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付録(5.7MB) - 経済産業省・資源エネルギー庁

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付録(5.7MB) - 経済産業省・資源エネルギー庁
付録 1.
「先進的地層処分概念・性能評価技術高度化開発委員会」の実績
本事業では,研究計画,実施方法,得られた結果について,外部有識者による客観的な審議・
検討を行い,いただいた助言を反映して事業を適切に進めるために,
「先進的地層処分概念・性能
評価技術高度化開発委員会」を設置した。
本委員会の構成委員,開催実績,及び各委員会での主な意見・助言は以下のとおりである。
1.
2.
構成委員(五十音順)
杤山 修
(財)原子力安全研究協会 処分システム安全研究所所長
石黒 勝彦 原子力発電環境整備機構 技術部 部長
奥田 洋司 東京大学 人工物工学研究センター 教授
加藤 正美 (独)原子力安全基盤機構 廃棄物燃料輸送安全部 部長
佐藤 努
北海道大学大学院 工学研究院環境循環システム部門 教授
新堀 雄一 東北大学大学院 工学研究科量子エネルギー工学専攻 准教授
増田 純男 (財)原子力安全研究協会 研究参与
松井 一秋 (財)エネルギー総合工学研究所 理事
委員長
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
開催実績
・第 1 回委員会
日時
:平成 23 年 9 月 15 日(木) 13 時 15 分~17 時 45 分
場所
:経済産業省 別館 1 階 101-2 共用会議室
審議事項 :事業の全体概要,各課題の平成 23 年度計画及び進捗状況を紹介するととも
に,アプローチ,実施内容,目標設定の適切性についての審議・検討
・第 2 回委員会
日時
:平成 24 年 2 月 9 日(木) 13 時 15 分~17 時 45 分
場所
:経済産業省 別館 9 階 948 共用会議室
審議事項 :平成 23 年度成果の審議・検討
3.
各委員会での主な意見・助言
各委員会での審議・検討でいただいた主な意見・助言を付表 1-1~付表 1-2 に示す。
第 1 回委員会では,事業の全体像,平成 22 年度の計画及び委員会開催時点までの進捗状況につ
いて基本的に合意をいただいたうえで,進め方についての期待及び留意点が指摘された。
第 2 回委員会では,順調に成果が積み重ねられているとの評価を受けた。あわせて,本年度成
果を報告書としてまとめていく上で留意すべき点,本事業をさらに良いものにしていくための具
体的な助言等を頂いた。
また,報告書ドラフトについて,構成や記述レベルを中心とするレビューを行っていただき,
そのコメントを反映して最終報告書を取りまとめた。
付 1-1
付表 1-1
平成 23 年度第 1 回委員会での主な意見・助言
○全体共通
・ 平成 22 年度までの研究開発により得られた成果を活用しつつ本年度着実に技術開発を進め
ることを期待する。
○個別課題
・ 最適化技術及び統合・利用支援環境の開発:
ステークホルダーの意見等を取り入れる技術を作れば済むものではなく,社会的合意形成
に寄与するものになることを期待する。また最適化等の結果を示す場合に,結果だけではな
く結果に対する専門家の補完的意見・制約条件等も併せて示せると良い。
・ 先進的地層処分概念の開発:
処分概念のレベル(処分全体の概念もあれば,個々の要素の概念もある)や,境界条件の
取扱いが適切に整理されることを期待する。
・ 性能評価技術の開発:
性能評価統合技術については,e-PAR 及び PAIRS の公開(インターネットあるいはパッケ
ージ版での公開)を期待する。また,初心者に対して解析の内容(目的や入力パラメータ等)
の理解向上のための仕組みを視野に入れた e-PAR 及び PAIRS の開発及び運用を期待する。
・ 先進サイクルシステムに対応した処分概念/性能評価技術の開発:
サイクル条件による使用済み燃料・廃棄体の特性とその処分への影響についての従来の体
系的整理に加えて,福島第一原子力発電所事故を踏まえた直接処分等の整理・検討も進めて
いくことを期待する。また,廃棄体情報として取り扱う対象の整理を期待する。
付表 1-2
平成 23 年度第 2 回委員会での主な意見・助言
○全体共通
・ 各課題については順調に成果が積み重ねられている。
・ 今後は各ツールが使われる先を意識して成果を実際に使われるような形でまとめられるこ
とを期待する。
○個別課題
・ 最適化技術及び統合・利用支援環境の開発:
最適化に係るツールの整備には意義があり,さらに各個人の価値判断をどのようにとりこ
んでいくかも含めて求解のプロセスの透明性を高めていくことを期待する。
・ 先進的地層処分概念の開発:
ステークホルダー(市民)要求の整理と専門家の対応方針を関連させ整理すること,また
処分概念の創出支援に関連させることについてその検討の過程及び方法論を明らかにして
おくこと,文言の意味に曖昧さがないように示すことが重要である。
・ 性能評価技術の開発:
開発された性能評価統合技術(PAIRS/e-PAR 技術)を多くの人使ってもらうようにするた
めのセキュリティ対応等を含めた検討を行うこと,次世代性能評価技術の実現に向けて課題
探索技術の各事例を着実に進めていくこと,それら技術の連携のあり方について具体的な説
明ができるようにしておくことが重要である。
・ 先進サイクルシステムに対応した処分概念/性能評価技術の開発:
廃棄物特性定量評価ツール等利用できるものが出来てきており今後は多くの人に使って
もらえるようにすることが重要である。また,データベースでは,固化体研究成果について
実験結果とともに実験条件等の情報も併せて取りまとめることを期待する。
付 1-2
付録 2. 考慮する条件,評価項目,構成要素の関連に関する整理結果
及び全体的な処分概念の再整理結果
本付録では,
「2.3.1.3 考慮する条件,評価項目,構成要素の対応関係の整理」において,考慮す
る条件,評価項目,構成要素の関連性を整理し,その一部を表 2.3.1-5 に示した。本付録では,整
理した関連性のすべてを付表 2-1 に示す。
また,「2.3.1.4 調査済の全体的な処分概念・構成要素(定置方式)の情報の再整理」において,
本年度の評価項目の再設定結果を踏まえて,全体的な処分概念の情報を再整理し,その一部を表
2.3.1-6 に示した。本付録では,再整理した情報のすべてを付表 2-2 に示す。
付表 2-1:考慮する条件,評価項目,構成要素の関連
・対象とした考慮する条件
本文中 2.3.1.1 項の表 2.3.1-2 を参照。
・対象とした評価項目
本文中 2.3.1.2 項の表 2.3.1-3 及び表 2.3.1-4 を参照。
・対象とした構成要素
本文中 2.2 節参照。
付表 2-2:全体的な処分概念の情報の再整理結果
・対象とした全体的な処分概念
本文中 2.3.1.4 項の表 2.3.1-6 を参照。
・対象とした評価項目
本文中 2.3.1.2 項の表 2.3.1-3 及び表 2.3.1-4 を参照。
付 2-1
付表 2-1 考慮する条件,評価項目,構成要素の関連(1/2)
関連する構成要素※1
考慮する条件
廃棄物特性
上位評価項目
(設計因子)
下位評価項目
(細分化
設計因子)
核種の物理的
閉じ込め
※3
UF
個別評価項目
WS OP BF LN SL CP EL
●
・浸出率
耐食性
○ ● ○ ○
・発熱量
コロイドろ過能
●
○ ●
●
○
●
収着性
●
移行経路の
形成抑制
○
M. 力学特性
C. 地球化学
特性
G. 幾何学
特性
●
・発熱量
・発熱量
●
・LN材料
・緩衝材の化学的緩衝性
○
・割れ目の存在
・地下水組成(塩濃度)
・地下水流速
・割れ目の存在
・地下水組成(イオン強
度)
・割れ目の存在
・EDZの広がり
・地下水流速
・放射線量
・温度
・発熱量
・発熱量
・地下水組成(pH など)
・温度
・熱伝導性
・温度
・温度
・地下水流速
・割れ目の存在
・地圧
・地下水圧
・岩盤力学特性
オーバーパックの
保護(物理的緩衝
性)
OPの沈下の防止
○ ○ ●
操業時閉じ込め
● ●
●
・密閉性
放射線遮へい
○ ●
●
・放射線量
● ●
・放射線量
・地下水組成(イオン強
度)
・地下水組成(pHなど)
・諸元
・地下水組成(塩濃度)
放射線安全
操業安全性
● ●
労働災害対策
●
●
作業環境対策
● ○
・地下水流入 ・地圧
量
・岩盤力学特性
●
一般労働安全
掘削技術
(品質保証)
寸法/長さ,規
模,ライナー仕様
技術の実証
工学的成立性/
品質保証
搬送・定置
作業の容易さ,
効率性
・温度
・湿度
・地圧
・岩盤力学特性
・地圧
・岩盤力学特性
●
●
● ● ● ● ●
○ ○ ●
●
●
●
搬送性
● ○ ○ ○
●
● ・諸元
取り扱い
○ ○ ●
●
● ・諸元
作業上の制約
○ ○ ●
●
● ・諸元
●
●
・地下水流入
量
● ・諸元
掘削速度
力学的安定性
地下環境条件
への適応性
・発熱量
●
●
製作性
遠隔定置性
工程
●
●
●
●
・湿度
湧水対策
● ○
●
・地下水流入
量
搬送・定置能力
●
● ● ●
● ○ ○ ●
・温度
・熱伝導性
●
・地圧
・動水勾配
・岩盤力学特性
・地下水流速
・地下水圧
繰り返し動作の信 繰り返し動作の信
頼性,メンテナンス 頼性,メンテナンス
の頻度,容易さ の頻度,容易さ
3)
・埋め戻し材,CPの剛性
・岩盤のクリープ挙動評価
・OPに作用する外力
・OPの腐食膨張量評価
・せん断破壊に対する安全性
・ガス移行挙動評価
・OPの形状,重量
・OP沈下量
・廃棄体の閉じ込め性
・OP,廃棄体取り扱い施設の密
閉性
・OPの遮へい厚さ
・地上施設の遮へい能力
・管理区画設定,放射線モニタリ
ング,人の出入り管理,物品の
搬出入管理の状況
・異常事象の防止策,拡大防止
策,影響緩和策の実施状況
・災害の発生・拡大防止策,災
害時における作業員の安全確
保対策※8の状況
・酸素濃度,粉じん濃度,照度,
騒音レベル等
・掘削技術,品質レベル(実験/
・処分深度
実証)
・坑道寸法/長さ,規模或いは
・処分深度
LN仕様(厚み等)に対する制約
・製作技術,品質レベル(実験/
実証)
・BF施工方式,EL仕様の組合わ
・WS,OPの形状,重量
せに対する定置技術,品質レベ
ル(実験/実証)
・処分深度
・掘削速度
・WS,OPの形状,重量
・UF,EL仕様を踏まえた搬送速
・BF施工方式
度(空間的裕度,往復作業の有
・定置速度
無,搬送重量)
・BF施工方式,EL仕様の組合わ
・WS,OPの形状,重量
せに対する定置速度(BF施工方
・定置速度
式,空間的裕度)
・BF施工方式,EL仕様の組合わ
・WS,OPの形状,重量
せに対する定置速度(BF施工方
・定置速度
式,空間的裕度)
・処分孔・処分坑道の空洞安定
性(岩盤応力状態,変形,LNに
作用する応力)
・BF施工方式,EL仕様の組合わ
せに対する換気の必要性,難易
・換気設備仕様
度
・緩衝材品質(亀裂の有無等)
・BF施工方式,EL仕様の組合わ
せに対する排水の必要性,難易
・排水設備(含LN)仕様
度
・緩衝材品質(亀裂の有無等)
・地下水組成(塩濃度)
・地下水組成(イオン強
・割れ目の存在
度)
・地下水組成(pHなど) ・断層・破砕帯の
・地下水組成(炭酸塩, 存在
塩化物イオン)
・地下水の酸化還元状態
3)
3)
3)
3)
3)
3)
2)
2)
2)
2)
2)
2)
1)
7)
7)
2)
2)
2)
2)
7)
2),7)
2),7)
・処分孔・処分坑道の空洞安定
性(岩盤応力状態,変形,LNに
作用する応力)
2)
・OPの腐食挙動,速度
・BFの性能低下
●
●
・WS,OPの形状,重量
・定置速度
●
・発熱量
・浸出率
・核種量
●
・化学組成
・放射線量
・諸元
・OP諸元
・BF施工方式
・EL仕様
・OS(搬送・定置)仕様
・核種の浸出率
・収着性,溶解性
・処分場面積,掘削量
・搬送・定置速度
1)
・OSの誤作動の頻度
・メンテナンスの頻度と難易度
2)
操業条件の
変化に対する
柔軟性
○ ● ●
3)
・UF,EL仕様を踏まえた搬送速
度(空間的裕度,往復作業の有
無,搬送重量)
2)
・BF施工方式,EL仕様の組合わ
せに対する定置速度(BF施工方
式,空間的裕度)
工学的信頼性
廃棄体の種類
に対する柔軟性
・割れ目の存在
・地圧
・岩盤力学特性
●
高湿度対策
地質環境条件の
不確実性に対する 耐久性,堅牢性
頑健性
・BF,SLの変質
・OP,LN,埋め戻し材の埋
・OP,BFの熱伝導率
設間隔
・緩衝材膨潤性能
・緩衝材密度※4
・岩盤クリープ変位量
・緩衝材の膨出
・地圧
・岩盤力学特性
○ ●
異常事象に対する
●
安全対策
・OPの腐食挙動,速度と材質,
腐食深さ
・緩衝材の有効応力(岩盤
・OPに作用する外力と材質,耐
のクリープ挙動,OPの腐食
3)
圧厚さ
膨張)
・核種の溶解度
5)
・緩衝材,SLの透水係数
3)
・OPからのガス発生
・核種移行※5
3)
・緩衝材密度※4
3)
・緩衝材膨潤性能
3)
・緩衝材密度※4
3)
・BF,母岩の収着率
・SL周囲の水理場
・材料,仕様,切欠き部の設置 3)
状況
・坑道の形状・断面積
・OP,緩衝材の熱伝導性
・熱的変質
・OP,緩衝材の放射線脆化
・LN材料
・地下水組成(塩濃度)
○ ●
放射線被ばく管理 ● ○
参考
※2
・BF,SL,母岩の変質※7
○
●
適用性評価や優劣比較
における視点
・OP,BFの変質
●
緩衝材の
流出の抑制
・地下水組成(塩濃度)
・地下水組成(塩濃度)
・発熱量
○ ● ●
自己修復性
・動水勾配
・動水勾配
・地下水流速
・岩盤強度
耐放射線性
○ ● ●
残置物との相互作
● ○ ● ○
用の影響低減
人工バリア材料間
の相互作用の影響
● ●
低減
隣接処分施設から
○ ○
●
●
○
の地球化学的影響
廃棄体の過熱抑制
・温度
・温度
・温度
・温度
・温度
●
○ ● ●
要件/制約条件,
その他
・核種の浸出率
・地下水組成(炭酸塩,
塩化物イオン)
・地下水の酸化還元状態
・温度
・地圧
・岩盤力学特性
・地下水圧
●
耐熱性
バリア機能の
長期安定性
H. 水理特性
●
○
低透水性
移行フラックス
T. 熱特性
● ○
核種の溶解度制限
長期安全性
廃棄物特性
低浸出性
構造健全性
核種放出の
遅延と拡散
SF OS
●
付 2-2
付表 2-1 考慮する条件,評価項目,構成要素の関連(2/2)
関連する構成要素※1
考慮する条件
廃棄物特性
上位評価項目
(設計因子)
下位評価項目
(細分化
設計因子)
UF
個別評価項目
サイト特性調査の サイト特性調査の
容易さ,信頼性
容易さ,信頼性
サイト特性
調査と
モニタリング
WS OP BF LN SL CP EL
●
SF OS
廃棄物特性
・温度
・熱伝導性
● ● ● ● ● ●
バリア性能モニタリ バリア性能モニタリ
ングの容易さ,自 ングの容易さ,自 ● ○ ● ● ● ● ● ●
由度,信頼性
由度,信頼性
環境モニタリング
の容易さ,自由
度,信頼性
回収の容易さ
環境モニタリング
の容易さ,自由
度,信頼性
●
T. 熱特性
H. 水理特性
・岩盤力学特性
・動水勾配
・地圧
・地下水流速
・地下水圧
・発熱量
・放射線量
・地下水流入
量
● ●
回収の容易さ
○ ● ● ● ● ● ●
● ・放射線量
実証試験による回
収技術の成立性
○ ● ● ● ● ● ●
●
回収可能性
実証試験による
回収技術の
成立性
廃物
●
● ● ● ● ●
埋め戻しに利用さ
れる廃物
●
●
廃物
排水/地下水の
性質
●
●
●
地下水擾乱
●
● ●
●
毒性
周辺環境への
擾乱
● ● ●
埋め戻し材料の
採掘
●
・地下水組成(塩濃度)
・地下水組成(イオン強
度)
・地下水組成(pHなど)
・地下水組成(炭酸塩,
塩化物イオン)
・地下水の酸化還元状態
●
騒音/障害
●
輸送
●
設置地域
●
従事者の
通勤・居住
●
原材料
将来世代への
負担
処分場の
維持・管理
● ○ ● ● ● ● ● ● ● ●
コスト
● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
処分場面積
● ○
保障措置能力
保安性
●
処分場面積
保障措置能力と
保安性
● ●
・温度
・熱伝導性
・地圧
・岩盤力学特性
参考文献
1) NUMO: “Development of Repository Concepts for Volunteer Siting Environments”, NUMO-TR-04-03(2004).
2) 原子力発電環境整備機構:“地層処分事業の安全確保(2010年度版) - 確かな技術による安全な地層処分の実現のために -”,NUMO-TR-11-01(2011).
※2
※3
※4
※5
※6
※7
※8
※9
「考慮する条件」,「考慮する条件との関係」の整理にあたり参考とした文献の番号(下記参照)
OPではな母岩により提供される物理的隔離能力が十分(安全)機能を発揮できると期待される場合は,代わりに母岩について評価(例えば,ドイツの概念(岩塩))
岩盤の割れ目内へのベントナイトの侵入による影響
緩衝材中のガス移行挙動による影響
処分坑道へのベントナイの膨出による影響
硝酸塩及び高pH プルームによる母岩やベントナイトの変質(化学的性質や物理的間隙構造の変化による分配係数などへの影響)
避難経路の確保等
大気中への有害物質の飛散,降雨時の表流水による濁水等
参考文献
1) 経済産業省資源エネルギー庁:“平成20年度地層処分技術調査等委託費,高レベル放射性廃棄物処分関連:先進的地層処分概念・性能評価技術高度化開発報告書”(2008).
2) 原子力発電環境整備機構:“地層処分事業の安全確保(2010年度版) - 確かな技術による安全な地層処分の実現のために -”,NUMO-TR-11-01(2011).
3) 核燃料サイクル開発機構:“高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築-平成17年取りまとめ-分冊2 工学技術の開発”,JNC TN1400 2005-015 (2005).
4) NUMO: “Development of Repository Concepts for Volunteer Siting Environments”, NUMO-TR-04-03(2004).
5) 核燃料サイクル開発機構:“わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2 次取りまとめ- 総論レポート”,JNC TN1400 99-020 (1999).
6) ANDRA: “Tome Architecture and Management of a Geological Repository”, Dossier 2005 Argile, Report Series, December (2005).
7) T. Baldwin, N. Chapman & F. Neall: “Geological Disposal Options for High-Level Waste and Spent Fuel”, Report for the UK Nuclear Decommissioning Authority (2008).
8) 原子力発電環境整備機構:“高レベル放射性廃棄物地層処分の技術と安全性 -「処分場の概要」の説明資料-”, NUMO-TR-04-01 (2004).
付 2-3
2)
2)
2)
1)
・廃物(掘削土等)の再利用率
・UF,EL仕様
・LN仕様
・排水発生量
・地下水性質によるEBや母岩へ 1)
の影響
1)
・地下水流動性,流動経路,地
球化学的特性への擾乱
1)
・毒性
1)
・地下水の地球化学的特性への
・BF,SL仕様(地球化学特 擾乱
1)
性)
・地下水性質による母岩への影
響
・定置本数
・敷地面積
・UF,EL,SF仕様
・SF仕様(警備体制等)
注釈
※1 参考文献1)(Appendix A),2)を参考に処分概念を構成する主要な要素を抽出。各要素の略称の定義は下記の通り
UF: Underground Facilities, 地下施設: アクセス坑道,主要坑道,処分坑道などの坑道群から構成 2)
WS: Wastes, 廃棄体: ガラス固化体あるいは使用済燃料そのもの 3)
OP: Overpacks, オーバーパック: 廃棄体を包み込み,廃棄体に地下水が接触することを防止し,地圧などの外力から廃棄体を保護する容器 5)
BF: Buffer/Backfill, 緩衝材/埋め戻し材:
緩衝材: 地下水の浸入と核種の溶出・移行を抑制する物質
埋め戻し材: OP周囲の空間を除いた,処分場の重要区域に存在する空間を埋めるために使用される物質 3)
LN: Liners, ライナー: 坑道の岩盤表面に設置する人工物であり,空洞の力学的安定性を確実にしたり,地下水の流入を削減したりする 3)
SL: Seals, シール: 物理的に坑道や処分孔を塞ぐプラグやシール 3)
CP: Caps, キャップ: 湿潤状況下において,処分孔に定置されたベントナイトがそれを覆っている坑道に膨出し,それにより生ずる密度低下を妨げるための人工物 3)
EL: Emplacement/Layout, 定置方式/レイアウト:
定置方式: 廃棄体を処分坑道内の所定の位置に据える方式
レイアウト: 処分坑道や処分パネルの配置や形状などに着目した地下施設全体の配置 3)
SF: Surface Facilities, 地上施設: 廃棄体受入・封入・検査施設,緩衝材製作・検査施設,管理棟など,地下での建設や操業から閉鎖までに必要な地上の施設 3)
OS: Operational Systems, 操業システム: 廃棄体の受け入れと人工バリアの施工にかかわる一連の作業,設備から構成 2)
8)
・施設廃棄物による処分場への
1)
影響
・核種量
●
●: 評価に際して主たる評価対象となる構成要素
○: 評価に際して間接的に関連する構成要素。与条件的な取り扱い
2)
・SF仕様
・SF仕様
・輸送手段,経路,時間,回
数等
・SFの設置に伴う作業(地
形の平坦化等)
・通勤手段,経路等
・居住場所等
・発熱量
・発生量
参考
※2
・BF,SL仕様
● ● ● ● ● ●
社会経済的
側面
適用性評価や優劣比較
における視点
要件/制約条件,
その他
・UF,EL仕様
・LN仕様
・SL仕様
・OP,BF仕様
・化学組成
資源と供給の
安全保障
コスト
・地下水組成(塩濃度)
・地下水組成(イオン強
度)
・地下水組成(pHなど)
・地下水組成(炭酸塩,
塩化物イオン)
・地下水の酸化還元状態
・地下水流入
量
G. 幾何学
特性
・地下水組成(塩濃度)
・地下水組成(イオン強
度)
・断層・破砕帯の
・物質移動の遅延効果,希 ・調査項目の数,容易さ,信頼
・地下水組成(pHなど) 存在
釈効果
性
・地下水組成(炭酸塩, ・割れ目の存在
塩化物イオン)
・地下水の酸化還元状態
・OP性能(腐食,変形等,
遮へい)
・BF性能(密度,膨潤性,
透水性等)
・モニタリング項目の数,容易
・岩盤挙動,LNの外観(劣 さ,自由度の高さ,データの信
化,変形等)
頼性
・回収可能性確保期間(モ
ニタリング機器の維持・管
理の容易さ等)
・放流水及び放流先の水質 ・モニタリング項目の数,容易
(濁度,pH等),量
さ,自由度の高さ,データの信
・掘削土※9
頼性
・回収可能性確保期間(LN ・ELの種類や定置後の経過時
補修の必要性,BF,CP, 間を踏まえた回収関わる作業工
SLの有無,BFの膨潤圧
数,回収速度,難易度
力,OPの機械的強度に影 ・汚染された水,切削屑等の発
響)
生量
・回収可能性確保期間(LN
補修の必要性,BF,CP, ・ELの種類や定置後の経過時
SLの有無,BFの膨潤圧
間を踏まえた回収技術レベル
力,OPの機械的強度に影 (実験/実証)
響)
・BF,SL仕様
・SL,CP仕様
・発生量(掘削土等)
・UF,EL仕様
●
施設廃棄物
環境影響
C. 地球化学
特性
M. 力学特性
・騒音/障害レベル
1)
・環境負荷
1)
・環境負荷
・騒音/障害レベル
・環境負荷 等
・需要,供給量
・供給安定性
・価格安定性 等
・維持・管理コスト
・廃棄体回収コスト
・建設・製作コスト
・操業・管理コスト
・閉鎖・廃止措置コスト
1)
1)
7)
7)
7)
・処分場面積
8)
・保障措置能力
・保安性
7)
7)
その他の略語
・EB: 人工バリア
・EBS: 人工バリアシステム
・EDZ: 掘削影響領域
・NB: 天然バリア
付表 2-2 全体的な処分概念の情報の再整理結果(1/3)
考慮する条件 考慮する条件
(上位)
(下位)
対象廃棄物
日本の概念
(H12)
種類
ガラス固化体
岩種
・結晶質岩,堆積岩
T. 熱特性
設計上地温勾配は3℃/100m と
した。地表面での地温は15℃に
設定。深度1,000mの場合,
45℃。深度500mの場合,30℃
スイスの概念
ドイツの概念
(Project
(岩塩)
Opalinus Clay)
ガラス固化体,使用済み燃料,
ガラス固化体,使用済み燃料
中レベル廃棄物(ILW)
・オパリナス粘土層
・岩塩層(ゴアレーベン)
日本の概念
(CARE)
使用済み燃料
ガラス固化体,使用済み燃料
・結晶質岩
・結晶質岩,堆積岩
・RFM029は典型的な石英の含
有量が高く,高い熱伝導性を有
する傾向。cmスケールの測定に
よると,RFM029およびRFM012
(RFM029の南西)における支配
的な岩盤タイプの熱伝導率は
3.4 から 4 W/(m·K)の範囲であ
り,一方で付随する岩盤では有
意に低い値 5)
・参考文献 5)には温度について
の記載なし
Opalinus Clayについての調査
地域における熱勾配は4.2℃/
100m。深度650mにおける温度
は38℃となる
透水係数:
・Opalinus Clay(母岩):10^-13
- 10^-14 m/s
・Wedelsandstein Formation(母
岩の上部に位置する岩盤):10^
乾燥,不透水性 1)
-10 m/s程度
・Stubensandstein Formation
(母岩の下部に位置する岩盤):
10^-8 . 10^-9 m/s程度
(regional scale)
・Zürcher Weinlandにおける圧縮
応力場(compressive stress
・硬岩系岩盤グループ: 一軸圧 field)について調査が行われ,
その水平方向の最大応力の方
縮強度が45~195 MPa 程度
M. 力学特性
・軟岩系岩盤グループ: 一軸圧 向は南北方向であり,その地域
の応力場と一致している
縮強度が5~55 MPa 程度
・応力場の大きさについての情
報なし
設計上,深部岩盤の透水係数
に関しては,硬岩系,軟岩系岩
盤グループにかかわらず,
・健岩部 :10-10~10-8 m s-1
のオーダー,
H. 水理特性
・割れ目帯:健岩部とは別に取り
地質環境条件
扱う場合(高透水性の割れ目帯
※1
や断層破砕帯などを評価する場
合)には,10-6~10-5 ms-1 の
オーダーとした
降水を起源とする地下水も,海
C. 地球化学 水を起源とする地下水も,地下
特性
深部では一般に還元状態にある
としている
スウェーデンの概念
(フォスマルク)
・Regionalな地下水流動につい
てのシミュレーションの結果,地
下水流動場は対象としている領
域内で局所的であり,かつ
RFM029内の局所的な形状
(geometry)や特性(features)に
より決定されることが示唆 5)
・参考文献 5) には透水係数に
ついての記載なし
・対象領域(候補エリアの北西
部分)における試錐孔のサンプ
ル(400 to 550 m)の一軸圧縮
強度(UCS, uniaxial
compressive strength)の平均
値は全て220MPa以上 5)
・参考文献 5)のFigure 4‑29によ
ると,深度500m以深では還元性
で海水系(Saline 10–15 g/L
TDS)あることが示されている
・参考文献 5)には地下(例え
ば,深度500m)でのpHについて
記述なし
・還元性地下水
・pH: 6.9-8.2
・適度に海水系(moderately
saline)
G. 幾何学
特性
長期安全性
操業安全性
工学的
成立性/
品質保証
工学的信頼性
処分深度
処分場規模
定置速度
300m以深
ガラス固化体 4万本
一日当たり5本以上
・長期のモニタリングという視点
において自由度の高い設計を有
すること
・制度上の管理期間において、
空洞は、完全に検査される状態
である必要がある
・回収可能性という視点において
自由度の高い設計を有すること
・どの独立したキャスク、任意の
インベントリは、どの時点におい
ても回収可能である必要
バリア性能モ
サイト特性
ニタリングの容
調査と
易さ,自由度,
モニタリング
信頼性
回収可能性
環境影響
社会経済的
側面
概要1
概要※3
回収の容易さ
処分場面積
概要2
日本の概念
(H12)
・人工バリアの設計では,想定さ
れる地質環境の幅に対応できる
ように,人工バリアの性能に余
裕を持たせるという考え方に基
人工バリア づいて,OPと緩衝材に関する材
(OP,緩衝材 料や厚さなどの仕様を検討
/埋め戻し ・腐食許容性OPによる長期間
(約1千年間)廃棄物を地下水か
材)
ら隔離
・腐食許容性OPが破損した後
(約1千年後),緩衝材及び母岩
が核種移行の遅延と拡散を担う
・地上と地下の施設を結ぶアク
セス坑道,廃棄体を定置するた
めの処分坑道,処分坑道を取り
囲む主要坑道,主要坑道間を結
ぶ連絡坑道,廃棄体の搬送に
かかわる施設,坑道建設にかか
地下施設
(定置方式/ わる施設,作業の安全性を維持
レイアウト) するための施設など
・レイアウトのレファレンスは処
分パネルを水平後方に展開した
単層パネル方式。オプションとし
て,処分パネルを垂直方向に展
開した多層パネル方式を検討
H12概念 OP 炭素鋼
オーバー
パック(OP)
構成要素
※4
スイスの概念
(Project
Opalinus Clay)
・ガラス固化体ではガラス固化
体、OP、ベントナイトからなる多
重バリアを想定
・使用済み燃料ではジルカロイ
被覆管およびベントナイトからな
る多重バリアを想定
・腐食許容性OPによる長期間
(約数千年間)廃棄物を地下水
から隔離
・腐食許容性OPが破損した後
(数千年後),緩衝材及び母岩
が核種移行の遅延と拡散を担う
・岩塩層における処分概念は,
(その安全機能を)基本的に天
然バリア(処分エリア周囲の乾
燥した不浸透性の岩塩)に依存
することを意図している。岩塩に
より提供される物理的隔離能力
のため,処分坑道や処分場が
閉鎖された後は,廃棄体やEBS
の性質はささいで重要なもので
はないことを意味する 1)
・坑道横置き方式:
廃棄体を収納した重厚な
・処分施設は地下650m、厚さは
POLLUX cask を処分坑道に直
105~125mのオパリナス粘土層
接定置する方式(使用済み燃料
内に設置される。使用済み燃
の定置方式のレファレンス概念)
料、ガラス固化体、中レベル廃
・坑道利用深孔処分方式:
棄物が併置される
処分坑道の床面から掘削され
・レイアウトのレファレンスは処
た長い(恐らく300mまで)垂直坑
分パネルを水平後方に展開した
道内に定置する方式(ガラス固
単層パネル方式
化体のレファレンス概念,使用
済み燃料のオプション) 1)
Project Opalinus Clay概念 OP
炭素鋼
H12概念 OP チタン
H12概念 OP 銅
H12概念 緩衝材 原位置施工方
式
緩衝材
H12概念 緩衝材 ブロック方式
(施工方式)
H12概念 緩衝材 ペレット方式
H12概念 緩衝材 組み合わせ
H12概念 単層パネル/処分孔
縦置き方式(硬岩系)
H12概念 単層パネル/処分孔
縦置き方式(軟岩系)
H12概念 単層パネル/処分坑
道横置き方式(硬岩系)
定置方式/ H12概念 単層パネル/処分坑
レイアウト 道横置き方式(軟岩系)
H12概念 多層パネル/処分孔
竪置き方式
H12概念 多層パネル/処分坑
道横置き方式
H12概念 廃棄体多段処分孔方
式
ドイツの概念
(岩塩)
Project Opalinus Clay概念 緩
衝材 ペレット方式
Project Opalinus Clay概念 定
置方式(HLW)
Project Opalinus Clay概念 定
置方式(SF)
ドイツの概念
(SF)
ドイツの概念
(SF)
ドイツの概念
(HLW)
ドイツの概念
(HLW)
ドイツの概念
工方式
POLLUX® cask
スウェーデンの概念
(フォスマルク)
・Japan-CASTOR と呼ばれ、輸
送にも利用される多目的キャス
クが利用される。現状28本のガ
・外側が銅製、内側が鋳鉄製の
ラス固化体が収容されている
キャニスターおよびベントナイト
が、保守性を考慮し、キャスク一
・耐食性OPにより長期間(例え
つに20本のガラス固化体が収容
ば,10万年)廃棄物を地下水か
される
ら隔離
・埋め戻しを遅延させることで、
熱的な影響を抑えることができ
る
・セントラルエリア:
施設の一部であり操業および
保守のための施設
・処分エリア:
キャニスターが埋設される
・スキップシャフト:
掘削した岩を搬出する
・レイアウトのレファレンスは処
分パネルを水平後方に展開した
単層パネル方式。オプションとし
て,処分パネルを垂直方向に展
開した多層パネル方式を検討
3)
KBS-3V概念/KBS-3H概念 OP
銅製
サイロ型の大空洞内に多数の
廃棄体を収納したキャスクを竪
置きに定置し,埋め戻しを延長
する方式
CARE概念 cask
BSK-3 コンテナ
HAW コンテナ
CDS C コンテナ
緩衝材 現位置施 KBS-3H概念 緩衝材 スーパー
コンテナ方式
ドイツの概念 坑道定置方式
(SF)
ドイツの概念 坑道利用深孔処
分方式(HLW)
ドイツの概念 坑道利用深孔処
分方式(SF)
KBS-3V概念 定置方式
CARE概念 定置方式(HLW)
KBS-3H概念 Basic Design方式 CARE概念 定置方式(SF)
KBS-3H概念 DAWE設計方式
KBS-3H概念 STC設計方式
付 2-4
日本の概念
(CARE)
付表 2-2 全体的な処分概念の情報の再整理結果(2/3)
下位評価項目
上位評価項目
(細分化
(設計因子)
設計因子)
スイスの概念
(Project
Opalinus Clay)
・使用済み燃料またはガラス固
・ガラス固化体は炭素鋼オー
化体は鋼鉄製のオーバーパック
核種の物理的 バーパックに入れられ、千年
に入れられ、数千年の間、地下
閉じ込め
間,地下水との接触を防ぐこと
水との接触を防ぐことが期待 ※
が期待 ※6
6
・オーバーパックの周囲はベント
ナイトで覆われ、拡散支配によ
る小さい移行速度、核種の収
着、沈澱が期待される ※6
・オーバーパック開口後は腐食
・オーバーパックの周囲は緩衝
により還元環境を提供し、腐蝕
材(ベントナイト及びケイ砂の混
閉鎖後安全性
生成物は核種の吸着機能を有
核種放出の 合)で覆われ、膨潤性,低透水
する ※6
遅延と拡散 性,化学的な緩衝性,コロイド
・坑道に長さ2~40mのベントナ
フィルター効果などの機能の発
イト製のシールを設置し、斜坑を
揮が期待される ※6
砂とベントナイト混合物埋め戻
すことで閉鎖が完了する。これ
により斜坑は周囲の岩盤と同程
度の透水性をもつことが期待で
きる
人工バリアの
長期安定性
原則的には,土木,鉱山,原子
力などの分野における現行の法
放射線安全
規制あるいは基準類などに準拠
して実施可能
操業安全性
原則的には,土木,鉱山,原子
地質調査により、岩盤の自己保
力などの分野における現行の法
持性により操業中の安全性が示
一般労働安全
規制あるいは基準類などに準拠
されている
して実施可能
地質環境条件の幅に対して,現 サイト選定および設計は過度に
状の技術および近い将来達成 新規の技術を要求することなし
技術の実証 可能な技術に基づいて,人工バ に、既存の技術に基づいて安全
リアと処分施設が現実的に設
性を示すように選択されなけれ
計,製作・施工できる ※6
ばならない
・設計上の品質管理は,人工バ
リアや処分施設などの設計が妥
当なものであることを確認する
ために行われる。施工上の品質
管理は,設計仕様を満たすよう
工程
な処分施設を建設し,人工バリ
アを製作・施工するとともに,各
坑道を埋め戻すために,建設,
操業,閉鎖の各作業段階で実
工学的
施される
成立性/
搬送・定置作
品質保証
業の容易さ,
効率性
・処分場設計にあたって我が国
の地質環境を幅広く考慮 ※6
・坑道交差部における力学的安
・オパリナス粘土層は硬化性粘
定性について,既存の土木工学
度岩(粘土質頁岩(clay shale))
に関する報告書に記載された設
であり,合理的な工学的性質を
計の基本的考え方が参考にな
地下環境条件
有している。すなわち,数百mの
る ※5
への適応性
深度において小規模のライナー
・既存の土木工学に関する報告
無しの空洞やより大規模なライ
書において,坑道軸方向は割れ
ナー有りのトンネルを掘削可能
目方向に直交させるように配置
である※6
することが空洞の安定上望まし
いとの考え方が示されている ※
5
地質環境条件
の不確実性に
対する頑健性
操業条件の変
化に対する柔
工学的信頼性
軟性
繰り返し動作
の信頼性,メ
ンテナンスの
頻度,容易さ
サイト特性調
査の容易さ,
信頼性
・処分場の操業が終了した後の
長期にわたる安全性の確保につ
バリア性能モ いては,天然の地層に委ね,処
ニタリングの容 分場の操業が終了した後の長
易さ,自由度, 期にわたる人間による監視や管
信頼性
理は,技術的な観点からは必要
サイト特性
としないというのが地層処分の
調査と
概念である
モニタリング
処分事業の各段階を通じて処分
場敷地周辺の環境(敷地周辺部
における地表水の水質や環境
環境モニタリン 放射能など)に有意な影響がな
グの容易さ, いことを確認するためにモニタリ
自由度,信頼 ングを実施。このような管理は原
則的に,土木,鉱山,原子力な
性
どの分野における現行の法規制
あるいは基準類などに準拠して
実施可能
日本の概念
(H12)
ドイツの概念
(岩塩)
スウェーデンの概念
(フォスマルク)
日本の概念
(CARE)
・岩塩層における処分概念は,
(その安全機能を)基本的に天
然バリア(処分エリア周囲の乾
燥した不浸透性の岩塩)に依存
することを意図している ※7
多層の自然バリアシステムや人
工バリアシステムは、他の地層
処分システムと同様 ※5
・外部からの作用がない限り、
放射性核種が外部へ漏洩する
確率はゼロ。廃棄体の定置形態
は、横置きよりも縦置きにする方
が、埋め戻しによる密封効果は
高くなる
・岩塩ドームは、想定されるシナ
リオ(亀裂、塩水の接触、内部蒸
気圧の上昇)に対し、100 万年
の期間については十分な耐久
性の見込みがある ※5
・塩分を含む水の浸入により、バ
リアの損傷および放射性核種の
流出が懸念される ※6
多層の自然バリアシステムや人
工バリアシステムは、他の地層
処分システムと同様 ※5
放射線防護視点から、50 年に
わたる操業期間において、レー
ル輸送を用いた遠隔操作手順
が含まれる
操業時の頑健性と閉鎖後の換
気性能を向上させるために、分
離した換気トンネルシャフトを利
用 ※6
岩塩層における坑道の埋め戻し
については、モールスレーベン
LLW処分場やアッセ鉱山の地下
研究施設にて検証済みである
建設と操業の実現可能性につい
ては、適切かつ安定な地質環境
にされる限り、現状の技術によっ
て明確に保証できる
・岩塩層は透水性が低く、自己 処分場深度レベルの母岩は低
修復機能を有するため、処分場 透水性であり、処分場への地下
の母岩層として優れている ※6 水の浸出率は低い ※6
付 2-5
埋め戻しや処分場の閉鎖前に
おける長期間のモニタリングや
調査に関して、最大限の自由度
を保有している
付表 2-2 全体的な処分概念の情報の再整理結果(3/3)
下位評価項目
上位評価項目
(細分化
(設計因子)
設計因子)
回収可能性
日本の概念
(H12)
スイスの概念
(Project
Opalinus Clay)
ドイツの概念
(岩塩)
スウェーデンの概念
(フォスマルク)
日本の概念
(CARE)
・埋め戻しや処分場の閉鎖前に
処分坑道および処分孔の設計 おいて回収が容易である。回収
に当たっては回収可能性を考慮 の容易さという点で、日本の概
念(H12) のレファレンスケース
している
と比較して明確な利点がある
回収の容易さという点について
利点があるが、その実現性につ
いては、あまり研究されていない
※6
一旦処分された廃棄物の回収
が何らかの理由で必要となった
回収の容易さ
場合,技術的に不可能でない
※6
実証試験によ
る回収技術の
成立性
廃物
環境影響
周辺環境への
擾乱
建設、操業中において、処分場
周辺は不飽和状態になる
受動的な換気にすることで、
100℃以上の温度になり、空洞
内における微生物活動が減少
資源と供給の
安全保障
将来世代への
負担
コスト
社会経済的
側面
オパリナス粘土層は工学的に好
ましい特性を持っているため、既
存の技術を用いて適切な費用で
建設することが可能
・単層パネル方式は,必要な面
・単層パネル方式は,必要な面
積が比較的広い ※7
積が比較的広い ※7
・空洞を空けておくことは(廃棄
・垂直方向に廃棄体が分布する ・多層パネル方式は,坑道利用
・多層パネル方式は,坑道利用
体を密に定置することを可能と
・単層パネル方式は,必要な面
ので,処分場面積は非常に小さ 深孔処分方式やサイロ型処分
処分場面積 深孔処分方式やサイロ型処分
するため)処分場面積を減らす
積が比較的広い ※7
方式ほどコンパクトではないが,
くなる ※7
方式ほどコンパクトではないが,
という点で利点がある ※6
単層パネル方式よりはコンパク
単層パネル方式よりはコンパク
ト ※7
ト ※7
受動的な換気にすることで、
100℃以上の温度になり、認証さ
保障措置能力
れない接近が容易でなくなるこ
と保安性
とによるセキュリティの向上が期
待される ※6
注釈
・本表の「考慮する条件(上位条件)」,「考慮する条件(下位条件)」には,基本的に処分概念DBの「処分場概念」の「背景情報」欄の「目的・目標・必要性・意義」,
「地質環境条件・制約条件」,「その他」に記載された事項を再整理
※1 「対象サイト(岩種,地域)」の欄には,H22年度に整理した事項を再記載
※2 (欠番)
・本表「概要」欄には,基本的に処分概念DBの「処分場概念」の「処分場概念の概略」欄の「設計」の「人工バリア」,「地下施設」に記載事項を再記載
※3 DB上では「情報なし」だったため,適用性評価や優劣比較に資するためにH22年度の調査結果を再整理した上で記載
・本表の「構成要素」欄には各概念にて採用または検討されている構成要素(「オーバーパック」,「緩衝材」,「定置方式/レイアウト」)のオプションを整理。
※4 (欠番)
・本表「構成要素」欄には,基本的に処分概念DBの「処分場概念」の「構成要素」欄に記載あるいはH22年度に整理した事項を再記載
・本表の「上位評価項目」,「下位評価項目」欄には,基本的にH19年度の文献調査個票および処分概念DBの「処分場概念」の「設計因子に沿った評価」欄に記載された事項を再記載
ただし,個票において当該設計因子以外の設計因子の箇所に記載された内容や「設計因子に沿った評価」以外の項目に記載された内容も区別した上で記載
※5 処分概念DBに記載はあるものの,当該設計因子以外の設計因子の箇所に記載
※6 処分概念DBに記載はあるものの,「設計因子に沿った評価」以外の箇所に記載
※7 適用性評価や優劣比較に資するためにH22年度の調査結果を再整理した上で記載
全体的な処分概念に関する参考文献
・日本の概念(H12)
核燃料サイクル開発機構:“わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2 次取りまとめ- 総論レポート”,JNC TN1400 99-020 (1999).
・スイスの概念(Project Opalinus Clay)
Nagra: “Project Opalinus Clay Safety Report - Demonstration of disposal feasibility for spent fuel, vitrified high-level waste and long-lived intermediate-level waste
(Entsorgungsnachweis)”, Technical Report NTB 02-05(2002).
・ドイツの概念(岩塩)
J. Krone, N. Müller-Hoeppe, W. Brewitz, J. Mönig, M. Wallner, J.R. Weber:“Developing an Advanced Safety Concept for an HLW Repository in Salt Rock”,
International OECD/NEA Symposium on the Safety Case, Paris, January 23-25 (2007).
・スウェーデンの概念(フォスマルク)
Svensk Kärnbränslehantering AB:“Final repository for spent nuclear fuel - Underground design Forsmark, Layout D1 -”,R-06-34(2006).
・日本の概念(CARE)
S. Masuda, H. Kawamura, I. G. McKinley, F. B. Neall, and H. Umeki:“Optimising Repository Design for the CARE Concept”,IHLRWM 2006, Las Vegas, NV, April 30-May 4 (2006).
参考文献
1) T. Baldwin, N. Chapman & F. Neall: “Geological Disposal Options for High-Level Waste and Spent Fuel”, Report for the UK Nuclear Decommissioning Authority (2008).
2) 経済産業省資源エネルギー庁:“平成20年度地層処分技術調査等委託費,高レベル放射性廃棄物処分関連:先進的地層処分概念・性能評価技術高度化開発報告書”(2008).
3) P. Smith, F. Neall, M. Snellman, B. Pastina, H. Nordman, L. Johnson and T. Hjerpe: "Safety Assessment for a KBS-3H Spent Nuclear Fuel Repository at Olkiluoto Summary Report",
POSIVA 2007-06 (2007).
5) SKB: "Long-term safety for KBS-3 repositories at Forsmark and Laxemar – a first evaluation Main Report of the SR-Can project", TR-06-09(2006).
付 2-6
付録 3.
1.
コンディショニングした前処理付き Boolean Simulation
はじめに
地下水流動解析などを行うために必要な透水係数等の岩盤特性を表現した地質環境モデルを構
築する上では,ボーリング孔などの調査を実施した地点における限られた情報に基づき,対象と
する地下深部の透水係数分布等を推定することが必要となる。このための方法として,透水係数
分布を空間的な位置座標の連続関数とみなし,クリッギング等の地球統計学的手法を適用する手
法がある。しかしながら,このような手法では,推定される個々の透水係数分布に固有の幾何的
な特徴は,相関長やフラクタル次元などの抽象化された数学的なパラメータによって表わされる
ことから,岩盤中の割れ目や断層あるいは古河川の河床等の具体的な特徴に対する地質学的ある
いは水理学的な専門知識といった本来は上記の推定に有効となり得る「ソフトデータ」を適切に
反映することが難しいという問題点がある。他方,透水係数分布を連続関数とみなすのではなく,
岩盤中の割れ目や断層あるいは古河川の河床等の具体的な特徴を離散的なオブジェクトとして扱
い,これらを統計的に配置する手法として Boolean Simulation1)が挙げられる。さらに,ボーリン
グ孔との交差部など対象とするオブジェクトの分布が既知の場合,既知の情報を制約条件とする
コンディショニングした前処理付き Boolean Simulation2)(Conditioned Boolean Simulation。以下,
CBS という)がある。
2.
コンディショニングした前処理付き Boolean Simulation(CBS)の適用事例
2.1 対象領域及び推定に用いた情報
本事例では,原子力機構が幌延深地層研究計画で掘削・調査を行ったボーリング孔 HDB-1~8
孔を含む東西 4,000m,南北 6,000m,深さ方向 2,000m を対象領域とした。内部の分割セルの大き
さは,東西 50m,南北 50m,深さ方向 40m とした。
CBS では,
対象とする空間内をオブジェクトとバックグラウンドという 2 つの領域に分離する。
本事例では,岩盤中の割れ目帯をオブジェクト,それ以外の部分をバックグラウンドとする。
まず,任意点の情報について,オブジェクトとバックグラウンドのどちらかの領域に属するこ
とが確定している点を代表点とする。本事例では, HDB-1~8 孔で確認された割れ目帯の位置に
基づき,HDB-1~8 孔の各点が割れ目帯に属するか否かを判断した上で代表点とする。これらの
代表点の配置が推定における拘束条件となる。
CBS では,ランダムに発生させた多数のオブジェクトを重ねあわせることにより,空間全体の
オブジェクトの分布を求める。このとき,代表点がオブジェクトあるいはバックグラウンドに正
しく対応するようなオブジェクトの集合を用いて,空間をオブジェクトとバックグラウンドの各
領域に分離する。ここで,オブジェクトは任意の形状として表現することが可能であるが,本事
例では各オブジェクトの形状は厚さを有する平面とした。HDB-1~8 孔における割れ目帯に関す
る情報を付表 3-1 に示す。
2.2 オブジェクト(割れ目帯)の特性の設定
割れ目帯の長さについては,割れ目帯の幅と長さの関係式 2)((割れ目帯の幅)=0.032 ×(割
れ目帯の長さ))を用いて算出した。割れ目帯の形状は円盤と仮定し,割れ目帯の長さは円盤の直
径とした。また,幅と方向(走向及び傾斜)については明瞭な相関が見られないことから,独立
にランダムサンプリングすることとした。サンプリングにあたっては,幅,方向いずれについて
も既知の 27 個の割れ目帯の特性を繰り返しランダムにサンプリングする Boot strapping の手法を
用いた。
付 3-1
付表 3-1 推定に用いたボーリング孔での割れ目帯に関する情報
ボーリング
孔
HDB-1
HDB-3
HDB-4
HDB-5
HDB-6
HDB-8
2.3
割れ目帯
割れ目帯
見かけの
上側標高
下側標高
割れ目帯幅
走向(度)
傾斜(度)
(m)
(m)
(m)
160.90
-230.90
70.00
74
63
-360.90
-490.90
130.00
102
64
-520.90
-570.90
50.00
26
64
8.19
-131.81
140.00
86
58
-261.81
-371.81
110.00
52
60
-391.81
-411.81
20.00
12
60
13.61
-66.39
80.00
64
78
-86.39
-256.39
170.00
288
61
-266.39
-316.39
50.00
66
56
-316.39
-446.39
130.00
8
49
16.77
-43.23
60.00
94
74
-53.23
-93.23
40.00
102
64
-103.23
-123.23
20.00
85
71
-153.23
-163.23
10.00
99
52
-203.23
-243.23
40.00
253
77
-253.23
-323.23
70.00
58
75
-353.23
-393.23
40.00
80
58
40.21
-49.79
90.00
85
24
-79.79
-179.79
100.00
73
67
-219.79
-239.79
20.00
35
83
-299.79
-339.79
40.00
85
67
-379.79
-449.79
70.00
79
60
-499.79
-539.79
40.00
77
55
50.05
-9.95
60.00
39
46
-29.95
-39.95
10.00
48
65
-79.95
-139.95
60.00
80
49
-239.95
-249.95
10.00
103
56
CBS による推定の手順
CBS による推定の具体的な手順は以下の通りである。
(1) 領域全体に占めるオブジェクト(割れ目帯)の割合の設定
あらかじめ,基準となる領域全体に占めるオブジェクト(割れ目帯)の割合 λ1 を決定する。
本事例では,HDB-1~8 孔の全孔長と割れ目帯の長さとの比から, λ1 =0.45(=1,540m/
3,440m)とした。
(2) 代表点の設定
HDB-1~8 孔における各点について,オブジェクト(割れ目帯)であるかバックグラウンド
であるかを判定し,代表点とする。初期状態では全空間をバックグラウンドとするため,す
べての代表点がバックグラウンドに属している。
付 3-2
(3) オブジェクトの初期配置の設定
以下の手順によって,代表点が正しくオブジェクトもしくはバックグラウンドに割り当てら
れるようにオブジェクト ϕ を配置する。
① オブジェクトをランダムに発生させる。ここで,オブジェクトは対象領域において十分な
広がりを持った平面であるとする。
② オブジェクトがバックグラウンドに割り当てた代表点を含んでいるとき,①のオブジェク
トを棄却する。
③ オブジェクトが,オブジェクトに割り当てるべき代表点で,これまでに採用されたどのオ
ブジェクトにも含まれていない点を含むとき,①のオブジェクトを採用する。
④ いずれにも該当しないとき,①のオブジェクトを棄却する。
⑤ オブジェクトの代表点の中に,これまでに採用されたどのオブジェクトにも含まれていな
い代表点が残っていれば①に戻る。
(4) オブジェクトの再配置
以下の手順でオブジェクトの追加・削除を行う。
① 0~1 までの一様乱数 r を発生させ,r の値によって以下②,③いずれかを実行する。
② λ1 /(λ1 + ϕ ) の割合で新規オブジェクトをランダムに発生させる。このオブジェクトを追加
することによって代表点の割り当てに矛盾が生じない場合,オブジェクトを追加する。こ
こで, ϕ は領域全体に占める既存のオブジェクトの割合を示す。
③ ϕ /(λ1 + ϕ ) の割合で既存オブジェクトの一つをランダムに選択する。このオブジェクト
を削除することによって矛盾が生じない場合,このオブジェクトを削除する。
④ ϕ が λ1 に十分漸近したところで終了する。不十分な場合は①からの手順を反復する。
2.4
CBS による割れ目帯分布の推定結果
前項までに述べた CBS の手法及びデータを用いて,6 本の試錐孔との交差位置についての既知
の情報と整合的となるような割れ目帯分布の推定結果を付図 3-1 に示す。
2.5 複数種類のデータを用いたコンディショニング
地下の水理地質構造の推定に CBS を適用した事例について,原子力機構が地層科学研究を行っ
ている岐阜県東濃鉱山周辺のボーリング孔データを用いた例を以下に示す。
推定の対象として,地下の二次元鉛直断面を選んだ。対象とした鉛直断面には,断層を挟んで
礫岩優勢部と非礫岩部とがほぼ等間隔で交互に出現する構造がみられ,また,レンズ状の泥岩か
らなる低透水性層が分布している。
本事例では,専門家の知見に基づき長短二種類のレンズ構造の形状パラメータを設定し,さら
に,ボーリング孔に沿った観察結果を制約条件として前処理付き Boolean Simulation を行い,複数
の統計的リアライゼーションを作成した。これらのリアライゼーションは,いずれもボーリング
孔に沿った観察結果である低透水性層(泥岩)の分布と整合的であるが,不均質性のパターンは
個々に異なったものであるため,全体として顕著な不確実性を残しているものといえる。そこで,
それぞれのリアライゼーションごとに定常地下水流動解析を行い,独立した異なるデータである
ボーリング孔沿いの間隙水圧の実測値と,解析による圧力分布の推定値とを比較し,二乗誤差が
最小となる場合リアライゼーションを抽出するという方法で不確実性の低減を試みた。二乗誤差
が最小となるリアライゼーションの結果を付図 3-2,間隙水圧の推定値と実測値との比較を付図
3-3 に示す。
付 3-3
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## #######
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## ## ##############
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## ######
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# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #HDB-4
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## #######
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####### ##
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#### #######
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#### ###
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#### #
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####### ##
# ###### ### ##
# # #HDB-5
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# ## ####### ##### ####### ##
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####### #### ####
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##
#
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##### #######
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## ##########
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# ####
# ##
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#### ######## #####
# # # # # #HDB-8
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###### ## ####
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# #########
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#########
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# # # # # # # HDB-6
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# # HDB-3
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# # # # # # # # # # # HDB-1 # # # # # #
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###### #### ##
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HDB‐4
HDB‐5
HDB‐3
6,000m
HDB‐6
HDB‐3
HDB‐1
4,000m
付図 3-1
CBS により推定した割れ目帯分布(青色部分。標高 0m 水平断面)
TH‐1
ボーリング孔
TH‐2
TH‐4
標高(m)
250
TH‐3
低透水性層
200
150
断層
100
付図 3-2 間隙水圧分布との比較により抽出された泥岩層配置
(ボーリング孔における緑色部分:泥岩,黄色部分:泥岩以外の岩種。水平方向 150m)
付 3-4
300
280
280
260
260
240
240
220
220
標高(m)
標高(m)
300
200
200
180
180
160
160
140
140
120
120
100
150
200
250
300
100
150
(a) TH‐2孔
200
250
300
(b) TH‐3孔
付図 3-3 間隙水圧の推定値と実測値の比較
(━━━:推定値,─■─:実測値。
)
付 3-5
水頭(m)
参考文献
1) Haldorsen, H.H., and Lake, L. W.: A new approach to shale management in field-scale models, SPE
Jour., v. 24, no. 8, pp.447-452 (1984).
2) Roderik, J. B., Antonio, G. C. and Allard, W. M.: A statistical adjustment of Haldorsen’s conditioned
Boolean simulation algorithm, Mathmatical Geology, v. 28, no. 6, pp.791-810 (1996).
3) Vermilye, J. M. and Scholz, C. H.: The process zone, A microstructural view of fault growth, Jour.
Geophys. Res., 103, B6, pp.12223-12237 (1998).
付 3-6
付録 4. 環境変遷パターンに対応したモダンアナログに関する知識の利用における参考事例
生物圏評価の対象とする地域について地形と相対的海水準の変化,及び気候条件の変化による
動因が想定された場合に,これらの動因によって誘起される種々の環境変遷について,それぞれ,
モダンアナログに関する知識を利用して理解する。ここでは,地形及び相対的海水準変化(下記
(a)に記述)と気候変動(下記(b)に記述)に伴う地表環境の変遷に関するモダンアナログに着目し,
参考となる事例を整理した。
(a)
地形及び相対的海水準変化に伴う地表環境の変遷に関するモダンアナログ事例
地震性の隆起・沈降に伴う海進・海退についての事例
我が国では,地震に伴う隆起あるいは沈降によって短期間のうちに海岸線の変化が生じた事例
がいくつか見られる。これらは,気候変動の周期に比して十分に短い時間スケールで生じたもの
であるため,現在の気候(温帯)のまま海進・海退が生じたことに伴う環境変遷の例ということ
ができる。
浜田地震に伴う土地の昇降についての事例
明治 5(1872)年に島根県浜田付近に浜田地震(M7.1±0.2)が起こり,石見地方に家屋の倒壊,
液状化など大きな被害を与えた。この地震の震源は浜田北方とされ,海岸での昇降を伴ったi)。隆
起量は最大約 2m,沈降量は最大約 3mに及んだとされるii)。付図 4-1 は,浜田地震で離水した畳ヶ
浦海岸の隆起波食棚である。
付図 4-1 浜田地震によって隆起した畳ヶ浦の波食棚
海域に発生する地震に伴う海岸の昇降と地形との関係については,日本では多くの研究例があ
り,海側(震源断層)から内陸への傾動が知られている場合が多い(たとえば 1703 年の元禄地震
に伴う房総半島南部の北方への傾動,1802 年の小木地震に伴う小木半島の北方への傾動,1964
年の新潟地震による粟島の西方への傾動)。しかし,浜田地震の際の地殻変動は単純な傾動ではな
く,隆起部と沈降部とが共存すると考えられている(付図 4-2)。これは,図示した断層の横ずれ
に伴って生じたものと考えられるiii)。海岸地域を精査すると,複数回の隆起を示す離水貝化石層
付 4-1
が海食洞の中に保存されていることがあり,地震隆起が繰り返されてきたことを示す(付図 4-3)。
付図 4-2 浜田地震による隆起・沈降量の分布 iii)
付図 4-3 浜田西方,小島の海食洞内壁面にある時代を異にするカガキの化石層
上位の化石の年代は 3300±110,下位のそれは 1840±80yrBP で,
浜田地震より前に少なくとも 2 回の間欠的な離水があったことを示す。
付 4-2
象潟地震についての事例
「象潟」は鳥海山の北西麓に位置し,砂州で日本海から隔てられた内湾状の低平な地に多数の泥
流丘が点在する景勝地(天然記念物)となっている。この泥流丘が鳥海山の爆発により山体から
もたらされたのは,約 2600 年前頃であるiv)v)vi)。かつてこの地は,芭蕉の『奥の細道』で知られ
るように,潟湖(ラグーン)内に多数の島々が浮かんでいた。このことは象潟の低地堆積物中の
貝化石が泥質底内湾の潮間帯に棲息する種であることvii),及び貝化石の 14C 年代から 900 年前頃
には汽水域であったことviii)からも明らかである。この地域を一変させたのが,1804 年 7 月 10 日
(文化元年 6 月 4 日)の 22 時頃に発生した「象潟地震」(M7.1)である。この地震は著しい地盤
隆起を伴い,象潟(湖)は離水し,周辺の海岸部でも広い範囲にわたり隆起現象が見られた。
地震隆起の範囲や量は,その痕跡を空中写真判読及び波食崖や波食台などの旧湖岸線と旧海岸
線を指示する微地形から解明された(付図 4-4)。復元された象潟湖の離水直前の平面形は南北直
径約 2km,東西短径約 1km の楕円形となり,180-220cm の隆起量であった。一方,海岸部での地
震隆起の広がりは,象潟を中心にして鳥海山麓の遊佐町吹浦から仁賀保町付近までの約 25 km 範
囲にわたった。推定隆起量は象潟付近の海岸部で最大となり 180cm,北部の金浦で 130cm,芹田
では 90cm 以下であり,南部の川袋で 125cm,小砂川で 110cm,女鹿では 90cm であった。また,
地震に伴い津波の来襲があったという記録から,震央位置は沿岸部に想定される viii)。
付図 4-4 象潟地震の隆起量(左)と地震前の地形概観(右)(平野ほか viii)を簡略化)
被害程度を基にした震度の広がりから,地震規模は従来の見積りをやや上回り,M7.3 とされる。
また,津波の波高は,仁賀保~酒田間で 3-5m,周辺の秋田県北部,山形県南部沿岸でも 1-3m で
ある。これらの震度・津波及び地殻変動のデータから,波源域は本荘から酒田に至る南北方向に
長さ 60km,幅 30km の大きさで,津波規模が地震規模に比べ大きいことから,高角逆断層であっ
たと考えられているix)。
東北地方の日本海沿岸は歴史時代を通じ M7 前後の内陸直下型地震が多数発生している(1704
年の羽後・津軽地方の地震(M7.0±1/4),1793 年の西津軽地震(M6.9-7.1),1810 年の男鹿半島で
の地震(M6.5±1/4),1939 年の男鹿地震(M6.8)など)。象潟地震もこうした地震のひとつである。
付 4-3
後氷期の海面上昇に伴う海進(縄文海進)とその後の内湾の埋積に伴う海退(沖積低地の形成)
についての事例
約 6,000 年前の後氷期の海面上昇に伴う縄文海進によって生じた湾が,その後の気温低下によ
る海面低下及び内湾の埋積によって陸化する際の環境変遷は,東京湾や濃尾平野等の多くの事例
において見られる。
東京湾における地形変化の事例
荒川低地・中川低地・東京低地の沖積層と埋没地形の研究により,この地域の海面変化に伴う
地形変化が復元された(付図 4-5)
付図 4-5 東京湾の古地理変化
基底礫層を形成した最終氷期極相期の谷は,海進(約 1.5-1.1 万年前;未較正の放射性炭素年代)
により埋積された。その後,1 万年前頃に海面の低下があり,この地層の上部を侵食した。当時
の海面は-50m 付近まで低下した。約 9000 年前の海面は約-35m にあり,その後 6000 年前まで
急速に海面が上昇し,海は荒川低地・中川低地の河谷沿いに進入し,
「奥東京湾」を形成した。6000
年前頃には海面は+2-3m まで上昇し,奥東京湾は最も拡大した(縄文海進1)。5300 年前頃に起
きた海面の低下(-1m)により,三角州の急速な前進がはじまった。中川低地では海岸線は 4500
年前までに約 25km も退き,約 3500 年前の海岸線は草加~三郷付近にあったx)xi)。
縄文海進以降,約 1500 年前にかけてのいずれかの時期に,利根川の主流路が荒川低地から加須
低地・中川低地へと移った。これは河川堆積物が大宮台地北部の台地を刻む谷を埋めて低地との
比高がなくなったことと,加須低地を中心とする沈降運動,さらに流域の火山活動による大量の
1
縄文海進高頂期の年代は従来放射性炭素年代より 6000 年前とされてきたが,年輪年代学などに
基づく年代較正によれば,その実年代は 7000-7300 年前と見られる。
付 4-4
砕屑物供給などが関与したためと考えられている。
東京低地は縄文海進によって形成された奥東京湾が最後に陸化した部分である。東京低地の陸
化は歴史時代に入っても継続した。弥生時代以降,毛長川の両岸や,隅田川右岸,中川と江戸川
の間の自然堤防や砂州などの微高地に遺跡が立地するようになり,正倉院分書(養老 5 年:721)
に示される「下総国葛飾郡大嶋郷」は,東京低地東部の微高地上の集落群に比定され,「島俣里」
は葛飾区柴又,「甲和里」は江戸川区小岩,「仲村里」は葛飾区奥戸付近と推定されているxii)。
中世の利根川は,古利根川~中川~小合溜~江戸川のコースが本流と思われ,水元(埼玉県堺)
付近での中川経由古隅田川と小合溜経由江戸川を分派させていた。荒川は大宮台地内の星川,元
荒川あるいは綾瀬川をへて利根川(現中川)に合流した。東京低地では中世にはほとんどの微高
地上に集落が分布していたが,隅田川と中川の間は中世以降も干潟2あるいは湿地となっていた。
江戸時代前期には利根東遷などの河川事業が行われた結果,中川は排水河川となり,中川低地
の湿地帯は用排水路が整備され,新田開発が進められた。海岸部の干拓・埋立3は,佃島,小名木
川南方までおよんだ。
明治時代以降は,1930 年に荒川放水路・江戸川放水路が完成し,東京低地の水路網は大きく変
更された。海岸部の埋立が大きく進展した一方,地盤沈下によりいわゆるゼロメートル地帯が出
現・拡大した。
東京湾には東京低地からの利根川・荒川水系のほか,西からは多摩川,東からは小櫃川などが
注ぐ。最終氷期には三浦半島の観音崎付近まで海岸が後退し,東京湾はこれらの河川を合わせた
古東京川の谷となっていた。東京湾の地形は富津岬~中ノ瀬の北側の浅い平坦部と,南側の浦賀
水道の海底谷へ続く水深の大きな部分からなる。中ノ瀬は水深 10‐20m の砂質の浅瀬で,段丘地
形の可能性もある。
湾岸の水深 5m 以浅の海底平坦面・干潟と,水深 10m 前後以深の平坦面との間には三角州の前
置斜面4があり,その斜面を境に低質が砂からシルト・粘土に急変する。現在では水深 5m 以浅の
部分はほとんど埋め立てられ,干潟はほとんどが消失した。現在,干潟は江戸川(放水路)河口
三番瀬や,小櫃川三角州周辺付近に残るのみである。また,浦安沖や幕張~千葉沖は埋立のため
浚渫され,幅 1km,深さ 15m 以上の凹地が掘削されているxiii)。
浦賀水道には水深 50‐100m で溝状の観音崎海底水道があり,これは相模湾の東京海底谷(水
深 1000m 以上)へと続く。観音崎海底水道は最終氷期極相期に東京湾全域が陸地化した時代に,
古東京川によって侵食された谷の部分で,その後の海面上昇により沈水し,埋め残されている部
分であるxiv)。
濃尾平野における地形変化の事例
木曽川・長良川・揖斐川などが形成した沖漬平野の地形は,大きく扇状地,氾濫原,三角州に
分けられる(付図 4-6)。中でも犬山を扇頂部とする木曽川扇状地は半径 14km に広がり,網状の
流路跡が良好に認められる。扇状地の表層は薄い砂質シルト層で下位には計 20‐30cm に及ぶ砂
礫層が堆積している。この礫層は濃尾平野の沖積面下に広く分布する濃尾第一礫層に連続する。
南部の臨海地域では,熱田層のつくる埋没波食台状の地形の西側に発達する幅約 10km の谷を埋
2
干潮のとき水面上に現れ満潮時に水面下となる砂泥平坦地
3
干拓地は干潟や海底,湖底を堤防でしめきってから排水して陸地化したもの。一方,埋立地は
土砂などで水面上に土地を造成したもの
4
三角州前面の急勾配の部分
付 4-5
める形で堆積している。
扇端部の下流側には,自然堤防や旧河道などが発達する氾濫原が広がる。自然堤防は五条川や
三宅川,日光川などの旧木曽川派川の旧河道などに沿って分布するほか,氾濫原のほぼ全域にわ
たってモザイク状に分布する。氾濫原の堆積物は主としてシルトあるいは砂質シルトなどからな
り,有機物を多く含む暗灰~黒暗灰シルト層あるいは泥炭質層が認められ,縄文時代後期から弥
生時代の遺物を包含するxv)。多くの遺跡ではこの層の上位に洪水による砂質堆積物が堆積するこ
とから,静穏な環境の時期から洪水・氾濫の活発な環境に変わったことが推定されている xv)xvi)xvii)。
なお,氾濫原東部の遺跡では,縄文時代後期~弥生時代を中心とする時期に形成された埋積浅
谷の存在が知られており,この時期における海水準の低下を示すものとされている
小野ほか
xvii)
。また,
xviii)
は濃尾平野における表層堆積物の層序・層相・年代及び遺跡の立地に基づいて,縄文
海進以後の海岸線の変化と土砂堆積域の変化に基づく低地の拡大過程を明らかにしている(付図
4-7)。
付図 4-6 濃尾平野の地形と平野東部における遺跡の立地(小野ほか xviii),坂本ほかxix)に基づく)
付図 4-7 濃尾平野の土砂堆積域の変遷 xviii)
付 4-6
濃尾第一礫層を刻む埋没谷には,狭義の沖積層基底礫層が堆積しておりxx)それを覆って下部砂
層,シルト・粘土層,上部砂層,沖積陸成層の順に堆積しているxxi)xxii)xxiii)下部砂層は主として細
砂,シルト混じり砂によって構成され,しばしばシルト・粘土,腐植質シルト,泥炭質粘土など
を挟在する。その上に貝化石を多く含むほとんど均質なシルト・粘土層がおおう。これは分布域
の縁辺部を除くと,ほぼ全域にわたってきわめて軟弱な堆積物である。上部砂層は主として細砂
あるいはシルト混じり細砂によって構成される砂層で,砂層中にはしばしば腐植物や貝化石が含
まれる。最上部層は扇状地性の砂礫層あるいは砂層で,自然堤防帯では泥炭をはさんだり,腐植
を多く含んだりする砂泥互層よりなる。また,三角州では 1m 未満で,薄いシルト層におおわれ
た上部砂層がそのまま地表面を形成している。
濃尾平野は内湾に面するために,海の作用が相対的に小さく,多くの粗粒物質が下流まで運搬
され,河川による物質の移動・堆積作用が卓越するという特徴をもつ。また,三角州の前進はお
。
よそ 5500 年前に顕著になった xxiii)xxiv)(付図 4-8)
付図 4-8 濃尾平野西部の地形・地質断面図とデルタフロントの前進速度 xxiv)
約 5900,4,200,2800 年前(暦年未較正)におけるデルタフロントの位置を示す
波食による海食崖の後退に伴う海進とその後の海面低下に伴う海退(海成段丘の形成)について
の事例
室戸岬付近,三浦半島,下総台地等,日本の沿岸各地に分布する海成段丘の事例である。特に,
隆起速度の速い室戸岬付近等では,最終間氷期(約 12.5 万年前)の海底面が,現在標高 250m を
超えるようなところもある。
室戸における地形変化の事例
西南日本外帯は,プレート境界である南海トラフの北側に位置し,南海トラフまたはその付近
に震源を持つ M8 またはそれ以上の,地殻変動と津波を伴う大地震をほぼ 100-200 年間隔で経験
している地域である(たとえば 1605(慶長 9)年の慶長地震,1707(宝永 4)年の宝永地震,1854
(安政元)年の安政南海地震など)
。最新の地震は 1946(昭和 21)年の南海地震で,津波を含む
大きな災害と,南部の岬が隆起し北部の内陸が沈降するという特有の地殻変動を生じた。この傾
向は地震以前及び地震後の変動とは逆の傾向を示している。このような地震と関係する地殻変動
の様式は,歴史史料で知られる限り過去の地震も同様であった。
外帯の海岸を特色づけるのは,発達した海成段丘と,その間に介在するリアス海岸である。大
付 4-7
部分の海成段丘は内陸に向かう傾動を示し,おおむね上記の地震時の隆起傾向と調和する。海成
段丘から見ると,室戸岬付近は日本で最大級の隆起速度を持つ(1.6m/1000 年)。段丘域の北側に
位置するリアス海岸にも海成段丘の遺物が見出され,単なる沈降地域ではないことを示している。
外帯を流下する主要な河川の河口には,河成段丘ないしは沖積低地が見られる。
付図 4-9 外帯南部の海底地形xxv)
海成段丘の形成過程については,室戸半島地域における地殻変動と海面変化との合成の結果で
あるという見解xxvi)が一般に受け入れられている。
西南日本外帯の大陸斜面は,日本列島をめぐるプレートとしては年代が若いフィリピン海プ
レートが沈みこむことから,他の島孤-海溝系とは違う独特な地形を呈している(付図 4-9 参照)。
大陸斜面は,陸側から大陸棚,陸棚斜面,前孤海盆,外縁隆起帯,内側海溝斜面,南海トラフに
区分されるxxvii)。
西南日本弧の外縁隆起帯はきわめて顕著であり,沈降帯である前弧海盆と対照的な地形を呈し
ている。とくに,室戸沖の土佐碆は南海トラフに沿った外縁隆起帯の中でもひときわ大きく,前
弧海盆である室戸舟状海盆との地形的対照は著しい。土佐碆は紀南海山列の北方延長にあたるこ
とから,過去に海山が沈み込んだ結果できた高まりであると指摘されてきたがxxviii)xxix),最近の地
震探査により,土佐碆の下に海山が沈み込んでいることが確実になったxxx)
本地域の大陸棚はさほど広く発達していない。とくに室戸半島東岸や紀伊半島南~東岸ではき
わめて狭く,大陸斜面が陸上から前弧海盆に直接落下している。これは半島東部には外縁隆起帯
から続く低角逆断層があるためxxxi)と考えられている。
四国外帯の海岸は,中央部に位置する低平な高知平野と,その両側で太平洋に突出する半島部
とに大別される。室戸岬,足摺岬をそれぞれ南端とする半島部には海成段丘が発達する。その高
度は,岬から離れた北東に向かって次第に低くなり,代わって小さな出入りに富むリアス式の海
岸を持つようになる。たとえば紀伊水道側では那賀川の南部でリアス海岸の発達がよく,土佐湾
内では仁淀川から西でとくに湾入に富む。漁港として有名な須崎港はこのような湾入部に位置し
ている。仁淀川河口の西南に東西にのびる横浪半島の北側の浦ノ内湾も,そのような湾入のひと
つである。横浪半島の南の土佐湾に面する海岸では,海食が進んで湾入が浅くなり,北側との違
付 4-8
いが著しい。豊後水道側では,宿毛付近から佐田岬半島にいたるまできわめて出入りが多く,多
数の島々もある。紀伊半島でも新宮と御坊を結ぶ線より南の海岸は海成段丘に縁どられているが,
それ以北,とくに志摩半島では出入りの多い海岸線を示している。
高知から南東に向かうと沖積平野の幅は次第に狭くなり,物部川を越えた手結岬付近からは山
地が海岸に迫り,その麓に海成段丘が見られるようになる。安芸川,安田川,奈半利川,羽根川,
吉良川,室津川などの河口部では,海成段丘は沖積平野のために連続を絶たれるが,南東に向かっ
て次第に幅と高度を増している。とくに羽根岬から行当岬にかけては段丘面の連続がよい(付図
4-10)。ここでの広く平らな高い段丘面,その前面に帯状に連なる完新世段丘との間の高い急崖,
段丘面を刻む深い谷は,本地域で最も目立つ景観である(付図 4-11)
。
付図 4-10 土佐湾北東岸の海成段丘の分布
xxvi)
M1 及びL面がおもな河川に沿って入り組んだ分布を示すことに注意
付図 4-11 土佐湾北東岸吉良川北方の海成段丘
谷で開析されている広い段丘が M1 面,海岸沿いの低地が L 面
付 4-9
海成段丘は,上位から羽根岬(H)1,2 面,室戸岬(M)1,2,3 面,及び最下位の完新世段丘(L)
に分かれる xxvi)。これらのうち,M1 面は,室戸岬付近を除くと原面を良く残す段丘で,その旧汀
線高度は手結岬の約 50mから次第に南東に向かって高度を増し,行当岬付近で約 200m となる。
その南でいったん低くなるが,再び南東に向かって高くなり,室戸岬では約 200m となる(付図
4-12)。M1 面は一般には堆積物のごく薄い波食面であるが,ところによっては厚い堆積物を伴う。
またその内縁は上記の主要な谷に沿って湾入し,段丘形成が沈水現象と関係することを示す。M1
面上にも 2,3 の小段が区別され,かつて渡辺xxxii)はこれらを多成的(複成)段丘と呼んだ。M2,M3
面は,M1 面の海側に狭く,局地的に分布する。
付図 4-12 土佐湾北東岸の旧汀線高度及び水準点改測結果の投影図(吉川ほか xxvi)を概略化)
1929-1947 年の変位は 1946 年南海地震を含み,1895-1929 年のそれは大地震を含まない。
両者の変位は異なり,前者の変位は旧汀線高度の分布(下)とよく合っている
上位の H 面群は開析が進み,丸みを帯びた尾根状の平坦面をなす。一部では基盤の起伏を埋め
る厚い堆積物からなる。これらの高位の面の構成層は赤色風化5を受けていて,離水後温暖な時期
を経過したことを物語る。この赤色風化の程度から段丘を対比し,本地域には傾動が認められな
いとするという考えも出されたがxxxiii)xxxiv)段丘面の連続の状態から見ると,付図 4-10 に示した対
比が妥当である。H 面群の高度分布は M1 面のそれと似ているが,傾きの程度はより大きい(付
図 4-12)。室戸岬周辺では,後に述べる完新世段丘の発達も顕著である。
本地域は,段丘の形成過程に関する解釈と,地震隆起との関係の 2 点から,海成段丘の研究に
とって重要な地域である。海成段丘の形成は,かつては地殻変動速度の緩急によって説明された。
すなわち,安定している時期に広い平坦面を形成し,急速な隆起に対応して段丘崖が形成される
という考えである xxxii)。
これに対し,段丘の形成は地殻変動の緩急によるのではなく,長期的に見ればほぼ一様な速度
の隆起と,汎世界的な氷河性海面変化との組み合わせの結果であるという仮説が,吉川ほか xxxvi)
によって提示され,その妥当性が検証された。その根拠は以下の 2 つの事柄である。ひとつは,
大きな川の河口付近では段丘面は厚い谷埋め堆積物からなり,隆起地域であるにもかかわらず沈
5
赤色風化は大局的には時間の関数であり,温暖期を経験したことを示すが,他の条件を無視し
てそれのみを対比の示標とするにはまだ問題がある
付 4-10
水現象が認められることである。次は 1 地震周期6の地殻変動様式と旧汀線高度から求めた変動様
式が対応し,長期間の地殻変動は 1 地震周期の変動の積算としてほぼ一様に継続したと説明され
ることである。段丘の旧汀線高度は南東から北西に傾き下がり,その量は古い段丘ほど大きく,
段丘形成期間を通して同様な北西への傾動が継続したことを示す。このような傾動は,水準点改
測結果から求められた 1946 年の南海地震時の変位とは正の関係を,地震間の動きとは逆の関係を
呈しており(付図 4-12),過去の歴史地震でも同様な変動が繰り返されたことが知られている。
①海面変化
②地殻変動の積算値
③地盤の海抜高度の変化
付図 4-13 室戸岬を例とした海面変化と等速な地殻変動の積算としての海成断丘の形成
(吉川ほか xxvi)によるが,海面変化曲線は Bloom et al.xxxv)により修正。
したがって相対的な海面変化曲線も原論文とは異なる)
具体的には,室戸岬を例として,1946 年の地震前,地震時,地震後の地殻変動を比較すると,
地震時の隆起量は地震間の沈降量より大きく,ひとつの地震周期の間では結果として地震隆起の
約 1/5 が残ることになり,平均年 2mm の隆起速度が求められた。この速度での隆起が第四紀後期
を通して続いたと仮定し,これと氷河性海面変化曲線とを組み合わせて相対的海面変化曲線が描
かれた(付図 4-13)。
6
吉川ほか
xxvi)は,歴史の記録から見た南海地震の平均間隔,120
年を大地震の 1 周期と呼んだ。
1 周期の間には,地震による急激な隆起,その後の急速な沈降,それに続く緩慢な沈降があり,
さしひき地震隆起の約 5 分の 1 が,1 地震周期の間に残存することになり,これから現在の平均
隆起速度を求めた。周期という言葉よりも再来間隔という語を用いた方が適当であるが,ここ
では原論文にしたがった用語を使った。
付 4-11
(b) 気候変動に伴う地表環境の変遷に関するモダンアナログ事例
気候変動に伴う地表環境の変遷に関するモダンアナログを生物圏評価に適用した例として,ベ
ルギーの中/低レベル放射性廃棄物処分場における生物圏評価のために行われたモダンアナログ
(気候アナログ)の検討例xxxvi)を以下に整理した。
報告書の概要
本研究では,Dessel(ベルギー)に計画されている L/ILW 向け地表処分施設の周辺環境における,
覆土底面排水及び地下水涵養量の数千年間にわたる挙動の予測を試みている。類似地域から得ら
れた気象観測の時系列を用いて潜在蒸発散量を計算した。加えて,異なる気候状態のもと,土壌植物-大気システム中の水収支をシミュレートした。現在よりも温暖化した状態での気候について
は,亜熱帯気候である Gijon(スペイン)を類似地域とした。この地域を基に実施されたシミュ
レーションでは,覆土底面排水は最大 20%増加,地下水涵養は最大 10%減少するという結果が得
られた。逆に,寒冷化した状態での気候については,Sisimiut(グリーンランド)を類似地域とし
た。このケースでは覆土底面排水及び地下水涵養ともに著しく減少するというシミュレーション
結果が得られた。時間スケールが超長期なため不確実性が非常に高いこと否めないものの,対象
地域の将来の気候条件の予測にこれらの数値を適用することにより,処分場内の水分流動及び地
下水涵養の将来の挙動に関する洞察を得ることができる。
将来の気候変動についての想定
将来の気候変動に関するシナリオは,通常,全地球気候モデル(GCM)によるシミュレーション
結果を基に設定される。特に,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるシミュレーションは,
近未来(西暦2100年まで)の予測として参考にされることが多いxxxvii)。しかし,モデルに基づく
地球温度及び海面上昇の予測は,将来の温室効果ガス排出率に関する仮定に大きく依存している。
加えて,全地球的気候システムに関する現状の理解は限られたものでありxxxviii),世界的な海面上
昇を促進するような重要な効果の中にはGCMに含まれていないものもある(例えばxxxix)xl))。
北ヨーロッパ地域の年平均気温は,全地球平均以上に上昇すると予想された。IPCC A1B シナ
リオによる条件をもとに行ったシミュレーションでは,北ヨーロッパの年平均気温は 1980-1999
年ごろから 2080-2099 年ごろにかけて,2.3°C から 5.3°Cxxxvii)変化すると推定された。また,同地
域の年間平均降水量は 1980-1999 年ごろから 2080-2099 年ごろにかけて,0%から 16%変化すると
いう結果が得られた。Baguis et al.は,IPCC による全地球・地域シナリオをベルギー地域のシナリ
オへと規模を縮小し,主に降水量の変化を反映した高・中・低降水量を想定した三つのシナリオ
(それぞれ約+28%,-6%及び 33%の降水量を想定
— 地域気候モデル・データより)を作成し
xli)
た 。
IPCC 及び関連する研究から,次の 90 年程度にわたる北ヨーロッパにおいて予測される気候変
動パラメータ値が取り得る範囲は非常に広範囲にわたると結論づけられる。多くの高度なモデル
を用いても,排出される温室効果ガスの量における不確実性から,この予測範囲を狭めるには至
らなかった。したがって,将来の気候状態モデルにおいては,外挿に伴い,この基本的な不確実
性が継承されることになる。
長期的には,天文学的な要素や太陽の活動性も気候変動に影響を及ぼすxlii)xliii)。こうした影響を
受けDesselサイトに起こりうる気候変動として,以下の気候状態分類xliv)を定義した:
DO(海洋温暖気候,Desselの現状気候),
Cs/Cr(乾燥した夏を伴う亜熱帯気候/降雨季節性なし),
付 4-12
EO(永久凍土を伴わない寒冷気候)
FT(永久凍土を伴う寒冷気候)。
ここでとりあげられた参照気候分類は,人為的二酸化炭素排出量増加シナリオ(B4 シナリオ;
付図 4-14)を前提とした BIOCLIM プロジェクトxlv)のシミュレーション結果を基に定義した。加
えて他の二つの気候状態についても考慮する(付図 4-14)。
付図 4-14 BIOCLIM シナリオ B4,A4,及び B3 による,200000 年 AP までの Dessel における
参照・代替気候状態の変遷状況
類似地域の選定に関する考え方
類似地域を選定する際には,標高,経度及び緯度による差異など,地域的な条件を考慮する必
要がある。現状では,Dessel 地域と比較すべき基準は以下のように定義されている:
y
標高:地形性降雨効果が著しい地域を除くために,類似地域の標高は最大150 m.a.s.l.とする
(Desselの標高は20 m.a.s.l.)。
y
海洋の影響及び大気循環システム:支配的な風向を考慮し,最も近い湿気源(海岸線)から
の距離は,最大120kmとする。類似地域は大西洋循環システム(北半球)内にあることが望
ましい。加えて,小島は類似地域の候補に含まれないものとする。
Desselと同様の気候状態の候補地点間でも,降水量及び最大蒸発散については顕著な差異が存在
する可能性がある。年平均温度及び年平均降水量の偏差に基づき,潜在的な類似地域を気候分類
ごとに順序づけた。その結果,格年平均量の偏差が最も小さい二つの地域を観測基準点として選
定した。また,境界例(bounding cases)として,最高降水型,最低降水型の二つの地域を選んだ。
これにより,可能な限り多くの,降水量,気温,その他の気候パラメータの変動性と,それらが
土壌浸透及び地下水涵養に及ぼす影響を調査することが可能となった。付表4-1に気候分類ごとの
選択手順を用いて選んだ類似地域を,また,付図4-15にこれら類似地域の位置を示した。付図4-16
は三つの類似地域の現在の月別平均気温である。
付 4-13
付表 4-1 気候分類ごとの類似地域
Climate
Analogue station
Annual temperature
Annual precipitation
(°C)
(mm)
class
DO
Dessel (Belgium)
10.3
899
Cs
Ourense (Spain)
14.5
807
Cs
Huelva (Spain)
18.1
479
Cs
Cádiz (Spain)
17.7
536
Cr
Gijon (Spain)
13.8
947
EO
Hekkingen-Fyr(Norway)
3.7
909
EO
Tromsø-Langnes(Norway)
2.9
1017
EO
Glomfjord(Norway)
5.0
2106
EO
Saltdal(Norway)
3.3
259
FT
Sisimiut(Greenland)
-3.9
319
FT
Nuuk(Greenland)
-1.4
740
FT
Ilulissat(Greenland)
-5.0
268
FT
Paamiut(Greenland)
-0.8
794
※各気候分類年間平均からの偏差がもっとも小さい地域をイタリック体表記した
付図 4-15 類似地域の位置
付 4-14
付図 4-16 Dessel(DO),Gijon(Cr),及び Sisimiut(FT)の現在の月別平均気温
HYDRUS-1D による水収支のモデル化とシミュレーション結果
草に覆われた土壌断面中(a soil profile covered by grass)の水収支をHYDRUS-1Dxlvi)をもってモ
デル化した。遮断(interception)及び樹冠通過雨量(throughfall)については,一定遮断キャパシ
ティー(constant interception capacity)を0.55mmとして計算した。欠落していた降水量データは,
可能な場合は近隣地域のデータを利用し,さもなければ0とした。その後,樹冠通過雨量及び潜在
蒸発散量をHYDRUS-1Dシミュレーションにおける日計大気境界条件として扱った。
深度2mの砂質土壌断面及び自由排水底面境界条件を想定し,複数の異なる気候に対して
HYDRUS-1Dシミュレーションを用いて覆土底面排水を計った。土壌の水理特性についてはSchaap
et al.
xlvii)
の土壌伝達関数(pedotransfer functions)を使用した。
地下水涵養についても,研究対象エリアの砂質土(ポドゾル土)特性に対して同様のシミュレー
ションを実施した。その際,Zcg(6層)及びZeg(5層)土壌統の深度3m土壌断面を使用した。現気候
条件に基づく計算の底面境界条件として,地下水面深度を一律1mとした。Desselエリアにある松
林下での観測xlviii) 及びシミュレーション結果から,帯水層から土壌へ蒸発散による水分の損失を
補填するだけの供給が可能であることが判明した。付図4-17は,自由排水もしくは地下水面深さ
一律1m,それぞれの境界条件におけるシミュレーション間の土壌水分量差を示している(地下水
面深さ一律1mの境界条件では,土壌水分量は体系的に高くなる)。これは浅層地下水が有しうる
貯水効果を裏づけるものである。
しかしながら,地下水面深さ一律 1mの境界条件の有効性は,他の気候条件下では極めて疑わ
しい。Cs/Cr 温暖気候分類のシミュレーション結果によると,降水量不足(潜在蒸発散量に比べ
て)という条件下では地下水が蒸発散量の供給源の役割を果たすため,地下水面深さ一律 1mの
付 4-15
境界条件とするとマイナスの年間排水,つまり地下水からの上昇流が発生することが判明した。
蒸発散量需要の高まりは,地下水位の低下に帰結するが,これは地下水面深さ一律 1mの境界条
件と矛盾することになる。代替案として HYDRUS-1D モデルに実装されている低排水境界条件を
利用することがあげられる。
付図 4-17 底面境界条件の影響を示す,DO 気候分類(Dessel)における,
Zcg 土壌断面深度 5cm,
20 cm,50 cm,95 cm 地点の水含有量(water content)のシミュレーション結果,
及び降水量の時系列(実線:深度 1m 地点の一定水頭 h=0cm,点線:自由排水)
覆土底面排水についての予測結果
Cs/Cr class 温暖気候:
この温暖気候分類は,Desselサイトにおける参照気候シーケンスにおいて次の1000年間に出現す
ると予想されているものである。付図4-18に,Cs/Cr分類に対応する類似地域の覆土底面排水シミュ
レーション結果の累積分布関数(CDF)を示した。比較対象として,Dessel現気候条件の涵養シミュ
レーション結果の累積分布関数も描画されている(平均涵養量359mm)。この気候分類における土
壌-植物-大気システム内の水収支の各要素を付表4-2にまとめた。注視すべきは,砂壌土断面が有
する高浸透能,自由排水境界条件,及び降水量が比較的少ないことから,この気候分類における
水流出は無視できるほどにわずかなこと(1%未満)である。これらの結果から,覆土底面排水の平
均シミュレーション結果から,Huelva,Cádizの二カ所の類似地域では著しく減少,Ourenseではほ
ぼ同等であり,Gijonでは増加することが判明した。
付 4-16
付図 4-18 Cs/Cr 分類類似地域についてシミュレートした年間覆土底面排水の累積分布関数
※比較対象として Dessel サイトの DO 気候分類参照データを含めて描画した。
付表 4-2 覆土底面排水計算による Cs/Cr 類似地域の土壌-植物-大気水収支(年平均統計。単位は
mm)
Station
P†
ET0
Thr
ETa
D
Gijon
947
704
872 (92%)
531 (56%)
413 (44%)
Cádiz
524
1140
491 (94%)
392 (75%)
140 (27%)
Ourense
863
874
800 (93%)
496 (58%)
350 (41%)
Huelva
518
1265
485 (94%)
369 (71%)
149 (29%)
※Cádiz,Gijon を「平均的」な類似地域,Huelva,Ourense を「境界例」地域とする。樹冠通過雨量(Thr),ETa,及び
覆土底面排水(D)の内,降水量(P)が占める割合を括弧内に記載した。
付 4-17
EO and FT classes 寒冷気候:
付図 4-19 に,EO 気候分類についての類似地域の覆土底面排水シミュレーション結果の累積分
布関数(CDF)を示す。同一の気候分類内で浸透量に著しい差異があることが示されている。これ
は主に,この気候分類内での降雨パターンが多様なものであることが原因と考えられる。Dessel
の現気候状態(浸透量 359 mm)と比べ,二カ所の「平均的な」類似地域(Tromsø-Langnes 及び
Hekkingen Fyr)においても,浸透量が大きいことがわかる。この気候分類における土壌-植物-大
気システム内の水収支の各要素を付表 4-3 にまとめる。
付図 4-19 EO 分類類似地域についてシミュレートした年間覆土底面排水の累積分布関数
※比較対象として Dessel サイトの DO 気候分類参照データを含めて描画した。
付表 4-3 覆土底面排水計算による EO 類似地域の土壌-植物-大気水収支
(年平均統計。単位は mm)
Station
P†
ET0
Thr
ETa
D
HF
924
403
849(92%)
385(42%)
537(58%)
TL
1003
381
942(94%)
337(34%)
655(65%)
Glomfjord
2045
412
1974(96%)
399(20%)
1642(80%)
Saltdal
232
567
190(82%)
202(87%)
43 (18%)
※Tromsø-Langnes(TL),Hekkingen Fyr(HF)を「平均的」な類似地域,Glomfjord,Saltdal を「境界例」地域とする。樹冠
通過雨量(Thr)
,ETa,及び覆土底面排水(D)の内,降水量(P)が占める割合を括弧内に記載した。
付 4-18
また,FT 気候分類についての類似地域の覆土底面排水シミュレーション結果の累積分布関数
(CDF)を付図 4-20 に示す。Dessel の現気候状態と比べ,
「平均的な」類似地域 Nuuk では浸透量に
多少の増加,Sisimiut では著しい減少が見られた。この差は降雨の違いによるものと考えられる。
またこの気候分類における土壌-植物-大気システム内の水収支を付表 4-4 にまとめる。
付図 4-20 FT 分類類似地域についてシミュレートした年間覆土底面排水の累積分布関数
※比較対象として Dessel サイトの DO 気候分類参照データを含めて描画した。
付表 4-4 覆土底面排水計算による FT 類似地域の土壌-植物-大気水収支
(年平均統計。単位は mm)
Nuuk,Sisimiut を「平均的」な類似地域,Paamiut,Ilulissat を「境界例」地域とする。樹冠通過雨
量(Thr),ETa,及び覆土底面排水(D)の内,降水量(P)が占める割合を括弧内に記載した。
Station
P†
ET0
Thr
ETa
D
Nuuk
747
329
691 (92%)
312(42%)
437(58%)
Sisimiut
306
284
276(90%)
204(67%)
109(36%)
Ilulissat
282
313
248(88%)
219(78%)
55(20%)
Paamiut
774
298
727(94%)
289(37%)
487(63%)
付 4-19
地下水涵養量についての予測結果
Cs/Cr class 温暖気候:
付図4-21及び付表4-5にCs/Cr気候分類地域のシミュレーション結果の要旨をまとめた。年間地下
水涵養量については,Gijonが最も大きく,Ourenseが二番目に多い地域であり,CadizとHuelvaが
最も乾燥した地域だと判断できる。
Cs/Cr気候分類については,候補となった全ての類似地域において,現在のDesselでの地下水涵
養量(年間平均306 mm)よりも減少するという結果が得られた。
付図 4-21 Cs/Cr 分類類似地域についてシミュレートした年間地下水涵養の累積分布関数
※比較対象として Dessel サイトの DO 気候分類参照データを含めて描画した。
付 4-20
付表 4-5 地下水涵養計算による Cs/Cr 類似地域の土壌-植物-大気水収支(年平均統計。単位は
mm)
Station
P
ET0
Thr
ETa
D
Gijon
947
704
872 (92%)
658(70%)
275(29%)
Cádiz
524
1140
491 (94%)
467(89%)
60 (11%)
Ourense†
863
874
800 (93%)
644(75%)
175(20%)
Huelva
518
1265
485 (94%)
458(88%)
149 (29%)
注釈:深層排水境界条件(the deep drainage BC)により,地下水が常に参照レベル GWL0L 上を
流れることを前提としているため,D と ETa の合計は P の値と大きく異なっている。(シミュ
レーションでは,これとは異なる結果も得られた。)
※Cádiz,Gijon を「平均的」な類似地域,Huelva,Ourense を「境界例」地域とする。樹冠通過雨量(Thr),
ETa,及び覆土底面排水(D)の内,降水量(P)が占める割合を括弧内に記載した。
EO and FT classes 寒冷気候:
付図4-22と付表4-6にEO気候分類地域の地下水涵養シミュレーションの結果をまとめた。覆土底
面排水についてのシミュレーション結果と同様に,類似地域間で地下水涵養量に大きな差異が認
められた。また,主に蒸発散量の低下により,
「境界例」であるSlatdalをのぞく全ての類似地域が
Desselの現地下水涵養値(306mm)よりも大きい平均地下水涵養量となることが推定された。
付図 4-23 と付表 4-7 に FT 気候分類地域の地下水涵養シミュレーション結果の要旨をまとめた。
「境界例地域」Ilulissat 及び「平均的地域」Sisimiut では,Dessel の現地下水涵養値と比べて,地
下水涵養に著しい低下が見られた。
ほとんどの類似地域では無視できる程度ではあるものの,EO及びFT気候分類地域の中には地表
水流出が著しいものがあった。EO分類地域では,「境界例地域」Glomfjord,「平均的地域」
Tromsø-Langnesの平均地表水流出が,それぞれ年間降水量の22%,及び1%に達した。FT分類地域
では,Nuukの年平均地表水流出量が年間降水量の1%となった。
付 4-21
付図 4-22 EO 分類類似地域についてシミュレートした年間地下水涵養の累積分布関数
※比較対象として Dessel サイトの DO 気候分類参照データを含めて描画した。
付表 4-6 地下水涵養計算による EO 類似地域の土壌-植物-大気水収支(年平均統計。単位は mm)
P
ET0
Thr
R
ETa
D
HF
924
403
849 (92%)
2 (<1%)
403(44%)
517 (56%)
TL
1003
381
942 (94%)
11 (1%)
379(38%)
691(69%)
GL
2045
412
1974 (96%)
443 (22%)
411(20%)
1190(58%)
SA
232
567
190 (82%)
0 (0%)
221(95%)
24(10%)
Station
※Tromsø-Langnes(TL),Hekkingen Fyr(HF)を「平均的」な類似地域,Glomfjord,Saltdal を「境界例」地域とする。樹冠通
過雨量(Thr),ETa,及び覆土底面排水(D)の内,降水量(P)が占める割合を括弧内に記載した。
付 4-22
付図 4-23 FT 分類類似地域についてシミュレートした年間地下水涵養の累積分布関数
※比較対象として Dessel サイトの DO 気候分類参照データを含めて描画した。
付表 4-7 地下水涵養計算による FT 類似地域の土壌-植物-大気水収支(年平均統計。単位は mm)
P
ET0
Thr
R
ETa
D
Nuuk
747
329
691 (92%)
10 (1%)
329 (44%)
403 (54%)
Sisimiut
306
284
276 (90%)
0(0%)
225(74%)
96 (31%)
Ilulissat
282
313
248 (88%)
0(0%)
234 (83%)
39 (14%)
Paamiut
774
298
727 (94%)
4 (<1%)
298 (38%)
481 (62%)
Station
※Nuuk,Sisimiut を「平均的」な類似地域,Paamiut,Ilulissat を「境界例」地域とする。樹冠通過雨量(Thr),
ETa,及び覆土底面排水(D)の内,降水量(P)が占める割合を括弧内に記載した。
付 4-23
気候変動に関するモダンアナログ(類似地域の選択)に関する考え方と留意点
シミュレートされた浸透もしくは地下水涵養には,各気候分類とも同じ類型に属する類似地域
間で大きな差異が認められる。これは各気候分類内の類似地域間で降水量に著しい差があること
に起因する。また, 最高・最低降水型地域は,事実上,すべての気候分類に含まれており,各分
類ごとに最適な類似地域を選択するには,以下の補助情報が必要となる。
Huelva及びCádizの気候条件はCs分類とされるものの,これらの地域は,予測されるDessel地域
の気候からは大きく異なると考えられる。Huelva及びCádizの降雨の季節変動はそれぞれ1%,1%
未満とされ,Ourense(15%)やGijon(37%)と比較してかなり大きい(降雨季節性は,4月〜9月
間の月最低降水量と10月〜3月間の月最高降水量との比で表される。したがって,数値が低いほど
高い季節性を有し,冬期降水量が高いことを意味する。)。たとえDessel地域において降雨季節性が
重要な意味を持つようになったとしても(現在62%),少なくとも近未来に,このように極端に小
さいに値になることは考えにくい。
加えて,近未来におけるDessel地域の降水量増加は,主に冬期降水量の増加(つまり降雨季節性
の増加)によるものと予想される。一方,Huelva及びCádizの年間降水量は著しく低い。また,両
地域の平均気温はDesselとかけ離れており,Dessel地域に予想される気温上昇としては極端過ぎる
と考えられる(2100年までに中央値+3.2°C,最大値5.3°Cxxxvii) )。
Gijonの降水量記録(Desselと比較して+5%)は,Ourenseのものより,近未来のDesselに予想さ
れる降水量増加(年間総量で中間値+9%xxxvii) )に近似している。これらの理由から,将来の浸
潤と地下水涵養率を試算するために用いる類似地域としてGijonが最も適しているという結論に
至った。
EO 気候分類に属する類似地域では,浸透において大きな差異が認められた。年間排水は,50mm
〜1500mm 以上という大きな範囲にばらついた。
直近の氷河期の地質記録から,Dessel 地域の大寒期間(FT 分類条件に一致すると考えられる)
は非常に乾燥したものであったと推察できる。これは強い風食作用を示唆する痕跡や豊富な風成
堆積,及び峡谷地域に河川活動が(ほとんど)見られなかったこと等を根拠としているxlix)。
EO 気候分類内での平均浸透量及び地下水涵養量の差異はきわめて大きく,いずれか一つの地
域を EO 分類の類似地域として正当化するすることは難しい。したがって,FT 分類地域の中では
より乾燥した地域ではあるが極端な例ではない Sisimiut が,寒冷気候(EO・FT 分類両方)の類
似地域として適切な地域であると考えられる。
これらの仮定のもと,温暖気候において,覆土底面排水は現浸透量と比べて約 15%増加,地下
水涵養は最大で 10%減少すると予想される。他方,寒冷気候では,Dessel の覆土底面排水,及び
地下水涵養は共に,現状と比べて著しく低下(約 70%減少)するという結果が得られた。
一般的にはGCM,RCM,及びダウンスケーリング法が利用されているが,不確実性が高いとい
う欠点がある。類似地域アプローチはこれらの代替案として興味深いものである。また,類似地
域アプローチのもう一つの利点は,調査対象気候分類の気候状態境界を迅速に導き出すことがで
き,克つステークホルダーに説明しやすいということである。さらに,気候条件についての実測
値の時系列を拡充するために古気候データを加えることも一つの案であるl)。
他方,類似事例における入手可能な気象データを用いることは透明性の高いアプローチではあ
るものの,以下のような制約あるいは注意点も考慮すべきである。
付 4-24
y
類似地域は対象領域をカバーする十分な測定データを有する地域から選出する必要がある。
y
実測値の入手できる過去 30〜100 年のデータを長期の代表として取り扱うことには不確実
性が含まれる。
y
候補となる類似地域の中で最も適切なものであっても全ての属性が整合的であるとは限ら
ない。例えば,スペインの Cs/Cr 分類地域と Dessel は,標高及び湿気源からの距離という点
では類似しているが,大気循環が根本的に異なっているli)。
付 4-25
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xlix
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l
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li
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high-resolution precipitation reconstructions over Europe and the connection to large-scale
circulation,”Climate Dynamics, 26, pp. 387-405.
付 4-28
付録 5. 確率論的感度解析におけるパラメータ設定
ここでは,本文 3.3.3 項での確率論的感度解析において設定したパラメータの条件を付表 5-1 に
示す。
付表 5-1 確率論的感度解析におけるパラメータ設定(1/3)
Afw :浸水/灌漑の生じ
るコンパートメントの
面積(m2)
一様分布
パラメータ間の
相関関係
-
rsed:堆積層の再浮遊に
よる移行率(m y-1)
一様分布
-
最適解の 0.5 倍~2 倍
α :水中への堆積層(物)
の溶解量(kg m-3)
潮間帯
一様分布
-
潮間帯は 1~20
最適解の 0.1 倍~2 倍
沿岸域
Triangular
(対数)
-
最適解の 10-4~10-3
パラメータ
確率論的感度解析における設定
パラメータの変動範囲
最適解の 0.1%~ 0.5%
A :ドナーコンパート
メントの表面積 (m2)
一様分布
-
最適解の 1/2 倍~2 倍
B :生物擾乱
(Bioturbation)による拡
散(m2 y-1)
Bl :堆積層の年間移動
量(kg y-1)
対数一様分布
-
最適解の 10-1~10 倍
対数一様分布
-
最適解の 10-1~10 倍
Cdust:コンパートメント
上空の塵埃量(kg m-3)
Triangular
(対数)
-
最適解の 10-1~10 倍
deros:コンパートメント
での削剥速度(m y-1)
Triangular
-
最適解の 1/2 倍~2 倍
-
最適解の 1/2 倍~2 倍
最適解の 1/2 倍~2 倍
Q:上流コンパートメン
トにおける潮汐による
流量(m 3y-1)
q:コンパートメント間
の通過流量(m y-1)
潮間帯
一様分布
沿岸域
Triangular
-
一様分布
-
潮間帯
-
rsed と同じ値に
設定
沿岸域
Triangular
(対数)
対数一様分布
-
CFpast と-0.75
の相関を有する
Sg:堆積層に関連した総
沈殿生成速度(m y-1)
Kd :表面土壌の分配係
数(m3 kg-1)
付 5-1
最適解の 10-1~10 倍
複数の文献から変動範囲
を下記のとおり設定
Cs: 2×10-3~5×10-1
Np: 1×10-4~3
Pa: 5×10-1~6
U: 5×10-5~2×101
Th: 8×10-3~5×103
付表 5-1 確率論的感度解析におけるパラメータ設定(2/3)
パラメータ
確率論的感度解析に
おける設定
Triangular(対数)
CFpast:牧草への移行係数(Bq
kg-1fresh weight plant/Bq kg-1
dry soil)
パラメータ間
の相関関係
Kd と-0.75
の相関を有す
る
一様分布
-
パラメータの変動範囲
複数の文献から変動範囲を下記のと
おり設定
Cs: 1×10-2~2
Np: 3×10-4~3×10-1
Pa: 4×10-4~4
U: 2×10-5~2×10-1
Th: 1×10-4~5×10-2
~
2.5×10-3
堆積層
2.6×10-2
D:有効拡散係数(m2y-1)
淡水層
Triangular(対数)
-
Triangular(対数)
CFproding _milk と
0.5 の相関を有
する
Triangular(対数)
-
CFaq :水産物への濃縮係数
(L kg-1)
CFproding _meat:畜産物(牛肉)
への濃縮係数(d kg-1)
CFproding _meat:畜産物(羊肉)
への濃縮係数(d kg-1)
付 5-2
Cs
7.60×10-2
Np, Pa,
U, Th
1.10×10-1
複数の文献から変動範囲を下記のと
おり設定
Cs: 5~7.7×102
Np: 1×102~1×103
Pa: 1×102~5×103
U: 4~6×103
Th: 4×102~6×103
複数の文献から変動範囲を下記のと
おり設定
Cs: 2.0×10-3~2.0×10-1
Np: 7.8×10-6~5.0×10-3
Pa: 2.6×10-5~5.0×10-3
U: 2.0×10-4~3.0×10-2
Th: 1.0×10-4~2.7×10-3
複数の文献から変動範囲を下記のと
おり設定
Cs: 3.0×10-2~7.0×10-1
Np: 1.1×10-4~6.0×10-2
Pa: 3.4×10-4~6.0×10-2
U: 2.1×10-3~4.0×10-1
Th: 1.0×10-3~6.0×10-2
付表 5-1 確率論的感度解析におけるパラメータ設定(3/3)
パラメータ
確率論的感度解析に
おける設定
Triangular(対数)
パラメータ間
の相関関係
CFproding _meat
(牛肉)と 0.5
の相関を有す
る
一様分布
-
一様分布
Oa と 0.75 の相
関を有する
ING と 0.75 の
相関を有する
最適解の 1/2 倍~2 倍
CFproding _milk:畜産物(牛乳)
への濃縮係数(d L-1)
Ingfeed :畜産物の飼料摂取
量(kg (fresh weight) d-1)
Oa :畜産物の汚染土壌での
滞在時間割合(h d-1)
一様分布
ING_sa :畜産物の土壌摂
取量 (kg (wet weight of soil)
d-1)
パラメータの変動範囲
複数の文献から変動範囲を下記のと
おり設定
Cs: 1.0×10-3~2.7×10-2
Np: 5×10-7~1×10-4
Pa: 5.0×10-7~5.0×10-4
U: 4×10-5~6×10-4
Th: 5.0×10-7~5.0×10-4
最適解の 1/2 倍~2 倍
最適解の 1/2 倍~2 倍
Oout :年間の摂取時間(h y-1)
一様分布
-
最適解の 1/2 倍~2 倍
IngAnm :畜産物の摂取量
(kg fresh weight of product
y-1)
Ingaqfood :個人汚染水産物消
費率(kg y-1)
Triangular
-
牛肉,羊肉,牛乳について最適解を
1/2 倍~2 倍
Triangular
-
魚,軟体動物,海藻について最適解
を 1/2 倍~2 倍
付 5-3
付録 6. 最適化手法の概要
本文 5.2.2 項で言及されている最適化手法の概要を簡単に記載する。
○意思決定手法(DM)
意思決定(Decision Making:DM)は,個人や集団の人間が,ある状況下で,なんらかの目標を達
成するために,複数の代替案から合理的な選択を行うことが求められる場合などにおいて,最善の解
を求めようとする行為。経済学,経営学,システム分析,行動科学,組織行動論等の分野での応用が
ある。複数の代替案が存在する場合に,どの選択を行うかを決める客観的指標,例えば,評価者が複
数の選択肢が係わる複数の状況を勘案しながら最適な選択を決定する場合,各状況ごとにどの選択を
行えばどの程度の利得が期待しうるかを整理した結果(利得表)に基づき,最悪の状況を極力回避す
るなど,なんらかの決定のルールを設定したうえで,最適な選択肢を決定する方法もしくはその決定
の際に用いる考え方や基準を設定して行う。また,戦略計画を立案する際には,社会環境の変化や新
しいニーズなどの情報を収集し,課題を明らかにした上で,優先的に取り組むべき政策分野を明確に
することが求められるが,様々なツールを用いて収集・整理した情報をもとに,このような政策分野
の優先順位をつけるための手法の一つに,AHP(Analytic Hierarchy Process)がある。AHP では,事象・
問題を「最終目標」,「評価基準」,「代替案」から成る階層構造として捉え,項目間の一対比較を
通じて重要度を数値化することにより,定量的な意思決定を可能としている。
○ヒューリスティックス手法(HR)
産業応用分野においてはシステムの大規模化・複雑化,高信頼化に伴い,より複雑な最適化問題を
実用的な計算時間で解く必要が高まっている。そこで,問題解決や意思決定の場において,システマ
ティックないしは数理的な手順(アルゴリズム)によらずに,実用上十分な最適性を有する解を決定
するヒューリスティックス手法(Heuristics;HR)が開発されている。これらの手法は,その性質によ
り,以下の 4 種類に分類される。
・進化論的手法(遺伝アルゴリズム等)<遺伝アルゴリズムについては後述>
・エージェント型手法(PSO,アントコロニーシステム)
・確率的近似解法(シミュレーテッドアニーリング)
・決定論的手法(タブーサーチ)
○動的計画法(DP)
動的計画法(Dynamic Programming:DP)は,ある最適化問題を複数の部分問題に分割し,最適性
の原理(最適経路中の部分経路もまた最適経路になっている)に基づいて,効率的に解く手法。最短
経路問題など,問題が多段決定問題(各段における決定の系列を求めるような問題)に変換できれば,
動的計画法によって解くことが可能である。
○確率計画法(PP)
通常の線形計画問題では,制約条件や目的関数に現れる係数はすべて確定的に与えられるが,現実
の問題の多くは,これらの係数はデータから推定されたり,近似式により表現されたりするため,確
定値として与えられるとは限らない。このような不確実性を表すために,確率変数を含んだ数理計画
問題を確率計画法(Probabilistic Programming:PP)という。代表的な確率計画法のモデルとして,E
モデル,V モデル,EV モデルがある。Eモデルは目的関数の平均値を用いるモデル,V モデルは分散
を最小にするモデル,EV モデルは平均と分散を同時に考えるモデルである。
付 6-1
○ファジィ計画法(FP)
ファジィ理論は,1965 年カリフォリニア大学のザデー教授が提唱した理論で,システムに含まれる
人間の主観性を定量的に取り扱うことを可能にした理論である。ファジィ理論では,主観性を伴うよ
うな概念を数量的に表現するために,
「メンバーシップ関数」というものを用いる。このメンバーシッ
プ関数は主観的な度合いを数量化したものである。この概念を数理計画に適用したものがファジイ数
理計画法(Fuzzy Programming:FP)である。
○整数計画法(IP)
線形計画問題における全ての決定変数を整数に限定した問題(ナップサック問題,巡回セールスマ
ン問題など)に対する解法を整数計画法(Integer Programming:IP)と言い,特に,決定変数を 0 また
は 1 のみに限定したものを 0-1 整数計画問題,決定変数に整数と実数が混在する最適化問題を混合整
数計画問題と言う。整数計画問題は,最適解を求めることが非常に困難なため,近似的な解法やアル
ゴリズムも研究されている。また,混合整数計画問題では,分岐限定法など,部分問題を生成・省略
しながら爆発的組み合わせを回避するといった求解手法がある。
○非線形計画法(NLP)
非線形計画問題(Nonlinear Programming Problem)とは,目的関数または制約条件の少なくとも一方
が非線形関数であるような最適化問題のことを指し,この問題への定式化,理論的な側面,計算手法
を含めて非線形計画法(Nonlinear Programming;NLP)と呼ぶ。非線形計画問題に対するアルゴリズ
ムとしては,直接探索法,傾斜・勾配利用法,可変計量法等がある。
○線形計画法(LP)
線形計画問題(Linear Programming Problem)とは,モデルの目的関数と制約条件が,すべて線形(変
数に関する1次式で表現可)であるような問題を指す。また,この問題への定式化,理論的な側面,
計算手法を含めて線形計画法(Linear Programming:LP)と呼ぶ。
線形問題は,一般的な表現形式として,以下のように表すことができる。
これは行列・ベクトル表現を用いて簡潔に表すことができる。A,b ,c,x をそれぞれ
と置くと,線形問題は,
付 6-2
と表現できる。
線形最適化問題に対する最適化手法の中で,代表的なものとして,シンプレックス法(単体法) ,内
点法等がある。
○遺伝アルゴリズム(GA)
ヒューリスティックス手法の一つである遺伝アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)は,最適化問
題の有力な手法として,幅広い分野で注目されているが,その特徴を挙げると以下のようになる。
・個体群による多点探索を行う。
・微分情報を必要としないので,解析的手法では解けないような非線形の問題も扱うことができる。
・多点探索を基本としているので,パラレル性を内蔵する。
次に,単純遺伝アルゴリズム(Simple Genetic Algorithm:SGA)と呼ばれる最も基本的な GA を例に
とって,アルゴリズムの手順を以下に示す。
(付図 6-1)
Step 1:ランダムに初期個体群を生成する。
Step 2:個体群の適応度を計算する。
Step 3:現在の個体群の中に,条件を満たす解が含まれているかどうかの判定を行う。条件を満たし
ているとき,GA は終了する。
Step 4:選択,交叉,突然変異等の遺伝演算を行い,新しい個体を生成する。
Step 5:新旧の個体の中から,次世代の個体群を生成する。
START
初期個体群生成
適応度評価
Yes
収束?
END
No
遺伝演算
次世代個体群生成
付図 6-1 遺伝アルゴリズムの流れ
付 6-3
以上のアルゴリズムを実際に実装するには,以下の項目を設計する必要がある。これらの項目の設
計によって,進化のスピードや設計問題に対する探索能力が決定される。
① 遺伝子表現
② 適応度
③ 選択
④ 交叉
⑤ 突然変異
まず,遺伝子表現は,付図 6-2 のように設計する。ここでは,各設計変数に対して,15 ビットの 2
進数表現を用いる。
N s1
N H1
…
…
…
付図 6-2 遺伝子表現
SGA において,選択という操作は,適応度に応じて次世代の個体群の親となる個体を抽出する操作
である。GA で使われている選択方法には,さまざまな方法があるが,ここでは,SGA で使用されて
いる基本的なルーレット戦略について説明する。
ルーレット戦略は,各個体の適応度に比例して選択確率を計算し,この確率に沿ってルーレットを回
すように個体を選択する最もシンプルな選択方法である。具体的には,個体群中の各個体の適応度を
g(i) (i=1,・・・, N)としたとき,個体 i が選択される確率
Pi =
g (i )
N
∑ g ( j)
j =1
を計算する。そして,この確率に従った個体選択を N 回繰り返し,次世代の親となる N 個の個体を選
択する。
交叉は,個体群の中から特定の遺伝子対を選び,その特定の部分を入れ替える操作である。つまり,
複数の親個体の遺伝子型を反映した遺伝子型を生成することになる。ここでは,最もシンプルな方法
である,一点交叉について説明する。
一点交叉では,付図 6-3 に示すように,交叉点をランダムに 1 つ選び,その点を境に,2 つの個体間で
遺伝子を交換する。遺伝子を入れ替える手法は,さまざまなものが提案されており,代表的なものに
多点交叉,一様交叉等がある。
親1
親2
1
0
1
1
0
1
0
1
0
1
0
1
1
0
1
0
1
1
1
0
0
1
1
1
0
1
1
1
0
0
1
1
1
0
1
0
交叉点
付図 6-3 一点交叉によるビットストリング型遺伝子の変化
付 6-4
子1
子2
突然変異は,付図 6-4 に示すように,個体群の中から特定の遺伝子を選び,遺伝子情報の一部をあ
る確率で変化させる操作である。つまり,ランダムに遺伝型を変化させることにより新たな遺伝型を
生成し,それによって集団内には存在しなかった高い適応度を持つ個体の出現を期待するものである。
突然変異前
1
0
1
1
0
1
突然変異後
1
0
1
1
0
1
1
0
0
付図 6-4 突然変異によるビットストリング型遺伝子の変化
付 6-5
1
0
1
付録 7.
最適化問題候補の関連情報
本付録では,本文 5.2.3 項の表 5.2.3-1 で整理した最適化問題候補について,各問題の意義,目
的変数/制約条件/決定変数や意思決定問題についての評価指標/評価項目/選択肢の案などの
関連情報を示す。また,平成 22 年度までに試行的検討を行った問題については,成果や課題等
についても整理した。
(廃棄物処分に係る問題)
(1)
No.1:人工バリアの個別構成要素の選択
(2)
No.2:レイアウト・配置最適化
(3)
No.3:人工バリアの設計最適化
(4)
No.4:異種廃棄体定置最適化
(5)
No.5:処分事業最適化
(6)
No.6:処分概念比較・選択
(廃棄物処分と廃棄物処理の組合せに係る問題)
(7)
No.7:LWR の高燃焼度化がバックエンドに及ぼす影響評価
(8)
No.8:廃棄体化手法選択
(廃棄物処分,廃棄物処理及び廃棄物発生の組合せに係る問題)
(9)
No.9:核燃料サイクル全体としての合理化
(10)
No.10:再処理での MA/FP 回収の組合せ
(11)
No.11:現行リサイクル,先進リサイクル,及び直接処分の比較
付 7-1
(1) No.1:人工バリアの個別構成要素の選択
問題名
人工バリアの個別構成要素の選択
問題の特徴
オーバーパック材料の最適選定
問題の概要
オーバーパック材料(銅,チタン,鉄)のどの材料を選定するのがベストかの
意思決定を図る。長期安全性,工学的信頼性,社会経済的影響など次元の異な
る複数の評価項目を設定し,複数の評価者により,候補材料の選好順位を集団
AHP 法を用いて決定する階層構造型意思決定問題。複数の評価者により,複数
の評価項目間の重要度を一対比較を通じて総合的に算定し,オーバーパックの
最適な材料を整合的に選定することが可能。
意義:
オーバーパック材料(銅,チタン,鉄)については,選定材料が諸外国で異なっていることか
ら,日本に適した材料をどのような考え方で選定するのがベストかを明らかにすることが必要で
ある。
候補のオプションから,複数の次元の異なる評価項目に基づいて,一対比較を用いて総合的に
決定することは,処分場の構成材料や処分概念の比較・選定,あるいは,様々なエキスパート・
ジャッジや多様なステークホルダーの意見を勘案して一つの意思決定や合意形成を行う場合にも
適用可能な方法であり,また,意思決定のプロセスをトレース可能にするうえで有効な方法と考
えられる。
問題の内容具体化の例:
・ 評価目標:最適な材料
・ 評価項目:長期安全性,操業安全性,工学的信頼性,サイト特性,環境影響・社会的影響
・ 選択肢:銅,チタン,鉄
成果:
オーバーパック材選定問題について階層分析法(以下,AHP)を用いた検討を進めた。
その結果,階層性,多様性,不確実性を有する意思決定問題を集団 AHP 法といった拡張 AHP
フレームとしてモデル化し,分析評価可能であることを確認した。
これは,核燃料サイクルシステムや複数の処分システム,あるいはそれらに類似する複合的な
システムを対象とする意思決定にも応用可能な事例になると考えられる。
課題:
AHP 法の代替案として多属性効用関数法があるが,後者を適用するための評価項目ごとの客観
的なデータ情報が十分に得られていない場合に,個々の回答者の意思を一対比較して整合的に求
めうる簡便さが AHP 法のメリットの一つと言える。
しかし,逆に,評価項目が多すぎたり,回答者の意見が大きく異なっている場合,AHP 法の結
果として機械的に得られる一つの解が果たして現実的に公正な結論と言えるか,といった問題は
常につきまとう。そのため,意思決定のプロセスのなかで,AHP 法で得られる結果については,
最終的な決定を行うものというよりは,最終的な決定をサポートするといった役割を明確にした
使い方が重要と考えられる。
付 7-2
(2) No.2:レイアウト・配置最適化
問題名
レイアウト・配置最適化
問題の特徴
処分場用地内に透水性の高い地質構造が存在する場合の処分パネルの最適分
割・配置
問題の概要
処分場用地が特定された状況下で,処分場用地内に透水性の高い地質構造(高
透水性亀裂,破砕帯等)が一つ以上存在する場合に,長期安全性を確保しつつ,
全体の掘削量を最小化する処分パネルの分割方法・配置の最適決定を図る非線
形多目的最適化問題。
意義:
処分場の候補地は,地質環境を調査したうえで,規制要件等を満たした用地が特定される。し
かし,処分場選定における除外対象にはならないものに設計や安全上は配慮すべきと考えられる
高透水性の亀裂や断層が処分場用地内に存在することも考えられる。
このような状況を想定した場合,処分場用地内に高透水性構造が一つ以上存在することを想定
したうえで,処分場の長期安全性を確保しつつ,処分場の建設時に生ずる全体の掘削量を最小化
するような処分パネルの分割方法・配置は実現可能か,もし可能とすればどのようなレイアウト
が最適か,についての検討が必要となる。
そこで,処分場用地に高透水性構造が複数存在する場合のパネルの配置の合理化と岩盤バリア
領域の確保の両立に着目し,トレード・オフ関係を有する評価項目として処分坑道掘削量(近似
的に処分場面積が処分坑道掘削量に比例すると考えられる場合には処分場面積で考えることも可
能)と長期安全性(高透水性構造から一定の距離での被ばく線量)を目的関数とし,各パネル領
域における処分坑道の列数,各処分坑道内の廃棄体の定置個数,高透水性構造と用地境界及び高
透水性構造とパネルの間に確保される岩盤バリア領域を決定変数とする多目的最適化問題を設定
し,その最適解を求めることが有効と考えられる。
問題の内容具体化の例:
・ 目的変数:処分坑道掘削量(あるいは処分場面積) + 長期安全性 →(効用関数により最大化)
・ 制約条件:廃棄体総数
・ 決定変数:
・
各パネル領域における処分坑道の列数
・
各処分坑道内の廃棄体の定置個数
・
高透水性構造と用地境界,高透水性構造とパネルの間の岩盤バリア領域
付 7-3
(3) No.3:人工バリアの設計最適化
問題名
人工バリアの設計最適化
問題の特徴
緩衝材の最適設計
問題の概要
緩衝材の厚さ,ケイ砂混合率,含水比の設定の組合せについて最適決定を図る。
具体的には,厚さ,ケイ砂混合率,含水比に対し,熱伝導性や透気性,膨潤応
力,低透水性,コストなど,トレード・オフ関係にある次元の異なる複数の評
価項目を目的関数に,また,乾燥密度や有効粘土密度の制約条件を有する非線
形多目的最適化問題。
意義:
緩衝材は人工バリアの主要な構成材料であり,その多機能性やコストなど,複数の次元の異な
る評価項目や制約条件など,複雑なシステムに関わる全ての諸事象等を客観的に考慮したうえで,
最適なケイ砂混合率など複数の決定変数を同時に決定する技術があると,様々な不確実性などの
もとで最適な解の算出が可能になる。さらに,最適解が得られる入力情報等を比較的簡単に逆算
することも可能となる。
また,副次的な効能ではあるが,このような最適化プロセスを通じ,最適な解と言われるにふ
さわしいモデル解と現実的な理解とのギャップを把握し,その矛盾を正すようなアクション(例
えば,設定した目的関数,技術的な制約条件や実験データ等の見直し)につなげていくことも可
能となる。
問題の内容具体化の例:
・ 目的変数:ペクレ数 + 一軸圧縮強度 + 緩衝材最高温度 + 緩衝材外側の核種放出
+ 膨潤応力 + 緩衝材体積 + 材料費 →(効用関数により最大化)
・ 制約条件:乾燥密度,有効粘土密度
・ 決定変数:緩衝材厚さ,ケイ砂混合率,含水率
成果:
緩衝材最適化問題について,多属性効用理論を用いた検討を進め,多目的性,トレードオフ性
を有する最適化問題を非線形多変数系で数理モデル化し,ヒューリスティック手法(結合離散化
勾配系カオスモデルと Lagrange 関数法を用いた制約条件付最適化手法)により求解可能であるこ
とを確認した。
また,複数の次元の異なる評価項目間の重みを決定する一手法として逆問題的に求めるアプロ
ーチ,即ち,意思決定者が設定する解に最も近い最適解が得られるような複数の評価項目間の重
みの組合せを逆算する方法,及び材料費や制約条件の不確実性を考慮した場合の最適解の算定に
ついて,本最適化フレームで実行可能であることを確認した。
これは,複数の評価項目の考慮が必要となる処分概念の最適化に関連するより広範囲な問題に
も応用可能な事例になると考えられる。
課題:
意思決定者の最適化の意味,すなわち,目的関数や制約条件などで最適化モデルの全容が確定
している場合に,それに見合った正確なデータ情報を入力しさえすれば,最適解を自動的に出力
するといった一連の機械的な手順を確立することが可能となる。また,意思決定者が現実的に判
付 7-4
断したり,不確実な状況を考慮した柔軟性の高い判断が求められる場合でも,意思決定者が設定
する解に近い入力情報を逆算したり,不確実性下の意思決定を合理的に行うことは,上記の逆問
題的なアプローチを用いることで方法論的に可能である。
しかし,評価項目間で効用独立でない効用関数の形状や評価項目間の重みを,主観的な判断や
様々なステークホルダーの多様な価値観に基づいて正確に設定することが求められる場合には,
複数の評価項目の効用が相互に影響し合う関係を全ての評価項目の組合せで定量的に測るなど,
より緻密かつ手間のかかる方法論(例えば,凸依存性多属性効用関数モデルを用いたアンケート
調査などの併用が必要となる。これを回避するには,相互に効用独立性の高い評価項目を慎重に
選ぶか,さもなければ,適切と思われる解から逆問題的に効用関数を逆算すること,などが考え
られる。
付 7-5
(4) No.4:異種廃棄体定置最適化
問題名
異種廃棄体定置最適化
問題の特徴
発熱量や核種量の異なるガラス固化体の最適配置
(応用問題として,HLW と TRU 廃棄物の最適配置)
問題の概要
燃料度や炉型等の違い,再処理の時期等により生じ得る発熱量や核種量の異な
るガラス固化体をひとつの処分場で,安全性確保及び処分場面積抑制の両面を
バランスよく満たすための配置の最適決定を図る非線形多目的最適化問題。
HLW と TRU 廃棄物の併置処分について,その成立性を判断する上で重要である
と考えられる相互影響やトレード・オフ関係を考慮して,廃棄体の発熱量,TRU
廃棄物の有機物,TRU 廃棄物の劣化物,高 pH プルームの発生量を制約条件とし
て,安全性確保及び処分場面積抑制の両面をバランスよく満たすための配置の
最適決定を図る非線形多目的最適化問題。
意義:
我が国の原子力は,軽水炉燃料を利用し,再処理取り出し MOX 燃料を再利用するサイクル路
線を目指している。しかし,発電所ごとに発生する燃料の取り出し燃焼度が異なるなど,現在の
燃料や炉型等の違いはもとより,将来の燃料サイクルの多様化により,再処理の有無や貯蔵・冷
却期間の違いにより生じ得る発熱量や核種量の違いなど,異なる廃棄物特性を有する廃棄体が生
じうる。
他方,これらの様々に異なる特性を有する廃棄体を別々の場所に処分することは,立地難の傾
向にある今日の社会情勢並びに,経済性の観点からは,極力,一つの処分場に収容する必要性が
あると考えられる。また,HLW と TRU 廃棄物の併置処分の可能性についても検討が進められて
いる。
そこで,異種廃棄体間の相互影響やトレード・オフ関係に留意し,安全性確保(被ばく線量最
小化)及び経済性の向上(処分場面積抑制)の両面をバランスよく満たすためには,異種廃棄体
をどのように配置するのが最適かを定量的に検討することが考えられる。例えば,取り出し時の
燃焼度の異なる廃棄体同士の離間距離やパネルの列数など,複数の異なる発熱量の廃棄体の配置
に関わる諸量を決定変数とし,処分場面積を最小化する最適化問題を設定し,その最適解を求め
ることが有効と考えられる。
問題の内容具体化の例:
・ 目的変数:処分コスト+閉鎖後安全性(最大被ばく線量)→(効用関数により最大化)
・ 制約条件:廃棄体の発熱量,TRU 廃棄物の有機物,TRU 廃棄物の劣化物,高 pH プルームの
発生量
・ 決定変数:廃棄物種類別ごとの処分場配置(各パネルの坑道列数、各処分坑道の廃棄体個数、
岩盤バリア領域)
付 7-6
(5) No.5:処分事業最適化
問題名
処分事業最適化
問題の特徴
処分事業ライフサイクルの最適スケジューリング
問題の概要
処分事業における全体のライフサイクルを見通して,掘削・定置併行プロセス
の最適スケジューリングを行なう。具体的には,操業安全性,物流の効率性,
定置作業性,工程を目的関数,また,掘削速度,最小作業スペース,搬送量等
を制約条件として,処分事業全体にわたる様々な工程上の重要な意思決定ポイ
ントでの決定事項などに関し,その決定内容や決定タイミングなどの最適決定
を図る多属性効用解析型意思決定問題。
意義:
日本の処分事業を巡る社会問題は,多様なステークホルダーが絡み,非常に複雑である。この
ため,処分事業を円滑に推進するためには,様々なリスクを回避し,様々な状況下で適切な対応
が行えるよう,不確実性下の最適な計画・立案を明らかにしておくとともに,事業主体の基本方
針にあるように,段階的に計画を進めていくことが有効である。
そこで,処分事業全体のライフサイクルに亘り,掘削・定置併行プロセスの最適なスケジュー
リングを行うことは,事業の計画性と効率性を高めるうえで有意となる。具体的には,放射線安
全と一般労働安全性を考慮した操業安全性,物流の効率性,定置作業性,工程を目的関数とし,
また,掘削速度,最小作業スペース,搬送量等を制約条件として,処分事業全体にわたる様々な
工程上の重要な意思決定ポイントでの決定事項などに関し,その決定内容や決定タイミングなど
の最適決定を図る問題が考えられる。
また,長期的には,原子力戦略の見直しなどに基づき,廃棄体が増減するなど,処分場面積や
掘削量,レイアウト変更など,柔軟な計画を求められる可能性もあることから,様々な将来の不
確実性を考慮したうえで,最適な事業のスケジュールを立案することが必要になると考えられる。
このため,廃棄物処分量の長期に亘る変化(シナリオ)を見越した処分事業の全体最適化を動学
モデルを用いて分析することが考えられる。そのためには,静学モデルの最適解の変化の傾向を
踏まえ,動学モデルに拡張していくことが効率的な進め方と考えられる。
問題の内容具体化の例:
・ 目的変数:操業安全性 + 物流の効率性 + 定置作業性 + 工程 →(効用関数により最大化)
・ 制約条件:掘削速度,最小作業スペース,搬送量等
・ 決定変数:スケジューリングに必要な変数(各作業の処理量、処理タイミング)
付 7-7
(6) No.6:処分概念比較・選択
問題名
処分概念比較・選択
問題の特徴
「処分概念創出支援フレーム」での優劣比較の対象となった処分概念の優劣を
より定量性をもって詳細に比較
問題の概要
可能な限りコストの観点も含め,重要な候補間の比較,あるいは差が微妙な候
補間の比較について,着目する評価項目ごとに数値化して最適決定を図る多属
性効用解析型意思決定問題。
意義:
放射性廃棄物の処分概念の検討では,多様なステークホルダーの関心や懸念も含めた考慮すべ
き条件に適した処分概念の比較・選択あるいは斬新な案も含めた再構築が必要になる。
別途検討中の処分概念創出支援フレームでは,複数の処分概念のオプションに対し,複数の設
計因子(安全性,経済性,信頼性,環境影響,回収可能性・・・)の総合評価(ランキング付)
を,プロセスを明確にしつつかつ体系的に実施できる枠組みとしているが,最終的な判断にはエ
キスパート・ジャッジを用いている。このような評価方式は,AHP 法と同様に,詳細な定量的諸
データをもとに客観的に評価できる条件が揃っていない場合に定性的な判断のもとに意思決定も
しくは合意形成が図れるという特徴を有している。
これに対し,各設計因子の定量的な指標に対し,効用関数法を用い,より客観性と定量性の高
い詳細な評点付けを行う方法が考えられる。
また,このようにして効用関数法により総合評価指標が得られると,これを目的関数とし,他
の条件(例えば,様々な炉型の固化体特性や貯蔵期間など)のもとに,各処分概念あるいは構成
要素のオプションの組合せ(決定変数)などにより変化するより具体的・定量的な諸量(例えば,
処分場面積や掘削量)を目的関数や制約条件に含めて数理学的に最適化することも可能となる。
これにより,各処分概念あるいは構成要素のオプションの組合せなどがなぜ有効であるかを定量
的に説明すること,さらに検討の客観性,透明性,追跡性の向上が可能となる。
以上より,本問題では,処分概念あるいは構成要素オプションの組合せを定性的に比較・検討
するフェーズから,より詳細な設計にまで踏み込むための定量的な検討への展開可能性を検討す
るものとなる。具体的には,トレード・オフ関係を有する複数の評価指標のもとに,多属性効用
理論と AHP 法を適宜用いることにより,最適な処分概念あるいは構成要素のオプション組合せに
加え,それらに付随する様々な定量的な状態量の最適値を同時に算定する数理学的最適化を実現
することが可能となる。その実現に向けては,処分概念の具体的な設計に必要な様々な定量評価
指標とそれを裏付けるデータ情報並びに計算コード体系とのリンケージを図ることが有効であり,
それを目的として現在開発中の統合・利用支援環境の中で,最適化技術や支援ツールを構築・整
備・運用していくことが有効と考えられる。
問題の内容具体化の例:
・ 評価目標:最適な処分概念
・ 評価項目:長期安全性,操業安全性,工学的成立性/品質保証,工学的信頼性,サイト特性,
回収可能性,環境影響,社会経済的影響
・ 選択肢:複数の処分概念や技術オプションの候補(H12 概念, CARE, KBS, VDH など)
付 7-8
(7) No.7:LWR の高燃焼度化がバックエンドに及ぼす影響評価
問題名
LWR の高燃焼度化がバックエンドに及ぼす影響評価
問題の特徴
高燃焼度化燃料の再処理/固化条件の最適化
問題の概要
LWR の高燃焼度化による使用済燃料の特性変化を考慮し,再処理や固化条件に関し
てガラス固化体の発生量やコストなどのトレード・オフ関係を有し得る評価項目を
目的関数として,再処理条件や固化条件の最適決定を図る非線形多目的最適化問
題。
意義:
原子炉の高燃焼度化により燃料サイクルコストの低減化を図る案が出されている。しかし,高
燃焼度化の結果として,取り出し燃料組成や発生量の変化,発熱量や放射線量が高まるなどの安
全性やコストの変化の要因も生じうる。
そこで,LWR の高燃焼度化や MOX 燃料導入による使用済燃料の特性変化などがバックエンド
に及ぼす様々な影響を考慮し,再処理や固化条件に関してガラス固化体の発生量やコストなどの
トレード・オフ関係を有し得る評価項目を目的関数とし,発熱量,白金族含有量,Mo 含有量な
どを制約条件としたうえで,使用済燃料の冷却期間,再処理条件,固化条件,貯蔵期間などの最
適化を図ることが有用となると考えられる。
これを実現するには,取り出し燃料特性やコストの燃焼度依存性,また,再処理/固化条件が
ガラス固化体の発生量やコストなどに与える影響を,燃焼計算,再処理プロセスでの放射線量増
と遮蔽コストの関係,貯蔵の効果などの諸情報に基づき,定量的に把握する必要がある。それに
は,技術的なデータ情報源とコストなどの社会経済的な情報源を整備することが重要となり,さ
らに,それら情報のリンケージの確保及び関連しうる計算コードがこれらの諸情報と有効に協働
できる環境を現在開発中の統合・利用支援環境として整備することが望まれる。
問題の内容具体化の例:
・ 目的変数:ガラス固化体の発生量+コスト→(効用関数により最大化)
・ 制約条件:発熱量制限,白金族含有量制限,Mo 含有量制限
・ 決定変数:使用済燃料の冷却期間,再処理条件,固化条件,貯蔵期間
付 7-9
(8) No.8:廃棄体化手法選択
問題名
廃棄体化手法選択
問題の特徴
固化体の種類や固化方法の候補,減容等の技術オプションからの選択
問題の概要
可能な限りコストの観点も含め,先進サイクルでの高レベル~低レベルの廃棄
物についての固化体の種類や固化方法の候補,減容等の技術オプションからの
選択の最適決定を図る多属性効用解析型意思決定問題。
意義:
日本の原子力発電所から排出される高レベル~低レベルの放射性廃棄物は,現在,すでに発生
して処理・処分前の段階にあるものから,将来,先進サイクルから発生する可能性のあるものま
で,多岐にわたって存在しうる。このため,このような廃棄物を焼却したり,減容等の何らかの
処理をしてから処分するべきか否か,また,固化の種類やそのための方法は何を選択したらよい
か,といった処理・処分に関する技術オプションをどのようなロジックで選定するべきかといっ
た問題が最適化の対象になり得ると考えられる。
特に,有機物を含む LLW では,許認可の観点から,放射濃度が高い場合にはそのまま処分す
ることはできない。また,処理するにしても,焼却処理はメンテナンス費用が高くなるため採算
性が成り立たないという問題が指摘されている。このため,諸外国を含めどのような処理方法が
ベストかについての検討が進められている。
そこで,安全性,経済性など可能な限り総合的な観点に立脚し,燃料サイクルから生ずる高レ
ベル~低レベルの廃棄物について,固化の種類やその方法の候補,減容等の技術オプションから
どれを選択するべきかを決める意思決定問題を設定し,その決定のロジックを明確化することが
有効と考えられる。また,意思決定に必要な入力情報が必ずしも十分でない場合でも,どのよう
な条件においてどの手法が解となるかを感度解析的に調べておくことで,ある解が最適解となる
条件を比較的簡単に逆算することも可能となる。これにより,最適解を特定するために重要とな
る入力情報を明らかにすることができ,入力情報の取得の効率化等に資することが期待できる。
問題の内容具体化の例:
・ 評価目標:最適な廃棄体化手法
・ 評価項目:コスト(導入コスト,運用コスト,処分コスト)/安全性(メンテナンス時の被ば
く線量,処分後の被ばく線量)
・ 選択肢:廃棄体化手法の候補(焼却して無機物としてコンクリート固化,プラズマ溶融固化,
溶離し有機物を焼却・溶離廃液をコンクリート固化,エポキシ樹脂などで固化)
付 7-10
(9) No.9:核燃料サイクル全体としての合理化
問題名
核燃料サイクル全体としての合理化
問題の特徴
中間貯蔵と処分の関係の最適化
問題の概要
先進サイクルを考慮した原子力発電量の増減に伴い発生する廃棄物量をシナリ
オとして設定し,中間貯蔵費,処分場建設費といったトレード・オフ関係を有す
る評価項目を目的関数とし,中間貯蔵の規模や期間を主要パラメータのひとつ
として,サイクル全体のコストや占有面積等の最適決定を図る非線形多目的最
適化問題。
意義:
先進サイクルの導入の程度や原子力発電量の増減に伴い,発生する廃棄物量とそれを再処理・
処分する量とタイミングの間にギャップが生じうる。このため,必要に応じ,サイクル諸過程に
おいて廃棄物を貯蔵する容量を確保しなければならない。また,放射性廃棄物は,時間に伴い放
射能が減衰する特徴を有していることから,貯蔵の期間は,処分すべき廃棄物の発熱量や核種量
にも影響を与えうる因子となる。
放射性廃棄物を安全に貯蔵・保管する中間貯蔵の実施に関しては,中間貯蔵施設の規模,期間,
基数等を,安全性やコスト等の経済性などの観点から最適化することが求められると考えられる。
さらに,廃棄体の貯蔵による放射能減衰などが処分へ与える影響(発生本数,核種量や組成,
発熱量,処分場面積,安全性(潜在毒性,総線量)の変化)を考慮した総合的な観点からの最適
化を行うことが,中間貯蔵と処分の双方を最適な状態にするうえで有効な方策を与えると考えら
れる。
そこで,原子力発電量の増減に伴い発生する廃棄物量をシナリオとして設定し,安全性,中間
貯蔵費,処分場建設費といったトレード・オフ関係を有する評価項目を目的関数とし,中間貯蔵の
規模や期間を主要パラメータのひとつとして,処分を含めたサイクル全体のコストや占有面積等
の最適化を行う。
この問題は,廃棄物の発生量増減や貯蔵期間,放射能減衰期間など,時間変化の因子を扱うこ
とから,原理的に動学モデルで扱うことが適切と考えられる。このためには,静学モデルの最適
解の変化の傾向を踏まえ,動学モデルに拡張していくことが効率的な進め方と考えられる。
問題の内容具体化の例:
・ 目的変数:中間貯蔵費 + 処分場建設費 →(最小化)
・ 制約条件:廃棄物発生量(現行サイクル,先進サイクルの構成内容に応じて所与)
・ 決定変数:各廃棄物ごとの,中間貯蔵規模・期間・基数,最終処分場規模・基数
付 7-11
(10) No.10:再処理での MA/FP 回収の組合せ
問題名
再処理での MA/FP 回収の組合せ
問題の特徴
核燃料サイクルオプションの選択に係る最適化
問題の概要
MOX 燃料,大型 FBR 平衡期を想定して,分離変換技術の導入による HLW・
TRU・LLW の処分場面積,貯蔵容量,長期安全性といったトレード・オフ関係
を有する評価項目を目的関数とし,最適な MA 回収率,FP 分離率,定置前貯蔵
冷却期間と発熱性 FP 分離プロセス導入の有無の組み合わせ等について最適決
定を図る非線形多目的最適化問題。
意義:
従来の再処理廃棄物である HLW からマイナーアクチノイド(MA)や発熱性のストロンチウム
‐セシウム(Sr-Cs)を分離する意義については,国内外で様々検討されており,特に,日本では,
原子力委員会や関係機関で検討が行われ,次世代の原子力戦略として重要な研究テーマの一つと
なっている。また,分離変換技術に関しては, LLW を含めた総合的な検討が求められている。
そこで,廃棄物発生量の観点から分離変換技術の評価を行ううえで,HLW だけではなく,LLW
の発生とその処分も含めた総合的な評価が必要と考えられる。
問題の内容具体化の例:
・ 目的変数:地層処分場面積 + 貯蔵容量 + 長期安全性 → (効用関数により最大化)
・ 制約条件:回収率の上限,冷却・貯蔵期間の上限等
・ 決定変数:MA 回収率,FP 回収率
成果:
サイクルオプション選択問題のひとつとして分離回収技術の導入の有無を考えた場合,処分場
面積最小化のみに着目として扱うことは,HLW の減少が TRU の増加を招くものの,後者の影響
は前者に比べ小さいことから,最適化問題として不十分であることが確認された。
そこで,目的関数を処分場面積だけでなく,貯蔵容量と総線量を加え,MA 回収率と FP 回収率
の最適な組合せを求める問題を多属性効用理論と AHP 法の組合せ問題として設定(評価項目間の
重みを AHP 法で設定)し,効用関数の形状や評価項目間の重みを変えたケース・スタディを離散
最適化(組合せ最適化)手法を用いて解析・考察した結果,廃棄物処分の観点からは,MA は極
力回収することが望ましいことが帰結された。
課題:
分離回収技術の導入に係るサイクルオプション選択問題をより詳細に分析していくためには,
処分場面積最小化の観点だけでなく,総線量等の安全性や分離プロセス導入にかかるコスト等の
経済的観点を加えること,さらに,燃料や炉型の種類,燃焼度,冷却期間なども最適化の対象(決
定変数)としていくこと,分離プロセスの導入時期や導入の程度などに関する時間変遷を考慮し
た動学的計画問題とすることにより,MA 回収率と FP 回収率の最適選定結果が異なってくる可能
性があると考えられる。このような大規模かつ複雑な問題に取り組むためには,まず静学モデル
において,主要な決定変数を選び,それ以外を定数としたケース・スタディを行うことを基本と
し,決定変数の組合せを変えて最適解の変化を求めること,また異なる時間断面での静学的な最
付 7-12
適解の変化の傾向を踏まえることで,主要な決定変数に絞りつつ効率的に動学モデルに拡張して
いくことが効率的な進め方と考えられる。
付 7-13
(11) No.11:現行リサイクル,先進リサイクル,及び直接処分の比較
問題名
現行リサイクル,先進リサイクル,及び直接処分の比較
問題の特徴
核燃料サイクルの戦略最適化
問題の概要
現行サイクル,先進リサイクル,及び直接処分の 3 者について,その組み合わ
せや移行に関する複数のシナリオを想定しつつ,処分影響(発生本数,貯蔵容
量,処分場面積,安全性等)及び可能な限りのコストの観点も含めて相互比較
し,戦略の最適決定を図る多属性効用解析型意思決定問題。
意義:
日本の原子力を巡る社会情勢が混沌としつつある今日,長期に亘る核燃料サイクル戦略の不確
実性を念頭においた廃棄物処理・処分のあり方を明らかにしておくことは重要になると考えられ
る。
そこで,従来の現行リサイクル,先進サイクルに加え,直接処分の 3 者について,その組み合
わせや移行に関する複数のシナリオを想定しつつ,処分影響(発生本数,貯蔵容量,処分場面積,
安全性等)及び可能な限りのコストの観点も含めて相互に比較し,どのような想定や着眼点にお
いて,どのような核燃料サイクル方策をとるのが最適となるかをサイクル全体について総合的に
検討することが必要である。
この場合,大きくは,AHP 法を用いたシナリオの選択問題として扱うか,効用関数法などを用
いて数理学的最適化問題を解くか,2 つのアプローチが考えられる。後者の場合には,U,Pu の
需給バランスなどの制約条件のもとで,核燃料サイクル全体にわたる安全性やコスト,処分影響
などを目的関数とし,核燃料サイクルの関連諸施設の導入規模,使用済燃料や廃棄物の冷却や貯
蔵の期間,処分量などを決定変数とする,(9)や(10)を組み合わせたような大規模な最適化問題が
考えられる。この場合も,(10)と同様に,静学モデルの最適解の変化の傾向を踏まえ,動学モデ
ルに拡張していくことが効率的な進め方と考えられる。
問題の内容具体化の例:
・ 評価目標:最適なリサイクル方式
・ 評価項目:処分影響(発生本数,貯蔵容量,処分場面積,安全性等),社会経済的影響(コス
ト等)
・ 選択肢:複数のリサイクル方式の候補(現行リサイクル, 先進サイクル, 直接処分, それらの組
合せ)
付 7-14
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