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Ⅰ.概況 - 関西交通経済研究センター
Ⅰ.概 況 最近のわが国経済について、景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなか で、緩やかに持ち直している。先行きについては、各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾 向が確かなものとなることが期待される。ただし、電力供給の制約や原子力災害の影響、さらには、 デフレの影響、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要であるとされている。 近畿圏においては、平成24年4月1日に新関西国際空港株式会社が設立され、関西国際空港と大 阪国際空港(伊丹空港)の7月1日の経営統合により、拠点機能の再構築に向けた新たな一歩を踏み 出すことになった。また、関西空港第2期空港島では、今秋の完成に向けてLCC専用ターミナル建 設工事が進められており、関西の航空需要の拡大で国際競争力の強化と関西経済の活性化が期待され ている。観光では、関西の観光魅力の発信や、魅力的な旅行商品の造成等の事業を国と自治体等連携 して実施し関西への訪日外国人観光客の誘致が積極的に行われ、大阪湾ベイエリアでは先端産業の集 積が進み、阪神港(大阪港)の臨海道路やコンテナターミナルの充実が図られるなど「グリーンベイ・ 大阪湾」に向けた取り組みが進んでいる。また、大阪駅北地区の先行開発区域では、中核機能である ロボット技術、情報通信技術などを中心として開発がされ、将来に向けて地元地域の発展に寄与する ことが期待されている。 鉄道網については、大阪都心部から関西国際空港への所要時間を短縮する鉄道新線「なにわ筋線」 の建設について、新大阪駅とJR難波駅、南海難波駅を結ぶ二またのルートが需要も多く採算性の面 でも優れていると判断され、事業化に向け検討されることになった。また、北大阪急行線延伸につい ては、事業化に向けて大阪府や箕面市など地元自治体及び鉄道事業者による関係者間で検討が行われ ている。 安全・安心についての運輸安全マネジメントは、平成18年10月の法施行後、5年が経過し国土 交通省において、評価対象を中小規模事業者に拡大することや運行管理などを逐次強化する方針をは じめ、運輸安全マネジメントを浸透させるための支援策が打ち立てられている。 このような状況の中で、当センターは近畿圏における交通運輸、観光事業の発展と経済社会の発展 に資すべく、関係機関のご指導の下に日本財団をはじめ賛助会員並びに業界団体等の皆様からのご支 援をいただき、事業を積極的に推進してきたところである。 平成23年度の調査・研究事業としては、行政並びに業界団体等から16件の受託事業を実施した ほか、定例刊行物の発行、当センター独自で企画した「サロンセミナー」 、 「かんこうけんコロキウム」 に加え各種講演会の開催等を積極的に取り組み、運輸交通・観光事業の一層の発展と社会経済の活性 化のための懸賞論文募集事業の実施するなど、成果を収めることができた。 1 Ⅱ.事 業 活 動 1.交通経済に関する調査研究 A.日本財団助成事業 調査事業を実施すべく日本財団に平成23年10月に2件申請をしたが、承認を得ること ができず、平成23年度は実施することができなかった。 B.受託調査研究事業・・・16件 《概 要》 (1) 映像記 録型ドライ ブレコー ダーのデ ータ 解析手法 の調査研 究 【 受 託 先】 財団法人 大阪陸運協会 【 事業内容 】 ・さまざまな交通環境に遭遇する機会の多いタクシーに無線型ドライブレコーダーを搭載し、 事故及びヒヤリハット事例を収集する。 ・兵庫県下のタクシー事業者4社を選定し、ドライブレコーダー2台を各社に貸与して実走行 でのデータ提供の協力を求めた。 ・ドライブレコーダーの搭載実証実験を9月から11月の3ヶ月間実施し、毎月5日間(25 日 ~29 日)のデータ収集を行った。 ・収集したデータの解析手法に関しては、学識者を中心に専門家、実務担当者などの構成メン バーで勉強会を3回開催し検討を行った。 【成 果】 ・実証実験結果を踏まえドライブレコーダーの有効活用について、協力会社にフィードバック することを主たる目的とし、併せてタクシー事業者に情報提供することにより、乗務員の安 全運転教育等に活用してもらうために、タクシー協会の「事故・サービス委員会」の一環と して報告会を開催した。 ・報告会には、タクシー事業者11社、12名と協会等関係者11名の延べ23名が参加。 ・調査研究は報告書にまとめ関係者に配布した。 (2) 都市部 におけるB RTの導 入に関す る調 査研究 【 受 託 先】 財団法人 大阪陸運協会、近畿バス団体協議会 【 事業内容 】 ・バスサービスの活性化策として注目されているBRT (Bus Rapid Transit) の導入に関し、 平成22年度に自治体(人口 10 万人以上)及びバス事業者を対象に意識調査を実施した。 ・前年度の調査結果を踏まえ、交通渋滞や環境問題への対応という点からも期待される「連節 バス」について、導入の課題、可能性や実効性を明らかにし、連節バスを活用したまちづく り及びバスの利用促進に関して、バス事業者や自治体関係者等に広く見識を深めてもらうた 2 め、すでに導入しているバス事業者及び地元自治体等関係者の協力を得て、 「BRT導入に関 するシンポジウム」を開催した。 【成 果】 ・平成24年2月1日にエル・おおさかで開催し、参加者は自治体、バス事業者、一般等延べ 105名であった。 ・シンポジウムの内容は報告書にまとめ関係者等に配布した。 (3) 環境にやさしい物流に向けたパートナーシップ実現のための物流事業者向け 普及啓発フォーラム 【 受 託 先】 社団法人 兵庫県トラック協会 【 事業内容 】 ・兵庫県における国道43号及び阪神高速3号神戸線沿道においては、二酸化窒素や浮遊粒子 状物質等に係る環境基準の達成が重要な課題となっており、国や自治体をはじめ物流を担う トラック運送業界においても様々な環境対策に取り組んでいる。 ・兵庫県トラック協会では、関係行政機関とともに「環境にやさしい物流」に関する調査研究 を平成16年度以降継続的に行ってきた。 ・物流環境対策の実現に向けて、 「運送事業者」 ・ 「荷主企業」 ・ 「行政・地域団体」の三位一体に よるパートナーシップの構築の必要性が過年度調査より明らかになった。 ・これまでの検討成果を踏まえ、荷主企業と物流事業者におけるパートナーシップの関係につ いて深堀するため「環境と物流を考えるフォーラム」を開催した。 ・なお、フォーラムに先立ち、議論活性化のため事業者の生の声を集めることを目的にアンケ ート調査を実施し、調査結果をフォーラムの中で報告した。 ・また、当日は多くの関係者の協力により、低公害車の展示も行った。 【成 果】 ・平成23年11月24日に神戸海洋博物館ホールで開催し、参加者は物流事業者を中心に延 べ130名であった。 ・フォーラムの内容とアンケート調査は報告書にまとめ関係者等に配布した。 3 受託調査研究事業一覧表 № 受 託事業名 受 託先 1 若年内航船員確保推進事業「水産系高等学校生徒を対象とした就業 体験の実施」 近畿運輸局 2 北大阪急行線延伸整備主体検討線等委託 箕 面 市 3 手話教室 交通エコロジー・モビリティ財団 4 交通事業者向けバリアフリー教育訓練(BEST)実施に向けた研究(関 西地区研修実施業務) 交通エコロジー・モビリティ財団 5 運輸安全マネジメント支援センターTSD(運輸安全設計)に係る事 業の推進 ㈶大阪陸運協会 6 運輸安全マネジメントについてのアンケート調査 ㈶大阪陸運協会 7 運輸安全マネジメント制度導入から5周年を迎えてのシンポジウム 開催事業 ㈶大阪陸運協会 8 映像記録型ドライブレコーダーのデータ解析手法の調査研究 ㈶大阪陸運協会 9 環境保全優良事業者等局長表彰式&記念講演会事業 ㈶大阪陸運協会 10 電気自動車急速充電器スタンド設置竣工式 ㈶大阪陸運協会 11 次世代型サードナンバー検討委員会事前準備委員会 ㈶大阪陸運協会 ㈶大阪陸運協会 12 都市部におけるBRTの導入に関する調査研究 13 事業用自動車総合安全プラン 2009 冊子(改定版)作成調査検討 近畿バス団体協議会 近畿バス団体協議会 近畿ハイヤー・タクシー協議会 近畿トラック協会 14 近畿黒煙ゼロ推進連絡協議会業務 近畿トラック協会 15 EV貨物車実用化に向けての実証実験 近畿トラック協会 16 環境にやさしい物流に向けたパートナーシップ実現のための物流 事業者向け普及啓発フォーラム 17 北大阪急行線延伸整備主体検討線等委託 (22年度) 4 ㈳兵庫県トラック協会 箕 面 市 2.交通経済に関する諸般の文献、資料、統計その他の情報の収集・分析・整理お よび提供 交通経済に関する研究論文、図書、各種統計資料および刊行物等の収集を行い、既存の資料、文献 とともに整理して、各種委員会委員、賛助会員、関係団体等の利用に供した。 なお、23年度に購入又は寄贈を受けた図書等の資料は、54点(購入11、寄贈43)である。 3.交通経済に関する講演会等の開催 ○ サロンセミナー ・日時、場所 平成 24 年 2 月 14 日(火) 14:00~16:00 ホテルグランヴィア大阪 ・講演テーマおよび講師 「どうなる日本の空」~関空発のLCC就航を前に~ 関西国際空港株式会社 取締役会長 岩村 敬 氏 ・聴講者:102名 ((財)関西交通経済研究センターの独自事業として開催) ■ 講 演(概 要) ◇ 本邦企業最後のチャンス ◇ ・我が国の航空業界は、これまでと変わらないでいくと、これから大発展する東アジア市場 で外国企業が躍進するのに、日本企業は衰退し生き残っても小さい航空会社になり、力の 強い外国社に覇権を握られ、その傘下に入るか、提携するしか生き残れなくなることを危 惧する。 ・国内航空市場は更に縮小の一途となる。 ◇ 日本版LCCの成功に期待 ◇ ・日本版LCCが成功すれば移動費用が下がり、日航、全日空も合理化してより良いサービ スをより安く提供できるようになる。その結果、地域間交流の増大と経済活性化が期待で きる。 ・航空再活性化のために、行政は新たな展開をしないといけない。 5 ○ 国土交通白書説明会 ・日時、場所 平成 23 年 10 月 6 日 (木) 13:30~15:00 大阪合同庁舎第1号館第1別館 ・講演テーマおよび講師 「平成22年度国土交通白書について」 国土交通省 総合政策局政策課 政策調査室長 大澤 一夫 氏 ・聴講者:198名 (国土交通省近畿運輸局、神戸運輸監理部、近畿地方整備局主催、(財)関西交通経済研究セ ンターの協賛により開催) ○ 物流講演会 ・日時、場所 平成 24 年 2 月 3 日 (金) 13:10~16:45 エル・おおさか ・講演テーマおよび講師 「東日本大震災と物流」 京都大学 防災研究所 教授 多々納 裕一 氏 「ロジスティクスプロバイダーから見た震災ロジスティクス」 日本通運株式会社 業務部 専任部長 興村 徹氏 「新興国の物流環境の変化とリスク実態・対策案」 三井住友海上火災保険株式会社 海損部海外企画チーム課長 米原 康志 氏 ・聴講者:450名 (国土交通省近畿運輸局、神戸運輸監理部、(公社)日本ロジスティクスシステム協会、近畿 倉庫協会連合会、兵庫県倉庫協会、(財)関西交通経済研究センターの共催により開催) ○ かんこうけんコロキウム 【 第7回】 ・日時、場所 平成 23 年 4 月 12 日(火)18:30~20:30 ㈶大阪陸運協会 会議室 ・講演テーマおよび講師 「鉄道への公的関与のあり方について」 武庫川女子大学 教授 盛山 正仁 氏 ・参加者:26名 【 第8回】 ・日時、場所 平成 23 年 7 月 21 日(木)18:30~20:30 ㈶大阪陸運協会 会議室 ・講演テーマおよび講師 「航空の現状と課題」~関空・伊丹経営統合を控えて~ 大阪航空局 次長 花角 英世 氏 ・参加者:20名 6 【 第9回】 ・日時、場所 平成 23 年 11 月 17 日(水)18:30~20:30 ㈶大阪陸運協会 会議室 ・講演テーマおよび講師 「温室効果ガス及び気候の現状とそのインパクト」 大阪管区気象台 技術部長 須田 一人 氏 ・参加者:12名 【 第10回 】 ・日時、場所 平成 24 年 3 月 22 日(木)18:30~20:30 ㈶大阪陸運協会 会議室 ・講演テーマおよび講師 「整備新幹線の概要について」 (独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構大阪支社長 鈴木 明氏 ・参加者:20名 (財)関西交通経済研究センターの主催、(財)大阪陸運協会の後援により開催 4.研 究 論 文 の 募 集 事 業 当財団の調査研究における新たな切り口を発掘し、その調査研究を通じて近畿圏における運輸交 通・観光事業の一層の発展と社会経済の活性化に寄与すべく、2008年度から懸賞論文事業を 実施している。 今年度は、2件の応募作品があり、審査の結果、表彰対象として選定されるものはなかった。 5.文献その他出版物の刊行 ○ 「関西交通経済ポケットブック」の刊行 関西交通経済ポケットブック11年版を刊行し、賛助会員、関係機関及び研究機関に配布し たほか、一般に広く頒布した。 ○ 機関誌「関 交 研」の発行 関西交通経済研究センター11年春季号(124号)及び秋季号(125号)を発行し、 賛助会員等に配布した。 【主な掲載内容】 ・124号 ・がんばろう 日本! 被災者支援・災害復旧・復興に全力 国民の命と暮らしを守る国交省 ・2010年度かんこうけん懸賞論文審査報告 ・第5回かんこうけんコロキウム 「国土交通省政策集2010」に見る ・第6回かんこうけんコロキウム かんこうけん懸賞論文表彰式・受賞論文発表 「離島の旅客船および乗船ゲートにおけるバリアフリーの現状と課題」 「タクシーの諸問題とその処方箋」―大阪の例を中心にー 7 ・近畿の世界遺産の旅 大峯奥駈道 ・125号 ・行政特集 所感 近畿運輸局長・神戸運輸監理部長 ・第7回かんこうけんコロキウム 「鉄道への公的関与のあり方について」 ・第8回かんこうけんコロキウム 「航空の現状と課題」~関空・伊丹経営統合を控えて~ ・平成23年度交通関係環境保全優良事業者等局長表彰 Ⅲ.組織の変更 平成22年3月に開催の第87回理事会において、 「公益財団法人」に移行する議決を受け、移行申 請の準備を進め、平成23年2月に国土交通省より「移行認定の申請」を行って支障なしの連絡があ り、平成23年2月に公益法人認定等委員会に電子申請を行った。 申請後について、公益財団の基本的な要件については特段の問題はなかったものの、日本財団から の様々な質問事項に随時対応するなど、やり取りを重ねた結果、日本財団の理解が得られ平成24年 1月に承認書の交付を受けた。 直ちに公益法人認定等委員会に承諾行為が完了したことを報告し、申請内容の最終修正を行い平成 24年3月23日付けをもって、同委員会から内閣総理大臣へ答申書が出された。 平成24年3月28日付けをもって、内閣総理大臣から整備法第44条の規定に基づき、公益財団 法人としての認定がなされ、4月1日に法人登記を行い「公益財団法人 関西交通経済研究センター」 として新たな組織へ移行した。 8