
と い わ れ る(Solem,1959;Risman,1956;
(1959)はCortisone投
し て,臨
が 不 妊 を 招 来 す る よ うな睾 丸 の病 的変 化 の 原 因
と な っ て い る 場 合 が あ る の か も知 れ な い.
不 妊 と な る 絶 対 数 は 少 な い わ け で あ る が,一
効 果 に 関 して は 多 数 の報 告 が あ る
ZelroffandFatheree,1957).し
れ
旦M.Orchitisに
罹 患 す る とか な り高 率 に 造
精 機 能 の 障 害 を 来 す よ う で あ る.雌chelson25)
(1947)はM.Orchitisの
か しMongan
与 群 と対 照 群 とを 比 較
床 経 過 上 殆 ん ど差 を 認 め な か っ た と述
ぎ9例(47.3%)に
性 罹 患 は8例
(1960)は
既 往 の あ る19例 に つ
無 精 子 症 を 認 め,う
ち両 側
で あ っ た と 記 載 し て い る.Scott
思 春 期 以 後 にM.Orchitisに
罹患 し
片村他=流 行性耳下腺炎性畢丸炎の5例
40
た14例 中3例
に 無 精 子 症,3例
め,う
ち4例
が 両 側 性 罹 患 で あ っ た と述 べ て い
る.一
方 本 邦 で は 急 性 期 に お け る精 液 所 見 に つ
い て 小 川,酒
参
に乏 精 子 症 を 認
徳 の 報 告 が あ るが,い
機 能 は 高 度 に 障 害 さ れ て い る.自
つ れ も造 精
験5例
と もに
に つ い て2ヵ
月 ∼1年4ヵ
2)甲
野=臨
床,5=528,昭27.
3)Friedwald,W.F.:PrinciplesofInternal
Medicine,McGraw-HillBookCo1のany,
NewYork,1954.
4)Wesselhoeft,C.:NewEngl.J.Med.,226
:530,1942.
つ れ も 乏 精 子 症 で あ っ た(表1).
Scottは1側
献
:」.Exp.Med.,59=1,1934.
月後 にわ た
って 精 液 検 査 を行 な っ たが 運 動 性 の改 善 は み ら
れ た が,い
文
1)Johnson,C.D.,andGoodpasture,E.W.
急 性 期 に は 造 精 機 能 は 強 く障 害 され て い た.そ
の 後4例
考
性 の場 合 は他 側 が 健 常 で あれ ば
5)Cande1,S.:Ann.Int.Med.,34:2⑦,
1951.
問 題 は な い と し て い る.自
験 例 は1側
性 の場 合
6)Werner,C.A.=Ann.Int.Med.,321
も 造 精 機 能 障 害 が 認 め ら れ る の で あ る が,急
期 に お い て は 全 身 状 態 の 不 良,高
性
熱 な どで 造精
機 能 が 障 害 さ れ る こ と は 当 然 考 え ら れ る.こ
1066,1950.
7)Scott,L.S.:Brit.J.Uro1.,32:183,
の
1960.
他 に 全 身 の ウ イ ル ス 血 症 に ょ っ てM.Orchitis
8)矢
野:児
科 診 療,29:1,昭28.
が 惹 起 さ れ る と す れ ば,臨
床 的 に 健 常 と思 わ れ
9)吉
田:児
科 診 療,18:1059,昭30.
る 側 に も病 的 変 化 が 起 っ て い る こ と が 考 え ら れ
10)落
合:児
科 臨 床,11=50,昭33.
る.Heinke26)ら
は1側
性 のM。Orchitisで,
11)矢
野:児
科 診 療,27=96,昭39.
臨 床 的 に 健 常 と思 わ れ る他 側 に も精 細 管 の 変 化
12)田
村:治
療 お よ び 処 方,23:1326,昭17.
を 認 め た と述 べ て い る が,こ
13)小
川:臨
床 皮 泌,12:1173,昭33.
の点 は今 後 の症 例
14)Gall,E.A.=Amer.J.Path.,23=637,
に つ い て 検 討 し な け れ ば な ら な い.
M.Orch圭tis後
1947.
の 睾 丸 萎 縮 か ら腫 瘍 が 発 生 す
15)Charny,C.W.:J.Uro1.,50:140,1948.
る こ と は 欧 米 に お い てGilbert27}(1944),
16)酒
Dreyfuss28)(1957),Kaufmann29}(1963)ら
徳:泌
尿 紀 要,4:610,昭33,
に
17)Mongan,E.S.:Amer.J.Med.Sci.,224
よ り28例 報 告 さ れ て い る.Gilbertは5,500例
:749,1959.
の 聖 丸 腫 瘍 中0.5%にM.Orchitis後7∼12年
18)Gellis,S.S.:Amer.J.Med.Sci.,210:
に 悪 性 化 し た も の を 見 出 し て い る が,外
留 睾 丸,そ
傷,停
の 他 炎 症 に よ る萎 縮 睾 丸 一 般 に 腫 瘍
が 発 生 し 易 い の で あ っ て,M.Orchitisと
腫瘍
発 生 の 間 に は 特 別 な 関 係 は な い と の ぺ て い る.
IV結
語
1)流 行 性 耳 下 腺 炎 性 睾 丸 炎5例
を報 告 し
た.
661,1945.
19)石
神:日
泌 全 書,▽1性
20)志
田;ホ
と 臨,8:917,1960.
器,金
21)石
神:日
不 妊 会 誌,7=257,1962.
22)加
藤=日
不 妊 会 誌,10=1,1965.
23)入
沢:日
不 妊 会 誌,11:239,1966.
原 出 版,1960.
24)Heinke,E.:HandbuchderHaut-undGeschlechts-Krankheiten,Fertilittitsstδrun-
2)3例
の急 性期 の睾 丸 生 検所 見 を 述 べ た.
3)4例
に つ い て2ヵ 月乃 至1年4ヵ
月後に
精 液 検 査 を行 な い乏 精子 症 を 認 め た.
4)臨 床 的 事項 に つ い て若 干 の 文献 的考 察 を
genbeimManne,Springer-Verlag.Berlin.
1960.
25)Michelson,C.:J.Amer.Med.Ass.,134
:941,1947,
26)Heinke,E.u.W.Knoth.:Arch.Klin.
試 み た.
稿 を 終 るに 臨み,恩 師 稲 田教 授 の こ指 轟 ご校 閲 に深
exp,Derm.,201:278,1955.
27)Gilbert,J.B,:J.Urol.,51:296,1944.
謝 す る.ま た 種 々 ご教 示,ご 援 助 セ
こい た だ い た 教 室酒
28)Dreyfuss,W.:J.Urol.,77:644,1957.
徳 助 教 授,大 阪 大 学 癌 研赤 松助 教 授 に 感 謝す る.
29)Kaufmann,J,J.lBrit.J.Uro1.,35:67,
本 症 例 の要 旨は 第39回 日本泌 尿 器 科 学 会 関西 地 方 会
に お い て発 表 した.
1963.
(1966年8月19日
受 付)
片村他:流 行性耳下腺炎性睾丸炎の5例
等1犠窃 、∴
購難 難1駕,
鷲麟
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撫 強
例1の 発 病4日
.野 ご ・拶
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目の睾 丸 組 織 豫
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Flg1症
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左
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例2の 発 病2日
目の 聖 丸 組 織 像
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