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緊急時対応ソリューションの取り組み
災害対策 NTTグループのICTを活用した危機管理・事業継続ソリューション 防災ソリューション 情報伝達 特 集 緊急時対応ソリューションの取り組み い ち の せ NTT西日本では,幅広く防災ソリューションに取り組んでいます.本稿で ふみあき か と う やすはる 一ノ瀬 文明 /加藤 泰治 は「緊急時対応ソリューション」として取り組みを進めているJ-ALERT,職 員参集システム,住民への防災情報伝達ソリューションを紹介します. 西日本エリアの災害環境 西日本エリアでは,毎年のように台 スの安定供給に日々取り組んでいます. また,防災ソリューションとしては, 他社に先駆けて“総合防災システム” NTT西日本 情報を伝えることで住民自らの自助・ 共助を促すことが大切です. 消防庁は,国民保護の観点から住 風が接近し,暴風雨による土砂崩れや を構築したことを皮切りに,自治体の 民へ緊急情報を伝達しようと全国瞬時 浸水といった被害が発生しています. 防災業務のIT化に取り組み,多くの 警報システム(J-ALERT)を整備し, また,過去には阪神淡路大震災を経験 実績を積み重ねてきました.防災業務 2007年2月から運用を開始しました し,今後もその震災の被害を上回る人 をIT化して,情報の集約や処理を効率 が,導入が進んでおらず,2009年4 的被害が想定される東海地震(被害 化するのはITが得意とするところであ 月5日の北朝鮮のミサイル発射の前後 予 想 9 200人 ), 東 南 海 ・ 南 海 地 震 り,図1に示すように幅広い業務での に報道されたように,緊急情報を受け 防災ソリューションに取り組んできま た市町村から住民への情報伝達手段 した. は十分ではない状況です. (1) (被害予想18 000人) の発生も懸念 されています.したがって,自治体の 風水害,地震に対する意識は高く,多 行政間での情報共有の仕組みは, NTT西日本としても,従来は公助 くの自治体において災害への対策が進 2008年9月号の本誌特集記事『地域 をサポートする防災業務の支援システ められています. 情報プラットフォーム標準仕様への準 ムの取り組みを中心に行ってきました このような状況において,近年はゲ 拠を見据えた防災情報共有システム』 が,電気通信事業者のノウハウを活用 リラ豪雨の頻発,北朝鮮のミサイル発 において,「防災情報共有システム」 し,緊急情報の市町村での取得,職 射など,住民の脅威となる事象が増え の開発について紹介しましたが,行政 員の初動態勢の確立,住民への迅速 てきており,従来以上に緊急性の高い 側での情報共有を実現した次のSTEP な情報伝達に貢献するソリューション 情報を迅速に住民へ伝えていくことが としては,行政から住民への迅速で正 を提供していきたいと考えています. 求められてきています. 確な情報伝達が必要です.それができ これまでの取り組み ないと,実際の被害の軽減にはつなが りません. 緊急時対応ソリューションの 取り組み NTT西日本は,ライフライン企業と 阪神淡路大震災における救助活動 具体的な取り組みとして,「緊急時 して災害に強い通信設備の構築を図る は,「自助が70%,共助が20%,公 対応ソリューション」を紹介します (2) とともに,万一の被災時には重要な通 助が10%」 だったといわれているよ (図2) .このソリューションにより,緊 信 の確 保 や, 早 期 復 旧 を図 るため, うに, 災 害 発 生 初 期 の人 命 救 助 の 急時に適切な情報の収集・伝達手段 「ネットワークの信頼性向上」「重要通 フェーズにおいて,行政にできること の導入をサポートすることが可能です. 信の確保」「サービスの早期復旧」と は限られます.住民にとって危険な情 緊急時対応ソリューションでは,以 いう災害対策方針を掲げ,通信サービ 報をつかんだら,まずは,迅速に危険 下の3つのシステムを1セットとして NTT技術ジャーナル 2009.9 17 NTTグループのICTを活用した危機管理・事業継続ソリューション ①防災計画の策定 ②通信インフラの 整備 ・地域防災計画 従来の防災に 関する情報 電子化 ④情報共有と 意思決定のサポート 気象情報配信業者 低 ・注警報 ・天気予報 等 低 高 災害対策本部 高 低 ③判断材料の 収集 避難所 ・救助物資情報 ・要請事項 ・避難者安否 被災現場 ・被災状況 ・活動状況 ③判断材料の ・備蓄物資情報 収集 防災倉庫 雨量水位観測局 ⑥防災マインドの 醸成 ・河川水位 ・雨量 ・潮位 ・気象情報 ・天気予報 ・被害状況 電子地図 ・被災状況 ・安否情報 ・注警報 ・職員参集 ⑤的確な 情報伝達 ・カメラ映像 ③判断材料の 収集 住民への防災情報提供 ・避難勧告指示 ⑤的確な情報伝達 防災に関するあらゆる情報 河川氾濫 自宅 外出先 職員 ・安否情報 避難所 被災地外 砂防ダム ・前兆現象 :平常時 :災害時 :情報連携 防災行政無線 住民 ・災害弱者 ・自主防災リーダ ⑥防災マインドの 醸成 図1 NTT西日本の防災ソリューション されていましたが,現在ではJ-ALERT 専用小型受信機という衛星受信装置 初動態勢の確立 緊急情報の入手 と解析・処理装置を1台に集約し, (2)職員参集システム (1)J-ALERT 迅速な災害対策 のためには, 弾道ミサイル情報,緊急地震速報など, 簡単・確実な職員への情報伝達と参集可否の状 況の把握など,初動体制の確立に寄与します. が開発されています. 大規模災害情報を迅速に入手すること をお手伝いします. 迅速な住民への情報伝達 このJ-ALERT専用小型受信機を活 (3)住民への防災情報伝達ソリューション 住民が安全に 避難するためには, 消防庁・ 自治体衛星機構 豊富なインタフェースを搭載した機器 屋外・学校・家庭など,より多くの住民に情報 伝達するため,地域に適した防災の情報の伝達 手段の整備をお手伝いします. 用することで,各種の情報伝達システ ムとの自動連携により,人手を介する ことなく迅速に住民へ情報伝達するこ とが従来よりも容易に実現可能となり 自治体 ました. 図2 緊急時対応ソリューション さらに,平成21年度補正予算にて, 防災情報通信設備整備事業交付金と 取り組んでいます. (1) J-ALERT J-ALERTとは,津波や地震など対 処時間に余裕のない事態が発生した場 災行政無線等の情報伝達システムを自 して,整備費用を国から交付すること 動連動させ,緊急情報を瞬時に伝達 となっており,自治体への導入も進む する消防庁のシステムです(図3). と見込んでいます. J-ALERT運用開始当初は衛星モデ *1 合に,通信衛星を用いて国から情報を ムとFA(ファクトリー)PC 市町村等へ直接送信し,市町村の防 ソフトをインストールした装置で構成 18 NTT技術ジャーナル 2009.9 に解析 *1 FAPC:製造現場,物流現場,公共施設な どで使われる,信頼性と耐環境性の高いコ ンピュータ. 特 集 防災無線自動起動装置 防災無線 屋外スピーカ 衛星アンテナ 専用小型受信機 モデム機能・ソフトウェア搭載 IP告知送信機 IP告知端末 学校等の 放送設備 その他住民への情報伝達システム 消防庁 放送設備 等 123456789 HUB 副局 ソフトウェアVerUP データ受信 ヘルスチェック等 エレベータ 制御装置 PC パトライト 各種システムの制御 各種システムとの連携が可能 メール通知 図3 専用小型受信機を活用したJ━ALERTの概略構成 (2) 職員参集システム 緊急情報を受信するのは,昼間帯と 送った は限りません.職員参集システムを導 入することで,夜間においても,迅速 に職員の参集状況を把握して,初動態 勢を確立することが可能となります. 職員参集システムは,世の中にたく メール通知 アプリ回答 アプリによる詳細な状況把握! iアプリによる詳細状況 把握機能に加え,通常の メール配信機能や電話, FAXでの職員への連絡が 可能です さんありますが,その中でも操作が簡 届いた 見た 答えた 単で国の機関やNTTの災害対策部門 着信をアプリが自動連絡 表示ボタン押下を アプリが自動連絡 回答ボタンを押下 メール通知 Web回答 でも活 用 されている実 績 のある 送った Emergec@ll(NTT-AT)を中心に 取り組みを展開しています(図4) . Emergec@llは一般的なメールの職 答えた Web上で回答 Emergec @ll サーバ メール通知 員参集システムの機能を備えたうえで, 送った iアプリの機能を活用する場合には簡 単な操作をするだけで,情報の配信状 況を「送った」「届いた」「見た」「答 えた」の4段階で把握できるという特 着信・音声通知 長を持ったシステムです. 答えた (3) 住民への防災情報伝達ソリュー ション 音声通知 ボタン回答 発信 プッシュボタンで回答 操作端末 FAX通知 住民への防災情報の伝達手段は, 従来は防災行政無線にて整備が進め ○○地方で震度 ○の地震が発生 しました.至急 出社してくださ い.出社可能な 方は1を,出社 不可能な方は2 を,… iFAX 送った ○○地方で震 度○の地震が 発生しました. られてきましたが,現在では多様な伝 達手段が提供されてきています(図 図4 Emergec@llの概要 5) . NTT技術ジャーナル 2009.9 19 NTTグループのICTを活用した危機管理・事業継続ソリューション 住民への防災情報のさまざまな伝達手段 屋外拡声器への防災情報提供 自治体 音声 屋外拡声器 〈有線系伝達手段〉 〈無線系伝達手段〉 ・地域イントラネットの活用 ・防災行政無線(アナログ・デジタル) ・各種回線サービス ・既存MCA網の活用 (IP告知システムの活用) ・簡易無線の活用 ・携帯電話網の活用 移動者への防災情報提供 避難所への防災情報提供 ・登録者への携帯メール情報配信 ・エリアメール(NTTドコモ) ・ワンセグ携帯への情報配信 (放送事業者との協定) ・コミュニティFMでの情報配信 (放送事業者との協定) 防災情報伝達の制御 ・防災情報伝達制御システム (NTT東日本,NTT西日本) 車による防災情報伝達 ・学校等の放送設備への情報提供 (IP告知システム等の活用) ・FMトランスミッタによる避難所 内への情報提供 住民宅向け情報提供 ・地上デジタルへの情報配信 (放送事業者との協定) ・防災行政無線(個別受信機) ・FTTHによるIP告知システム ・広報車による情報提供 ・自治体ホームページへの情 報提供 ・フレッツフォンによる告知システム NTT西日本では,以上のような伝達手段から有線・無線を組み合わせたより良い防災情報の伝達手段の検討を お手伝いさせていただきます 図5 住民への防災情報伝達ソリューション NTT西日本では,主にIPネットワー ク網を活用するIP告知システム,移 初期投資を抑えた情報伝達システムを 防災行政無線で全戸整備するのは非 構築したい場合に有効です. 常に高額となりますので,費用を抑え 動 無 線 センターの提 供 するM C A MCAサービスの提供エリアでもな つつ,住民への情報伝達手段の充実を *2 く,光ファイバ等もない地域において 図ろうと悩まれている自治体が多いか の無線サービス(MCAサービス),簡 は,安価に自営での無線システムを構 と考えています. ( Multi Channel Access) 方 式 易無線 *3 を活用したソリューションを 提供しています. IP告知システムは,音声をIP化し, 光ファイバ網を活用して屋外拡声器, 拠点,住民宅まで緊急情報を伝達す るシステムです. 築できる簡易無線の活用を提案してい こういった情報伝達手段のトータル ます.ただし,簡易無線の場合は,共 コーディネートこそ,通信事業者であ 用波 *4 を使うために混信の可能性とい う問題を持っています. しては,携帯電話へのメール配信,コ ミュニティFMによる情報配信,地上 ションは,屋外拡声器,拠点等までの デジタル放送での情報配信など,非常 緊急情報伝達に活用可能です.MCA に多くの仕組みが存在します.それぞ サービスの提供エリア内でしか使えま れに特長があり,何が最適かは地域の せんが,光ファイバ等のない地域にて 設備環境にも依存しますが,デジタル NTT技術ジャーナル 2009.9 でいるNTT西日本に期待される部分か その他,住民への情報伝達手段と MCAサービスを活用したソリュー 20 り,防災ソリューションにも取り組ん *2 *3 *4 MCA方式:複数の周波数を用意し,多数の 無線局がその周波数を共同で使用するシス テム. 簡易無線:多くの人がさまざまな用務に使 用できる無線.限られた周波数を多くの人 が共有. 共用波:無線局専用に割り当てられた周波 数でなく,他の無線局と共同で使用する周 波数. 特 集 ■参考文献 ・ 「発生前」 「発生直後」 「感染拡大期」に応じたメニューを提供し,お客さまの事業活動 継続を支援 ・緊急時に短期導入できるメニューもラインアップ 発生前 発生直後 感染拡大期 災害緊急通報ソリューション パンデミック対策 コンサルティング 健康状態確認 体制構築支援※ 教育・研修支援※ (1) 内閣府:“平成20年版防災白書,”2008. (2) http://www.jstage.jst.go.jp/article/seisankenkyu/ 60/4/303/_pdf/-char/ja/ 情報伝達 テレワークソリューション 自宅待機への対応 業務継続 テレビ会議ソリューション 感染防御用品の 調達支援※ コミュニケーション手段確保 ※ NTTグループ会社にて対応します 図6 新型インフルエンザ対策ソリューション と自負しており,取り組みを強化して いるところです. NTT西日本では,民間企業のお客 さまを意識した「新型インフルエンザ さらに,2009年からはNTT環境エ 対策ソリューション」(図6)の提供 ネルギー研究所において開発された も実施しており,テレビ会議,テレワー 「防災情報伝達制御システム」の展開 ク,災害緊急通報といったソリュー にも力を入れています.防災情報伝達 制御システムは,各種の情報伝達手段 ションをラインアップしています. また,ライフライン企業としては, を束ね,1つの操作で各種の情報伝達 災害用伝言ダイヤル(171)や災害用 手段から防災情報を発信することを可 ブロードバンド伝言板(web171)の 能とするシステムです.本システムを 普及啓発活動など,安心・安全な社 より多くの自治体にて活用いただき, 会の実現を目指し取り組んでいます. 被害の軽減に貢献できることを期待し ています. その他の安心・安全への取り組み 2009年は新型インフルエンザが発生 し,5月中旬は,各地で学校の休校 や社員へのマスク着用,出張の自粛な ど,十分な準備がない中,変化する状 況への対応に追われたかと思います. NTT西日本では,今後も電気通信 事業者としての使命を果たしつつ,今 まで培った災害対応ノウハウを活かし, ソリューションの分野においても,安 心・安全な社会の実現を目指し取り 組んでいきます. (左から)一ノ瀬 文明/ 加藤 泰治 NTT西日本では,ご紹介した「緊急時対 応ソリューション」のほかにも,幅広い防 災ソリューションに取り組んでいます.災 害対策に悩まれたら,まずはNTT西日本へ お問い合わせください. ◆問い合わせ先 NTT西日本 法人営業本部 ソリューションビジネス部 地域ICT推進G 防災チーム TEL 06-4803-3572 FAX 06-6225-4427 E-mail bousai-sys bch.west.ntt.co.jp NTT技術ジャーナル 2009.9 21