...

Vol.02 (2007年07月23日発行)

by user

on
Category: Documents
17

views

Report

Comments

Transcript

Vol.02 (2007年07月23日発行)
2007 夏号
ひまわり
豊かな心のふれあいの中で、夢と希望と健康のある明日のために、
より良い医療を提供することが私たちの使命です。
「豊かな心のふれあいのなかで」
医療とは何でしょうか?医療とは病気を治すことではなく病気の人を治すこと、いわば真の目的は幸
福の追求にあると考えています。それは、患者様1人ひとりへの思い遣りの心がもっとも大切なこと
であり患者様とスタッフの豊かな心のふれあいの中でこそ生まれるものだと思います。
「夢と希望と健康のある明日のために」
一人でも多くの患者様が笑顔を取り戻していただけるような、明日の夢と希望と健康のために、新世
代へつながる医療を続けることが私たちの目標です。 いつの時代も地域社会から必要とされる施設
でありたいと思います。
「よりよい医療を提供することが私たちの使命です」
はちや整形外科病院は整形外科の専門病院です。専門の施設であるためには最新の医療技術を習得し
たスタッフによるチーム医療がもっとも大切なことです。患者様の Quality of Life の向上を目指
し、より良い医療を提供していくためスタッフ一同、全力を尽くします。
また、はちやリハビリテーションクリニックでは、より多くの方々がリハビリテーション(通所リハ
ビリ)で満足していただけるよう、全力を尽くします。
部
部署
署紹
紹介
介
第2回目は、はちや整形外科病院蜂谷裕道理事長の一声でスタートしたプロジェクト、
『MERI Japan Project』の紹介です。いったいどのようなプロジェクト
なのでしょうか。事務局長の有江より紹介していただきましょう。
NPO 法人 MERI Japan(メリ ジャパン)
事務局長 有江啓泰(ありえ ひろやす)
事の始まりは 2005 年の夏の終りでした。前職の企業の考え方や体質が合わず燻っていたところに蜂谷院長
から声がかかりました。「面白いことがあるから、とにかく話を聞きに名古屋に来い!」の一言で東京から
新幹線に飛び乗りました。これが日本では未だかつて誰も手をつけようとしなかった仕事へ足を踏み入れた
瞬間でした。院長の言う面白いことというのは「日本に手術技術を鍛えるための施設、すなわちサージカ
ル・トレーニング・センター(Surgical Training Center)を作ろう。しかも、ご遺体を用いてトレーニングを
行える施設だ。」ということでした。「どうだ?面白そうだろ。」という院長には「はいっ。面白そうです
ね。」という以外にはありません。こうして日本に本格的なサージカル・トレーニング・センターを作ろう
というプロジェクトがスタートしたのです。
ある技術を身に付けていくためにはきちんとした指導を受けて段階を踏んでいかなくてはなりません。身
近な例で言えば自動車の運転技術などがそうです。教習所内で講習を受けて、シミュレーターで基本的な知
識と手順を憶えます。そして所内の周回コースで実際に車に乗って運転して・・・。だけど、それだけでは
安全に運転できないですよね。ですから仮免許をとって教官を助手席に乗せて路上教習を受けて、何度かヒ
ヤリとするようなことを乗り越えて後に晴れて免許を取って運転できるようになって、更に、日常の運転で
様々なことを経験して積み重ねて運転が上手になっていくわけです。手術の技術も同じです。きちんとした
指導とトレーニングを経て後に患者様を実際に治療していくことで技術が高まっていくわけです。本来であ
れば図のようなサージカル・トレーニング・センターがあれば理想的なのです。
しかし、日本には本格的なサージカル・トレーニング・センターがありません。このような現状の下では、
言うなれば、外科医は路上教習を省いて車を運転しているようなものなのです。それでも今までは優秀な外
科医が後進を育てるために実際の手術をしながら指導をするという、いわゆる OJT(On the Job Training)を
することでしっかりとした技術指導を行うことができました。しかし、手術技術は日進月歩のスピードで開
発されて私たちの医療に導入されていますが、その技術は高度になり複雑化していて従来の OJT での指導は
難しくなってきています。今こそサージカル・トレーニング・センターが必要なわけです。既に欧米では本
格的なサージカル・トレーニング・センターが建設されてご遺体を用いて効果的なトレーニングが行われて
います。最近では中国や韓国、オーストラリアなど、近隣のアジア・オセアニア諸国でも同様の施設が建設
されて自国の医療に貢献をしています。先進国と言われている国々の中できちんとしたサージカル・トレー
ニング・センターを持っていないのは日本だけということです。
では何故、日本にはご遺体を用いることのできるサージカル・トレーニング・センターがないのでしょう
か?その答の一つは・・・外科医が手術技術を鍛えるためにご遺体を用いることを国が認めていないからで
す。「あれ?日本には献体という制度があるから、お医者さんはそれを用いて手術の練習をしているんじゃ
ないの?」という方もいらっしゃるかもしれません。献体というのは“自分の意思により医学教育のために
自分の死後に自分の身体を提供する”ことです。一般的に考えると医学教育には医療技術教育や研修が含ま
れるものだと思われます。最近よく耳にする医者に対する卒後教育などはまさにこれに当たります。しかし、
国は“医学教育は大学の医学部において医学生に対して行われる教育のことを指す”ので医師に対する教
育・研修はこれに当たらないから献体を手術技術研修の目的で用いることは認めないというのです。皆様は
どう思いますか?私達は“医学というものは医療、つまり患者様の治療に役立ってこそ医学”だと考えてい
ます。ですから医療技術・手術技術の質の向上や医療の安全・安心を得るために、献体を含めたご遺体が医
療技術研修や研究に用いられてもよいのではないかと考えているわけです。また、献体をしてくれた方々や
献体をしようと考えてくれている方々の大多数の人は医療を含めた医学の発展ために自分の身体を役立てた
いと考えているのではないでしょうか。献体をしていただいた方、献体をしようと考えていただいている
方々の善意を無駄にしないためにも、ご遺体の医学教育への用いられ方を見直すべきだと思います。
私達は日本に本格的なサージカル・トレーニング・センター、すなわち MERI(医療技術教育と研究を行
う施設という意味の英語の頭文字)を作るために NPO 法人を立ち上げて活動しています。“日本に MERI を
作る!”これが MERI Japan Project です。このプロジェクトにとって最初の、そして最大の障壁は先に述べま
した政府の行政解釈と一般的な考え方のズレです。行政側の感覚と一般市民の感覚にズレがあることは皆さ
んもいろいろな場面で感じていると思いますが、この問題にもそのズレが存在しています。日本の医療の質
の向上と安全・安心のために私達は活動をしているわけですが、まずはそのズレをなくすために行政に対し
ての働きかけをしています。その働きかけの後ろ盾となるのが皆様の理解と賛同、つまり世論の力です。日
本の医療をより良くしていくために、私達は皆様と一緒に考え、活動をしていきたいと考えています。ご意
見がありましたらご遠慮なくお聞かせください。皆様方のご理解とご賛同をいただけますようお願いを申し
上げます。
医
医療
療ト
トピ
ピッ
ック
クス
ス
先
先進
進医
医療
療と
とは
は
新しい医療技術の出現・患者ニーズの多様化等に対応するために、一般の保険診療で
認められている医療の水準を超えた最新の先進技術として厚生労働大臣から承認され
た医療行為のことを言います。
はちや整形外科病院は、平成19年6月より下記の先進医療の施設基準を取得しました。
先進医療技術名
『非生体ドナーから採取された同種骨・靱帯組織の凍結保存(骨又は靱帯の再建術であ
って、先天性疾患、外傷性《欠損性又は感染性偽関節に係るものに限る。》、骨腫瘍切
除後、関節固定術時若しくは人工関節置換術時《初回又は再置換術時に限る。》の広範
囲骨欠損、脊椎固定術時の骨融合促進又は靱帯断裂による関節不安定性に係るものに限
る。)』
先進医療技術の概要
適切で厳密なドナーの選択、採取、採取組織に対する十分な検査、確実な処理・保存を行うことがで
き、生体ドナーに比べて採取できる骨・靭帯の量も多く、安全で良質な同種骨・靭帯組織を供給するこ
とができる。非生体ドナーを厳密に選択した上で骨・靭帯組織を採取し、採取した組織の検査、処理・
保存を行い、安全で良質な同種保存組織を供給する。特に採取組織の検査では生体ドナーに対して一般
的に行われている検査(梅毒、肝炎ウイルス等)に加え、HIV、HTLV-1 やサイトメガロウイルス感染等
について十分な検査を行い、感染症伝播のリスクを低下させる。
『先進医療』っていくら位かかるの?
先進医療は、一般医療と比べるとその技術・治療効果は高いのですが、技術料が非常に高く、その費
用は自費負担となります。通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)については保険
適用となります。先進医療にかかる費用は、医療の種類や病院によって異なります。
※ 先進医療にかかる料金は、患者様の自
己負担(保険適応外)となります。高
額療養費の払い戻しの対象とはなって
おりませんが、所得税の控除の対象に
なります。ただし、通常の治療と共通
する部分(保険適用分)については、
高額療養費の払い戻しの対象となりま
す。
※ また最近では、先進医療を受けた際に
給付金を受取る事ができる医療保険も
発売されています。ご加入の医療保険
をお確かめください。
はちや整形外科病院での上記先進医療部
分の自己負担額は、253,556円に
なります。
『先進医療』に係る同種骨移植の適応は?
①
②
自家骨移植や人工骨では対応できない場合。
自家骨移植や人工骨でも対応できるが、同種骨の使用によってより望ましい結果が期待できる場合。
その他詳しい内容につきましては、医師または病院スタッフにお尋ね下さい。
小侵襲手術(しょうしんしゅうしゅじゅつ)《Minimal Invasive Surgery》とは
最新の技術を駆使し、内視鏡などを用いて手術をおこなうことです。小さな傷口ですます
ことができ、患者さまの負担が尐なく、術後の早期退院・早期社会復帰が可能です。
■現在当院で実施している小侵襲手術
腰椎椎間板ヘルニアに対する手術 MED 法
経椎間孔進入椎体間固定術 MIS-TLIF
膝関節鏡視下手術
肩関節鏡視下手術
単顆置換型人工膝関節置換術(UKA)
低侵襲全人工膝関節置換術(MISTKA)
手根管開放術(内視鏡手術)
人工股関節置換術
今回は、以上の中から「腰椎椎間板ヘルニアに対する手術 MED 法」を取り上げてご紹介いたします。
MED(MICRO ENDOSCOPIC DISCECTOMY)法とは
内視鏡を用いた椎間板ヘルニア症の手術方法で 1996 年にアメリカで開発された技術で、当院では 1998 年より行
っております。背部に約 1.6cm の小切開を行い、そこから内視鏡を入れ、モニター(ビデオ)に写し出された画像
を見ながら、ヘルニア摘出道具を操作し、ヘルニアを摘出します。手術時間は 1 時間程度で済み、出血もほとんど
ありません。これにより、入院期間が 1 週間以内ですみますので、早期の退院、早期の社会復帰が可能になります。
ただし、すべての腰椎椎間板ヘルニア症に対し適応があるわけではありませんので詳細については主治医にご相談
ください。
背骨(脊椎)は首(頚椎)に 7 個、背中(胸椎)に 12 個、腰(腰椎)に 5 個、その下の仙骨から出来ています。
椎間板は、この背骨の骨と骨との間にあり、クッションの役割をしている軟骨です。椎間板ヘルニア症とは、前か
がみで重い物を持ち上げた時や、体を捻った時にかかる負担や加齢などの原因により椎間板が脱出し、後ろにある
神経を圧迫することで、腰痛や坐骨神経痛、足のしびれ、筋肉の衰えなどの症状を出す疾患です。この症状はヘル
ニアのタイプ・大きさによって異なります。
このヘルニアを、MED 法により摘出することで症状の改善を図ります。この手術は全身麻酔で行い、約 1 時間程
度ですみます。入院期間は 1 週間以内となっております。
手術は全身麻酔により行われますので患者さまに意識は
ありません。ベッドでは左の図のような身体の向きで手
術を行います。
右の図の四角で囲ってあるところに 1 箇所(症状により場所が異なります)
皮膚に切り込みをいれます(1.6cm)。切り込みをいれた後、内視鏡を挿入します。
内視鏡(胃カメラや、ファイバースコープ等を腰にするようなものです)を通し
モニター(ビデオ)に写し出された画像を見ながら、ヘルニア摘出道具を操作し、
ヘルニアを摘出します。モニターを見ながら行うので安全に操作することが可能です。
実際には左図のような内視鏡を背部(背中)より挿入し、脱出したヘルニアを摘
出します。
椎間板は白い部分①の髄核(ずいかく)と薄い黄色②の線維輪(せんいりん)か
らできています。図は線維輪を破り脱出した髄核(ヘルニア)を摘出している様
子です。黒い部分③はヘルニアにより圧迫をうけた神経です。
ご注意:ヘルニアの状態により MED 法が適さない場合もありますので、受診の
上、医師とご相談して下さい。
季刊誌:for you ほーゆー 2007 夏号(第2号)
発行所:医療法人蜂友会はちや整形外科病院医事課
住所:名古屋市千種区末盛通二丁目 4 番地 〒464-0821
ホームページアドレス:http://www.hachiya.or.jp
発行日:平成 19 年 7 月 23 日
Fly UP