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第2 話完全版 - 凸版印刷株式会社

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第2 話完全版 - 凸版印刷株式会社
K A S H I W A
S AT O
w w w. t o p p a n . c o . j p / g a l a
佐藤可士和
クリエーターズファイル
5
vol. 10 Oct. 6, 2003
No.
怒りますね︵笑︶
。確かに、たまたまマッチする
こともある。表現そのものが話題になって結果的
前までは、
ぼくもそう考えていたんです。でも
﹁イ
オーソドックなスタイルが既成の文法を覆す
ぼくの現在の立場は、アートディレクターとい
うよりもクリエイティブディレクターに近いわけ
んだ気がします。ようやく自転車に乗れるように
ン テ グ ラ ﹂ か ら 変 わ っ た。 広 告 と は 何 か を つ か
に広告として成功することもある。でもそれは長
ですが、ぼくのやり方は極めてオーソドックスと
ですから、ぼくの場合、やりたいアイディアが
先にあるわけではない。まず広告の対象となる商
メディアのツール化・ツールのメディア化
なった︵笑︶、そんな感じですね。
続きしないと思います。ホンダ﹁インテグラ﹂の
いうか、正統的だと思っています。
たとえば、ホンダの﹁ステップワゴン﹂。この
仕事の場合も、まず﹁ステップワゴン﹂とは何か
を考えた。ミニバンって何だろう、どうして開発
さ れ た ん だ ろ う、 何 の た め に 存 在 す る ん だ ろ う、
そんな一連の本質的な問いかけから始まります。
そうすると、子供と一緒にどこかへ行くための
車じゃないか、家族のための車じゃないか、そん
品があって、そこから初めて考えます。
スマップの一連のキャンペーン展開も同様です。
スーパーメジャーグループ、スマップという存在
など真ん中の答えが返ってくる。そのど真ん中の
鮮やかに新鮮に提示できる方法を考えるわけです
がある。それをどう広告していくか。単なるアル
直球のような答えにぶつかったら、今度はそれを
ね。それが夢を運ぶ素敵な車というコンセプトに
バム発売告知広告ではなく、
あたかも﹁スマップ﹂
これまでだと、TVとか、新聞とか、決まった
メディアに広告をあてはめて考えてしまう。まず
な仕組み。
広告キャンペーンが一つの事件になっていくよう
というブランドが立ち上がったかのように考えた。
つながっていった。
もう同じ表現フレームで7年も続いていますが、
それは最初から7年間やるという約束があったわ
けではありません。表現コンセプトが明確だった
から、新たにコンセプトを変える必要がなかった。
それが長く続いている理由じゃないでしょうか。
が あ っ て、 そ こ か ら さ ま ざ ま な メ デ ィ ア を 考 え、
来はその逆でしょう。まず広告の対象である商品
広 告 メ デ ィ ア あ り き の 発 想 な ん で す ね。 で も 本
エ イ タ ー の 多 く は、 ぼ く の よ う に や っ て い な い。
広告を作っていくのが本来のあり方だと思うん
そういう意味で、ぼくの広告制作は教科書的と
いうか、王道的だと思いますよ。でも実は、クリ
もっと何というか、けたぐりのようなことばかり
ですね。
CDジャケットも、CFも、新聞広告も、ビル
ボ ー ド も、 B 倍 ポ ス タ ー も、 携 帯 ス ト ラ ッ プ も、
を考えてしまう。先に表現ありきで、何か面白い
表現方法があるから使おうみたいな。あまり商品
のことを考えていない。ぼくがクライアントなら
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「デザイン・メディア・コミュニケーション」
第2話
G A L A.net
C R E ATO R ' S F I L E
Designing Communications
コミュニケーションをデザインする
広告とは何か。それをもう一度、原理から問うことで、従来の文法を覆してしまう佐藤可士和氏。
メディア自体をツールととらえ、あるいはツールをメディアにしてしまう広告手法は、
アートディレクターの役割を、コミュニケーションのデザインという大きな視野からとらえることを可能にした。
それは脱・広告でもあると同時に、広告の領域を拡大することでもある。
6
4
3
2
7
1. 外観
2. 返却ボックス
3. ラッピング用紙
4. リボン
5. 外壁サイン
6. チラシ
7. グッズ
5
1
TSUTAYA TOKYO ROPPONGI
2003
カルチュア・コンビニエンス・クラブ
うちわも、ティッシュボックスも、すべて同列の
メディアとして考え、そこから自由に発想を広げ
ていったわけです。メディアにこちらが使われる
んじゃなくて、むしろこちらがメディアを作り出
していく。その延長として、街そのものをメディ
アにしていくという考えも生れてきたわけです。
﹂
最近、手がけた﹁ TSUTAYA TOKYO ROPPONGI
の仕事ではロゴをはじめとして、サイン計画、ポ
ス タ ー、 チ ラ シ、 ブ ッ ク カ バ ー、 シ ョ ッ ピ ン グ
バ ッ グ な ど ト ー タ ル に や っ た の で す が、 こ こ で
はショッピングバッグだって、紙袋をもって街を
歩けば一つの広告メディアになる、という発想で
やっています。
よくぼくの制作スタイルを﹁脱・広告﹂なんて
言われるのですが、ぼく自身はきわめて自然な王
道をいく広告だと思っているんですが。
コミュニケーションという仕掛け
けっきょくぼくがやっていることは、コミュニ
ケーションそのもののデザインと言えるかもしれ
ませんね。
さまざまなメディア、表現ツールを使っ
て、一つのコミュニケーションの仕掛けをつくっ
ていく。
最近、Gマークの審査員を仰せつかったのです
が、グッドデザイン賞のなかにコミュニケーショ
ンデザイン部門というのが設置されまして、それ
の審査員を、というわけなんですが。確かに、こ
れまで、コンセプトも含めて、全体を見て評価し
てくれるような賞がなかったんですね。個々のメ
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第2話
佐藤可士和
no.5
ディアごとに作品を評価するのではなくて、仕組
の書体を試しながら、最終的にあんな形に落ち着
とか、病院とか。最近、幼稚園のアートディレク
実際、世の中にはアートディレクションされて
いない対象がいっぱいあるじゃないですか。学校
気がするんですね。
もできる。そう思うとやれることはいっぱいある
れない。しかし、
﹁ TSUTAYA TOKYO ROPPONGI
﹂
の例のように、紙袋を広告メディアと考えること
Fとか、ポスターとかの広告は少なくなるかもし
念からとらえているからではないか。確かに、C
でもそう考えてしまうのは、従来の広告という概
最近、広告業界は活気がないとか、面白くない
とか言われています。不景気だし、予算も少ない。
アートディレクターの大きな可能性
仕事で学んだ気がします。
ク ラ イ ア ン ト が ク リ エ イ タ ー を 選 ん だ 時 点 で、
広告のクオリティが決定するということを、この
新しいものが次々と生れていきました。
際、 こ の チ ー ム で ア イ デ ィ ア が ど ん ど ん 広 が り、
ジャーの飯島さんの読みは凄いと思いますね。実
いいかもしれません。このチームを作ったマネー
この広告キャンペーンは成功していたと言っても
トの多田︵琢︶さんとぼくを組み合わせた時点で、
バーとチームワークですね。例えば、 SMAP
の仕
事なんかは、マネージャーの飯島さんがタグボー
広 告 の 制 作 で も う ひ と つ 重 要 な こ と は、 メ ン
的な判断はありましたけど。
いたということです。基本はゴシックという感覚
interview:2003.7
みやプロジェクト自体を評価の対象にしていく。
これはまさに、ぼくなんかがやってきたことで
すし、こういう形でアートディレクターやクリエ
イ テ ィ ブ デ ィ レ ク タ ー の 仕 事 が 評 価 さ れ る の は、
とてもいいことではないかと思っています。
クリエイティブディレクターには、ぼくのよう
なアートディレクター出身の人もいれば、コピー
ライター出身の人もいます。クリエイティブディ
レクターは、プロジェクトのリーダーのような存
在なわけですが、いま、ヴィジュアルのともなわ
な い コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン な ん て 考 え ら れ ま せ ん。
その意味で、ヴィジュアルのすべてをコントロー
ルできるアートディレクターはとても有利な立場
にいる と 思 い ま す 。
それは言葉をおろそかにするということではあ
りません。80年代の広告は、糸井さんとか、仲
畑さんとか、コピーがひっぱった時代でした。現
在は、感覚的なスピードの速い時代だと思うんで
すね。﹁ダサイ﹂﹁かっこいい﹂と瞬時に判断され
て し ま う 時 代 で す。 言 葉 で さ え、 そ の 書 体 と か、
デザインのされ方で受け取り方が違ってきます。
実際、ぼく自身、言葉とヴィジュアルをつねに
一緒に考えています。当然、言葉のセンスも必要
です。とはいえ、最終的にはヴィジュアルとして
具体的なものが見えなければ形ならないわけです。
企画や提案の段階でもそうですが、具体的なヴィ
ジュアルが見えなければ成立しませんし、成功も
しませ ん 。
の 書 体 な ん か も、 特 別、 ア イ デ ィ ア に 秘 密
MIJ
なんてありません。それこそ、数え切れないほど
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第2話
佐藤可士和
no.5
no.5
佐藤可士和
第2話
極生/生黒
2002∼
キリンビール株式会社
B0ポスター 4連2段
350ml缶
OZOC
“HARAJUKU ADVERTISEMENT
ARCHITECTURE PROJECT” (HAAP)
2002
株式会社 ワールド
外観、グッズ
“Tokyo 02/03 <More than 2D, Less than 3D>”
2002∼2003
株式会社 資生堂
資生堂のパリ直営店「資生堂ラ・ボーテ」にて開催
された、佐藤氏と資生堂のコラボレーションによる
インスタレーション作品
ションをやってみたいと思っているんです。
これから少子化が進めば、幼稚園などもアイデ
ンティティが必要になってくる。他の幼稚園とは
ここが違うみたいな。名前もかっこよく、環境も
整っていて、他の幼稚園よりもここが優れていま
すというような。当然、そこには広告的なコミュ
ニケーションが必要になりますし、ぼくらアート
ディレクターの存在は不可欠になると思います。
それをアートディレクションと呼ぶかどうかは
別ですが、ぼくらの仕事の範疇であることは確か
です。その意味でも、アートディレクターの未来
は明るいと思います。またそうとらえるべきだと
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思います。
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の仕事で、何でもメディア
SMAP
取材:福田大、浅野正樹、大嶋浩
文:大嶋浩
編集:浅野正樹
デザイン:福田大
実際、ぼくは
TEL.03-5840-4411
http://www.toppan.co.jp/gala
企画・編集・制作
凸版印刷株式会社 GALA
になることを体感できましたし、その後、 OZOC
では建築物までもメディアとして考え、仕事をし
発行責任者
樋澤 明
ています。
http://www.toppan.co.jp
従来のような広告は少なくなるかもしれません
が、視点を変えて、自分たちで探していけば、アー
発行
凸版印刷株式会社
東京都千代田区神田和泉町1番地
〒101-0024
トディレクターの領域には、大きな可能性が開け
2003年10月6日発行
ていると思っています。
C R E AT O R ' S F I L E vol.10
© 2 0 0 3 T O P PA N / G A L A
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