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都市間高速道路における車群特性に関する定量的分析* A
都市間高速道路における車群特性に関する定量的分析* A Quantitative Study on Platoon Characteristics on an Intercity Motorway* 石田友隆**・桑原雅夫***・EdwardChung**** By Tomotaka ISHIDA**・Masao KUWAHARA***・Edward CHUNG**** 1.研究の背景・目的 車頭時間は前の車両の先端がある断面を通過してか ら次の車両の先端がその断面を通過するまでに要し 高速道路における渋滞の誘発要因の一つとして、 た時間を指す。 車群(比較的短い間隔で次々にやってくる車両の集 団)の存在が知られている。しかし、どのくらいの 3.ボトルネック位置の特定 台数の車群なのか、どのように車群は形成されるの かなど、車群の特性については明確に把握されてい ない。 そこで、大きな渋滞が発生したある一日に着目し、 追越車線における交通量と平均速度の時間推移 (図2)、及び平均速度の時間と空間推移(図3)から、 ボトルネック位置を特定した。なお、交通量や平均 (1)ボトルネック上流の渋滞開始前の自由流におい 速度は15分間の平均としており、交通量は大型車を て、交通量の変化と車群形成との関連を解明する。 小型車1.7台分とみなしてpcu換算している。 一方、(2)ボトルネック下流においては、渋滞の先 これによって、キロポスト94.0の地点付近がボト 頭から発進する車両がボトルネックから離れるにつ ルネックの境界であることが分かった。そこで、キ れて、車群がどのように形成されていくのかを分析 ロポスト94.0以前をボトルネック上流、以降をボト する。 ルネック下流と定義した。 キロポスト 92.6 91.8 93.2 93.6 94.0 94.4 95.0 95.8 2.使用データ 走行車線 本研究では、東北自動車道91.8∼95.0キロポスト 追越車線 (鹿沼I.C.付近から約4km)の区間において得られた車 下り勾配 上り勾配 線別の8断面における生パルスデータを使用してい 0.504% 1.420% 図1 パルスデータ取得地点 る(図1)。なお、取得したデータは車両の通過した 時間(時、分、秒)、車種(大型、小型)、速度(0.1km/ 時単位)、車長(m単位)、車頭間隔(m単位)、車頭時 94Kp、追越車線 て大型車、それ以下は全て小型車としている。また、 車頭間隔は連続した車両の先端の距離間隔を指し、 *キーワーズ:交通流,交通容量,ITS ** 学生員,工修,東京大学大学院社会基盤工学専攻 *** 正員,Ph.D,東京大学生産技術研究所 **** 正員,Ph.D,東京大学国際・産学共同研究センター (東京都目黒区駒場4丁目6番地1, TEL 03-5452-6098,FAX 03-5452-6420) 140 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 交通量 120 100 80 60 平均速度 40 20 0 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 時刻 図2 交通量と平均速度の推移 平均速度[km/時] データの定義として、車種は車長5.5m以上を全 交通量[台/時/車線] 間(0.1秒単位)となっている。 ラフの一平面である。また、この三次元グラフを基 データ無し 15:00 14:00 準車頭時間が1.5秒の面で切断し、フローレベルの 13:00 軸方向から見た断面図が図6であり、基準車頭時間 時刻 12:00 11:00 20~30km/h 10~20km/h 50~60km/h 30~40km/h 10:00 60km/h以上 9:00 の軸方向から見た断面図が図7である。 なお、図6中で構成台数が1台の場合、車群では ないということを指す。また、図7中の数字はフロ 8:00 7:00 ーレベルを表す。 40~50km/h 6:00 91.8 92.6 93.2 93.6 94 キロポスト 94.4 95 95.8 図6から、交通量が増えるにつれて、車群を構成 する車両数も増えていることが分かる。また、図7 図3 平均速度の推移とボトルネック位置 から、交通量が増えるほど小さい車頭時間で車群に なる割合も増えていることが分かる。 4.自由流の分析 基準車頭時間 1.5 秒 100 本研究では、安全を見て平均速度60[km/時]以上 を自由流、未満を渋滞流と定義しており、ボトルネ 80 60 % ック上流の自由流における分析結果は、以下の通り 40 である。 20 0 図7 (1) 車頭時間分布 1 図6 2 3 4 基準車頭時間 自由流状態において、車頭時間の累積車両数割合 3 2 6 5 4 9 8 7 5 フローレベル 図5 三次元グラフの一平面 を以下に示す(図4)。なお、図中の数字はフローレ 時/車線]毎に区切って定義した指標であり、例えば、 レベル7は交通量1200∼1400[台/時/車線]を指し、 レベル8は交通量1400∼1600[台/時/車線]を指す。 15台以上 4台 るという期待通りの結果が出ていることが分かる。 2台 1800~2000[台/時/車線] 図 5 の線 1台 3 5 4 50 40 30 20 10 0 2 0~200 [台/時/車線] 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 車頭時間[秒] 図4 車頭時間分布 (2) 3次元グラフと断面図 本研究では、ある車頭時間以下の車両群を車群と 定義している。図5は、フローレベル、基準となる 車頭時間、累積割合をそれぞれ軸にとった三次元グ 10 9 8 7 6 5 4 フローレベル 3 2 1 図6 車群を構成する車両数の分布(基準車頭時間1.5秒) 車群以外の車両数割合[%] 累積の車頭時間割合[%] 3台 9 8 7 6 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 5~9台 図から、交通量が増えるほど短い車頭時間が増え 100 90 80 70 60 10~14台 車群の車両数分布 ベルを表す。フローレベルとは、交通量を200[台/ 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0~200 [台/時/車線] 2 3 5 4 9 8 7 6 1800~2000[台/時/車線] 0.6 1 1.4 1.8 2.2 2.6 3 3.4 基準車頭時間[秒] 3.8 4.2 図7 車群を形成する車両割合の変化 4.6 5 5.渋滞流の分析 基準車頭時間 1.5 秒 100 一方、渋滞流及びボトルネック下流における分析 は以下の通りである。 80 60 % 40 (1) 車線利用率の推移 20 図2から、渋滞している時間帯は、主に7:00∼ 0 図 11 図 10 1 2 9:00頃と推定される。そこで、ここでは渋滞流に 3 4 基準車頭時間 おける車線利用率の推移を示す(図8)。なお、図中 5 94 95 93 キロポスト 図9 三次元グラフの一平面 の赤線はボトルネックの位置を表す。 用率が大きくなっていくことが分かる。 5台以上 100% 90% 4台 80% 70% 60% 2台 走行車線 50% 40% 30% 20% 図 9 の線 1台 50% 40% 30% 20% 10% 0% 10% 0% 追越車線 95.8 91.8 92.6 93.2 93.6 94 キロポスト 94.4 95 95.8 図8 車線利用率の推移 (2) 3次元グラフと断面図 自由流の分析と同様に、図9はキロポスト、基準 となる車頭時間、累積割合をそれぞれ軸にとった三 次元グラフの一平面である。また、この三次元グラ フを基準車頭時間が1.5秒の面で切断し、キロポス トの軸方向から見た断面図が図10であり、基準車頭 時間の軸方向から見た断面図が図11である。 95 94.4 94 93.6 キロポスト 93.2 92.6 91.8 図10 車群を構成する車両数分布(基準車頭時間1.5秒) 車群以外の車両数割合[%] 車線利用率 3台 100% 90% 80% 70% 60% 車群の車両数分布 図から、ボトルネックを過ぎると、追越車線の利 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 交通量 1800[台/時/車線] 以下 交通量 1800[台/時/車線] 以上 0.6 1 1.4 1.8 2.2 2.6 3 3.4 基準車頭時間[秒] 3.8 4.2 4.6 5 図11 車群形成率の変化 なお、図10中の赤線はボトルネックの位置を表し、 構成台数が1台の場合、車群ではないということを 6.CHAIDを用いた分析 指す。また、図11は交通量が渋滞直前の1800[台/時 /車線]以上の時と以下の時とを対象としており、い CHAIDとはカイ二乗による相互作用の自動検出 ずれの場合も上から順にボトルネックから0.4km、 (Chi-squared Automatic Interaction Detector)の略称で 1.0km、1.8kmの地点となっている。 あり、1980年にG.V.Kassが提唱した樹木成長アルゴ 図10から、ボトルネックを過ぎると、車群を構成 リズムである。本研究では、ある車両の車頭時間が する車両台数が急速に増えていくことが分かる。ま 変化した場合、そのことが次の車両の車頭時間にど た、図11から、地点間の差が小さく、線が重なって う影響するのかを分析する為に導入した。 しまっているものの、ボトルネックを離れるにつれ て、車群になりやすくなっていることが分かる。 (1) 前車の車頭時間が後車の車頭時間に及ぼす影響 ここでは、渋滞前のボトルネック上流の自由流、 追越車線において、前車の車頭時間が後車の車頭時 準車頭時間が3秒以上になると増加率が安定し、 間に及ぼす影響を示す(図12)。なお、図中の数字は 交通量800[台/時/車線]までは15%ほど、それ以 フローレベルを表す。 降は5%ほどの割合で車群構成率が増加している。 図から、交通量が増えると、前車の車頭時間が大 ② ボトルネックを過ぎると、走行車線の車両が追 きい時に後車が前に詰めるようになることが分かる。 越車線に流れてくる影響で、車群を構成する車 両台数の増加率が5%から10%へと大きく伸びる。 3 後車の車頭時間[秒] 5 2.5 また、基準車頭時間が2秒以下の場合、ボトルネ 6 ックを0.4km離れるほど、車群構成率が5%ほど増 2 1400~1600[台/時/車線] 加する。 1.5 ③ 1 全体的に走行車線よりも追越車線の方が0.5秒 ほど車頭時間が短い。また、ボトルネックを 0.5 0.4km離れるほど車頭時間が0.2秒ほど短くなる。 0 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 前車の車頭時間[秒] 4 4.5 5 5.5 ④ 交通量が高い場合、前車の車頭時間が大きいと 後車が前に詰めるようになる。 図12 前車の車頭時間が及ぼす影響 ⑤ CHAIDを用いた分析で得られたデータを元に して、正規分布に従う乱数によって元の交通流 (2) 交通流の再現 (車頭時間)を再現することができる。 ここでは、CHAIDによる分析を元に、正規分布 に従う乱数を用いて図12の交通流(車頭時間)を再現 7.今後の課題 した結果を示す(図13)。なお、図中の数字はフロー レベルを表す。また、軸にとった車頭時間は、どち らも後車の車頭時間である。 本研究では、東北自動車道で得られた生パルスデ ータを基に、ここで挙げたような様々な解析方法に 図から、一部に多少のずれが見られるものの、概 よって、車群に関する基礎的な研究を行った。これ ね元の交通流が再現できていると言える。特に、前 によって、車群の規模や車群がどのように形成され 車の車頭時間が1秒以下の時と4秒以上の時は再現性 るのかなど、車群の特性を多少なりとも明確にする が高い。 ことができた。 今後は、車群を定義する基準やその閾値の確立を 再現データの車頭時間[秒] 3 前車の車頭時間が4秒以上 2.5 2 1400~1600 [台/時/車線] 目指すと共に、正規分布に従う乱数によって再現さ 5 れた交通流データをシミュレーションに応用すると いった、他の研究にも活かせる分析を行っていきた 6 い。 1.5 前車の車頭時間が1秒以下 参考文献 1 1 1.5 2 2.5 元データの車頭時間[秒] 3 図13 交通流(車頭時間)の再現 1)越 正毅、桑原 雅夫、赤羽 弘和:高速道路 のトンネル、サグにおける渋滞現象に関する研 究、土木学会論文集、No.458/Ⅳ-18、pp.65-71、 1993. 6.まとめ 2)A.Darlington:Traffic flow fundamentals、Englewood Cliffs、1927. ① 交通量1600[台/時/車線]程度までは、交通量が 200[台/時/車線]増えるほど、車群を構成する車 両台数も10%ほど増える。また、車両構成率は基