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イメージマップを使って詩の読みを深める
兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2009 イメージマップを使って詩の読みを深める 平井倫子・森山 潤 校種・学年: 小学校 5 年生 教科: 国語 単元名: 詩「あなたの心のなかに」 (作:工藤直子) あらまし 授業で詩の学習をする際,その詩に対する自分のイメージを表現したり,自分と友だちの意見とを比 較したりしやすくするために「イメージマップ」を用います。 手立てと活動 「イメージマップ」は,塚田泰彦氏の提唱する「語句を線で結んで, 蜘蛛の巣状に張りめぐらしていくことで,知識や考えを拡充したり整理 したりする方法」である「意味マップ法」をもとにしています。 指導計画(計 3 時間扱い) 第1時 詩を読み,イメージマップをつくる。 第2時 自分の読みをもとに,友だちと読みの交流をする。 第3時 再考したイメージマップをもとに,自分の読みをまとめる。 イメージマップの形状 児童は複数回詩を読んだ後,各自の読みのイメージをもとに最初のイメージマップを作成します。題 名を中心に置き,そこから線をのばして「大切に読みたいと思うフレーズ」を選んで書きます。続いて, 「そのフレーズからイメージすることば」を書いていきます。その後,作成したイメージマップをもと に,選択したフレーズとそのイメージをグループや学級全体での交流の中で出し合っていきます。話し 合い活動の中で,新たに思ったことや修正したい部分がでてくれば,赤で追記していきます。 学習前 題名 学習前と比べて,イメ ージが広がりました。 話し合う中で,新たに思 ったことは,赤で追記 学習後 大切に読みたい と思うフレーズ 児童のイメージマップ例(学習前と学習) 期待される効果 最初(学習前)は,文の中のことばを そのまま取り出して書いただけのもの (言語的理解)が多く見られました。学 習後は,これらが減少し,フレーズやこ とばをもとに自分の中でイメージを膨 らませ,新たに生まれた自分の表現や解 釈を記述しているもの(主体化)が増えま した。このことから,イメージマップを 用いた話し合い活動によって,児童が詩 に対する読みを深めていることがわか 最初 平均 S.D. 平均 文脈的理解 S.D. 平均 主体化 S.D. n=67 * p<0.05 ** p<0.01 言語的理解 1.67 1.44 0.85 1.03 0.21 0.41 学習後 > < 最初の イメージマップ ・青い ・きれい ・広い ・魚 ります。 1.12 1.34 1.15 1.42 1.16 1.30 対応のあるt検定 t(66)= 2.57 * t(66)= 1.73 t(66)= 6.26 ** 学習後のイメージマップ ・物語にとっての大事な文 ・ 気持ちの海を表している ・きれいな音をたてる ・心の底 ・広い昔々からあるやさし さの海 クラス全体のイメージマップ例(左:学習前,右:学習後) イメージマップには,自分の最初のイメージに加え,授業での話し合い活動を通して友だちの 考えを取り入れたり,自分の考えを修正したりしたことを書き表していきます。このようにする ことで,児童は,自分の考えの状況・変容が視覚的に分かるので,自分で学習成果を実感するこ とができます。また,クラス全体のイメージマップを提示することで,クラスでの話し合い活動 による「みんなで学びを深めた学習成果」も実感させることができます。 補足 授業で「イメージマップ」を導入するにあたっては,まず「イメージマップ」とはどんなものかを児 童に知らせておく必要があります。児童の実態を考慮しながら,事前にイメージマップの練習を取り入 れるなど,まずはイメージマップに慣れさせることが大切です。 参考文献:塚田泰彦(2005)国語教室のマッピング−個人と共同の学びを支援する−,教育出版 出展) 平井倫子(2010)「『話し合い』に対する児童の意識実態の分析に基づく授業改善の試みーメタ認知を促す認知的ツールの活用−」 授業実践リーダーコース実践研究報告書(指導教員:森山 潤)