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ゲーム機 小笠原 誠/ゲームライター - インターネット白書ARCHIVES
ゲーム機 ドリームキャスト、ランドネットの失速を乗り越え 家庭用ゲーム機のネットワーク接続が一般化する 1990年代半ば、パソコンゲームの世界 Eメールの送受信など、ひととおりのイン では、ネットワークを介した対戦プレイ ターネット機能を利用できるようになった トユーザーの間では、このままネット対応 の人気が爆発した。その人気は衰えるど のだ。 ゲームに対する関心が高まれば、徐々に 説などがある。もっとも、ドリームキャス ころか、時を経るにつれてますます高く もっとも、これらのシステムは、対応 なった。特に米国では、すでに1999年頃 ソフトの少なさや、ネットワークに関する までに、一部のアドベンチャーゲームな 認知度の低さから、あまり多くのユーザ だが、事態はユーザーが思っている以 どを除き、発売されるパソコン用ゲーム ーを獲得することはできなかった。あくま 上に深刻だった。2001年初頭、突然セガ ソフトのほとんどすべてが、ネットワーク で、知る人ぞ知るという、マニアックな がコンシューマーハードウェア部門から撤 プレイへの対応を果たすようになったの 存在に留っていたのだ。 退するという報道が流され、セガ側もそ だ。 いずれは家庭用ゲーム機の世界にも、 ではあるにしてもハードも普及していくと いう希望的な見方が主流となっていた。 の報道の内容を否定しなかったのだ。結 ドリームキャストの失速 このブームが流れ込んでくることは間違 局、同社はドリームキャストのハード製 造を年内で終了し、今後は他社製ハード いない。ほとんどの家庭用ゲームメーカ こうした状況を変えたのは、1998年末 用も含めたソフトウェアの製造および販売 ーは90年代のうちにそうした事態を予想 に発売されたセガの新ハード、ドリームキ と、アーケード部門に専念することにな し、ネットワークに対応した新ハードの ャストだ。モデムを標準装備し、専用の った。累積した赤字を解消し、経営を再 準備に入った。そして2001年現在。複 ウェブブラウザー「Dream Pasport」を同 建するためには、今回の決定は最善の策 数の新ハードが市場に投入されようとし 梱。電話回線に接続するだけで即座にイ と、評価する向きも多い。だが、今回の ているいまこそ、家庭用ゲーム機による ンターネットにアクセスすることができる 一連の動きによって、ネットワーク対応 ネットワーク接続が一般化する年となる 点をセールスポイントにしたこのマシン用 ゲームが広く一般化するチャンスは大き ことは間違いないだろう。 に、ネット対戦対応のソフトが次々とリ く減ってしてしまったという側面は否定で リースされた。 きないだろう。 家庭用ゲーム機のネット対応 その結果、さほどマニアックでない一 般的な家庭用ゲーム機ユーザーの間でも、 家庭用ゲーム機をネット端末として利 ランドネットの失速 ネットワークを介して対戦をするという行 一方、2000年には、ドリームキャスト 用するというアイデア自体は、すでに 為の楽しさが知られるようになったのだ。 1988年、任天堂の初代ファミリーコンピ 特に2000年末に発売されたサーバー管理 以外のハードでも、ネットワークを構築 ュータを使用したホームトレーディングシ 型のRPG「ファンタシースターオンライン」 する試みが開始された。Nintendo64とそ ステムによって実現されていた。また、 は、20万人を超える会員を獲得したうえ、 の専用ディスクドライブである64DDを利 1995年には、カタパルト・エンターテイメ 社団法人コンピュータエンターテインメン 用する、ランドネットがそれだ。有料会 ントのXBANDが登場。専用モデムを使 トソフトウェア協会(CESA)が主催す 員制で運営が開始されたこのシステムで 用するこのシステム(対象はスーパーフ る「第5回日本ゲーム大賞」を授賞するな は、「巨人のドシン」をはじめとするいくつ ァミコンおよびセガサターン)では、電話 ど、ネットワーク対応ゲームに対する認 かの64DD専用ソフトが提供されるほか、 回線を介して見知らぬユーザーとゲーム 知度を一気に上げることに成功した。 既存のNitendo64用ソフトの追加ファイ をプレイするという、現在のネット対戦 の雛形が実現されている。 しかし、多くの良質なソフトが投入さ れたにもかかわらず、ドリームキャストの ルなどがダウンロードできるというサービ スが行われた。 ハード出荷台数は伸び悩んだ。その原因 直接任天堂が運営するわけではないも によるインターネット接続が可能になっ としては、いずれプレイステーション2 のの、同社が今後ネットワークにどう取 た。この年、XBANDの営業権を引き継 (プレステ2)という強力なライバルが発 り組んでいくかを示す事例として、業界 いだセガは、そのシステムを発展させた 売されることが分っていたため、買い控 関係者からは大いに注目されることにな さらに翌1996年には、家庭用ゲーム機 セガサターンネットワークスの運営を開 が起こったという説や、熱心なゲームフ ったこのシステム。しかし、その運営は、 始。同社の16ビット機サターンと専用モ ァンに支えられているというセガのイメー 最初からつまずいてしまったのというのが デムの組み合わせにより、ウェブの閲覧、 ジが、ライトユーザーに敬遠されたという 実情だ。1999年12月に会員募集を開始 インターネット白 書 2 0 0 1 239 インフラストラクチャー 第 第 3章 4 部 製品・端末 し、2001年1月に実際の運営をスタート 機器が提供されることになる。米国コネ 8月を目処に実験を開始し,2002年中に させたランドネット。だが、第一次募集 クサント社が開発した、SmartSCMチッ 本格サービスへ移行する予定となってい 10万人に対し、当初集まった会員数は1 プ。このチップを搭載したUSBモデムを る。今秋のXbox発売時には間に合わな 万5000人に過ぎなかったのだ。 利用すれば、電話回線を介した対戦プレ いことになるが、この点についてマイクロ イが可能になる。もちろん、それにはソフ ソフト側は, 「誰にでも安心してゲームを Nintendo64のメインユーザーが小学生を ト側の対応も必要とされるが、すでにコ 楽しんでもらうためには,信頼性を高く 中心とした低年齢層だったこと、「巨人 ナミやナムコ、スクエアといった大手ソフ しなければならない。発売までにすべての のドシン」以外、特に目立ったコンテンツ トハウスが対応を表明しており、今後は 検証を終わらせるのは難しい」と説明し を用意できなかったことなどが指摘され 多くの対応ソフトが出回ることになるは ている。 ているが、ともかく、その後も会員数は ずだ。 この低 迷 の原 因 としては、 ともかく、3月30日に開幕した「東京ゲ 微 増 にとどまり、 2000年 11月 には、 さらにソニー側では、当初表明してい ームショウ2001春」会場にADSLモデム 早々とサービス終了がアナウンスされ、 たブロードバンドネットワーク用端末とし が参考出品されるなど、Xboxを取り巻 2001年2月末をもって、運営が停止され ての利用を実現するため、プレステ2を使 く環境は順調に整備されていると言って てしまった。 用した光ファイバー網の実験を開始して いいだろう。 いる。NTT西日本とソニーマーケティン 本格始動するプレステ2 グが共同で、映画・アニメなどの映像コ どう動くかGame Cube ンテンツを一般家庭に配信する実験をス セガのハード分野からの撤退と、ラン タートさせたのだ。もちろん、光ファイバ 2001年9月には、さらにもう1つの新し ドネットのサービス終了。2001年上半期 ー網が一般家庭に行き渡るのは相当先の い家庭用ゲーム機が市場に投入される。 の段階では、家庭用ゲーム機によるネッ 話ではあるが(県庁所在地で2003年、一 任天堂のNintendo64の後継機となる64 トワーク構築は沈滞状況にあったと言っ 般市町村部で2005年を目標)、ネットワ ビット機、Game Cubeだ。 ていい。しかし、現状をもって、日本で ークの未来像を探るうえで、その実際結 はネットワークは受け入れられないと結論 果には大いに注目すべきだろう。 するのは早計だ。2001年下半期には、新 たなハードによるネットワークが、続々と 自色を強く打ち出しているGame Cube。 準備万全のXbox 登場する予定なのだ。 その先陣を切るのが、プレイステーシ 当初予想されたDVDではなく、8cm 光ディスクをメディアに採用するなど、独 あくまでゲーム機であることを主張してい るマシンだけに、ネットワークへの対応に プレステ2を追撃する形になったのが、 関しては不明な点が多い。 ョン2だ。2000年3月のハード発売以降、 マイクロソフトが満を辞して発表した家庭 もっとも、対応周辺機器のラインアッ 長らくネットワーク接続環境が提供され 用ゲーム機、Xboxだ。2001年秋の発売 プの中に「ブロードバンド アダプタ」の名が ていなかったこのマシンだが、この夏以降、 を予定しているこの新型機は、プレステ2 挙げられていることから、任天堂として 各種のネットワーク接続用周辺機器がリ を上回るグラフィック性能を有している もネットワークへの対応を諦めているわけ リースされることになったのだ。 ほか、10/100Baseのイーサネットソケッ ではないことは分る。ポケモンやマリオな まず、プレステ2本体の発売元である トを標準装備しており、ネットワークへ ど、有力なコンテンツを所有する同社だ ソニー・コンピュータ・エンタテインメン の接続が強く意識されたマシン構成とな けに、時期を逃しさえしなければ、ラン ト( SCE) からは、 「PS2専 用 大 容 量 っている。 ドネットの二の舞になることはまずないは HDDユニット」が2001年7月に発売され 当初、このマシンは、そのPC寄りの内 ることが決定している。当初は2000年末 部構造から米国のPCゲームソフトハウス の発売を予定していたものの、環境が整 の参入が目立ったため、あくまでメイン っていないという理由で発売が延期され ターゲットは米国市場で、日本市場には ていたこのユニットは、100BaseTのイー さほど力を入れないのではとも言われた。 サネットソケットを装備。このソケット しかし、マイクロソフトは日本市場も重 を介して、ケーブルモデムやADSLモデ 要なマーケットと考えていることを表明、 ムを接続し、インターネットにアクセス 実際に専用の事業部を立ち上げたほか、 することが可能になる。 NTTと協力してXbox向けのオンライン 一方、サードパーティーからは、従来 ゲームサービスの実験に着手することを決 の電話回線を利用したネット接続用周辺 定している。その計画によれば、2001年 240 インターネット白 書 2 0 0 1 ずだ。 (小笠原誠 ゲームライター)