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女犯の島 - タテ書き小説ネット

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女犯の島 - タテ書き小説ネット
女犯の島
田中 義一郎
!18禁要素を含みます。本作品は18歳未満の方が閲覧してはいけません!
タテ書き小説ネット[R18指定] Byナイトランタン
http://pdfnovels.net/
注意事項
このPDFファイルは﹁ノクターンノベルズ﹂﹁ムーンライトノ
ベルズ﹂﹁ミッドナイトノベルズ﹂で掲載中の小説を﹁タテ書き小
説ネット﹂のシステムが自動的にPDF化させたものです。
この小説の著作権は小説の作者にあります。そのため、作者また
は当社に無断でこのPDFファイル及び小説を、引用の範囲を超え
る形で転載、改変、再配布、販売することを一切禁止致します。小
説の紹介や個人用途での印刷および保存はご自由にどうぞ。
︻小説タイトル︼
女犯の島
︻Nコード︼
N1210BR
︻作者名︼
田中 義一郎
︻あらすじ︼
高校三年の夏休み、須和瀬純一は祖母の墓のある離島を一人尋ね
る。その島には、旅館の美しい女主人と、娘である三人の美少女。
そして、巨乳の美人教師が住んでいたのだった。
一日目の夜。女主人は全裸で、純一の寝床を訪れる。そして、島の
女たちと次々に関係を結んでいく純一。
彼の滞在期間は一週間。純一が島を離れる時には、どんな決断をす
るのだろうか?
1
﹁一日目﹂ その一
︱︱午後十時五分。
﹁ふぅ⋮⋮。今日は色々とあって、疲れたな﹂
すわせ
じゅんいち
少しカビ臭い綿敷き布団に、仰向けに寝転がる須和瀬 純一は、
旅館の部屋の高い天井を見つめる。古い建物であるので、天井板の
木目やシミが物の怪の顔にさえ見えていた。
にょはん
東京の自宅での就寝時間は、いつもは零時過ぎだったが、この島
での⋮⋮否、この遠い遠い﹃如伴島﹄に辿り着くまでに、酷く疲れ
てしまっていたのだ。
﹁カチッ﹂
右手を天に伸ばし、長く伸びた蛍光灯の紐を引く。寝っ転がって
いてもスイッチの切り替えが可能な、ものぐさ仕様だった。
タオル生地の掛け布団を胸まで持って来る。
八畳もある広い和室は、丸い傘の中の小さなオレンジ光だけで照
らされる。優しい光だった。
安心し、目をつむる。
◆◇◆
うしおや
︱︱午後十時三十二分。
﹁スー﹂
旅館﹁潮屋﹂唯一の客間、そこの入口ふすまが音もなく開く。
その時、高校三年生の純一は熟睡していた。もちろん気が付くは
2
ずもない。
﹁寝てる、寝てる⋮⋮﹂
侵入者は小声で言い、足音を立てぬようにゆっくりとした動作で
布団に近づく。畳の上をすり足で歩いていた。
﹁う⋮⋮﹂
純一は暑くて寝苦しくなったのか、体を覆う薄い布団を蹴飛ばし
ていた。
﹁⋮⋮割とイイ体、してんね﹂
侵入者は女性だった。純一の浴衣の前ははだけて、胸から腹部に
かけて露わになっていた。
しおや
うしお
﹁純一君、鍛えてるのかな? そんな風に見えなかったけど⋮⋮﹂
黒髪を後ろで縛ったポニーテール姿の潮屋 汐は、右手のひらを
彼の体の表面を這わせる。
旅館﹁潮屋﹂を一人で切り盛りする女主人の汐は、純一の浴衣を
留めている帯をほどき、露出部分を更に大きくする。
﹁う⋮⋮ん﹂
寝返りを打とうとする純一を押さえ込み、仰向けの体勢にさせた。
﹁スルリ﹂
女主人も自分の浴衣の紐をほどき、衣類を脱いだ。
下着は付けてなく、一糸まとわぬ全裸となった。
少年のすぐ隣で、上半身だけ起こして寄り添った。
三十路を越えているが、汐の裸は美しかった。均整の取れた良い
プロポーションだ。
大きめの胸は張りを失わずに、先端部分はツンと上を向いている。
おもむろに、純一に覆い被さる。
﹁⋮⋮ん?﹂
3
人の気配を感じて、純一は目を開けた。
﹁う、汐さん?﹂
﹁シー⋮⋮静かにして。娘たちが起きるでしょ﹂
汐は純一にのし掛かったまま、人差し指を彼の唇に当てる。
﹁で、でも胸が⋮⋮﹂
そこまで言うと、女の指が彼の口の中へと侵入し、純一の歯をゆ
っくりとなぞる。固くなった乳首が押し当てられているのを、彼は
強く感じていた。
﹁胸だけじゃ、ないのよ⋮⋮﹂
汐は、口腔から取り出された左手人差し指を、彼に見せつける。
純一の唾液で濡れていた。
その指を、汐の太ももに這わせていく。
指はゆっくりと移動し、女の秘所に向かう。
﹁ゴクリ⋮⋮﹂
純一の固唾を飲む音が、部屋の中に響いた。
二人の息遣いと、遠くの波の音しか聞こえない静寂の空間。
﹁今から何するか、わかるよね⋮⋮﹂
そう言った彼女の顔が赤らんでいる。目の焦点が合わずに、上半
身がフラフラと揺れていた。
﹁えーと⋮⋮﹂
純一は驚く。汐の左手が自分の股間の一物を触ってきたからだ。
グレーのボクサーパンツ。その前の部分を持ち上げている物体の、
大きさと固さ、そして熱さを、布の上から確認していた。
﹁う、汐さん?﹂
十八歳の彼には、女性経験は無かった。彼女の柔肌を直に感じ、
理性は完全に消し飛んでいた。
女性の体がこんなにも柔らかく、肌触りが良いとは思っていなか
ったのだ。
彼女をきつく抱きしめる。純一の思ったよりも厚い胸板の下で、
4
汐の胸が押しつぶされていた。
柔らかいが弾力のある乳房だった。
﹁優しくして⋮⋮﹂
彼女は、耳元で低い声で囁く。
﹁汐さん。汐さん﹂
今度は彼女の胸に顔を埋めていた。こんな柔らかくたおやかな物
体との遭遇は、初めての経験だった。夢のようなひとときだった。
﹁初めてなの⋮⋮?﹂
﹁⋮⋮﹂
女性から聞かれ、顔を上げ赤らめたままうなずいた。
﹁そう。じゃあ、あたしがリードしてあ・げ・る﹂
汐はそう言って、純一の下着をゆっくりと脱がす。剥き出しとな
る大きく膨張したペニスを、右手で優しく包み込む。
汐は宝物を探し出した冒険家のように、満面の笑みを浮かべる。
﹁あの⋮⋮﹂
﹁動かないでね⋮⋮﹂
慌てる彼の上に、腰を上げてまたがる汐。
足の付け根の陰毛が、淡い光だが鮮明に見えていた。
頭がクラクラするような、そんな体験の連続であった。
﹁じっとしていて⋮⋮﹂
彼のペニスの上に、ゆっくりと腰を下ろす彼女だった。
﹁あ⋮⋮﹂
彼は、下半身の先に熱さを感じたと思ったら、それであっという
間に全体が包み込まれる。
﹁あん⋮⋮﹂
汐も声を漏らす。彼女はゆっくりと自分の腰を上下させる。
﹁ああ、汐さん!﹂
快楽が、頭のてっぺんから足の先まで伝わっていた。
5
あっという間に彼女の膣内に放出していた。純一の童貞喪失は、
情けなくも呆気ないほど簡単に終わってしまっていた。
﹁ふぅ⋮⋮﹂
体を離した女主人は、純一に寄り添った形で仰向けにゴロンと寝
転がる。
胸も重力に逆らって、美しい形を留める。
慣れた手付きで、枕元のティッシュを大量に抜き取り、自分の股
間にあてがっていた。﹁いっぱい出たよ。ホラ﹂
満面の笑みで、彼女の胎内に放出された精液を見せつける。
﹁凄い⋮⋮匂い⋮⋮﹂
ティッシュを鼻の位置に持ってきて、歯を見せて笑う。
丸めて、部屋の隅のゴミ箱に投げ捨てたが、外れていた。
﹁汐さん⋮⋮﹂
純一は、彼女の上に覆い被さる。
﹁来て⋮⋮﹂
拒む気配もなく、大きく足を開いて向かい入れる。
﹁す、すみません⋮⋮ば、場所が分からなくて⋮⋮﹂
若い肉棒は、女性器から逸れるように上を向く。純一は暴れるそ
れを右手で押さえつけるが、いうことを聞かない。
﹁ん⋮⋮﹂
純一の腰に両足を絡めた彼女は、自分の手でその場所へと誘導す
る。
﹁あ、入った⋮⋮﹂
呆気なく、二度目の挿入が行われ、男の方が声を出す。
﹁今度は、君が動いてよね⋮⋮﹂
囁かれ、彼はぎこちなく腰を前後に動かし始める。
﹁うん、その調子。気持ちイイよ⋮⋮純一君。夜は長いからね⋮⋮﹂
汐は頭を上げて、揺れるカーテンを見る。
6
開け放たれた窓から、涼しげな海風が吹きつけていた。
彼は作業に没頭する。その時は、気が付かなかった。押し入れの
ふすまがほんの少し開いていたことを⋮⋮。
そして、押し入れの中に人が潜んでいることを⋮⋮。
﹁あ、あっ、あぁー!﹂
甲高い汐の声が、夜のしじまを破る。
◆◇◆
︱︱前日。
︱︱午前六時十二分。
東京都大田区、東京国際空港第二旅客ターミナル。
二階出発ロビー。
﹁べ、別にアンタの為に⋮⋮き、来たワケじゃ無いんだからね⋮⋮﹂
にしかわ
ゆうか
何ともツンデレな台詞を喋ってらっしゃるのは、ボクの幼馴染み
西河 優佳だった。
﹁そう⋮⋮﹂
つれなく言ったボクは、航空会社のカウンターに大きなキャリー
バッグを預けた後に、小さめのリュックサックを右肩に抱えて手荷
物検査場へと向かう。
﹁チョ、チョッと! ナニ勝手に先に向かうのよ! せっかくの夏
休みの旅行で、見送りの人も居なくて可哀相だから、仕方無く来て
あげたのに!﹂
顔を赤くして必死に語る︱︱幼馴染みの後輩を無視して、ボクは
列の最後部に並ぶ。
7
﹁遅れは無いな⋮⋮﹂
顔を上げて、飛行機の出発時刻をもう一度確認する。
﹁ねぇ! どうして私を無視するの! まだ、四十分以上も時間が
あるでしょ!﹂
プリプリと怒り出す。優佳はその場で地団駄を踏んでいた。
他の乗客が珍しそうに二人を見ていて、とても恥ずかしかった。
同じ学校で一つ歳下の、高校二年生の優佳は学校指定の夏服姿だ
った。白いシャツに赤いリボン、短めのチェックのスカートが可愛
らしかった。
銀ぶち眼鏡にソバカスの多い地味目の顔だけど、可愛い方だとボ
クは思う。
クセの強い茶系の髪の毛が、彼女には似合っている。
近所に住んでいて、母親同士が仲が良くて、優佳はボクのことを
兄のように慕っているんだ。
﹁飛行機は、三十分前には手荷物検査しないといけないんだ。それ
に、向かうのは地方空港だから、出発ゲートまで散々歩かされるん
だよ。じゃ、行くね﹂
前の乗客が、検査場入口に入る。その後にボクも続く。
﹁到着したらメールしてよねっ! それからも、毎日メールするの
! 絶対よ! そしたら、空港に迎えにも来てあげるから!﹂
﹁ハイハイ﹂
ボクは後ろ手に手を振りながら、空港職員にチケットを見せて荷
物を渡す。
背後をチラリと見た。優佳は必死に手を振っていた。
彼女も寂しいんだな。
﹁素直じゃないんだから⋮⋮﹂
ボクは小声でポツリと言って、金属探知機のゲートを潜る。
8
◆◇◆
一日目。
︱︱午前八時四十分。
○○港、離島向けフェリー乗り場。
﹁ふぁあ⋮⋮﹂
ボクは盛大に欠伸をする。前日はハードスケジュールだった。飛
行機が目的の空港に到着後、バスを二回乗り継いで目的の○×市に
到着した時、時刻は夕刻だった。
タクシーでビジネスホテルに向かい、その日は夕食後早々に寝て
しまった。
夜中、一度目を覚ましてスマートフォンを確認すると、優佳から
のメールが十何通も届いていた。文面は、連絡を寄越さないボクを
罵倒する内容だったが、最後の方はボクの身を案じていた。
﹁まだ、目的地に到着してないんだけど⋮⋮﹂
可哀相なので、この場で返信をしておいた。
﹁間もなくぅー、△△島行きの高速連絡船が到着しますぅー﹂
待合所に、おばちゃん声のアナウンスが響く。
ボクは黒の樹脂製キャリーバッグを引きずって、フェリーへと伸
びる搭乗橋を歩く。
﹁へー﹂
離島への便であり、乗客は少ないだろうと思っていたが、結構な
人数が並び感心をする。
昨日より夏休みに突入したので、ボクのような観光目的の客も大
9
勢いた。そして、揃いの作業服を着た工事関係者や作業員もたくさ
ん乗り込む。
ビデオカメラを構える、マスコミ関係者も確認出来た。
ボクは眺めの良い甲板デッキには出ず、普通客室前方の窓際に座
る。
﹁隣、よろしいですか?﹂
三人掛けの座席。二人の女性客に話しかけられる。
﹁ええ﹂
断る理由もないので、そう答える。客室を見渡すと、五十人は座
れる席は、ほぼ埋まっていた。運航会社は万々歳の状況なのだろう。
客席はこの他にも、扉を隔てた位置に同じような広さの場所があ
る。階段を登った甲板上にも座席がある。逆に階段を下った船底に
は、席の区分けのない横になれる場所がある。船酔いの酷い人はそ
こに寝転がるのだ。
高速連絡船の総定員は二百名だと、乗り場で係員に聞かされた。
﹁キミ、高校生? △△島には観光なの?﹂
隣に座った女性から話しかけられる。見た目からも女子大生ぐら
いだろうか。
上は派手な黄色いアロハシャツで、下は黒デニムのホットパンツ
にょはん
をはいていた。ムチムチの太ももが眩しい。極力そちらは見ないこ
とにする。
﹁いえ、△△島の沖に﹃如判島﹄という小さな島があるんです。そ
こに祖母の墓があって、その墓参りに⋮⋮﹂
﹁へぇー。若いのに感心だねぇー﹂
彼女はジロジロとボクを見て、色々と値踏みをしているようだ。
白いTシャツに迷彩柄のハーフパンツ姿のボクは、貧乏旅行客にし
10
か見えないだろう。
それに、目的は墓参りだけでは無い⋮⋮説明が面倒なので、ここ
では省略した。
﹁ね、ボク。お菓子食べる?﹂
もう一人の女性客が、スティック状のチョコ菓子を差し出して来
た。
﹁あ、ハイ。頂きます﹂
コチラの女性は、短めの白いタンクトップを着用し、おへそが少
しのぞいている。茶色いキュロットスカートから白い足が見える。
コチラはしなやかで細い足だった。
二人共、麦わら帽にビーチサンダル姿の、リゾート仕様だった。
うん。ボクは足フェチなんだな︱︱と、実感する。特に、太もも
からお尻のラインを後ろから視姦するのが趣味なのだ。うんうん。
だが、座っている彼女らの後ろ姿を眺めるのは。難しいと思うよ。
まきしま
ゆきこ
﹁私たちは、△△島でダイビングをするんですよ。初心者ですけど﹂
牧島 由希子と名乗った女性は、通路の床に置いた大きなバッグ
を指差す。足ひれや、ウェットスーツがのぞいていた。その下はビ
キニの水着でも着るのだろうか? 妄想が止まらない。
由希子さんは、お尻や胸の肉付きが良さそうだ。
よしはら
まゆみ
﹁アナタ、お墓参りが終わったらさ、お姉さんたちと遊ばない?﹂
もう一人の吉原 麻由美さんがそう言った。
こ、これって⋮⋮逆ナンだよね。
﹁いえ、﹃如判島﹄に向かう船は一週間に一便しか無いんです。で
すから、△△島に滞在している時間がない﹂
ボクは極めて残念そうに言う。
﹁そっかー、でも私たちは十日間居るから、声かけてね。□□旅館
に泊まっているから⋮⋮﹂
優しく手を握ってきた。こ、これって⋮⋮完全に⋮⋮。
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﹁ねぇ! 君たち! スキューバ・ダイビングをしてるの?﹂
チャラそうな男が割り込んできた。茶髪のロングで、赤いポロシ
ャツのエリが立っていた。あごひげも茶色に染めている。左手には、
高そうなビデオカメラを構えているので、一般人では無いと分かる
レベルだ。
﹁そうです!﹂
チョイ悪風のイケメンに話しかけられて、彼女たちはそちらとの
会話に夢中になる。
﹁僕たちは、東京のTV局のクルーしてるんだけど、今は下取材の
最中なんだ。これから甲板に出て、君たちをモデルに撮影してもい
いかな?﹂
﹁ハイ! 喜んで!﹂
二人はキャイキャイ歓声を上げながら甲板へと続く階段を登る。
取材クルーの四人組の男性と楽しそうに歓談している。
﹁ボクは、荷物番か⋮⋮﹂
彼女たちの残された旅行カバンを見つめる。
そして、彼女たちの二つのお尻を見送った。
反対を向く。窓ガラスに頭を預け外を見る。高速で波を切って走
る船。
しぶきが窓に当たって砕けていた。ボクは目をつぶる。
◆◇◆
︱︱午前九時三十分。
出港して五十分で、△△島の港が見えて来た。波よけのテトラポ
12
ットが数百メートルも連なっている。
波穏やかな港の奧。立派な岸壁に高速艇は接岸する。
△△島に降り立つボク。逆ナンしてきた女子大生の二人組は、と
っくに消えていた。彼女たちはきっと、さっきの男どもに酷い目に
遭わされると思うよ。
﹁さて⋮⋮﹂
困ったボクは、フェリーの待合所ベンチに腰掛ける。﹃如伴島﹄
への連絡船乗り場が見当たらないのだ。
出港の時間は十時丁度だと聞かされていた。
周囲を見渡す。
高速艇の後部から車が二台降りてきた。一台は郵便局の赤い軽ワ
ゴン。もう一台は、工事用の荷物を満載した小型トラックである。
その後、フォークリフトが船に乗り込み、簡易コンテナを次々と
運び出す。その作業を漫然と眺めていた。
﹁兄ちゃん! 迎えを待ってるのかい?﹂
荷物を受け取りに来たらしい、日焼けしたおじさんに話しかけら
れた。
﹁いえ、﹃如伴島﹄に向かう連絡船を探しているんですが⋮⋮﹂
﹁ああ、アレだよ!﹂
おじさんは一つの小船を指差して、自分の仕事に戻ってしまった。
それは、普通の漁船にしか見えない。違うとすれば、船に搭載し
てある小さめのクレーンの存在だった。それで簡易コンテナを積り
下げて、小船に乗せようとしていた。
ボクは自分の荷物を引きずって走り寄る。
13
﹁あの! この船が﹃如伴島﹄への連絡船ですか?﹂
﹁そうだよー。お客さんかい?﹂
クレーンを操るのは四十歳ぐらいの女性だった。
﹁は、ハイ! そうです﹂
﹁待っててね。荷物を積み終わったら直ぐに出港するから﹂
﹁あ、ハイ!﹂
ボクは、にこやかに答える。
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﹁一日目﹂ その二
◆◇◆
︱︱午前十一時五十分。
如伴島、防波堤。
﹁ああ⋮⋮やっと着いた⋮⋮﹂
島が大きく見えて来て、安心したボクは言葉を漏らす。漏らすも
ナニも、胃の中にあったビジネスホテルの朝食バイキングのメニュ
ーは、全て出し尽くしてしまっていたのだ。
もう、胃液も漏れやしない。
小さな船は揺れる揺れる。二時間も休み無しだった。その時は、
波にあおられる木の葉も同然だった。船酔いでダウンしたボクは、
小船の甲板でノックダウン状態だったのだ。
島から伸びている細長い一本のコンクリート製の防波堤。そこに
船が近づくと、防波堤の上を軽トラックが走り来るのを確認出来た。
軽トラは船の近くで停車する。
﹁おーい! おーい!﹂
助手席に乗っていた少女が飛び降りて、船まで駆け寄ってきた。
手を振っている。
﹁おー!﹂
ボクも笑顔となり振り返す。少女は白のワンピース姿だった。顔
は幼い。小学生ぐらいだろうか。
15
﹁バタム﹂
軽トラの運転席から降りてきたのは美しい女性だった。まだ三十
歳ぐらいだろうか。長い黒髪を後ろで束ねている。黒のタンクトッ
よしこ
プに、青いデニムのジーンズをはいていた。
ふくだ
よしこ
﹁佳子さん! 今日の荷物は大きいねえ﹂
船頭でもある福田 佳子さんは、再びクレーンを操作してコンテ
ナを軽トラックの荷台に載せようとしていた。
﹁あ⋮⋮﹂
一方のボクは、逡巡する。乗船時には板を岸壁に渡してもらって
そこを通った。降りるときはどうするんだろ。その板を持ち上げよ
すわせ
じゅんいち
うとするがビクともしない。
﹁キミが須和瀬 純一くん? 話は、君のお母さんから聞いてるよ。
で、何してるの? 荷物を投げな!﹂
しおや
うしお
この人が、母から話しに聞いた旅館の女主人さんなのだろうか。
﹁あ、あのー。潮屋 汐さんですよね﹂
﹁そ、だよー﹂
少し日焼けした肌。白い歯が眩しかった。
﹁で、でも⋮⋮﹂
荷物を投げる? 船と防波堤には一メートルぐらいの隙間が空い
ている。下は海だ。迷っていると⋮⋮。
﹁ホイ!﹂
仕事の仕上げにと、佳子さんは軽々とキャリーバッグを投げつけ
る。汐さんも胸でガッチリと受け止めて、軽トラの荷台に載せた。
﹁ほら、飛び降りな﹂
女船頭さんに背中をバチンと叩かれた。
凄い力だった。海で働く人は、女性でも力持ちなのだろうか?
ボクは、何とか防波堤に飛び降りた。
16
﹁お兄ちゃんが、旅館のお客さん?﹂
白いワンピース姿の少女が、はにかみながら聞いてくる。汐さん
の娘なのだろうか? とっても可愛らしかった。
防波堤の上、彼女の栗色の長い髪の毛が、潮風で揺れる。少女は
必死に押さえていた。
お兄ちゃんと呼ばれ、ボクも照れる。
﹁は、はい。お、お世話になります﹂
ボクは丁寧に頭を下げた。
﹁純一君、乗りな!﹂
汐さんは、既に運転席に乗り込んでいた。ブルンとエンジンを掛
ける。
﹁佳子さあーん! 荷物ありがとね!﹂
助手席に乗り込むワンピースの少女は、防波堤から離れる小船に
手を振っていた。
少女が待ち望んでいたのは、ボクではなくて積み荷の方だったの
だ。
﹁乗るって⋮⋮﹂
狭い軽トラックには乗り込むべきスペースが残されていない。
﹁荷台に乗るんだよ。早くして﹂
﹁え? それって⋮⋮﹂
﹁いいんだよ! この島には警察官も居ないからさ。なにしろ、こ
のトラックも車検が切れたままなのだよ。小さいことは気にしない、
気にしない!﹂
汐さんはアハハと大きな声で笑い、車のギヤをバックに入れた。
ボクは慌てて荷台に取り付く。
17
途端、車はバックで走り出す。軽トラを展開する場所は無いので、
走ってきた道をそのまま後ろ向きに引き返す。
防波堤にはあちこちに段差があり、車が大きく揺れる。汐さんの
運転も乱暴だった。ボクは大切な荷物が外に放り出されないように、
必死に押さえていた。
﹁ああー! 船、出ちゃったんですか!!﹂
防波堤の根元。そこに、両手に旅行カバンを持った女性が駆け付
けていた。本当に急いで走ったのだろう、息が苦しくなったのか、
大きく肩を揺らして呼吸をしていた。
そして、彼女の大きな胸も揺れていた。ボクはガン見する。
この人は誰なのだろうか?
﹁アハハ、先生! 寝坊しちゃったの?﹂
車から降りて少女が聞く。意地悪そうな笑みを浮かべていた。
先生? ん? そんな彼女は、まだうら若かった。二十歳台の前
半だろう。ひらひらとフリルの付いた少女趣味の服だった。強い太
陽光線に照らされて、薄い生地を透かし、うっすらと下着が見えて
いた。
ピンク色の可愛いブラジャーだった。色白の巨乳さんである。パ
ンツもピンク色で、生地の量は控えめだった。
﹁ハァ、ハァ⋮⋮昨晩は、荷物をまとめるのに悩んでいて、寝られ
なかったのよ⋮⋮﹂
れいか
気を落とし、防波堤の床に手を付いていた。
﹁怜香先生、仕方無いよ⋮⋮。定期便が来るのは一週間後ですから
ね﹂
そう言った汐さんは、軽トラの進行方向を変える。
18
﹁先生も乗ってく?﹂
﹁ハ、ハァ⋮⋮﹂
先生は、今も息が上がっている。
ボクは、荷台に乗り込もうとした教師と目が合った。大きく足を
開く彼女の、スカートの中が見えてしまった。
﹁キャッ! だ、誰?﹂
荷台に、先客が居るとは思ってなかったらしい。それも、男が⋮
⋮。
﹁す、すみません。驚かせてしまって⋮⋮。﹃潮屋旅館﹄に一週間
お世話になる、須和瀬純一です。東京から来ました。高校三年生で
す﹂
さくま
れいか
そう言って右手を差し出す。
﹁あ、私は朔麻 怜香です。﹃如伴島﹄の分校で教師をしてます。
えっと、須和瀬くんは高校生なの?﹂
﹁そ、そうです﹂
柔らかい手で握りかえされて、ボクは顔を赤くする。
﹁先生! 光に透けてて、下着がバッチリ見えてたよ。そのエロ高
なぎさ
校生が、ガン見してたよ﹂
﹁え! 渚ちゃん! 本当なの? え、そうなの!﹂
怜香先生は少女を見てから、ボクを強い表情で睨む。
ボクは視線を落として、顔をそむける。
◆◇◆
軽トラックは如伴島の集落の間をぬって走り、一軒の大きな民家
の前に到着する。
風景は、至って呑気な田舎の漁村であった。所々で猫が昼寝する。
19
古い木造二階建て家屋の玄関には、﹁潮屋旅館﹂と手書きの看板
が出ていた。
ここが旅館なのだろうか、普通の民家にしか見えない。
﹁純一君。荷物を運ぶの手伝ってくれないかな⋮⋮この島は、男手
が無いからね﹂
軽トラックの荷台のボクは、勢いよく飛び降りる。
一緒に降りようとした怜香先生に手を差し伸べるが、彼女は無視
して一人で降りてしまった。
﹁私はここで、学校の宿舎に帰りますから!﹂
言い切って、そのまま山の方に向かって歩き出す。その方向には
鉄筋コンクリート製の二階建ての建物が確認出来た。そこが学校ら
しい。
﹁よし、割と鍛えてるね﹂
汐さんは、Tシャツの上からボクの背中をアチコチ触ってくる。
﹁え、あの⋮⋮﹂
﹁合格!﹂
笑顔で言った。何が、合格?
汐さんの指示通りに、荷物を降ろして各場所に運ぶ。集落は集中
しているので、苦にはならなかった。
旅館に届けられた肉や野菜などの食材の他に、島唯一の商店に並
ぶ商品もあった。お菓子に、日用品に書籍などである。
そして⋮⋮。
﹁これは⋮⋮﹂
見覚えのある、ニヒルに笑う企業ロゴ。
大手通販サイトの段ボール箱が積み上がる。
20
宛先は⋮⋮。
﹁潮屋 渚⋮⋮﹂
﹁ねぇ! お兄ちゃん! それ、わたしの部屋にまで運んどいて⋮
⋮﹂
生意気な少女は、ボクに偉そうに命令する。
︵ええい! これも、ついでだ!︶
ボクは心の中で叫び、うず高く積み上げられた段ボール箱を抱え
て、旅館の二階への階段を登る。
﹁コッチ、コッチ⋮⋮﹂
渚ちゃんに、手招きで招き入れられたのは、入口がふすまの和室
だった。
﹁ガラッ﹂
少女は、はしたなく足で開けていた。
﹁へぇ⋮⋮﹂
ボクは感心する。思ったよりも乙女な部屋があった。部屋はピン
クの色調で統一されており、可愛らしい印象だ。同系色の花柄カバ
ーのベッドもある。部屋の中も広い。八畳はありそうだ。
奧の窓際に学習机があり、ピンク色のランドセルが下げてあった。
これでようやく、小学生であると実感する。
﹁そこで、箱から中身を出してくれないかな⋮⋮お兄ちゃん♪﹂
最後には可愛らしく呼びかけてくる。こき使う気マンマンだ。
﹁うん⋮⋮分かったよ﹂
美少女にお願いされたら仕方無いよね。ピンク色のサマー・カー
ペットに座り込み、箱の開梱を始める。
﹁おーい! 渚! お昼終わったら、純一君を案内してあげてねー
21
!﹂
階下から汐さんが呼びかける。
﹁えー!!﹂
露骨に嫌な返事を返す、渚ちゃん。
﹁純一君に、色々と手伝ってもらってるんでしょう!﹂
﹁もー! 分かったから!﹂
焼けクソ気味に返していた。
その時、美味しそうな匂いが二階にまで漂ってきた。空腹を感じ、
お腹を押さえる。朝食は全て戻してしまっていたのを思い出す。
胃は空っぽだった。
﹁何だ?﹂
丁寧に箱を開けて、透明なビニールを破る。白い納品書の下にあ
ったのは、漫画本だった。
それも、18禁の⋮⋮。
表紙には、露出の多いアニメ調の女性キャラがいた。
しかも⋮⋮。
﹁あ、アナル⋮⋮﹂
本のタイトルを見て、手に持ったまま固まる。
︵あなたのソレをアナルに入れて♪︶
なんつー題名だ。
﹁いいのいいの、気にしなくて⋮⋮﹂
﹁気にするよ! いや、十八歳未満は購入禁止だろ! この、エロ
エロ小学生!﹂
渚はへへへと笑い、頭を掻く。
﹁わたしは、ネット上では二十三歳のOLになってんのよ⋮⋮﹂
全く反省の色の見えない、彼女の弁明だった。
22
﹁おーい! お昼、出来たよ!﹂
再び、汐さんの大きな声。
﹁ハーイ!﹂
小学生らしい元気な声を返す渚。
ボクと彼女の二人は、部屋を出て階段に向かう。
古い家なので、廊下の床材がギシギシときしんでいた。
﹁ね、お兄さん。わたしの部屋は鍵が付いてないからさ、いつでも
襲っていいよ﹂
そう言って笑う。
﹁襲うか!﹂
ボクはこの時は、ただの冗談だと思っていた。
﹁わーい! 肉だ! トンカツだ!﹂
渚ちゃんは食卓のテーブルの前に正座して、バンザイする。良い
匂いの正体は、これだったのか。
こうしてると、小学生らしくて可愛いのにと思う。
﹁純一君は、お魚が苦手だと聞いたから、今日からは君に合わせた
メニューなんよ⋮⋮﹂
そう言ってボクの前に山盛りにご飯が盛られた茶碗を差し出した。
﹁どうも、すみません⋮⋮お手数かけてしまって⋮⋮﹂
﹁ううん。謝ることないよ! 魚料理ばかりで、飽き飽きしていた﹂
少女は、自分のお皿のトンカツとキャベツの千切りにたっぷりの
ウスターソースを掛けて、揚げ物を小さな口に頬張っていた。
みなと
﹁港! お昼よ! 降りてらっしゃい!﹂
汐さんは二階に呼びかけるが、返事はない。
﹁港?﹂
23
ボクは渚ちゃんに尋ねる。
﹁ああ、気にしなくていいのよ。上のお姉ちゃん⋮⋮﹂
その後は無言となり、食事に集中する渚ちゃんだった。
あまり語りたくない話題らしい。
食事後。
︱︱午後一時二分。
﹁お墓に案内すればいいんでしょ⋮⋮﹂
渚ちゃんは少しむくれて言う。
﹁ご免なさいね、純一君。お部屋の用意にもう少し時間が掛かるの
よ。他にもモロモロ準備があってね⋮⋮﹂
汐さんは、庭先に干してある敷布団をパンパンと叩く。太陽光線
にホコリがキラキラと光っていた。
﹁コッチよ⋮⋮付いてきて⋮⋮﹂
渚ちゃんは、頭の後ろに両手を回してさっさと歩き出す。
北側の山の方に入って行く。
﹁ああ、待って⋮⋮渚ちゃん!﹂
ボクは急ぎ、追いかける。
◆◇◆
山道を歩くと眼下に学校の建物が見えて来た。
﹁この場所に、渚ちゃんが通ってるの?﹂
﹁そうよ。小学校と中学校が一緒になった本島の学校の分校。生徒
も、私とお姉ちゃんしかいないんだよ﹂
渚ちゃんは立ち止まり、見下ろしながら説明をする。
24
鉄筋コンクリート製の二階建ての建物は、この島で一番新しい建
築物のようだ。
﹁二階まで教室なんだ?﹂
二人しか生徒のいない学校としては立派すぎると思った。
﹁二階は、怜香先生の住居になってるのよ。教室は一つだけ。他は
保健室とか、モロモロがあって⋮⋮。あ、いいこと思い付いた﹂
渚ちゃんは悪そうな顔をする。怜香先生とは、防波堤の所で会っ
た色白巨乳の美人さんだ。
﹁コッチ来て⋮⋮コッチ⋮⋮﹂
彼女に手を引かれ、山道をそれる。身長ほどもある雑草をかき分
けて、大きな木の根元に来た。
極めて、自然に手を握ってしまったが、女の子と手を繋ぐのは始
めてかも知れない。
﹁タイミングがバッチリ! いい場面が見られるよ⋮⋮﹂
歯を見せて笑う少女。指差した先をボクは見る。
﹁!﹂
学校の建物、二階の部屋の中が丸見えだった。風通しを良くする
ためか、窓が大きく開け放たれていた。
先ほどの、怜香先生がベッドに横たわり文庫本を読んでいた。
下着姿だった。先ほどのピンクのブラとパンツを着用している。
コチラには全く気が付いて無い様子。ゴロンと体の向きを変える。
可愛らしいお尻と、ムチムチの太もものラインが確認出来た。
ボクにとって眼福である。
﹁油断し切ってるのよ。島には男が一人もいないからね。今はこの
場所に、飢えた狼がいるというのに⋮⋮﹂
ボクは夢中でのぞく。可愛いウサギちゃんを前にして、よだれを
25
垂らさん勢いだ。
﹁どう?﹂
渚ちゃんが聞いてきた。
﹁どうって?﹂
聞き返す。
﹁先生を襲いたくなった?﹂
そう言って彼女は、ボクに体を密着させてくる。この状況だと、
渚ちゃんの方を襲いたくなってくるよ。でも、相手は小学生なんだ。
頭を振って、考えを頭の中から追い出す。
﹁渚ちゃん! 行こう!﹂
ボクは、元来た山道へと戻って行った。
︱︱午後一時四十二分。
﹁⋮⋮﹂
ボクは墓前で、無言のまま手を合わせる。
﹁終わった?﹂
お尻の後ろに手を廻している、白いワンピースの少女は手持ちぶ
さただったらしい。
﹁終わったよ﹂
お墓は既に掃除され、花まで供えてあった。汐さんが手配したら
しい。
祖母の墓参りは、母親が出した条件の一つであった。
条件とは⋮⋮また、後で語ることにしよう。
このお墓は一風変わっている。強い風が吹き付ける山沿いの斜面。
風よけのためか、丸い石を積み上げた石垣で覆われている。
沖縄辺りでよく見る墓の形態だ。そんなお墓が数基並ぶ。
26
﹁お兄さんさ、帰りにイイところ寄ってく? イイ物が見られるよ﹂
先ほどと口調が同じだった。怪しいよね。
﹁また、先生をのぞくのか? それは犯罪だよ﹂
﹁そんなこと言ってもいいの? もっとイイ物が見られるのに⋮⋮﹂
﹁もっとイイ物?﹂
﹁そ﹂
少女は悪い顔で笑う。
︱︱午後二時十四分。
﹁渚ちゃん⋮⋮ま、まだなの?﹂
山道を延々と歩かされ、島の北側まで出ていた。
港や集落は、少しばかりの平野がある島の南側に集中している。
低い山をグルリと迂回して、反対側にまで歩かされたのだった。
﹁こっちよ!﹂
手を引く彼女に、一生懸命に付いていく。ボクは日頃の運動不足
を嘆いていた。
そして、山道を下って行く。
眼前には海が広がる。圧倒的な風景が、そこにはあった。紺色で
深くて暗い海が、視界の全てに続いていた。
﹃如伴島﹄が、絶海の孤島であることを思い知らされる。
﹁ここは?﹂
道は無くなり、岩場が連なる。何とも歩きにくい場所だった。
潮の匂いが強くなり、波音が聞こえていた。
﹁あそこ!﹂
ボクら二人は岩陰に隠れる。
27
岩場の突端に、テーブル状になった大きな石があった。三畳ほど
の広いスペースが広がっている。
岩の上に何か乗っていた。紺色の⋮⋮。
﹁ドサッ﹂
その上に、何かが乗せられた。漁用の網? その網の中に入って
いるのは大量の貝類だった。
﹁人魚?﹂
そう思ったのも仕方が無い。裸の女性の上半身が見えた。
その女性は勢いを付けて、岩の上に乗っかる。
全裸だった。
﹁人魚じゃないよ⋮⋮﹂
渚ちゃんはそう言って、ボクの背中に胸を押しつけてくる。全然
無い胸だ。
そう、その胸。
﹁だれ?﹂
ボクは疑問を口にする。
見た目は幼い感じだった。健康的に日焼けした姿が確認出来る。
少女は岩に横たわり、休息する。冷えた体を太陽光で温めている
のだろう。まだ子供の胸だが、白い日焼けの残りが眩しかった。そ
して、胸のポッチリも確認出来た。可愛いピンク色が目にも鮮やか
だ。
﹁お姉ちゃん⋮⋮﹂
みなと
渚はポツリと言う。
みさき
﹁み、港って子?﹂
﹁ううん。岬姉ェの方﹂
首を振り、渚ちゃんは言う。
﹁どうして、裸?﹂
岩の上のマーメイドは、大きく足を開く。僅かばかりの黒い陰毛
28
が見えていた。
肩口までのスポーティーなショートカットの黒髪だった。顔立ち
は汐さんに似ている。もちろん、母娘だから似るのは当然だが⋮⋮
渚ちゃんは父親似? コチラの方は全く汐さんの雰囲気を感じさせ
ない。
あま
﹁岬姉ェは、お母さんの跡取りを目指してるの。海女さんになるん
だって﹂
﹁海女さんは、全裸にならんだろ﹂
﹁最初はスク水で潜ってたけど、日焼けの跡が嫌なんだって⋮⋮﹂
そう言った渚ちゃんは、隠れていた岩場からスクっと立ち上がる。
﹁な、渚ちゃん!﹂
ボクは驚いて、大声を出してしまった。
﹁誰!﹂
岬ちゃんは、胸を隠してコチラを見ていた。
﹁おーい! 岬姉ェ! この人がお客さんだよー﹂
渚ちゃんは姉に向かって手を振っていた。
﹁渚ちゃん! どうして、こんな場所に連れてくるの!﹂
そう言った彼女は背中を向け、岩の上に脱ぎ捨てていた紺色の水
着を着始める。
しかし⋮⋮。
﹁岬姉ェ! 純一お兄ちゃんに、お尻丸見えだよ!﹂
﹁え!﹂
﹁ボチャン!﹂
岬ちゃんは全身を白いお尻まで真っ赤にして、そのまま海に飛び
込んだ。
◆◇◆
29
ボクは姉妹と一緒に山道を下る。
﹁プィッ﹂
岬ちゃんは腹を立てたのか、ボクとは視線を合わせてくれない。
﹁お姉ちゃん、今日も大漁?﹂
﹁ウン。アワビにサザエ、ウニに⋮⋮。あ、お味噌汁の具にワカメ
も獲ったよ。あとは青のりも﹂
背負った網を前に持ってきて、今日の収穫を報告する。
岬ちゃんは、紺のスク水の上に白いパーカーを羽織っていた。ビ
ニールのサンダルを履いて山道を下る。
日々、山や海を走り回り、泳ぎ回っているのだ。贅肉のそぎ落と
された健康的な少女の姿があった。
﹁これで、お小遣いもバッチリね!﹂
妹の言葉に笑顔になる。
﹁あ、あの⋮⋮。須和瀬純一です。ヨ、ヨロシク﹂
右手を差し出すが、無視されてしまった。
怒っているらしい。
そうこうしているうちに、旅館に到着した。
◆◇◆
︱︱そして、夜。
午後十一時三十分。
﹁うっぐ、うっぐ、うっぐ⋮⋮﹂
﹁あ⋮⋮の⋮⋮汐さん﹂
全裸で仰向けのボクは、所在なく言う。
30
彼女に尋ねても返答は返って来ない。汐さんのリズミカルな鼻息
がボクの下半身に掛かっていた。彼女の上の口は塞がれているから
ね。
﹁ああ⋮⋮気持ちイイです﹂
ボクは声を漏らしてしまった。
汐さんは、ボクのペニスを口に含んで頭を上下に動かす。そして
舌先がいやらしくねっとりと動き、ボクの敏感な部分を刺激する。
﹁ゴメンネ。あたし一人で夢中になっちゃって⋮⋮﹂
口を離した彼女は、体を起こし蛍光灯の紐を二回引いた。
﹁まぶし⋮⋮﹂
ボクは思わず顔を覆う。照明が点灯されて部屋が明るくなった。
しかし、汐さんの裸が鮮明に見えていた。
﹁これが、女の部分よ⋮⋮﹂
彼女はボクの顔の上に膝立ちでまたがって、再びフェラチオの作
業に戻った。
ボクの目の前には、汐さんの女性器がある。全部が丸見えだった。
﹁あたしのお○こ、舐めたり触ったりしていいのよ⋮⋮。このくら
いの男の子は興味があるんでしょ﹂
一度ボクのペニスから顔を離した彼女は、低い声で言った。
ボクは汐さんの敏感な部分に舌を伸ばして行く。
横目で部屋の掛け時計を見た。
長針と短針がピタリと重なり、十二時丁度を差していた。
布団のボクらを上から見たら、こんな風に見えるだろう。
そんなことを考える。
31
﹁二日目﹂ その一
︱︱午前零時十分。
昨晩からの行為は、今も続いていた。
﹁純一君。今度は、違う体位で楽しもうか⋮⋮﹂
うしお
しおや
シックスナインのプレイを存分に堪能した、旅館の女主人・潮屋
汐さんは、ボクの体から離れると、布団の上で四つん這いの体勢
をとる。
何とも魅惑的な光景だった。汐さんの大きめのお尻がボクの方を
向く。
そして、明るい蛍光灯の下、パックリと開いてボクを迎えようと
する彼女の秘所が、バッチリと見えた。
︵本当に、アワビそっくりだな⋮⋮︶
そんなことを考える。夕方、岬ちゃんが収穫した海の幸。その時
見た一枚貝は、ヌラヌラと光って、妖しくうごめいていた。
それがボクの眼前にある。
﹁早くぅ⋮⋮。入れる場所は、見えるでしょ⋮⋮﹂
汐さんはおねだりするように、甘い声を出していた。
昼間見た男勝りのたくましさは、なりを潜めている。
同時に、腰を艶めかしく動かして、ボクを誘っていた。
﹁は、ハイ⋮⋮﹂
ボクはお尻の割れ目にペニスを這わせて、秘所の入口に持ってく
る。
テラテラと光ったそこは、いつでも挿入がOKだ。
﹁うん⋮⋮入った。純一君のが、あたしの中に﹂
後ろに顔を向け、ボクと目線が合うと可愛らしく言った。
32
ボクとは十歳以上も年齢が離れているのに、年下の幼い女の子を
相手にしている感覚だ。
何もかもが愛おしい。
﹁汐さん。汐さん﹂
ボクは名前を呼びながら、男性器を彼女の奥深くへと突き入れる。
ボクの恥骨が汐さんの弾力のある臀部にリズミカルに当たる。
﹁いいよ純一君、その調子。ずいぶん上手くなってるね。こういう
姿勢だと、腰の骨を掴むと動きやすいよ﹂
﹁は、ハイ!﹂
汐さんの助言通りに行動する。
人間の体は不思議だと実感する。最初の頃に比べれば、随分と余
裕が出ていた。
まあ、汐さんの体の中に二回も大量に放出していれば、おのずと
賢者タイムにも突入するよね。
﹁ううん。そこダメ⋮⋮﹂
彼女が拒むということは、そこが弱点なのだ。重点的にその場所
に突き入れる。
﹁純一君は、可愛い顔していじわるね。女の嫌がる所を責めてくる﹂
そんなことを言われて、更にいじらしくなる。アソコも大きくな
る。
﹁ああ、汐さん⋮⋮﹂
彼女の胎内に三度目の放出をした。ボクの動きに合わせて汐さん
も必死に受け止めようと、腰がうごめいた。
﹁ふぅ⋮⋮﹂
一仕事終えた満足感からか、そのままぐったりと布団にうつぶせ
になる彼女。
﹁はぁ⋮⋮はぁ⋮⋮﹂
ボクも体力の限界を感じて、彼女のそばに仰向けに横たわる。
33
﹁ごめんね⋮⋮あたしの欲望に付き合わせちゃって⋮⋮﹂
ボクの胸に頭を預ける彼女。
﹁そんなことないです。汐さんは、とっても素敵でした﹂
彼女の髪の毛をゆっくりとかきあげる。
もの凄く幸せを感じた。
﹁二人きりの時は、﹃汐﹄って呼んで⋮⋮。ねっ﹃純一﹄﹂
そう言われて、ボクの下半身は再びいきり立つ。
﹁汐⋮⋮﹂
﹁純一⋮⋮﹂
ボクらは濃厚なキスをする。
よく考えたら、汐さんとの初めての⋮⋮。
いや、ボク自身のファーストキスだった。
セックスの方が先だったけどね⋮⋮。
﹁汐⋮⋮もう一回⋮⋮いいでしょ﹂
ボクは彼女の胸を揉みしだく。
﹁うん⋮⋮せっかちね純一。汗をいっぱいかいちゃったから、お風
呂行く? お湯は残ってるから、洗いっこしましょ﹂
﹁は、ハイ!﹂
可愛く囁かれ、立ち上がったボクは汐さんをお姫様抱っこする。
﹁アラ⋮⋮三本目の手が、あたしのお尻を持ち上げている。たくま
しいのね﹂
彼女に指摘され顔を赤くする。
そのままの姿で、汐さんを抱えて風呂場へと向かった。
◆◇◆
34
︱︱午前七時五十分。
潮屋旅館、客間。
﹁お兄ちゃん! おっきして!﹂
体の上に重さを感じて目を覚ます。
﹁な、渚ちゃん⋮⋮﹂
当惑する。
無邪気な少女が、男の体の上に馬乗りになってまたがっている︱
︱という図なのだが、この子は確信してやってるよね。
﹁何か、固いのがお尻に当たってる⋮⋮﹂
フフフと笑いながら、腰を前後させる少女。
ボクは浴衣を着込んでいて、薄いタオル生地の掛け布団が乗って
いる。
その生地を透して、十二歳の少女の臀部の感触を味わっていた。
嫌でも昨夜のことを思い出す。ほんのさっきまで彼女の母親が、
同じ動作をしていたのだ。
﹁渚ちゃん⋮⋮降りてよ﹂
上半身を起こし、彼女の両肩を掴む。
﹁ウフフ﹂
妖しく笑い、ゆっくりとボクの体から離れる。
﹁朝食の時間だよね﹂
ボクは立ち上がり、浴衣の前を直す。パンツの前は持ち上がった
ままだ。
﹁布団、仕舞うね﹂
渚ちゃんは、敷き布団を畳んで、その上にタオルケットと枕を乗
せる。
35
押し入れのふすまを足で開けた。
﹁いや、ボクが仕舞うよ⋮⋮﹂
﹁いいの、お仕事だから⋮⋮﹂
そう言った渚ちゃんは、布団に鼻を近づけて大きく空気を吸い込
んでいる。
﹁何か⋮⋮凄い匂い⋮⋮。お母さんの匂いもするな⋮⋮﹂
彼女の言葉に顔を赤くする。全く、面目ない限りです︱︱ハイ。
﹁あ、ゴミも一杯溜まったね。捨てなきゃ﹂
布団を押し入れに仕舞った渚ちゃんが、部屋の隅のゴミ箱を見る。
うず高く積まれた、丸められたティッシュの山々。昨晩⋮⋮いや
いや、今朝方までの奮戦の証拠品だった。
﹁いいよ! ボクが捨てるよ!﹂
慌ててゴミ箱を小脇に抱える。
﹁そう。じゃあ、勝手口の横のゴミ袋に入れといてね。ちゃんと分
別するのよ﹂
﹁分かったよ、渚ちゃん﹂
﹁ほら、朝食が冷めちゃうよ、早く早く﹂
今度は部屋のふすまを足で開けて、一人で階段を降りていく。
放出した精液は、燃えるゴミでいいんだよね?
ボクは着替えながら、そんなことを思う。
︱︱食卓。
﹁い、いただきます!﹂
ボクは手を合わせる。
家族三人にプラス客人で、食卓前に腰掛ける姿。何か良いです。
﹁えー、お母さん! 納豆に、生卵に、山芋に、ワカメのめかぶっ
36
て⋮⋮ヌルヌル、ネバネバしたやつばっかジャン! ブーブー﹂
渚ちゃんが不平を述べる。
﹁いいじゃない。渚の好きな卵焼きにタコさんウィンナーもあるし﹂
ボクの目の前に座る岬ちゃんはそう言って、赤いウィンナーを口
に放り込み、お茶碗のご飯を掻き込んでいた。
﹁わたし、パンが良かったな﹂
渚ちゃんは、生卵の入った小鉢に醤油を垂らし、かき混ぜていた。
﹁純一君も、パンの方が良かった?﹂
隣に座る汐さんが、山盛りになったご飯を差し出して来る。
﹁いえ、そんなことは﹂
﹁精をつけてね⋮⋮﹂
ボクの耳元で、小声で囁いた。
ボクは口に含んだ味噌汁を吹き出しそうになる。
﹁このお味噌汁の具は、岬姉ェが取ってきたんだよね﹂
渚ちゃんは卵を茶碗に流し込み、卵かけご飯にしていた。
﹁ワカメと、青のり⋮⋮美味しいよ﹂
ボクは真正面に座る岬ちゃんに向けて言った。
﹁プイッ!﹂
再び横を向かれてしまった。まだ昨日の件を根に持っているらし
い。
﹁ねえねえ、お兄ちゃん。この青のり、岬姉ェのアソコの毛にそっ
くりだよね!﹂
渚ちゃんはボクの方を向いて、ケタケタと笑う。悪魔だ。小悪魔
だよコイツ。
﹁ブー﹂
盛大に味噌汁を吹き出したのは、岬ちゃんだった。
﹁コラ! 岬、食べ物を粗末にしない!﹂
37
母親に叱られて、シュンとなる岬ちゃん。
﹁あ、そうだお兄ちゃん。お兄ちゃんはスマートフォンとか持って
る?﹂
渚ちゃんが珍しく、真面目な顔で話しかけて来る。
﹁うん﹂
そう言って、お尻のポケットに入れてたア○フォンを取り出す。
﹁見せて﹂
﹁見せてと言われても、メールとかあるから⋮⋮個人情報が⋮⋮プ
ライバシーが⋮⋮﹂
ゆうか
ボクが迷ってると、手から奪って行った。
にしかわ
そうだ、幼馴染みの西河 優佳にメールを返信するのを失念して
いた。
﹁圏外だよ﹂
そう言って突き返す。
﹁え? 圏外?﹂
﹁そ、圏外﹂
渚ちゃんは、卵かけご飯に味付けのりを巻いて食べていた。
ボクは画面を確認し、慄然する。
優佳のヤツにメールを一週間も返さないと、きっと殺されるよ。
﹁△△島は電波が通じたから、大丈夫だと思ったんだ﹂
偽らざる感想を漏らす。
﹁ここは、全部の携帯電話会社が圏外だよ。アンテナは一本も立っ
てない﹂
渚ちゃんは、たくわんをポリポリかじっていた。
﹁で、電話は通じるんだよね⋮⋮﹂
旅館の階段下にある、ピンク色の公衆電話を思い出す。
﹁うん⋮⋮。彼女さんに電話してあげな⋮⋮﹂
38
﹁彼女って⋮⋮﹂
ボクは汐さんの顔を見る。素知らぬ顔で、岬ちゃんの茶碗にご飯
をよそっていた。
岬ちゃんは、その上から納豆をそそいでいる。
﹁お兄ちゃんはさ、彼女いないの?﹂
小学生の少女の、純真で残酷な質問。
﹁い、いないよ。いるわけがない!﹂
断言するボクの顔に、笑顔を向ける汐さん。
﹁純一君も、おかわりはどう?﹂
39
﹁二日目﹂ その二
◆◇◆
︱︱午前九時三分。
﹁本当に、ネットに繋がるの?﹂
﹁そうよ。そうしないと、ネットショッピングが利用できないでし
ょ!﹂
﹁そうか、そうだよね﹂
ボクと渚ちゃんは学校へと向かう。あの大手ネットショッピング
サイトも電話注文ができるけど、その画面を見るのにはインターネ
ットが必要だよね。
﹁開いてるよ。入って⋮⋮﹂
渚ちゃんは、学校の玄関扉を手で押さえてボクを招き入れる。
﹁コッチ、コッチ﹂
薄暗い廊下を足早に歩いて、一つの部屋を指差した。
﹁情報室?﹂
入口の表示を見る。
﹁ガラッ!﹂
今度も足で開けるお転婆娘だった。
今日の渚ちゃんは、ピンク色のタンクトップを着ていた。乳首の
ポッチリを確認出来たから、ノーブラだな。ま、ブラジャーが必要
なほど胸もない。そんな年頃。
下は丈のえらく短い短パンをはいている。股上の方も浅かった。
パンツがのぞいてるんじゃないかと思うくらい布が少ない。
40
渚ちゃんの白くて細長い足が見えていた。太ももの付け根さえ見
えている。
残念! ボクは、もう少し肉付きの良い方が好みなんだ。
﹁チョット待ってね⋮⋮﹂
彼女は、持ってきていた小さめのトートバッグを床に置く。
情報室にはパソコンが二台置いてある。何とも細長い部屋だった。
少し蒸し暑くなったので、ボクは窓を開ける。
渚ちゃんは椅子に座って、パソコンを何やらいじっている。設定
をしているのかな。
折りたたみ式の長いテーブルに乗る、二つの液晶ディスプレイ。
テーブルの下にデスクトップタイプのパソコンが二台置いてあった。
パソコンから伸びるLANケーブル。その先にはアンテナの付い
たルーターが置いてあった。
﹁学校には、インターネットが通じてるんだ﹂
﹁そうよ。○×市の税金の補助で、ここまでは光ファイバーケーブ
ルが通じてるけど、各家庭まで引くのは自己負担になるから、お母
さんが許してくれないの﹂
渚ちゃんはそう言って、無線ルーターのボタンを押していた。
﹁へー、そういうもんなんだ﹂
﹁スマホ貸して﹂
ボクは尻ポケットのア○フォン5を差し出した。
﹁あんまり、のぞかないでね﹂
﹁分かってるよ。Wi−Fiの設定をいじるだけ﹂
﹁パソコンに詳しいんだね﹂
﹁ウン! ここのパソコンは、わたしが設定したんだよ。怜香先生
はそういうのに弱いからさ﹂
﹁そうなんだ﹂
﹁そう⋮⋮。あ⋮⋮メールが三十通も来てるよ﹂
41
渚ちゃんはホーム画面のままのスマホを差し出して来た。
ボクは受け取り、メールの差出人を確認する。
﹁ぜ、全部、優佳のヤツだ﹂
﹁彼女さんに返信しておいたら⋮⋮わたし、チョッとおトイレ行っ
てくるね﹂
渚ちゃんは、小さな部屋を出て行った。ボクは慌ててメールの返
信の文面を考える。
﹁キンコ∼ン、カンコ∼ン♪ キンコーン、カンコーン♪﹂
︱︱午前十時二十分。
学校のチャイムが鳴って驚いた。学校が休みでも、時刻セットは
そのままらしい。
﹁渚ちゃん⋮⋮遅いな⋮⋮﹂
彼女がトイレに行ってから、三十分以上経つ。
︵もしかして、トイレで倒れているんじゃ⋮⋮︶
心配になる。
でも、女子トイレに踏み込むのは⋮⋮。
その時、パソコンの画面に目が行った。
デスクトップに置かれたフォルダの名前を見て愕然とする。
﹁怜香先生画像。岬お姉ちゃん画像⋮⋮﹂
何やら怪しげな名前のフォルダが一杯あった。
思わず声に出して、読んでしまっていたよ。
﹁これ、学校のパソコンだよね⋮⋮下の方には⋮⋮﹃アナル﹄って
!﹂
ボクは思わず、そのフォルダをクリックする。
﹁!﹂
42
そこには画像が並んでいた。洋の東西を問わないたくさんのアダ
ルト画像だった。その全てが、お尻の穴にペニスが挿入されている
場面、場面、場面。
﹁見てしまったのね⋮⋮﹂
教室の入口で声がした。
渚ちゃんだった。でも、彼女は驚くでも無く、慌てるでも無い。
﹁こ、これって!﹂
﹁それは、わたしの管理者権限でログインしたアカウントなの⋮⋮﹂
渚ちゃんはゆっくりと教室のドアを閉め、鍵を掛ける。
﹁ど、どうして鍵を?﹂
﹁ウフフ。いい事するため﹂
スキップしながら窓の方へ行き、ガラス窓を閉じ、カーテンまで
閉めている。
﹁ピピッ﹂
彼女はエアコンのリモコンスイッチを押し、稼働させる。
冷たい風がボクの顔面に掛かる。
﹁怜香先生画像のフォルダを開いてみ⋮⋮﹂
そう言った渚ちゃんは、床に置いた自分のカバンをもって椅子に
座る。
﹁な、渚ちゃん!?﹂
彼女が座ったのは、正確にはボクの膝の上だった。
﹁ホラホラ、開いて⋮⋮﹂
マウスに置かれたボクの右手に、渚ちゃんが手のひらを重ねてク
リックをした。
43
﹁これ⋮⋮﹂
﹁そうよ。怜香先生のオ○ニー画像﹂
昨日のぞいた場所からの、隠し撮り写真だった。
﹁この島には娯楽が無いの⋮⋮。ま、無いは言い過ぎかな、極めて
限られてしまうのね﹂
﹁カチリ﹂
渚ちゃんが開いた画像は、怜香先生が下着姿で自分のパンティー
の中に右手を差し入れている場面だった。
﹁カチ﹂
次には、ブラジャーが外されて大きめの胸を揉む姿。先生の乳輪
は大きめではあったが、綺麗なピンク色をしている。乳首は小さく
さくま
れいか
て陥没していた。
﹁朔麻 怜香、二十四歳。職業、教師。バスト88センチ、ウエス
ト63センチ、ヒップ92センチの︱︱少しだらしない体。好きな
食べ物はお菓子とケーキ。趣味は⋮⋮オ○ニー﹂
﹁カチリ﹂
次の画像は、先生が絶頂に達した時の顔のアップだった。清楚な
教師の仮面は剥がされている。完全にメスの顔をしていた。
﹁な、渚ちゃん⋮⋮﹂
ボクのペニスは大きくなっていた。昨晩、あんなに射精したのに
⋮⋮目の前の女の子の母親の膣内に⋮⋮。
﹁フフフ。お兄ちゃんのおチンチンが固くなってる⋮⋮。男の人っ
て、そうなの? お母さんと散々セックスしておいて⋮⋮﹂
﹁渚ちゃん!?﹂
﹁わたし、見てたのよ。お母さんとお兄ちゃんがセックスする姿を
⋮⋮﹂
少女は、ボクの固くなった部分に、小さくて柔らかいお尻を押し
44
つけてきた。
意味を知っているのか、いないのか、お尻を前後に動かして刺激
する。
﹁見てたって?﹂
ボクが聞くと、渚ちゃんは顔を後ろに向けて笑顔になる。
﹁わたしの部屋の押し入れの床下は、客室の押し入れの天井に繋が
ってるの。床板を外すと、侵入できるのよ。昨日、お兄ちゃんがお
母さんとした事、全部見た。ふわぁ∼﹂
欠伸をする。夜中から、朝方まで長時間連続で目撃してたのか!
﹁カチカチ﹂
﹁これなんか、わたしの自信作﹂
カバンの中から小さめのデジカメを取り出す。スイッチを押すと
ズームレンズが伸びていた。
﹁これは、何をしてる所なの?﹂
デジカメの液晶画面。怜香先生が自分の股間に物体を押し当てて、
恍惚とした表情をしていた。
﹁電気マッサージ機を使った、オ○ニー﹂
﹁電⋮⋮マ⋮⋮?﹂
﹁そう。とんだエロ教師でしょ⋮⋮﹂
﹁う、うん⋮⋮﹂
ボクには、目の前の︱︱どエロ少女の方が始末におえなかった。
﹁ねぇ⋮⋮お兄ちゃん⋮⋮わたしとエッチをしない?﹂
﹁え? エッチ⋮⋮﹂
﹁いや、渚ちゃんは十二歳の小学生だし⋮⋮﹂
﹁年齢は関係ないよ⋮⋮。お母さん、あんなに気持ちよさそうにし
ていた⋮⋮﹂
﹁関係あるよ!﹂
45
ボクは生意気な少女を膝の上から降ろそうと、彼女の脇腹を両手
で抱える。
﹁ヒャン!﹂
可愛らしい声を出して、彼女はボクの両手をガッシリと掴んでき
た。
﹁な、渚ちゃんこんな事やめようよ。自分を大切にするんだ⋮⋮﹂
﹁ウフフ。何言ってるの、嫌がるお母さんにあんな事やこんな事ま
でしたクセに⋮⋮﹂
嫌がるって⋮⋮君はまだまだ知らないんだな。嫌よ嫌よも好きの
ウチって⋮⋮。
渚ちゃんは、ボクの両手をタンクトップの下に入れさせて来た。
﹁な!﹂
﹁スベスベでしょ⋮⋮。小学生の柔肌を堪能してね⋮⋮あぁん⋮⋮﹂
ボクの手のひらが彼女の乳首を探し当てる。その場所を重点的に
刺激する。
﹁渚ちゃん⋮⋮﹂
ボクは彼女の首筋に口を近づけ、キスをする。同時に彼女の体臭
を、鼻孔から思い切り吸い込んだ。
髪の毛からは、シャンプーのフローラルな香りが漂う。
違う!
彼女からは、もっとメスの匂いを感じたかった。
腕を上げさせて、脇の下に鼻先を突っ込む。
﹁ヤダ! お兄ちゃんヤメテ!﹂
言葉を無視して乱暴に扱う。少し汗の臭いを感じ取って、興奮し
ていた。昨夜の汐さんが全身から発していた。女性特有の匂いだ。
両手を上げさせて、タンクトップを脱がす。乱暴に床に脱ぎ捨て
る。
少女の膨らみかけの胸を、背後からわしづかみにする。
46
﹁あっ、あっ、揉むのは反則⋮⋮﹂
悦楽の声を漏らす渚ちゃんは、腰を浮かせて自分の短パンのチャ
ックを降ろす。
ボクは短パンの中に、右手を忍び込ませる。可愛らしい白と水色
のストライプのパンツ。下着の下にはプニプニした、土手高い大陰
唇が確認出来た。何故か、横浜の中華街で食べた、豚角煮まんを思
い出す。
更に奧に進めようとすると⋮⋮。
﹁ダメ!﹂
右手首を強く掴まれた。
﹁何で!﹂
ボクは苛立ちげに言っていた。
﹁お兄さん。十二歳以下の女子と性交した場合は、それがたとえ同
意であっても、強姦罪が適用されるんですよ⋮⋮﹂
ニヤリと笑う渚ちゃん。
途端に勢いを失う、ボクの男性自身。
﹁アハハ。でも、アナルなら大丈夫ですよぅ∼﹂
ボクの膝から降り、情報室の壁に両手を突いた。可愛いお尻を突
きだして揺らしている。
﹁あ、アナル⋮⋮?﹂
パソコンの画面で見た、鮮明な画像を思い出す。
﹁そ、パンツ脱がして⋮⋮﹂
チャックを降ろした短パンは、足元に落ちていた。ボクはパンツ
に手を掛けて、小さくて可愛らしいお尻を露わにする。
そのままパンツを足首まで降ろし、少女の下着を足から奪い取る。
﹁ヤン⋮⋮﹂
下着の陰部の当たっていた部分を、指でなぞる。
﹁少し、濡れてたよ⋮⋮﹂
47
壁に手を付く彼女の耳元で囁く。顔を赤くする渚。小学生も性的
興奮を得て、立派に反応するんだね。
﹁ね、お尻を綺麗にしてきたの⋮⋮。保健室で浣腸をして、おトイ
レ行ってきたの⋮⋮。ここのトイレは温水洗浄機が付いてるから、
直腸の中まで丹念に洗ったの⋮⋮﹂
それで、トイレの時間が長かったのか⋮⋮。
ボクの一物は再び固さを取り戻していた。
彼女の小さな腰骨を掴み、菊門に狙いを付ける。
﹁ちょ、チョッと待って⋮⋮そこのカバンの中に、コンドームとロ
ーションが入ってるの⋮⋮アナルセックスの必需品でしょ﹂
恥ずかしそうに言って、床に置いた小さなトートバッグを指差す。
そんな物まで入っているのか! 恐るべし、小学生! そして、
そんな知識はどこで仕入れたのかな? ま、インターネットでしょ
うけどね。
その一連の小道具まで、ネットで揃えるとは⋮⋮。
離島をバカにしてたわ。
﹁ご、ゴムってどう付けるの?﹂
面目ない。
その辺は、知識としては全く無いのだ。その前に童貞喪失して、
汐さん相手に膣内に中出し放題だった。
﹁もう、お兄ちゃんて、本当に高校三年生なの?﹂
渚ちゃんはこちらを向いて、ボクが手に持つコンドームとローシ
ョンを奪い取る。
スキンは六個が繋がっているので、一個をちぎり取り包装を破る。
﹁よ、良く知ってるね⋮⋮﹂
﹁アナルオ○ニーには必需品よ﹂
48
慣れた手付きで、ゴム先端の空気を抜いてボクのペニスに被せて
きた。
全裸の小学生が、ボクのチンチンにコンドームを装着しているの
だ!
︵興奮してきたぁあ!! ウヒョーイ!!!︶
なんてな。自分でテンションを上げていく。
﹁え、エッチな格好だ⋮⋮﹂
﹁エッチな格好なの?﹂
ボクにジロジロと裸を見られて、恥ずかしいらしい。
﹁チョッと、何、ガン見してるのよ!﹂
毛も生えて無く、ピッチリと閉じられた陰部を左手で隠す。
プックリとしたその場所は、ホントに角煮まんの白い生地そのま
まだ。
﹁今更、恥ずかしがることも無いだろ﹂
﹁うっさいわねぇ! 男に見られるのは、何か︱︱無性に恥ずかし
いの!﹂
そういう物らしい。
だが、慣れた手付きでゴムの装着を完了する渚ちゃん。
﹁ねぇ、忠告するわ。余計な陰毛は剃りなさい! お風呂場にカミ
ソリがあったでしょ。お母さんにも負担になるわ⋮⋮以後、気を付
けなさい!﹂
小学生に諭される。確かに、ゴム装着時に陰毛を巻き込んで痛か
った。そんなに濃い方では無いと思うのだが⋮⋮。
﹁女の子って、そんなもんなの?﹂
﹁そうよ! 優しくいたわるの⋮⋮﹂
彼女は背中を向けて、ローションを手渡して来た。
﹁これを⋮⋮お尻に塗るの?﹂
﹁⋮⋮﹂
49
ボクに聞かれ、恥ずかしそうに顔を背けて、うなずいた。
﹁ここか⋮⋮﹂
ボクは後ろ向きのお尻の割れ目に垂らす。肛門に向けて左手で塗
りまくる。
﹁ヒャン!﹂
渚ちゃんはビクリとなり、全身に鳥肌が立っていた。
﹁指を入れていい?﹂
﹁う、うん⋮⋮﹂
左手中指を彼女のお尻の穴にゆっくりと差し入れる。そういえば
汐さんにもしたことのない行為だった。年端もいかない女の子にす
る事じゃないよね。
第二関節を乗り越えて、奧まで入れてしまった。
﹁ああ⋮⋮イイ⋮⋮男の人の指はヤッパ太いの⋮⋮﹂
壁に手を付いた彼女は快楽に体を震わせていた。
﹁じゃあ、自分の指は入れたことがあるんだね⋮⋮﹂
意地悪な質問だと思う。
﹁最初に入れられたのは、お母さんの指⋮⋮。一年生の頃、酷い便
秘になったの⋮⋮。その時、お母さんに浣腸をされたけど、肛門付
近はカチカチに固まって出なかった。心配したお母さんは指を突っ
込んでソレをほじくり出したの⋮⋮それが切っ掛け⋮⋮﹂
彼女が、お尻の快楽にはまった原因を聞かされた。
その間、ボクは指を動かし続ける。
﹁それで、渚ちゃんはアナルの快楽に芽生えて、お尻の穴でオ○ニ
ーするようになったんだね。何だ、怜香先生のこと言えないじゃな
いか。潮屋渚、十二歳。バスト・ツルペタ、ウェスト・ポッコリ、
ヒップ・ツルツル︱︱の幼児体型。好きなのはエロマンガ。趣味は
アナルを使ったオ○ニー。で、指の他に何を入れたの?﹂
50
ボクは指を抜いて、彼女のお尻を両手で拡げる。
﹁ヤン⋮⋮﹂
﹁言いなさい!﹂
ボクは命令口調となる。そのままいきり立ったペニスの先端をあ
てがった。
﹁それ⋮⋮熱いの⋮⋮太いの⋮⋮長いの⋮⋮﹂
﹁何を飲み込んだのかな? この、はしたない肛門は⋮⋮﹂
尋問する。
みなと
﹁ボールペン⋮⋮。港お姉ちゃんの持ってる外国製の高いヤツ⋮⋮
高校入学の時にプレゼントされた品。なんか興奮した⋮⋮﹂
﹁イケナイ妹だな。でも、もっと太いのを入れたでしょ? ん? 隠さずに言ってみな⋮⋮﹂
彼女に対して高飛車な口調になる。この体勢だと、渚ちゃんは守
勢に廻る。
﹁ソーセージ⋮⋮魚肉ソーセージ⋮⋮。ソレが夕飯に出たときは驚
いちゃった。岬お姉ちゃんは喜んで食べてた。でも、赤いビニール
が付いたまま入れたし、チャンと洗ったよ⋮⋮﹂
﹁その肛門は、魚肉ソーセージまで飲み込んだんだな。だけどソレ
は冷たかっただろ!﹂
ボクは渚ちゃんのアナルにペニスを挿入する。流石に膣とは違っ
て、入口で阻まれていたが、ローションのお陰でヌルリと侵入に成
功した。
﹁は、入った! 太くて熱いのが入った! アハハ!﹂
ボクはペニスを根元まで突き入れる。彼女の小さなお尻を掴んで、
ゆっくりと前後に動かした。
直腸の感触は、正直言って味気ない物だった。だが、強く締め付
けてくる小学生のアナルは最高だぜ!
何よりも、幼い少女を⋮⋮それも、肛門を犯しているシチュエー
ションには興奮する。
51
﹁ああ! ああ! ああー!﹂
少女は、早くも絶頂に達したらしい。ボクは壁に手を付きぐった
りとした渚ちゃんを抱えて、パイプ椅子に座る。この方が、小さな
彼女の身体を存分に味わう事が出来るのだ。
﹁どうしたの? 気持ち良くなったの?﹂
﹁ウン⋮⋮。ウン⋮⋮﹂
ボクの質問に何度もうなづく。しかし、ペニスは固いままだ。昨
晩に大量に放出した所為か、射精まで余裕がある。同時に年下の女
の子を相手にして、気持ちに余裕が出来ていた。
﹁ホラ、お尻動かして!﹂
ボクは背面座位の姿で、下から突き上げる。
﹁ヒャン! ラメ、ラメー﹂
快楽のためか、舌が回っていない。それにしても、声が大きいな。
その辺も母娘は似るのだろうか? そして快楽を追及するのに、貪
欲な姿勢も一緒だ。
﹁お兄シャンも、イッテ! イッテ! 渚の中にダシテ!﹂
リクエストされたら仕方が無いね。ボクは腰の動きを早め、渚ち
ゃんもそれに同期させてお尻をくねらせる。で、ドサクサに紛れて
彼女のお○んこにも指を差し入れる。
驚いた顔をしていたが、コチラは何かに指の侵入を拒まれていた。
処女膜なのだろう。いずれは頂くつもりだ。
﹁アン、アン、アーン!﹂
﹁あ⋮⋮﹂
彼女の二度目の絶頂と同時に、直腸内に差し入れたペニスの先か
ら大量に放出する。
もちろん、コンドームの先端に溜まっているが⋮⋮。
﹁ハァ、ハァ、ハァ⋮⋮﹂
52
少女の小さな肩が激しく上下する様を眺める。
何とも幸福な瞬間だ。快楽の余韻を味わっている彼女。その左の
乳首を弄りながら、右手は彼女のクリトリスに伸びる。
乳首は硬く尖っているので、左手の親指と人差し指とで強く摘む。
﹁アン⋮⋮﹂
﹁渚は、お尻以外でオ○ニーするときは、どんな風に触るの? ク
リトリスは自分でいじるの? 膣には指を入れるの?﹂
ボクは右手の人差し指を再び挿入する。その手首を両手で掴んで
拒む渚。
﹁処女は、大好きな人のために取ってるの!﹂
強く言った。
アナルセックスを経験した少女が、貞操を守ることを訴えていて
おかしくなる。
﹁あはは﹂
﹁何がおかしいの? それにさっき﹃渚﹄って呼び捨てにした!﹂
何か、怒り出したので、ボクはペニスを引き抜く。
興ざめした。
無言でコンドームを抜き取り、精液が漏れないように縛って教室
の隅のゴミ箱に投げ入れる。
外してしまった。
﹁帰る!﹂
渚は、急に機嫌を悪くしてしまったよう。床に脱ぎ散らされた服
を着込もうとしている。
ボクは、机の上に乗ったコンドームを取りだして自分で装着した。
﹁自分が満足したなら、帰るのか? 勝手だな! そして子供だな、
渚!﹂
﹁もう、呼び捨てにするな!﹂
怒る渚がこちらを向いた。華奢で、か弱い子供の裸だった。少し
あばら骨の浮いて見える、肉付きの少ない貧相な体だった。
53
﹁渚、第二ラウンド目を楽しもうぜ﹂
ボクは持ち上がったペニスを見せつける。
﹁や!﹂
だが、彼女には拒む権利はなかった。ボクは渚を教室の床に押し
倒す。少女は抵抗を試みたが、男の腕力には敵わなかった。
﹁やめて! やめて! 警察を呼ぶわよ!﹂
﹁呼べばいいさ、最低でも二時間は掛かるんだろ。ソレまでに何度
も強姦してやるよ﹂
ボクは渚の膣口にペニスを押しつける。
﹁やめて! お願い! 本当に、やめて!﹂
涙を流して懇願してくる。この姿が、ボクの中に眠っていた嗜虐
心を揺り起こす。
本当は脅かすだけのつもりだった。
だから、彼女の純潔を守ろう。
ボクはいきり立つペニスを押さえつけて、侵入先を変更する。
﹁イヤ! こんなの、イヤ!﹂
アナルには、先ほどのローションの滑りが残っていた。軽く力を
加えると、あっさりとペニスを迎え入れる。
﹁これが、正常位だ。足をボクの背中に回すんだ。渚の母さんは、
喜んで腰を振ってたぞ。飛んだ、淫乱親子だな﹂
ボクの腰の動きに合わせ、激しく腰をくねらせる渚。
﹁ハァ、ハァ、ハァ﹂
息遣いが激しくなり、目が吊り上がり焦点が合わなくなっている。
ボクは何度も激しく腰を前後させる。
﹁アン、アン、アーン! イッチャウ! イッチャウ!﹂
渚はボクの背中に手を廻し、爪を立てる。
大きな声が漏れないように、ボクの左肩を噛んでくる。
54
﹁渚、気持ちイイか?﹂
﹁ウン、ウン。気持ちイイぃー!﹂
耳元で囁くと、大きな声を張り上げた。
﹁ドン、ドン、ドン﹂
大きな音が響いた。何の音だ? 教室入口ドア?
﹁ドン! ドン! ドン!﹂
今度は強く三度叩いてきた。
﹁誰か居るの!? 渚ちゃんでしょ! 情報室のパソコンを勝手に
使っちゃダメだと、いつも言ってるでしょ!﹂
怜香先生の叫ぶ声。
そうだった。彼女はこの学校の二階に暮らしているんだよね。
﹁な、渚ちゃん⋮⋮﹂
ボクは困っていた。絶頂後の少女は、ガッチリとホールドしてき
て、身動きが取れないでいた。
マウントの姿勢のまま押さえ込まれているのは、上に乗るボクの
方だった。
﹁先生! 御免なさい! 今、手が離せないの!﹂
渚ちゃんは床に寝そべったまま叫ぶ。ボクを強く抱きしめたまま
だ。確かに手が離せない状況だな。でも、彼女の腰だけが、意思を
持つ別の生物のように妖しく動いていた。
﹁先生、怒りますよ! いつも勝手ばかりして! この部屋の合い
鍵があるから、無理矢理でも開けますよ!﹂
そう言って、気配が消える。鍵を取りに行ったのだろう。
﹁服着て⋮⋮﹂
渚ちゃんは静かに言って、ボクを解放してくれた。冷静さを取り
55
戻したのだろう。基本は、頭のよい子だ。
急いでパンツをはこうとしているが、腰がフラフラして危なっか
しい。
﹁大丈夫? 手伝おうか?﹂
﹁いいの、先生来るよ⋮⋮﹂
あっという間に服を着込んでいた。見つかるとやばそうな物体を
ヒョイヒョイと、自分のトートバッグに放り込んでいた。
ボクも服を着込む。
﹁これ、どうしよう⋮⋮﹂
さっきまで装着していた、使用済みのコンドームだった。手に持
って迷う。
﹁頂戴⋮⋮﹂
渚ちゃんはそう言って、可愛いキャラクターの描かれたカバンに
押し込んだ。
扉の外に人影が確認出来た。怜香先生だ。
﹁先生! 今、開けますよ!﹂
渚ちゃんが教室の扉の鍵を開けるとき、ボクは窓の方を開く。男
と女の行為の匂いが充満していたからな。
﹁もう、早く開けなさいって言ったでしょ⋮⋮⋮⋮って! 何でア
ナタがこの教室にいるんですか!?﹂
怜香先生はボクを指さし、怪しむ目で見てきた。
異臭には気が付いているらしいが、その正体は知らないらしい。
二十四歳の女教師は、生娘なのかもしれない。
﹁純一お兄ちゃんのスマホが、ネットに繋がるようにしてあげてた
の!﹂
渚ちゃんは大きな声で、ボクの短パンのお尻ポケットに入ってい
た携帯電話を取り出して、見せつける。
56
﹁そ、そうなの⋮⋮。それは、ゴメンネ﹂
パソコン関係に詳しくない怜香先生は、そこで簡単に引き下がっ
てしまった。
﹁いいの、分かってくれれば⋮⋮﹂
頭の後ろにバッグを持ってきて、そう言った渚ちゃん。教師と生
徒との関係性がうかがえる。
小さなトートバッグは、コンドームやローションが入っている物
騒な代物だったが⋮⋮。
﹁エアコンが付けっぱなしじゃない! 電気代節約!﹂
﹁ピピピッ﹂
怜香先生は、リモコンを操作する。
その間に、渚ちゃんはパソコンの電源を落とす。ヤバイ画像が満
載だったしね。
﹁じゃあ、お兄ちゃん! 帰ろう!﹂
渚ちゃんは、ごく自然にボクの手を握ってきた。
二人して、手を繋いで学校を出る。
﹁続きはわたしのお部屋でしよ⋮⋮﹂
優しく囁いてきた。
◆◇◆
︱︱午後六時四十五分。
食卓。
﹁わーい! ウナギだぁー!!﹂
手を挙げて喜ぶ渚ちゃん。ホント、ここだけを見れば可愛いお子
チャマなのに。
57
﹁お魚はダメだけど、ウナギは食べられると、純一君のお母さんに
聞いたから⋮⋮﹂
汐さんは、お皿に山盛りになったウナギの蒲焼きを、ボクの目の
前に差し出す。そして、肝のお吸い物の入ったお椀を並べる。
﹁このウナギは、岬姉ェが獲ってきたのよね﹂
渚ちゃんは、蒲焼きをご飯に乗っけて、簡易のウナ丼にして食べ
始める。
﹁へぇー、ウナギが獲れる川があるんですか﹂
ボクは感心して、岬ちゃんの方を向いた。
﹁川は小さくて細いけど、その奧にため池があるの。そこに大きな
ウナギが住んでる。池の主だよ。こーんなにもあったよ!﹂
彼女は、手を広げてウナギの大きさを表現する。
初めて岬ちゃんと会話をしたかな。何か、感激。
でも、池の主を食っちゃって、大丈夫なのか?
﹁ため池の水は、この﹃如判島﹄の飲料水と農業用水になってるの﹂
そう言った岬ちゃんは、豪快に蒲焼きにかぶりついて、ご飯を掻
き込んでいた。
﹁農業用水? この島は農業もしてるんですか?﹂
﹁あー、島のことバカにしたぁ! 山の南斜面では、お米も取れる
し、色んな野菜も作ってるのよ!﹂
肝吸いを飲む渚ちゃんが反論する。
﹁今年は、夏野菜のきゅうりやトマトが大豊作。今日の野菜サラダ
にも使ってるのよ﹂
汐さんはそう言って、新たなメニューを食卓に並べる。
﹁渚は今日は一日、純一君に付き合って貰ったのよね?﹂
空になったボクの茶碗に、ご飯をよそう汐さん。
﹁そう、昼間は純一お兄ちゃんに、一杯遊んで貰ったの! ねっ!﹂
﹁ブッ!﹂
58
渚ちゃんにウィンクされて、肝吸いを吹き出すボク。
︱︱午後七時十五分。
食卓にあるテレビでは、アニメ番組が流される。通信衛星からの
アニメ専門チャンネルの電波を受信してるのだ。そういえば、旅館
の南側にはパラボラアンテナが立っていたな。
古い家屋に、最新鋭の設備︱︱その辺が妙にアンバランスだった。
画面に夢中になる渚ちゃん。そんな様子を見ると、小学生にしか
見えない。
﹁あの⋮⋮ごちそうさま。美味しかったです﹂
ボクは食器を重ねて、炊事場で洗い物をしている汐さんの所に持
っていく。
﹁それはよかった。ところで、精はついた?﹂
彼女は、ボクのお尻を水で濡れた手で撫でてくる。
﹁あ、ハイ⋮⋮﹂
顔を赤らめる。子供たちは、食卓のテレビに夢中になっている。
﹁今晩も行くから⋮⋮待っててね⋮⋮﹂
小声で言って、ボクの手を握ってきた。
無言でうなずくボク。
59
﹁三日目﹂ その一
︱︱午前零時十二分。
潮屋旅館、客間。
﹁ふぅ⋮⋮。純一は、昨日とは見違えるね﹂
布団に仰向けになる汐さん。
﹁今日は、背面座位に対面座位。背面側位と対面側位で、四回も楽
しめました﹂
ボクは汐さんに密着して言う。指を折って、胎内に放出した回数
を数える。
﹁あ、何か⋮⋮生意気ィ!﹂
﹁イタタタタ! 痛いです、汐さん。そこはマズイですって!﹂
彼女は、ボクのペニスの先をねじり上げていた。
﹁純一は、あたしの事⋮⋮軽い女と思ってるでしょ。誰とでも寝る、
チョロい女とでも思っているでしょ!﹂
﹁そ、そんな事は無いです! 汐さんは素敵な女性だと思ってます
よ﹂
必死なボクの言葉を聞いて、やっと手を離してくれた。痛い、痛
い。チンコが腫れちゃうよ。
﹁あたしは好きになった人としか、こういう関係にならないの。子
供を作りたいと思った男としか、体を重ねないの。いい? よく覚
えておいてね﹂
強い目で睨まれた。始めて汐さんを恐いと思ったんだ。
﹁分かりました。でも⋮⋮もし、赤ちゃんが出来たらボクは⋮⋮﹂
まだ、学生の身分だ。
60
それなのに、避妊もせずに中出しを続けている。
﹁承知してるよ。君のお母さんからも聞かされてる。もしも、赤ち
ゃんが出来たら島の子として育てるよ﹂
汐さんは笑顔で言った。
﹁もう、この話はお終い! お風呂行こう。ね、抱っこして⋮⋮﹂
立ち上がったボクに、両手を伸ばしておねだりしてくる。こんな
所が可愛いと思ってしまうんだ。汐さんと結婚? 随分年下の花婿
だが、ボクの両親は反対しないだろう。
そうなんだ。
汐さんの要求を、ボクの家族は拒めない。
﹁一緒に湯船に浸かりましょう﹂
ボクは彼女を抱きかかえる。二人とも、裸のまま浴室へと向かう。
気分は新婚夫婦だ。
部屋を出る時、押し入れを見た。閉じたはずのふすまが少し開い
ている。
盗み見する子猫ちゃんが隠れているのだ。
いつか、お仕置きをしないとね。
︱︱午前零時三十五分。
浴室。
﹁マットの上に座って⋮⋮﹂
一畳ほどの大きさの、ウレタン製の水色バスマットに、あぐら姿
で座るボク。
背面で足を崩して正座する汐さんは、ボディーソープを大量に手
に取って泡を立て始める。自分の胸に泡を拡げてボクの背中に押し
つけて来た。
61
固くなった乳首がボクの背中に押し当てられ、柔らかな感触が後
に続く。何とも幸せな瞬間だった。
﹁気持ちイイよ、汐。背中にポッチリが当たってる﹂
﹁ウフフ。これ見て⋮⋮﹂
汐さんは新たにボディーソープのボトルを押して、液体石けんを
左手のひらで受ける。
﹁純一の精液みたい⋮⋮白くてヌルヌル﹂
﹁ボクは、こんなに大量に出ませんよ﹂
﹁そう? 最初は凄かったよ。あそこから、溢れるぐらいだった﹂
彼女は笑いながら、ボクの股間に液体ソープを垂らして泡を立て
始める。そして左手でペニスをしごき始め、背中には胸を押しつけ
てきた。
﹁思いついた! 汐! 赤ちゃんを作ろう!﹂
ボクは振り返り、彼女を抱きしめる。
今、思いついたんだ。
優しく、注意しながらゆっくりと押し倒す。石けんで滑るからね。
気を付けないと⋮⋮。
﹁⋮⋮⋮⋮うれしい。とてもうれしい。感動したわ﹂
最初、彼女は絶句していたが、おもむろに口を開く。
汐は泡だらけの足を開いて、ボクを迎え入れる。
あっけなく挿入をする。もう、手慣れたもんだった。
顔付きは、あの時の渚ちゃんそっくりだと思った。快楽をとこと
んまで追及する姿、それは遺伝子の成せる技だった。
﹁汐、イヤらしい顔してるぞ。舌が飛び出してる。ヨダレも垂れて
るぞ﹂
﹁アン! 来て来て来て⋮⋮一杯出して! 溢れるぐらいに、満た
して欲しい﹂
62
ツルツルとアチコチが滑り、二人は自分の体を支えるので精一杯
となった。でも、結合の部分だけで、二人の気持ちが繋がれていた。
多分、今夜で彼女は妊娠する⋮⋮そう確信した。
頭が冴えてくる。
マットの石けんで濡れてない場所に、自分の手足を付く。
感覚は、ペニスの先に集中させた。彼女の膣内の感触を味わい尽
くす。どの場所が感じるのか、彼女の顔で判断する。弱点を集中的
に狙う。
﹁御免なさい。御免なさい。あたしは悪い女です﹂
自分の両足を抱えて、腰だけを動かす汐。
マットに接触した背中の一点だけで、自分の体重を支えている。
窮屈な格好だ。
涙を流して誰かに謝っていた。
娘たちなのか⋮⋮それとも⋮⋮。
﹁汐、出すよ。ご希望通りに、満腹にしてあげる。下のお口で味わ
うんだ﹂
ボクは限界を感じていた。今日何度目の⋮⋮ああ、日付は変わっ
ていたな。
意識して、膣の奥深くに差し入れる。
﹁ウン⋮⋮。美味しく頂く﹂
コクリとうなずいたのが合図だった。
ボクの陰茎先端部の尿道口から放出された分泌液の中の精子の一
群が、彼女の膣の中を漂う。そして、苦難の海原を乗り越えて子宮
頸部に辿り着く。それまでに、大勢の仲間たちが遭難し、討ち死に
するのだ。
その難関を乗り越えた、選ばれし者。優秀な精子だけが荒波を越
えて行く。
63
汐は排卵していた。卵管に留まる彼女の卵子。
ボクの精子は、目的の新大陸に到達するまでは、まだまだ長い船
旅を続けるのだ。
何故か、そんなイメージが頭の中に湧いた。
彼女の卵子に到達する、二個の精子。その二つが卵子と融合する。
一卵性の双生児だ。それも女の子だ︱︱と、確信する。
ひどくオカルトじみた話だが、妙に自信もあった。
﹁あ⋮⋮⋮⋮は⋮⋮⋮⋮﹂
長く息を吐いて、汐はぐったりとする。満足そうな微笑みを湛え
ていた。厳かな顔に見える。娼婦のようだった顔が、聖母へと変化
する。
ボクはゆっくりと体を離す。
﹁綺麗だよ、汐。とても綺麗だ﹂
彼女の頭を、顔を撫でていく。
気持ちよくなったのか、目をつむる彼女。少しの後、軽く寝息を
立てていた。
﹁クチュン﹂
汐は、可愛いくしゃみをした。
夏の風呂場とはいえ、深夜となって涼しくもなる。
﹁風邪引くよ⋮⋮﹂
だらんとなった彼女の身体を抱き上げて、ゆっくりと湯船に浸け
る。ボクも寒さを感じたので、一緒に入る。
﹁ふぅ⋮⋮﹂
息をついて、彼女の身体を包み込む。暖かいお湯で体に付いた泡
を流す。
首を回して、風呂場をグルリと眺めた。
64
浴室全体が、水色のタイルで覆われている。湯船だけが新しく樹
脂製の大きなバスタブに替えられていた。浴室自体は古い構造だが、
掃除が行き届いているので清潔感が漂っていた。
額に汗して、ブラシでタイルを磨き上げる彼女の姿。働き者の汐
を想像する。
ねむ
ボクの腕の中で眠る、彼女の性格がうかがえる。
﹁あ⋮⋮寝てた?﹂
目を覚まし、ボクの方を向く。
﹁お布団まで運んであげますよ。お眠の汐さん﹂
優しく言う。
◆◇◆
︱︱午前五時八分。
旅館、客間。
ボクは夢を見る。
白い霧に包まれた﹃如伴島﹄の山中。ボクは急いでいた。漏れそ
うなんだ、漏れそうなんだよ。オシッコが!
山道を走る。走る。必死に走る。
トイレ、トイレはどこなんだ?
キョロキョロと見渡す。
ああ、夢だ⋮⋮実感する。男だから、山中のどこの場所でもイイ
じゃないか! 恥ずかしがることナイじゃない!
﹁あれだ!﹂
大きな木を見つけた。そこの根元に駆け込んだ。
65
ハーフパンツのチャックを開けて、一物を握る。何故か勃起して
いた。取り出すのに苦労する。木の根元に向けてソレを向け、放出
した。
﹁あぁ⋮⋮⋮⋮﹂
快感が襲い、ボクは頭を振る。声を出す。
止まらない! 止まらない! オシッコが出続けている。
どうしよう。どうしよう?
︱︱その時だった。
﹁そこで、何してるの!﹂
立ちションする男を非難する声。
﹁み、岬ちゃん! こ、これは⋮⋮﹂
スクール水着姿の潮屋岬ちゃんだった。ボクは必死にオチンチン
を隠そうとするが、オシッコが止まらない。
﹁神聖な神木に、何て罰当たりな事を!﹂
怒りの表情で叫ぶ岬ちゃん。今度の彼女は、スクール水着が脱が
されて全裸姿だった。
白い日焼けの残りが、目に眩しい。
全く、神前で罰当たりなのはどっちだよ!
﹁アハハハハ! 何してるのお兄ちゃん!﹂
急に登場し、指差してボクを笑う渚ちゃん。
少女は何故か、巫女さんの格好をしていた。白い小袖に緋色の袴。
しで
コスプレ? でも、妙に似合っていた。
その木には、しめ縄が巻かれて紙垂がついている。近くには朱色
の小さい鳥居が立っていた。
﹁港姉ェ! この男が!﹂
﹁神聖な港神社の神木を、穢したの!﹂
66
岬ちゃんと、渚ちゃんの二人が、相次いでボクを糾弾する。
港⋮⋮誰だっけ⋮⋮? 港神社?
﹁許さない!﹂
女性の声が聞こえた。
恐る恐る、振り返る。
そこには⋮⋮。
﹁あ⋮⋮﹂
布団の中で目を開く。やはり夢だった。夢だったけど大変な状況
だ。
ボクの膀胱はパンパンに膨らんでいる。汐さんを寝室に届けた後
に、無性に喉が渇いて、洗面所の水を蛇口から直接に、大量に飲ん
だ。
ため池の水を、綺麗に濾過して浄水している水だ。冷たくて美味
しかった。
朝になって、猛烈な尿意に襲われる。
時計を見る。
︱︱午前五時十二分。
潮屋旅館、便所。
﹁ふぅ⋮⋮﹂
男性用の小用便器に用を足す。夢の時のように、永遠に小便が出
続けるかと思ったよ。
体を離すと、自動で水が流れる。
便器だけは新品だった。
67
﹁ジャー︱︱﹂
手を洗い、旅館の銘の入ったタオルで拭く。このトイレ全体が、
水色のタイルで覆われている。
炊事場も同様であった。この旅館の水場は、共通した雰囲気を与
える。
渚ちゃんの話だと、このトイレが水洗になったのも、つい最近の
事なのだそうだ。
女性用便器は和式のままだけどね。だから、洋式便器のある学校
のトイレをよく使う︱︱と、渚ちゃんが言っていたな。学校にはウ
○シュレットが付いてるからね。
水洗とはいっても下水道は通っていない。彼女たち家族のオシッ
コやウンチは、一旦、浄化槽に貯められるそうだ。それを微生物が
分解していく。
ボットン便所だった頃には、野菜たちの肥料にされていた︱︱と、
汐さんが笑って教えてくれた。
シミジミと、トイレの内部を見渡していた。
﹁そこで、何してるの!﹂
ボクを非難する声。
え? これって、夢の続き?
﹁ん? 岬ちゃん?﹂
す
こ
ボクは声のしたトイレの入口を見る。この場所は、スリッパから
木製のサンダルに履き替える所。桐製の簀の子が敷いてある。
声の調子から、潮屋旅館の次女の岬ちゃんだと思った。
68
﹁アナタ、ダレ!?﹂
ボクを指差して糾弾しているのは⋮⋮。
﹁び、美少女⋮⋮﹂
頭に思った事が、思わず口に出てしまった。
反射的な行動だったのだ。そのくらい、驚いていた。
そこには、絶世の美少女が居た。
渚ちゃんも、岬ちゃんも美少女に分類されるが、その何段も上を
行く極上の芸術品。
もちろん、汐さんも美人で、怜香先生も美人だ。何故か美人だら
けの、この島でも⋮⋮目の前の少女は、群を抜いて美しかった。
﹁キャー! お母さーん!! チカンよー!!!﹂
その子は、悲鳴を上げて簀の子の上で、うずくまる。
この時間はすっかりと夜が明けていた。その為、トイレの照明を
付けてなかった。それがいけなかったらしい。
彼女は、トイレの利用者は居ないと判断したのだろう。
緩りと入ろうとした。そこで、男と鉢合わせをした。
﹁ドタ、ドタ、ドタ﹂
階段を駆け下りる、三つの足音。
﹁港、どうしたの! 朝っぱらから﹂
﹁港姉ェ! コイツが何か、やらかしたのね!﹂
﹁お兄ちゃん! 幾ら欲求不満でも、港お姉ちゃんを襲っちゃダメ
だよ﹂
早朝の潮屋旅館に、三人の女性の声が同時に響く。
69
﹁えっく。えっく⋮⋮うわーん!﹂
上下灰色のスウェットを着込んだ美少女は、うずくまってから、
とうとう泣き出した。
﹁いや、あの⋮⋮これは⋮⋮﹂
ボクの着ていた浴衣は、寝乱れていた。黒のボクサーパンツが丸
見えだったのもいけなかっんだな。
風呂上がりにそのままだったので、髪の毛もボサボサで寝癖が凄
まじかった。
美少女の小さめのスウェットから、長い手と足がのぞいていた。
つんつるてんだった。その手で涙を拭っている。
﹁港、ちゃんと説明しなさい! 純一君に何をされたの?﹂
汐さんが叱りつける。
﹁港姉ェ! コイツぶん殴って、縛ってから警察を呼ぼうか?﹂
物騒で、暴力的な岬ちゃん。
﹁港お姉ちゃん! お兄ちゃんが、粗末なモノを見せつけてきたん
でしょ!﹂
な、渚ちゃん! 粗末とは何だ、失敬だな!
﹁ううん。ちがうの﹂
首を振る港ちゃん。
﹁ウチがトイレに入ったら⋮⋮﹂
﹁入ったら?﹂
と、汐さん。
﹁その人が居て⋮⋮﹂
﹁居て?﹂
と、岬ちゃん。
﹁手を洗ってたの!﹂
70
﹁手を?﹂
と、渚ちゃん。
﹁えーと⋮⋮状況を整理するね。港お姉ちゃんが、トイレに入った
ら、そこでコノ﹃変態野郎﹄が、手を洗ってたのね。﹃フルチン﹄
で!﹂
渚ちゃんが汚いモノでも見るように、ボクを軽蔑する目で見下し
た。
﹁いや⋮⋮あの⋮⋮﹂
﹁違う! ふ、﹃フルチン﹄は、ちがう⋮⋮﹂
港ちゃんはそう言って妹の発言を否定する。ついでに﹃変態野郎﹄
の項目も取り消して下さいな。
﹁じゃあ、純一君には、何もされてないのね﹂
﹁う、ウン⋮⋮﹂
汐さんの言葉に、大きく縦に首を振って肯定する港ちゃん。
そして、母親に抱きついた。大きな胸の中で泣く。
﹁だから、ボクは無罪だって主張してるでしょ!﹂
そう言いながらも、乱れた浴衣を直す。
﹁さぁ港、立ちなさい。純一君も、そんな所につっ立ってると、港
がオシッコ出来ないでしょ﹂
汐さんに注意され、ボクはトイレを出る。
﹁お姉ちゃん。オシッコ漏れた?﹂
渚ちゃんは笑いながら、姉に意地悪な質問をする。
﹁ブンブン﹂
必死に首を振って、違う! と、主張する港ちゃんだった。
71
﹁こっち来て⋮⋮お兄ちゃん﹂
渚ちゃんに浴衣の袖を引っ張られて、食卓に向かう。
そうだよね。入口で聞き耳立てられたら、出るモノも出やしない。
階段で別れ、渚ちゃんと岬ちゃんは自分たちの部屋へと戻ってい
った。
エンカウント
﹁あの子が、港ちゃん? 長くて綺麗な金髪に、透き通るような青
い眼をしていました⋮⋮﹂
そうだ、そうだ。突然の金髪碧眼キャラとの遭遇に、興奮してい
た。
ボクは気持ちを落ち着かせ、食卓のテーブル前に座る。
﹁あの子の父親は、アメリカ人でカメラマンをしてるの︱︱﹂
そう言った汐さん、遠い目をして食卓の窓からのぞく海を見つめ
ていた。
﹁あの、汐さん⋮⋮聞きたかった事が⋮⋮汐さんは結婚してるんで
すよね。そして、言いにくいでしょうけど︱︱三人の娘さんの父親
は⋮⋮﹂
﹁︱︱あたしはずっと独身だよ。そして、娘たちの父親は全部違う。
軽蔑する? あたしはこんな女﹂
ボクは黙る。
無言で立ち上がり、そのまま自分の布団のある客間に戻った。
72
﹁三日目﹂ その二
◆◇◆
︱︱午前八時三十二分。
潮屋旅館、食卓。
﹁渚! 電話よ! 怜香先生から!﹂
階段下から汐さんが娘を呼ぶ。
﹁なーーにーー!!﹂
朝食後、ボクの膝の上でテレビを見ていた渚ちゃんは、飛び降り
て電話機まで駆けて行った。
﹁あ⋮⋮﹂
食卓でボクと二人きりになり、体を硬くする港ちゃんだった。
起床後も灰色のスウェット姿で、自分の膝を抱えていた。妙に警
戒されて、コチラも居たたまれない。
今朝は珍しく︱︱と言うか、始めて彼女も一緒に朝食を召し上が
ってらっしゃるのだ。
今日のメニューは、渚ちゃんのリクエスト通りに、食パンとロー
ルパンが並んだ。ベーコンエッグに、ポテトサラダ。バナナとリン
ゴのフルーツにヨーグルトがデザートに出た。
﹁わーい!﹂
と、喜ぶ渚ちゃんが見られた。
ちなみに、岬ちゃんは食事後直ぐに、魚や貝や海草を捕りに出か
けた。
73
健康的でスポーティな女の子だと思うよ。
それに比べて⋮⋮食卓前で、膝を抱えてうずくまる港ちゃん。
タイミングを失って、自分の部屋に戻るチャンスを逃したみたい。
﹁あの⋮⋮港ちゃん﹂
﹁ヒイッ!﹂
ボクに話しかけられ、いっそう警戒する彼女だった。
そこまで拒絶されると⋮⋮コチラも傷ついてしまうな。
﹁えー! 何でぇー!!﹂
﹁ヒッ⋮⋮﹂
この場所まで聞こえる、渚ちゃんの大きな声。
その声に対しても、怯える港ちゃん。自分の妹だよね。
﹁ドタドタドタ﹂
渚ちゃんの大きな足音が、近づいて来た。
﹁ねぇ! お兄ちゃん! 今から、学校に向かうから仕度して!﹂
﹁学校?﹂
今日も、昼間はどこかにしけ込んで、渚ちゃんと﹁遊ぶ﹂つもり
だった。
﹁なんか、パソコンの設定をしてくれって!﹂
﹁でも、何でボクまで⋮⋮﹂
﹁先生からの、ご指名。男手が必要な仕事があるんだってぇ! 何
か、重い物持たされると思うよ。そんなこと言ってた。覚悟してて
ね。でも、お礼はするって言ってた。先生はね、お嬢様なんだ。高
いお菓子とか、いっぱい隠し持ってる!﹂
その後、歯を見せて﹁キシシ﹂と笑う渚ちゃんだった。
74
﹁あ、渚ちゃん、学校行くの? 先生にヨロシク言っておいて⋮⋮﹂
珍しく積極的に発言する港ちゃん。
﹁港姉ェも来れば? 先生に謝ることがあるでしょ﹂
﹁う、ウン⋮⋮。でも、ヤッパ行かない⋮⋮﹂
立ち上がり、出ていく港ちゃん。二階の自分の部屋へと戻るのだ
ろう。やっぱり、引き籠もりの子だよね。
︱︱午前八時五十四分。
潮屋旅館、玄関。
﹁お兄ちゃん! 行くよ!﹂
渚ちゃんが叫ぶ。今日はスカートのひだにフリフリの付いた、ピ
ンク色の短めのワンピース姿だった。同色のつばの大きい帽子を被
る。
今日も日差しは強そうだ。ボクも、帽子を持ってくればよかった
︱︱そう、後悔する。
歩き出す渚ちゃんの後ろ姿を、しばし見つめる。
彼女は、ピンク色のニーハイソックスが似合っていた。
今日は大きめのトートバッグを持っている。こうして見れば、年
頃の可愛い少女なのに⋮⋮。
で、そのバッグには、どんな物騒なモノが入ってるのかな? 後
で、のぞこうと思ったが、勇気は湧かない。
﹁待って、渚ちゃん!﹂
ボクは苦笑しながら、スニーカーの靴紐をきつく結ぶ。
今日のボクの出で立ちは、青いポロシャツに黒ジーンズ姿だった。
うら若き女性の家に訪問するのだ、多少は身だしなみにも気を付け
なくちゃね。
75
﹁先行くよ!﹂
とっとと向かう彼女だった。
﹁待って!﹂
走って追いかける。
︱︱午前九時二分。
分校近く。
﹁つ、疲れたよ。チョッと休もう。ね!﹂
渚ちゃんに声を掛ける。
﹁え、学校は目の前だよ﹂
大きな木の根元に腰掛ける。彼女の日頃の通学路であるが、意外
と傾斜がきついのだ。最初に走ったのも、まずかった。
﹁水飲む?﹂
バッグから、ミネラルウォーターのペットボトルを差し出す渚ち
ゃん。今日も朝から暑かった。頭から滝のように汗を掻くボク。
﹁あ、ありがとう﹂
木の根の上にへたり込んだボクは、グビグビと音を立てながら水
を飲む。
﹁お、美味しいよ。この、エ○アン﹂
﹁それ、中味はただの水道水だよ。でも、冷やすと格別でしょ﹂
﹁ああ、そう⋮⋮そうなんだ﹂
ボクは、ため池の水が入ったボトルを彼女に返す。
﹁ねぇ、港ちゃんのこと聞いていい?﹂
隣でしゃがんでいる渚ちゃんに話しかける。
76
﹁うん、いいよ。答えられる範囲であれば⋮⋮﹂
遠くを見つめる彼女。海を見ていた。ボクも海側に向き直り、地
面に直接腰を降ろす。
陽光に煌めく海面だった。波も風も穏やかで、極めて女性的な母
なる海だ︱︱と印象を持つ。
﹁港ちゃんは、夏休みになって実家に帰って来たの?﹂
高等学校は本土である○×市にしかない。
﹁あぁ⋮⋮港姉ェは、入学して一ヶ月で学校を辞めちゃったんだよ
ね﹂
﹁辞めた?﹂
﹁そう。お姉ちゃんは、人見知りが激しいの⋮⋮。特に男に対して
は酷くてね。お姉ちゃん、四月に本土の下宿先に入ってから、毎日
泣きながら電話を掛けてきたの。男恐い、男気持ち悪い、ヒー⋮⋮
ってね﹂
﹁男性恐怖症なんだ? 下宿先で、何かあったのかな?﹂
﹁下宿先は、女の子しか居ないよ。そこで、世話をする人も女の人。
で、お姉ちゃんは女子ばっかりの高校に入学したんだけど、昨今は
どこも生徒不足なのよ⋮⋮。で、お姉ちゃんの入学した年度から男
子高と合併した。そんで、毎日のように男子に話しかけられて、困
ってたんだって⋮⋮﹂
﹁話しかけられるって⋮⋮、学校じゃあ普通でしょうに﹂
﹁ウン﹂
ボクは呆れた顔をする。
渚ちゃんも苦笑いした。
﹁お姉ちゃんは、普通じゃないと感じたのね。港姉ェは、あんな姿
クラス
してるでしょ。どうしても目立っちゃうのよ﹂
﹁港ちゃん級の美少女は、東京にだってなかなか居ない。ボクも、
77
そんな子が同じ学校に通ってたら、お近づきになりたいと思うよ⋮
⋮﹂
正直な告白だった。
﹁そうだよね。妹のわたしが見ても、港姉ェは超美人で、超可愛い
と思うよ。スタイルも抜群だし、モデルとかタレントさんにもなれ
るかも。さぁ、早く学校に行こう。エアコンがあるから涼しいよ﹂
そう言って渚ちゃんは、ボクの腕を取って立ち上がる。
﹁そうか、男性恐怖症の彼女には、高校に通うのは苦痛でしかなか
ったんだな⋮⋮﹂
ポツリとつぶやく。
もったいない⋮⋮。ボクが、仮に金髪碧眼の美少女に生まれ変わ
ったら、周囲のみんなにチヤホヤされたいと希望するんだが。
そして、逆ハーレムを構築して、女王として君臨するのだ。
男共を手玉にとって、玉の輿に乗る。大金持ちのダンナと結婚す
るんだ!
そーんなことを、考えていた。
学校に到着する。
︱︱午前十時二十分。
分校、保健室。
さくま
れいか
﹁キンコ∼ン、カンコ∼ン♪ キンコーン、カンコーン♪﹂
昨日と同じ時刻にチャイムが鳴る。
それを合図にしたかのように、満面の笑みで朔麻 怜香先生が入
ってきた。
両手でお盆を掲げていた。
﹁どうぞ⋮⋮﹂
78
保健室の教諭用の机の上。カップに入れられたコーヒーを二つ並
べる。
来客用の高級なティーセットなのだろう。ソーサーも付いている。
その辺は詳しくないが、一組ン万円もする逸品だろうな。
ボクと渚ちゃんはその前の椅子に座る。
﹁あ、はい⋮⋮﹂
何だか恐縮する。
﹁クッキー食べてイイ?﹂
﹁どうぞ、遠慮無く⋮⋮﹂
﹁わーい!﹂
渚ちゃんは喜んで、有名外国メーカーの缶に入った高級菓子を摘
む。
﹁今日は二人共、ありがとね﹂
怜香先生は、保健室のベッドに腰掛けて自分専用のマグカップに
入れたコーヒーを飲む。
﹁あ、コーヒー美味しいです。インスタント以外を味わうのは、久
しぶりです﹂
ボクは先生に向く。
﹁そう? ひいた豆を取り寄せているの。それを、紙フィルターで
ドリップしただけよ﹂
怜香先生は、艶やかな黒ストッキングのなまめかしい足を組み直
す。今日の先生の姿は、一見清楚なOL風だった。白いシャツに、
紺色の短くてタイトなスカートをはいている。
白いシャツを透かして、黒いブラが透けて見えた。
欲求不満気味の、OLコスプレだ。
今日も、眼福です。
﹁先生、マッ○ブック・エアーとア○フォン持ってたんだ。でも、
79
無線LANの設定ぐらい自分で出来なかったの?﹂
そう言って渚ちゃんはコーヒーをすする。一口飲んで顔をしかめ、
ミルクと砂糖を大量に投入した。
小学生のお子チャマ舌には、苦かったらしい。
ちなみに先生が持ってたのは、ア○フォン4Sだった。早速、メ
ールアドレスと、無料通話アプリのIDを交換した。
渚ちゃんは、その様子を、含みのある表情で見つめていたな。
小学生には、携帯電話は早い! と、汐さんに買って貰えなかっ
たそうだ。
ま、電波も圏外だし。
﹁ゴメンネ渚ちゃん。インターネットには繋がってなかったんだけ
ど、ずっと困らなかったから﹂
﹁先生、友達居ないんだ﹂
渚ちゃんは教師に向けて、歯を見せて笑う。嫌味たっぷりの顔だ
った。
﹁でも、急に使いたくなったの。ネット上にアップしたい動画があ
るのよ、その時は手伝ってよね渚ちゃん﹂
先生も、作り笑顔を返す。
﹁ふん! そういうのは、パソコンに詳しい男友達に頼む事よ。私
に教えを請うなら、対価が必要ね。お菓子だけじゃ喜ばないわ、子
供じゃないから﹂
横を向く少女だった。
さっきは、クッキーに大歓喜してたじゃないか。
﹁純一君もご免なさいネ。保健室のベッドを動かすの手伝ってくれ
て⋮⋮﹂
渚ちゃんの言葉を無視して、先生はボクの方に向いた。
﹁いえ、これぐらいしか手伝う事が出来なくて。でも、どうして動
80
かしたんですか?﹂
保健室にはベッドが二つあった。頭と足側にスチール製の頑丈な
パイプの覆いがあり、重くて女性一人では動かせないのだ。並べて
置いてあったベッドの片方を動かして、保健室の端に寄せた。
﹁いいえね。窓際に置いてたら、寝てる人をのぞく悪い奴が居るの
⋮⋮。私の部屋を盗み見する、のぞき魔が出現するの⋮⋮﹂
意味ありげに笑い、渚ちゃんの方を向く怜香先生。
﹁あれー、何か眠ぃ⋮⋮﹂
ミルクと砂糖タップリのコーヒーを飲み干した渚ちゃんが言う。
フラフラと立ち上がるが、足元が覚束ない。
﹁大丈夫? ベッドに横になる?﹂
怜香先生は、ボクが移動した壁際のベッドに彼女を誘導し、眠ら
せる。
﹁どうしちゃったんだ、渚ちゃん?﹂
ボクは先生に尋ねた。彼女はボクの瞳を真っ直ぐに見つめている。
﹁君は眠くならないの? ね、純一君﹂
途端、頭がクラクラしてきた。ボクは手に持ったカップの残った
コーヒーを全て飲み、机の上に置いた。
﹁残念、その中には睡眠導入剤が入ってるの⋮⋮﹂
怜香先生が立ち上がる。ゆっくりと近づく足元だけが見えた。
椅子に座るボクは、意識を失う。
︱︱午後二時二十五分。
分校保健室、ベッドの上。
﹁あ⋮⋮れ⋮⋮﹂
81
意識を取り戻す。保健室であるのは変わりない。しかし、直ぐに
異常な状況に気が付く。
全裸だった。仰向けに寝かされて、手と足をそれぞれベッドに太
くて丈夫な縄で固定されていた。
壁に掛けられた時計を見る。四時間が経過していた。
﹁やっと起きたのね、純一君。寝顔、可愛かったよ﹂
校医用の長い白衣を着た、女教師がベッドに近づく。
﹁怜香先生。これはどういう事⋮⋮。それに、渚ちゃんは?﹂
﹁ウフフフ。あのイタズラ子猫ちゃんは、そこのベッドで寝てるわ
よ﹂
妖しく笑う先生は、アゴで隣のベッドを指し示していた。首を上
げて見る。
そこには、ボクと同じく裸に剥かれてベッドに結わえ付けられた
少女の姿があった。
何故、ピンクのニーソを脱がしてしまうのだ! プンプン!
﹁な、渚ちゃん⋮⋮。先生! どうしてこんな事を?﹂
﹁私はね、こんな島には来たくなかったの。大学時代の教授の恩師
が、この分校で教師をしてたの︱︱﹂
ボクの言葉には耳を貸さず、自分語りを始める怜香先生。
﹁︱︱前任者は、とっても立派な方だったわ。三人しかいない学校
の生徒を、立派に教え育て上げたの。で、﹃素敵な場所よ、きっと
好きになるわ﹄そんな甘い言葉に、使命感に燃えていた私は、騙さ
れた﹂
﹁それは、お婆ちゃん先生の事ね⋮⋮﹂
話に加わる渚ちゃん︱︱って、アレ? 起きてたの。この異常な
状況を何とも思わないのかな。
82
さくま
れいか
お婆ちゃん先生とは、分校の前任教師の事だ。二年前に着任した
朔麻 怜香先生。
﹁アラ、目が醒めた? 可愛い出歯亀さん﹂
少女のベッドに歩み寄り、無垢の裸に手を伸ばす。
﹁お婆ちゃん先生は、人を騙したりしない!﹂
教師の手から体を逃す渚ちゃん。激しく歯向かう。
﹁そうね。本人には騙してる自覚は無いの。だから、逆に始末に終
えない。大学の卒業間近にね、小・中学校の教員免状と養護教諭の
資格を持つ私の事を教授から聞かされて、スカウトに来たの。島の
こと、生徒たちのこと、島の人々のこと⋮⋮熱心に説得されて、世
間知らずの女の子は意気揚々と︱︱こんな田舎の離れ小島に来てし
まった﹂
﹁ふっ⋮⋮くだらない!﹂
﹁バシン!﹂
鼻で笑い一蹴した渚ちゃんの頬を、平手で叩く女教師。お、暴力
反対!
﹁痛い! 何するの!﹂
﹁話を最後まで聞きなさい! アナタの悪い癖よ、直しなさい。ア
ルバイト経験も無いその女の子は、箱入り娘として大切に育てられ
たの。何の苦労も味合わなかったその女の子は、始めての社会経験
に当惑する。ううん、苦しんだ﹂
怜香先生は窓際に行き、閉まったカーテンをめくって外の様子を
うかがっていた。
この保健室は、島の簡易診療所も兼ねている。島民の簡単な怪我
などは、ここで治療するのだ。その為に、二人しか生徒の居ない分
校に相応しくないほど、医療設備は充実している︱︱渚ちゃんに聞
83
かされていた。
島民が訪れる。そんなことを危惧した行為だった。
﹁だけど、だけど、だけど︱︱﹂
身振りを大きくして、熱弁を始める。
﹁︱︱何なの、この﹃如伴島﹄は!? ﹃横溝○史﹄の小説に出て
くる﹃獄○島﹄なの!? ド田舎の、ド僻地に来てみれば、頭のお
かしな三姉妹がいるし⋮⋮﹂
潮屋家の三姉妹のことか⋮⋮。
渚ちゃんを見るが、表情は分からない。
﹁⋮⋮しまいには、殺人事件でも起きるんじゃないの! そうよ、
狂っている三姉妹は、俳句の見立て通りに次々に殺されて行くの。
そう! 犯人は、余所者のその少年!﹂
先生は、ボクを指差した。
﹁ねぇ、何が言いたいの? 何がしたいの? そっちこそ、頭がお
かしいんじゃないの?﹂
首を上げて尋ねる少女。そうだよね、島と恩師と姉たちまで誹謗
されていた。
﹁長女は極度の人見知り、やっとの思いで高校に送り出したら四週
間で泣き帰って来る始末。次女は中学卒業したら淫乱母親の跡を継
ぐんだって、まぁー頭の緩い真性のバカだから仕方無いわねぇ。そ
んでもって三女はもっとタチが悪い。自分の事を頭が良いと思って
るんだもの。アンタぐらいの秀才は、都会に出れば掃いて捨てるほ
ど存在するって!﹂
﹁お母さんを悪く言うな! お姉ちゃんたちを悪く言うな!﹂
﹁アラ、威勢がいいわね。これはこれは、お仕置きが必要ね﹂
そう言って、ベッドの下に隠されていた物体を見せつける。
84
﹁電マ! それで何するつもり? わたしを、アンタみたいな変態
教師と同じにしないで!﹂
渚ちゃんは口汚く罵る。
﹁そう⋮⋮﹂
怜香先生はマッサージ機のスイッチを入れ、容赦なく少女の股間
に押し当てた。
﹁あっ! あっ!﹂
渚ちゃんは敏感に反応して身をよじる。
﹁綺麗な、お○んこね。白くてつるつるでプニプニしてる。な、こ
こが感じるのか? おい、言ってみそ。アソコは、はんぺんみたい
ね。いいえ、羽二重餅かしら⋮⋮﹂
﹁あ、あ、あー!﹂
振動を続ける機械を押しつけられる度に、大きな声を出す少女。
しかし、渚ちゃんのお○んこの形状に関しては、ボクと同様の感
想を持つのね。
﹁刺激が気持ちイイでしょ。私が夢中になった理由も解るでしょ。
ねえ、答えなさいよ! 言いなさいよ!﹂
今度は出力を最大にして、少女の股間に強く押し当てる。
﹁ああ、御免なさい! 御免なさい! 先生、御免なさい! 生意
気を言って御免なさい! ああん! あああん!﹂
腰をビクビクと跳ね上げながら、必死に謝る渚。両目からは、涙
を流していた。
悔恨からなのか⋮⋮快楽からなのか? それは、分からない。
﹁今更、謝ったって許さないんだから、先生の事を変態って言った
85
でしょ。でもね、アナルセックスをしている小学生も、どうかと思
うわよ。立派な変態少女よね。そうよね、純一君?﹂
目尻を吊り上げて、上気した赤い顔をボクに向ける先生。
瞳が中央に寄っている。狂気じみた顔だった。
﹁キミ、凄いわね。アナルセックスを楽しんだパートナーが虐めら
れるのを見て、興奮してるんだ。アナタも立派なド変態じゃない!﹂
面目ない。渚ちゃんの苦悶に歪む顔を見て、ペニスはいきり立っ
てしまった。
﹁へぇ、男の人って、大きくなるとこんなにも凶暴な形になるのね。
可愛い顔して、小学生のアナルを犯す鬼畜さん﹂
﹁イ!﹂
怜香先生は、ボクの亀頭の先をピンと指先で弾く。痛い、痛いけ
ど不思議な快感が脳天まで貫いていた。
﹁お兄ちゃんとのこと、見てたの! そんな、気を付けてたのに⋮
⋮﹂
驚愕の顔を向ける渚ちゃん。
﹁見てたわよ。正確には、ビデオカメラに写ってたのね。二人の変
態さんの痴態が⋮⋮﹂
そう言って、養護教諭用の机の引き出しを開けて、小型のビデオ
カメラを取りだした。
赤い塗装の、ハードディスク内蔵のHDビデオカメラだ。
﹁わたしたちのこと、隠し撮りしてたの!?﹂
﹁人のあられも無い姿を盗み撮りしておいて、よくもまぁーそんな
ことを言えたわね。情報室のパソコンを無断で使う人がいるから、
証拠を押さえようと⋮⋮。そしたら、飛んだ大ネズミが二匹も掛か
86
ったのよ、あはは、あはははは﹂
笑いながら、ビデオカメラの液晶画面を開いて、ボクに見せつけ
る。
﹃アン、アン、アーン! イッチャウ! イッチャウ!﹄
画面の中では、渚が絶頂に達していた。
いたいけな少女に覆い被さり、ヘコヘコと腰を動かすボクが映っ
ていた。
昨日、少女を床に押し倒して肛門性交に及んでいた場面だった。
客観的に見ると、実にみっともない。だが、扇情的な画面だった。
﹁物的証拠もあるのよ。ほら、見て﹂
先生が白衣のポケットから取りだしたのは、使用済みのコンドー
ムだった。そういえば昨日は、教室のゴミ箱に捨てようとして、床
に落とした品だった。
その後、先生に踏み込まれて⋮⋮完全に失念していた。
﹁何ソレ! 昨日使ったゴムは、お兄ちゃんの精液がタップリと詰
まっていて、根元も縛ってあったはずよ! ソレは、中身が無くな
ってる。怜香先生! その中身を存分に味わって、オ○ニーでもし
たんでしょ﹂
少女の指摘に右の眉を上げていたが、言葉を無視する。
無言で彼女のベッドに向かい、容赦なくマッサージ機を渚の股間
に押し当てる。
﹁アン、アン、アーン! イッチャウ! イッチャウ!﹂
今度も、全開で押しつける。逃げ惑う股間を容赦なく追いかけ続
けていた。
﹁フ⋮⋮﹂
鼻で笑う冷酷な怜香先生。
87
﹁あーーーー!! あーーーー!!! ん! ふぅ⋮⋮﹂
長く声を張り上げて、絶頂に達した渚。エビ反りになっていた背
中が戻り、持ち上げていたお尻をペタンとベッドに落とす。
ゆっくりと、彼女の胸だけが上下していた。
意識を失っている様子だ。
﹁イッタ? イッタのね。イッタんでしょ!﹂
パンパンと少女の頬を叩く。反応は返ってこない。
﹁さて、次はコチラの泥棒ネズミを、お仕置きね﹂
電マのスイッチを切った怜香先生は、ゆっくりとボクのベッドま
でやって来た。
な、何をされるの? い、痛くしないでね。
﹁あ、の⋮⋮﹂
ボクは不安で声を漏らす。
彼女は妖しい微笑みを湛えていた。満面の笑みである。これから
の行為を思い、楽しくて仕方がないのだ。
﹁私も興奮してきたの⋮⋮。暑くなってきたわね﹂
ゆっくりと白衣を脱ぐ。着衣は下着のみだった。訪問時にシャツ
とスカートの下に着込んでいた黒色のブラとパンツだった。
保健室では冷房が稼働中であった。しかし、彼女の白い肌は赤く
なり、火照っている。
黒のストッキングを、同色のガーターベルトで留めていた。レー
スのフリルの付いた可愛らしくも、イヤらしい下着姿だった。
先生はベッドによじ登り、ボクの体の上に馬乗りになった。
ベッドをギシリと軋ませていた。
﹁れ、怜香先生?﹂
88
彼女は、頭を左右に振る。少し茶色でウェーブした髪の毛が揺れ
ていた。
黒い下着に押さえ込まれている、たおやかなお胸もタユンタユン
と揺れる。
そのままの姿勢で、固まっていた。
﹁えっと⋮⋮純一君。これからどうするの⋮⋮だっけ? こんなの
は教科書に載ってないわよね﹂
﹁え? 先生はしたことが、セックスをしたことが無いんですか!
?﹂
純粋に聞く。純粋に驚く。
ま、ホンの数日前は童貞だった男の戯れ言だ。
﹁そうよ、私は処女よ! 純然たる生娘の乙女なのよ! えーえー、
そこで延びている小娘と一緒に、精々バカにしなさいよ! 二十四
歳のこの年齢まで純潔を守り通したの、立派なモンでしょ﹂
やけ気味の先生は、背中に両手を回してブラを外していた。
﹁凄いでしょ。自分でも大きすぎて困ってるの。肩が凝ってしまっ
て、ろくな事がないわ。触りたい? 触りたいでしょ。でも、今は
ダメ!﹂
怜香先生は、自分のお胸を持ち上げてボクに見せつける。
渚ちゃんの言ってた、先生のバストサイズは88センチ。
しかし、もっとありそうだ。肩幅は狭くて胸囲は小さそう。脇腹
にはあばらが少し浮いて見えた。筋肉の少ない、鍛えていない体だ。
トップとアンダーの差が大きいタイプなのだな。
ブラのカップはGは、ありそうだ。床に落ちたブラジャーの布の
大きさで推理する。
でかいな。渚ちゃんの着ていたタンクトップほどの生地の量だ。
89
﹁三日目﹂ その三
﹁先生、ボクとセックスしたいんですか?﹂
率直に聞く。
﹁い、いけないの!? アナタだって、そこの小学生に変態行為を
迫ったでしょうが! 言っときますけどね、同意の上のアナルセッ
クスでも、強制わいせつ罪が成立するんですよ! アナタは立派な
罪人です﹂
﹁そうですねボクは悪い男です。でも、今の先生の行為は、正にソ
レですよ。お互いに犯罪者ですね。ですから、パンティを脱いで先
生のお○んこを見せて下さいよ﹂
妙な論理だった。飛躍も甚だしい。でも勝手に納得した先生は、
自分のパンツに手を掛けた。
﹁あーダメだ、怜香先生。もっとイヤらしい格好で脱がないと、男
はその気になりませんよ。﹂
﹁え? そうなの﹂
手が止まる。完全にボクのペースになっていた。何かチョロいで
す。
先ほどの病んでいる状況は、彼女にとっては特異なのだろう。本
来はドジっ子さんなのだ。そうだ、防波堤で出会った先生は、寝坊
して船に乗り遅れていた。
﹁どうするの?﹂
﹁焦らすんですよ。さっきブラを外すときは最低でした。そもそも
色気を感じさせないんですよ先生は、だから二十四歳になるまで一
90
人も彼氏が出来ないんです!﹂
彼氏︱︱の項目は完全に山勘で言っていた。
美人で巨乳の先生に、彼氏が居たなら手を出さないはずはない!
そこは、断言して構わない。
今の今まで処女なのは、彼氏など居たことが無い証拠だと推理す
る。
ま、かくいうボクも彼女居ない歴十八年ですけど⋮⋮先に童貞を
捨ててしまった。
先生と、ボクは似たものを感じていた。
興味だけはあるけど、ホンの少しの勇気を出せない臆病者だった。
﹁え? やり直そうか?﹂
﹁先生、学校の授業じゃないんです。上手く行かないからといって、
やり直しはきかないんです。今更、ブラを拾って来ても遅いですよ。
それに、ブラは最後まで残しておくべきでした。先生の強みは、そ
の胸なんですから、切り札は最後まで取っておくべきですよ﹂
力説する。
﹁じゃあ、ストッキングを脱ぐの?﹂
﹁もう! 分かってないな! ガーターベルト付きのストッキング
をしたままセックスするのは、男の夢。男のロマンなんですよ。先
生は、そんな男の機微を理解していない! ですから、パンツをイ
ヤらしく脱いで、男の一物をビンビンにさせて、ガーターベルトを
したまま挿入するんです!﹂
ベッドに四肢を固定されたボクは力強く訴える。なんともシュー
ルな光景だなぁ。
91
﹁こ、こう? こういうことなの?﹂
先生は腰を浮かせて、ゆっくりと焦らしながらパンツを脱ぎだし
た。
﹁そう、そうです。パンツを脱ぐときは二回見せ場があるんです。
先生の大きなお尻を向けて、臀部を露わにするのが一回目。片足を
ゆっくりと抜いて見せて、先生のお○んこを見せつけるのが、二回
目。それが、最大に盛り上がる場面なのです﹂
﹁うん、わかったわ⋮⋮。こういうのを男の人は喜ぶのね﹂
先生は体をひねって、お尻をボクの顔の方に向ける。
そしてゆっくりと、高級な白桃のようにシミのない美しい臀部を
見せつける。
﹁いいですよ、その調子。先生は、やれば出来る子です﹂
﹁う、うんしょ⋮⋮﹂
ボクのお腹の上にお尻をのっけ、足からパンティを抜いた。
﹁そこで、パンティをボクの頬に滑らせるんです。絹製のお高い下
着なんでしょう? 使えるモノはトコトンまで使い倒すんです﹂
﹁は、ハイ。了解⋮⋮﹂
体をねじって右手を伸ばし、脱いだパンツでボクのホッペを撫で
ていた。
左手は、下着の支えを失った大きな胸を持ち上げていた。
先生は、極めて優秀な生徒だった。
﹁うん。気持ちイイよ怜香⋮⋮﹂
思わず呼び捨てにしてしまった。
先生の方もハッとなっていた。
﹁い、今なんて言ったの?﹂
﹁気持ちイイ⋮⋮﹂
﹁そのあと⋮⋮﹂
﹁れ、怜香⋮⋮﹂
92
﹁イイ! 呼び捨てイイ! 二人の時は﹃怜香﹄って呼び捨てにし
てね。絶対よ⋮⋮。あー親以外に、初めて呼び捨てにされたわ﹂
﹁じゃあ、怜香。コッチに見せてくれるかな。怜香のお○んこを⋮
⋮﹂
﹁うん﹂
先生は、お尻を支点にして、体を方向転換する。
﹁お、ふぅ﹂
お腹に彼女の体重が乗っかり、少しビックリする。でも悪くない。
悪くない眺めだし、悪くない感触だ。タプタプの臀部が密着してい
た。
﹁どう? 私のアソコ、変わってるかな? えーん、恥ずかしいよ
⋮⋮﹂
怜香は足を開き、局所をよく見えるように手で露わにする。
﹁可愛いよ、怜香。下のお毛毛は薄くて遠慮がちだな。そして、中
身は綺麗なサーモンピンク色だ。怜香はボクのために処女を守り通
して来たんだね。そして、ネチョネチョだ。もう、挿入OKだよ﹂
﹁うん⋮⋮。いよいよ、入れるね﹂
怜香の膣は、受け入れ完了の状態だった。彼女はゆっくりと腰を
浮かせて、ボクの亀頭の先を膣口に押し当てた。
﹁恐い?﹂
﹁ううん﹂
ボクの質問に首を振る怜香。完全に主導権は移行した。
﹁そ、その角度で、真っ直ぐに腰を降ろしてきて⋮⋮﹂
﹁う、うん。角度、安定させるの難しいね。この格好、苦しい﹂
作業に夢中となる先生。怜香の膣は前付きなのか、やや前傾姿勢
となる。ちなみに、汐さんは後付きかな。こちらは、後背位が楽し
める。
93
﹁あ⋮⋮﹂
あっさりと挿入される。先生は、自分の処女膜を自分の意思で突
き破っていた。
あまりにもあっけない、処女喪失シーンだった。
﹁痛くない?﹂
頭を起こして尋ねる。
﹁少しだけ⋮⋮あぁん! ダメ、動かしちゃ﹂
ボクは下から、腰を突き上げる。先生の膣内の感触を味わうのだ。
怜香のオッパイが、前後左右上下、自由自在に揺れる。むしろ、
オッパイの方に体が引っ張られて苦心していた。彼女は仕方無く、
自分の胸を両手で支えていた。
ああ、ボクのこの手が自由なら、怜香の胸を掲げ持つ事が出来る
のに⋮⋮。
でも、拘束されたこの場面にも、シチュエーション的には興奮さ
せられる。
﹁怜香、自分の腰を動かして、気持ちよくなる場所を探すんだ。そ
したら、もっと楽しめるよ﹂
﹁うん⋮⋮やってみる﹂
大学時代には、研究に没頭していたと語っていた彼女。セックス
に対しても探求心が半端無い。
ついさっき、処女を失ったとは思えないほどの積極的さだ。
﹁ここ、この角度がイイみたい。﹂
上半身を反らして、ボクの太ももにそれぞれ手を置いて腰を動か
す。ボクのオチンチンに、何やらねじれの力が加わってます。ヤバ
イ、ヤバイ。チンチンに骨があったら折れている所です。
しかし、胸の眺めは絶品です。
﹁怜香、オッパイ触りたい。手を自由にさせて、ロープ解いて﹂
94
﹁ダメ!﹂
短く言って、自分の作業に戻ってしまった。
これじゃあ、バイブレーターと変わりがないじゃないか。ああ、
彼女はバイブで処女膜を破っちゃったタイプかも。家捜しすると、
もっと凄いのが出てくるかも。
﹁あふ、あふ、あふふ、あふふ﹂
彼女の腰の動きが、小刻みに早くなる。
﹁あ、あ、ああー。ギモヂよくなったぁー﹂
﹁怜香、キミの中に出したい! 怜香の子宮の中に精液を注ぎ込み
たい!﹂
﹁ダメ、ダメよ。赤ちゃん出来ちゃう! 出来ちゃう!﹂
その言葉が合図だった。ボクは、自分のペニスの根元に脈動を感
じて一気に放つ。
﹁あっ!﹂
声を出してしまった。そして、お腹の上に乗った彼女の収縮した
お尻の筋肉が、ゆっくりと弛緩していくのを感じる。
﹁出たの? うーん、分からないわ﹂
女性の膣内には感覚器官がほとんど無いから、実感を得られない
のだ。
腰を浮かせてペニスを引き抜く。
﹁うわ! 何かが、いっぱい出てきた﹂
先生は驚いて右手で受ける。
﹁それが、精液です。赤ちゃんの素です。飲み込むと、お肌がすべ
すべになっちゃうよ﹂
﹁凄い、凄い。男の人は、こんなのを女の子の体の中に出しちゃう
のね。でも、絞りたては、あんまり匂わないのね﹂
ボクに見せつけてきた。少しばかりの血液が混じるが、痛みは感
じてないようだった。極めて明るくて、屈託のない笑顔だった。
95
﹁ゴッ⋮⋮クン!﹂
手で受けたボクの一番搾りを、美味しそうにすすって飲み込んだ。
先ほどまでの、狂ったような執念は感じられない。素直で純真な
少女のようだ。
﹁ね、怜香、縄を解いてくれないかな。怜香の爆乳を味わいたいん
だ。オッパイを揉みしだいて、顔を埋めて窒息したいんだ﹂
﹁ダメ!﹂
一蹴されてしまった。ショボン⋮⋮うな垂れる。
﹁でも、こういうのがいいんでしょ。オッパイで挟んだり、オッパ
イで叩いたり﹂
挟むのは歓迎だが⋮⋮叩く? いったい、どんなプレイだ?
﹁あ゛ーーーー。変な味だった﹂
彼女は口を大きく開けていた。口の端からヨダレが駄々漏れだ。
ボクのお腹の上に落ちる。
怜香先生は、ボクの体の上に覆い被さる。オッパイがボクの胸部
を圧迫して、息苦しいぐらいだ。
﹁あ、こういうのが良いです。怜香のオッパイ柔らかい﹂
怜香の乳房が、体の上をナメクジのように這っていく。ボクの汗
と、先生の唾液が混ざり合い、粘液となって体表を這い廻っている。
やがて、下半身へと辿り着く。約束の地だ。
しかし、乳は安住の地とはせず、積極的に開拓を始める。
﹁れ、怜香。唾液を垂らして⋮⋮﹂
﹁あ゛ーーーーがーーーー﹂
指示通りに、亀頭部分に大量のヨダレを垂らす。
﹁挟んで♪﹂
﹁うん♪﹂
いい返事だった。
96
ボクの下腹部に留まっていた軍勢が、一気呵成に山頂までに攻め
上る。
快感が腰から一気に抜けていった。
﹁あぁーん!﹂
快楽に、声を漏らしたのはボクの方だった。
﹁これがいいのか? お、言ってみそ! これがいいのんか?﹂
攻勢に出ると、先生の顔は生き生きとしてくる。
﹁ち、チンチンのカリ裏を、舌と乳首で同時に刺激されるのが恐い
! すべすべの豆大福で包まれるのが恐い! まんじゅう恐い、恐
い! ヒーィ!﹂
渚ちゃんの隠し持つ、エロマンガの中にこんなシーンがあった。
主人公の台詞を、生で再現してしまった。
ソイツは、乳牛のような、デカ乳教師を調教する漫画だった。現
実にはあり得ない乳をしていた教師だが、怜香先生は合格点を与え
られる。もちろん、アナル陵辱シーンも含まれていたよ。そうじゃ
ないと、渚ちゃんはア○ゾンで買わないもんな。
そうだ、その渚ちゃんだ。さっきまで白目を剥いて気絶していた
が⋮⋮。
横を向く。
凄まじい形相でボクを睨んでいた。
多分、一連の会話を聞いていたに違いない。嫉妬に狂う目だった。
昨日はあれだけ楽しんだ相手が、今日は違う女とエッチしている。
通常の女性なら、許せないよね。
﹁そ、そうーです。この刺激が欲しかった! ホルスタイン先生、
流石です﹂
でも、ボクも欲望に流される。怜香先生を味わい尽くしたいのだ。
煩悩まみれの男なんだよ。
97
汐さんが、極上のステーキなら、渚ちゃんは、刺激的なスパイシ
ーカレーだった。あ、言っておくけど、アナルとカレーは掛かって
無いよ。スカトロプレイとは無縁の、肛門性愛だ。
で、目の前の怜香先生は、どんな味?
タップリチーズの掛かった牛肉100%のハンバーグ。いや、分
厚いハンバーガーだな。レタスとトマトとピクルスがタップリと挟
まった、一口では頬張れない欲張りサイズだ。
ファストフードなお手軽感覚ですが、満足度は満点です。
肉汁たっぷりの具材で、下半身は︱︱もう満腹です。
﹁口でする? 男の人は、こういう事する女の子が好みでしょ﹂
﹁ハイ! 是非お願いしたい!﹂
怜香先生の申し出に、一も二もなく返事する。
﹁ギロリ﹂
視線を移すと、全裸の少女の目線が痛い。血走った目で見ていた。
﹁ああー! そこそこ、そこがイイ﹂
声が漏れた。恥ずかしながら、ボクの声です。
﹁ふぁふぁぐゎ、ふぃふぃふぉ?﹂
怜香はペニスを咥えたまま、なんか喋ってる。
﹁ハイ?﹂
﹁ふぁふぁ?﹂
﹁ハイ、そこです! その場所を重点的に責めて下さい! あふぅ
!﹂
何故か会話が成立していた。
先生の口の中で、舌先がうごめいていた。うん、気持ちイイ。
尿道口に、怜香の舌先が挿入される。
先生の頭が激しく動く。
98
﹁で、でるぅ∼﹂
﹁ね、まだ時間はタップリあるわ。ねっとりと楽しみましょ﹂
怜香は体を起こして、ボクのペニスの根元を握り、射精を止めて
いた。
口の端を上げていて、ボクは戦慄をする。
99
﹁四日目﹂ その一
︱︱午前零時十九分。
分校、保健室。
ボクは目を開く。
さくま
れいか
ベッドの横では、全裸の朔麻 怜香先生がうつぶせで寝息を立て
ていた。
流石に疲れ果てたのだろう。十何度目かの絶頂の後、ボクの胸を
枕に眠ってしまっていた。
なぎさ
あまりの多さに、途中で数えるのを止めていたのだった。
しおや
﹁やっと寝た?﹂
隣のベッドの潮屋 渚ちゃんが声を掛けて来た。
﹁うん⋮⋮寝た⋮⋮﹂
ボクはゆっくりと胸の上の怜香先生の頭を移動させ、ベッドから
降りる。
手足のロープは解かれていた。
﹁オッパイは他人に揉まれると、もっともっと感じるんです。だか
ら、手を自由にさせて揉ませて下さい。それに、美人の怜香先生は
前付きだから、正常位が感じやすいんですよ。だから、足を自由に
ろう
させて前から挿入させてね。お、お願い﹂
甘言蜜語を弄して、ボクの手足は自由となった。
しかし、脱出のチャンスを淡々と待つ。淡々と待ちながら︱︱日
が暮れた。
100
延々とセックスをさせられた。正常位で結合したまま、何度も絶
頂に達する怜香。
気絶しても、だいしゅきホールドの体勢は変わらなかった。
うしお
首と腰とを決められて、ボクの体はピクリとも動かなかったのだ。
しおや
夕刻、意識を取り戻した先生は保健室の電話から、潮屋 汐さん
に連絡を入れる。
﹁今日は学校で渚ちゃんと純一君とで、UN○をやって盛り上がっ
てしまって、すっかり遅くなりました。今晩は二人共、学校に泊ま
ると言ってます。お二人は、教師である私が責任を持ってお預かり
します。え? 渚ちゃんですか? 今は、お風呂に入ってます。学
校のお風呂です。ええ、夕飯は豪華な食事を用意しました。ご心配
なく。ではでは︱︱﹂
﹁ガチャリ!﹂
勢いよく電話を切っていた。その時の渚ちゃんは、ベッドに四肢
を縛り付けられて口には猿ぐつわをはめられていた。
風呂にも入れられず、食事もなしだった。完全なる監禁ですよ。
虐待ですよ。
電話の時のボクはと言うと、保健室の床に仰向けにされ、先生の
お○んこで口を塞がれていた。
その後は、食事も無く、重労働を課せられていた。
ボクは、渚ちゃんを拘束していたロープを解く。彼女の手首と足
首には、赤い痣が残っていた。
﹁先生を、縛り上げて置いて﹂
裸の少女は、ボクに命令する。
︵がってん承知の助!︶
心の中で叫んで、全裸の怜香先生の肢体をベッドに固定する。
101
﹁カメラで撮影してあげないとね⋮⋮﹂
養護教員用の肘当て突きの椅子に、全裸のまま座り、足を組む渚
ちゃん。リベンジに燃え、不敵な笑いを顔に貼り付かせていた。復
讐心に燃えているのだな。
机の上の高級クッキーをポリポリと食べている。
﹁気持ちよさそうに眠ってる﹂
そう言ったボクは、渚ちゃんのトートバッグからピンク色のカラ
ーリングのコンパクトデジカメを取り出す。
ボクは股間なめのアングルで、全裸姿の先生を写真に撮る。構図
を変えて、何度も撮る撮る。パシャリ、パシャリ。
﹁ね、お兄ちゃん。先生を虐めるのは後にして、しよ⋮⋮しよ。ね、
しよ﹂
︵しよ?︶
渚ちゃんは椅子に座ったまま、両足を大きく開いて股間を見せつ
ける。プックリとした大陰唇を両手で﹁くぱぁ﹂と開いて見せつけ
る。完全に誘っていた。
小陰唇と膣口は、テラテラと濡れ光っている。これって⋮⋮。
﹁渚ちゃん。アナルに入れるの?﹂
大きく横に首を振る。
﹁ううん。コッチがイイの。気持ちよさそうな先生を見て、思った
の﹂
﹁ボクでいいの? ソコは、大好きな人のために残しているんでし
ょ﹂
﹁うん。いいの﹂
素直にうなずいた。
キャスター付きの椅子に乗った小さな女王様を、ベッドまで押し
102
て案内する。
﹁抱っこして⋮⋮。ね、抱っこ﹂
甘える姿は母親そっくりだった。
そうだ、その母親だった。
外泊したと言うことは汐さんにとっては、行為を拒まれたと感じ
るのかな?
後で、説明して謝っておこう。そんな事を考える。
椅子の少女を優しく抱きかかえ、白いシーツの上に寝かしつける。
コッチのベッドのシーツは、綺麗なままだった。怜香先生の眠る
ベッドは、色んな液体が染みてて、酷い状況だ。
渚ちゃんは電マで何度もイカされたが、欲求不満状態なんだろう。
それに、怜香先生とのセックスを見せつけられていた。
体の方は快楽だけは得たが、心の方は充足されていないのだ。
﹁お兄ちゃんが他の女の人とエッチするのを見てると、何かモヤモ
ヤするの。胸の奥がチクリと痛むの⋮⋮。その時、ヤキモチを妬い
てると気が付いた。それは、お兄ちゃんの事が⋮⋮﹂
渚の膨らみかけの胸の、左の乳首を口に含む。
﹁あ⋮⋮ん﹂
可愛い声が漏れる。
彼女の言葉を遮った。
﹁お母さんとセックスしている所を見ても、そう思ったの?﹂
ボクは口を離して、右手で小さな胸を揉み、左手で無垢な下腹部
を刺激する。
﹁これが、嫉妬なのかも⋮⋮初めての経験。だから、わたしはお兄
ちゃんの事が好きだと気が付いたの⋮⋮﹂
少女の告白。ボクはそれに答えなくちゃいけないと思った。
103
﹁ボクには渚ちゃんは、勿体なさ過ぎると感じたんだ﹂
遠慮がちの言葉。しかし、左手の指は彼女の秘所に侵入する。
﹁あん。指が⋮⋮﹂
﹁ボクが最初の人でも後悔しないね?﹂
﹁あん。オチンチンが当たる。欲しい、欲しい﹂
ペニスを彼女の太ももに押しつけた。
これは、同意の言葉だと受け取った。
﹁最初は、正常位がいいと思うよ。渚ちゃんみたいな幼い子にも負
担は少ない﹂
少女はボクの囁きに、大きく足を開いて迎え入れる。両手で足を
抱えていた。
ペニスの先を、プックリとしたツルツルの割れ目に差し入れる。
﹁う⋮⋮﹂
少しだけ表情が苦悶に歪む。
いいのかな? 怜香先生に続いて、二日連続で処女を食らってし
まう。頂いてしまう。でも、天からの恵みだ。神に感謝しておこう。
﹁だいじょぶ⋮⋮﹂
強がりを言う渚ちゃん。急に愛おしくなった。このまま強く抱き
しめると、壊れてしまいそうな儚い少女だと思う。
﹁来て⋮⋮お兄ちゃん。ううん、純一﹂
汗まみれの顔が、ボクを誘う。女の顔になっていた。
﹁行くよ﹂
その言葉に、無言でうなずいた。
彼女の両足を抱え、ゆっくりと腰を突き入れる。体と同じく、小
さくて狭かった。きつきつの膣がボクの凶暴になっているペニスを
受け入れる。
心が痛む。
104
腰は動かさず、そのままの姿勢で止める。
﹁イタ⋮⋮﹂
ボクの胸板を押し返そうと︱︱抵抗したが、一瞬で止んだ。その
後は、ボクの背中に手を廻す。強く抱きついて来た。
﹁渚、動くよ﹂
﹁うん﹂
﹁渚、愛してるよ﹂
﹁うん﹂
キスをする。彼女との始めてのキスだった。
﹁純一が、わたしの最初の人⋮⋮﹂
何だか嬉しそうに言った彼女と何度もキスをする。舌を絡ませる。
小さな口だった。ボクは舌で、彼女の口の中を舐め回す。
ゆっくりと腰を動かす。
﹁プハ、息できない⋮⋮﹂
小さな鼻を、塞いでしまっていた。
﹁ごめん。でも渚が可愛くて、可愛くって、何度もキスしたいと思
ったんだ﹂
﹁可愛い? 港姉ェより、わたしの方が可愛い?﹂
残酷な質問だ。でも⋮⋮。
﹁可愛いよ。渚。オマエが一番可愛い﹂
﹁プッ、アハハ。嘘は良くないよ。純一は嘘付く時、斜め右上を見
るね。お母さんと話す時、先生と話す時、ずっと観察していた。わ
たしとの事を隠そうとして、必死に言い訳する時、目が右上を見な
がら泳いでいた。アハハ﹂
言いながら、ボクの背中に爪を立てる。
﹁あむ⋮⋮あむ⋮⋮﹂
ボクの左肩を甘噛みしてきた。イタズラ好きで、好奇心旺盛な子
猫ちゃんだった。
﹁でも、絶頂に達するの渚の顔は、最高にエロくて可愛かったよ。
105
もう一度見たいな﹂
彼女の瞳を、真っ直ぐに見つめる。
﹁うん、純一。イカせて⋮⋮﹂
渚の方からも、ぎこちなく腰を動かし始めていた。
ボクはリクエストに応えることにした。
﹁あ、激しい。純一、激しいの! あ、あ、わたしの小さなソコが、
純一のオチンチンで満たされる。ピチピチになってる! 出して出
して、二人一緒に行くの! 行くの!﹂
﹁渚!﹂
﹁純一!﹂
名前を呼び合いながら、彼女の膣内に精液を放出する。ペニスが
脈動する度に、彼女の身体が万全の体勢を取って向かい入れる。
十二歳の少女でも、受精する気がマンマンだ⋮⋮恐ろしや。
﹁は⋮⋮﹂
彼女は、満足な顔をしていた。幸せを感じている顔だ。
﹁可愛いよ、渚﹂
右頬にキスをした。
﹁ありがとう﹂
感謝の意味で、ボクの頬にもキスを返してきた。
﹁純一、イイ事を教えてあげるね﹂
体を離そうとしたボクを引き止めて、低い声で、耳元で囁いてき
た。
﹁イイ事?﹂
﹁二ヶ月前ね、やっとわたしにも来たの⋮⋮﹂
﹁来た?﹂
﹁生理が⋮⋮。その時は島中にお赤飯を配ったの﹂
106
﹁え?﹂
﹁わたしも、純一の赤ちゃんを妊娠可能よ⋮⋮﹂
﹁えー!﹂
﹁成長が遅いから、生理が来てないとでも思っていたでしょ。わた
しも立派な女なの⋮⋮純一は、わたしをお嫁さんに選んでくれる?﹂
﹁え﹂
固まった。額から汗が流れる。
﹁でも、一回の射精では妊娠の可能性が低いから⋮⋮。純一、おっ
きして﹂
放出した後は、彼女の膣内で収縮してしまったボクのペニス。ソ
レを締め付ける彼女の肛門括約筋。
膣と肛門の筋肉は8の字状に繋がっていて、リンクしているのだ。
アナルを鍛え、活用している渚には造作もない事。
﹁な、渚ちゃん? ちょ、ちょっと落ち着こうか。ボクが小学生を
妊娠させたのが露見してしまったら、今度こそ強姦罪で捕まってし
まう﹂
引き抜こうとするが、拒まれる。
﹁その時は、わたしが裁判所で泣きながら、情状酌量を訴えるわ。
でも、それは聴き入られないの。純一は、執行猶予無しの有期懲役
刑を食らってしまう。そして、お兄ちゃんが出所するまで、わたし
は待つわ。待ち続けるわ。毎月、刑務所にも面会に行く! お萩を
差し入れに持ってくの。そこで、刑務官に聞かれるの﹃その人は家
族なのですか?﹄わたしは答えるわ﹃ええ、夫です。罪を償って真
っ当な人間に戻って欲しいの﹄そして、刑務所の出口﹃もう、二度
みなみ
とこんな所に来るな。ホラ、見てみろ。奥さんと子供が迎えに来て
るぞ﹄わたしは、娘の﹃美波﹄をおんぶ紐で背負って、待ってたの
﹃アンタぁ∼﹄﹃な、渚ぁ∼﹄二人は抱きしめ合うの﹂
延々と、彼女の妄想を聞かされた。
107
﹁﹃美波﹄ってダレだよ?﹂
体を引いて聞く。
﹁ダメ、離れちゃ﹂
引き止め、腰をクイクイと入れてくる渚ちゃん。セックスに関し
ても、飲み込みの早い子だった。頭の良さが伺える。ボクの弱点を
責めてくる。
﹁﹃美波﹄は、純一とあたしとの子供の名前。窓を見て﹂
外は真っ暗で、カーテンまで閉まっていた。
﹁耳を澄ませば、波の音が聞こえるわ﹂
少女に挿入したまま、聞き耳を立てる。
虫の声と、蛙の鳴く音。それと、隣のベッドで眠る怜香先生のか
すかな寝息が聞こえる。
﹁波の音は、ここまで聞こえないよ﹂
﹁いいの! わたしの頭の中に描いた、未来想像図なの。ふわあ⋮
⋮﹂
渚ちゃんは眠たそうな目をしていた。深夜の時間帯だ。昼間、睡
眠導入剤で眠らされたり、絶頂で気絶してたりしたが、やっぱり子
供は眠る時間だ。
﹁眠たいの? このまま挿入したまま眠ろうか?﹂
﹁凄い、そんな事って出来るの?﹂
﹁このままだとつらいでしょ⋮⋮。体の位置を変えようね﹂
小さな体を持ち上げる。二人して体を横にする。でも体の一部は
繋がったままだ。
﹁ウフフ、幸せ。眠るね﹂
ベッドの掛け布団を、二人に被せる。
108
﹁四日目﹂ その二
︱︱午前六時四十三分。
分校、保健室。
﹁ホラ、先生。朝よ、起きなさい!﹂
﹁ああーん、ラメ、ラメ、オシッコ漏れちゃう! う!﹂
ボクは怜香先生の奇声に、目を覚ます。
隣のベッドを見た。夜は完全に明けていた。カーテンが開かれ、
朝日が差し込んでいた。
服を着込んだ渚ちゃんが、右手に電気マッサージ機を持って、怜
香先生の股間を攻撃していた。
﹁仕返しよ。ここが感じるのか? ここが感じるんだな。おい、言
って見ろ!﹂
容赦なく股間に押しつけていた。下手すると、先生の膣内に挿入
するかの勢いだ。
あ、ボクの下半身が反応する。全く、コイツは疲れ知らずだった。
しびん
﹁ラメ、許して⋮⋮。ホント漏れちゃうの、漏れちゃうの!﹂
﹁じゃあ、尿瓶にでも出す? お兄ちゃん、ソコの棚の上にあった
でしょ﹂
﹁ああ、うん﹂
全裸のボクは、勃起を悟られない様に、掛け布団を腰に巻いてベ
ッドから降りた。
﹁純一お兄ちゃん。勃起してるでしょ。腰が引けてるわ﹂
﹁ご、ご指摘の通りです。面目ない﹂
そう言って、そそくさと薬棚の上から尿瓶を取り、渚ちゃんに差
109
し出す。
﹁さ、しなさい先生。見ててあげるわ﹂
尿瓶を股間に押し当てていた。
﹁渚ちゃん。電マで先生のオッパイを、乳首を刺激するんだよ!﹂
﹁じゅ、純一君! た、助けて下さい!﹂
懇願する目で見つめてくる。全裸で、ベッドで結わえ付けられて
いる怜香先生の図。何とも興奮する。昨日の雪辱戦だ。
﹁ダメですよ。昨日はボクたちを散々にいたぶったでしょ。その報
いです。先生の放尿シーンを目の前で見たいな﹂
﹁そ、そんなあ∼。ああ、あああん﹂
渚ちゃんに乳首を攻撃されて、声を漏らしていた。その時、ちょ
びっと液体の音を聞いた。
﹁渚ちゃんストップ! 静かにして!﹂
﹁うん。わかったわ、純一お兄ちゃん﹂
少女は電マのスイッチを切る。
﹁や、ヤメテー!! き、聞かないでー!!﹂
先生の叫ぶ声。
﹁渚、先生の口を塞ぐんだ﹂
﹁塞ぐんなら、オチンチンの方が先生も喜ぶよ﹂
﹁そうだな。それもそうだな。目の前で、楽しめるし﹂
渚の提案で、ボクは勃起したペニスを抱えてベッドに向かう。
﹁怜香、お口あーんするんだ。そして咥えろ﹂
横たわる彼女にまたがり、顔の前にペニスを突き出す。
﹁あーん﹂
舌まで付き出して、迎える怜香先生。エサをねだるメス犬の顔だ
った。放尿を見られるという行為に興奮を覚えているのかな。
110
男が上の、シックスナインの体勢だった。ボクの目の前では、先
生の股間に尿瓶が押し当てられている。前付きの先生の外尿道口も
丸見えだった。
﹁シーコイコイ。先生、オシッコ我慢すると、膀胱炎になりますよ﹂
尿瓶を持つ渚ちゃんは、容赦せず先生の下腹部をゲンコツで押し
ていた。小さな渚の手⋮⋮。
︵彼女のゲンコツなら、先生の胎内に入るな⋮⋮︶
そんなことを考えていた。
﹁チョ、チョロ⋮⋮﹂
ガラス瓶の中に液体の垂れる音。
﹁出た?﹂
﹁出た﹂
渚ちゃんに聞かれて、答えるボク。
﹁ヤメテ、お願いだから見ないで⋮⋮。聞かないで⋮⋮。あっ!﹂
先生が声を漏らすと、尿も漏れる。
ボクのペニスを口から外していた。
﹁チョロロ、ジョロー。ジョジョジョ⋮⋮⋮⋮﹂
遂に堤防は決壊する。螺旋状に放出された水流が、小さな穴から
奔流となって、瓶の中に注がれる。少し、黄色い液体。見る見ると
満たされていく。
﹁ヤメテー。もう、居たたまれない﹂
彼女にとっては、性交場面を見られるよりも屈辱的なのだ。
﹁これ、どうしよう? そこの冷蔵庫の中にしまっておく?﹂
タプタプと液体で満たされたガラス容器を揺らす。
養護教員の机の横に置いてある小さな二つドアの冷蔵庫。渚ちゃ
111
んは開けて中をのぞく。
﹁ヤメテ、ホントにヤメテ! 渚ちゃん﹂
涙を流して懇願する。
﹁冷蔵庫には、何も入ってないジャン!﹂
腰を落とし、中身を検分する。医療用の薬品などが保管されてい
る。ポケットにはお茶のペットボトルが置いてある。
﹁コイツと中身を入れ替えとく?﹂
ボクに向け、ペットボトルを取りだして、振っていた。
﹁渚ちゃん。トイレに流しておくんだ﹂
言い聞かす。
﹁お兄ちゃんが飲む?﹂
尿瓶をボクに付きだした。
﹁え?﹂
先生は笑顔でボクの顔を見る。
﹁飲尿の趣味は無いよ!﹂
抗議する。
﹁あ、アイス有るジャン! ハーゲン○ッツのラムレーズン! 食
べよ食べよ!﹂
冷凍庫をのぞいていた渚ちゃんは、扉を閉じてトイレに向かう。
﹁先生。縄を解きます。その前に⋮⋮﹂
﹁その前に?﹂
期待した先生は、首を上げてボクのペニスの行方を見守る。
﹁服を着ます﹂
ベッドから降りて、脱ぎ散らかされた服を着込む。
︱︱午前七時二十四分。
112
分校、玄関。
﹁先生、アイス美味しかったでしゅ⋮⋮﹂
顔を赤く上気させた渚ちゃんは呂律が回っていなかった。
﹁渚ちゃん。酔ってるの? ラムレーズンには、お酒が入ってるん
だよ﹂
﹁ほぇ︱︱﹂
少しぼーっとなる少女。
﹁︱︱ねー、おんぶしてよ、お兄ちゃん﹂
ねだり、ボクの背中に乗る。仕方無い。彼女の持ってきたバッグ
を持って、旅館へと帰るのだ。
﹁渚ちゃん、大丈夫?﹂
怜香先生が、ボクの元に駆け寄る。彼女の靴が脱げそうだったの
で、履かせ直していた。
先生も、教師らしい服装に戻っている。
﹁あ、先生は優しいですね﹂
正直に言った。先生は顔を赤くする。
﹁あの⋮⋮。純一君にお願いがあるの。今日のお昼ご飯、学校で食
べませんか? 私の手作りをごちそうします﹂
そう言って頭を下げる怜香先生。
﹁え、ええ。イイですよ﹂
立ち去ろうとすると⋮⋮。
﹁ま、待って純一君。突然の申し出で戸惑うと思うけど、私とお付
き合いして下さい!﹂
﹁お付き合い?﹂
話が見えない。手を差し出して、頭を下げている先生。
﹁純一君が、この﹃如伴島﹄に滞在する期間は、私と彼氏・彼女の
関係になって欲しいんです﹂
113
こと
﹁それって、脅迫ですか? 渚ちゃんとの行為をバラされたくなか
ったら、自分と関係を結べと⋮⋮﹂
冷たい目で先生を見る。軽蔑の視線だ。
﹁正直に告白すると、目的は純一君の肉体です。でも、私は過去一
度も男の人とお付き合いしたことが無いんです。全てに関して遅い
かも知れませんが、純一君には私のボーイフレンドから始めて欲し
いんです﹂
立ち去ろうとするボクの手を取り、懇願する怜香先生。保健室の
床に、水滴が落ちる。
﹁わ、分かりましたよ⋮⋮。今日の十二時に学校にお邪魔します﹂
女の人に、涙ながらに頼まれたら、断れ無いよね。
﹁ま、待ってるよ。純一﹂
手を振って、ボクを見送る先生。
ま、先生のオッパイを自由に出来るなら、儲けものと考えよう。
﹁お兄ちゃん! 浮気したら、オチンチン切り取るよ⋮⋮ムニャム
ニャ⋮⋮﹂
﹁え!?﹂
寝言だったらしい。
ボクは股間を押さえる。
︱︱午前七時四十八分。
潮屋旅館、玄関。
﹁あら、渚はどうしたの?﹂
帰り着き、ボクに背負われている娘を見て、驚いていた。
114
﹁いや、朝にアイスを食べちゃったんですが、その中にちょっぴり
ラム酒が入っていたらしく⋮⋮﹂
ボクは言葉尻を濁す。
﹁この子は、お酒を全く受け付けない体質なのよ。奈良漬けの匂い
だけで酔っちゃうし、リキュールの塗られたパウンドケーキを大量
に食べて、昏倒しちゃった事もあるのよ。父親に似たのかしら⋮⋮。
それよりも、おんぶしてくれて、ご苦労様﹂
汐さんは、背中から娘を降ろそうとする。
﹁大丈夫です。ボクが渚ちゃんをベッドまで運びます﹂
だが︱︱二階への階段に苦労する。小さな女の子とは言え大変な
負担になる。フラフラと揺れ、危なっかしいボクを心配して、汐さ
んは後ろから娘のお尻を支えていた。
﹁純一君、昨日の夜は大変だったでしょ﹂
﹁え、えええ、えええ﹂
なに? 何か知ってるの? ええ!?
﹁学校に泊まるなんて初めてだから、渚がはしゃいで、先生と君に
迷惑を掛けてしまったんじゃないのかなって⋮⋮﹂
﹁ええ、ええ。まあ⋮⋮﹂
まあ、昨晩とこの朝は色々とありすぎて大変だったのは確かです。
それに、娘さんの処女を頂いてしまいました。
﹁ホラ、渚。お部屋に付いたわよ。その服のまま寝るの?﹂
﹁う∼ん﹂
目をこすっている。
﹁あれー、お兄ちゃん。渚を襲いに来たのぉ∼? わたしの体が忘
れられないのぅ∼﹂
寝ぼけてる、寝ぼけてるが、何かヤバそうな事をサラリと言いそ
うだ。
115
﹁汐さん! 朝食は残ってますよね。朝は食べてないので、お腹が
空いて、空いて⋮⋮﹂
ことさら大きな声を出して、階段まで向かう。
﹁ええ、残ってるわよ。あ、そうそう。ご飯食べ終わったら、岬に
付き合ってくれないかな﹂
﹁え? 付き合う?﹂
怜香先生の言葉を思い出す。
﹁何か、大物を狙ってるそうなのよ。少し、沖合で潜るから、見守
って欲しいの。あたしは準備があるし、港は泳げないし、渚はあん
なだし⋮⋮﹂
食卓に到着する。岬ちゃんと、港ちゃんが食事をしながら揃って
テレビを見ていた。天気専門のチャンネルだ。アニメは渚ちゃんの
趣味なのだな。
﹁ボクも泳ぎには自信は無いですよ﹂
テーブル前に正座すると、港ちゃんはそそくさと居なくなってし
まう。うーん。ソレにはボクも傷ついてしまうんだ。
﹁岬、純一君に付き合って貰いなさい﹂
﹁一人で大丈夫だよ!﹂
﹁ダメ、お母さんは知ってるわよ。岬は時々無茶をするから、見張
ってる人が必要なの。見守る人が必要なの﹂
﹁わ、分かった﹂
母の意見に、あっさりと引き下がる。この辺は素直な子なんだな。
︱︱午前八時三十九分。
如伴島、北側山道。
116
﹁ハァハァ⋮⋮。み、岬ちゃん休憩しようよ﹂
ボクは先を歩く彼女に声を掛ける。今日の岬ちゃんは、いつもの
紺色のスク水ではなくて、ウエットスーツを着込んでいた。シュノ
ーケルと足ひれを肩に担いだ袋に入れている。本格的な潜水に挑戦
するんだと分かる。
﹁早く行くよ! こんな山道ぐらいで、ヘタってるんじゃないよ﹂
しかし、大木の根元に腰掛けるボクの事を待っていてくれる。
﹁ゴメン。バテた⋮⋮水飲ませて⋮⋮﹂
ボクは小さめのリュックを背負い、水道水をペットボトルに詰め
て持ってきていた。
﹁ウメェ! ため池の水、ウメェ!﹂
グビグビと喉を鳴らしての飲む。
﹁あ⋮⋮﹂
岬ちゃんは、羨ましそうにしてた。
﹁岬ちゃんも飲む?﹂
差し出すが、無視される。
﹁ホラ、行くよ!﹂
﹁あ、アイタタタ﹂
立ち上がろうとしたボクは、脇腹を押さえる。アレ、何か悪いモ
ノ食べたかな? それとも水あたり?
﹁朝ご飯を、バクバク食べすぎなのよ。少しは自重しなさい!﹂
注意される。確かに、今朝は食い過ぎた。昨日は夕食をとってな
かったからね。何故ならば、拉致されていたから⋮⋮。
朝食はカレーライスだった。昨日の夜のメニューが朝に回ってき
た。ポテトサラダと、デザートのスイカを腹一杯になるまで食べて
しまった。
﹁ちょっと、岬ちゃん。おトイレに⋮⋮﹂
117
﹁山の中に、トイレなんかあるわけないでしょ。その辺でしたら?﹂
﹁え⋮⋮。大きい方なんだけど⋮⋮﹂
恥ずかしい。
﹁え!?﹂
彼女は、大きな声で驚いていた。
﹁ティッシュある?﹂
ボクの問いに、岬ちゃんはブンブンと首を横に振る。嗚呼、終わ
った。
手で⋮⋮いや、葉っぱで拭こうか。山道から百メートルも下れば、
海に出る。
海でするか? コッチの方が人として終わってるかな。
﹁見ててあげるから、早くして!﹂
少し苛立ちながら、岬ちゃんは言う。
﹁み、見るの!? それは、困る! え、岬ちゃんそんな趣味があ
るの? えー!?﹂
お尻を押さえる。
﹁そんなわけ、ないでしょ! 荷物を見てあげると言っただけ!﹂
プリプリと怒り出す。
﹁仕方無い。下は水着だから、綺麗に拭かなくてもいいか⋮⋮﹂
そんな事を喋りながら、雑草をかき分けて木々が乱立する山中に
入る。
﹁あ、ヤマカガシが出るから気を付けてね。ソイツは強力な毒を持
ったヘビなの。頭が三角形だからバカでも見分けられるわ。血清は、
学校の保健室に保管してあるけど、不器用な怜香先生じゃ、扱うの
が無理かも。緊急時は、学校のグラウンドにドクターヘリが来るか
ら安心してね﹂
118
﹁えー!?﹂
ボクの叫びが、山中にこだまする。
︱︱午前九時二分。
如伴島、北側海岸。
﹁アソコに、赤いブイが見えるでしょ。今回はそこに潜るの﹂
島の北の突端、﹃テーブル岩﹄の上から渚ちゃんは指差している。
﹃テーブル岩﹄とは、岬ちゃんを最初に目撃した場所。全裸の彼女
が甲羅干しをしていた大きな岩。勝手にボクが命名したけど、﹃人
魚岩﹄の方が良かったかな。
三畳ほどの広さの、淡い灰色の岩に二人が乗る。
﹁意外と近いんだね。安心したよ﹂
﹁でしょ。お母さんは心配性なんだよ﹂
屈伸運動を続けていた岬ちゃんは、ドボンと海に浸かる。シュノ
ーケルと足ひれを海中で装着する。
﹁ボクは、見張ってればいいんだね!﹂
大声で叫ぶ。
﹁そう! 二分しても上がってこなかったら、慌ててね。電話も通
じないから、誰も呼べない! 走れば十五分で学校に着くから、そ
こに公衆電話があるから連絡してね﹂
﹁え! 岬ちゃんはどうするの? そんな! ボクも多少は泳げる
から、助けに行くよ﹂
﹁無理よ! あそこの場所から急激に深くなってる。潮の流れも速
いから、都会の人には危険すぎる。死ぬのは一人で十分。アタシは、
そんな覚悟は出来てるの!﹂
そう言って首から下げていた水中眼鏡を付け、ゆっくりとしたク
119
ロールで、ブイのある位置まで泳いでいく。
﹁ああ、岬ちゃん︱︱﹂
ボクはオロオロすることしか出来なかった。
彼女は、水面から大きく上半身を出して、息を吸う
﹁︱︱潜った!﹂
腕時計を見る。普段はスマホで済ませているが、今日は汐さんに
言われて装着してきた。
太陽光で充電も出来るダイバーウォッチだ。そのストップウォッ
チ機能を使う。
﹁三十秒⋮⋮﹂
秒針の動きを目で追う。海面を見つめる。かわるがわる注視する。
無限に続くかと思われる時間。
︵あれ? 一秒ってこんなにも長かったっけ?︶
﹁一分三十秒⋮⋮そろそろ上がってこないと、岬ちゃん!﹂
赤いブイの海面を見つめる。波も少なく、穏やかだった。
水面上に波しぶきが上がる。
﹁よかった! 岬ちゃん! おーい!﹂
嬉しくなり、手を振った。
彼女も手を振り返す。赤いブイの横には木製のおけが浮かべてあ
る。その中に、海底から収穫した獲物を入れるのだ。
﹁あ!﹂
直ぐさま潜ってしまう。慌てて、時計のボタンを押す。
︱︱午前九時五十八分。
120
﹁ふぁ∼あ﹂
単調な作業が何度も続く。ボクは岩の上に腰掛けて、膝を抱いて
見つめていた。時計も通常の状態のまま、時々のぞくくらいだ。
﹁そろそろ、休憩にすればいいのに﹂
ボクは、ペットボトルの水を一口含む。
﹁アレ⋮⋮?﹂
時計から目を離していたのは一分くらいだった。それから、秒針
が一回転していた。二分以上は経過した。
﹁え、マズイよね﹂
ボクは、白いTシャツを脱ぎ、海パン姿になる。
心臓を叩いて、頭から海に飛び込んだ。
︵悪い予感しかしない。悪い予感しかしない!︶
全速力のクロールで向かう。泳ぎは得意では無いが、無我夢中だ
った。
ブイに掴まり、水中を見る。海底からのロープが延びてブイに繋
がる。水深は20メートル以上ありそうだ。暗い世界。
急に恐くなる。
岬ちゃんの着る、スーツの蛍光ピンクは見当たらない。
﹁ええい!﹂
意を決し、大きく胸に空気を貯める。肺活量も少ない華奢な体だ
が、汐さんに娘さんを託されたのだ。
潜る。ロープを伝う。
深く深く、潜る。
無音。
121
正確には、耳の中に水が入って何も聞こえないでいた。
︵アレ? 下ってどっちの方向だっけ?︶
手と足を夢中で動かすが、一向に進んで行かない。
方向感覚を完全に失っていた。
︵苦し⋮⋮引き返そう︶
明るい方向、海面を見上げる。
そう考えた時、ボクは意識を失っていた。
122
﹁四日目﹂ その三
︱︱午前十時八分。
﹁バシッ!﹂
右頬に痛みを感じ、目を覚ます。
固くて熱い物体に寝かされていた。ゴツゴツした岩だった。テー
ブル岩の上だと理解する。
﹁バシッ! バシッ!﹂
両頬に痛みを感じた。
﹁あ⋮⋮れ⋮⋮岬ちゃん⋮⋮﹂
﹁バカッ! 心配したんだから!﹂
涙を流している、岬ちゃんの姿。
籠もって聞こえる彼女の声。
﹁どうしたの? 岬ちゃん﹂
﹁どうしたの︱︱じゃないよ! 純一が溺れたから、驚いたじゃな
い! 何で、アンタが潜るのよ!﹂
﹁あ、れ?﹂
考えがまとまらない。熱い岩に耳を当てると、耳の中に入ってい
た水が流れ出る。何か気持ちよかった。反対の耳もそうする。
途端、音がクリアに聞こえて来た。
﹁バカ、バカ、バカ!﹂
女の子が泣きながら、横たわるボクの胸をポカスカ叩いてくる。
123
泣いてる岬ちゃんから、事情を聞く。要領を得ない話っぷりだっ
たが、幼女を諭すようにゆっくりと優しく聞く。
話を要約すると︱︱岬ちゃんはあの時は、獲物も無かったので、
休憩するため潜ったままテーブル岩まで引き返していた。
途中、息継ぎをするために浮上したら、ボクが海に飛び込んでい
た場面を目撃した。
大声で名前を呼んだが、おかしなフォームで泳ぐボクには聞こえ
なかったのだ。
急ぎ追いかけて、沈みゆくボクを引き上げたのだった。
数秒遅れていたら、ボクは海底に引き込まれていたのだったそう
だ。
ゾッとする。
﹁この辺りは危ないんだぞ! 過去に、死んだ人もいるんだぞ!﹂
再び泣きながらの岬ちゃんに、酷く怒られたよ。
︱︱午前十時三十六分。
﹁帰ろう!﹂
岬ちゃんが言う。背中に足ひれとシュノーケル。そして、獲った
獲物を袋に入れて肩に担いでいる。
﹁重そうだね、持とうか?﹂
﹁いいよ! 溺れた人間に重労働はさせられない。あ、じゃあ、足
ひれだけ持って﹂
﹁わかった﹂
ボクはフィンを片方ずつ両肩に乗せて、無言で元来た道を引き返
す。
124
︱︱午前十時五十分。
﹁休もう﹂
﹁うん。ありがと﹂
彼女の気遣いに感謝する。島の山の東側を通る道。中間地点で休
憩する。行きにウ○チした近くだ。
﹁飲む? 水道水﹂
﹁うん。ありがとね﹂
ペットボトルを岬ちゃんに差し出すと、素直に受け取ってくれた。
彼女はウエットスーツの上半身を脱いで汗を拭う。もちろん、下
には水着を着用してるけどね。今日はピンク色の可愛いビキニだ。
喉を鳴らして、水を飲んでいた。
﹁プハッ、美味しい。島の水は美味しいよね﹂
﹁そうなんだ﹂
﹁ため池と言っても、山からわき出た雨水を貯めてある池だから、
綺麗だよ﹂
﹁へーそうなんだ﹂
積極的に語る岬ちゃんの顔を見る。日焼けした健康的な笑顔。し
たたる水と汗が爽やかさを感じさせる。
﹁ホィ﹂
ペットボトルを返されたので、ボクも飲む。
﹁これは、間接キスね。でも、さっき人工呼吸したから大丈夫だよ
ね﹂
﹁ブッ!﹂
ボクは、水を吹く。
125
﹁今、何て!?﹂
﹁間接キス⋮⋮﹂
﹁そのあと﹂
﹁人工呼吸した。陸に引き上げたときは、息をしてなかったから。
お母さんに教わったんだ。お母さんはダイビングのインストラクタ
ーの資格を持ってるからね﹂
﹁え? ボクと口づけを?﹂
﹁仕方無いよ、緊急事態だから。気にしなくてイイヨ。アタシのフ
ァーストキスだけど、ノーカウント!﹂
さりげなく重要な事を言った。
﹁ご、ゴメン。ホントにゴメン﹂
﹁いいよ﹂
ボクは、緊張し水を口に含む。
﹁あ、ついでに聞くけどさ、渚と何かあった?﹂
﹁ブゥーーー!!﹂
ボクは盛大に水を吹き出してしまった。あ、ありました。肉体関
係を結んでしまったのです。
﹁え!? ゲホゲホ﹂
更に気管に入り、むせてしまった。
﹁な、な、な、何でそう思ったの?﹂
﹁渚はさ、初対面の人には人当たりはいいけど、一番慎重で用心深
いんだ。中々、自分の本心をさらけ出さない。猫を被るのが上手い
んだな、アイツ。怜香先生とは二年経つけど、多分、心を許してな
いんじゃないかな﹂
ハイ! お姉さんのご指摘通りです。
126
﹁ボクに対しては?﹂
﹁そう、二日目には仲良くなってたから驚いた。だから、アンタを
信用したし、命も助けた﹂
﹁そ、そうなんだ。もしも渚ちゃんと仲良く無かったら、ボクは死
んでた?﹂
恐ろしいことを尋ねる。
﹁そう⋮⋮かもしれない。助ける時は命がけだったし、人工呼吸も
しなかったかも知れない。アンタ⋮⋮いい奴だよな。お母さんも信
用してた﹂
岬ちゃんとの距離がずっと近づいたと感じた。
︱︱午前十一時五十五分。
分校、玄関。
﹁れ、怜香先生!?﹂
玄関のドア開け、中に向けて叫ぶ。少し声が震えてた。
﹁純一君! よ、ようこそ!﹂
スリッパを出されて、二階へと向かう階段を登る。ここからは、
怜香さんのプライベート空間だった。
一段ずつ登る度に、いい匂いが漂ってきた。料理? 洋風系のド
ミグラスソースの、甘くて香ばしい匂いだった。
そして、いい眺めだった。白いシャツに茶色いタイトスカートの
後ろ姿をガン見する。
洋梨形の安産タイプの腰とお尻、そしてベージュのストッキング
の足。
階段を登る度に、お尻がポヨンポヨンとうごめく。
127
思わず、後ろから襲いたい衝動になる。
﹁ね、純一君。今日は来てくれてありがとう。色々ありすぎたから、
怒っているかと思った﹂
﹁先生はボクを脅迫してるんですよね。渚ちゃんとのことをバラさ
れたくなかったら、自分と肉体関係を持てと⋮⋮﹂
﹁ううん、ち、違うの。誤解しないでね、あれは口実。ビデオの映
像は削除するわ。ぶ、ぶっちゃけるとね、私と恋人ごっこをして欲
しいのが本心。男性とお付き合いをしたことが無いと、朝に話した
でしょ。この島に馴染む前に、社会復帰を考えてるの⋮⋮普通の女
の子に戻りたい﹂
先生が部屋に前に立ち、ドアを開いて招き入れる。
︵普通の女の子に戻りたいだって?︶
そこが、理解出来ない。
ごくごく普通の部屋だった。キッチンとダイニングが一体になっ
た空間。その隣が、怜香先生の寝室なのだろう。
階段から続く廊下の奥にあるのは、トイレとバスルームだ。
﹁えっと、座って⋮⋮﹂
ダイニングルームにある食卓セット、椅子を引いてボクを案内す
る。
﹁あ、ハァ⋮⋮﹂
こうやって、女性の一人暮らしている家に訪問するのは始めてか
も知れない。
﹁ハッシュドビーフは、お好き?﹂
キッチンに向かい、薄いピンク色のエプロンを羽織る怜香先生。
茶色い髪の毛をアップにし、うなじと後れ毛が見える。
128
何か、若奥様に見えます。何か、イイ! キュンとなった。
﹁ハヤシライスですよね。ええ、大好きです﹂
﹁よかった!﹂
こちらを向いて笑顔になる。
﹁ホントは、ビーフシチューを考えたけど、時間もなかったし、冷
凍庫の牛肉と⋮⋮ソースは出来合のレトルト食品ね。玉ねぎとかト
マトは、島のみなさんにお分けして貰ったの。お米も、この﹃如伴
島﹄で採れたのを譲って頂いたの。そうよね、そうなのよね⋮⋮。
島の人には色々と良くして貰ってる。それを、今更ながら実感した
の。感謝しなければならないのは、私の方だった﹂
先生は、口角を上げて微笑んだ。こんな笑顔をされると、昨日の
出来事は、全て許してしまいそうになる。
﹁召し上がれ﹂
テーブルの上に、料理が盛りつけられたお皿が二つ並ぶ。スプー
ンを二つ置く先生。
﹁あ、頂きます﹂
手を合わせ、先生に言う。
﹁どうぞ﹂
エプロンを脱いで、椅子の背もたれに掛ける。何か勿体ないな、
この姿。
﹁先生も、どうぞ﹂
ボクはポット型浄水器からの水を、ガラスのコップに注いで先生
に渡す。
﹁あ、はい。純一君、ありがとう﹂
﹁あ、美味しいです﹂
129
料理を褒めるボクの言葉に、頬を赤らめ無言で食す先生。こっち
も話題が続かなくて、黙々と食べていた。
実際、美味しかったし、褒める以外の言葉が見つからなかったの
もある。それに、先生に対して根掘り葉掘り聞くのは失礼だと思っ
たのだ。
聞ける? 何で彼氏が出来なかったの? 性格に問題あるんじゃ
ネ?
聞けないよね。
﹁食後にコーヒー飲みますか? あ、安心して⋮⋮今日は変な薬は
入ってないから﹂
顔の前で、両手をブンブンと振り、疑惑を払拭するのに必死な怜
香先生だった。
ま、用心はしておいた。
︱︱午後零時四十五分。
分校、二階。
﹁あ、洗い物してくるからね。待ってて﹂
重ねたお皿を持ち、キッチンに向かう怜香先生。
﹁あの、お願いがあるんですが、イイですか?﹂
﹁え? 何?﹂
ボクはテーブルに、頭を突く。両手を前に出す。
﹁怜香先生の裸エプロンが見たいです! お願いです!﹂
ゴンゴンとテーブルに額を叩き付ける。
﹁え?﹂
﹁嫌ですか? 拒絶しますか?﹂
130
顔を上げて聞く。
﹁大学時代の女友達に、彼氏居たり、結婚している子も居るけど、
そんな事してるって聞いたこと無いよ﹂
怪しんだジト目を、ボクに向ける。
﹁そんな事、ネンネの先生に話すワケ無いでしょうが。ディープな
プレイなんですよ。みんなやってますって! や、裸エプロンは、
男の夢! 男のロマンだ!﹂
力説する。何処かで聞いたセリフだったな。
﹁あはは、待っててね。今、着替えて来るわ⋮⋮﹂
﹁や! ここで着替えて!﹂
血走った目を先生に向ける。少し腰が引けていた怜香さん。
手をアゴに当て、少し考える。
﹁分かったわ。これは、純一君のリクエストね。じゃあ、後で私の
リクエストにも応えてよ、約束ね﹂
先生はシャツのボタンを一個ずつ外す。
﹁了解、了解です!﹂
ムッハーと鼻息を荒くして、かぶり付きで怜香先生のストリップ
を楽しむ。
﹁そんなに、ジロジロと見ないで⋮⋮﹂
﹁見ますって! 先生は魅力的なんです。それに、もっと焦らすん
です。飢えたオス犬に、簡単にエサをあげちゃダメダメ! 生き物
を簡単に飼っちゃダメなんです!﹂
﹁じゃ、お預け!﹂
胸を抱えて、笑いながら背中を向けた。
﹁今日は地味目なベージュのブラですね。普段の下着でしょうから、
逆に興奮するんです!﹂
131
椅子を引いて立ち上がる。だが、踊り子さんには、お手を触れて
はいけないのだ。
﹁御免なさい。他の下着は、全部洗濯しちゃったの。でも、直ぐに
脱ぐから、重要じゃないと思ったの﹂
︵直ぐに脱ぐだと!!︶
スカートが床に落ちる。
興奮する。頭に血が上った。股間にも血液が集中する。
132
﹁四日目﹂ その四
ベージュのパンストの下は、白の無地のパンティだった。
﹁パンストを破って脱がすのは有りですか?﹂
﹁無いです。高いんですよ、ストッキング。伝染しただけで、ムキ
ー! ってなるのに破られたりしたら、頬を張り倒します﹂
ゆっくりとパンストを脱いでいく。椅子に片足を乗っけて、足か
ら外す。足を入れ替えて同じ作業を繰り返す。女の人って大変だな。
そんなことを思う。
﹁先生の背中からのライン。最高です! 芸術作品です﹂
バロック様式の裸婦画。肉感的でふくよかな姿は⋮⋮日々の糧。
大地の恵みの豊穣を感謝したくなる。
ブラのホックの部分に乗る贅肉も、愛おしく思えてくる。パンツ
に手を掛けて、ゴムの跡がバッチリと残っているのも、眼福です。
肉付きのいい太もも。パツンパツンで弾けそうだった。
︵ああ、挟まれたい!︶
﹁挟まれたい?﹂
先生に聞かれる。
あれ、思った事を声に出してしまっていたのか。いいや、正直に
欲望をぶつけよう。
﹁ふ、太ももでギュッと⋮⋮﹂
﹁ギュッと、どこをするの?﹂
ブラが外される。背中越しにも、はみ出た横乳が確認出来る。凄
い! 凄いよ!
133
﹁出来れば、ボクの頭を挟んで貰って、間近で先生のお○んこを見
たいんです!﹂
﹁これも、リクエストと考えていいのね。そうしたら、私にも考え
があるの⋮⋮﹂
椅子の背に掛けられていたエプロンを持ち、素肌の上に着る。
可愛いお尻がのぞいていた。後ろから突き上げたい衝動に駆られ
る。
﹁じゃ、お皿洗うから﹂
キッチンに向かう先生に、くっついて行くボクだった。
﹁怜香⋮⋮﹂
既に全裸になったボクは、先生のお尻にペニスを押しつける。
﹁純一、ダメでしょ。お皿が割れちゃうわ﹂
そう言って、ボクのお尻攻撃を無視して、皿やコップやカップを
洗っていく。
﹁なあ、ここでいいだろ怜香﹂
洗い終わり、食器乾燥機に並ぶのを見て、彼女の大きな胸を揉ん
でいく。
エプロンの下に手を入れて、指の間から溢れる柔らかさを堪能す
る。
﹁続きは、ベッドでね。そして、怜香のお願いを聞いてくれる? 怜香はね、アナルを試してみたいと思っているの。渚ちゃんとエッ
チしてる場面をビデオで見て、羨ましいと思ったわ。ね、浣腸もし
てるし、中も綺麗に洗って準備万端よ﹂
後ろに振り返り、笑って寝室を指差した。
︱︱午後七時二十八分。
潮屋旅館、食卓。
134
﹁ごちそうさま⋮⋮﹂
弱々しく言って、ボクは食器を炊事場の汐さんの所へ持っていく。
もう、全員が食事を終えていた。
彼女の白レギンスの大きなお尻が、リズミカルに揺れていた。洗
剤を染みこませたスポンジで食器を洗い、すすぎをして、腰を入れ
て水を切る。
一連の動作を後ろから見る。無駄の少ない動きだ。
﹁あ、純一君。食べ終わったの? 今日は元気ないね。夏バテなの
? 夕飯はソーメンだったから、スタミナ付けられなかったね。港
のリクエストなの、残念だったね﹂
後ろを向き、白い歯を見せて笑う。彼女のポニーテールが揺れる。
﹁いえ、かえってありがたいです。今は、食欲無くて﹂
﹁そう、じゃあ早く寝ることだね!﹂
大きな声を出す。
ボクはビクリとなる。本当は、今晩の汐さんとの行為を遠慮して
貰おうと思っていた。
先生の家のベッドの上で、散々に放出してしまっていた。アナル
セックスを要求されて、嬉々として挑んだら、怜香先生は、はまっ
ちゃったみたい。
あの太ももで、ボクの体を挟み込み、過度に過激に過剰に要求を
重ねてくる。
夕方まで、ボクを離してくれなかった。
フラフラのノックダウン状態だった。
﹁お、おやすみなさい﹂
﹁おやすみ﹂
135
結局、汐さんに断れなかった。
︱︱午後十一時五十六分。
旅館、客間。
﹁ね、起きて! 起きて!﹂
体を揺すられて目を覚ます。部屋は真っ暗だった。そうだ、天井
の蛍光灯を消した時、オレンジ色の豆電球が切れていた。
付け替えてもらおうとの連絡も面倒で、直ぐさま眠りに落ちてい
た。
﹁う、汐さん。今日は体調がすぐれないので、勘弁して下さい﹂
暗闇に、ぼんやりと浮かぶ人影に小声で言う。
﹁もう、純一お兄さんたら⋮⋮﹂
え? ダレ? 汐さんじゃないし、声も渚ちゃんでない。
﹁カチ、カチ﹂
蛍光灯の紐を二回引いて、部屋を明るくする。
﹁み⋮⋮﹂
絶句する。
ボクの部屋に立つのは、全裸の岬ちゃんだった!
136
﹁五日目﹂ その一
︱︱午前零時一分。
潮屋旅館、客間。
﹁み、岬ちゃん! どうして!? そして何故、全裸!?﹂
﹁は、恥ずかしいよ⋮⋮﹂
ボクの言葉を無視して、顔を赤くして寝床に入り込んでくる。
﹁ど、ど、ど、どうしたの? い、い、い、いったい、どうしちゃ
ったの?﹂
浴衣姿のボクの右腕に、胸を押しつけてくる。さすが汐さんの娘
だ。遠くで見たときには分からなかったが、思ったよりボリューム
がある。
あと、肌触りがとてもイイ。すべすべであり、ソレなのにねっと
りと吸い付いてくる。
魚類の豊富なコラーゲンで、お肌もピチピチツルツルなんだな。
﹁お母さんに、言われた﹂
﹁え? 汐さんに?﹂
﹁うん﹂
﹁こんな事を、するように?﹂
﹁うん。潮屋旅館の跡を継ぐ女は、男たちと肌を重ねて、島に子宝
を授ける﹂
﹁え、お母さんに聞かされたの? 島の秘密を?﹂
﹁純一お兄さんは、島の本当の姿を知らない。もっと深くて、もっ
と悲しいんだ﹂
しっかりとした口調で、ボクの目を見据えていた。
137
怜香先生は、岬ちゃんをバカ娘呼ばわりしていたが、彼女なりに
しっかりとした考えを持っているのだ。
ボクは決心した。岬ちゃんと話をしよう。話をして、彼女とのセ
ックスを回避するのだ!
もっとも、もう︱︱絞っても、一滴も出てきません︱︱な状況で
す。
﹁お話をしようか。男女の関係には、こういうのも大切なんだよ﹂
実際、怜香先生との行為中、休憩時間は二人で話をした。
体の敏感な部分を触れ合ったのだから、心の敏感な部分もさらけ
出し合うのだ。それが当然だと思うよ。
﹁うん分かった。聞きたいことある? アタシが 知っている範囲
なら、全部答える。お母さんは言ってた。純一お兄さんは、島に魅
了されて抜け出せなくなるって⋮⋮﹂
ごく自然に、ボクの右腕を枕にして体を密着してくる。
甘え上手な子なんだ。これまでは、ボクに対しては﹃ツン﹄の部
分を見せていたんだな︱︱と、実感。
﹁魅了? 確かに島の若い女性は魅力的だった﹂
島の若い娘は、潮屋旅館の四人と、怜香先生しか居ないけどね。
他の女性といっても、数軒ある島の民家には、お婆ちゃんしか居な
い。
﹁この島の最年少は渚だから、あと三年で中学を卒業して、分校は
廃校になるの。それが、何か悔しいんだ。お婆ちゃん先生が、アチ
コチに手配して学校の設備を充実させた。そして、定年後もしばら
ひね
く勤めていた先生だけど、体を壊して引退した。だから怜香先生に
頼み込んで来て貰った。怜香先生には感謝してる。性格は捻くれて
138
いるけど、基本はいい人だよ。分校を守りたいんだ。新しい生徒が
入って来るまでアタシが守って見せる⋮⋮⋮⋮。あ、アタシのオッ
パイを自然に触ってる。純一お兄さんは、やっぱり女タラシだね﹂
岬ちゃんに指摘され、左手を見る。昼間はこんな風に、怜香先生
のオッパイを堪能してたからね。
﹁ご、ゴメン。ついクセで⋮⋮。でも岬ちゃんも十分に魅力的だよ。
だから、手が伸びちゃう。で、学校を守るって具体的にはどうする
の?﹂
﹁子供が居ないなら、作ればイイ。お兄さんとの子供を妊娠して出
産したら、六年も経てばピカピカの一年生だもん!﹂
﹁そ、そんな事を考えてるの?﹂
﹁うん。アタシの将来は決まってる。お母さんと一緒に、旅館と、
学校と、島を守るんだ。港姉ェは、島を出て行くと思うよ。うん、
港姉ェは島に残るべきじゃない。あれだけ可愛ければ、都会に出て
も十分に通用する。渚も、頭がいいから本土の高校⋮⋮ううん、大
学まで進んで欲しいと願っているの。だから、少しでも家計の足し
にしたくて︱︱毎日、海に潜って大物を狙ってるの﹂
﹁凄いね。岬ちゃんは、本当に凄いね。ボクは進路は漠然としか考
えていない。将来像は、ぼんやりとしか見えてこない。高校を卒業
して、大学に進学して、その後は⋮⋮。最初は、親父の会社を継ぎ
たいと思っていた。でも、今は難しい状況だから⋮⋮﹂
﹁お兄さん、大学を卒業したら島に来ない? 家計の足しとは言っ
たけど、ウチには結構お金はあるのよ。お兄さん一人ぐらいは、楽
に養っていける。アタシと結婚して、子供をたくさん作るんだ。野
球チームが作れるくらい!﹂
﹁それは、最初言ってた事と矛盾するよ。潮屋旅館の女主人は、余
所からきた男と関係を持つ。そして、ずっと独身のままだ。汐さん
139
から聞いたよ。結婚したなら、そんなしきたりは関係なくなる。で
も、島の古くからの因習を断ち切るチャンスになるかも知れない。
もしも、岬ちゃんがボクの妻になって、そんな﹃風俗嬢﹄のような
事をしてたら、やめさせようと考えると思うんだ﹂
﹁何! お母さんのことを﹃売春婦﹄とでも言うの! 失礼しちゃ
う! イイ! お母さんはセックスをしても、お金は一切受け取ら
ないのよ! イヤな男が相手なら、ちゃんと断ってきた! 選ぶ権
利は、女の方にあるの!﹂
怒った岬ちゃんは、体を起こしてボクの上に乗っかってきた。
む、胸が当たる︱︱それだけが、気になった。
﹁ご、ゴメン言いすぎた。君のお母さんを悪く言ったつもりは無い。
それだけは信じて、お願い。で、聞かせて欲しい。岬ちゃんが知っ
てる島の秘密を⋮⋮﹂
ボクは、怒る彼女を抱き寄せてキスをした。
﹁これが本当のファーストキスだね。今度はドキドキした﹂
ニコリと笑う。凄く安心した。
﹁この島の歴史は古いんだ。古墳時代の遺跡も見つかってる。その
頃は、大陸とも交易をしていたの︱︱この辺は、全てお婆ちゃん先
生に教わったんだ。アタシが中学一年の時に、渚と一緒に本島の学
校で、島の歴史の発表をしたんだよ﹂
裸で抱き合い、彼女の話を聞く。でも、関係は持っていない。何
だか安心出来る存在。
幼馴染みか、兄妹か、そんな感覚。
︵ま、裸で同衾したり、抱き合ったりはしないけどね︶
﹁歴史とか得意なんだ﹂
140
今度は彼女の胸に頭を預ける。母親のような面も感じる。
﹁お婆ちゃん先生は、元々は歴史専門で、この島の由来を調べたく
て来たんだって。学校を辞めた後も島に残りたかったけど、病気に
なって今は本土の病院に入院してる。今度、お見舞いに行かなくち
ゃと思ってるけど、中々ね⋮⋮﹂
遠くを見つめる彼女だった。
﹁それに、アタシは歴史とか国語はメチャメチャ好きだけど、数学
とか、理科とか、英語とかが苦手だから怜香先生に怒られてばっか
り、あ、そうそう。英語なんだけど、港姉ェは、あんな外人みたい
な姿してるけど、外国語がからっきしダメなんだよ。本土のショッ
ピングセンターで服を選んでる時に、外人さんに英語で話しかけら
れてオタオタしていた。そこを渚と一緒に大笑いしたから、もっと
人が苦手になったのかも⋮⋮﹂
﹁岬ちゃん、話の主旨がズレてるぞ﹂
彼女の鼻の頭を押す。
﹁あ、悪い悪いお兄さん。アタシは直ぐに話がアチコチ行って散漫
になるって、いつも先生にもお母さんにも注意される、怒られる。
そうだ、島の歴史だったね﹂
﹁そう﹂
﹁この島の古くの名前は、﹃女島﹄っていうんだ。本島の方は﹃男
島﹄ね。でもその由来は、あんまり自慢できない。奈良・平安時代
には、﹃男島﹄には男の罪人が、﹃女島﹄には女の罪人が島流しに
された場所なんだ。だから、島の人たちはあまり語りたがらない。
アタシたち家族も、犯罪者の子孫かも知れない﹂
﹁へえー﹂
﹁そして、江戸時代になって事件が起こる﹂
﹁事件?﹂
141
あま
﹁その頃には、流刑地では無くなったの。﹃男島﹄は﹃△△島﹄と
にょはん
名前を変えて、漁師たちの島になった。そして、﹃女島﹄は海女た
ちの島になる。でも最初の頃は﹃女を犯す﹄と書いて﹃女犯島﹄と
呼ばれてたの﹂
﹁女犯?﹂
﹁仏教用語では﹃にょぼん﹄とも言うのよ。ま、全部お婆ちゃん先
生から教わった知識だけどね。最初は﹃女島﹄に﹃尼﹄さんが訪れ
たことが切っ掛けだったの。この場合の﹃尼﹄は女のお坊さんの事
ね。この島に渡って、仏の教えを広く島民に説いて、凄く慕われた
の﹂
岬ちゃんは、天井を見つめる。
﹁女のお坊さん⋮⋮﹂
﹁そう、その人は芸術家でもあったの。日本画や書道の達人で、数
多くの芸術品を残したの。島を題材にした絵も、多くあったのよ﹂
﹁へぇ、それを見てみたいな﹂
﹁書画は、お寺に飾ってあったの。今の学校がある辺り。でも明治
時代に大雨が降ったときに崖崩れがあって、そのお寺は海にまで流
されてしまったって話﹂
﹁ふーん﹂
﹁絵や書は、東京の美術館に数点残ってるだけなの。あ、尼さんの
話だったね。その人には色々な逸話が隠されていた。関ヶ原の合戦
で敗れた有名武将の娘だとも言われている。一家皆殺しにされそう
になったけど、仏門に入って命だけは長らえた。その女性は、この
島に逃れて平和に暮らしていたの﹂
岬ちゃんは、ボクの方を向く。
﹁ある時、その﹃尼﹄さんに書画を習いたくて一人のお坊さんが島
を訪れる。そのお坊さんは若くてとっても美男子だったの。尼さん
も美人だったという話。やがて二人は恋に落ちるの、仏教において
僧侶の恋愛は御法度よ。その禁忌を二人は破ってしまう。お坊さん
142
にょぼん
の方は寺に呼び戻されて、﹃女犯﹄の罪で破門される﹂
﹁煩悩まみれのお坊さんだね﹂
﹁そうね、誰かさんみたいね﹂
ボクの軽口に、岬ちゃんはキッと睨んできた。色々と勘は鋭そう
な女の子だ。
﹁尼さんの方はどうなったの?﹂
﹁うん。妊娠していることが分かり、尼僧を辞めて普通の娘に戻っ
たんだ。でも、悲劇が起こる。出産後に、徳川幕府の役人が検分に
来た。表向きは戒律を破った件での事情聴取だったけど、尼僧では
なくなった娘を捕らえる事が目的だった。尼さんは、本当にお姫様
だったのね。娘は自分の産んだ赤ちゃんを抱いて島の山の中を逃げ
廻ったの。山中の神社のほこらに隠れて役人の話を聞いた。戒律を
破った破戒僧の父親は、娘と同じ武将だった。二人は腹違いの姉弟
だったの。悲観した娘は、島の岬から身を投げる。純一お兄さんが
溺れた場所は、娘の入水自殺の場所なんだよ﹂
﹁え?﹂
ボクは沈黙する。そして総毛立つ。
﹁娘の赤ちゃんは、女の子だった。その子がどうなったのかは、良
く分かっていない。見つかれば殺されたはずだけど、役人側にはそ
の記録はないの。ふぁ∼あ﹂
岬ちゃんは、大きく欠伸をする。
﹁眠くなった? 続きは明日にしようよ﹂
ボクが言うと、彼女はうなづいて眠ってしまった。
︱︱午前四時二十八分。
潮屋旅館、客間。
143
﹁バシン! バシン!﹂
両頬に痛みを感じて目を覚ます。
﹁起きて! 行くよ! 着替えてね!﹂
﹁なに、岬ちゃん。まだ朝の四時半だよ⋮⋮﹂
早朝の客間。夜はうっすらと明けたのか、開いた窓からの明かり
で彼女の姿が映し出される。
白いTシャツにピンク色のレギンスだった。普段着の彼女は珍し
い。いつもは水着姿か、体操服姿だもんな。
﹁四時半だから行くのよ。早く着替えて﹂
ボクの浴衣を脱がしに掛かる。
︵や、やめて!︶
﹁自分で着替えるよ。で、どこに行くの?﹂
﹁島の、岬﹂
﹁え?﹂
﹁アタシの因縁の場所﹂
﹁因縁?﹂
144
﹁五日目﹂ その二
︱︱午前五時十八分。
如伴島、北岬。
﹁この場所が? ちょっと恐いね﹂
早朝、今の時間は潮が引いてるのか、﹃テーブル岩﹄の上からの
海面が遠くに見えて恐く感じていた。
﹁そう? アタシは慣れてるからかな、そうは感じない。ホラ、ア
ッチ見て! もうすぐ日が昇る﹂
東の空を指差す岬ちゃん。
水平線の辺りが、すっかりと明るくなっていた。
﹁さ、寒いね﹂
ボクは肩を抱く。茶色の開衿シャツに迷彩柄のハーフパンツ姿だ
った。
﹁温め合おうか? セックスする?﹂
あっさりと言った彼女は、岩の上にTシャツを脱ぎ捨てる。下は
裸だった。レギンスも脱いで、白いパンツ姿になる。
エロさは皆無だった。色気なんて感じさせない。
﹁おしょ!﹂
自分でかけ声を掛けて、パンツもさっさと脱いでいた。
﹁岬ちゃん⋮⋮﹂
﹁さ、アタシは準備は万端。純一お兄さん、優しくしてよ﹂
そう言って胸を叩いた。小ぶりだが形の良いおっぱいが、ぷるん
と揺れる。
145
︵さて、どうしよう︶
ボクは周囲を見渡した。もちろん、誰も居ない。離島であるため
大きな動物も居ない。
目撃者は居ない。
﹁早く脱いで﹂
ボクのシャツを脱がし始める。積極的な岬ちゃんのするがままに
されて、ズボンも脱がされた。
﹁あの⋮⋮﹂
灰色のボクサーパンツの股間が大きくなっている。昨晩は、ピク
リとも反応しなかったが、今朝は元気を取り戻していた。
﹁さ、早く!﹂
﹁やん!﹂
パンツを脱がされてしまった。
﹁で、どうするの? セックス﹂
﹁え? 岬ちゃん、知らないの?﹂
﹁知ってるわよ。男の人のオチンチンを女の人の体の中に入れるの
⋮⋮﹂
そこは顔を赤らめていた。よかったよ、おしべとめしべとか言い
出したら、どうしようかと思っていた。
﹁横になって﹂
﹁うん﹂
あっさりと岩の上に仰向けとなる。ボクの脱いだシャツの上に大
の字になっていた。どうにでもしてくれと、諦め気味だ。ヤケ気味
だ。
﹁早く、入れて!﹂
﹁や、そういうわけにもいかないんだ。女の人の体が、男の体を迎
146
え入れるのには準備がいるんだよ。そうしないと痛みを感じて、岬
ちゃんがセックスを嫌いになってしまうかもしれないし⋮⋮﹂
︵チンチンを大きくして、女の子に言う言葉じゃないな︶
自分でもそう思う。自己嫌悪。
﹁そこは、純一お兄さんが、アタシのオッパイを揉んだり、アソコ
を刺激してその気にさせるのでしょ。刺激って具体的にはどうする
の?﹂
﹁え?﹂
﹁アソコを触って、どうするのかと聞いてるの﹂
﹁うーん、難しい質問だ。岬ちゃんは、自分の性器を触って、気持
ちよくなったりはしないの?﹂
﹁なにそれ?﹂
大の字の岬ちゃんは、顔を上げて聞いてくる。
﹁お、オ○ニーとかしたことはないの? 自分で自分を慰めるんだ﹂
﹁自分で? 何で慰める? 心を痛めたの?﹂
︵うん。アホの子だ︶
﹁自分自身で、ホラ⋮⋮クリトリスとか触って気持ちよくなったり
しないのかなって?﹂
﹁クリ? 小さい頃、お母さんと一緒にお風呂に入って、アソコを
触っていたら、﹃女の子は触るモノじゃありません!﹄って叱られ
た。それからは、触ってない﹂
﹁え?﹂
︵オ○ニー、したこと無いんだ︶
渚ちゃんは、母親に肛門に指を入れられて快楽に目覚めた。反対
に岬ちゃんは、子供の頃に叱られたことがトラウマとなって、今に
至る。
147
両極端な姉妹だな。
﹁うーん﹂
ボクは腕組みし、声を出して悩む。処女の渚ちゃんと怜香先生を
相手にはしたが、二人共セックスに関する知識は豊富だった。
︵どうしたものか︶
﹁ホラ、早くして!﹂
急かされても、どこから手を出す?
﹁岬ちゃんは、オッパイを吸われたことある?﹂
﹁は? あるわけ無いジャン⋮⋮あっ⋮⋮﹂
ボクは、仰向けの彼女の右乳首に吸い付いた。右手で左胸を揉む。
快楽が襲い、彼女は声を漏らす。
﹁気持ちイイ?﹂
﹁何か来た! 頭に電気みたいなのが、走った!﹂
鼻の穴を拡げ、興奮していた。
﹁そう⋮⋮﹂
何も知らない、いたいけな幼女。純真無垢な少女を、いたぶりた
いと思った。
﹁やだ、くすぐっ⋮⋮あはは﹂
乳首にあった舌を脇腹に這わせる。岬ちゃんはくすぐったそうに
して、遂には笑い出した。全身に鳥肌が立っている。
苦手な場所だというのなら、ソコを重点的に責めるのだ。
汐さんから学んだ点。
﹁ダメッ! どうしてイジワルするの!﹂
ボクの後頭部をポカリと殴る岬ちゃん。だけど、手と舌の動きは
止めない。
﹁ひゃ、ダメダメダメ。ヤメテ、ヤメテ﹂
148
おへそから下腹部へと舌を這わす。バタバタと足を動かし始めた
ので、押さえつける。
﹁ここは、どう?﹂
﹁⋮⋮﹂
顔を上げて聞く。返事がない。
舌先が刺激したのは、彼女のクリトリスだった。包皮に隠された
敏感な場所。岬ちゃんは顔に両手を当てていた。
初めての快楽に当惑しているのだ。
包皮を舌先で捲り、ピンク色の宝石を露出させる。その後、優し
く刺激して膣へと舌を移動する。右指は彼女の小陰唇をなぞる。開
かれた足が閉じるのを、頭を使って阻止する。
﹁あ⋮⋮﹂
軽い声が漏れた。同時に分泌液も確認が出来た。
﹁え? あん⋮⋮﹂
ボクは彼女の下腹部から顔を離して、右乳首を軽く摘む。痛みと
快感が合わさった感触に戸惑っている。
﹁可愛いよ、岬﹂
言葉に顔を赤くする。
すっかりと朝日が顔を出す。二人の長い影が岩の上に伸びる。
﹁行くよ。後悔しないね﹂
ボクの確認に、大きく二回うなずいた。
﹁あ⋮⋮﹂
岬ちゃんのツルツルと健康的な肌の太ももを抱える。ボクのペニ
スを彼女の下半身に押しつける。
﹁ソレが入るのね﹂
149
ボクは答えずにゆっくりと腰を進める。彼女は顔をそらすわけで
はなく、結合部を必死にのぞこうとする。
自分のアソコがどうなっているのか、純真に知りたいだけなのだ
と思う。
﹁あ、アタシの中に入った⋮⋮﹂
意外とあっさりと、根元まで進入する。
﹁痛い?﹂
﹁少し⋮⋮。でも、変な感じ﹂
岩に寝そべっていた彼女は上半身を起こそうとする。
﹁アタシが動く?﹂
﹁ボクが動く﹂
﹁いい、こうすると気持ちイイみたい﹂
何にしても積極的な岬ちゃんだった。動物的な本能で、セックス
の本質を理解する。
正常位から、対面座位に移行していた。
ボクの下半身の上で、お尻を上下させる岬ちゃん。顔は真剣だっ
た。
単なるストレッチの延長ぐらいにしか、考えていないのかな?
﹁お兄さんは気持ちイイ?﹂
ボクを気遣ってくれる。ホンの数日前は童貞だったのだが、年下
のさっきまで処女だった女の子にリードされていた。
﹁岬ちゃん。動き早すぎ、もっとゆっくり動いてよ﹂
﹁そうなの? こう?﹂
﹁そ、腰を回してみ﹂
母親の得意技だ。夜の汐さんは、ベリーダンスのように妖しくく
ねらせていた。
﹁こうね。お母さんが、ダイエット体操でやってた﹂
150
ボクのペニスをねじり上げる岬ちゃんの膣。
﹁あ、出る⋮⋮﹂
実際、さっきの高速運動で破裂寸前だった。ゴムも付けていない
ボクは、彼女の中に大量に放出した。
﹁出た? 精子ってヤツ?﹂
明るい笑顔で聞いてくる。コッチが赤面するよ。
﹁いいの? 避妊もせずに⋮⋮﹂
﹁お母さんが言ってた。全ては神の思し召し!﹂
﹁ガンッ!﹂
﹁イテッ!﹂
ボクは岬ちゃんに、押し倒されて頭を岩にぶつける。
﹁何かチマチマしたのは嫌い! アタシが動く方が、性に合ってる
!﹂
知ってるのか知らないのか、騎乗位をとった彼女はリズミカルに
お尻を上下させる。
放出後も挿入したままだったボクのペニスは、再び大きさを取り
戻す。
︵アタシが動く方が、性に合ってる!︶
稚拙な前技を全否定されてしまった形だ。
朝日を浴びて、健康的に動く岬ちゃんの裸体。今までの、罪悪感
に捕らわれていたイメージとはかけ離れていた。
彼女にとっての子作りは、実におおらかで、実に陽気だった。
﹁コレでも食らえ!﹂
﹁み、岬ちゃん⋮⋮﹂
またぞろ、高速のピストン運動に移っていく。彼女は単純な往復
151
作業が好きなようだ。しかし、このままでは無限に精を吸い取られ
ていくだけだった。
止めなくては⋮⋮。
﹁ヒャン!﹂
簡単だった。乳首に手を伸ばすと、途端に行動が停止する。
﹁岬ちゃん。このまま何度ボクを行かせる気だい? ボクは、君の
行く所を見てみたいな﹂
体を起こして彼女の乳首を口に含む。
﹁ヤメ、ヤメテ!﹂
細くて華奢な腕だが、強い力で拒んでくる。うぶ毛が生えている。
太陽光に金色に光っている。
﹁ソコダメ!﹂
逃がさないように両手で体を抱きしめて、両の乳首をかわるがわ
る味わう。
﹁ヤダ、ヤダ﹂
言葉とは裏腹に、体からの抵抗はなくなった。
空いた両手で岬ちゃんの体を刺激する。
﹁お尻、揉んじゃダメ⋮⋮﹂
﹁岬のお尻はプニプニしていて、揉みごたえがあるぞ!﹂
再びボクは押し返す。対面座位から正常位へと変えて行く。
抜かずの二発目は、彼女を押し倒してからのスタートだった。
腰を浮かせて、軽いブリッジスタイルの彼女の臀部を掴んだまま、
前後運動をさせる。 岬ちゃんのペースにならないように、タイミ
ングを変えて責めていく。
152
﹁お、お兄さんはイジワルだよ。あ⋮⋮あ⋮⋮﹂
﹁声が出てきたね。可愛い声だよ岬。愛らしい声で鳴いてるぞ﹂
﹁あん、あん、あん﹂
抵抗を止め、鼻声で快楽の声を漏らす。
﹁来る、来る。何か来る。恐い、恐いよ﹂
﹁大丈夫だよ岬。ボクがそばに居る。快楽を拒まずに、迎え入れる
んだ!﹂
自制心が彼女を縛っていた。
そこからの解放が、ボクの役目だ。
﹁あー! あーー!!﹂
大きな声だった。ソッチに驚く。ボクの背中を掴んでいた手が爪
を立てる。
﹁来た! 来たーー!!﹂
腰が跳ねて、ボクの体を持ち上げる。彼女のパワーには目を丸く
する。
﹁だ、大丈夫? 岬ちゃん?﹂
ビクンビクンと体を痙攣させる彼女。その後は、力が抜けてぐっ
たりとしてしまった。
﹁あ⋮⋮﹂
絶頂に達し、意識がもうろうとする彼女。ボクはイジワル心を出
す。
ペニスを引き抜いて、体を離す。
﹁岬。こうやっていじるんだ。これからは毎日、寝る前の日課だ﹂
彼女の下半身にボクの指を伸ばす。中指を膣に差し入れて親指で
クリトリスを刺激する。
ドロリとボクの精液が出てきた。少しの血も混じる。
﹁あ?﹂
153
顔を上げてボクの表情に注目していた。
﹁自分のアソコをよく見てごらん。ね、気持ちイイでしょ。こうや
って毎日のオ○ニーを繰り返すと、岬は感じやすい女の子になるん
だ﹂
言われて、ボクの指の行方を必死で目で追っていた。
岬を胸に抱き、両手を駆使して彼女の身体を弄ぶ。
﹁いい⋮⋮。こうするの?﹂
自分でも指を伸ばしてきた。小さくて細い岬の指は、繊細な部分
に優しく刺激を与えていた。
﹁気持ちイイでしょ?﹂
﹁うん⋮⋮。また入れて⋮⋮﹂
すっかりとトロトロになっている彼女の入口。今度は背面座位で
挿入をする。
﹁は、入ったよ。ほら、お日様も見てる﹂
太陽を指差す。
﹁は、ははは。アタシ、エッチしてる。純一お兄さんとセックスし
てるんだね﹂
やっと実感したのか、トロンとした目でボクを見てきた。
可愛かった。
﹁キス、するよ﹂
ボクは優しく口を近づけると、岬ちゃんの方が貪ってきた。
互いの唾液が混ざり合う。彼女はボクの口の中で舌を絡めてきた。
二人は二箇所の結合部分で、お互いを感じ合う。
動物に戻った感覚だ。大自然の中、セックスをしていると先祖返
りをした印象を持つ。
太陽と、海と、島の自然がボクらを見ている。
154
﹁ダレ!?﹂
岬ちゃんが叫ぶ。ボクたちは結合したままだった。驚いた彼女は、
自分の着てきた服で下腹部を隠す。
誰かがのぞいてる? 渚ちゃんだろうか? この離島に、く、熊
とかは居ないよね。
﹁隠れてないで、出てきなさい!﹂
再び叫ぶ。
﹁どうしたの?﹂
ボクは呆けた表情で岬ちゃんに尋ねる。
﹁アソコに人が!﹂
指差した先には、大きめの岩がある。以前、全裸の岬ちゃんを、
渚ちゃんと覗き見した場所だ。
﹁あははー、見つかりましたかー!﹂
﹁凄いよね、朝っぱらからセックスしてるんだもの!﹂
二人の若き女性⋮⋮。あ、この人たちは︱︱。
﹁ダレ!﹂
恐ろしい形相で尋ねる岬ちゃん。
﹁この二人は確か、ボクが高速船で出会った女子大生だよ﹂
そう言うと、岬ちゃんは全裸のまま海に飛び込んだ。
﹁あ、痛い痛い。お股が痛い﹂
海に入って、バシャバシャ騒いでいる。
﹁み、岬ちゃん﹂
ボクは直ぐさま自分の服を着込む。
155
彼女の服を持ち、海面に浮かぶ裸の少女を見つめる。
処女喪失した直後だもの、海水は染みるよね。
156
﹁五日目﹂ その三
◆◇◆
︱︱午前七時八分。
潮屋旅館、食卓。
しおや
うしお
﹁ウチの娘は、泳ぎが上手だったでしょ﹂
潮屋旅館の女主人・潮屋 汐さんは、テーブルにアジの開きの塩
焼きを二人の客人の前に出す。
まきしま
ゆきこ
﹁ええ、ええー。まるで、人魚みたいでした⋮⋮﹂
岬ちゃんに見据えられて、牧島 由希子さんは、オドオドとして
答える。
﹃テーブル岩﹄の場所から、旅館に帰る道すがら脅されていたの
だった。決して口外しないと誓えと⋮⋮。
よしはら
まゆみ
﹁と、とっても珍しい光景でした﹂
もう一人の吉原 麻由美さんも同調する。
﹁お母さん! この二人は何なの!﹂
怒りの収まらない岬ちゃんは、アサリの味噌汁をズズッと啜って
抗議の言葉を母に訴える。
﹁で、お兄ちゃんは、岬姉ェと何してたの?﹂
ボクの直ぐ隣に座る渚ちゃんが、下からのぞき込む。アジの開き
を上手に食べている。半分は骨だけになっていた。
﹁イヤ、危ないから見張ってたんだ﹂
﹁ふ∼ん﹂
157
訝しげに言って、ボクのお皿の卵焼きを、箸で奪っていった。
﹁お二人からは、昨日になって突然に連絡を頂いてバタバタしてし
まって、純一君たちには連絡が遅れてしまったの﹂
汐さんは、ボクだけのためにフランクフルトソーセージを焼き、
食卓に置いた。魚を食べられないからね。でも、極太のソーセージ
が二本だなんて⋮⋮何か意味深。
﹁私たちは△△島の□□旅館に泊まって、ダイビングをしていたん
ですが、初心者なのに船で沖合に連れて行かれたりして不安に思っ
ていたんです。そうしたら、この﹃如伴島﹄の﹃潮屋旅館﹄ご主人
が、初心者向けのダイビングのインストラクターをされていると聞
かされて、船頭さんにお願いして早朝に送って貰ったんです﹂
牧島由希子さんの言葉。
よくよく観察すると、小麦色に日焼けした健康的な女子大生だっ
た。胸も大きく、長い足も肉付きが良かった。
﹁え? △△島からの定期便は、一週間に一便だけなんでしょう?﹂
よしこ
ボクはソーセージをかじってから、汐さんと由希子さんに聞く。
そんな様子を、笑いながら見ている渚ちゃん。
ふくだ
﹁それは、定期便の話ね。アタシが獲った獲物を福田 佳子のおば
ちゃんの漁船で、毎朝回収して本島や本土の魚市場に送るんだ﹂
かわりに岬ちゃんが答える。そうだね。そうだよね。岬ちゃんの
収穫した新鮮な魚や貝は何処かで消費されている。
因みに、福田佳子さんは定期便の船頭さんでもある。
﹁そうです。その為に朝の三時に起きて、ここには五時に到着しま
した。寝不足と船酔いでフラフラだったけど、絶好の素潜りポイン
158
トがあると教えられて、地図を頼りに北の岬に向かったんですが⋮
⋮﹂
そこで、ボクと岬ちゃんとのセックスシーンに遭遇したんだな。
これらを手配したのは汐さんだ。多分、確信犯的な行動だと思う
よ。
﹁あはは。岬は、あたしより素潜りが上手いからね。初心者さんに
は、一番の講師だと思ったんだよ﹂
豪快に笑う汐さんだが、目は笑っていなかった。岬ちゃんとの関
係が、公然の秘密となってしまった。
着実にボクを追い詰めている。
﹁と、ところで港ちゃんは? 姿が見えないんだけど⋮⋮﹂
ボクは話を逸らす。最近はずっと一緒に朝食をとっていたのに⋮
⋮。あの金髪碧眼の美少女の姿が拝めなくて残念だった。
﹁港姉ェは、他人が苦手だと説明したでしょ。二人も新しい人が来
たから、部屋で震えているよ。ごちそうさま⋮⋮﹂
渚ちゃんは、手を合わせて立ち上がる。
﹁な、渚ちゃん。今日はどうする? 学校に行くの?﹂
﹁勝手にすれば!﹂
フンと横を向き、食器を持って洗い場に向かう。
何か怒ってる。岬ちゃんとのことを勘付いているのだろう。でも、
それは君のお母さんの考えだ。嫉妬してるのかな。
﹁み、岬ちゃんって⋮⋮いうのかな? あたしに素潜りを教えてく
れない? ね、お願い﹂
もう一人の吉原麻由美さんが、彼女に手を合わせてお願いする。
159
こちらは色白のやや痩せている女子大生だった。
﹁由希子もお願いして⋮⋮﹂
麻由美さんは、傍らの友人の脇腹を突く。素潜りを本格的に教わ
りたいのだろう。有能な先生である岬ちゃんに頼み込む。
﹁私は、いいかな⋮⋮。麻由美が一人で教われば。で、純一君さ、
私に島を案内してくれない? ね、お願い!﹂
﹁ぼ、ボクがですか? 島で知ってることは少ないですよ﹂
その言葉を合図にしたかのように、食卓からは人がいなくなる。
﹁純一君。ね、案内してね﹂
由希子さんと、二人きりになってしまった。
◆◇◆
︱︱午前八時二十分。
分校、玄関。
﹁ここが、島唯一の学校です﹂
由希子さんを連れて最初に廻ったのは、よりにもよってこの場所
だった。
﹁ふーん﹂
関心は無いようだった。あたりまえか。
彼女の姿を見る。
パイン柄の黄色いアロハシャツの下に、白いTシャツ。それに、
デニムのホットパンツ姿だった。
学校へと向かう道。極力後ろに回って、背後からの姿を見ていた。
︵大きめのお尻を掴んで、後背位で犯したらどんな声を出すかな?︶
そんなことを考えていた。
160
﹁純一君!﹂
建物の中から声を掛けられた。怜香先生だった。ボクを見かけて
走り寄ってきた。白いブラウスの下の大きな胸がポヨンポヨンと揺
れる。
﹁朝から、私を尋ねて来たの?﹂
満面の笑顔だった。
﹁ダレ?﹂
横で不満そうな声を出す由希子さん。
﹁あ、アナタこそ誰!?﹂
目ざとく見つけた怜香先生が、強い声で叫ぶ。
﹁潮屋旅館のお客で∼す。純一君、この人ダレなの? 学校に住ん
でるの?﹂
さくま
れいか
ボクの腕に手を絡ませる由希子さん。
﹁ええ、朔麻 怜香先生は、この学校の二階に住んでいるんです﹂
﹁へー、若くて美人さんね。こんな島に置かれて、さぞかし欲求不
満で、純一君に色目を使ってるんでしょ﹂
由希子さんは何かと好戦的だった。でも、その分析は合ってます。
﹁な、失礼な人ね! 純一君! この人から離れなさい!﹂
絡めている腕を外そうとする。
﹁純一君は、今日は私の案内役なの。勝手なコトしないで⋮⋮。さ、
他を案内して﹂
ボクを引っ張り、学校の先へと進んでいく。
﹁じゅ、純一君⋮⋮﹂
怜香先生が、悲しそうな顔をしてボクたちを見送る。今度、お詫
びしないとね。
勿論、濃厚でラブラブなセックスだ。
161
︱︱午前八時三十六分。
墓地。
﹁これが、連絡船で言っていたお墓なの?﹂
﹁そうです﹂
﹁十字架が彫ってある⋮⋮﹂
眺めのいい南側斜面。島の集落が見渡せる。渚ちゃんに案内され
て来たときには気づかなかったな。
祖母の墓のある場所。
真下には学校がある。学校の場所には、過去にはお寺が建ってい
た。しかし、崖崩れで⋮⋮。
急峻な坂を見る。
大雨が降れば、集落を土砂が襲うことになるだろう。
﹁あ、あそこに池がある。行きましょう﹂
何事にも積極的だった。案内役のボクを置いて、勝手に進んで行
く。
︱︱午前九時九分。
ため池。
﹁綺麗な水ね。飲むと美味しそう。泳ぐと冷たくて気持ち良いかも。
それがいい。そうしましょう﹂
由希子さんは、着ているアロハとTシャツを脱ぐ。下には白いビ
キニの水着を着ていた。デニムのパンツも脱ぎ捨てていた。
﹁あ、あの⋮⋮﹂
この池の水は、島民の飲み水になっている。止めようとした。
162
﹁凄い、透き通っていて生えている水草まで見えている。格好の水
泳ポイントね﹂
ビーチサンダルを脱いで池に入って行く。
﹁ホラ! 純一君も泳ごうよ!﹂
腰まで浸かり、ボクに手を振る。
﹁魚もいるよ! 捕まえようか?﹂
そりゃそうだ。主の大ウナギが住んでいる場所だ。魚ぐらい⋮⋮。
﹁キャッ、何か大きいのが﹂
恐る恐る振り返る彼女。池には大型の魚類の影が⋮⋮。
こちらが、本当の主かも知れない。
﹁由希子さん! 上がって!﹂
ボクは手を差し出す。
﹁ま、待って。足に水草が絡んで⋮⋮﹂
膝までの場所まで逃げてきたが、そこから進まない。
黒い影が、彼女の足元を横切る。
﹁キャー。何か居る、何か居る。恐い、恐い!﹂
パニック状態だった。
今日は長いチノパンを穿いたボクは、一瞬迷うが、そのまま池に
入る。
﹁ほら、大丈夫!﹂
彼女をお姫様抱っこして、救い出す。絡んだ藻は簡単に千切れて
いた。では、彼女を引き止め、引きずり込もうとしていたモノの正
体は?
﹁あー、あはは、ゴメンゴメン﹂
照れ隠しなのか、茶色いソバージュの頭を掻く由希子さん。
163
取り敢えずは⋮⋮何処かの場所に⋮⋮。
池の近く、島の上水道へと供給している小さな設備が目に入る。
そこのポンプ小屋へと踏み入った。木造だが比較的新しく、綺麗
な建物だった。
木の床に、そっと寝かせる。
﹁ダレも、居ないね⋮⋮﹂
ゆっくりと上半身を起こす彼女。
﹁純一君をアチコチ連れ回したのは、コレが目的だった﹂
そう言って、白いビキニのブラを外す。日焼けした肌の下の白い
色。そしてピンク色の乳首は大きくなっていた。同じ色の大きな乳
輪に目が行く。
﹁ゆ、由希子さん⋮⋮﹂
﹁純一君も、服を脱いで。朝っぱらから凄いシーンを見せられたで
しょ。お姉さん興奮してるの。水着の下は濡れ濡れだったの﹂
朝、岬ちゃんとの行為を目撃した時と同じ服装だった。
彼女は、白い水着のボトムを脱ぐと、股間に当たる部分を見せつ
けていた。指でネバネバを拡げていた。
ボクの股間がいきり立つ。
﹁その、ネバネバ、匂いを嗅がせて⋮⋮﹂
彼女の水着を奪い取り、鼻に押し当てる。メスの匂いがした。舌
で舐め取った。
﹁純一君。いつでもOKだよ﹂
冷たい木の床に腰を降ろし、両足を開いて招いている。
指で性器を拡げて、誘っている。
ボクは水に濡れたチノパンを脱ぎ、いきり立ったペニスを見せつ
164
ける。
﹁うふふ、凄いね。可愛い顔して凶暴なモノ持ってるんだもの。お
姉さんも何人かの男性とお付き合いしたけど、こんなに長くて太い
のは始めてかも⋮⋮。楽しませてね。コンドームなら、アロハの胸
ポケットに入っているわ。私は、男女関係は割り切って考えてるの。
ゴムを付けたセックスは、愛の行為にカウントしないの⋮⋮握手み
たいなモノね﹂
由希子さんはそう言った。
﹁これですね﹂
ボクは彼女のシャツから六連のゴムを取りだし、一つをちぎる。
そして、床に落とす。
﹁どうしたの? お姉さんが、お口で付けてあげようか﹂
大きく開いて口腔内を見せつける。綺麗なサーモンピンクだった。
彼女の胎内も同じ色だった。
﹁いえ⋮⋮、結構です﹂
ボクは由希子さんの両足を抱え、狙いを定めると一気に挿入した。
ゴムは無しだ。
﹁チョッと、ヤメ⋮⋮。どうしてゴムを付けないの! 彼氏にだっ
てさせたこと無いのに!﹂
強く拒みボクを押し返す。だが、その両手首を掴んで、床に押し
つける。
﹁チョ、マジやめて! これは、レ○プと一緒よ。う、訴えるわよ
!﹂
﹁訴えるのならどうぞ﹂
ボクは彼女の大きな胸に顔を埋めて、貪った。
同時に腰の動きを早くする。
165
﹁やめて、やめて、こんなのはイヤ!﹂
﹁これが、この島のルールなんです。自然の摂理に逆らうのは、愚
か者だ! ゴムにはゴムの違った楽しみ方があるんですよ﹂
何故か、ボクの頭になだれ込む考え。これが正しく思えて来た。
ボクは等しく、この島では子作りに励んでいる。避妊など、冒涜に
過ぎないのだ。
﹁あ、あ、あ⋮⋮もっと⋮⋮もっと⋮⋮﹂
﹁ビッチだな由希子。こうやって、簡単に男と関係を結ぶのか!?
え? 答えてみろ! 誰にでもお尻を振る、メス犬め!﹂
﹁酷い⋮⋮酷いけど、何か気持ちがイイ。みんなは、私の事を影で
ヤリマンと言ってるのを知ってる。麻由美だって、そう思ってるは
ずよ﹂
一緒に来た友人の名前が出る。彼女たちも、本質的には信頼して
いないんだな。
﹁今まで何人の男と寝た? 何回セックスした? 言ってみろ!﹂
彼女の嫌がる場所を重点的に責める。
﹁人数は五人⋮⋮。意外と少ないでしょ⋮⋮でも、そのうちの四人
は友達の彼氏、麻由美の彼氏だった人も居るの⋮⋮セックスの回数
は⋮⋮それこそ、数え切れないくらい。あっ⋮⋮。私も経験豊富と
思ってたけど、君は凄いね。なんか⋮⋮あ、あ⋮⋮﹂
声が漏れる。
﹁船で出会ったテレビクルーともセックスしたんじゃないのか?﹂
﹁か、彼らとはしてない。だって、アイツらテレビ局の下請けの下
請けの下っ端。番組も、BSで放送されている︱︱聞いたこともな
い名前の番組﹂
彼女の方も観念したのか、ボクとのセックスを楽しみ始めた。腰
を思うように動かしている。
166
﹁アイツらは旅館まで押しかけて来て、しつこかった。それから逃
げるために、この島に来たのもある。でも、君に合いたかったのが
本当の理由よ﹂
腰をくねらせる由希子。
﹁誰にでもそんなことを言うんだな﹂
﹁違うわ。君さ、東京に帰ったら、お姉さんと付き合わない? 今
は彼氏居ないから、君を彼氏にしてもイイワよ﹂
﹁選択権はアナタには無い﹂
ボクはペニスで彼女の子宮口を突きまくる。
何とも味気ない膣だった。経験した女性の数は少ないが、ボク自
身を刺激する要素が少なく不満だった。
﹁あん、あん。君凄い⋮⋮。まだイかないの? それに、固くて太
くて長くて⋮⋮凄く満たされているの。こんなのは始めての経験。
あ、あん⋮⋮﹂
ボクは刺激を求めて、彼女の身体を縦横に操る。両足を高く上げ
させて、クロスする。
緩い膣でも締まりが良くなった感じがする。
﹁あ! あ! 君、凄い。鬼畜、鬼畜なの君は⋮⋮可愛い顔して、
女の子を泣かすのよ。あん、あー! あー!!﹂
彼女は首を伸ばしてダランとなった。
絶頂に達したのか? 呆気なさ過ぎる。
ボクのペニスは不満のままだ。
ゆっくりと抜き去る。ぐったりとした彼女を裏返す。お尻がコッ
チを向いていた。腰骨を掴んで引きつける。
﹁ボクに中出しをさせて下さいよ﹂
﹁あ⋮⋮?﹂
相手の意識がもうろうとしているが、コッチはお構いなしだ。
167
後背位で、力強く突き入れる。
﹁ひゃ、ひゃめて⋮⋮﹂
大きな胸が床に押しつぶされていた。日焼けしてない真っ白なオ
ッパイがナメクジのように貼り付く。
床に手を付いて逃げ出そうとする彼女のお尻を掴んで、再び深く
突き入れる。
観念したのか、顔を床に押しつけて何事か叫んでいる。
﹁うぉー、うぉー。あふー、あふぅ﹂
涙を流す姿を見て、興奮する。
犯している。女を犯しているのだ。
ペニスが固さを増す。
﹁中に出すぞ!﹂
彼女の背中がビクリと痙攣する。
涙を流す由希子は、ウンウンとうなずいた。
﹁あっ﹂
ボクは声を出し、ペニスを奧へ奧へと押し込んで放出する。妊娠
をさせる気がマンマンだった。
﹁ふぅ⋮⋮﹂
息を吐く。
﹁へぁ、へぁ⋮⋮﹂
彼女は胸を大きく上下させて息を吸い込んでいた。
﹁満足したか?﹂
﹁うん﹂
笑顔になってうなずいていた。
しかし、挿入したままのペニスの硬さはそのままだった。
ボクは消えない欲望に恐怖する。彼女の大きめのお尻に目が行っ
た。可愛らしい遠慮がちの菊門。取りだしたコンドームに指を入れ
168
る。彼女のソコに押し当てる。
﹁ソコ、ダメ、ダメ!﹂
中指は吸い込まれる。
﹁ここは、初めてですか? 奪いましょうか、アナルバージン。気
持ちイイですよ﹂
ボクの提案に首を振っていた。
﹁ダメ、ソコはダメ。心の準備が⋮⋮﹂
興ざめしたので、指を引き抜く。
︵まぁいいか。時間はタップリある︶
﹁抜かずに、もう一ラウンドどうですか?﹂
﹁うん!﹂
彼女はバックスタイルを楽しみ、嬉しそうに腰を振り始めた。
︱︱午前十時三分。
ため池、ポンプ小屋。
﹁ふぅ⋮⋮。君は凄いニャ⋮⋮﹂
語尾は猫語になっていた。
ボクの左腕を枕にして、猫のように寄り添って寝ていた。ボクは
胸を触りながら、彼女の額にキスをする。
メス犬と呼んだが、正体は、さかりの付いたメス猫だった。
東京で呼びつけて、猫耳と尻尾を付けたプレイもイイかもしれな
い。
そんなことを考える。
﹁由希ニャンを、純一のペットにしてニャ⋮⋮﹂
長い舌を伸ばして、ボクの乳首を舐めだした。彼女の勝手にさせ
る。彼女の右手はペニスに伸びていた。
169
今のところは、由希子の自由にさせる。飼い主に甘える猫の身分
をわきまえさせる。
﹁由希ニャン。ボクの前では首輪と鈴を付けるんだ﹂
﹁す、鈴は無いけど、チョーカーなら旅行カバンの中にある⋮⋮あ
るニャン﹂
語尾を言い直していた。
﹁ボクが付けてあげる。そうしたら由希ニャンはボクのペットだ。
いつでも、どこででもセックスをしてあげるよ⋮⋮﹂
﹁嬉しいニャン⋮⋮﹂
彼女の顔がボクのペニスに伸びた。
﹁お預け!﹂
彼女の後頭部を叩く。躾を正しくする。
﹁行くぞ、由希ニャン﹂
﹁え? どこ⋮⋮どこニャン?﹂
﹁いいところだ﹂
﹁いいところニャン♪﹂
裸のメス猫は、嬉しそうに二本足で立ち上がる。胸の前で手招き
をする。
170
﹁五日目﹂ その四
◆◇◆
︱︱午前十時二十分。
分校、玄関。
﹁キンコーンカンコーン﹂
チャイムが鳴っていた。鳴り止むのを待って、先生を呼ぶ。
﹁怜香先生! 居ますかぁ!?﹂
二階に向かう階段に向けて叫ぶ。
﹁ハァーイ!!﹂
明るい返事が返ってくる。
﹁バタバタバタ﹂
階段を駆け下りる、スリッパの音。音が喜んでいた。弾んでいた。
﹁純一君! 来てくれたのね、今日は約束してないのにわざわざ会
いに来てくれて嬉しい﹂
満面の笑顔。だが、ボクの隣に立つ人物を見て表情が固まる。
まきしま
ゆきこ
﹁こ、この人⋮⋮﹂
牧島 由希子の姿を認めて、体を硬くする。
﹁どうして、こんな人を連れてくるの?﹂
ボクは答えず、二階へと昇っていく。
﹁由希ニャン! 付いてくるんだ﹂
﹁ニャン!﹂
嬉しそうにボクに付いてくる。
171
﹁ちょっと、水が垂れてるわよ⋮⋮﹂
怜香先生が注意する。
由希ニャンは、上下白色のビキニの水着だった。その上に黄色い
アロハを羽織っている。
﹁大丈夫ですよ、怜香先生。それはボクの精液です﹂
﹁え?﹂
﹁何度も何度も中出しした後に、そのまま水着を着せました。股間
から漏れてるのは、精液と彼女の分泌液ですよ﹂
﹁え?﹂
怜香先生は固まったままだ。
﹁由希ニャンはボクのペットになりました。なんでも言うことを聞
きますよ。そうだな?﹂
﹁ニャン!﹂
嬉しそうに右手を上げる。招き猫のスタイルだ。
﹁純一君は、この人とも関係を持ったの⋮⋮﹂
怒りではない。呆れた表情をボクに向ける。
﹁そうです。で、折り入って先生にお願いがあるんです。ボクの命
令は何でも受け入れる由希ニャンですが、アナルセックスだけは頑
として拒むんです。そこで、肛門性愛の愛好者でもある先生の事を
思い出しました。先生との行為を見せつけて、由希ニャンにも躾け
るんです﹂
﹁由希ニャン⋮⋮って、純一君、本気なの? それに⋮⋮﹂
﹁いいだろ、怜香﹂
ボクは、先生の大きな臀部を鷲づかみにする。
﹁いやん⋮⋮﹂
172
トロンとした目で見てきた。承諾の合図だった。
︱︱午前十時三十分。
分校、二階。
﹁怜香のアナルは、いつでも準備OKなんだろ?﹂
ボクは先生のパンツを脱がし、白くて大きな臀部を露わにする。
﹁純一君の命令通りに、毎朝浣腸をして、直腸内部まで丹念に洗っ
て綺麗にしてるわ﹂
ベッドの上で、四つん這いの体勢を取る怜香先生。上半身は着衣
のままだ。ブラをした大きな胸が垂れ下がっている。
﹁由希ニャン、よく見てるんだ。これがアナルセックスだよ﹂
﹁ニャン⋮⋮﹂
白いビキニ姿の彼女は、食卓の椅子の背をコチラに向けて、逆向
きに座る。
精液でぐちゃぐちゃになった水着を椅子に押しつけていた。新た
に興奮しているようだ。
いきり立ったペニスにコンドームを装着して、ローションを先生
のお尻に垂らす。
﹁ヒャン⋮⋮﹂
右手の指を総動員して、ローションを先生の肛門とその内部に塗
りたくる。
﹁先生、緊張してますか?﹂
挿入する指が阻まれていた。
﹁ひ、人が見てると⋮⋮﹂
怜香先生は、由希ニャンをチラチラと見る。
﹁あれは、猫ですよ。気にしない気にしない。ほら、下腹部の力を
173
抜いて⋮⋮リラックス、リラックス﹂
ボクの言葉に、先生は息を大きく吐く。深呼吸を始めていた。下
腹部がゆっくりと動いている。
﹁ふー、ふー﹂
﹁そう、その調子﹂
ボクはペニスの先を、肛門に押し当てる。
﹁由希ニャン。よく見ていろ﹂
﹁ニャン♪﹂
彼女は目を爛々と輝かせていた。
身を乗り出す。椅子が傾く。
﹁あふぅー﹂
先生の呼吸のタイミングに合わせて、ゆっくりと挿入する。大き
く腫れた亀頭部が入口で阻まれる。
﹁ふぅー﹂
二度目の呼吸に合わせて、侵入を始める。
﹁あ⋮⋮ん⋮⋮﹂
﹁入ったよ、怜香。そして、よく見てごらん由希ニャン﹂
﹁ニャン⋮⋮﹂
羨ましそうに、口に指を当てるメス猫。
﹁この後は、由希ニャンにも同じ事をしてあげるから、大人しく待
ってるんだ﹂
﹁ニャン!﹂
﹁ああ!﹂
ゆっくりと腰を動かした。先生が声を出す。
﹁先生も、気持ちよさそうな顔を由希ニャンに見せてあげて下さい﹂
﹁え? ええ⋮⋮﹂
上気した顔を、飼い猫の方向に向ける。
174
﹁どこが、気持ちイイのかも説明して下さい﹂
﹁う⋮⋮ん。でも、説明が難しいわ。太くて長いウ○チを排出する
ときの快感に似てるけど、ソレだけじゃ無いの。恥ずかしい場所を
犯されているシチュエーションに興奮するのかも⋮⋮﹂
滑稽な光景だった。男のペニスを尻穴に受け入れた女性が、その
状況を、客観的に解説をしているのだ。
ボクも興奮し、先生の腰骨を掴んで激しく動かす。
﹁ああん! 純一君! 凄い、凄い。内臓が肉棒で掻き回されてる
の! 熱いのが体中を駆け巡るの! 気持ちイイ! あぁーん!﹂
先生は絶頂に達したのか、うつぶせになり枕に顔を押しつけて激
しく呼吸をする。
﹁ニャン⋮⋮﹂
自分の股間を弄り始めた、イヤらしいメス猫がいた。
﹁由希ニャン⋮⋮おいで⋮⋮﹂
手招きをする。
﹁ニャン♪﹂
彼女は自分でビキニの下を脱ぎ捨てて、お尻をフリフリやって来
た。
見えない尻尾を振っているような感じだ。
﹁ボクの肉棒をごちそうしてあげるね﹂
頭を撫でてやる。
﹁ゴロニャン♪﹂
喉を鳴らす由希ニャンだった。
◆◇◆
175
︱︱午後七時十二分。
潮屋旅館、食卓。
﹁頂きます!﹂
まきしま
ゆきこ
嬉しそうに両手を合わせた牧島 由希子は、目の前の刺身の盛り
合わせを前に箸を迷わせる。
よしはら
まゆみ
﹁豪華な食事ね﹂
相方の吉原 麻由美も、目を輝かせる。
浴衣姿の二人の女子大生。
由希子の首元には、和装にはそぐわない黒のチョーカーがあった。
ボクが締めてやった。
ボクのペットになる証だった。東京で会ったなら、鈴付きの可愛
らしいチョーカーをプレゼントしようと考える。高校生のお小遣い
では痛い出費だが、大きなメス猫を飼うからには、覚悟が必要だ。
何でも言うことを聞く、年がら年中さかっている猫なのだから。
しおや
うしお
﹁まだまだ、一杯あるのよ。甘鯛のアラのお吸い物も、味わってね﹂
潮屋旅館の女主人・潮屋 汐さんはテーブルにたくさんの海の幸
を並べる。
﹁うわー凄い、凄い﹂
両手をパチパチと叩いて喜ぶ由希ニャン。語尾の﹁ニャン﹂は人
前では遠慮させる。ボクだけのペットだからね。
﹁純一君は、お魚を食べられないの?﹂
日本酒の注がれたグラスを持った麻由美さんが聞いてくる。女子
大生の二人は成人しているので、飲酒が可能だ。グイグイと速いペ
ースで、胃の腑に収めている。
﹁ええ、そうなんです⋮⋮﹂
176
ボクは、一人カレーライスを食べる。二日前の残り物だ。
﹁こんなに美味しい魚料理を前にして、何だか可哀相ニャン⋮⋮﹂
そう言った由希ニャンが、隣のボクに向いてウインクしてくる。
︵人前で﹃ニャン﹄は止めろ!︶
﹁あはは⋮⋮﹂
頭を掻くボクに、凄い形相で睨んで来る渚ちゃん。由希ニャンと
の関係に気が付いたのだろう。基本、勘の鋭い子だ。
その後は、黙々と母の手料理を食べている。
一方の岬ちゃんは、母親の手伝いを甲斐甲斐しく行っていた。今
日は魚を捌くのにも挑戦していた。若女将を目指す気概を感じられ
る。
いじらしい将来設計が、眩しいくらいだ。
︵あー眩し︶
そして、金髪碧眼の港ちゃんは今も姿を現さない。うーん。この
状況はいかがなモノか⋮⋮。人見知りが激しすぎるのだな。
﹁あはは、お酒美味しい! コレって有名なお酒なんですか?﹂
由希ニャンは、顔を赤くして汐さんに尋ねる。
﹁本土の方の、造り酒屋のお酒です。数は作ってないので、あまり
出回っていないみたい。□△という銘柄ですのよ。ご存じ?﹂
聞かれて首を振る由希ニャン。お酒が美味しければ、何だってい
いんだな。
︱︱午後十一時二十八分。
177
潮屋旅館、客間二。
﹁スー﹂
ボクはフスマをゆっくりと開けて、この旅館のもう一つの客間に
侵入する。
何の事はない。ボクの客間の直ぐ隣だ。薄い壁を隔てた隣室。
昨日に急遽用意された部屋。それまでは、物置代わりにされてい
た和室。
この旅館に、二組の客が来るのは珍しい事なのだろう。
﹁ニャン♪﹂
浴衣姿の由希ニャンが立っていた。布団に眠る友人を指差す。
日本酒で酔いつぶれていた吉原麻由美さんは、軽くいびきをかい
ていた。
﹁ニャン、ニャン﹂
由希ニャンは布団を剥ぐ。眠る人物は、浴衣の前が乱れ、ノーブ
ラの乳房が片方のぞいていた。酒の影響で、白い肌は赤らんでいる。
﹁脱がすんだ⋮⋮﹂
﹁ニャン!﹂
笑顔の彼女は、友人の浴衣の紐を解く。
小さめの胸がのぞく。朝に、日焼け止めを塗りたくっていた彼女
を思い出す。日焼けの跡もなく、艶めかしい足がのぞいていた。
﹁パンツも﹂
﹁ニャ、ニャン﹂
忠実なペットは、ボクの指示通りに動く。
﹁麻由美さんは処女なんだね﹂
﹁ニャ⋮⋮﹂
由希ニャンは、両の口角を上げてニヤリと笑った。友人を売った
のだ。
178
﹁さて、処女を頂きますか⋮⋮﹂
浴衣のパンツだけを脱いだボクは、麻由美さんの両足を抱える。
︵何人目の処女だっけ?︶
考えながら、挿入を開始する。
179
﹁六日目﹂ その一
︱︱午前零時一分。
潮屋旅館、客間二。
﹁ん⋮⋮﹂
よしはら
まゆみ
痛みを感じたのか、吉原 麻由美さんは目を覚ます。一瞬、自分
に何が起きているのか、何をされているのかを理解していないのだ。
﹁な、何! き、君は!﹂
まきしま
ゆきこ
ボクの体を押し返そうと手を上げた。その手を押さえ込むのは、
彼女の友人、牧島 由希子さんだった。
﹁ゆ、由希子、何するの!﹂
﹁ご主人サマ。今のうちに、処女を頂くニャン♪﹂
﹁由希ニャン、押さえていろよ﹂
ボクは、いきり立つペニスを麻由美さんの体の中に侵入させた。
﹁痛い痛い! 何するんじゃぁ! ボケェ!﹂
彼女のおっとりとした顔には似合わない、口汚い言葉で罵られた。
﹁口を塞いで、由希ニャン﹂
﹁ニャン♪﹂
﹁フガ、フガ、フガガ⋮⋮﹂
命令通り、忠実に動く由希ニャン。あとでご褒美をあげないとね。
黒くて固いカチカチのカツオブシだ。
﹁麻由ニャンの味わいは、どうかニャ?﹂
180
処女という触れ込みだったが、ガッカリした。肌はガサガサだし、
変にスポーツで鍛えているためか、バランスの悪い筋肉の付き具合
だった。皮下脂肪も少なく、所々が骨張っている。
鶏ガラを抱いている感触だ。
ひんむかれた裸も、魅力がない。そもそも胸も小さく、乳首の色
も色素が沈着していて黒っぽい。下腹部は剛毛だし、カミソリで剃
って揃えているのが滑稽に思える。
だがこれが、ごく普通の女性の裸なのかもしれないと知る。
少し興ざめして、気持ちが落ち込む。
︵こんな事をして、何になるのだろうか?︶
しかし、ボクの腰の動きは止まらない。よがり始める麻由美と、
それを見ながらお尻をくねらせ始めた由希ニャン。
メス猫は、ボクのペニスを欲しがってる。
﹁待っててね、由希ニャン。これが終わったら、キミにもご褒美だ﹂
ヨダレを垂らす、はしたない猫の喉を撫でる。ボクの締めたチョ
ーカーを確認する。
ボクの奴隷になった、契約の印。ボクの要求を何でも受け入れる
彼女。
反対に、麻由美の何とも締まりのない膣。
それを、単純作業のように突きまくる。
小学生の膣やアナルを味わってしまったボクは、とうの昔に美食
家に変化していたのだ。
︵口直しが欲しい⋮⋮︶
181
そんなことを考える。
そして、視線を感じた。この部屋にある、由希ニャン以外の視線。
押し入れだった。
﹁ふっ⋮⋮﹂
ボクは笑顔になる。由希ニャンへのご褒美の前に、イタズラ子猫
へのお仕置きの方が先だと思っていた。
﹁あへぇー、あっ⋮⋮﹂
変な声を出して麻由美さんは昏倒する。酒と風呂上がりもあって、
のぼせてしまったのだ。
﹁気絶したニャ。羨ましいニャ⋮⋮。ご主人サマ⋮⋮﹂
浴衣を脱ぎ出す由希ニャン。股間をモジモジとさせている。
友人を売っておいて、この態度だった。
︵しばらくは、お預けだな︶
そんな風に考える。
﹁渚! 居るんだろ! 出てこいよ!﹂
押し入れの方向に向けて叫ぶ。この部屋の押し入れとボクの客間
の押し入れは、板一枚を挟んで、背中合わせになっている。
﹁ニャン?﹂
全裸の由希ニャンもそちらに向く。
﹁ガラッ!﹂
フスマが勢いよく開いた。
﹁ニャン!? ニャン!﹂
由希ニャンも驚く。旅館の三女が、客用の部屋の押し入れから出
てきたのだ。
182
﹁アンタたち、飛んだ変態じゃない!﹂
ブツブツ言いながら、降りてくる。しかし、足元が覚束ない。ボ
クの行為を見て興奮してるのだ。
愛らしい猫のキャラクターの描かれた、ピンク色のパジャマ。夏
仕様の半袖、半パンの可愛い姿だった。
﹁のぞき見して、さぞかし興奮したんだろ渚!﹂
ボクは、彼女のパジャマの下、下着の中に手を入れる。股間に手
を伸ばす。
﹁イヤ!﹂
言葉では拒むが、ボクの指の侵入をあっさりと許す。
︵ビチャビチャだった。アハハ︶
﹁渚、久しぶりだな。ボクの肉棒を味わうかい? どっちがいい?
ま○こか、尻穴か?﹂
膣の奧に右手人差し指を侵入させる。
﹁アン⋮⋮﹂
可愛い声に、ま○この方を犯すことを決定する。
﹁由希ニャン見てごらん。これが小学生のお○んこだ﹂
渚の下半身を裸にして、大学生の彼女に見せつける。
小さな渚を抱きかかえ、オシッコをさせる格好にさせた。
﹁触ってイイニャン?﹂
由希ニャンが手を伸ばす。
﹁ヤメロ!﹂
渚は抵抗するが、両足を抱えるボクは両腕も押さえつける。
﹁凄いニャン、プニプニしてるニャン。私が小学生だったときは、
こんなに肌触りが良かったかニャン?﹂
183
指で、渚の大陰唇の感触を楽しむ。
﹁汚い手で触るな! お兄ちゃんもヤメさせろ!﹂
後ろのボクに向いて叫ぶ。
﹁ポフッ﹂
布団に小学生を投げつける。
﹁由希ニャン。頭を押さえていて﹂
﹁合点承知ニャン!﹂
彼女とは息が合ってきた。
﹁うう⋮⋮﹂
敷き布団に顔を押しつけられる渚。
﹁可愛いお尻だ。でも、のぞきは犯罪だよ。悪い子はお仕置きだ﹂
ボクのペニスは、黒ずんで大きく反り返っている。
最初の頃よりも、短期間で成長した? そんな印象を持つ。
これまでは、仮性包茎気味で皮を被っていた亀頭も、今は大きく
成長して終始見えている状態になった。
セックスに特化するようになって、ボクのペニスも進化するのだ。
﹁痛い! 痛い!﹂
後背位で、渚の膣にぶち込む。十分に濡れていたが、彼女は痛が
り足をバタバタさせる。
﹁渚の膣は、相変わらずキツキツだな。久しぶりに味わって、ボク
のチンチンも喜んでいるよ。キミの姉さんのアソコも締まりは良か
ったが、やっぱり小学生は最高だな!﹂
小さなお尻を掴んで激しく動かす。
﹁ね、由希ニャンのは? 由希ニャンのアソコの具合は?﹂
184
嫉妬した大学生が聞いてくる。
︵由希ニャン、ユルユルだよ︶
言えないので、一瞬黙る。
﹁⋮⋮由希ニャンは、スタイル抜群だ。それに、オッパイの弾力は
格別だよ。エロい声も出す出す﹂
違うところを褒める。褒めまくる。
﹁何か、誤魔化されたニャ⋮⋮﹂
﹁イタ、イタタタ⋮⋮﹂
ボクのお尻をつねりあげる由希ニャンだった。
﹁もう出そうだよ渚。そうだ、今日は渚の小さなお口で受けて貰お
うかな。由希ニャン。顔を上げさせるんだ﹂
﹁ニャン♪﹂
彼女は変に気を利かせて、渚の髪の毛を引いて顔を起こさせた。
﹁痛い!﹂
頭髪を引っ張られ、苦痛に歪む小学生の顔。
﹁渚、お口あーんするんだ﹂
﹁イヤッ!﹂
拒絶。
ボクは構わずに、彼女の顔に向け、精子を発射する。大量の白濁
液が、小学生の顔面に注がれる。
無言でボクを睨みつける渚。チョッと怒らせちゃったかな。
﹁⋮⋮コロス﹂
スクッと立ち上がった渚は、枕元に置かれたティッシュを大量に
抜き取って、顔を拭く。
185
丸めてボクに投げつける。
︵コロス?︶
下半身裸の彼女は、脱がされたパジャマと下着を持って、部屋の
フスマを開ける。
﹁ピシャッ!﹂
勢いよく閉じられる。
怒って出て行ってしまった。
︵女子大生たちとのセックスをのぞいて、興奮していたのはソッチ
だろ!︶
ボクも腹が立ってきた。この怒りをぶつける対象は⋮⋮。
﹁由希ニャン。四つん這いになりなさい﹂
静かに言う。ボクは彼女の用意したコンドームをペニスに装着す
る。
﹁わ、判ったニャン。ゴムを付けるのは、お尻へのお仕置きニャン
♪ アナルニャン♪♪﹂
喜び、お尻を揺らす由希ニャンは、嬉しそうに布団の上に両手と
両足を付く。
﹁朝までお仕置きだ。寝かせないよ﹂
ゆっくりと、由希ニャンの肛門に挿入する。
﹁あ、あー気持ちイイ。気持ちイイの⋮⋮﹂
﹁ニャンを忘れてるぞ﹂
﹁ああん。気持ちイイニャン!﹂
彼女の声が、和室に響く。
186
﹁六日目﹂ その二
◆◇◆
︱︱午前七時二十六分。
潮屋旅館、食卓。
しおや
うしお
﹁純一くーん! お料理を運ぶのを、手伝ってくれなーい?﹂
調理場で、この旅館の女主人・潮屋 汐さんが叫ぶ。
﹁あ、はーい!﹂
ボクは調理場に向かった。隣にピッタリと寄り添う由希ニャンを、
にびいろ
制止し一人で向かう。由希ニャンは何か不満そうだった。
甲斐甲斐しい彼女気取りが、鼻につく。
﹁トン、トン!﹂
小気味よく、魚の頭を縦に割る汐さん。
﹁その、卵焼きを運んで置いてくれないかな﹂
手に、魚を捌く大型の包丁を持つ汐さん。刃が鈍色に光る。
﹁あ、はい﹂
大皿に山盛りになった卵焼き。隅には大根下ろしが盛られている。
﹁お刺身で使った、魚のアラを煮込んでるからさ、もう少し待つよ
うにお客さんに伝えておいてよ。そんで、岬と渚を起こしてきてく
れない? 普通なら、とうに起きている時間なんだけど﹂
お客の方も、麻由美さんは部屋から出てこなかった。
187
渚ちゃんは⋮⋮顔を合わすのが気まずいな。岬ちゃんはどうした
んだろ、魚を獲りに行ったのか? そして港ちゃんは、今日もお日
柄も良く、引きこもっている。
﹁由希子さん。麻由美さんを起こしてきて下さい。ボクは二階の姉
妹を起こしてきます﹂
食卓のテーブルにお皿を置く。
﹁判ったニャ⋮⋮ゴホン、ゴホン。判りました﹂
立ち上がる由希ニャン。極めて冷静に取り繕うが、黄色のタンク
トップとジーンズのラフなスポーツスタイルには、首元の黒いチョ
ーカーが似合わない。
﹁渚ちゃん⋮⋮昨日はゴメン⋮⋮。お母さんが起きてきなさいって﹂
彼女の部屋のフスマを開ける。ボクは最初から謝っていた。昨晩
は我ながら、やり過ぎたと猛省していた。
﹁渚ちゃん? あ? れ?﹂
ピンク色のシーツのベッドは、もぬけの殻だった。
﹁み、岬ちゃん!﹂
慌てて隣の部屋のフスマを開ける。コチラが岬ちゃんの部屋だ。
﹁なに? お兄さん?﹂
こっちは布団だった。眠たそうな顔の岬ちゃんがボクに向く。同
じ布団には、渚ちゃんが眠っていた。
﹁よかった。渚ちゃん、いたか﹂
﹁よくない!﹂
渚ちゃんは起きていた。夜中と同じパジャマ姿。
﹁着替えるから、出ていって!﹂
小学生は自分の部屋に戻り、フスマを閉じる。
188
﹁み、岬ちゃん。昨日は何があったの?﹂
姉の方に尋ねる。ま、渚ちゃんに酷いことをしたのはボクですが
⋮⋮。
﹁夜中に、渚が泣きながら布団に入ってきた。時々あるんだ。お母
さんに相談できないときは、アタシに甘えてくる﹂
大きな男物のTシャツで寝ていた岬ちゃんは、ボクの目の前で脱
ぎだした。下着は着けてない。ノーブラ・ノーパンだった。
﹁み、岬ちゃん。お、女の子は隠そうよ﹂
﹁何、恥ずかしがってるの? アタシとお兄さんの仲じゃない。未
来のダンナ様を前にして、隠すことは何も無いわ﹂
いつもの体操服とエンジ色の短パンに着替える。学校指定の体操
服だ。胸には﹃みさき﹄とひらがなで名前が入っている。ま、学校
の生徒の名字はみんな一緒だからね。
﹁そ、そうなんだ。で、渚ちゃんは何か言ってなかった?﹂
ボクと結婚すると心に決めている岬ちゃん。
彼女に、妹のことを尋ねる。
﹁ん? アイツは嫌なことがあると、アタシに泣きついてくる。で
も、理由は聞かない。アタシの胸の中で思いっきり泣かせてやるん
だ。あ、いい匂い。お母さんの得意料理だ!﹂
鼻をクンクンして匂いを嗅ぐ。そして、勢いよく部屋を出て階段
を駆け下りる。
お醤油と生姜、それにネギが加えられた素朴な魚の煮物料理。
魚を食べられないボクも、食欲をそそる匂いには、お腹が鳴る。
中学三年生の岬ちゃんは、母親のような懐の深い面と、子供のよ
うな部分が同居している。
189
ボクは、彼女の元気よく階段を降りる姿を見送った。
﹁?﹂
視線を感じて振り返る。
向かいの部屋のフスマが少し開いて、ボクを見ていた。
﹁ピシャッ﹂
しおや
みなと
視線が合うと、直ぐ閉まる。
金髪碧眼の美少女、潮屋 港ちゃんだ。ボクと妹たちとのやり取
りを影から見ていたのだ。
﹁港ちゃん!﹂
ボクはフスマ越しに声を掛ける。
﹁ガタ、タッ!﹂
相手は大層慌てた様子だった。部屋の中で震えているのか?
﹁港ちゃんさ、ボクらと一緒に朝食を食べないかな。岬ちゃんは喜
んで食卓に向かったよ。ボクも、他のお客さんも︱︱恐くはないか
らさ⋮⋮﹂
そう言って階段へと向かう。
﹁スー⋮⋮﹂
天の岩戸が開いた。
◆◇◆
︱︱午前七時四十五分。
潮屋旅館、食卓。
190
﹁頂きます!﹂
大盛りのご飯を前にして、岬ちゃんが手を合わせる。
ソレを合図にしたかのように、皆が一斉に食事を始める。
大きめの木材を切り出して作った、古くて由緒あるテーブル。今
は、黒く色を変えていた。
何人もの人間が、何度もの食事を繰り返したのだろうか。
そのテーブルの前に、ボクがこの旅館に泊まってから、最多の人
数が並ぶ。
潮屋家の四人と、ボクと、大学生の二人。七人も揃うと、食卓は
華やかだった。
まきしま
ゆきこ
﹁美味しいです、この煮付け。東京で食べたなら、これだけで何千
円も取られます﹂
魚の頭から目玉を上手にほじくり出す、牧島 由希子さん。
猫は魚が好きだよね。
よしはら
まゆみ
﹁そうね。一泊三食付きの値段を考えると、豪華な朝食だわ﹂
隣の吉原 麻由美さんも、同意する。一瞬、ボクの方を見てから
︱︱無視するように、汐さんの方を向く。
怒っているよね。当然だよね。
確かに、旅館の値段もリーズナブルだった。ま、全て母親に出し
て貰っているけどね。一週間分を気前よく前払いだった。
﹁そんなことはないよ。全部、余り物だからね。でも、島や海の恵
しけ
みには感謝して味わう。ここ最近は波も穏やかで、魚も大漁だから
ね。逆に、海が荒れた時化続きの日には全く取れない時もある。そ
んな場合は、食卓にレトルト食品や缶詰が並ぶ日もある﹂
191
﹁うんうん﹂
母親の言葉に、シミジミとうなずく岬ちゃん。
﹁渚、食べないの?﹂
岬ちゃんは、妹の卵焼きを奪うと、ボクのお皿に置いた。
﹁お兄さん。さ、召し上がれ﹂
再び箸で持ち直すと、ボクの口の前に差し出した。
遠慮無く頂く。
今日は珍しく、ボクの隣に岬ちゃんが座る。向かいの母親の隣が
渚ちゃんだ。ボクのもう一方には由希ニャンが座り、角には麻由美
さんが座る。
因みに、母親の影に隠れるようにしているのが、港ちゃんだ。
その金髪碧眼の外国人の登場に、大学生の二人組は目を丸くして
いた。
﹁ねぇアナタ。綺麗な金髪ね。ハーフにしては日本人の血が少しも
混じって無さそう⋮⋮﹂
斜め前に座る麻由美さんが、港ちゃんに尋ねる。
﹁⋮⋮え﹂
今日もグレーのスウェットの上下を着る彼女は、突然に話しかけ
られて固まっていた。
ひい
﹁あぁ、港はね、曾おばあの血が強く影響してるの﹂
汐さんが言う。魚の背骨を軟骨ごとかみ砕いている。
﹁曾お婆さま?﹂
ひいひい
由希ニャンが聞く。
﹁港たちの曾曾おばあちゃん︱︱あたしの曾おばあちゃんは、ロシ
192
ロシア
ア人とのハーフなの﹂
﹁露西亜ですか⋮⋮﹂
汐さんの言葉に、熱心に聞き入る麻由美さん。
﹁時は西暦千九百五年、今から百年以上も前の話ね。﹃如伴島﹄の
遥か沖合で行われたんだ。東郷平八郎司令長官が指揮する日本の連
合艦隊が、ロシア帝国の海軍、第二・第三太平洋艦隊︱︱通称バル
チック艦隊と戦った﹂
﹁日本海海戦の事ですね。凄い、そんな歴史的出来事が、この島の
近くで起こったなんて⋮⋮﹂
ボソリと言った渚ちゃんの言葉に、由希ニャンが返す。二人の間
には微妙な空気が流れていた。ま、ボクの所為なんですけどね。
﹁そ。その時のロシア人の水兵が、この島に流れ着いたの。で、曾
曾おばあちゃんの母親は、怪我をした金髪碧眼のロシア兵を救助し
て、献身的に看病したの。そして、曾曾おばあちゃんが生まれる。
でも、見た目は日本人そのものだったみたい。外国人の血が色濃く
出たのは、港お姉ちゃんだけだった﹂
渚ちゃんはボクを一別してから、ワカメと豆腐の味噌汁をズズズ
とすする。
﹁へぇ⋮⋮。金髪も青い眼も劣性遺伝ですからね。そういった理由
があるのですね﹂
﹁⋮⋮イヤッ﹂
麻由美さんは手を伸ばし、港ちゃんの長くてキラキラしているサ
ラサラの髪の毛を触る。
怯えて、母親の影に隠れる金髪少女。
﹁モシャモシャ⋮⋮﹂
193
大量のご飯を口に運んでいた岬ちゃんは、満点の笑顔でテーブル
の一同を見る。
﹁何かイイナ。人が一杯居るのはイイナ。ネ、お母さん。お昼は焼
き肉にするって言ってたけど、東の浜でバーベキューをやらない?
みんなで、やるんだ! スイカもあるからさ、スイカ割りとか⋮
⋮みんなで海水浴をしようよ! ね、お兄さんも賛成するよね﹂
岬ちゃんがボクの腕を取って、揺すってくる。胸が当たる。
﹁いいね、海水浴。アナタも来るわよね。水着ぐらいは持っている
んでしょう?﹂
﹁⋮⋮エ?﹂
麻由美さんは港ちゃんに聞く。
﹁怜香先生も誘いましょうね?﹂
汐さんは、何故かボクの顔を見る。
﹁うん! いいね!﹂
岬ちゃんは嬉しそうだった。
残ったご飯に味噌汁を掛けて掻き込む。猫まんまだ。
﹁アラ、美味しそう﹂
由希ニャンも真似をする。
よろずや
﹁そうなったら、準備だ! お兄さん手伝ってね。学校に行けば、
バーベキューの道具が置いてあるし、萬屋商店には浮き輪にビーチ
パラソルなんかが置いてあるんだ。萬屋のお婆ちゃんに借りてこよ
う﹂
岬ちゃんは立ち上がり、一人オタオタ慌て始めた。
﹃萬屋商店﹄とは潮屋旅館の二軒隣にある、この島唯一の商店だ
った。﹃かき氷﹄の、のれんも下がっていた。水泳後のデザートに
194
良いかも知れない。
﹁あーどうしよう、どうしよう。楽しくなって来た!﹂
岬ちゃんは畳の間で、足を踏みならす。
﹁⋮⋮岬ちゃん。バタバタうるさい﹂
﹁は、ハィ! ゴメンなさい! お姉ちゃん!﹂
長女の港ちゃんが注意すると、途端に大人しくなる次女だった。
三女の渚ちゃんがそれを見て笑う。
本当は、恐ろしい︱︱港お姉ちゃんなのかも知れない。
195
﹁六日目﹂ その三
◆◇◆
︱︱午前十時二十五分。
如伴島、東の浜。
﹁へー、こんな砂浜があるんですねぇ∼﹂
ボクは感心する。
島の東側の海岸線。岩場ばかりだが、その中に少しばかりの砂浜
が見られる。
ため池からの流れが、小さな川となり海に注いでいる。
長年の積み重ねで、綺麗な砂浜を形作っていた。
﹁キュッ、キュッ﹂
﹁鳴き砂、じゃあーないですかぁー!?﹂
素足で浜を歩く由希ニャン。感激していた。
砂も海水も綺麗な場所だった。砂浜の先にはエメラルドグリーン
の海が広がる。
︵海水の透明度では、沖縄さえ越えるのでないのか!︶
東京近郊の海水浴場しか知らないボクは、そんな感想を持った。
由希ニャンは白いワンピース型の水着を着る。ただし、大人しく
はなかった。股間と胸元は鋭角に切れ上がり、切れ込み、背中も大
きく開かれている。
生地も若干薄目で、赤外線カメラなら陰毛や乳首もバッチリ見え
るだろう。
196
露出狂気味のメス猫だ。
︵バックから犯すと、良い声で鳴くのだな︶
隣を歩く麻由美さん。赤いビキニだった。派手で、目がくらむ。
色白の彼女には、とっても似合っていた。
足も細くてスラリとしている。
︵足コキ? 気持ちよさそう︶
そんな事を考える。
﹁ねぇ、お姉さんたち。ビーチボールでバレーしよう!﹂
岬ちゃんが、トリコロールカラーのボールを持って言う。日焼け
した顔に白い歯が眩しかった。今日も紺色のスクール水着だ。胸に
名前が入っていないので、これでもよそ行きの海水浴スタイルなの
だな。
腹筋が少し割れているのが、水着の上からも分かる。鍛え抜かれ
たボディだ。
︵高速ピストン運動には、はまりそう︶
﹁いいわね! あたしも最近は運動してなくて体がなまっているか
らね﹂
汐さんが加わった。黒いビキニ姿がエロいです。とても、三人の
お子さんのいる母親には見えないね。プロポーションは抜群です。
重力に逆らう形の良いロケットオッパイが、天を向く。
︵後ろから揉みたい。挟まれたい。叩かれたい︶
﹁先生も混ざろうよ!﹂
渚ちゃんが怜香先生の手を取る。今日の渚ちゃんは、ピンク色の
ビキニだ。タオル生地の素材が、少女の体の全体に柔らかな印象を
与える。
ツルペタの小学生だが、年齢相応の可愛さを醸し出していた。
197
長い茶色の髪の毛をツインテールにしている。
︵ああ、幼女のプニプニま○こを犯してぇー!︶
﹁うん。渚ちゃん﹂
怜香先生も、バレーの輪に加わる。
花柄のビキニだった。腰には同じ柄のパレオをまとう。
花柄の布は太陽に透けていて、先生のグラマラスな体型がバッチ
リと見える。
相変わらずの巨乳さんだ。だが、先生の大きな洋梨型のお尻も忘
れてはいけない。
︵海中でアナルセックスすると、水が入るのかな?︶
股間が反応してしまった。
迷彩柄のバミューダ水着。その股間の位置を直していると、隣に
座る金髪美少女と目が合った。
﹁あはは⋮⋮﹂
﹁⋮⋮ヒッ!﹂
愛想笑いするボクから視線を逸らし、小さな悲鳴をあげる。
ボクチンのガラスのハートは、粉々に砕け散った。
港ちゃんの姿は、黒色の競泳水着を着ていて、グレーのパーカー
を羽織っている。
真っ白な肌と黒い水着とのコントラストが映える。
ボクの立てた、ビーチパラソルの影の下に籠もっている。
この子は、吸血鬼なのだろうか? 太陽光の下では、姿を見かけ
たことは無い。
首筋を吸われてみたい、欲求もある。
﹁⋮⋮お、泳がないの?﹂
198
﹁え?﹂
ボクは思わず聞き返してしまった。珍しくというか、始めて港ち
ゃんの方から話しかけられたのだ。
はかな
蚊の鳴くような小さな声。ボクの方を見ずに、ビーチバレーに興
じる家族たちを見て言う。
﹁⋮⋮バレーしないの?﹂
ああ、可憐な声だった。鈴を転がすような、儚いが清らかな声。
周囲の女性が、極太のゴシック体の台詞を喋る中、彼女だけは極
細の明朝体で台詞が語られる。
﹁ああ、疲れてね、一休みしてるんだ。キミの家族に色々とね、荷
物を持たされた。散々歩かされた。バーベキューのコンロとか、キ
ミが日除けにしているビーチパラソルとか、お肉とか、スイカとか
⋮⋮﹂
﹁⋮⋮そう﹂
言ってから押し黙る。会話が途切れる。
せっかくのチャンスだ。お近づきになりたいと思った。
﹁み、港ちゃんこそ、みんなの輪に加わらないの?﹂
﹁⋮⋮太陽、嫌いだから﹂
パーカーのフードを被る。ボクとは目も合わせてくれない。
︵うむむ。強敵だ︶
かあ
﹁その水着、似合ってるね。高校の水泳の授業で使うはずだったの
?﹂
﹁⋮⋮母ちゃんが買ってくれた。制服とか、体操服とか全部揃えて
くれて、悪いと思ってる﹂
自分の膝を抱く。
︵母ちゃん!? 金髪少女の口から出ると︱︱何かも、萌え!︶
199
﹁港ちゃんの制服姿を見てみたいな。とっても可愛いと思うよ。ど
んなスタイル? ブレザー? セーラー服?﹂
﹁⋮⋮ブレザー﹂
﹁色は?﹂
﹁⋮⋮紺﹂
﹁スカートは、どんなの?﹂
﹁⋮⋮茶色のチェック﹂
想像する。スタイルの良い彼女だ、田舎の高校ではケタ違いに可
愛くて、逆に目立ってしまったのだな。
﹁靴下はどんなの? 学校は校則厳しいの?﹂
﹁⋮⋮うるさい﹂
﹁え?﹂
そう言って、港ちゃんはスクッと立ち上がる。
みんなの輪に加わって行った。
しばらく、ボーっと、女性たちのビーチボールバレーを見守る。
各人の性格が如実に現れる。
運動神経が良いのが、汐さんと、岬ちゃんと、麻由美さんだ。
大きな胸で苦労していたのが、由希ニャン。水着でなくてスポー
ツブラなら、健闘するレベル。
壊滅的なのが、怜香先生と、渚ちゃん。
特に怜香先生は、既に自分で二つもビーチボールを抱えているの
で、動きも緩慢だった。
渚ちゃんは典型的な運動音痴だった。人よりも動きがワンテンポ
200
ずれている。
決定的なチャンスで、アタックを空振りしていたな。
港ちゃんは、自分にボールが廻って来ないように位置取りを工夫
する。
頭も良いし、気配りも上々だ。
気配りといえば、逸れてしまったボールを積極的に拾いに行く献
身さ。
そんな彼女の笑顔を見た。
初めて見た。
暴力的な可愛さだった。ボクは心を︱︱奪われていた。
﹁ふぅ⋮⋮疲れたよ。やっぱり若い子には敵わないな﹂
汐さんがやって来て、ボクの隣に座る。
小麦色に日焼けした肌に、汗が水滴となってしたたっていた。
﹁ぷはぁー、昼間飲むビールは格別だね﹂
持ってきたクーラーボックスの中から、氷に冷やされていた缶ビ
ールを開けて飲む汐さん。
ゴクゴクと喉を鳴らして、ロング缶をあっという間に空にする。
﹁ものすごく、美味しそうに飲みますよね﹂
未成年者の、偽らざる感想。
﹁純一君も、飲むかい? 未成年者の飲酒も︱︱淫行も︱︱ここで
は許される。無礼講だよ!﹂
ボクの肩に手を回す汐さん。大きなロケットオッパイが腕に当た
る。
﹁いえ、遠慮しときます⋮⋮﹂
﹁純一君が、遠慮とは珍しいね。小学生を強姦する、不良高校生の
201
クセに⋮⋮﹂
含みのある目でボクを見る。
全て知っているんだ。
﹁あ、の⋮⋮﹂
﹁何人と関係を持った? ん?﹂
波打ち際で遊ぶ一団を見る。
﹁み、港ちゃん以外⋮⋮ぜ、全員です﹂
﹁あはは、あたしが見込んだ以上だよ。で、だれが本命だい? 何
なら、あたしでも全然OKだよ﹂
ボクの背中をバシバシ叩く汐さん。
﹁本命は、まだ決めてません。でも、汐さんは︱︱岬ちゃんを︱︱
と、考えているんですよね。彼女が言ってました。ボクが大学を卒
業したら、この島に来るようにと⋮⋮。これは命令ですよね。ボク
には、選択する権利はない﹂
ボクは、自分の膝を抱く。さっきまで隣にいた港ちゃんの様に。
不安なのだ。不安で居たたまれない。
ボクは、家族に売られてしまっていた。
﹁あのバカ! 岬が何を言ったか知らないけど、純一君は誤解して
るよ。あたしが、キミのお父さんの事業を応援したのには、下心は
無いんだ。これは、神に誓ってもいい﹂
真剣な表情の汐さん。
﹁そんなワケないでしょ﹂
ボクはすねる。砂浜に指で文字を書く。
﹃ウソ﹄
202
203
﹁六日目﹂ その四
﹁アハハ﹂
﹁イェーイ!﹂
砂浜で遊ぶ、女の子たちの声が聞こえて来た。眩しかった。
いとこ
汐さん家族と、ボクの家族の関係性。
汐さんに対して、ボクの母親は従姉の関係にあたる。
ボクの母の母︱︱祖母は、汐さんの母親の姉になる。この島を嫌
って飛び出した祖母は、死後︱︱遺骨を妹と同じ墓に埋葬するよう
に遺言を書いていた。
美人で聡明だった祖母。
若くして死んだ、自分の妹を気にしていたのだ。
ビーチで遊ぶ三姉妹を見る。
彼女たちが大人になって、それぞれの家庭を持ったとき、どんな
関係性になるのかを︱︱見てみたい。その中に、ボクの居場所があ
るのだろうか。
﹁お父さんと、お母さんは元気?﹂
﹁ええ⋮⋮﹂
無難な質問に、無難な答えを返す。
そう︱︱父親は小さな会社を経営している。名目上は社長だが、
苦労続きなのは、子供のボクが傍目で見ていても感じ取れるのだ。
一番働いて、一番汗と涙を流している。
204
だが、不景気の風は零細企業である父の会社を容赦なく襲う。
得意先であった大手企業から、取引を一方的に打ち切られ、倒産
寸前にまでになった。
ボクたち家族の住む家も、取り上げられそうになった。
そんな時に、父の会社に資金を援助したのが汐さんだった。
意外に資産家なのだそうだ、潮屋の家は⋮⋮。
﹃如伴島﹄の不動産の殆どは、潮屋旅館の持ち物なのだ。学校の
ある場所も潮屋家の土地で、○×市からの契約料で月々の収入金額
もバカにならないそうだ。
﹃如伴島﹄の民家も、潮屋家所有の建物だった。賃貸料も多く入
って来る。
自給自足に近い、慎ましやかな生活を送る彼女たち。
旅館の業務は、ボランティアに近いのだ。
だから、破格の値段で泊まれるのだった。
﹁汐さんは、ボクの父に援助したときに、会社の清算を条件にした
そうですね﹂
彼女の目を見据える。途端、視線を逸らす汐さん。
﹁そうよ。あたしは極めてビジネスライクに徹していたの。お父さ
んの会社の財務状況を徹底的に調べさせたの⋮⋮。それで出した結
論。一時的に倒産を逃れても、時間の問題だった。株式会社を解散
して、多くの人に迷惑が掛からないようにと助言したの⋮⋮﹂
﹁それで、ボクの夢を奪ったんだ⋮⋮﹂
汐さんを見ずに言った。
﹁結果的に、そうなったことは謝る。でも、あたしの決断に間違い
205
が無かったことは確信している。キミは、お父さんの会社を継いで
どうするつもりだったの? 厳しい現状を打ち破る、革新的なアイ
デアやビジネス手腕が、キミにはあるの?﹂
聞かれ、ボクは黙る。
いじけていた。淡い夢を打ち砕かれて、自暴自棄になっていた。
﹁ボクは、汐さんに買われたんですね。こんな島になんか、来たく
はなかった。母は漠然としか言わなかった。墓参りすることは、ボ
クは断れなかった。汐さんと関係を持って、娘さんたちとも⋮⋮。
先生とも関係を持った。島とは関係ない人たちとも⋮⋮。ボクに何
をさせたいんですか? 考えてみて下さい、ボクの性別を女性に置
き換えれば、異常性が良く分かる。親の借金の形に、へんぴな田舎
の島に送られる。そこで、島の若い男たちに肉体関係を強要される
⋮⋮これは人身売買じゃ、ないですか﹂
﹁純一君は勘違いしてるね。仮定からして間違っている。キミはあ
くまでも男で、あたしたち島の連中は女だ。しかも、強要はしてな
いよ、むしろ強引に迫ったのはキミの方だよね﹂
恐い顔で睨まれる。
しゅんとなる。
﹁あたしは、よそから来る男たちから、娘を必死に守ってきた。だ
けど、純一君が、娘の中から一人を選ぶのなら、キミの希望通りに
しようと考える。でも、キミは見境が無く次々と関係を持ったね。
キミはきっと、災いを引き起こす。島に大いなる災厄をもたらすん
だ。百年前と同じようにね⋮⋮﹂
﹁百年前?﹂
顔を上げる。
﹁そう、その時は島を土砂災害が襲った。学校のある辺りに建って
いた︱︱﹂
206
﹁大雨で、お寺が海にまで流されたのですよね﹂
﹁︱︱そう﹃如伴寺﹄の建物ごと、土石流が集落を襲って大勢が死
んだ﹂
﹁今は、大丈夫なんですよね﹂
﹁学校の建物は、災害時の避難所になっている。現在の土木技術で
土地も改良されたし、大がかりな工事を行って、山の一部を削って
平らにされた。ヘリポートのあるグラウンドは、その名残なんだ﹂
﹁プシュッ﹂
汐さんは、もう一本ビールを開ける。
﹁島を、娘を守ってきた。だから、娘を泣かすヤツは許さない。そ
れが例え純一君であってもね﹂
﹁ぼ、ボクは⋮⋮﹂
﹁悲しむのは、あたしと母だけで十分だ﹂
﹁汐さんのお母さん⋮⋮早くに亡くなったと、ボクの母に聞きまし
たが、病気か何かで?﹂
顔色を伺う。ビールを飲む彼女の顔色が、一瞬変わる。
﹁自殺した。海に身を投げたんだ。北の岬から⋮⋮﹂
﹁岬? 自殺?﹂
﹁娘たちの父親が全員違うと、前に話したよね﹂
﹁えぇ﹂
打ち寄せる波を見つめる。
﹁港の父親は、外国人カメラマン。渚の父親は、島を調査に来た大
学教授なんだ。そして、岬の父親は︱︱純一君も良く知っている有
名俳優の○○ ○○なんだ⋮⋮﹂
ボクは黙る。思ったよりも大物の映画俳優の名前が出てきて驚い
た。
207
愛妻家、そして家族と共にテレビに良く出演していて、多くの人
々が見知っている。趣味は海釣り。そのために、何度もこの島を訪
れていたのだった。
﹁俳優の○○は、あたしが小さい頃から島をよく訪ねた。あたしも
懐いていたし、可愛がって貰っていた。あたしが、港を身籠もって
出産した後に、その俳優が島を訪れる。港と同じ年齢の時には、あ
たしは母親になっていたんだ。そして、北の岬の大きな岩の上で、
あたしと○○は関係を持つ。そして岬を妊娠した。純一君も気付い
ていると思うけど、娘たちの名前は、身籠もった場所にちなんでい
る。港は港の神社、岬は北の岬、そして渚は島唯一の砂浜⋮⋮この
場所なんだ﹂
﹁そうですか⋮⋮﹂
ゆね
はつね
ボクも汐さんの受精を確信する。お風呂場の音を聞く。
女の子の双子、湯音ちゃんと、初音ちゃんだ。頭に突如浮かぶ名
前。
﹁岬を身籠もったこと、そして父親が俳優の○○であること⋮⋮そ
れを母に告げたとき、母は鬼になった﹂
﹁鬼?﹂
驚いて、汐さんを見る。
﹁あたしと、お腹の赤ちゃんを殺そうとしたんだ﹂
﹁え?﹂
海を見つめる汐さん。ビールの缶にはたくさんの水滴が付き、白
い砂の上に落ちる。
﹁あたしは必死で逃げた。そして、母の告白を聞いて罵倒した。あ
208
たしの父親は、俳優の○○だったんだ。あたしは実の父親と関係を
持って妊娠をした、不義の女だった。母は父親のことを隠していた
んだ。そして父は、あたしのことを娘だとは知らされてなかった﹂
﹁え?﹂
﹁岬の父親は、あたしの父だったんだよ。実の父との近親相姦で、
岬は生まれた。母は堕胎を勧めたけど、断固として拒んだ。そうし
たら、魚を捌く大包丁であたしを追いかけて来た。あたしとお腹の
赤ちゃんを殺して、自分も死ぬんだって⋮⋮。恐かった。恐怖に震
えてしまった。母の顔は赤くなり、目が吊り上がり、まさしく鬼の
形相だった。あたしは母をなじった。母を責めた。そうすると、包
丁を置いて母は山に消えた⋮⋮﹂
ビールを一気に空ける汐さん。
﹁そ、そして?﹂
ボクは固唾を飲む。
﹁翌朝、母の遺体が北の岬近くに浮かんだ。遺書は残されてなかっ
たけれど、警察が島に来て、自殺だと判断した。母は泳ぎの上手い
人だったからね。今の岬が比べものにならないほど、潜水が得意だ
った。あたしも母に習ったし、あたしは母が大好きだった⋮⋮﹂
汐さんは言葉を詰まらせる。
﹁汐さん?﹂
しばらくの沈黙。
女性たちの歓声に混じって、波の音が聞こえてきた。
﹁⋮⋮女が悲しむのは、無しにしたいんだ。純一君、覚悟して欲し
い。キミが他の女性と関係を持つことを、とやかくは言わない。言
う権利は、あたしにはない。でも、誰かが悲しむことだけは、やめ
て欲しい。娘たちだけじゃない。先生や、東京からきた人たちを泣
かせたら、あたしは純一君を許さないからね﹂
209
ロング缶を二本空けて酔ったためか、座った目でボクを見据えて
いた。
﹁わ、わかりました。善処します﹂
正面を向き、答えるボク。
でも、汐さんの話には、ボクの聞きたかった事の答えはなかった。
ボクは、岬ちゃんを選ぶことしか出来ないのだろうか?
ボクの将来。
﹁お母さん、お兄さん。スイカ割りやろう!﹂
その岬ちゃんが、笑顔でやって来た。
彼女は、自身の出生の秘密を知らないんだろうな。陽気で明るく
て、真っ直ぐな性格には︱︱ボクは顔を覆っていた。
太陽が眩しすぎた。
210
﹁六日目﹂ その五
︱︱午後十二時三十五分。
如伴島、東の浜。
﹁あはは! バーベキューには、よく冷えたビールよね! あはは
はは!﹂
はしゃぐ怜香先生。驚くようなペースで、ビールを次々と空けて
いった。汐さんと、女子大生二人組と、成人している彼女たちは、
早いスピードで泥酔していく。
﹁先生、飲み過ぎじゃない?﹂
ボクは、お肉の盛られた紙皿を持って、渚ちゃんの隣に座る。
﹁あの人たち、お酒臭くてイヤ!﹂
鼻を押さえて、渋い顔をする小学生。
渚ちゃんは、アルコール類を一切受け付け無い体質なのだ。アイ
スの風味付けのラム酒で、昏倒しかけていたのだった。
﹁先生は、どうしちゃったの?﹂
ボクは指を指して尋ねる。険悪な関係になるかと思われた女子大
生たちと、サザエの壺焼きと、焼き魚をさかなにして酒盛りをして
いた。
﹁何か、意気投合していた。純一お兄ちゃんの話題でね﹂
﹁え? わ、悪口とか言ってなかった?﹂
ま、彼女たちには酷いことをしましたからね。
強引に関係を迫ったり、肛門性愛を強要したり⋮⋮。
211
﹁東京で会うんだって、先生はお盆には実家に帰るそうだから、純
一お兄ちゃんを誘って、みんなで東京ディ○ニーシーに行く約束を
したんだって﹂
﹁お盆? 東京ディ○ニーシー? ボクは聞かされて無いし、そも
そもお盆の時期には、遊園地とかは混み合うでしょうに﹂
渚ちゃんに向く。
少し日焼けしたのか、白い肌が全体的に赤くなっていた。裸に剥
くと、白と赤との対比を楽しめそう。
お風呂でシミて、痛がる姿を見るのも良いかも知れない。
︵おっと、自制しろと、汐さんに注意されたばかりだったぜい!︶
反省、反省。
﹁先生は、正真正銘の良いところのお嬢様だよ。スポンサー限定の
優待パスポートが手に入るんだって。ま、わたしはちっとも羨まし
くは︱︱ないんだからね。人混みは嫌いだからね﹂
﹁羨ましいんだ?﹂
﹁うるさい!﹂
そう言って、笑顔になる渚ちゃん。良かった、怒ってないご様子
だ。
﹁先生、お嬢様なんだ⋮⋮﹂
﹁前に話したでしょ。先生は、SAKUMAグループのご令嬢だよ。
お爺さんはグループの会長で、お父さんは社長﹂
﹁ボクは聞いてないよ。へー、SAKUMAグループ⋮⋮﹂
ボクはそこまで言って、押し黙る。
そうか、SAKUMAグループか︱︱。
︱︱鉛筆からロケットまで。
212
れいか
文房具から、軍需産業に至る重工業までも網羅する、一大企業グ
さくま
ループ。
朔麻 怜香の名前だけでは気が付かなかった。
ローマ字表記で世界に進出し、今では全世界に名前の冠たる︱︱
日本を代表する企業だ。
SAKUMAグループの一社、それが、父親の会社との取引を一
方的に打ち切り、倒産寸前までに追い込んだ。
父は、自殺まで考えていた。
﹁怜香先生は、本当にお嬢様なんだ。先生の他には、兄弟とかはい
ないの?﹂
﹁うーん。詳しくは知らないけど、先生は自分が一人娘だと言って
た。将来的には婿を取って、会社の跡を継がせるじゃないのかな。
え? もしかしてお兄ちゃんは、逆玉を狙ってるの?﹂
﹁そんなわけ⋮⋮﹂
ボクは、お酒をあおっている怜香先生を見る。そうか、SAKU
MAグループのご令嬢様か⋮⋮。
先生はもちろん、彼女の父親や祖父は、ボクの父の会社の存在な
ど知らないだろう。
グループの一企業の、一役職社員の決断だ。
︵復讐︶
心に浮かんだワード。
先生をどうするつもりなんだ?
自分に聞く。
︵先生にボクの子供を産ませて、その子をSAKUMAグループの
後継者にすえる︶
そんな考えが、頭を支配する。
213
どうすれば、妊娠は確実になるのだろうか? 生理周期とかが関
係有るのだろうか? 排卵日から数えて⋮⋮。詳しくはネットで。
﹁ねぇ、渚ちゃん。バーベキューが終わったらさ、学校に行ってイ
ンターネットを使いたいんだ。大丈夫かな?﹂
﹁うん、いいけど。何するの?﹂
﹁調べたいことがあるんだ﹂
﹁ふーん。お肉冷めちゃってるよ。もう一度焼けば、食べられるか
ら⋮⋮﹂
渚ちゃんは立ち上がり、ボクの皿を受け取ってバーベキューコン
ロに向かう。
﹁あ、ありがとう﹂
小学生の心遣いに感謝する。
﹁おーい! 渚も食べろ、食べろ。これがお前の受け持ちの量だ﹂
岬ちゃんはトングで焼けた肉を、妹の持って来た皿の上に大量に
乗せる。
彼女は焼き肉奉行の役目を買って出ていた。
﹁岬姉ェ、これはお兄ちゃんのお皿だよ﹂
妹に言われると。
﹁お兄さんも、一杯食べてね♪﹂
ボクに向けて、ウインクしてきた。
﹁そーだ! 純一君も、ビールはどうかい? あたしが純一君の年
の頃には、立派に二日酔いするほど飲みまくってたよ!﹂
汐さんが、ガハハと笑う。
﹁ダメですよ、お母さん。彼は未成年ですから、勧めるのも犯罪で
すよ!﹂
214
怜香先生が注意する。
﹁ヤダ、飲酒運転じゃないんだからさ!﹂
そういえば、他の荷物は汐さんの軽トラで運んでいたな。
この後は、完全に飲酒運転になって、一発で免許取り消しです。
﹁あはは! 楽しいね!﹂
﹁そうね﹂
由希ニャンと、麻由美さんが言う。
それを、優しい目で眺める港ちゃん。彼女はお肉は食べなくて、
焼いた野菜を一人で食べていた。
小さな口でちまちまと食べる。小食の草食動物の印象を持った。
楽しかったバーベキュー。
みんなの和気あいあいとした空気。
この雰囲気が、永久に続くと思っていたんだ。
215
﹁六日目﹂ その六
◆◇◆
︱︱午後二時四十五分。
分校、情報室。
﹁なんで、アナタがついてくるの!﹂
﹁ニャン?﹂
由希ニャンは、渚ちゃんに言われても、蛙の面に何とやら、猫に
小判⋮⋮は、違うかな。
﹁酒臭い! どっか行け!﹂
﹁ニャン、ニャン﹂
小学生に注意されても、どこ吹く風。
まきしま
ゆきこ
﹁ご主人サマは、何を調べているのニャン?﹂
牧島 由希子さんは、座るボクの肩にアゴを乗せていた。
バーベキュー後は、普段の服装に着替えていた。黄色いアロハに、
デニムのホットパンツ姿。股上の浅いデニムからは男物のパンツが
のぞく。ボクのグレーのボクサーパンツだった。
由希ニャンの戦利品。
小麦色の長い足が伸びている。
びょう
もう一方の渚ちゃん。今日は水色のワンピース姿だ。ウエストに
は黒の革製のベルトを締めている。パンクロック調の銀色の鋲が付
いている。
216
田舎の子だけど、ファッションセンスは抜群だと思うよ。
水色のカチューシャと、チョーカーをしていた。チョーカーには
猫の目のような、水色のターコイズの宝石がぶら下がっている。そ
して、同色のエナメルの靴を履いていた。白いエプロンを着ければ、
不思議の国のアリスが、絵本から抜け出したかのような出で立ちだ。
由希ニャンへの対抗心に溢れていた。
﹁どれどれ、﹃排卵日 妊娠﹄で検索、検索⋮⋮ところで、渚ちゃ
んの生理開始日はいつだったの?﹂
﹁バチン!﹂
頬を叩かれた。
﹁何するニャン!﹂
由希ニャンが牙を剥く。
﹁いいんだ、由希ニャン。それより、由希ニャンの生理はいつ? 排卵日はいつなの?﹂
﹁知ってどうするニャン? ご主人サマと由希ニャンの、子猫ニャ
ンを欲しいのニャン?﹂
﹁ニャンニャンうるさいのよ! 少しは黙りなさい!﹂
﹁フン、小学生が生意気ニャン﹂
﹁まあまあ二人共、仲良く⋮⋮﹂
﹁﹁黙ってなさい!!﹂ニャン!!﹂
二人が同時に叫んでいた。
あい、大人しくしていやす。
﹁あらあら、ご熱心ね。何を調べているの?﹂
情報室に、お盆を持った怜香先生が入って来る。
コーヒーの入った容器が四つ並ぶ。入れ立ての良い香りが漂う。
﹁いつセックスすれば、女性を確実に妊娠させられるかです﹂
217
ボクは先生の目を見て話す。魅入られて、トロンとした表情にな
っていた。
きっと濡れているかも知れない。
﹁さ、さあー、皆さんコーヒーを飲んでね。ミルクと砂糖はご自由
に﹂
﹁先生の母乳が飲みたいな﹂
ボクの口からとんでもない言葉が発せられる。普段の︱︱今まで
のボクならば、決して出ない発言だ。
﹁え⋮⋮﹂
先生は固まる。
︵やだなー。笑い飛ばして下さいよ!︶
﹁最低ィ!﹂
渚ちゃんは横目でボクを見てから、コーヒーに大量のミルクと砂
糖を投入する。
︵それじゃ、カフェオレじゃん︶
﹁美味しいニャ⋮⋮美味しいです。良い豆を使ってますね。コーヒ
ーにうるさい私も合格点です﹂
由希ニャンは語尾を言い直す。
﹁父の会社の︱︱系列のコーヒーショップから、挽き立ての豆を取
り寄せているんです﹂
怜香先生は誇らしげに言って、自分専用のマグカップでブラック
コーヒーを飲む。
﹁へー、○○コーヒーですか? 大手チェーンじゃないですか。先
生は本当にお嬢様なんですねぇー﹂
218
感心した声を漏らす、由希ニャン。
﹁高いコーヒー豆ぐらい、ネット通販で幾らでも取り寄せられるわ。
ウチには毎日のようにコーヒー飲む人がいないから、インスタント
しか置いてない﹂
渚ちゃんは、甘ったるいコーヒーをフーフー冷ましながら飲んで
いた。
﹁ねぇ、純一君。本気なの?﹂
先生は、液晶ディスプレイに映る文字列を目で追っていた。
産婦人科医のホームページ。不妊に悩む夫婦への助言の言葉が載
っていた。
﹁ハイ。先生にはボクの子供を産んで欲しいんです。お盆に帰省さ
れるんですよね。その時に、ボクを先生のご両親に紹介して欲しい
んです﹂
真っ直ぐに先生の目を見る。
﹁﹁エ?﹂﹂
渚ちゃんと、由希ニャンが同時に言った。
﹁どういうこと? 純一君﹂
先生は立ち上がり、正面から座るボクの両肩に手を乗せる。
﹁東京で会うんです。ボクの事を彼氏として、ご家族に紹介して下
さい﹂
ペコリと頭を下げる。ボクは笑顔を浮かべる。
先生は、ドキリとしていた。大きな胸を両手で押さえる。
﹁ご主人サマ⋮⋮﹂
219
﹁由希ニャンとは、東京に帰ったら毎日会おうよ。幸い、家も近い
からさ︱︱女子大生は休みも長いんでしょう? 由希ニャンの家か
ら高校に通っても良いかな。ソッチの方が近いからね﹂
﹁それって、先生が本命で、このアホ猫がセフレとでも言うの? 純一お兄ちゃん。アンタ、最低の男だね。そうやってお母さんや、
お姉ちゃんたちを泣かせたら、許さないんだからね﹂
渚ちゃんが冷ややかな目で、ボクを見下ろした。
﹁渚ちゃんも、嫉妬しなくてもいいよ。高校や大学の長い休みの時
には、島に来るし、大学を卒業したら島に住むんだ。キミのお母さ
んがそうするようにと言ってた。多分、岬ちゃんと結婚するけど、
渚ちゃんも妹として、可愛がってあげるよ﹂
笑顔を向ける。可愛がり方にも色々あるからね。
ねっちょりと舌を這わせるように、愛してあげよう。
﹁純一君。私と結婚するんじゃないの?﹂
怜香先生が、胸に手を当てて、ボクの前に出てくる。
﹁心配しなくて良いですよ。ボクは、先生の家に養子に入ります。
ボクは先生の弟になるんです。先生が産んだ赤ん坊は、SAKUM
Aグループの後継者になるんです。ボクは岬ちゃんと結婚して、島
に住む。潮屋の女性たちとの関係を続ける。そうしたら、由希ニャ
ンは島に来るかい? 通販で見つけたんだ。アナルに装着する猫の
尻尾。これと猫耳を付けて、アニマルプレイをしようよ。これで、
丸く収まるじゃないですか﹂
気持ちが晴れた。全ての悩みが解決した。
今の関係性を壊さずに、ボクの将来は安泰だ。
220
﹁バカ! 死ね!﹂
渚ちゃんは吐き捨てるように言って、情報室から出て行く。涙を
浮かべているように見えた。
﹁私は、そんな女じゃない!﹂
由希ニャンは首のチョーカーを外し、床に投げつけた。
彼女も出ていく。
﹁どうしたんでしょうね?﹂
ボクは両手を天井に向けて、呆れてしまった︱︱そんな顔で、怜
香先生を見る。
﹁純一君⋮⋮養子の件は無理よ。到底ありえないわ。祖父も、父も、
純一君が想像出来ないくらい︱︱とても厳しいの。古くさい考えに
囚われている、頭の固い人たちなの。婚約者でもない相手との子供
を妊娠したことが分かれば、私は勘当される。親子どころか、一族
全体から縁を切られてしまうの。ウソだと思うでしょう⋮⋮。でも、
本当なの。それがイヤだからこの島に来たのかも知れない。父には
いとこ
弟さんが居るし、叔父には男子の子供が三人居る。私は歯牙にも掛
けられてないの、優秀な従兄弟たちが居るから。そんな一族の面汚
しとして、私は追放させられるでしょうね﹂
顔をうつむかせる先生。
﹁純一君は、こんな私でも愛してくれるの? 子供を作りたいと思
うの?﹂
先生はボクを抱きしめる。
柔らかくて感触の良い胸が当たる。
体全体から、良い香りが漂って来る。
海水浴後のシャンプーの匂いだな。
221
﹁もちろんじゃないですか。ボクは、父の会社を倒産寸前まで追い
込んだSAKUMAグループに復讐を考えたり、先生の家の財産を
狙ったりしているワケではありませんよ﹂
偽りの笑顔で見る。
﹁お父さんの会社? 倒産? 財産を狙う?﹂
先生はボクから体を離し、後ろに下がる。
﹁怜香、このページを見てごらん。由希ニャンに、猫の尻尾付きア
ナルビーズを買ってあげようとして、見つけたんです。この、ポフ
ポフで、まぁーるいウサギの尻尾付きアナルビーズが怜香に似合う
んじゃないのかってね。先生にはバニーちゃんのコスが、お似合い
ですよ。可愛いウサギちゃんとの交尾に燃えてしまう!﹂
﹁じゅ、純一君⋮⋮﹂
ボクは逃げようとする先生を追いかける。
先生の一家に入り込む計画は無理そうだった。だが、先生を妊娠
させて、一族から追放させる。先生の行き場は、この島にしかない
のだ。
先生との子供を作る。その考えに支配される。
222
﹁六日目﹂ その七
﹁先生、ボクの赤ちゃんを産んで下さいよ。可愛い子ウサギちゃん
をたくさん、ポンポン産むんです。ね、良い考えでしょ。先生は島
に一生住めばいい。潮屋家族とローテーションでセックスしてあげ
ますよ。先生は、毎週木曜日担当です。月・火・水は三姉妹との姉
妹丼。毎週木曜日は、お肉の特売日⋮⋮。金曜日には親子丼。土曜
日には猫まんま。日曜日は安息日として空けておきますよ。さささ
⋮⋮。な、怜香いいだろ﹂
もや
頭に白い靄がかかっていた。
ボクは緩慢な動作で、先生を追い詰めていく。ゆっくりでいいん
だ。動きののろい︱︱運動音痴のウサギちゃん。教室から飛び出そ
うとして転んでいた。
カメに追い越されるウサギさん。
﹁イタイ、イタイよ純一君。本当にどうしちゃったの?﹂
ボクは先生の茶色の髪の毛を鷲づかみにする。髪の毛を引っ張り、
教室に引き戻す。先生は、恐怖で顔が引きつっていた。
︵女教師を犯すんだ!︶
頭の中の声に支配される。
彼女の服に手を掛ける。
﹁やっ!﹂
先生のブラウスのボタンが全部飛ぶ。
白いブラジャーに覆われた、大きな胸に目が行った。
223
﹁やめて! ね、やめるの!﹂
彼女が何を言っているのかが理解出来ない。
これから気持ちよくさせるのに⋮⋮。散々セックスをした間柄な
のに⋮⋮。
四つん這いになって必死に逃げる怜香先生。
片手で足首を掴んで、引き寄せる。
﹁や!﹂
反対の足で、ボクのアゴを蹴ってきた。簡単に捕まえる。
﹁いや! こんなのはいや!﹂
両足を掴み、大きく開かせる。
白いパンツを、パンストごと勢いよく膝まで下げる。
大きな臀部がのぞいていた。
﹁バックで犯されるのが好きなんだろ? な、怜香、答えろよ。女
はね、絶頂に達しているときに射精されると、妊娠しやすくなるん
だって。ネットに書いてあったよ。こんなシチュエーションに燃え
るんだろ? 濡れ濡れじゃないか。あはは、挿入OKだ﹂
肛門がひくついてボクを向かえようとしている。
でも、今回用があるのは、膣の方だった。
下半身裸になったボクは、一気にまぐわう。
﹁あー! あー!﹂
大声が学校中に響く。
224
︱︱その時だった。
﹁怜香先生! 居ないの!﹂
学校の入口から聞こえる岬ちゃんの声。なんだ? なにしに学校
に来た?
﹁バーベキューのコンロを洗ったから、返しに来た!﹂
良く通る声が、ここまで聞こえてくる。
﹁いやあ! み、岬ちゃん! 助けて!﹂
泣き叫ぶ、教師の悲鳴。
﹁怜香先生! どうした!﹂
情報室に踏み込む岬ちゃん。
目を丸くして、ボクたち二人の交合を見つめる。
﹁お、お兄さん。な、なにしているの⋮⋮﹂
急にトーンを落とし、低く喋る。彼女の声が震えていた。
﹁たすけて⋮⋮﹂
膝まで降ろされたパンストを引きずり上げて、教え子の後ろへと
逃げ込む怜香先生。
﹁み、岬ちゃん⋮⋮。こ、コレは⋮⋮﹂
しぼ
ボクの頭の靄が晴れる。急に視界が晴れてくる。
下半身剥き出しのボク。一物はみるみると萎んでいく。
﹁お兄さん。先生が泣いてたよ﹂
冷静すぎる声。
﹁こ、これは、こういったプレーなんだ。強姦ごっこなんだ。先生
はこうすると喜ぶんだよ﹂
言い訳の言葉を探す。教室の中を目線がさまよう。
225
つ
﹁ウソ! お兄さんは、アタシにウソを吐いた。渚が言ってた。お
兄さんがウソを吐くときは、視線がさまよって、右上を見るって⋮
⋮﹂
大粒の涙が、岬ちゃんの頬を伝う。
﹁み、岬ちゃん⋮⋮﹂
﹁うわーん!﹂
大泣きした彼女は、涙を腕で拭いながら学校を飛び出して行く。
﹁来ないで!﹂
先生の方は、服装の乱れを直して教室を出て行く。
二階に駆け上がり、ドアの閉まる音。鍵の掛けられる音が聞こえ
てきた。
︵あれ? なんかヤバくね?︶
ボクはゆっくりとパンツとズボンとをはく。何事も無かったかの
ように、学校をゆっくりと出て行く。
︱︱午後三時十五分。
よしはら
まゆみ
﹁アナタ、岬さんに何をしたの? 先生に何をしたの?﹂
吉原 麻由美さんだった。手を引かれているのは由希ニャンだっ
た。
﹁ぼ、ボクは⋮⋮﹂
すわせ
じゅんいち
﹁あたしは、本島に戻ったら、警察に被害届を出すつもりでした。
高校三年生の須和瀬 純一十八歳に、強姦されたってね。あたしの
226
父親は、警視庁の幹部よ。伯父は検察官、伯母は弁護士をしていて、
あたしも将来は司法関係の仕事に就こうと、大学の法学部に進んで
いるのよ﹂
麻由美さんは、頭を振る。
由希ニャンの顔を見る。大きく一度頷いた。本当の話らしい。
﹁でも、アナタの所業は段々と酷くなっている。聞いたわ。小学生
と性行為を持ったそうね。これだけでも強姦罪よ。由希子を丸め込
んだつもりでしょうが、証言者はたくさんいる。今となっては、潮
屋家の家族も、キミにとっては不利な証言しかしないでしょうね。
さっき、泣き帰る岬さんを目撃しました。彼女は追い詰められた顔
をしていたわ。何をしでかすか分からない。アナタと話そうと思い
ましたが、これから学校の電話で警察を呼びます。その間、あなた
はこの教室に軟禁されます﹂
麻由美さんは、太くて丈夫なロープをボクに見せる。
そして、ジーンズの後ろポケットから取りだしたのは、スタンガ
ンだった。ボクが抵抗するなら、容赦なく押しつけるつもりなのだ
ろう。
﹁先生も、襲ったのですね。このケダモノ! 先生にも証人になっ
てもらいます。由希子も目が醒めたそうよ。どうして、こんな男に
夢中になって、言いなりになっていたのか理解出来ないと⋮⋮﹂
由希ニャンを見る。ボクから目を逸らした。肩が震えている。ボ
クは確信する。ボクへの思いは断ち切れていないのだ。
﹁ゴメンなさい! 純一お兄さんが、迷惑を掛けてしまってゴメン
なさい! アタシが責任を取る!﹂
岬ちゃんの大きな声。
227
戻って来たのだった。
右手には、大ぶりの刺身包丁が握られる。
﹁岬さん⋮⋮アナタ﹂
麻由美さんが半歩下がる。岬ちゃんの覚悟に腰が引けてしまった
のだ。
﹁だから、お姉さん。警察に連絡するのはヤメテ下さい。アタシが
問題を全て解決する! 小さな島だから、警察が来ると島のみんな
に迷惑が掛かる!﹂
﹁そうは、言っても⋮⋮﹂
﹁アタシが、純一お兄さんを殺す! そして、アタシも死んで責任
を取る!﹂
にじ
大きな包丁をボクに向けて、躙り寄ってくる。
︵え? 冗談だよね?︶
﹁岬、やめなさい! 包丁持って血相変えて飛び出したから、何事
かと思ったら! やめるのよ! 一切の責任は、母さんにあるから﹂
汐さんが裸足で駆けつけていた。
﹁やめて、岬姉ェ。こんな男のために死ぬことはないよ﹂
冷静な渚ちゃん。
︵や、あの⋮⋮︶
ボクは逃げるべき場所を探す。どうやら穏便には済まないようで
⋮⋮。まさか、刃傷沙汰。否、殺人事件にまで発展するとは⋮⋮。
﹁あはは﹂
笑うしかなかった。
228
﹁何で笑うの! 情けないよ! 何してるんだよ、お兄さん! 一
度は結婚を考えたんだ。妻になろうとしたんだ。情けないのは、ア
タシか⋮⋮﹂
大粒の涙を流す岬ちゃん。その背後に立つ渚ちゃん。
﹁岬姉ェ。やめな、死ぬなんてバカげているよ﹂
渚ちゃんは、包丁を取り上げる。
︵ホッ⋮⋮︶
ボクは胸をなで下ろす。
﹁ねぇ、純一お兄ちゃん。わたし、言ったよね。お姉ちゃんを泣か
すヤツは許さないって⋮⋮﹂
水色のワンピースの少女。包丁を持つ右手が、だらんと下がる。
﹁お兄ちゃん。わたしは十二歳なんだ。殺人を犯しても刑務所には
送られない。少年院には送られないんだ⋮⋮。ね? 麻由美お姉さ
ん﹂
﹁そ、そうね。十四歳に満たない少年・少女の犯罪は保護観察処分
にされるのが通常だけど、殺人ならば、児童養護施設に︱︱まずは
送致されるでしょうね﹂
﹁そう⋮⋮。でも、強姦した相手を殺したのなら、情状酌量の余地
はあるんですよね﹂
﹁え、ええ﹂
﹁それに、犯罪を犯しても、新聞やテレビに名前はでませんよね﹂
﹁ええ。でも、アナタ⋮⋮﹂
渚ちゃんはボクへと向き直る。
229
﹁純一お兄さん。あたしが殺してあげるよ。そうすれば、将来を悲
観して悩むこともなくなる。全ての煩悩から解放されるんだ。もう、
我慢出来ない。いずれは島のみんなが泣くことになるなら、決断は
早いほうがいいでしょ⋮⋮﹂
渚ちゃんの顔がうつむいた。
﹁渚、やめなさい。ここは母さんが⋮⋮。渚?﹂
汐さんは驚いた顔で自分の娘を見る。
少女は笑顔さえ湛えていた。しかし、顔は真っ赤になり、目が血
走って吊り上がっていた。
﹁コ・ロ・ス⋮⋮⋮⋮﹂
歯を見せて笑っていた。
﹁渚、アンタ⋮⋮あのときの︱︱母と同じ顔をしている﹂
︵鬼!?︶
ボクは慌てて逃げ出した。ボクを囲んでいた連中は、観念してい
たと思ったみたいだった。油断してた。
虚を突かれて、ボクに逃げ出すチャンスを与えていた。
﹁うわーあ!!!﹂
声を張り上げて、山に入る。
夢中で走る。途中、後ろを振り返るが誰も追ってこない。
だが、夢中で逃げ続ける。
道も無い、木立の中を走り続ける。
230
﹁ピカッ!﹂
光を見た。
﹁ガラガラガラ!﹂
大きな音を聞く。何が起こったのか分からなかった。
立ち止まる。
途端、大粒の雨が空から一斉に落ちてきた。
先ほどの光と音が、カミナリだと知る。
ボクはあっという間に、全身がずぶ濡れになっていた。
◆◇◆
如伴島、山中。
今が何時なのか分からない。時計も、携帯電話も旅館の客間に置
いてきてしまっていた。
暗い雲と、白い霧が島を覆う。
何とか届く、弱い太陽光線を頼りに山の中をさまよう。
﹁なんてことだ。なんでこうなったんだ﹂
言葉を出すが、荒い息の音しか聞こえない。
寒さを感じて、震える。
濡れた服で体温が奪われる。風も出てきた。
夕刻なのか、気温も下がっている。
﹁ごめんなさい。ごめんなさい﹂
231
震える唇で、それだけを繰り返す。
﹁あ!﹂
木々の間に、白い影を見た。人影?
白い幻影はユラユラと揺らめいている。
近づいて来る。
︵ああ、死に神だ。亡霊だ。ボクを連れて行こうとしてるんだ︶
観念し、その場に崩れ落ちる。意識が遠くなる。
仰向けのボクに、雨だれが容赦なく落ちていく。
﹁ね、しっかりして!﹂
人の声を聞いた。
女の声だった。
232
﹁七日目﹂ その一
︱︱午前零時十二分。
如伴島、西山中。
﹁こ、ここは?﹂
︵い、生きてた!︶
首を上げて、内部を見渡す。
六畳ほどの広さの木造の建物だった。床や壁には古い板が使われ
ている。だが、綺麗に掃除が行き届いているためか、清潔感を感じ
る。
内部は割と明るい。
照明の正体は、キャンプ用のランタンだった。
みなと
暖色系の灯りを見て、安心をする。
﹁⋮⋮起きたの?﹂
しおや
声の主を見る。
旅館の長女、潮屋 港ちゃんだった。
︵いったい、どうして?︶
彼女は紺のブレザーの下に、白いブラウス。首には赤いリボンを
していた。茶色いチェックのスカート⋮⋮。話しに聞いた、本土の
高校の制服姿だった。
板の上を、くるぶしで折り畳まれた白いソックスで歩く。
か、可憐だった。地上に舞い降りた天使だった。
233
はり
建物内の細い梁に、白い半透明の雨合羽が掛けてあった。水滴が
落ちる。
この姿を見たのだ。
白い人影の正体。
その隣には、ボクの着ていた変なイラストのプリントTシャツと、
迷彩柄のハーフパンツがぶら下がる。
黒のボクサーパンツは、床に無造作に置いてあったな。
︵じゃあ、ボクが今、着ているのは?︶
自分の格好を見る。
グレーのスウェットの上下。普段、港ちゃんが着ている服装だっ
た。
男としては小柄で華奢なボクだから、女物の服でも着れてしまう
んだな。
しかし、手も足も丈の長さはピッタリだった。
胴長短足の、典型的日本人体型を嘆く。
﹁ぼ、ボクの服を脱がして、これを着せてくれたの?﹂
﹁⋮⋮うん﹂
外の様子をうかがうために、細木が格子に組まれて障子の張られ
た扉を少し開く港ちゃん。
大きな雨音が聞こえる。豪雨は、いまだ続いている。
︵この子に、裸に剥かれたんだ⋮⋮ボク︶
場所柄もわきまえず、スウェットのズボン前が膨らんでしまった。
﹁ここは、港神社のほこらの中なんだね﹂
234
内部の様子から推察する。
﹁⋮⋮うん﹂
しで
﹁神社の近くに大きな木が生えてない? 神木とかいうやつ﹂
﹁⋮⋮うん、生えてる﹂
﹁その木には、しめ縄がしてあって、紙垂が垂らしてない?﹂
﹁⋮⋮しで?﹂
﹁習字に使う半紙を切って、カミナリみたいなギザギザにしてある
やつ﹂
﹁⋮⋮うん、垂らしてあるよ﹂
﹁ドーン!! ゴロゴロゴロ﹂
途端、閃光を見て、轟音を聞いた。
カミナリが近くに落ちたのだ。
タイミングが良すぎて、冷や汗が額から首筋まで伝う。
﹁そ、その近くに、ボクの身長よりチョッと低い、朱色の鳥居がた
くさん並んで立ってなかったかな?﹂
﹁⋮⋮立ってる﹂
﹁そうか、夢で見た風景と一緒だ﹂
﹁⋮⋮夢?﹂
港ちゃんは不思議そうな顔をして、ボクの隣に体育座りする。
﹁港ちゃんは、ボクが恐くない?﹂
﹁⋮⋮今は、恐くない﹂
︵よ、よかった︶
ボクは無言で胸をなで下ろす。
渚ちゃんと、岬ちゃんから命を狙われたボクには︱︱彼女にしか、
すがることが出来ない。
235
﹁そうだ、キミはどうして山の中を歩いていたの?﹂
大雨の山中を、高校の制服の上に雨合羽を着て歩く︱︱不思議少
女。
突然に出くわしたなら、恐怖で昏倒してしまうだろう。実際、ボ
クは気絶した。
﹁⋮⋮山は、ウチにとって安心出来る場所。家の中が不穏な空気の
時は、山に入る﹂
﹁へー、そうなんだ﹂
不穏にしてしまったのは、全部ボクの責任ですけどね。
苦笑いを浮かべて、彼女を見る。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
港ちゃんは黙る。
その沈黙が、一分以上は続いたと思う。
耐えきれなくなり、ボクの方から話し出す。
﹁あ、あの。助けてくれてありがとう。キミが、この場所まで運ん
でくれたんだね。重かったでしょう?﹂
﹁⋮⋮倒れていたのは、神社の直ぐ裏手。足を持って、引きずって
来た﹂
﹁そ、そうなんだ。で、何で、制服姿?﹂
ボクは、彼女の方に体を向ける。
短いスカートからスラリと伸びる、白くて長い足に目が行った。
肉付きの良い、ムチムチ太ももが好みのボクでも︱︱あまりの美
脚には︱︱ツバを飲み込んでしまう。
﹁ゴクリ﹂
ほこらの内部で、音が大きく響く。
236
﹁⋮⋮制服姿を見せると約束したから。久しぶりに着てみたら、渚
ちゃんと母ちゃんが血相変えて出て行くのを見た。ウチは、悪い予
感がして山の方に向かった﹂
﹁悪い予感? そ、それよりも﹃ウチ﹄って自分の事を呼ぶんだね﹂
﹁⋮⋮へ、変?﹂
﹁ううん。とっても可愛いよ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
赤くなって、うつむいていた。可愛かった。
﹁ランタンとか、用意いいね﹂
唯一の照明器具を指差す。
﹁⋮⋮山の道具をリュックに入れてる。いつも、持ち歩いている﹂
指差した先、この場所の隅にひっそりと置いてあった。女子が持
つには本格的すぎる大きさだと思った。
ボクは立ち上がり、リュックサックを持ってくる。
意外と重たかった。
﹁な、何が入ってるの? 女の子がこういうの珍しいね。お、寝袋
もあるし、バーナーにコッヘルと⋮⋮カップ麺?﹂
中身を漁る。これが﹃山ガール﹄とかいうやつかな。
﹁⋮⋮詳しいね﹂
﹁うん。子供の頃は、父とよくキャンプをしてたんだ。東京から車
で行ける範囲だけどね。飯ごうでご飯を炊いたり、カレーライスを
作ったり⋮⋮﹂
﹁ぐー、きゅるきゅる﹂
お腹が鳴った。
ボクじゃないよ。ボクの胃袋には、鳴るべき食品が残されていな
い。
237
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
耳まで赤くなる港ちゃん。
﹁カップ麺があるね。水はあるの?﹂
﹁⋮⋮水筒の中﹂
﹁ああ、そうか﹂
リュックの中の品を全て出す。
割と本格的な、登山・キャンプ用品が揃う。
バーナーにマッチで火を付けて、コッヘルに水を入れて上に乗せ
る。
﹁⋮⋮使いこなしてる﹂
﹁キャンプをしてたと言ったでしょ。ボクの父は、形から入る人な
んだ。道具だけは一流の品を揃えたがる﹂
﹁⋮⋮その道具たちは、ウチの父ちゃんに送ってもらった﹂
﹁お父さん?﹂
汐さんから話しに聞いた、アメリカ人のカメラマン。港ちゃんの
顔を見るに、きっと男のボクでも、ウットリ見惚れるほどの美男子
なんだと思った。
﹁⋮⋮父ちゃんは、今は東京で一人暮らしをしている。世界中を旅
して、気に入った道具を見つけると、ウチに送ってくれる。手紙も
やり取りしている。父ちゃんは、日本語を書くのは苦手だけど、一
生懸命漢字を混ぜて書いてくれた。ひらがな︱︱ばっかりだけどね。
⋮⋮えへへ﹂
胸に手を当てる港ちゃん。ボクに微笑んでくれた。
始めての笑顔だった。破壊力抜群です。
︵ズッキューン!!︶
ボクの心は、確実に射貫かれてしまった。
238
﹁優しいお父さんだね﹂
岬ちゃんの話だと、港お姉ちゃんは英語が壊滅的だと聞いた。英
文を読んで、意味を理解することが難しいのだろう。
父親のいじらしさにも、キュンとなる。
﹁⋮⋮父ちゃんは結婚していたけど、離婚して今は一人暮らし。ウ
チらを東京に迎えて、一緒に住みたかったみたい。だけど、母ちゃ
んに断わられた︱︱あ、お湯沸いてるよ﹂
ボクにもたれかかり、コッヘルで沸き立つ様子を指差す。
彼女自身から、良い香りが立つ。
雨も降り、湯気も立ち、湿度が上がって匂いを感じやすくなった。
外国人特有の、多少スパイシーな体の匂いが、彼女には合ってい
たな。
﹁カップ麺は一つしかないんだね⋮⋮﹂
︵しかも、シーフード風味⋮⋮︶
ボクはゆっくりとお湯を注ぐ。こぼしてしまったら勿体ないから
ね。
﹁アチチ﹂
お湯が散って、ボクの手に掛かった。
﹁⋮⋮大丈夫?﹂
﹁うん﹂
笑顔を返す。
同じく、笑顔が返ってきた。少しだけ、心が通じたと思った。
239
﹁七日目﹂ その二
﹁⋮⋮これ、箸﹂
手渡されたのは割り箸だった。島には無い、コンビニ名の入った
ビニールで包装されている箸。本土にしかない、コンビニチェーン
店の品。
﹁コンビニから、たくさん貰って来ちゃったんだ?﹂
﹁⋮⋮岬ちゃんは、こういうのを一杯持っている。ハンバーガショ
ップから、紙ナプキンとかたくさん持ち帰る。恥ずかしいからヤメ
テ︱︱と、言っても聞かない﹂
やりくり上手な岬ちゃんの姿を想像する。ソレを止める港ちゃん
の姿が浮かび、微笑みを返す。
﹁仲の良い、姉妹だね﹂
︵ま、妹二人には、殺されそうになったけどね︶
﹁⋮⋮あ、ありがと﹂
頬を赤らめる姿は、抜群に可愛かった。似合っている制服が、そ
れに拍車を掛ける。
﹁そろそろ、出来たんじゃない?﹂
カップ麺を指差す。
﹁⋮⋮先に食べて﹂
﹁いや、キミから食べてよ。具の魚介類は食べられないんだ﹂
﹁⋮⋮スープも魚介だよ﹂
﹁それは、平気なんだ﹂
﹁⋮⋮変なの﹂
240
へへへと笑い、先に食べ始める。彼女が割り箸を割ると、変な形
で割れていた。片方が極端に短い。
そんな様子も可愛くて、愛おしかった。
﹁暖まる?﹂
﹁⋮⋮うん。暖まる、そっちこそ体を温めないと﹂
三分の一を食べた時点で、箸と一緒にカップ麺を差し出して来た。
すす
﹁こんなに食べて良いの? ありがとね、ズズズッ﹂
受け取るなり、勢いよく麺を啜る。
﹁ブフォ⋮⋮、ゴフォ。ご、ごめん、が、がっつき過ぎた﹂
彼女の差し出す水筒の水を飲む。
︵甘露、甘露⋮⋮ため池の水、ウメェ!︶
暖かいカップ麺を胃袋に流し込み、ボクの食欲は満たされていく。
おおごと
﹁⋮⋮ゆっくり食べてね。発見が遅れていたら、低体温症で死んで
たんだよ﹂
彼女の告白。
﹁え? そんなに大事だったの?﹂
その後、スープを一滴残らずに飲み干す。
﹁⋮⋮体が冷たかったので、濡れた服を脱がして裸にした﹂
︵美少女に、裸に剥かれるボク⋮⋮ウヒョーィ!︶
﹁え? その後は、港ちゃんが裸になってボクを温めたりしてくれ
たのかな? あははは﹂
冗談のつもりだった。
﹁⋮⋮うん﹂
大きくうなずく港ちゃん。
241
﹁え? 本当?﹂
﹁⋮⋮ホント。こういったサバイバル術は、お父さんの送ってくれ
た本にも書いてあった﹂
全裸の彼女が、同じく全裸のボクに重なる姿。
想像して興奮する。
食欲が満たされてしまった。そうなると、次の欲求が鎌首をもた
げる。
でも、慎重に⋮⋮慎重に。
ここで、焦るから数々の失敗を繰り返したのだ。やっと、学習し
たよ。
﹁え、どんな風に温めたの? 後学として聞きたいな。ね、教えて
港ちゃん﹂
﹁⋮⋮いじわる﹂
プイと横を向く。
﹁あはは、冗談冗談。でもありがとうね﹂
彼女の右手を、両手で優しく包み込むように握る。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
黙り、体を硬くする港ちゃん。スキンシップには早すぎたかな。
﹁あ、ゴメン。自然に手を触ってしまった﹂
﹁⋮⋮だ、だいじょぶ、少し驚いただけ﹂
彼女は手を引っ込める。柔らかくて暖かい手だった。
細くて長い指。
︵その手で、掴んで欲しい︶
どこの場所かは、ナイショだぞ。
じっと、彼女の左手を見つめる。
それが、ブレザーのポケットに入って行く。見届ける。
242
﹁⋮⋮た、食べる?﹂
差し出されたのは板チョコだった。ボクは受け取り、アルミホイ
ルが付いたまま二つに割る。半分を彼女に返す。
﹁こんな物も、隠し持っているんだ﹂
︵魔法の制服︶
顔を赤らめ、チョコを食べ始める港ちゃん。小さく噛むと変な形
に割れて、口から落っことしそうになる。手で受けていた。
ボクの方は、彼女の様子をつぶさに観察していた。
ブレザーの下の白いシャツを見る。少し下着が透けて見えた。清
楚な彼女らしい、純白のブラジャーだった。
きっとパンツも同色なのだろう。
胸を見る。赤いリボンの乗ったその膨らみは、小さかった。渚ち
ゃんよりは大きいが、一つ年下の岬ちゃんには完全に負けている。
視線を首元に移す。細くて長くて真っ白だった。
︵首を思い切り絞めてみたい。のど笛を押しつぶして、声が出ない
ようにして⋮⋮︶
どす黒い感情が湧いてきた。
ボクは首を振って考えを追い出す。これで、失敗してきたんだ。
欲望に流されるな!
しっかりしろ! ボク!
﹁こ、この神社には、何か︱︱いわれとかないの?﹂
板チョコを一口頬張ってから、彼女に聞く。
甘みが、脳天まで突き抜ける。
︵うーん。チョコうめぇ!︶
血糖値が上がり、頭がスッキリとしてきた。
243
天井を見上げる港ちゃん。
﹁⋮⋮あれ﹂
天を指差し、ランタンを高く掲げる。
ボクも目線を真上に向ける。
﹁絵だ、観音様?﹂
天井一面に、絵の具で描かれている。所々は剥げ落ちているが、
にょしんに
ほぼ完璧な形で残る︱︱古い絵だ。
﹁⋮⋮そう、マリア観音。如熾尼様が描かれた絵だと、言い伝えが
にょしんに
ある﹂
﹁如熾尼?﹂
﹁⋮⋮江戸時代に、この島に来た尼さん﹂
﹁岬ちゃんから聞いたよ。書道や絵が得意な、女のお坊さんだよね。
でも、マリア観音って、それって﹂
﹁⋮⋮この島は、実は隠れキリシタンの島なの。赤ん坊を抱く、慈
愛に満ちた観音様の図。これは、聖母マリアとその子キリストを表
した絵なんだ﹂
彼女は天井の一点を指差す。確かに、丸々と太った赤ちゃんを抱
いていた。
﹁え? じゃあ﹂
﹁⋮⋮そう、この島には島原の乱の前後、難を逃れた女性キリシタ
ンが多く渡ってきた。如熾尼様は、その一人だったの﹂
港ちゃんは、ランタンを降ろす。下からの光で、逆向きの影が顔
に出来る。
﹁え、島原の乱は、確か千六百三十七年。関ヶ原の合戦は千六百年。
尼さんと若い僧は、関ヶ原の合戦後、取りつぶしにあった武将の子
供だと聞いたよ。時代が微妙に合わない﹂
244
ボクはランタンを動かし、彼女の顔にキツイ影が出ないように工
夫する。
とうとうと語る彼女の顔。正直、恐かったんだ。
何者かが乗り移っていそう。
よろずや
おお
﹁⋮⋮お婆ちゃん先生が聞き取りしたのは、当時、百歳を越えてい
かいえき
た萬屋の大お婆ちゃんからなの。それを、岬と渚がレポートにまと
めた。江戸時代初期に改易された大名の子供であるのは間違いない
けど、微妙に真実が隠蔽されているんだ﹂
﹁隠蔽? え? 詳しく﹂
語る港ちゃんの姿は、顔付きがますます神々しくなってきた。
﹁⋮⋮お婆ちゃん先生は、カトリックの教徒なんだ。島の歴史を調
べている間に感化されたみたいなの。だから、事実が隠された言い
伝えの方を、そのまま発表させた﹂
﹁じゃあ、この島の人はキリスト教徒なの?﹂
墓に十字架が彫ってあった。それは、そのなごりだ。
では、昔あったという﹃如伴寺﹄の正体は⋮⋮。
﹁⋮⋮そんな事は無い。でも、風習だけが残っているの。赤ちゃん
が生まれたら、川から汲んだ水で全身を洗い、額に朱で十字の紋様
を描く。これは洗礼の儀式にも似てるけど、本来のキリスト教とは
かけ離れていると、お婆ちゃん先生が言ってた﹂
﹁ふーん﹂
ボクは港ちゃんの足元を見た。短いスカートから見える細くて長
い足。
組み敷きたいと思った。
﹁⋮⋮如熾尼様の母上は、ポルトガルから来た宣教師が、女性信徒
245
に産ませた子供だと聞いたの。その如熾尼様は、ウチみたいに金髪
で青い目だったという話﹂
﹁へー⋮⋮﹂
ボクはゆっくりと、港ちゃんの後ろに回り込む。
﹁綺麗な髪の毛だね。お父さんからだけじゃなくて、過去からの色
々な因縁が影響して、キミに現れる﹂
彼女の髪の毛を手にとって、匂いを嗅ぐ。
シャンプーの匂いだろうが、とても芳醇な香りだった。
﹁⋮⋮は、恥ずかしいよ。や、やめて﹂
彼女は、ボクの持つ髪の毛を奪い返す。
﹁この場所で、キミのお父さんとお母さんが関係を持ったんだね﹂
﹁⋮⋮え?﹂
﹁キミのお父さんの話を聞きたいな﹂
彼女の背中にボクの胸を当て、ピッタリと寄り添う。
相手の体は硬直したが、嫌がった顔では無かった。
﹁⋮⋮ウチの父ちゃんは、世界的に有名な冒険カメラマンなの。人
が行かないような場所で、写真を撮るんだ。有名な外国の雑誌にも、
写真がたくさん載ってるよ。この島の西側は断崖絶壁が続くけど、
波に洗われた奇岩が、雄大で素晴らしい風景を作るんだ﹂
﹁へー、それで、この﹃如伴島﹄を訪れたんだね﹂
後ろから彼女のお腹を抱く。抵抗はなかった。
しかし、彼女の首筋を汗が一筋流れるのを見た。舐めたいと思っ
たがガマン、ガマン。
﹁⋮⋮ど、どうしたの? いきなり﹂
﹁話を続けて⋮⋮﹂
耳元で囁く。港ちゃんは少し身震いする。
246
﹁⋮⋮うん﹂
﹁そうして、お父さんとお母さんが出会ったんだね﹂
﹁⋮⋮出会いは最悪だった。そう︱︱母ちゃんが言ってた。島を案
内して、この神社に差し掛かったら、無理矢理にほこらに押し込ま
れたんだ﹂
﹁じゃあ、この場所で、汐さんはお父さんにレイプされたんだね﹂
247
﹁七日目﹂ その三
﹁⋮⋮⋮⋮!﹂
港ちゃんは、驚いた顔で後ろを向く。
ボクは、リュックの中から失敬したスイス製のアーミーナイフの
刃を、彼女の首元に押しつけていた。
白くて長くて細い首。
下から上へと、舌で舐め上げる。彼女の全身に鳥肌が立つ。
﹁こんな風にお父さんは、汐さんを襲ったんだと思うよ。さあ、パ
ンツを脱ぐんだ!﹂
﹁⋮⋮パンツを? どうして?﹂
港ちゃんはいたって冷静だった。それが逆にボクの嗜虐心をそそ
る。
泣きわめき、懇願する姿。
見てみたいと思った。
﹁こんなに可愛い制服姿なんだから、着衣のままレイプしてあげる
よ。可愛いお尻を抱えて、バックから犯すのもイイかもしれない﹂
ボクはいきり立った一物を、彼女の背中に押しつけた。
﹁⋮⋮そう。そうしたいんだ﹂
諦めて、達観した顔付きだった。彼女はゆっくりと立ち上がり、
自分のパンティーに手を掛ける。
﹁脱げ!﹂
﹁⋮⋮言われなくても、やってる﹂
248
ボクを下げずみの目で見る。
あっさりと脱いで、ボクの方に投げて寄越す。予想通り、純白の
美しいパンツだった。
匂いを嗅ぐ。外人娘特有の香ばしいスメルだった。
嬉しくなった。嫌らしい笑みを浮かべていたと思うよ。
﹁そこで、四つん這いになるんだ﹂
ナイフを付きだして命令する。
﹁⋮⋮分かったわ﹂
淡々とした行動。彼女には、感情が無かった。
﹁⋮⋮こう?﹂
﹁違う! お尻をこちらに向けて高く突き出せ。手と頭は、一緒に
床に付けるんだ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
黙ったまま、ボクのリクエストに応えていた。まったく潮屋の女
ども、否、島に住む若い女は、何てチョロいのだろうか。
可愛い臀部がコチラを向いた。小さくて、赤ちゃんの肌のように
ツルツルだ。
ボクは慌てて、灰色のスウェット下を脱ぎ捨てる。
彼女の剥き出しの性器に、背後からペニスを押し当てる。
白い肌に、赤黒いペニスが異形すぎる。
ランタンからの光で、大きな影を作る。滑稽な姿だった。
﹁あはは、行くよ﹂
返事はなかった。彼女には痛みしか残されないだろうが、知った
凝っちゃ無い。
ボクは明日、いや、今日の朝早くの船で脱出を図るのだ。
249
五時には出港し、東京まで逃げおおすのだ。
それまでの時間、彼女を犯し続ける。
最初に見かけてから、島の思い出の総仕上げは、彼女だと決めて
いた。
チャンスが無ければ、部屋に侵入して強姦するつもりだった。
最後に、こんな美少女を抱けるのだ。これで、いつ死んでも本望
だ︱︱。
︵死?︶
ボクは死ぬつもりなど無い! 長女に激しく抵抗されたのなら、
首を絞めて⋮⋮。最終的には⋮⋮。
ゆっくりとペニスを侵入させる。右手を前に回して腰を押さえ、
逃がさないようにする。左手は、シャツの上から豊かではない胸を
まさぐる。
反応は返ってこない。
挿入は完遂されて、ボクの恥骨が柔らかい臀部に触れる。しかし、
乾いた印象だった。
彼女の皮膚感だけではない、感情もいたってドライなのだ。
声も漏れては来ない。
﹁ふぅ⋮⋮﹂
彼女の膣に、ペニスを収めることが出来た。暖かくて柔らかい内
部。それを味わいたくて腰を動かす。
︵あひゃ!︶
250
︱︱途端、ボクは射精してしまった。
突然の快楽がボクの下腹部を襲い、あっという間に果ててしまっ
た。
しおや
みなと
︵その、なんだ、その⋮⋮︶
彼女の⋮⋮、潮屋 港のあそこは、実に具合が良いのだ。
童貞だったボクが、汐さんで初めてを経験したときも、こんなに
呆気なくは無かった。
彼女の膣の中に、別の生物が潜んでいる。そんな感想を持ってし
まう。
でも、ボクは若いのだ。抜かずに、二回戦目に挑戦する。
︵だめだった︶
﹁ああ、あああん!﹂
情けない声を出したのはボクの方だった。
なんだ、なんなんだこの性器は?
ボクは、良いところを見せられず、呆れるほど短時間で放出する。
早漏の例えである、三こすり半も動けなかった。
﹁⋮⋮満足した? もう、いいでしょ﹂
感情の無い言葉。
その言い草に逆上する。彼女は少しも感じていないのだ。
﹁くそ! くそぅ!﹂
再び、勢いを取り戻したボクのペニス。だが、一定の大きさにな
ると、彼女の膣は凶暴になり反応をみせる。センサーでも埋め込ま
れているのか、瞬間的に自動攻撃を開始する。
ネットで見かけた、名器の条件。
251
︵ミミズ千匹に、数の子天井。たこ壺。こういう時には素数を数え
れば良いのだな⋮⋮1、2、違う! ⋮⋮あああーん、あはーん︶
果ててしまった。
﹁あっ⋮⋮﹂
今度は、縮こまったボクのエクスカリバーに向けて、容赦なき技
が繰り出される。
何カ所かで締め付けて来て、それが内部で胎動している。膣の肉
壁のひだひだが、意識を持った生物のように、ボクの剣にまとわり
ついて来る。
︵やめろ! 剣の切れ味が鈍る!︶
それが、吸い付くような感覚を与えてくる。聖剣の霊力を奪って
行く。
︵それだめ、だめだよ⋮⋮無限に吸い取られてしまうー︶
﹁み、港ちゃん! チョッとタイム!﹂
そう言って、剣を抜く。
その時にも、イッテしまったのはナイショだぞ。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
﹁は、はあ⋮⋮﹂
肩で息をするボク。抜き去った後も、新たな獲物を狙っているか
せんもう
のように、彼女の小陰唇がヌラヌラと動いていた。
繊毛を動かす、ゾウリムシのように思えて来た。
︵こ、恐い!︶
偽らざる気持ちだった。
﹁もう、終わりかェ?﹂
252
声を聞いた、み、港ちゃんの声じゃ無い!
﹁だ、誰だ!﹂
背中を向ける制服姿の彼女を抱き起こして、顔を向けさせた。
ニヤリと、笑みを湛えていた。妖艶で淫猥⋮⋮。
にょしんいん
﹁わらわか? わらわは洗礼名は﹃らふぁえる﹄。如熾院との名前
も持つ。ただの尼僧﹂
そう言った港ちゃんはこちらを向き、あぐらをかいて座る。股間
から流れ出るボクの精液。
うつむきがちな港ちゃんと違い、真っ直ぐにボクの目を見てきた。
253
﹁七日目﹂ その四
にょしんに
﹁あ、あなたは如熾尼様ですか?﹂
下半身裸のボクは、彼女の前に正座する。
﹁そうじゃ。ふふふ、甘い味がするのぉ。これはそちの体液か?﹂
指で受けた精液を、いやらしく舐め取っている。
テラテラと光る人差し指と中指。ランタンの炎で妖しく見える。
ま
驚きは少なかった。潮屋港に憑依した人物。島の伝説に触れた。
﹁そ、そうです。な、中であっという間に果ててしまいました﹂
ら
﹁そう、固くなる事はないェ。固くするのは、ホレ、その股間の魔
羅だけで良いのじゃ﹂
彼女の切れ長の目が、ボクのペニスを見つめる。
ていはつ
しも
恥ずかしい話だが、正座しながら︱︱ボクのペニスは勃起して︱
︱﹃こんにちは﹄していた。
﹁め、面目ないです﹂
﹁恐縮しなくてもよい。わらわと楽しみたいのであろう?﹂
足を大きく開いて、性器を両指で開いて見せつける。
港ちゃんの股間。金色の陰毛が、少しばかり生えていた。
﹁は、あ、はい﹂
かむろ
ボクは、立ち上がり、彼女の足を抱える。
こがね
﹁どうじゃ、わらわは禿にはせず剃髪にしてしまった。じゃが、下
の毛は黄金色で綺麗じゃろ﹂
そう言って、自分の頭を触り驚いていた。
254
﹁長い髪じゃ⋮⋮﹂
﹁長くて綺麗な髪の毛ですよ。似合っています﹂
ボクの言葉に気をよくしたのか、彼女の方から寄ってきて、ペニ
スに腰を降ろしてくる。
受けるボクは、慌てて足を崩しアグラ姿に移行する。
﹁そうじゃろ、そうじゃろ。わらわの髪は、母の父と同じ色。︱︱
熱烈な宣教師が棄教し、転宗し、一転してキリシタンへの弾圧者と
なった。﹃転び神父﹄と言えば有名じゃぞ。無垢な信徒の娘を、騙
して、乱暴して身籠もらせた。その子がわらわの母じゃ、そして母
ごんだいなごん
は、とある外様大名の側室となる。わらわが生まれて、父は改易を
逃れるため、時の権大納言に、この身を差し出そうとした﹂
港ちゃんの形を取る尼は、ボクのペニスにまたがって腰を動かし
言う。
みなもとのあそん
散々放出した後なので、快楽の波に流されるのを何とか踏みとど
まる。
﹁だ、大納言って︱︱と、徳川御三家?﹂
﹁いいや、その後の右近衛大将、征夷大将軍の源朝臣・家光公じゃ﹂
﹁と、徳川家光? しょ、将軍様じゃぁ∼ないですか。アナタは、
お、大奥に送られたの?﹂
驚いて相手の顔を見る。
ニヤリと笑って、ボクの手をシャツの下に入れさせた。
ブラの下に潜り込ませ、小さいが柔らかな果実を味わう。
﹁いいや、それを逃れるため、禅寺に身を寄せて出家した。祖母も、
母も、わらわもキリシタンであったが、仕方がなかったのじゃ﹂
そんな尼さんは、男の上にまたがって腰を振るう。
ああ、下半身が痺れてきた。甘い感覚。
255
彼女の身体の中に、ペニスが溶かされて吸収されてしまう感触。
﹁敬虔なキリシタンなのに、こんな性技を持っているなんて⋮⋮﹂
再び、彼女の膣内に放出しそうになる。
﹁わらわは、多くの男共に陵辱を受けた。ほんの小娘の頃より、男
たちの慰み者にされて来た。わらわを最初に抱いた男は︱︱わらわ
まつりごと
の実の父親であった。己の正室や、側室である母を押しやって、わ
らわに夢中になり、領内の政をおろそかにした。わらわの所為で、
取り潰しにされそうになったのじゃ。そして、わらわは魔道に落ち
る﹂
腰の動きを早める彼女。時々、ゆっくりと動いて、ボクのペニス
を味わっていた。
﹁魔道?﹂
﹁母は、わらわを殺そうとした。表向きは、領主である父の政道を
正すとの言葉であったが、本当は、母はわらわに嫉妬した。刺客を
わらわに向けて放った﹂
母と娘の殺し合い。そんな悲しい歴史が連綿と繰り返されていた
んだ。
﹁命を狙われたんだ、実の母親に⋮⋮﹂
ボクの言葉に、何の反応も無かった。
﹁わらわは、その刺客を引き込み、母を殺すように仕向けた﹂
﹁引き込む?﹂
﹁誘惑し、関係を持ったのじゃ。藩随一の剣豪は、母を斬ってその
首を持ち帰る。わらわは、その首を持って男と逃げた。追っ手を全
て倒し、男と共に禅寺に入る﹂
﹁じゃあ、その男とは?﹂
﹁わらわの腹違いの弟じゃ﹂
256
﹁え? それって、恋に落ちた美男子のお坊さんは⋮⋮﹂
ちっきょ
﹁うむ、弟の事じゃ。正室の子であり、正統なる後継者であったが、
わらわに溺れて道を誤った一人。その後、父は蟄居となり、改易さ
れて︱︱お家は断絶された﹂
ブレザーを脱ぎ、シャツをスカートから出す。ボタンを下から外
し出す港ちゃん。
﹁言い伝えとは、微妙に違うんだね﹂
ボクはといえば、シャツを脱がすのを手伝い、ブラを上にずらし
て乳首にむしゃぶりつく。小さな胸ではあるが、ボクの舌に敏感に
反応する彼女に興奮をする。
彼女に溺れていた。
﹁言い伝えェ?﹂
ボクの口に顔を近づけ、舌を絡めてきた。長い長い、濃厚なキス
をする。
﹁話はつまらん。楽しもうェ﹂
上目遣いにボクを見てくる。男をたらし込む技だった。
悦楽に耽る港ちゃんの顔を見る。
ボクは考える。
対人恐怖症の女の子。特に男性に対しては酷かった。
これで、彼女が普通のコミュニケーション能力を有していたなら、
男共を虜にして離さなかっただろう。
いや、男たちが彼女を取り合って抗争が始まる。
子供の頃、読んだギリシャ神話︱︱女を巡って戦争なんて!︱︱
思っていた。
257
港ちゃんならありえる。殺し合いが行われるよ。
自然の摂理︱︱納得する。
﹁これは、何かェ?﹂
女は、ハラリと落ちた赤いリボンを取り上げる。
ボクはブラジャーを脱がしていた。短い茶色のチェックのスカー
トだけをまとった彼女の裸体を見る。
﹁こうして、裸にリボンだけをするんだ。エッチでしょ﹂
﹁りぼん? えっち?﹂
意味を理解してないようだった。
白くて長い首元に、蝶々結びにしてやる。
﹁白い肌に、赤い色が映えるんです﹂
ボクはゆっくりと起き上がる。対面座位となって、彼女の両手を
掴み後ろへと押し倒す。正常位をとると、いっそう笑顔になる港⋮
⋮いや、如熾院様だった。
﹁ふふ、変な布で、オトコは興奮するものかェ﹂
落ち着き、ボクは彼女を観察する。
ゆっくりと腰を突き上げながら、様子を見る。彼女自身は、この
行為には快楽を得ていない状況だった。
極めて退屈そうに、ボクのピストン運動に付き合っていた。
欠伸までしそうな態度には、男の沽券に関わるのだ。
﹁あの、名前をお聞かせ下さい。如熾院とは出家後の僧侶としての
名前でしょう。本当の名前をお教え下さい﹂
ボクは、ペニスを抜き去り、軽い彼女の身体を裏返す。後背位の
形になる。
258
﹁そちは、こちらの﹃ひよどり越え﹄の形を好むのかェ﹂
顔を後ろに向けて言う。ボクの質問には答えなかった。
﹃ひよどり越え﹄とは、バックスタイルの古い和名。俗称。
﹁アナタは、散々に男とまぐわったんでしょうが、これはどうです
かね?﹂
十分に濡れそぼった彼女の性器、その分泌液を亀頭に塗って彼女
の菊門に狙いを定める。
﹁ん? そなたは男色家か? そのようなところは⋮⋮。ええい!
やめよ!﹂
﹁意外ですね。淫乱尼さんにしては、ここは初めてでしたか﹂
ボクは容赦なく侵入させる。アナルの刺激は初めてなのか、大層
に慌てふためく。
﹁やめよと、言っておるであろうが!﹂
逃げ出そうとする、小さなお尻を掴む。
﹁本当は、ゴムを付けないとペニスが大変な事になるんですが⋮⋮。
港ちゃんは持って無いでしょうからね﹂
﹁ごむとは何じゃ! ぺにすとは何じゃ!﹂
慌てる姿が愉快だった。
﹁あはは、こうなると形無しですね﹂
﹁何が可笑しいのじゃ! くぅ!﹂
彼女の肛門を、ボクのカリ高のペニスが押し広げる。
鉄壁の守りの城門は、あっさりと陥落し侵入を許し︱︱落城した。
﹁やっぱり、予想通りだ。膣は自分の意思で操れても、直腸の内壁
の方は無理ですからね。おっと、肛門括約筋を締め上げてもダメで
すよ。コレよりもキツキツの幼女のアナルを犯して、味わったんだ
から﹂
259
﹁あ・な・る?﹂
ボクの顔を見てきた。目尻には涙が浮かんでいた。
ボクは勝利を確信する。
﹁そうですよ。気持ちイイでしょ? 言って下さいよ。気持ちイイ
って︱︱。イッテ下さいよ。絶頂を味わうんですよ。冥府魔道に落
ちた、堕天使さん﹂
﹁そうじゃ、わらわは﹃らふぁえる﹄から﹃るしふぇる﹄になって
しもうた。魔王﹃さたん﹄に生まれ変わったのじゃ。ああー。これ
が、快楽! 久しく味わったことのない感覚﹂
ゆっくりと自分でも腰を動かし始めた。
み
﹁名前を呼ばせてよ。アナタ様の﹃るしふぇる﹄でも﹃さたん﹄で
もない︱︱名前﹂
なと
﹁母上は、小さい頃は︱︱こう呼んでいた︱︱水の都と書いて﹃水
都﹄と⋮⋮﹂
遠くを見つめる目。
港ちゃんの白い背中を見る。皮膚が薄くて、静脈が透けて見える。
上品な白磁器を、愛でている感覚だ。
﹁水の都?﹂
﹁母がわらわを産んだ街、大坂じゃ﹂
﹁そう、良い名前ですね﹂
仕上げに移る。
前後する運動を激しくする。
細いウエストを掴んで動く。
﹁おのれ、小僧。生意気じゃ。ああ⋮⋮﹂
そう言って突っ伏す。
︵イッタ? イッタのか?︶
260
みなと
ぐったりとなる水都さん。
ボクは直腸内に大量のスペルマを放出する。
だが激しいピストン運動はやめない。固さを保っているウチは、
腸の肉壁を味わう。
やがて、小さくなったペニスが、異物として吐き出される。
そして肛門から、泡だった白濁液が大量に出てくる。
﹁ふぅ⋮⋮﹂
ボクは満足する。
東京にいても一生抱けないであろう︱︱金髪碧眼の美少女に、何
度も中出しして、最後にはアナルまで攻略した。
思い残すことはない。
﹁北の岬⋮⋮﹂
汐さんのお母さん。そして、水都さん。
身を投げた二人と同じ場所に、ボクは⋮⋮。
気絶している港ちゃんの股間の汚れを、綺麗に拭き取る。リュッ
クの中にあったトイレットペーパーでだ。
そして、脱がした服を着せてあげる。
最初で最後の、お人形遊び。そんな感想を持った。
261
﹁七日目﹂ その五
︱︱午前二時十八分。
港神社、ほこら内。
﹁⋮⋮あ﹂
港ちゃんが意識を取り戻す。
﹁気が付いた?﹂
グレーのスウェットの上下を着込むボク。優しく彼女に微笑んだ。
﹁⋮⋮い、今、何時?﹂
彼女は、急いで自分の身なりを確認する。服は着込んであったが、
股間の異物感と変化は感じているのだろう。
顔を赤くする。
﹁夜中の二時十八分。丑三つ時だね﹂
リュックの中にあった、男物の高級腕時計を見て時刻を報告する。
彼女の父親が使っていた時計なのだろう。
﹁⋮⋮何か、した? したよね?﹂
赤い顔のまま、聞いてきた。ナイフを押しつけられて、パンツを
脱がされた記憶はあるのだろう。自分の身に何が起こったのかは、
全部理解しているはずだ。
﹁セックスしたよ﹂
真っ直ぐに彼女の目を見据える。今度のボクは、目は泳いでなか
ったはずだ。
彼女は右下を向いて、視線を逃がす。
262
﹁⋮⋮そう。ウチは時々、意識がなくなる時がある。そんな場合は、
決まって神社の殿舎で目を覚ます。最初にあったのは二年前。父ち
ゃんが島に来て、神社まで連れて来られた時、気を失った。意識が
戻った時には、ウチは裸だった⋮⋮﹂
悲しそうな顔をボクに向ける。
その時に、水都さんが彼女の意識を支配したんだ。きっと、この
場所に何か秘密があるんだな。
そして︱︱。
港ちゃんは、処女では無かった。
それを奪ったのが、実の父親だったとは!
水都さんも、処女喪失の相手は父親だった。
︱︱因縁。
﹁ごめんなさい﹂
正直に謝る。彼女を犯した事実は消えないが。
﹁⋮⋮ううん、いいの。悪いのはウチなの、自分が恐いの⋮⋮。ウ
チの方が何かしなかった? 恐くなかった? こんな事が無いよう
に、人を近づけないようにしてるの﹂
港ちゃんの告白。
自分の肩を抱いて、震えていた。
ほんな
みなと
﹁キミの中に眠る、もう一人の人物に出会った。彼女は、自分の名
前を﹃如熾院﹄と言った。そして、本名は﹃水都﹄⋮⋮水の都と告
白してくれた。その人は変わっていたけど、怖くなかったよ﹂
﹁⋮⋮そう。﹃如熾尼﹄様に会ったの。ウチは生まれ変わりかも知
れない。古い記憶がある。百年前にも⋮⋮﹂
263
﹁百年前?﹂
﹁⋮⋮夢で見る。男の人と島を抜け出そうとして⋮⋮﹂
そこで黙る彼女。
﹁港ちゃん?﹂
﹁⋮⋮純一さん。ウチを東京に連れて行って下さい。父ちゃんは、
東京で暮らさないかと誘ってくれた。東京の高校に通わないかと、
勧めてくれた。女の子ばかりの、全寮制のミッション高校。そこは、
よそで不登校や退学になった子も受け入れてくれる学校なの。そこ
で、やり直そうと考えてる。人生の再出発の︱︱お手伝いをして下
さい﹂
金髪碧眼の美少女から﹁純一さん﹂と呼ばれ、ボクの両手を優し
く握ってくれた。
上目遣いに頼まれて、ドキリとなる。
何でも言うことを聞いてしまうよね。
﹁ぼ、ボクは今日の朝の五時に、島に来た漁船で本島に向かおうと
思う。その時に、港ちゃんも一緒に行こう。ぼ、ボクは別れの挨拶
をするのがつらいから、港ちゃんがボクの荷物を持ってきてくれな
いかな。小さなリュックがある。それだけでいいんだ。残りのキャ
リーバッグは、送って貰う。き、キミの荷物はどうするの?﹂
視線が中空をさまよいながら、彼女に言う。
逃亡する共犯者に、旅館の長女を選んだ。
彼女がボクの手元にあれば、警察沙汰とか変なことはしてこない
と思うんだ。
﹁⋮⋮荷物は特にない。物には執着はしないの。必要な物は、そこ
のリュックに入っている。分かった、朝の四時には純一さんの荷物
264
を取ってくる。時々家族に内緒で、夜中に抜け出して朝に帰るとき
がある。純一さんに始めて会った時も、そうだった﹂
港ちゃんはそう言ってゆっくりと座り、膝を抱く。
彼女とは、旅館のトイレで早朝に出会った。そんな事情があった
のか。
﹁もう少し、時間があるね。少し仮眠しようか?﹂
男物のスイス製ブランド時計。ボクはそれを腕にはめていた。
︱︱午前二時三十分。
﹁⋮⋮うん﹂
ランタンの明かりを消す。
ボクの腕を枕に、港ちゃんは体を倒す。
265
﹁七日目﹂ その六
◆◇◆
雨は依然、強く降り続いている。
ボクに寄り添って直ぐに、安心しきって寝息を立てている彼女。
襲いたいと思ったが、今は自重しておく。
東京に行ったら、金髪美少女の体を思うままに組み敷くことが出
来るのだ。
眠る彼女の頭を撫でてやる。
︵百年前?︶
彼女の言葉を思い出す。汐さんの話だと︱︱確か大規模な土砂災
害が島を襲ったと︱︱﹁男の人と島を抜け出そうとして⋮⋮﹂
︵今が、その状況でないか!︶
﹁ゴゴゴ⋮⋮﹂
遠くで音を聞いた。
︵いやな感じだ︶
外に感覚を集中させる。
﹁パラ、パラッ﹂
雨と風の音に加えて、何かの落ちる音。
﹁ね、港ちゃん起きて。何かやばくない?﹂
﹁⋮⋮え?﹂
266
暗闇の中、彼女は体を起こして、周囲の様子をうかがう。
︱︱午前三時四十八分。
蓄光発光する時針と分針。腕時計で時刻を確認する。
﹁そもそもさ、大雨で海が荒れていたら、早朝の船は来ないよね﹂
﹁⋮⋮うん。そういう場合は良くある。昨日は岬ちゃんも漁をして
ないから、連絡が行ってれば福田さんの船は来ないかもしれない﹂
福田さんとは、如伴島への定期便や漁船を操る船頭さんの事。
﹁ゴゴゴゴ⋮⋮﹂
今度の音は、振動を伴っていた。神社のほこらの扉がカタカタと
揺れる。
﹁⋮⋮地鳴りだ。これは、山が怒っている! う、ウチが怒らせた
!﹂
﹁え?﹂
頭を押さえ、殿舎の床にうつぶせになって震えている港ちゃん。
﹁港ちゃん。しっかり!﹂
抱えあげる。
︱︱その時。
﹁ドン! ガン!﹂
遠くで大きな音が連続で響く。遅れて振動が伝わってきた。
﹁⋮⋮あっちは、島の南側だわ! ダメダメダメ!﹂
顔を引きつらせ、外に飛び出そうとする彼女。それを引き止める。
﹁待って、港ちゃん!﹂
267
ボクは外の様子を見る。ほこらの扉を開けると、雨がパタリと止
んでいた。風も収まる。
﹁⋮⋮嵐が収まった﹂
﹁準備してから、出かけよう﹂
ボクは、ランタンにマッチで点灯する。
梁にぶら下がった自分の服を確認する。乾いていた。急いで着替
えて靴も履く。靴の内部は濡れたままでグチャグチャだった。
仕方無いが履く。
港ちゃんは、制服の上に雨合羽を着て長靴を履く。
この格好でも、様になる。スタイルの良い彼女は、何を着ても似
合っている。
ランタンを照明にして外に出る。雨は上がり、上空の雲が無くな
っていた。
夜明け前だが、うっすらと明るさを感じている。
しかし、足元は暗いのでランタンで照らす。
﹁⋮⋮早くみんなに知らせないと。山の様子がおかしい!﹂
真剣な表情で、ボクを追い越す港ちゃん。合羽のフードを脱いで、
早足で進む。
ボクは追いかけるが、山の地面がツルツルと滑り、足元が覚束な
い。
﹁ま、まって⋮⋮﹂
滑りそうになり、両足で踏ん張って踏みとどまる。
﹁ドドドド⋮⋮﹂
振動と音を聞いた。
268
﹁⋮⋮ヤバイ、ヤバイ! みんな逃げて、逃げて!﹂
走り始めた彼女の手を掴む。
﹁港ちゃん。あれ見て!﹂
山の斜面を照らす。大量の水が、窪地を速いスピードで流れてい
る。
長靴の彼女でも、踏破は不可能だ。
﹁⋮⋮こっちに迂回しよう﹂
反対に手を引かれて、山の斜面を登る。
◆◇◆
︱︱午前五時十分。
如伴島、墓地。
一度、山を登って山頂近くに出て、再び下った。島の南側に出る
のにかなりの時間を労してしまった。
﹁この場所に出るんだ﹂
﹁⋮⋮墓地は、もっとも安全な所に作る。古くからの知恵﹂
山を歩き尽くして、知り尽くしている彼女だ。
﹁確かに、島で一番古い物が残っている。ここは、地盤も固そうだ
し⋮⋮﹂
周囲を見る。まだ暗くて、眼下の様子が分からない。
暗い墓地。普段なら決して立ち寄らない場所だが、今は安心出来
る箇所。
﹁⋮⋮この近くに古墳もあった。古墳の下の学校は、避難所にもな
269
ってる。危険だと判断したら、母ちゃんたち島の人は学校に逃げる﹂
暗闇の方向を指差す。
如伴島の島民の人口は、現在は全員で三十六人だ。汐さんから話
しに聞いている。そこに、旅行者のボクと女子大生の二人が加わる。
﹁学校のあった場所には、﹃如伴寺﹄が有ったんでしょ。そのお寺
は、百年前に土砂崩れと共に海に流れていった﹂
﹁⋮⋮お寺は、少し外れていてグラウンドの場所にあった。学校は、
一番安全のはず﹂
自信を持って答える港ちゃん。
﹁朝日だ﹂
ボクは東の海を見つめる。太陽の上端がのぞく。途端に周囲は明
るくなった。
﹁⋮⋮⋮⋮ああ!﹂
港ちゃんが叫んで言葉を飲む。
﹁学校が!﹂
二階建ての鉄筋コンクリートの頑丈な建物。その場所に大量の土
砂が襲っていた。二階の窓の天辺の高さまで、土石流が押し寄せて
いた。
内部に侵入する。石に泥に樹木。
﹁⋮⋮怜香先生﹂
ポツリと彼女が言った。墓地で、膝から崩れ落ちる。
夜中に突然に襲った土砂災害。二階の部屋で寝ていたのなら、逃
げることは不可能だったろう。
﹁集落が⋮⋮﹂
270
太陽はより姿を現し、島の惨状を明らかにしていく。
﹁⋮⋮ああ! ああー! ウチの所為だ!﹂
青ざめる彼女。
顔を押さえて小刻みに震える。
茶色い濁流が勢いよく島を下り、海へと注いでいた。その下、大
量の土や岩が集落を押しつぶしていた。
﹁⋮⋮イヤ、イヤー! 母ちゃん! 岬ちゃん! 渚ちゃん!﹂
必死に家族の名前を呼ぶ港ちゃん。墓地の場所から飛び降りて、
被災地に向かおうとするのを必死で押さえる。
青い漁港の海面が、茶色に染まっている。
集落からは、破壊された建物の一部がのぞく。
﹁⋮⋮ウチが、島を出ようとしたからだ。ウチの責任だ。ああ、み
んなゴメンなさい!﹂
彼女の頬を次々と涙が流れていく。
うずくまり、泣きじゃくっている。
﹁ま、まさかの⋮⋮ぜ、全滅エンド⋮⋮﹂
ボクもその場にへたり込んだ。
271
﹁七日目﹂ その七
◆◇◆
︱︱午前四時二十二分。
如犯島、西山中。港神社ほこら。
﹁はっ!﹂
ボクは目を開ける。直ちに腕時計で時刻を確認する。
夜明け前の時間。
﹁ゆ、夢オチだと!?﹂
体を起こす。
ランタンを点灯し、内部を照らす。
﹁⋮⋮ゴメンなさい。ゴメンなさい﹂
床の上に直に眠り、両目から涙を流しながらつぶやいている港ち
ゃん。
﹁港ちゃん、港ちゃん﹂
肩を揺すり、起こす。
﹁⋮⋮嫌な夢を見たの。島に崖崩れがあって、みんなが!﹂
そう言って赤く泣きはらした目から、涙を拭う彼女。
︵ボクも見た︶
言えなかった。
二人が見た夢の内容は一緒なのかも知れない。
272
確認するのが恐かった。
﹁あ、雨はやんでるよ﹂
ボクは外を確認して告げた。
︱︱午前四時五十二分。
夢の中と同じ格好で外に出る。
違ったのは、山の中全体に白い霧が立ちこめていたこと。
幻想的な雰囲気で、この光景も夢でないのかと思われる。
﹁⋮⋮お墓に行ってみよう﹂
ランタンを持つ金髪少女。ブレザーの制服姿が異様で、ホラー映
画のように思えてくる。お墓という単語が、それに拍車を掛ける。
ゾンビでも出てくるのかな。隠れキリシタンの里だ、明治期以前
は土葬なのだろう。
﹁様子が違ってるね﹂
﹁⋮⋮うん﹂
夢の中で濁流が流れていた場所は、雨水がチロチロと小さな小川
を作るだけだった。
﹁気を付けて﹂
﹁⋮⋮うん﹂
自然と彼女の手を握る。
墓地に出た。
夜明け前。東の水平線が黄色く光る。空の藍色に向けて綺麗なグ
273
ラデーションを作る。
﹁⋮⋮あ、学校ある﹂
夜間の学校の入口付近。LED照明の外灯が、青白い光を放つ。
その光明に虫が多くたかっていた。
メタリックグリーンのコガネムシが、ブンブンと音を立てて外灯
にぶつかっていた。
﹁学校は無事かー﹂
安心し、息を吐く。
手を繋いだまま、グラウンドの方へと降りていく。
やがて、夜は明けていく。
ボクと港ちゃんの二人は、南側の集落を眺める。
海からの霧が低く立ちこめていた。
﹁⋮⋮あ、あったぁー﹂
そう言った港ちゃんは、ヘナヘナと崩れ落ちた。
地面に膝を付く。
夜が明けて、気温が上昇し風が出てきた。霧が晴れた。
集落が見える。旅館の建物も健在だ。
﹁悪い夢だったんだよ﹂
ボクは言う。彼女の肩を抱く。
ボクの見た夢と、彼女の見たモノは一緒だったのか?
確認するのが恐かった。
﹁⋮⋮帰ろう﹂
少女は笑顔をボクに向けた。
274
◆◇◆
︱︱午前五時十二分。
如伴島、漁港。
東京への脱出は、諦めた。しかし、船が防波堤に停泊し、乗り込
む人を目撃した。
港ちゃんの左手を握り、集落を過ぎて防波堤に向かった。
まきしま
ゆきこ
﹁じゃあねー﹃サナギ﹄ちゃん!﹂
船に乗り込んだ牧島 由希子さんが、見送りに来た面々に手を振
っていた。
﹁﹃サナギ﹄じゃ無い! 渚だ! もう、由希子お姉ちゃん、バイ
バイね!﹂
﹁お姉さんたち! また来てね! うぇーん﹂
岬ちゃんは両手を元気よく振って、終いには泣き出した。
﹁岬ちゃん。素潜りを教えてくれてありがとうね。冬休みに、もう
一度来るからね。バイバイね。来年の夏休みには、もっと長く滞在
まゆみ
するよ。もう、泣かないで⋮⋮アナタが泣いちゃうとあたしまで⋮
よしはら
⋮﹂
吉原 麻由美さんは、言葉を詰まらせる。
﹁あれ? 純一君。足の具合は、もういいの?﹂
船を繋いでいたロープを解き、船に投げる汐さん。
﹁え? 足?﹂
275
﹁それより、純一お兄ちゃん。どうして港お姉ちゃんと、手を繋い
でいるの? ん?﹂
渚ちゃんは寄ってきて、ボクに聞く。
﹁いつの間に仲良くなってたの? 怪しいなぁー﹂
岬ちゃんは、姉の顔をのぞき込む。
﹁⋮⋮こ、これは何でもないの﹂
慌てて、手を離す港ちゃん。
﹁それに、制服まで着て! お兄ちゃん、変なプレイでも強要した
の?﹂
﹁ち、違うよ!﹂
ボクは、両手を振って否定する。ま、エッチしたけどね。
﹁ブォー!﹂
船が警笛を大きく鳴らす。出港するとアピールする。
﹁﹁バイバイー!﹂﹂
漁船に乗る女子大生の二人組が、コチラに向けて手を振っていた。
﹁﹁オーイ! また来てねー!!﹂待ってるよー!﹂
姉妹が、揃って手を振る。
防波堤を走り、船を追いかけ見送る。
﹁二人共、元気ですね﹂
ボクは汐さんに言う。
﹁うん。この島に、若い女のお客さんは少ないんだ。大きなお姉さ
んが出来て、二人は喜んでいたよ﹂
由希ニャンと渚ちゃんは険悪な仲だったはずだが、いつの間に打
276
ち解けたんだ?
それと、汐さんは変なことを言ってたな。
﹁ボクの足がどうかしたんですか?﹂
﹁え?﹂
不思議だ︱︱そんな表情でボクを見返していた。
﹁純一お兄ちゃんは、初日にわたしがお墓まで案内しようとした時
に、山道を外れて落っこちたんじゃない!﹂
渚ちゃんが駆け寄り、ボクに向けて言った。
﹁そうだよ。渚が慌てるから、大急ぎで学校まで行ったら、お兄さ
んが保健室に運び込まれていた。怜香先生じゃ骨折か判別出来ない
から、ドクターヘリまで呼ぼうとしたんだよ﹂
岬ちゃんがボクの肩をポンと叩いた。
﹁あたしは、そういうのは見慣れているからね。ねんざを治療して、
純一君は︱︱ほぼ一週間安静で︱︱部屋から出ることが出来なかっ
たね﹂
汐さんが言って、ボクの右足首を右手で叩く。
﹁ねんざ? 一週間安静?﹂
ボクの言葉に大きくうなずく、潮屋家の一族たち。
ま、港ちゃん以外だけどね。
﹁うふふ。お兄ちゃんは下着姿の怜香先生をのぞこうとして、足を
滑らせて三メートルも滑落したんだよね。キシシ﹂
ボクに耳打ちする渚ちゃん。最後には歯を見せて笑っていた。
277
いったい、何が起こっているんだ?
ボクが、初日に足を滑らせて怪我をした?
﹁港ちゃん。これって⋮⋮﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
アゴに手を当てて、考える彼女。
﹁⋮⋮聞いてみたら? 渚に直接﹂
﹁え?﹂
旅館へと戻る一同。それに続くボクたち。
﹁な、渚ちゃんさ、ボクと学校で何かしなかった?﹂
﹁学校? お兄ちゃんは、あの後に部屋でウンウン唸っていたよ。
そういえば、スマホをインターネットネットに接続してあげると約
束したけど、無理だったもんね。彼女さんに電話した? 彼氏から
一週間も音沙汰無しだと、スゴイ怒ってると思うよ。もう一週間、
滞在が延びたからさ、今日のお昼にでもアイ○ォンのWi−Fiの
設定してあげるよ。学校に行く?﹂
そう言った後、ボクに耳打ちする。
﹁あのさ、お兄ちゃん。アナルセックスって知ってる? それで、
遊ばない。これならば、淫行にもならないよ。ウフフ﹂
小悪魔のように笑う小学生だった。
﹁もう一週間、延長?﹂
ボソリと言った。
﹁そうだよ。純一お兄さんのお母さんに、捻挫で動けなかったと報
告したら、延長してもいいんだって。一緒に海を泳いで、アワビと
278
か獲るとこ見せたかったから、丁度良かった。今日のお昼にでも、
北の岬に行かない?﹂
岬ちゃんが、ごく自然にボクの左腕を取って組んでいた。
﹁あ、岬。ずるいな。お母さんだって、純一君と仲良くしたいと考
えてたのに﹂
﹁じゃあ、半分こ﹂
ボクの右腕の方を、母親に差し出す中学生だった。
﹁純一君は、あたしみたいなオバサンは、遠慮したいんでしょう。
でも、いつの間に港と仲良くなったんだい? 驚いたよ。この子は、
男を異常に怖がるからね。初対面の女の人とも、口さえきかない。
今回のお客さんたちとも、ちゃんと挨拶してないでしょ、港﹂
長女の頭をポカリと軽く叩く母親だった。
頭を押さえる港ちゃん。こういった親子のほのぼの風景は始めて
見たかな。
279
﹁七日目﹂ その八
◆◇◆
︱︱午前八時二十八分。
分校、情報室。
﹁あなたが、学校に何の用ですか?﹂
冷たすぎる怜香先生の言葉。
朝食後、ボクと渚ちゃん。そして港ちゃんの三人で学校を訪れた。
﹁⋮⋮怜香先生。ゴメンなさい﹂
モジモジとしながら謝る金髪碧眼少女。
着替えた港ちゃんは、可憐だった。制服姿も似合っていたけど、
今回の黒ゴシックロリータの格好は破壊的に可愛いかった。
アニメに登場するキャラクターにも見える。とっても重要なキャ
ラだ。そう、﹃ラスボス﹄の風格さえ漂っている。
︵本場物だ! 本物だ!︶
東京都内でも同じ格好の少女たちを何人も見たが、港ちゃんとは
月とすっぽん、ちょうちんに釣り鐘、豆腐にかすがい⋮⋮は違った
な。
﹁港さん。あ、あなたに言ったつもりではないのよ。そこのピーピ
ング・トムさんへの警告。私の下着姿を見て、天罰が下ったのです
よ。足首の捻挫ですんで、感謝しなさい。本来なら目が潰れる所だ
ったのよ﹂
相変わらずの巨乳先生は、ボクを睨みつけている様子だった。
280
ちっとも恐くはなかったけどね。
でも︱︱ここでも、ボクの悪行は忘れ去られていた。そう、のぞ
き以上の悪事です。否、そんな事実が最初から存在しないかのよう
だった。
いさ
﹁夫を諌めるため、裸で馬に乗って街を闊歩したという︱︱ゴ○ィ
バ夫人の逸話かよ! 先生は﹃聖女﹄とは程遠い、﹃痴女﹄のクセ
に!﹂
パソコンを色々といじっている渚ちゃん。先生に向けての容赦な
い言葉。この二人は、本当に馬が合わないのね。
ある意味、仲好しさん。仲良くケンカしな。
﹁あ、そのメーカーのチョコがあるのよ。貰い物だけど、皆さんも
どう? コーヒーを入れるから待っててね﹂
そう言って、教室を出ていく先生。
﹁わーい! チョコだ! しかも、ベルギー製の高級品!﹂
手を挙げて喜ぶ渚ちゃん。
簡単に機嫌を直す。
︱︱どこかで見た、風景。
時間がループ⋮⋮いや、途中で分岐したのだ。
土砂災害の起こった世界と、この世界の違い。ボクは足を怪我を
して、動けなくなったという︱︱この世界のボクは童貞のままなの
だろうな。
ボクと彼女たちとは、争いのない︱︱安寧なる世界。
﹁お、メールが百通以上も届いてるよ。お兄ちゃんはモテモテだね。
彼女さん?﹂
281
ボクのスマホのWi−Fi設定を終えた渚ちゃんが、アイ○ォン
5を寄越してきた。
ゆうか
にしかわ
ゆうか
﹁優佳からだ﹂
西河 優佳とは、ボクの一つ年下の、近所に住む女子高校生。
﹁⋮⋮ダレ?﹂
港ちゃんの声が固かった。右背後に立つ彼女の方は、向けなかっ
た。
﹁た、ただの幼馴染みだよ。家が近くて、母親同士が仲良しなんだ﹂
﹁へー。で、同じ高校なの?﹂
今度聞くのは、渚ちゃんの方。
﹁うん。一緒に登校もするよ﹂
﹁⋮⋮へー、仲良しなの?﹂
﹁仲良しなのは、母親たちだよ。優佳は、妹みたいな感覚﹂
﹁⋮⋮渚みたいに、﹃お兄ちゃん﹄って呼ばせてるの?﹂
み、港ちゃん恐いよ。嫉妬しているのかな。
﹁ねぇー﹂
渚ちゃんが、ボクを教室の隅に引っ張る。
﹁な、何? 渚ちゃん﹂
﹁お姉ちゃんと何があったの? 無茶苦茶、怒っているね。港姉ェ
とキスぐらいしたの? お姉ェは怒ると、お母さんより恐いんだ。
早く申し開きをして、全面的に謝りなさいよ。その子とは、全く関
係ないってね﹂
﹁そ、その子って⋮⋮優佳の事? だから、タダの幼馴染みだって
!﹂
﹁⋮⋮その、幼馴染みとどの位親密だったの? 一緒にお風呂入っ
282
たの? 一緒のお布団で寝たの?﹂
ボクの顔面に、お人形さんみたいな顔を近づけて聞いてくる。
か、可愛いけど、恐いです。
﹁いや、小さい頃はあったと思うよ﹂
﹁⋮⋮何年生まで? 何歳まで?﹂
﹁さ、さあ、小学校低学年ぐらいまではあった⋮⋮な、七歳くらい
?﹂
﹁⋮⋮許さない!﹂
﹁え!﹂
﹁キシシ。お兄ちゃんもご愁傷様。お姉ちゃんはね、ポヤヤンと見
えても、執着心が人一倍凄いんだ。一年前に夕飯のおかずを盗った
事を、今でもネチネチ言ってくるんだよ。三年前にプリンを食べち
ゃった事を、忘れないんだよ﹂
妹が、姉の悪口を御注進する。
﹁⋮⋮渚ちゃん。ちょっと﹂
妹の右耳を掴んで引っ張っていく。
︵アレ、ボク。地雷を踏んじゃった? 最悪で最凶︱︱潮屋港とい
う方向性地雷︱︱クレイモアだ︶
﹁イタタ、イタタタ。お姉ちゃん許して⋮⋮﹂
涙目で、ボクに助けを求めて来た。
﹁ゴメン⋮⋮﹂
目を逸らす。
﹁渚ちゃん! お高いチョコを持ってきたわよ∼。一粒、五百円は
するのよ。みんなで味わって食べなさい⋮⋮って、アラ、姉妹ゲン
カ? 珍しいわね﹂
怜香先生は、黄色い丸い缶を大事そうに抱えて来た。
﹁ですよねぇ∼﹂
283
ボクは適当に言って、部屋から出て行った。
女の子同士の争いはゴメンだからね。
◆◇◆
︱︱午後十一時五十五分。
潮屋旅館、客間。
﹁ふぅ⋮⋮何なんだ、まったく﹂
布団に仰向けになったボクは、今日の出来事を思い出す。
色々とありすぎた。
学校で用件を終えた後に、北の岬に岬ちゃんと向かったが、そこ
にも港ちゃんが付いてきた。
岬ちゃんは、やりにくくしてたな。
得意の素潜りを見せつけるつもりが、カナヅチの姉にあれこれと
指図される。
傍目にも可哀相だと思った。
港ちゃんは、昼食時もボクにベッタリだった。
食べられない魚のフライを、ボクに食べろと強要した。
体に良いからと︱︱力説されたが、無理です。限界です。
午後は、汐さんの仕事を手伝った。形の良いオッパイとお尻とを
視姦していたら、ボクの方のお尻をつねられてしまった。
﹁はー、港ちゃんには困ったもんだ﹂
溜息を吐く。
284
照明を消すために、紐に手を伸ばす。
﹁カチカチ﹂
オレンジ色の豆電球が点灯する。
﹁⋮⋮何が、困ったの?﹂
フスマが開いた。入ってきたのは︱︱。
﹁み、港ちゃん!﹂
いつものグレーのスウェットの上下だ。
﹁⋮⋮外、行こう﹂
﹁え? 外? 今何時だと思ってるの。今は真っ暗だよ﹂
﹁⋮⋮いいの、行くの﹂
﹁何をするの?﹂
﹁⋮⋮セックスしよ﹂
﹁え? 今、なんて?﹂
﹁⋮⋮セックスをするの。ここは、渚がのぞくから、港神社のほこ
らに行くの﹂
金髪美少女の口から、セックスなんて言われたら、もうガマン出
来ません!
﹁⋮⋮行こう﹂
手を引っ張られ、部屋を出る。
285
﹁最終日﹂ その一
︱︱午前零時十五分。
如伴島、山中。
﹁ま、真っ暗だね。それこそ、鼻を摘まれても分からない暗闇だ﹂
圧倒的な闇がそこにはあった。人間の浸食を拒む、島の自然。
遠くの水平線上に見える、イカ釣り漁船の明かり。それだけが、
人の営みを感じさせる。
﹁⋮⋮そう? 普通﹂
ランタンだけを持って、山の中を進む。
彼女は、懐中電灯とか持って無いのかな?
﹁こうすると、もっと明るくなるよ﹂
スマホのアプリを起動し、カメラのLEDライトを照明にする。
︵だけどコレやると、電池の減りが異様に早いんだよね︶
ジロリとボクの方を見る港ちゃん。チョッと怖い。
﹁⋮⋮人工的すぎる光は、島の動物たちを刺激する。ウチらは、山
にお邪魔する身。遠慮しないといけない﹂
言われ、照明を消す。続行できる雰囲気ではなかったからだ。
﹁動物って⋮⋮く、熊とかは居ないよね?﹂
﹁⋮⋮熊は居ない。イノシシとかタヌキは居る。うり坊可愛いよ﹂
﹁そ、そうなんだ﹂
﹁⋮⋮母ちゃんはイノシシ撃ちとかする。冬にはボタン鍋が出る﹂
﹁う、うり坊のお母さんを、食べちゃうんだ。それに、汐さんは猟
286
銃とか持ってるんだ⋮⋮﹂
ショットガンで蜂の巣にされなかったことを、幸運と思うよ。
︱︱午前零時三十五分。
﹁これが神木だよね﹂
島の木の中でも、抜群に大きくて高い。樹齢は何年だろうか。
ボクは、しめ縄の結われている樹木に触れる。
﹁⋮⋮この下には人の骨が埋まっているの﹂
﹁え?﹂
﹁⋮⋮それは、﹃如熾尼﹄様の母上の首。処刑されて首を斬られた
母親の首を持って、島に訪れたの。仏門に入ったのは、母親を供養
するための意味もある﹂
﹃如熾院﹄様から直接聞いた話とは、違っていた。自分に向けら
れた刺客である義弟を籠絡し、母を殺させた娘。
﹁そうだ、﹃港神社﹄の社殿の管理とか⋮⋮神官さんはどうなって
るの?﹂
脇にある鳥居を、頭を下げて通る。
神木の横を通り、殿舎に敬意をはらう格好だ。
真っ直ぐ進むと、神社のほこらに辿り着く。
みこし
﹁⋮⋮神主は代々、潮屋の人間が受け継いでいるの。秋には、大々
的にお祭りをやる。潮屋の娘が巫女装束で神輿に乗って、社殿から
山を下って海まで行くの。途中に、お寺のあった場所で舞を披露す
る。ウチもやったし、岬もやった。今は渚が、巫女服を着てお祭り
を盛り上げる﹂
こそで
ひばかま
﹁へー、巫女さんの格好か⋮⋮。みんな、可愛いだろうな﹂
港ちゃんの白い小袖に緋袴の姿を想像する。そういえば、夢の中
287
で渚ちゃんが同じ格好をしていたな。
﹁⋮⋮今度、着た姿を見せてあげるね。服は取ってあるから﹂
港神社のほこら、扉を開く。
︵え? 巫女さんプレイとか楽しめちゃうの?︶
﹁⋮⋮入って、服を脱いで﹂
ランタンを床に置き、ボクのTシャツを脱がしてくる金髪少女。
﹁や、自分で脱げるよ。それよりも、港ちゃんが裸になるところを
見たいな﹂
ボクは白無地のTシャツと、茶色のハーフパンツを脱いで、グレ
ーのボクサーパンツだけになる。
﹁⋮⋮見たいの?﹂
﹁うん﹂
彼女は、スウェットの上を脱ぐ。長い髪の毛を首の穴から抜くの
に苦戦していた。
ブラは、味気ないほどの地味な純白だった。
﹁⋮⋮下、脱がせて﹂
︵ハイヨ!︶
彼女の指示通り、されるがままの彼女のズボンを脱がす。
細くて美しい足と純白のパンツがのぞき、興奮する。
﹁あ、あの聞かせて。どうしてボクとセックスしようと思ったの?
昨日の夜は、ナイフまで押しつけて強姦をしたんだ。こんなボク
なのに⋮⋮﹂
﹁⋮⋮ウチとセックスすれば、家族や先生には手を出さないでしょ。
ウチ一人がガマンすれば、みんなが幸せになる﹂
そういって、感慨もなくブラを脱ぎ捨てる。パンツに手を掛けて、
288
あっという間に脱ぎ捨てる。
真っ白な裸を、隠そうともしなかった。
﹁お、男ってそういうもんじゃ無いんだな⋮⋮﹂
ボクはパンツ姿のまま、床にアグラで座る。反応しかけたペニス
も、今は元気が無くなった。
﹁⋮⋮ウチが処理してあげる。口ですると、男の人は喜ぶのよね﹂
パンツをめくってペニスを露わにする。
﹁そ、そういった情報は、どこで仕入れるのかな? あ、あふぅー﹂
ボクのペニスを包み込む、港ちゃんの暖かい口。舌が動き、喉の
奥までに入れてくる。
こんな、濃厚なフェラは、汐さんや、怜香先生、由希ニャンでも
味わったことが無かったよ。
熱心に頭を動かして、ボクの質問には答えない。
良く分からない子だ。天然ポヤヤンと渚ちゃんは呼んでたけど、
知識にも偏りがあるし、チョッとウザい面もある。
﹁⋮⋮気持ちイイ?﹂
顔を上げて聞いてきた。
﹁き、気持ちイイけどさ。ボクも港ちゃんのアソコを味わいたいん
だ。ボクが下になるから、キミはアソコをボクの顔に向けて、フェ
ラして欲しいんだ﹂
﹁⋮⋮分かった﹂
素直にボクの指示通りに体を動かす。
目の前に、金髪美少女のヴァギナが見える。シックスナインの体
勢となった。
﹁き、綺麗だよ。港ちゃんのアソコ﹂
289
﹁⋮⋮そう?﹂
感激もせず、再びのお口の運動に移る彼女。どうも﹃オンナ﹄を
抱いている実感がない。良くできたダッチワイフ。いや、お人形さ
んだ。少女向けの、玩具人形。
顔や体型が完璧すぎて、人間味のある弱みを見出せないのだ。
汐さんは、お腹周りに少し脂肪が乗っていた。年齢としては仕方
の無いことかも知れなが、そこに興奮する自分がいる。
渚ちゃんは、自分の快楽追及にしか興味が無い。ボクのペースは
お構いなしに、自身が絶頂に達するのを良しとする。幼さゆえの傲
慢さだ。
怜香先生は、自分磨きを少しおろそかにしていた。顔の肌は荒れ
ているし、脇の下のそり残しに幻滅する。でも、普通の女性はそう
かも知れない。
岬ちゃんは、セックスを健全に捉えすぎていて、それがかえって
コチラに罪悪感を抱かせる。スポーツの延長線上にしか考えていな
い。
由希ニャンは、剛毛だった。下半身の毛を剃っていて、変な風な
ハートマークにしていたな。滑稽すぎて引いてしまう。
麻由美さんは、以前も形容したけど、体の筋肉と脂肪の付き方が
アンバランスだった。抱き心地が、あまりよろしくない。
﹁ハァ⋮⋮﹂
溜息を吐いて、港ちゃんの性器に舌を伸ばす。
造形も美しかった。色や形は、これまで見た局部の映像のどれよ
りも秀でて立派だと思う。
無修正AVの、動画で見た限りだけどね。
小陰唇をなぞり、クリトリスを刺激する。途端、彼女の身体がう
ごめいた。港ちゃんは、クリちゃんで快楽を味わうタイプなのかな。
自分でも十分に刺激してふけっていそうだ。
290
﹁港ちゃんは、オ○ニーとかするの?﹂
彼女の頭の上下運動が、一瞬停まる。
頬を染めて、上下動が激しくなる。影で、スゴイ自慰をしていそ
うだ。自分の部屋に引きこもっての、連続オ○ニーとかね。
﹁これは、どうだ?﹂
負けじと、膣内に舌を進入させる。
﹁あぎゃ!﹂
自動攻撃は、ペニスに対してだけじゃないんんだ。
入り込んだ舌に、激しい締め付けが行われる。
︵ダメ、ダメ、千切れちゃう!︶
﹁イデデ⋮⋮﹂
何とか抜き出して、脱出させる。
このままだったら、味蕾を潰されて味覚障害者になるわ!
︵指を入れたら、どうなるんだろ?︶
変な好奇心を抱いたのがいけなかった。
291
﹁最終日﹂ その二
ぜんどう
右手の中指を侵入させると、膣内の蠕動運動で、奧へ奧へと送ら
れる。
そして根元まで達したと分かると、前・中・後の三段に締め付け
てきた。内部で縦横に動く存在。
それに抵抗して、指先を動かす。ざらざらとした部分を触る。
︵こ、これが亀頭に擦れて、気持ち良いんだよ︶
﹁⋮⋮あっ!!﹂
彼女が反応した。口を離して悦楽の声を漏らす。
﹁ここが、いいの?﹂
激しく指を動かすと︱︱。
﹁ピュッ!﹂
﹁な、何か出た! み、水?﹂
彼女の股間、尿道口辺りから透明な液体が噴出する。
﹁⋮⋮や、見ちゃイヤ!﹂
指の動きを止めない。彼女の腰が痙攣して、前後に動く。同時に
飛び散る液体。
﹁ん? オシッコじゃないね﹂
自分の顔に掛かった液体を、舌で舐めあげる。舐めたときには粉
になっていた。あっという間に乾燥したのだ。
﹁⋮⋮はぅ、はぅ、はぅ﹂
港ちゃんは体の動きを止めて、ぐったりとなった。
﹁み、港ちゃん? イッタのかな?﹂
ゆっくりと彼女から離れる。床にうつぶせにさせる。
292
﹁⋮⋮き、気持ちイイ﹂
快楽の余韻を楽しむ港お姉ちゃん。
﹁そこの場所が、Gスポットなんだね。港ちゃんは潮を吹いたんだ
よ。潮屋旅館の長女は、潮吹き娘だった﹂
何か、嬉しくなる。ボクの右手のひらは、彼女の頭から背中を伝
い、お尻までを撫でていく。
﹁⋮⋮セックスしよ。ね、セックス。早く、おチンチン入れて﹂
のろりとした動作でお尻を持ち上げる。
ボクのペニスは、彼女の口での刺激で準備万端だった。
﹁港ちゃんの口から、セックスとかおチンチンとか言われると⋮⋮
もう、ガマン出来ないよ﹂
腰骨を掴んで、膣の入り口にペニスの先をあてがう。それだけで
十分だった。ボクの一物を自動的に飲み込んでいく。
﹁⋮⋮あーはー。おチンチン入った。入った。奧に来て、もっと奧
! そこを突いて、突いて! ウチのアソコをぐちゃぐちゃにして
!!﹂
両手を腰骨から、細いウェストに移す。彼女の胴回りは、ボクの
手の大きさにフィットする。神の与えたもうた奇跡?
激しく前後させて、彼女の弱点を狙い撃ちにする。
﹁港。感じるかい? ここが弱いんだね。コッチが攻撃すると、キ
ミのお○んこは、途端に守勢に廻る。攻撃は得意でも、守りは弱い
んだね。もう、こんなになってる﹂
右手で、彼女のクリトリスを刺激する。Gスポットとの同時攻撃
に、彼女の防衛軍の隊列は総崩れとなった。
﹁⋮⋮あ! そんなの、痺れちゃう! アソコと頭が痺れちゃう!
こんなの、こんなの始めて!﹂
293
そう言い残して突っ伏す。
﹁プシャーアアアアア!!!﹂
股間から激しく吹き出る噴流。
﹁床が⋮⋮﹂
大変な事になっていた。完全にお漏らし状態だよね。
場所を移動しようと、挿入をやめようとした。
﹁⋮⋮抜いちゃダメ。入れたままで、ウチが動く﹂
体の柔らかい港ちゃん。後背位で結合していたのに、繋がったま
まの足を大きく開いて体勢を入れ替える。
軟体動物の印象を持っている間に、正常位に移行していた。
ペニスが入ったまま、体の向きを180度変える器用な女の子。
﹁す、スゴイね。体、柔らかいね﹂
﹁⋮⋮そう?﹂
長い足が、ボクの背中まで回される。ガッチリと組まれた。
﹁あひゃん! ひゃん! ひょん!﹂
得意の名器の演奏だ。変な声を出して、演目に加わるボク。
︵う、動かなくてもイッテしまう︶
﹁⋮⋮逃がさない﹂
体を離そうとすると、腕まで背中に回して締め上げてくる。
大蛇に絡まれる哀れなカエルに、長い舌が伸びてくる。
首が押さえ込まれ、ボクの口の中に彼女の舌が入り込む。
﹁うぐ、うごご⋮⋮﹂
︵逆に、レイプされているみたい︶
ボクは、自分の意思では動けず、彼女のされるがままになる。
目が吊り上がり、焦点の合わない青い瞳。
294
彼女はボクではなく、その背後にいる人物を見ている。その存在
とまぐわっている。
﹁プファー。ハァハァ、あ、アナタは﹃如熾院﹄様ですよね﹂
﹁ん? せっかく楽しんでおるのに無粋じゃの。この娘は良いな。
わらわ以上に貪欲で、色欲にまみれておるェ﹂
﹁色欲? 港ちゃんが?﹂
少し体を離す、しかし結合は解いてくれない。
﹁そうじゃ、この娘が男を嫌うのは、自分が、相手の男を滅ぼすと
悟っておるのじゃろ。意味も知らない︱︱おぼこの頃から、手淫を
欠かさぬ淫乱娘じゃ﹂
﹁港ちゃんの事を良く知っているんですね﹂
このままではシャクに障る。潮屋港の、潮吹きのポイントを重点
的に責めていく。
﹁わらわが眠るときも、意識は同化しておる。この娘は、毎日の日
課のように自分の体を慰めておった。母の持つ書物を読みながら、
男共に手込めにされる様を想像し、悦楽に耽るのじゃ﹂
﹁港ちゃんは男にレイプされる自分を想像して、オ○ニーしてたん
だ。そりゃ、男嫌いにもなるわ⋮⋮﹂
﹁レイプは強姦で、オ○ニーとは手淫じゃな。そうじゃそうじゃ、
そのために現実の男たちから、暴力的で野性的な匂いを嗅ぎ取って
恐怖するのじゃ。このおなごは、全てが敏感に出来ておる。自分に
向けられた感情や視線を、痛みとして今は感じている。じゃが⋮⋮
それはやがて、快楽に変換される。その時には、わらわの様に道を
踏み外し、魔道に堕ちる﹂
﹁え?﹂
顔を見る。ニヤリと笑っていた。
295
﹁堕ちることは、悪いことでは無いェ。こんなにも気持ちよくて、
おさ
素晴らしい世界。この島は、わらわの楽園じゃ。わらわはな、自分
の産んだ娘を島の長の﹃潮屋﹄の家に預けて身を投げた。これは決
まつ
して世を悲観したからでは無いェ。わらわの遺骸を島の各所に分け
て祀らせた。目的の一つは、母の鎮魂と封じ込め。二つ目は⋮⋮﹂
﹁二つ目は?﹂
既に、彼女の中に放出していた。しかし、ペニスからスペルマを
全て吸い尽くそうとする、貪欲な性器だった。
何故か、ボクの頭はスッキリとする。彼女の話が明確なイメージ
となって、なだれ込んでくる。
﹁この島に、女しか生まれぬように結界を張った。そして、入れる
男も選別される。近くに﹃男島﹄があるェ?﹂
﹁本島の﹃△△島﹄の事ですね?﹂
よこしま
﹁そうじゃ、海の荒くれ男共が多く住んでおる。そんな男たちが、
女しか住まぬ島に邪な気持ちを抱かないと思うでか?﹂
抱き合いながら二人は会話を続ける。
﹁そうですね、﹃△△島﹄は流刑地でもあったのですよね。血気盛
んな若い男が、この島に侵入を企てたんですね?﹂
﹁うむ。島に拒まれた男は、上陸することは叶わぬ。船は難破し、
多くが遭難する。港に近づけても、島に上がる前に海に落ち死んで
しまった。やがて﹃男島﹄の連中は、この島を恐れ、遠ざかるよう
になった﹂
﹁まるで、この島は卵子で、群がる男共は、精子みたいなものです
ね﹂
彼女の胸に耳を当てる。トクントクンと心臓の音を聞いた。
﹁選ばれた男しか、島に上がることが出来ない。そなたは見込まれ
296
たのじゃ、島の女を孕ますことが出来るとな。だが、踏み外した。
わらわの弟や、百年前の男のようにな﹂
﹁弟?﹂
﹁わらわを追って島に入った、生臭坊主は、島の他の女と次々と関
係を結ぶ。網元で長でもある﹃潮屋﹄の女たちとも関係を持った。
﹃潮屋﹄には娘が三人おった。その三姉妹とも契りを結ぶ﹂
﹁え?﹂
﹁そちも、同じであろう。じゃが、赤子をなしたのは、長子の一人
だけであった。だが、生後まもなく死んでしまう。悲観に暮れるそ
の娘に、わらわは自分の娘を託した。江戸から来た役人の手から逃
れさせるためにの⋮⋮﹂
﹁じゃあ、今の﹃潮屋﹄のご先祖はアナタ様であるのですね﹂
﹁そうじゃ、わらわの娘が島の長として育つ。三姉妹の長女の赤子
には、死亡した原因がある。洗礼の儀式と称し、赤子と二人きりに
ふせっしょうかい
なって毒を飲ませたのじゃ。そう、わらわが殺した。そうして、﹃
潮屋﹄の家を乗っ取った﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
彼女の告白に黙る。
にょぼん
﹁表向きは、仏門に下ったわらわであるが、不殺生戒の禁を破って
しまった。ま、同じく弟は女犯の禁を犯してしまう。五戒を全て破
った、破戒姉弟じゃ﹂
乾いた笑みを浮かべる、女。
﹁百年前は、何があったんですか?﹂
﹁うん? 話はつまらん。つまらんの﹂
そう言って、横を向いた。
﹁み、水都さん?﹂
﹁⋮⋮あ、あ、あ、ウチまだセックスしてる。気持ちイイの、気持
297
ちイイの﹂
尼さんは消えていた。自分に都合が悪くなると、姿を消すのだっ
た。
港ちゃんに意識が戻っていた。
﹁あ、待って待って、港ちゃん。激しすぎ⋮⋮﹂
再び、彼女の攻撃がペニスに加えられる。
自分への侵入者は容赦しないとの考えだが、これじゃ簡単に妊娠
してしまうよね。
ボクは本日二度目の射精を、長々と彼女の膣内で行う。
298
﹁最終日﹂ その三
︱︱午前五時二十八分。
彼女と何度もまぐわい、何度も放出させられた。
底なしの性欲には、戦慄する。
男はね、なんと言っても射精するとしばらくは戦闘不能なワケで
すよ。しかし、港ちゃんは何? 宇宙から来た戦闘民族なの?
何度絶頂に達しても、それを良しとせず。ボクに戦い抜く意思が
あると見抜くと、ダウン状態でも無理矢理に立たせてくるのだった。
男の精気を吸い取る︱︱サキュバスの実在を信じるよ。
﹁寝た? 寝たね﹂
軽い寝息を立てる彼女。実に幸せそうな寝顔だった。ボクの腕を
枕にしていたので、ゆっくりと彼女の頭を上げて、リュックサック
の中にあった寝袋を差し込む。
全裸では寒いだろうと思い、同じくリュックにあったフリースの
茶色いブランケットを掛けておく。
ボクは自分の服を着込み、外に出る。
朝霧の立ちこめる、神社の周囲。
夜も明けたので、全てが真っ白で幻想的な雰囲気だった。
﹁さ、寒⋮⋮﹂
早朝には、かなり冷え込む。海沿いの島、その特有の気候なのだ
ろう。半袖、半パンのボクは自分の肩を抱いた。神社の社殿に戻れ
ば、ランタンやバーナーで暖がとれるが、引き返す気になれなかっ
299
た。
眠っている淫魔を起こしてしまうからね。
あ、寝袋があったな。彼女の枕になってるけど。
﹁歩こう⋮⋮﹂
体を動かして、暖まるのだ。参道となっている山道に、大股で踏
み出す。
港神社の殿舎の位置は、島の山の西側になる。
鳥居を幾つもくぐると、その先の延長線上に、南側斜面に立つ学
校が見えた。島の南側には霧が無かった。風向きの関係だろう。
割と広い山道を進む。舗装はされていないが、綺麗に手入れがさ
まつ
れた道だ。この場所を神輿に乗った渚ちゃんが進むのだな。そして、
お寺のあった場所で舞踊を奉納する。
しんぶつこんこう
神社とお寺の関係性。
当時は神仏混淆の観念があり、同じく祀られたはず。
では、そのご神体の正体は?
神木が見えた。
︵この根元に、如熾尼様の母上の首が⋮⋮︶
しめ縄の張ってある神聖な木。その周りをグルリと回る。裏側に
小さなお地蔵様が置いてあった。
﹁お、オオッ!﹂
首がなかった。ビックリして飛び退いた。
﹁シャン、シャン!﹂
鈴の音を聞いた。
︵え?︶
周囲を見渡す。
300
︵猫?︶
人影を見た。極彩色の着物⋮⋮和服?
﹁誰だ!﹂
木々の間、その方向に叫ぶ。反応は返ってこない。
﹁⋮⋮どうしたの?﹂
背後から声がした。驚いて山の地面に尻餅をつく。
振り返り、確認した。
﹁み、港ちゃん。び、ビックリしたよ﹂
お尻の葉っぱを払って立ち上がる。
﹁⋮⋮何か見た?﹂
﹁人を見た。派手な和服を着た、女の人。時代劇で見たお姫様の様
な⋮⋮﹂
﹁⋮⋮如熾尼様が身を投げたとき、着ていたのはお姫様時代の衣装﹂
﹁ええぇ?﹂
ゾゾゾと、体中に悪寒が走る。
﹁⋮⋮如熾尼様は、死後、自分の骨を島の各所に埋めさせた。埋め
たのは、潮屋の人間︱︱ウチらのご先祖様。細長い楕円形のこの﹃
如伴島﹄に、魔方陣を描くように配置した。悪魔召喚の黒魔術︱︱
そんな事にも精通していたの﹂
﹁魔方陣? 黒魔術? 隠れキリシタンは天使から堕落して、悪魔
になった﹂
目の前の金髪少女を見る。造形的には、完璧な人間だと思う。正
体が魔王﹃サタン﹄ならば、彼女の姿をとることは造作も無いこと
だろう。
301
﹁⋮⋮この島は、﹃如伴島﹄は、如熾尼様の胎内なの。入り来る男
たちを選別し、女だけを身籠もって、永遠に羊水に浸かり続ける。
そんな︱︱女そのものの島なの﹂
ニヤリと口の両端を上げて、ゆっくりとボクに近づいて来た。
﹁み、港ちゃん﹂
ボクは後ろに下がる。
﹁⋮⋮ウチが高校に入学して、本土に渡ったときから、毎晩夢を見
た。島に災害が起こる夢。実際、ウチの居ない一ヶ月の間、島に一
滴の雨も降らなくなった。ため池が干上がる寸前だった。ウチが帰
ったその日に、雨が降った﹂
﹁じゃあ、東京に行くと言ったのは?﹂
﹁⋮⋮決心。でも、あんな夢を見た。ううん、アレは夢なんかじゃ
おそ
ない。実際に起こった出来事。ウチと純一さん以外は死んでしまっ
た︱︱もう一つの世界﹂
自分の肩を抱く彼女。自身を畏れる行為だ。
港ちゃんは、この島の分身なのだ。彼女そのものが、島の霊力を
保つ存在。
﹁今度は、島に残る決心をしたんだね﹂
うち
﹁⋮⋮うん。岬と渚には島を出て、素敵な相手を見つけて欲しい。
家には財力があるからね、渚には東京の大学にまで進んで欲しい。
母ちゃんは、お金を持っていそうな男を選んで関係を持った。結婚
もせずに、三人分の養育費を毎月キチンと貰っている。母ちゃんは
計算高くてズルイんだよ。ウチは母ちゃんの意思を引き継いで、島
を守る、家を守る﹂
朝日が完全に昇り、立つ港ちゃんを背中側から照らす。
金色の髪の毛がキラキラと光る。
神々しいシルエットだった。
302
やっぱり、彼女は天使なのだ。
先ほどの考えを、打ち消す。
﹁帰ろうか、潮屋旅館へと﹂
﹁⋮⋮うん。二人でお風呂に入ろう、汗を掻いたから⋮⋮洗いっこ
しよう﹂
﹁え? 汗を掻いてるの? 全然そうは見えないよ﹂
﹁⋮⋮体中が、唾液と分泌液と、純一の精液でベタベタする﹂
クンクンと自分の臭いを嗅いでいる。
﹁く、臭く無いと思うよ。港ちゃんからは、いつも良い香りがする﹂
﹁⋮⋮いいの、お風呂入ろう。保温されてるから暖かいと思う﹂
朝の寒さで鳥肌の立つ、ボクの身を心配してくれているのだ。
﹁じゃあ、いこうか。ご家族に見つからないようにしないとね﹂
﹁⋮⋮うん。少しスリルがある。岬は朝早く起きるんだ。目撃され
ないように静かにしよう﹂
笑顔を向け、ボクの手を握ってきた。
二人して、山道を下って行く。
303
﹁最終日﹂ その四
◆◇◆
︱︱午前七時四十五分。
潮屋旅館、食卓。
﹁み、港姉ェ、どうしちゃったの? 真夏に、雪が降るよ﹂
驚きの顔を姉に向ける、渚ちゃん。
母親の着る割烹着をスウェットの上に羽織り、炊事場で料理の腕
を奮う彼女。
ボクは、その様子をにこやかに見つめる。
ま、お風呂場で港ちゃんと2ラウンドの格闘戦を行ったのは、妹
たちには内緒だけどね。
﹁⋮⋮卵焼きを作った。母ちゃんに教わりながらだけど﹂
﹁おう! 港は、良いお嫁さんになるよ。ねぇ、純一君﹂
炊事場で汐さんが声をあげる。今朝は、白いTシャツにブルージ
ーンズ姿にポニーテールの髪型だった。Tシャツの裾を結んで、お
へそがのぞいていた。ノーブラなのか、形の良い上向きのオッパイ
のポッチリが確認出来る。
相変わらず、美味しそうなボディです。コレをおかずに、朝から
ご飯三杯は頂けます。
朝食の準備に現れた汐さん。長女からの申し出に驚いていたが、
ニッコリ笑って裏方に徹していた。
304
﹁⋮⋮お味どう?﹂
食卓に座ったボクは、卵焼きを箸で持ち上げる。色形を確認する。
︵いや、まだ食べてないし⋮⋮︶
﹁港お姉ちゃん! 頂きます!﹂
岬ちゃんが手を合わせ、大きな声で挨拶する。
﹁い、頂きます﹂
挨拶を忘れていたな。彼女に向かって笑顔で言い、卵焼きを一口
かじる。
﹁お姉ちゃん! 味噌汁美味しいよ!﹂
︱︱と、岬ちゃん。
﹁⋮⋮お味噌汁を作ったのは、母ちゃん。でも、豆腐と油揚げを切
ったのはウチ。豆腐は大きさが違ってるけど、味に大差はないはず﹂
﹁卵焼き、美味しい。これには砂糖が入ってないね。お母さんのは
甘くて好きだけど、これも美味しいよ﹂
渚ちゃんが、姉に向けて微笑む。
﹁砂糖を入れていないのは、ボクのリクエストなんだ。うん、港ち
ゃん美味しいよ。少し焦げているところがあるけど、味のアクセン
トになってるね﹂
ま、焦げが大きくて、苦い部分が多いけどね。
﹁お・に・い・ちゃん!﹂
﹁いてて!﹂
隣に座る渚ちゃんが、ボクのお尻をつねってきた。
﹁若奥様の料理は、ダンナ様は無条件で褒めなくちゃ﹂
﹁⋮⋮若奥様﹂
顔を赤らめる金髪少女は、抜群に可愛かった。
﹁お姉ちゃんさ、そこのエロ高校生は、裸エプロンで朝食を作ると
305
︱︱喜んで何でも食べてくれると思うよ。魚が嫌いな人間は、この
島には住めないからね。食わず嫌いを直すのも、奥さんの務めだよ﹂
﹁⋮⋮お、奥さん。は、裸エプロン﹂
伏し目がちに、ボクの目を見つめてきた。金色の長い睫毛が瞬い
て、ドキリとなる。
﹁港はさ、もう十六歳になったんだよね﹂
汐さんの言葉。
﹁港姉ェは七月十五日生まれの、蟹座だよ。血液型はB型。今年の
誕生祝いはもう済んだから、来年はお兄ちゃんも一緒にお祝いしよ
う﹂
ズズズと味噌汁を飲む岬ちゃん。
笑顔でボクに言ってきた。
﹁純一君は、十八歳だよね。何月生まれ?﹂
﹁五月二十日の牡牛座です。血液型はO型﹂
﹁血液型は聞いてないでしょ﹂
渚ちゃんは、ご飯に味付けのりを巻いて食べていた。
﹁⋮⋮星座と血液型の相性はどうなの?﹂
隣に座る岬ちゃんに、小声で聞く長女だった。
﹁そういうのは詳しくないから、怜香先生に聞いたらいいよ。占い
とか好きだよ、先生﹂
残ったご飯に、味噌汁を掛けて猫まんまにする次女だった。
﹁男子十八歳、女子十六歳は結婚出来るよね。保護者の承諾があれ
ば、即入籍だ。本島には市役所の出張所があるから、そこに婚姻届
を提出だ!﹂
バン! と自分の胸を叩く汐さん。
﹁もう、汐さんは冗談が上手いんだから﹂
306
ボクも、岬ちゃんに習い、猫まんまにする。掻き込む。
﹁本気だよ﹂
真剣な目で見据えられた。
﹁ブフゥッ!﹂
味噌汁ご飯を吹き出しそうになる。
307
﹁最終日﹂ その五
◆◇◆
︱︱午前十一時四十二分。
潮屋旅館前、道路。
﹁ガ、ガックン﹂
﹁あはは、エンストだ!﹂
笑うのは汐さんだった。
白い車体に、潮風で所々に錆の浮いている軽トラック。
運転席で苦戦しているのはボクだった。
﹁む、無免許ですよ﹂
﹁十八歳なら、免許を取れる年齢でしょ。あたしは十六の頃から、
母に代わって運転してたよ。ま、島全体が潮屋旅館の私有地だから、
無問題だよ。いずれ運転免許を取るならば、経験するのは早い方が
よい! 初体験の手伝いをしてあげるよ。あたしが、筆降ろしの相
手だ!﹂
ガハハと豪快に笑って、ボクの左肩をバシバシ叩いてくる。
﹁お、オートマじゃ無いんですね﹂
︵ふ、筆降ろしだと!?︶
﹁軽トラは、そんなもんだよ。この車は、あたしが中学の頃に、工
事関係者が置いていったのだからね。タダで手に入れたんだ。もう、
二十年選手になるね。よく働いてるけど、走行距離は一万キロにも
満たないよ﹂
308
﹁右足でブレーキを踏んで、エンジンスタート。左足でクラッチを
踏んで、ギヤはニュートラル﹂
習った手順を口に出して繰り返す。ボクはそっちに意識を集中さ
せる。
﹁キュルルルル﹂
エンジンキーを回す。
右足をブレーキからアクセルに移し、少し踏み込む。
﹁ブン! ブルルルル﹂
回転計の針が赤いゾーンに行かないように、注意する。
﹁シートベルトが壊れているんですが⋮⋮﹂
運転席の不備を訴える。助手席の彼女は、チャッカリと装着して
いるぞ。
︵エアバッグなんて、付いてないからな︶
もちろん、エアコンも壊れている。雨の日以外は、窓は全開だそ
うだ。
おおごと
﹁ああ、車検にも出してないからね、修理もされないわけだ。ま、
船で車を運搬するのは、大事なのだよ。お金もべらぼうに掛かるし
ね。ま、事故は自己責任ってことで⋮⋮﹂
素知らぬ顔の汐さん。何か、ダジャレを言ってた。
﹁ガ、ガチャ﹂
ギヤをローに入れる。クラッチを踏む左足を緩めていき、サイド
ブレーキを降ろす。
﹁動いた!﹂
﹁うん、純一君。車がバックしてるよ。この道は平らそうに見える
309
けど、微妙に登っているんだ。坂道発進というヤツだな。サイドを
もう一度引いて、半クラッチで車が動いたら、そいつを解除する﹂
﹁え!? サイドを引いてどうするんですか? ぶ、ブレーキは?
半クラッチ︱︱って、どうするんですかぁ!!﹂
抗議の意味で大声を出す。
﹁ガックン﹂
車の振動と共に、エンジンが停止する。
﹁﹁ギャハハハハ!!!﹂﹂
荷台に乗る岬ちゃんと渚ちゃんの二人が、手を叩いて大笑いして
いる。
﹁⋮⋮だ、大丈夫?﹂
運転席の直ぐそばの道路上に立つ港ちゃん。心配そうにボクの顔
を見る。
グレーのスウェット姿の、ボクだけの天使。
﹁も、もう一度挑戦します。右足でブレーキを踏んで、エンジンス
タート。左足でクラッチを踏んで、ギヤはニュートラル﹂
同じ手順を、繰り返す。
﹁おお、動いた!﹂
驚いたのは汐さんだったが、ボクも同様だった。
動き出すと、意外と楽に操れる。ギヤをセカンドサードと、慎重
に変えていく。クラッチのタイミングも掴めてきた。
﹁⋮⋮ま、待ってぇー﹂
バックミラー越しに、追いかけてくる港ちゃんの姿が確認出来た。
ブレーキとクラッチを同時に踏み、ゆっくりと停車する。
310
﹁ギ、ギィ!﹂
ギヤをニュートラルに入れて、サイドブレーキを強く引く。
道が下っているので、ギヤをバックに入れ、エンジンを切る。
﹁こ、これからは、汐さんが運転して下さい! 狭い道が続くし、
防波堤の上を走ったら、海に転落してしまう!﹂
そう言って車から降りる。汐さんも助手席を出る。
﹁ハイハイ。純一君の仮免試験は、不合格ね。発車する時、周囲の
ひ
確認をしてなかったでしょ。全然ミラーを見なかったよね。そばに
は、港が立っていた。もしも、轢いたらどう責任を取るの? 嫁に
貰うとか言っても許さないんだからね﹂
﹁⋮⋮母ちゃん。嫁って⋮⋮﹂
おかしなフォームで走ってきた港ちゃんが追いつく。頬を赤くし
て、母親の顔を見る。
﹁す、すみません。反省してます﹂
うな垂れて、助手席側に回る。
﹁いいかい、車もクラッチも、女性と同じく優しく扱うんだよ。童
貞の純一君には無理かもな、あはは。時々︱︱気まぐれな事もある
けど︱︱投げ出さないで懇切丁寧に扱ってあげるのが肝心さ﹂
運転席にさっそうと乗り込んだ汐さんは、エンジンを再び掛けて
アクセルを踏み込む。ブンブンと回転数を上げていく。
﹁港! 乗りな!﹂
﹁⋮⋮ハイ﹂
慌てて荷台に取り付く。妹たち二人が手伝っていた。
﹁乗ったね♪﹂
バックミラーを確認した汐さんは、荒っぽくクラッチを繋ぐ。
﹁キュ、キュキュキュキュー!﹂
後輪タイヤが白煙を巻き上げて、車がスタートする。
﹁ら、乱暴に扱ってるじゃ、ないですか!﹂
311
ボクは、助手席の手すりにしがみつく。シートベルトもまだだっ
たもん。
家々の間の、狭い路地を高速で走り抜ける。
﹁ギャー!!﹂
昼寝中の猫が、逃げていく。
︵危ない! 危ない! 危ないですってば!︶
﹁キャー! キャー! キャッ!﹂
女の子のように、悲鳴をあげるだけのボクだった。
スピードを緩めずに防波堤に侵入していく。
﹁キャハハ! 楽しい!!﹂
後ろを振り返ると、ジェットコースター感覚で、乗り心地を楽し
んでいる岬ちゃんの姿を見た。
他の姉と妹は、振り落とされないように、必死な表情で荷台にし
がみついている。
︵う、汐さん! 娘たちを危険な目に合わせてるよ!︶
﹁あ、怜香先生!﹂
﹁キキーイ!﹂
防波堤の先に立つ人物を確認した。急ブレーキで停まる。ボクは、
フロントガラスに頭をぶつけそうになっていた。
実際、渚ちゃんは何処かに当たったのか。広いおでこを押さえて
いた。
﹁あ、皆さん!﹂
先生は、お嬢様のようなピンクのふわふわのワンピース姿だった。
実際、大企業の社長の娘で、お嬢様なんだけどね。その先生が、軽
トラに寄ってきた。
﹁先生! その様子じゃ、実家に帰るんじゃないのね﹂
312
おでこを押さえながら荷台から飛び降りる渚ちゃん。白くて裾の
短いワンピースを着ていた。白のニーハイソックスをはいている。
そして白い靴。相変わらずに可愛い。
確かに、先生は荷物とか持っていなかった。手ぶらであるので、
帰省のためにこの場所に訪れたわけではないようだ。
﹁大事なお菓子が、いっぱい届くんだよね﹂
青空に向けて高くジャンプして飛び降りたのは、学校の体操服姿
の岬ちゃん。定期便が運んでくる荷物の運搬に燃えていた。白い歯
を見せて笑う。
﹁違うの⋮⋮﹂
怜香先生は、落ち着き無くそわそわとしていた。
313
﹁最終日﹂ その六
︱︱午後零時十五分。
如伴島、防波堤。
﹁船、遅いですね﹂
午前十時に本島を出発する定期便。二時間足らずで到着するが、
今日は遅れていた。
﹁そうね。でも天候や潮の流れの関係で、遅れは良くあることなん
だ﹂
汐さんは沖合を、目を凝らして見る。
﹁⋮⋮来た﹂
遥か西南の沖を指差す港ちゃん。
﹁え? 見えない﹂
視力の悪い方ではないボクも、確認出来ないでいた。
透き通る宝石のような青い瞳は、千里眼の能力を有しているのか
!?
グレーのスウェットの彼女を見る。
﹁岬姉ェ、これは食べられるの?﹂
﹁食べられるけど、小さいから可哀相だろう﹂
妹たち二人はよほど退屈なのか、防波堤の蟹とたわむれていた。
数分後、ボクの目にも小さな船影が確認出来た。
314
へさき
﹁⋮⋮誰か乗ってる。舳先に、女の子が立ってる﹂
港ちゃんの言葉。
︵女の子?︶
全く確認出来ないでいた。
﹁旅館のお客さんですか?﹂
﹁そんな話は、聞いて無いねぇー﹂
ボクが聞いても、汐さんは曖昧な返事。頭の後ろに両手をやって
いた。
﹁ブーン﹂
船の低いエンジン音が響いて来た。船舶の姿を大きく確認出来た。
先端部分に仁王立ちしている人影を視認する。
何処か、見覚えのあるシルエット。
ゆうか
﹁ゆ、優佳ぁ!?﹂
﹁⋮⋮え?﹂
﹁優佳? 幼馴染みとかいう人?﹂
当惑する港ちゃんと、ボクを睨んでくる渚ちゃん。
船が防波堤に近づく。
﹁って⋮⋮でしょ⋮⋮連絡⋮⋮から!﹂
船上から叫ぶ声。所々が、風と波とエンジン音に打ち消されてし
まってる。
ふくだ
よしこ
﹁今日は、荷物が満載だよ﹂
船頭である福田 佳子さんが、笑いながらロープを投げる。
﹁可愛い荷物をアリガトね!﹂
315
汐さんが受けて、防波堤に設置してあるビットにもやい結びをし
て、船を固定する。
﹁優佳! お前がどうして!﹂
ゆうか
﹁メールを返信してくれって、言ったでしょ! 連絡が全く来ない
から、本当に心配したんだから!﹂
にしかわ
ああ、さっきからそう言っていたのか、納得。
﹁⋮⋮この女が、幼馴染み?﹂
ボクの横にピッタリと寄り添う港ちゃん。西河 優佳の事を、そ
れこそ頭の先からつま先までジロジロと見ていた。
いつもは制服姿しか見ていないから、私服の優佳は新鮮に思えた。
上がゆったりとした、花柄のワンピース。短いスカートから、綺
麗な白い素足がのぞく。
︵足は、ボクと同じで短かめのはずだが⋮⋮︶
彼女は、高さのある厚底のサンダルを履いていた。だから、長く
てスラッとして見えるんだな。
珍しくメイクまでして、弱点のソバカスを隠していた。唇も光っ
ている。口紅とか塗ってるのかな。
長い黒髪を、大きく一つの三つ編みにしている。
おめかしして、どういうつもりなのだ?
しかし、レンズの厚い銀縁の眼鏡姿の目元は、変わらなかった。
﹁純一! その子、誰なの!?﹂
コチラを指差し、叫んでいた。
﹁ん? ああ、親戚の子。潮屋旅館の長女さん、次女さんに、一番
小さいのが三女さん﹂
並び順に紹介する。確かに、親戚であるのは間違いない。ボクの
母と汐さんは従姉妹同士だから、三姉妹とは﹃はとこ﹄の関係にな
る。
316
その事実を、幼馴染みに伝える。
﹁へーえ。純一って、呼び捨てにさせてるんだ﹂
渚ちゃんは冷たい目でボクを一別し、船からの荷物の運搬作業の
手伝いに回る。
船の小型クレーンで、簡易コンテナが吊されて移動する。
﹁お母さん、荷物が一杯だ﹂
母と一緒に、軽トラに誘導する岬ちゃん。
渚ちゃんは、自分宛のア○ゾンの箱数を数えている。注文分が全
て届いたのか、満足そうな笑みを浮かべていた。
﹁あのー、この船に他のお客さんは⋮⋮﹂
岸壁側から、クレーン操作を終えた佳子さんに向けて叫ぶのは、
怜香先生。
﹁ああ、そこで伸びているよ﹂
船の甲板を指差す。
︵え? 他の客?︶
﹁ああ、怜香さん! お久しぶり! しばらく見ないウチに胸が⋮
⋮いや、いっそうお美しくなって!﹂
青白い顔の美男子の好青年が、ユラユラと立ち上がる。無理して
作った笑顔を浮かべていた。
ま、船酔いにやられていたのね。
しかし、優佳は平気だった。こいつは小さい頃は、バスとかに酔
いやすかったのに︱︱意外だとの感想を持つ。
﹁先生、誰? この、ひ弱なイケメンは!﹂
渚ちゃんが、遠慮無く聞く。
317
さくま
ひろゆき
﹁父の弟︱︱伯父の長男、朔麻 浩之です。私とは、従兄の関係で
す﹂
先生は、恥ずかしそうに紹介をする。
︵従兄? コヤツがSAKUMAグループの後継者なのだな︶
﹁怜香さん! お迎えに来ました!﹂
長身の彼は、長い足を伸ばして、防波堤にヒョイと飛び降りる。
﹁迎えなんて、呼んでいません!﹂
従兄からの握手を拒む先生。大きな胸を両手で抱えて、横を向く。
﹁ご両親と、おじい様は心配なされてますよ。一週間前に、実家に
帰省すると連絡があって以来、一向に返って来ないと⋮⋮、なしの
つぶてだと⋮⋮﹂
高そうな外国製のスーツを着込む彼。ネクタイも上等だ。
暑さではなく、先生の冷たい態度に触れて、額から汗を流す。
﹁お盆前には帰ると、母には連絡を入れました! どうして、あな
たが島まで来るのですか?﹂
困惑している︱︱先生の表情から、読み取れる。
﹁酷いな、怜香さん。おじい様の命令は絶対です。四月から会長の
秘書になった以上は、受けた命令を遂行するのが、僕の務めです﹂
﹁務めであろうがなかろうが、関係ありません! 私は、帰りませ
んから! プンプン!﹂
そう言って、口を尖らせる先生。怒りを表現しているのだが︱︱
ちっともそうは見えない。おしゃまな幼稚園児の、精一杯の背伸び
の行為だ。
﹁こちらが、﹃潮屋旅館﹄の方々ですか。お噂は、かねがね。いつ
も怜香がお世話になっております。うん? ⋮⋮か、可憐だ!﹂
318
少しもダメージを負っていないサラブレッドの青年。万事、陽気
で大らかで羨ましい︱︱金持ちの余裕なのだな︱︱そう思う。
﹁⋮⋮イヤ﹂
港ちゃんが、母親の背中に隠れてしまった。
こういった男性との邂逅は、始めてなのだろう。
﹁何て、美しい! あ、あなたのお名前は?﹂
﹁ちょっと、娘たちには指一本触れさせないよ!﹂
汐さんが両手を肩の高さに上げて、色男に立ちはだかる。
ロケットオッパイがプルンと揺れていた。
﹁あ、あなた様のお名前を︱︱是非お聞かせ下さい﹂
汐さんの手を取る、怜香先生の従兄。
﹁え? あ、あたし? あたしなの?﹂
迷惑そうな顔をしているが、満更ではない︱︱そんな表情の汐さ
ん。
娘たち三人は驚いていた。
かく言う︱︱ボクもだよ!
﹁あのー! 私はどうすれば?﹂
船に残された優佳が、船頭さんに尋ねる。完全に話題に取り残さ
れていた。自分の存在を、精一杯主張する。
﹁荷物は降ろしたからさ、飛び降りな!﹂
佳子さんは、ボクの幼馴染みの小さな背中をバシバシ容赦なく叩
く。
﹁は、はい。飛び降りる⋮⋮飛び降りる﹂
そして、固まる優佳。
319
大事なことなので、二回言いました。
﹁優佳、手を掴んでやるから飛んで! 1メートルも離れてないだ
ろ!﹂
両手を拡げ、決してたくましくはない胸を見せる。
﹁え、えい!﹂
︵や、優佳のヤツ、目をつぶって飛んだぞ!?︶
﹁ドボーン!!﹂
次の瞬間、派手な音がした。そして、防波堤にいた全員に掛かる、
水しぶき。
夏の強い日差しに照らされて、小さくて可愛い虹が出来ていた。
﹁ゆ、優佳ぁ!?﹂
素っ頓狂な声を出して、コンクリート製の岸壁に手を付いて海面
を見るボク。
﹁あ⋮⋮た、助け⋮⋮泳げ⋮⋮﹂
海中へと沈みゆく優佳。そうだ、彼女は泳げないのだった。
﹁﹁大変!!﹂﹂
汐さんと岬ちゃんは同時に叫び、海に着衣のまま飛び込む。
320
﹁最終日﹂ その七
◆◇◆
︱︱午後零時五十五分。
潮屋旅館、食卓。
﹁ず、ずみません⋮⋮ご、ご迷惑を⋮⋮お、お掛けてしまいました﹂
鼻声で、一同に頭を下げる優佳。ボクも隣に座り、潮屋一家と怜
香先生に丁重に礼をする。
﹁いいのよ、いいのよ。それより、眼鏡が無くて大丈夫? 岬が何
度か潜ったけど、見つからなかったからね﹂
汐さんは、食卓にソーメンを並べる。これで何度目だ? 出現頻
度は高くなってくる。
麺と、麺つゆと、薬味だけが並ぶ。
﹁あ、全く見えないです。視力は裸眼で0・1だから、近く以外は、
ぼやけてしまいます﹂
テーブルに乗った昼食を、目を細くして確認している。
麺つゆと、麦茶の入った容器とを見比べている。
岬ちゃんの体操服を着る優佳。化粧も落ち、眼鏡のない顔はグッ
と幼く見える。
ブラも濡れてしまって、乾くまではノーブラの優佳。予想外に発
育していた、幼馴染みのポッチリの現れる胸をガン見する。
短パンからのぞく、脂の乗った太ももを見つめる。
ちなみに、優佳の旅行カバンは樹脂製の赤のキャリーバッグ。ボ
321
クのバッグと色違いの同タイプだ。
去年の秋、修学旅行時に必要になったので、一緒に買った品だ。
今年の秋には、優佳が使うはず。軽くて頑丈なのが取り柄。
ただ、数字を合わせて鍵を開けるタイプのカバンであった。何故
か開かなくて、着替えが取り出せない。旅館の次女の服を借りる︱
︱ボクの幼馴染み。
すす
﹁先生。あの色男ちゃんは、どこに行ったの? ズズズ﹂
渚ちゃんは、一人ソーメンを啜る。ネギや生姜が苦手の彼女。具
無しの素ソーメンを、素のつゆのみで食している。
﹁浩之さんには、学校の保健室に泊まってもらう事にしたの。でも、
祖父の自家用ヘリを使って実家に送ると聞いたときには驚きました。
丁寧に断ったので、次の連絡船が来るまで、そこで寝泊まりさせま
す。皆さんには迷惑を掛けないように努力します﹂
怜香先生も、旅館の昼食に預かっていた。
大量に余ったソーメンの在庫を、解消するために呼ばれただ。消
費期限が近いと聞いた。
その噂の、従兄さんも呼ばれたが、食欲もなくダウン状態が続い
ているとの事。
﹁優佳はどうするんだ? 行く所は無いだろ﹂
ボクの問いに、両目から涙を流す。
﹁うぇ∼ん、どうしよう。連絡船が、一週間に一便とは聞いていま
せんでしたぁ∼﹂
︵ま、旅館に一週間、厄介になるか⋮⋮︶
ボクは腹を括る。
勿論、費用は彼女負担だ。
322
﹁⋮⋮何、あなたバカなの?﹂
落ち込むボクの幼馴染みに対して、辛辣な言葉を投げつける港ち
ゃん。
その彼女はソーメンをズズズと啜り、キュウリの浅漬けをポリポ
リとかじる。
﹁え? し、失礼ですね。それよりも、どうして純一の隣で、寄り
添うように座っているの? いったい、どんな関係?﹂
港ちゃんは、ボクの右に陣取る。左隣が優佳だ。
﹁⋮⋮に、肉⋮⋮﹂
︵肉体関係と言おうとしたな!︶
ボクは金髪少女の口を左手で塞ぐ。とんでもない告白は、幼馴染
みだけではなく、潮屋家との関係を破壊する。
﹁は、﹃はとこ﹄だと説明しただろ。み、港ちゃんには、色々とお
世話になったんだ﹂
大雨の夜。命を助けられた︱︱あ、岬ちゃんにも溺れた所を助け
られていたな。
命の恩人に、酷い仕打ちを返す、クズ人間中のクズの︱︱ボク。
﹁港⋮⋮ちゃん? この外人娘がぁー?﹂
﹁⋮⋮れっきとした日本人です!﹂
珍しく自分の主張を言い切る。
そうだよな、日本で生まれた彼女。父親には認知されているだけ
の関係性だから、アメリカ国籍は有していない。
金髪碧眼の、大和撫子。
その彼女が、珍しく感情をあらわ⋮⋮いや、剥き出しにして歯を
むいている。
323
﹁そ、そうですか。それは失礼しました⋮⋮﹂
直ぐに大人しくなる優佳。そうそう、ボクの幼馴染みは、こうい
う子だった。人当たりは良いが、本心は中々見せない。内弁慶の猫
かぶりの少女。
ボクの前だけで見せる、強がりの女の子。
アレ? これって⋮⋮。
渚ちゃんを見る。
﹁なに?﹂
箸でソーメンを大量に取り、つゆに浸けるが少し溢れてしまって
いた。
﹁何でもないです⋮⋮﹂
ボクは黙って、テーブル上のフキンで汚れを拭く。似たもの同士
だから、仲良くなってくれるかも知れぬ。優佳は一人っ子だから、
弟や妹が欲しいと日頃から言っていた。
新たなる化学変化が、良い方に転ぶのを期待する。
324
﹁最終日﹂ その八
◆◇◆
︱︱午後一時二十八分。
如伴島、南集落。
﹁あ、猫⋮⋮。ニャン太、おいでおいでぇー﹂
優佳が猫を見たいと言うので、旅館の外に出た。防波堤から旅館
の道すがら、たくさんの猫たちを目撃したからだ。猫好きの彼女。
しかし、母親がアレルギーがあるため、飼うことが不可なのだ。
家と家の間。狭い路地から出てきた少し痩せた三毛猫を、手招き
でこちらに呼ぶ。
﹁ニャン太って何だよ。三毛猫は、ほとんどがメス。ほら、オッパ
イがいっぱいあるだろ﹂
寄ってきた猫を、両手で抱えて腹部を見せる。股間にも何もぶら
下がってはない。
猫も、女の子だらけなのかな? 三毛猫率は80パーセント以上
だ。オス猫は間違いなく、ハーレムを構築できるよ。
﹁ニャン!﹂
﹁イテテ﹂
ボクは、爪で引っかかれてしまった。全く、ノラ猫ってヤツは⋮
⋮。しつけがされてないのでやりたい放題だ!
首輪もされてないニャン子は、尻尾を立てて近くの民家の中に入
り込む。少し開いた、玄関の引き戸。
325
﹁おーい! ニャン子ぉー、出ておいでぇー!﹂
他人の家の中へ、呼びかける優佳。
﹁⋮⋮大丈夫?﹂
引っかかれた右手を見やる、港ちゃん。ボクの出向く先には、も
れなくついてくる。
﹁あ! 何で、純一の手を握ってるの!﹂
﹁⋮⋮治療﹂
右手の人差し指。傷のある場所を口に含む、金髪碧眼の美少女。
レロレロと舌がうごめく。
﹁な!﹂
そう発したまま、固まる幼馴染み。
﹁どうかしましたぁ∼? 集金ですかぁ∼?﹂
家の中から老婆が姿を現す。しわくちゃの小さな顔がボクに向く。
始めて見る人だった。三十軒程度の島の集落。旅館と学校の住人
以外を、見かけることは無かった。
﹁⋮⋮いいえ、違います。お騒がせしてすみません﹂
丁寧に頭を下げる旅館の長女。肩幅が狭いためか、グレーのスウ
ェットの首の部分が、片方に寄ってしまう。
﹁み、港様。まぁまぁ、わざわざ、こんなむさ苦しい家に⋮⋮。こ、
こちらが港様のお相手ですか? はぁはぁ、ご立派なダンナ様でぇ
ー﹂
ペコペコと旅館の長女に頭を下げる。
﹁港様?﹂
326
ボクは彼女の顔を見る。
﹁⋮⋮港様はやめて﹂
頬が朱く染まる。
﹁港様は、港様です。島の恩人。島の守り神。ああ、ありがたやぁ
∼﹂
手を合わせ、拝み始めた。
﹁⋮⋮やめて﹂
ますます身を縮める彼女。
﹁恩人? それに、ダンナ様って何よ﹂
無粋な質問を向ける優佳。
やまつ
﹁ああ、ありがたい。ありがたい。港様の力で、島を襲った災害が
なみ
無かったことにされた。おとといからの大雨で、昨日の朝には山津
波。あたしゃ、家ごと押しつぶされていた。疫病神のその生臭坊主
の、悪行の報いじゃ。今度は、大人しくしておれよ!﹂
老婆はボクを指差し言った。
︵生臭坊主? 何の事だ?︶
﹁な、何を言ってるの? このおばあさんは⋮⋮﹂
優佳はボクの肩に手を乗せた。安心よ︱︱との気遣いだ。
﹁み、港ちゃん?﹂
震える声で、隣の少女を見る。
﹁⋮⋮おばあちゃん、心配しないでね。今度は、この人を見張って
ますから。同じ失敗を繰り返しません。でも、新しい異物の存在。
この方々がどう動くか、注視が必要ですね﹂
優佳を見てから、学校の方向に体を向ける港ちゃん。
全てを知る顔だ。
327
◆◇◆
︱︱午後一時十五分。
島を、涼やかな風が渡る。
金髪少女の長い髪の毛を揺らす、爽やかな風。
うるさいまで鳴いていた蝉が、急に鳴りやむ。
少年は不安そうな顔で、潮屋港を見た。
その彼に寄り添う、幼馴染みの女子。
﹁やあやあ、みなさん。こんにちは、こんにちは﹂
分校の教師を従えて、朔麻浩之が歩いてきた。
﹁浩之さん! 本気なのですか?﹂
朔麻怜香は、従兄に手を焼いていた。学校内での告白は、彼女を
驚かすに十分であった。
﹁本気も、本気、大本気です。おじい様や両親から、早く身を固め
るように催促をされているんです﹂
﹁⋮⋮いやぁ、や!﹂
金髪少女は、須和瀬純一の背中に隠れる。男性恐怖症の彼女には、
初対面の男が迫り来る様に耐えられないのだ。
﹁潮屋汐さんの、ご長女ですよね。怜香から聞きました。お母さん
は結婚もせず、旅館を一人で守って、三人の娘を育てあげた。実に
感激しました。僕は一目惚れしたんです。初めての経験でした。今
後は是非とも、僕の事を﹃お父さん﹄と呼んで欲しい﹂
男に迫られて、逃げ腰の港。
328
﹁あのう⋮⋮、港ちゃんが嫌がってるでしょ﹂
少年は男の前に立ちはだかる。
﹁す、すまない。キミのことも聞いたよ。お母さんが汐さんと従姉
妹同士なんだってね。僕と彼女の間を取り持って貰えないかな。ご
家族一緒に東京で暮らしましょう。そうすれば、怜香も分校教師の
仕事から解放される﹂
実に爽快そうな笑顔を向けられて、当惑する少年。
女教師も、迷惑そうにしている。
﹁勝手にするといいェ。百年前、潮屋の一族を連れ出そうとして島
の怒りを買った男は、寺ごと海に沈んだ﹂
低い不気味な声が、路地裏に響く。
一同は不安げな顔で、金髪碧眼少女を見つめた。
完
329
﹁最終日﹂ その八︵後書き︶
これにて、完結です。
時間がありましたら、省略した個別のエピソードをアップしたいと
考えています。
感想、お待ちしています。
誤字・脱字・誤用の報告でも構いません。
この作品を、読んで頂きました全ての人々に感謝します。
田中 義一郎
330
﹁二日目﹂ その一・五︵渚の部屋にて︶
︱︱午後零時十五分。
潮屋旅館、客間。
﹁ね、お兄ちゃん! お昼食べよ﹂
ガラリとフスマが開いて、渚ちゃんが入って来る。またもや足で
開けたのだった。
彼女は着替えたのか、上は淡いピンク色のタオル生地の半袖シャ
ツに、下は黒地に白の水玉の短いスカートというスタイル。靴下も
履いていない素足だった。
小学六年生の女の子が、こんな事ではいけないと思うのだよ。い
つか説教をせねば⋮⋮そんなことを考えながら、彼女の短いスカー
トの中をのぞく。新しくはき替えたパンツが確認出来た。色は黒?
まぁ、大胆!
﹁ふぇあ? そんな時間?﹂
客間で横になっていたボクは体を起こして部屋の時計を見た。島
の学校で渚ちゃんと色々あって、旅館に戻ったのが十一時頃。何だ
か疲れて、横になったら眠っちゃったらしい。
窓を開け放っていたので、海からの風が冷たくて心地良かったの
だ。ちなみに、この客間にはエアコンが設置してあるけど、﹁使う
な!﹂との汐さんからの強いお達し。電気代節約とは言っていたけ
ど、単に壊れているんだと推測。かなり大型で古い機種だった。
﹁よだれ垂れてるよ﹂
︵ああ、ああああ︶
渚ちゃんに指摘されて、ボクは口の周りをティッシュで拭く。丸
331
めてゴミ箱に投げるが外してしまった。
﹁お兄ちゃんはだらしなくて、漏れ漏れだね⋮⋮﹂
渚ちゃんはニヨニヨと笑いながらボクの手を引いて、食卓のある
六畳の和室に連れて行く。この部屋は、彼女たち家族のリビング兼、
ダイニングになっているのだ。
古い大型のブラウン管テレビが鎮座している。しかし、その上に
はデジタル放送のチューナーが乗っかっていた。
しかし昼時なのに、誰も居ない。
﹁今日のお昼は何?﹂
長方形の大きなテーブルに何もないので、渚ちゃんの顔を見る。
﹁ソーメン!﹂
そう言って、食卓から一段下がった場所にある炊事場に向かう渚
ちゃん。そこには大型の冷蔵庫が二台あった。こちらも扉を足で開
けようと挑戦していたが、無理そうなので大人しく手を使う。
﹁ハイ! コレ持って行って﹂
金ざるに満杯に盛られたソーメンの山。それにポットに入れられ
たソーメンつゆをボクに手渡して来た。
﹁あ、はいはい。で、具は?﹂
﹁無いよ﹂
彼女は冷蔵庫の隣の食器棚から、つゆを入れるガラス容器を二つ
持ってきた。箸はテーブル上の箸入れに入っている。各人は自分の
箸を取って使う。ボクのは黒の漆塗り。
﹁いただきます﹂
正座して手を合わせ、その後にソーメンを食べ始める渚ちゃん。
﹁他のご家族は?﹂
ボクは開かれた扉から家の中を見渡す。
﹁居ないよ。ズズズー﹂
332
大量に箸に取り、つゆにベチャベチャにつけて食べている。
﹁汐さんと岬ちゃんはどこに行ったの?﹂
ボクは少量取って、ソーメンの先に少しつゆを付けて食べる。こ
ふくだ
よしこ
れは、ソバの味わい方だったか。しかし、ゆで時間が長いのかフニ
ャフニャの喉越しだった。
さば
﹁お母さんと岬姉ェは、魚を捌きに行った。福田 佳子さんが大き
な鯛を持ってきたから、吉田のお婆ちゃんが買い取って、それをお
母さんとお姉ちゃんがお刺身にするの。岬姉ェは料理修行中。ズズ
ズ⋮⋮ソーメン美味しい?﹂
そう言って再び啜る。福田佳子さんは船頭さんの事。吉田のお婆
ちゃんが誰かは知らないが、二人は旅館には不在なのだな。
﹁うーん。少し茹で過ぎかな。つゆも甘いし、ボンヤリした味。具
もないし、せめてネギと生姜は欲しいよね﹂
﹁じゃあ、食うな!﹂
怒った彼女は、ザルを自分の元に引き寄せて、一人で食べ始める。
﹁⋮⋮まさかこれ、渚ちゃんが作ったの?﹂
恐る恐る尋ねる。
﹁そうよ! 文句ある!? つゆは市販のめんつゆを薄めたのに、
少しだけ砂糖を入れたの。ネギと生姜は嫌いなの!﹂
﹁いや、文句じゃないよ、アドバイスかな。そうすると、もっと美
味しく食べられるよ。ボクも夏には自分で作ってたから、良く分か
るんだ。両親は働いているから、夏休みの主食は、コレだった﹂
ボクは手を伸ばし、ザルからソーメンを取り食べ始める。
﹁そう⋮⋮じゃあ、今度教えてね⋮⋮﹂
ガラスの容器と箸を持った渚ちゃんは立ち上がる。トコトコ歩き
出したので、どこ行くのかな︱︱と、目で追うと、アグラをかくボ
クの膝の上に乗ってきた。
333
﹁な、渚ちゃん。み、見られたらマズイよ⋮⋮﹂
短いスカートをたくし上げて、下着姿のお尻をボクの股間に押し
つけて来た。
﹁誰も見てないよ⋮⋮﹂
後ろを向いてニヤニヤと笑う彼女。短パン姿のボクのアソコがム
クムクと持ち上がる。
﹁な、渚ちゃん⋮⋮﹂
ボクも興奮してきた。彼女の腰を抱えてお尻の割れ目に勃起した
ペニスを押しつける。
﹁えへへ、お兄ちゃん、興奮した? わたしも興奮してきた。見て
みて、このパンツお母さんのなんだよ﹂
スカートを上げて中を見せてくる。
黒のスケスケシースルーで、横が紐で結ぶタイプのパンツだった。
汐さんのコレクションの大人な下着。紐パンだから子供の細い腰の
彼女でもはいてられるのだな︱︱納得。
﹁エッチな下着だね。渚ちゃんのお○んまんが丸見えだよ﹂
指を伸ばして、下着の上から触る。そうか、汐さんはこんな下着
持っているんだ。今度、着てもらおう。
﹁えへへ、お部屋行こう。ねぇ、お部屋で続きしよう⋮⋮﹂
彼女も腰をクネクネさせて誘ってくる。
︵小学生が生意気だ!︶
﹁うん。行こう、行こう﹂
ボクは前屈みになって、渚ちゃんに手を引かれて二階への階段を
昇っていく。食べかけのソーメンはそのままだった。
334
﹁ガラッ!﹂
渚ちゃんは、自分の部屋の斜め前のフスマを足で開ける。
﹁この部屋は?﹂
ボクも中をのぞく。
﹁港お姉ちゃんの部屋。居ないみたいね、ヨシヨシ﹂
︵港お姉ちゃん? ダレ?︶
綺麗に整頓された部屋を見る。物も少なかった。壁に掛けられて
いる服を見る。グレーのスウェットの上下だった。地味な趣味の子
なんだと、勝手に推測。
﹁ボフゥ、ボフ﹂
渚ちゃんは自分の部屋に入り、ピンクのベッドにうつぶせに飛び
乗った。
﹁お兄ちゃん。コレコレ﹂
﹁コレコレって⋮⋮何だよ﹂
ボクは苦笑する。お尻をこちらに向けた彼女は、スカートをめく
り上げ、シースルーの下着越しのお尻を見せつける﹂
﹁どう?﹂
﹁どう? と、聞かれても⋮⋮﹂
小さくて可愛い子供のお尻だった。
﹁ねぇねぇ、お兄ちゃん遊ぼう! 渚のお尻で⋮⋮﹂
そう言って、股の間から顔をのぞかせ、臀部を指で開いて見せて
来た。可愛らしいお尻の穴が丸見えだ。
﹁あ、遊ぶって⋮⋮﹂
ボクは思わず視線は逸らしてしまったが、ペニスはギンギンにな
っている。横目でチラリと彼女のアナルをのぞいていた。
部屋のフスマを後ろ手で、ゆっくりと閉める。
335
﹁お兄ちゃん、裸になってベッドに仰向けになって⋮⋮﹂
女豹のポーズ? うんにゃ、子猫が毛糸玉にじゃれるポーズでボ
クを誘惑してくる。お尻を振る振る。
﹁う、うん⋮⋮﹂
声では渋々といった印象を与えるが、あっという間にTシャツと
ズボンとパンツを脱いで、言われた通り真っ裸になる。ベッドに寝
っ転がる。
﹁ねね、これ知ってる?﹂
スカートだけを脱いだ彼女が手を伸ばし、学習机の引き出しの中
段から取りだした物⋮⋮。
﹁アナル⋮⋮ビーズ⋮⋮﹂
﹁知ってるんだ。じゃあ、話は早いよね﹂
渚ちゃんはボクの体の上に逆向きに覆い被さる。この形は⋮⋮。
﹁シックスナインをするときに、こんな格好になるんだよね﹂
ボクのペニスに彼女の熱い息が掛かる。
﹁コレを入れるんだよね。お尻に⋮⋮﹂
ボクはジャラリとソレを持つ。直径二センチほどの球が八個あり、
紐で繋がっている。色は蛍光ピンクで、彼女の好みの色なのだろう。
スケスケ黒パンを、ペロリとめくる。横の蝶々結びを解いて、渚
ちゃんの下半身はツルツルの真っ裸だ。上の服は着込んだまま⋮⋮
誰かに踏み込まれたならば、全裸のボクは立場は無いよね。
﹁ヤン⋮⋮。うぐぐ﹂
そう言ってから、彼女の口がボクのおチンチンをふくむ。
渚ちゃんは体温高い系なのか、口の中はとても熱かった。お尻の
中の方もアツアツだったけども、それはまた別の味わいの方法。
336
﹁入れるね。ローションも垂らしておくよ﹂
枕元に置いてあったローションの容器。それを取り上げて小桃の
臀部に垂らす。左手の中指を肛門に侵入させる。
一瞬口の動きが止まった。
﹁あ、指、気持ちイイ。お兄ちゃん、早くおもちゃを入れて、入れ
て﹂
ボクはリクエスト通りに、胸の上に置いたアナルビーズを取り上
げる。ローションでベトベトの左手で掴んで一個目の球を渚ちゃん
の肛門に押し当てる。
ヒクヒクと痙攣する彼女の菊門。皺の一つ一つが期待に震えてい
るのだ。
﹁渚ちゃん! お口の方がおろそかになってるよ﹂
﹁ふぇえ⋮⋮ごみんなさぁーい﹂
指摘されて気が付いたみたい。可愛くおののく。
﹁お尻に集中する?﹂
﹁うん、入る所見る。どんな風にお尻がなるのか、見てみたい﹂
彼女はボクの下腹部に頬を乗せて、自分のお尻の方へと窮屈に首
を傾けていた。
好奇心に満ちた目を向ける。探求心に溢れる渚ちゃんなら、夏休
みの宿題の研究発表の題材にするとイイヨ。
渚のお尻の穴観察日記︱︱ボクも、朝昼夜と成長日記を付けない
とね。
﹁入れるよ﹂
﹁うん⋮⋮﹂
ゆっくりと一つ目の球を押しつける。突然の異物の突入に戸惑う
彼女のアヌス。昨日、海で見た潮だまりのイソギンチャクのように、
固く閉じて外敵を拒んでいる。
しかし、それが大好物の獲物だと分かると、押し込む人差し指ご
337
と飲み込んでしまった。ホント、生き物みたい。
﹁一個目が入ったよ﹂
﹁うん、分かる。次も入れて⋮⋮﹂
紐をたぐり寄せて二個目を押しつける。今度はスムーズに入って
行った。この場所は出口オンリーの場所なのに、幼い頃から間違っ
た使い方をされていて、異物が挿入されてもソレを飲み込んでしま
うんだな。次々と入れていく。
﹁どんどん入るね。渚のお尻はイヤらしいな。チンポだけでは飽き
たらずに、大人のおもちゃを飲み込んじゃうんだね。お母さんの汐
さんもビックリだ。可愛い小学生の娘は、余所から着た高校生と、
肛門を使っての遊戯を楽しんでいる﹂
﹁もう、お兄ちゃんのイジワル⋮⋮あ、また入った。コレで六個目
?﹂
﹁うん、あと二個だよ。どう? お腹の中にずいぶん溜まったんじ
ゃない? 排出感覚が芽生えるんじゃ無いの?﹂
﹁うん。お兄ちゃん、渚のお腹パンパン。スゴイ⋮⋮便秘になった
ときみたい、お腹の所がカチカチになってる﹂
自分の指で下腹部を押していた。
﹁ホラ、次のも入った。少し抵抗が増えたよ。大腸の出口付近に固
まっているんだね﹂
渚ちゃんは体を起こす。小さな体に大量の異物を投入したのだ。
本来は体の中には存在してはいけない物体。腰に手を当てて、肛門
に力を入れたり抜いたりしている。
﹁ふぅ⋮⋮ふぅ⋮⋮﹂
彼女は深呼吸する。お腹のポッコリが上下する。
﹁お腹苦しい? 無理しなくていいよ。体が慣れていないし、渚ち
ゃんは子供だからね。コレは大人の女性⋮⋮しかも、アナルの開発
338
されちゃった人が使う物だよ﹂
﹁通販のサイトには、もっとスゴイのが売っていた。試してみたい
けどちょっと怖い﹂
渚ちゃんは、親指と人差し指で丸を作る。そのサイズは、今回の
タマタマの二倍はあろうかという大きさだった。
﹁じゃあ、抜いちゃおうか。このリングを持って引っ張るんだね。
どう? 一気に引き抜く?﹂
﹁スポ、スポ、スポ﹂
そう言ったボクは、油断し切った彼女から三個ほど一気に取りだ
した。
﹁あん! あん! あん! 生まれちゃった。出て行っちゃったぁ
∼。渚のお腹から卵が三個生まれたのぉ∼﹂
産卵するウミガメのように、両目から涙を流す渚ちゃん。
お尻がフルフルと震え、股間からは雫が垂れ下がる。
﹁濡れちゃった?﹂
ボクは渚ちゃんのプックリお○んこから出ている液体を、指です
くう。
﹁やん⋮⋮﹂
ブルブルと下半身が震えていた。しっかりと快楽を感じているん
だな。彼女の顔を見る。指をゆっくりと彼女の膣に入れようとした。
﹁ダメ!﹂
顔が怖くなり、彼女が手首を掴んできたので、やめる。
﹁ご、ごめん。今は、渚ちゃんのお尻で遊ぶんだったよね﹂
﹁そう⋮⋮。今度はゆっくり抜いて⋮⋮﹂
リクエストにお応えして、アナルビーズを慎重に引っ張る。
﹁あ⋮⋮お尻の穴が広がってる。あんまり大きいと裂けちゃうぅ、
渚の小さな穴が裂けちゃうぅう!﹂
339
球体の一番大きな部分を乗り越えると、球の方から自然に出てき
た。
﹁渚ちゃん。どういう感覚なの? ウンチをしている時と一緒?﹂
長らく感じていた疑問を彼女に投げかける。
﹁ううん﹂
彼女はゆっくりと首を横に振る。
ボクは六個目を引っ張り出す。彼女の顔が恍惚となっていた。
﹁コレは固いの。ウンチは便秘の時でもある程度は柔らかいのね、
温かいし⋮⋮。これはシリコン製だから、表面がツルツルしていて、
ヌルっとスポっと出てくるの。本当に、卵を産んでる気分なの。変
な気持ち、人間は卵生ではないのにね。ねぇ、お兄ちゃんもアナル
ビーズ入れてみる? わたしは、ショタ系もイケる口なのよ。お兄
ちゃんみたいな可愛い男の子が、マッチョでムキムキな男の人にお
尻を襲われるの﹂
﹁イヤ、ボクはホモじゃないし、そんな趣味はないし⋮⋮謹んでお
断りします﹂
背筋がゾゾゾとなる。本気で考えていそうだ。ボクの後ろの貞操
が危ない!
﹁チィッ⋮⋮残念。お兄ちゃんもお尻の快楽に芽生えて欲しかった。
東京に帰ったら、アナルを話題にしてメールをするの。アナルバイ
ブを購入して感想を述べ合うの!﹂
目が吊り上がり、ニヤリと笑っている。彼女は自分の考えに支配
されているんだね。
﹁ホラ、今はこのアナルビーズの感想を言ってごらん。ネット通販
の使用者の感想を書き込んで、星の数で採点するんだ。そんで﹃こ
のレビューは参考になりましたか?﹄で﹃はい﹄を一杯もらうんだ
よ﹂
﹁もうやってるよ。二十三歳のOL﹃ビーチサイド﹄さんのレビュ
ーは、﹃臨場感溢れる使用感想で、こちらも興奮してます。参考に
340
なって、商品を購入しました! 私は、ビーチサイドさんのファン
です!﹄って書かれるんだよ﹂
﹁へー⋮⋮﹂
言葉が出なかった。ビーチサイドって⋮⋮海岸、﹃渚﹄の意味。
そのままヤン。
﹁はうはうはう⋮⋮﹂
ボクの体に体重を預け、フルフル震えている渚ちゃん。
﹁全部出た出た。最後の方には、渚のウ○チが付いてたよ﹂
﹁え?﹂
﹁ウソウソ﹂
ボクは枕元からティッシュを大量にとって、ビーズを乗せる。流
石にウ○チは無かったが、腸内の粘液が大量に付いていたりする。
これは、ローションじゃないね。
﹁渚ちゃん。ゴムは? これからキミのアナルにギンギンのコレを
入れて⋮⋮﹂
﹁ヤ! お股がヌルヌルベチャベチャする! お風呂いこう! お
風呂! ね、お兄ちゃん﹂
そう言ってボクから離れて、ベッドから飛び降りた。
﹁え?﹂
ボクはパンパンになったおチンチンを右手で押さえて、鎮めよう
とする。
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﹁二日目﹂ その一・六︵渚と浴室にて︶
◆◇◆
︱︱午後一時五分
潮屋旅館、浴室。
﹁うひゃ、冷たいー! 冷たいー!﹂
浴室壁のシャワーノズルから出てくる冷水。興奮し、火照った彼
女の体にはそりゃー気持ちイイだろうて。
風呂マットにアグラで座るボクは、渚ちゃんがお尻を突きだして
洗う姿に、股間は反応していた。
﹁お湯は出ないの?﹂
﹁温水器のスイッチを入れると出てくるけど、お母さんがうるさい
の⋮⋮。うひゃ、うひゃひゃ。ちめてー﹂
倹約家で、娘たちにグチグチ小言を言う汐さんの姿を想像する。
﹁そう、気持ちよさそうで何よりだけど、ボクのこれはどうしてく
れるの?﹂
ボクは屹立するペニスを指差してそう言った。
﹁お兄ちゃん。フェラしてあげる⋮⋮。でも、うーん﹂
あごに手を当てて考え込む彼女。小さな渚ちゃんのお口には大き
すぎたかな︱︱なんて、自画自賛してみたりする。
﹁どうした?﹂
﹁むだ毛がイヤ! ヤッパリ、剃る!﹂
浴室のシャンプーとか置いてある場所から、T字型の安全カミソ
342
リを持ち出して来た。
﹁むだげ?﹂
シャワーソープを手にとって泡立てている。その姿は、小さなソ
ープ嬢だった。
﹁そう、お母さんが脇の下とか剃ってるよ。わたしが、お兄ちゃん
のむだ毛を剃る﹂
渚ちゃんは、ボクの股間に泡を塗りたくってきた。小さな手でコ
ネコネされて、更に興奮度がアップです。
しかし、カミソリを持つ手がプルプルしていて危なっかしい!
﹁な、渚ちゃん。ボクが自分で剃るよ。このままだったら、陰茎を
切り取られそうだ。その間に、渚ちゃんには﹃泡踊り﹄でもしても
らおうかな﹂
﹁陰茎は知ってる。チンチンの﹃サオ﹄の部分ね、それは漫画で見
た。でも、﹃泡踊り﹄は何? 知らない!﹂
T字の○印カミソリを渡してきた。
﹁渚のツルペタの胸に石けんの泡を付けて、ボクの体を洗うんだ。
股間にはタワシがないから、渚の体全体でボディブラシになるんだ﹂
﹁へー。そんなのがいいんだ﹂
ボディソープを大量に取って、胸で泡立て始めた。何ともション
ボリなボディスポンジだった。そして、背中に押しつけて来た。
﹁お、渚の胸のポッチリが背中に当たってる。生意気な小学生は、
興奮して乳首がカチカチになってるぞ﹂
ボクは、股間のむだ毛処理を終えて、彼女に向き直る。まあ、サ
オとタマタマの陰毛を剃っただけなんですけどね。
そうだ、ゴムは忘れてしまったな。この股間のいきり立った怒り
は、どうして鎮めようか。泡だらけだから彼女にフェラしてもらう
のも⋮⋮。
343
﹁お兄ちゃん。ちんち⋮⋮カチカチ﹂
後ろから、ボクのペニスを握ってきた。このまま小さな手の手コ
キで処理してもらうのも良いけどね。
﹁ねぇ、渚ちゃん。素股で出させてよ﹂
﹁すまた?﹂
キョトンとした顔をボクに向けて来た。色んな知識は有している
が、知らないことは全く知らないらしい。
﹁正常位がいい? それともバック? 騎乗位もいいかもね﹂
﹁えっと、体位を選ぶのね? うーん、騎乗位は、お兄ちゃんの体
の上にまたがるのよね﹂
ボクはマットの上に仰向けにされた。石けんでツルツル滑るなか、
お腹の上に乗っかる渚ちゃんの小さなお尻。
﹁この格好で、ボクのチンチンを渚ちゃんのお股で挟んで欲しいん
だ﹂
﹁はさむ⋮⋮﹂
考えている。膝を閉じようと挑戦してるが、滑って無理のようだ
った。
﹁それだったら、ボクが手を持っていてあげるから、おチンチンに
またがってお尻を前後に動かして欲しい﹂
ボクは腰を動かして、彼女の股間にペニスを押しつける。このま
ま小さなヴァギナに挿入するのもありだけど、せっかく手に入れた
極上のオモチャだ。相手に嫌われたら仕方がないからね。このまま
渚ちゃんを手懐けて、遊びまくろう!
﹁こう? こうするの? 何か安定しない! 手を離さないでね﹂
ボクのお腹の上で、渚ちゃんのお尻が動く。彼女のぷっくりお○
んまんと、お尻が押しつぶされたチンチンの上を往復運動している。
﹁分かってる。チャンと握ってるよ。あ、ああ、渚ちゃんのぷにぷ
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にアソコがボクのチンチンに当たってる。出る、出る、出ちゃうぅ
ぅぅ!﹂
声を出したボクは、自分の腹部に盛大に射精した⋮⋮。
︵ああ、何て情けないんだ︶
萎んでしまったペニスと同時にボクの心も萎えてしまう。
﹁あの、渚ちゃん⋮⋮降りて⋮⋮洗うから﹂
﹁うん! 任せて!﹂
何を勘違いしたのか、彼女はシャワーノズルからの水を全開にし
てボクに掛けて来た。
﹁つ、冷たい! 冷たい!﹂
水道水は地下の配管を伝ってくるのか、真夏にも関わらずに冷た
かった。いや、冷水を浴びせられるとはこの事だ!
﹁あはははは。お兄ちゃんのおチンチン、縮こまっているよ! あ
はは、可愛い。赤ちゃんみたい!﹂
この言葉は、ボクの心を深くえぐる。
﹁渚ちゃん。傷ついたよ⋮⋮﹂
バスマットに正座したボクは、顔の前で両手の人差し指をツンツ
ンとする。
﹁ゴメンなさい。じゃあ、これからお尻でする? わたしの体で温
めてあげる﹂
彼女はボクに抱きついて来た。二人とも、水の冷たさで鳥肌が出
来ていた。
途端に、固さと大きさが増すボクの分身。
﹁め、面目ない﹂
正座する両足の間から、ムクムクと持ち上がっている。
345
︱︱その時。
﹁渚! 居るんでしょ! テーブルの上に、ソーメンが出しっぱな
しになってるわよ! チャンと片付けなさいと、いつも言ってるで
しょ! 全く⋮⋮渚ぁ!﹂
汐さんの大きな声が家中に響く。
﹁ヤベ、返って来た⋮⋮﹂
小さく言って、舌を出す渚ちゃん。
﹁ごめんなさーい! 今、お風呂でシャワー浴びてるの! 汗をか
いたから!﹂
大声で母親に返していた。
︵ぼぼぼ、ボクはどうしよう︶
汐さんに、風呂場に踏み込まれたら一巻の終わりだ。二人とも裸
だもの⋮⋮言い訳は出来ない。おまけに、渚ちゃんは小学生なんだ。
見つかったらヤバイヤバイ。
﹁お兄ちゃんは、わたしがお母さんの相手している隙に、風呂から
出て客間に逃げ込んで。着替えの服はあるんでしょ﹂
﹁う、うん﹂
彼女の言う通りにする。
﹁ドタドタドタ﹂
素っ裸のまま風呂場から出て行く渚ちゃん。
﹁コラ! 渚! なんで濡れたまま廊下を歩いているのよ! ホラ、
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ちゃんと拭きなさい!﹂
﹁えー、暑いから、二階の部屋からこのまま入ったんだよ。いいじ
ゃん! 直ぐに乾くからさ!﹂
﹁何言ってるの! 小学生の女の子が家の中を裸でうろついていて、
純一君にでも見られたらどうするの!﹂
﹁いいジャン! 減るモンじゃないし!﹂
言い争う母と娘。丁度玄関付近の階段の下だった。
真っ裸のボクは、キョロキョロと見渡して客間へと駆け込んで行
く。
﹁ガラッ!﹂
﹁あ!﹂
﹁あ!﹂
部屋に入ると、取り込んだ布団を押し入れに仕舞う岬ちゃんの姿
があった。
真っ裸のボクは股間を押さえ、うろたえる。
﹁イヤ、あの⋮⋮裸なのは、暑くてお風呂場で水シャワーを浴びて
いたからなんだ﹂
必死に言い訳をする。布団が干してあったのは勝手口の方向だ。
玄関から入ってきた汐さんと渚ちゃんには、接触していないだろう。
﹁そう⋮⋮裸を見てしまってごめんなさい﹂
深々と頭を下げて部屋を出て行く、体操服姿の岬ちゃん。
﹁でも、あの時の事は許さないんだからね﹂
ピシャリとフスマを閉められた。海で裸を見たことは、これでお
あいことはならないようでした。
部屋で服を着込む。
色々あったな⋮⋮疲れて畳の上に大の字になる。
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﹁スー﹂
ゆっくりと開くフスマ。
﹁んあ?﹂
ボクはそちらを見やる。
﹁服を忘れてるよ﹂
渚ちゃんは、ボクのTシャツと短パンを届けに来たのだった。彼
女もちゃんと服を着込んでいた。
﹁あ、ありがと。アレ? ボクのパンツは?﹂
短パンと一緒に彼女の部屋に脱ぎ捨てたはずだが⋮⋮。
﹁うふふ。はいてるの⋮⋮﹂
ヒラリとめくったスカートの下には、ボクのグレーのボクサーパ
ンツがあった。
﹁ちょっと、何、ボクのパンツはいてんの!﹂
﹁えへへ。彼氏のパンツをはく彼女⋮⋮夢だったの。ね、で、お兄
ちゃん。パンツからはお兄ちゃんの男の匂いがした。興奮してきた
の⋮⋮。ね、しよ。ゴムとローション持ってきた﹂
彼女は小さめのトートバッグを抱えていた。
﹁え、あの⋮⋮﹂
﹁お母さんは夕飯の仕度を始めたし、岬姉ェは海に獲物を獲りに行
った。ね、この部屋でしよ﹂
モジモジと腰をくねらせる渚ちゃん。
﹁そうだね。もう少し遊ぼうか⋮⋮﹂
笑顔のボクは、部屋のフスマをゆっくりと閉める。
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PDF小説ネット発足にあたって
http://novel18.syosetu.com/n1210br/
女犯の島
2016年7月14日14時22分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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