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2012-04-23 版 - 流体数理研究室Fluid mechanics

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2012-04-23 版 - 流体数理研究室Fluid mechanics
研究集会『生物流体力学における同期および関連する現象』アブストラクト
(2012-04-23 版)
日時: 2012 年 5 月 21 日(月)– 23 日(水)
会場: 京都大学 数理解析研究所 110 号室
• 最新情報は,http://fluid.hiroshima-u.ac.jp/~makoto/ から,『研究集会「生物流体における同
期および関連する現象」』をクリックしてご確認ください.
• タイトルに※がついている講演は,統合講演です.
5 月 21 日 (月)
※「昆虫・鳥サイズの羽ばたき飛翔体における連成問題 ∼翼変形・胴体運動と空気力発生・
飛行安定性の話題を中心に∼」
*前田 将輝 (千葉大学大学院 工学研究科)、劉 浩 (千葉大学大学院 工学研究科)
羽ばたき飛行における連成問題について、幅広く紹介する。羽ばたき飛行、特に昆虫の Reynolds 数(100 か
ら 10000 オーダ)での空気力学的な研究成果が挙がり始めたのは 1990 年代ごろからであり、連成問題にまで
踏み込み始めたのはここ数年から十数年でしかない。いまだに「昆虫は理論的には飛べない」などと言われる
ことからも歴史の浅さがうかがえる。そこで本講演ではまず羽ばたき飛行の歴史を概観しながら基本的な流体
力発生メカニズムを説明する。その後、ふたつの連成問題の紹介を行う。ひとつは、流体力と翼の変形との
連成 (fluid-structure interaction, FSI) 問題であり、いまひとつは、飛翔体の全体の重心まわりの運動(平行
移動・回転移動)と流体力との連成問題(飛翔体を剛体的に捉えて「6 自由度 (6DOF)」の問題などと呼ばれ
ることがある)である。これらについては我々の研究室で行った数値シミュレーションの結果もお見せした
い。最後に、羽ばたき飛行研究の今後について展望する。対象とする羽ばたき飛翔体は主に昆虫と鳥だが、近
年発達の著しい小型無人飛翔体(small unmmaned aerial vehicle, sUAV; micro air vehicle, MAV; nano air
vechicle, NAV)のうち羽ばたきを行うものもとりあげる。
「2 次元羽ばたき飛行の数値シミュレーション ∼飛行安定性と簡単な飛行制御∼」
木村 悠介 (京都大学大学院 工学研究科), 鈴木 康祐 (京都大学大学院 工学研究科), 稲室 隆二 (京都大学
大学院 工学研究科)
格子ボルツマン-埋め込み境界法を用いて,2 次元羽ばたき飛行についての数値シミュレーションを行った.ま
ず,レイノルズ数が羽ばたき翼の周りの流れ場に及ぼす影響を発表し,次に,初期に翼全体の回転に擾乱を加
えた場合の飛行安定性について発表する.さらに,姿勢制御が可能と羽ばたき法の例,および安定飛行(ホバ
リングや上方向への飛行)が可能となる羽ばたき法の例を発表する.
「渦を介した振動円柱間同期の位相記述の試み」
飯間 信 (広島大学大学院 理学研究科), 中筋 真生 (北海道大学大学院 理学研究院)
バネ支持円柱を一様流中 (Re = 400) においた時の同期現象を2次元数値計算で解析した結果を報告する.円
柱一つの時,バネ-円柱系の固有振動数に応じて2種類の振動挙動が観測される.その一方の場合では円柱の
振動数は固有振動数に比例し,他方の場合では固有振動数に寄らず後流に形成されるカルマン渦の振動数に引
き込まれる.2円柱を流れに垂直に置いた場合は円柱振動は同期を起こす.その条件を,2円中の固有振動数
の差と相互作用の強さ (円柱間隔) を変えて調べた.同期を引き起こす相互作用は,流れが作る渦構造の干渉
であるが,その本質を抜き出すため位相記述を試みた.これらの結果について報告する.
「鳥が飛んだ GPS 軌跡データに対する方向モデリング」
島谷健一郎(統計数理研究所 )
小型 GPS ロガーにより、飛ぶ鳥から 1 秒単位で軌跡データが取れる時代になっている。実際の飛翔軌跡を眺
めてみると、回転やジグザグなど、鳥は様々な軌跡を描いているが、逆に動きが多様過ぎて、せっかくの時空
間データをうまく活用できないでいる。そこで、目的地に向かって直線的に動いた軌跡に絞り、風により非対
称となっている軌跡を表現できる形に円周自己回帰モデルモデルを拡張して適用した。これにより、様々な軌
跡に対し、鳥が本来進もうとした方向や風向、風の影響の強さや目的地へ向かう鳥の意志などの定量的評価が
(人間の思い込みという仮定の元で)可能となった。野外の多様な環境の下での野生動物の多様な動きが少し
見えてきた。
5 月 22 日 (火)
「球形微生物の運動における慣性の影響」
石本 健太 (京都大学数理解析研究所)
低レイノルズ数領域の微生物の運動では,しばしば生物の慣性は無視できると仮定される.このとき系は準定
常問題となり生物の形状変化と流体運動の関係は大幅に単純化される.我々はこの慣性の効果をとり入れた非
定常問題を考察するため,繊毛によって運動する生物の数理モデルである Lighthill の squirmer モデルを調べ
た.これは表面の小変形によって運動する球形微生物のモデルであるが,さらに生物と流体の慣性を無視しな
い状況に拡張して,微生物の運動における慣性の影響について考察する.
※「自走粒子の流体相互作用によらない長距離秩序形成」
永井 健 (東京大学), 住野 豊 (愛知教育大学)
鳥の群れ運動やイワシ玉など自走するものが多数集まることで形成される秩序構造が存在する。近年基礎物
理・応用研究ともにこのような集団運動について盛んに研究が行われている。特に Vicsek 等によって提唱さ
れた数理モデルなどにより興味深い物理的諸性質が明らかになってきており、統計物理学的に注目されている
分野の一つである。 我々は上記のような現象に対し記憶を持った自走粒子の集団運動に注目して研究を行
なった。実験系としてはガラス基板上に固定されたダイニン上を走るマイクロチューブを用いた。ダイニンと
マイクロチューブはタンパク質で微生物の鞭毛などを形作る。観察の結果、ダイニン上を走るマイクロチュー
ブはランダムに動くものの、軌跡の曲率が一定時間持続することがわかった。一定時間維持される曲率が一種
の記憶として働き、マイクロチューブを多数ばらまいた時にマイクロチューブ集団の渦が格子状に形成され
る。この現象に対し我々は記憶を持った自走粒子に対する数理モデルを考案し、記憶時間が十分長い時に渦の
格子パターンが形成されることを明らかにした [1]。今回周辺分野の研究紹介と共にこれらの結果を報告する。
[1] Yutaka Sumino, Ken H. Nagai, Yuji Shitaka, Dan Tanaka, Kenichi Yoshikawa, Hugues Chat, Kazuhiro
Oiwa, Nature, 483, 448-452(2012).
※「低レイノルズ数における流体力学的同期現象:ミニマルアプローチ」
内田 就也 (東北大学大学院 理学研究科)、Ramin Golestanian (University of Oxford)
大腸菌やゾウリムシのような水中を泳ぐ単細胞生物は、鞭毛のバンドリングや繊毛のメタクロナル波など、運
動器官の同期現象を利用して推進を制御している。これらの同期現象は流体力学相互作用によって誘起される
と考えられるが、その機構は Taylor の先駆的研究から 60 年が経った今なおよく理解されていない(近年の
研究についてはレビュー [1] を参照されたい)。我々は最近、これらの同期現象のミニマルモデルとして、剛
体球と駆動力からなるシンプルな回転子モデルを提案した [2]。 従来、鞭毛や繊毛が同期するためにはそれら
の持つ柔軟性が必須であると考えられてきたが、我々の解析はこの見方を覆し、駆動力の周期的変動だけでも
同期が起きることを示す。また、剛体球とアクティブポンプからなる回転子の多体系は、一様同期状態、進行
波、らせん波、フラストレート状態など多様な時空パターンを示し、バクテリアカーペットのようなマイクロ
流動デバイスの制御に応用できる可能性がある。また駆動力のランダムな分布は集団的な同期・非同期転移を
引き起こすが、これは従来の結合振動子系の平均場理論(蔵本モデル)では説明できないスムーズな転移であ
り、長距離相互作用系に特有の空間ゆらぎの効果と考えられる [3]。時間が許せば、鞭毛や繊毛の多自由度ダ
イナミクスの縮約によりこれらのミニマルモデルを導く試みについてもふれたい。
[1] R. Golestanian, J. M. Yeomans and NU, Soft Matter 7, 3074 (2011).
[2] NU & R. Golestanian, PRL 104, 178103 (2010); PRL 106, 058104 (2011).
[3] NU & R. Golestanian, EPL 89, 50011 (2010); NU, PRL 106, 064101 (2011).
「蝶の羽ばたき飛翔の力学と制御について」
泉田 啓 (京都大学大学院 工学研究科), 横山 直人 (京都大学大学院 工学研究科), 飯間 信 (広島大学大学院
理学研究科), 平井 規央 (大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科)
蝶の羽ばたき飛翔は,神経系による制御・身体による運動・環境としての流れ場の相互作用によって実現され
る.本研究では,身体と環境の相互作用に着目し,蝶の羽ばたき飛翔を力学的に理解するとともに,その制御
について考察する.
「ステレオカメラによるユリカモメの運動の解析」
右衛門佐 誠 (大阪府立大学大学院 工学研究科), 水口 毅 (大阪府立大学大学院 工学研究科), 早川美徳(東
北大学教育情報基盤センター)
実データに基づいたトリの群れ運動に関する先行研究のレビューを簡単に行った後,我々がステレオカメラを
用いて行ったユリカモメの群れ運動の3次元的な解析について発表する.本研究ではこれまでの研究では時間
的もしくは空間的な解像度の限界から困難であった羽ばたきによる振動をとらえ,数値化することに成功し
た.発表ではユリカモメの群れ運動と各個体の羽ばたきの周期・位相などの関係について述べる.時間が許せ
ば他のトリとの比較を行う予定である.
5 月 23 日 (水)
「Volume Penalization 法による翼果まわりの流れの数値解析」
澤村 陽一 (名古屋大学大学院 工学研究科), 石原 卓 (名古屋大学大学院 工学研究科)
植物の中には,種子に翼を持つもの (翼果) がある.カエデの翼果は落下の際,自然に回転し,結果として非
常にゆっくり降下する.近年,Lentink ら (2009) は実験により,回転落下する翼果の翼の前縁上部に前縁渦
という強い渦が生成・維持されていることを明らかにした.そこで,回転落下する翼果まわりの流れにおける
翼形状と前縁渦の生成・維持機構との関係を数値計算により解明することを目指し,本研究では,その第一段
階として,Volume Penalization 法に基づく数値計算手法の開発・検証と翼果モデルまわりの二次元流れの数
値実験を行った.講演では計算手法及びその結果についての報告を行う.
「ストークス流れ中の非球形カプセルの配向現象」
石川 拓司 (東北大学大学院 工学研究科) 大森 俊宏 (東北大学大学院 工学研究科) 今井 陽介 (東北大学大
学院 工学研究科) 山口 隆美 (東北大学大学院 医工学研究科)
カプセルや細胞などの変形する粒子の力学は、多くの分野で重要な知見である。剛体楕円体のストークス流れ
中の挙動は Jeffery 理論によって説明できるが、楕円形状のカプセルの挙動は未だに不明な点が多い。本研究
では、楕円体カプセルや赤血球の定ずり流れ中の挙動を数値解析によって調べた。その結果、剛体楕円体の挙
動は時間的に可逆的であるが、カプセルの場合には不可逆的となることが分かった。さらに、非球形カプセル
は時間をかけて渦度方向またはせん断面に配向し、この配向現象はずり速度によって分岐することが分かっ
た。こうした非球形カプセルの配向現象は、粒子を整列・配向させる技術に応用できると考えられる。
「羽ばたき飛翔する蝶のつくる流れと飛行安定性」
横山 直人 (京都大学工学大学院 研究科), 泉田 啓 (京都大学大学院 工学研究科), 飯間 信 (広島大学大学院
理学研究科), 平井 規央 (大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科)
昆虫や鳥の羽ばたき飛翔は、脳による制御・身体による運動・環境としての流れ場の相互作用によって実現さ
れる。本研究では、運動と流れ場の相互作用に着目し、蝶の羽ばたき飛翔の数値計算によって得られた流れ場
の構造から、ヒラヒラと舞う蝶の羽ばたき飛翔が実現される機構を明らかにする。
世話人・問い合わせ先:
飯間 信 (広島大学大学院理学研究科) email: [email protected]
この研究会は,RIMS 共同研究「生物流体力学及ひ関連する問題の研究」の一環として行われます.
また,科学研究費基盤研究 (C)(23540433) の援助を受けています.
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