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2009年一括ダウンロード
環境・社会報告書 2009
&OWJSPONFOUBM
4PDJBM3FQPSU
エーザイグループについて
事業の概要
エーザイグループは、医療用医薬品を中心とした医薬品
の研究・開発、生産、物流・販売などを事業とする製薬企
業です。
エーザイ株式会社 アンメット・メディカル・ニーズ(未だ満たされていない医
環境・社会報告書 2009
療ニーズ)の充足、高品質な医薬品の安定供給、薬剤使
用のための情報提供、
といったコアのファンクションをグルー
プ内で一貫して保有する「シームレス・バリュー・チェーン」
を戦略としています。
2006 年度からスタートした中期戦略計画「ドラマティック
リープ プラン」の最終年度(2011 年度)には、売上高 1
兆円、研究開発費と営業利益の合計 4,000 億円の規模を
めざしています。
エーザイ株式会社 会社概要(2009 年 3月31日現在)
名称
エーザイ株式会社
設立年月
1941 年(昭和 16 年)12月
本社
〒112-8088 東京都文京区小石川 4-6-10
資本金
44,985 百万円(2009 年 3月末現在)
従業員数
連結:10,977 人
個別:4,308 人(2009 年 3月末現在)
営業拠点
コミュニケーションオフィス 全国 67カ所
工場
美里(埼玉)
、川島(岐阜)
、鹿島事業所(茨城)
、
ノースカロライナ(米国)
、台南(台湾)
、
蘇州(中国)
、ボゴール(インドネシア)ほか
研究所
筑波、ボストン、ロンドン、カン、モルフォテックほか
海外関係会社 米国、英国、ドイツ、フランス、インドネシア、タイ、
台湾、中国、韓国など
会社概要に関する詳細は、コーポレート・ウェブサイト
(http://www.eisai.co.jp)をご覧ください。
また、経済性に関する報告や経営戦略についてご紹介した
「アニュアル・レポート2009」も発行しています。
ご希望の方は下記までお問い合わせください。
ウェブサイト : http://www.eisai.co.jp/
community/inquiry/overall.html
電話
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
: エーザイ株式会社 IR部
03-3817-5327
$0/5&/54
エーザイグループについて …………………………… 編集方針
本報告書は、
「hhc(ヒューマン・ヘルスケア)
」というエーザイの企業理念に
込められた思いに基づく活動、ステークホルダーズとの関わり、環境保全活
動などについて、2008 年度の実績を中心に報告しています。
トップメッセージ
…………………………………………………
『環境・社会報告書 2009』の読者の皆様へ
各取り組み報告ページでは、その取り組みに関する基本的な考え方を冒頭
にまとめ、それらを踏まえた上での活動報告をしています。
また、当社の活動がどのように評価されているか、今後期待されていること
は何かを検証・確認し、次なる活動へとつなげられるよう、ステークホルダー
ズの皆様からご意見をいただきました(P51)
。
特集 1
……………………………………………………………………
なぜエーザイは
ヒューマン・ヘルスケアを追求するのか?
編集にあたっては、環境省「環境報告ガイドライン(2007 年版)
」
、GRI
(Global Reporting Initiative)
「サステナビリティ・リポーティング・ガイド
ライン2006」などを参考に、継続的に把握できるパフォーマンスと活動事
エーザイの社会的活動
例を可能な限り取り上げました。
研究開発 ………………………………………………………………………
● 対象範囲
新しい価値のある医薬品を開発するために。
本報告書はエーザイ株式会社単体としての事業活動を中心に編集されて
います。一部の報告内容には、国内および海外グループ企業の活動も含
製品の安定供給 …………………………………………………………
まれています。また、環境報告に関しては、エーザイ株式会社の 4 つの事
安心で安全な薬を患者様にお届けするために。
業所、本社ビル群、コミュニケーションオフィス(国内の営業拠点)および
国内グループ企業から集計したデータをもとに構成しています。
情報提供 ……………………………………………………………………
患者様視点に立った情報を提供するために。
本報告書では、対象範囲を示す言葉として下記の用語を使用しています。
エーザイ
:エーザイ株式会社
エーザイグループ :エーザイ株式会社および連結子会社 50 社と関連会
社 1社で構成される。
企業統治とコンプライアンス……………………………………………
経営の透明性を高めるために。
国内グループ企業 :エーザイ株式会社を含まない国内グループ企業 12 社
人材活用 ……………………………………………………………………
海外グループ企業 :海外のグループ企業 39 社
働きやすい環境の整備とhhcを実践する人材の育成。
本社ビル群
:本社機能を果たしているエーザイ株式会社のビル群。
東京研究施設も含まれる。
コミュニケーションオフィス(CO)
:エーザイ株式会社の営業拠点 67カ所
4 事業所
:エーザイ株式会社の4 事業所(川島工園、美里工場、
鹿島事業所、筑波研究所)
社会貢献活動 ………………………………………………………………
ヒューマン・ヘルスケア企業としての社会への貢献。
エーザイの環境活動
● 対象期間
データは 2008 年 4 月1日から2009 年 3 月31日の実績です。
一部の活動については 2009 年 6 月までの状況も掲載しています。
特集 2 川島工園 …………………………………………… ヒューマン・ヘルスケアと環境が共生する場所
● 本報告書に関するお問い合わせ先
エーザイ株式会社
PR部
電話:03 - 3817- 5120 FAX:03 - 3811- 3077
環境安全部
電話:03 - 3817- 5118 FAX:03- 3811- 9982
エーザイの環境活動 ……………………………………………………
地球環境に配慮した事業活動。
環境マネジメント …………………………………………………………
地球環境への配慮を推進する仕組み。
地球温暖化防止 …………………………………………………………
省エネや新エネルギーの導入によるCO 2 の削減。
第三者審査について
エーザイでは、『環境・社会報告書 2009』の正確性
および客観性の向上のため、重要な環境定量情報に
ついて、デロイトトウシュトーマツの主要構成事務所で
ある監査法人トーマツの関係会社(株)トーマツ審査
評価機構による第三者審査を受けています。
廃棄物削減 …………………………………………………………………
エーザイの 2010 年度ゼロエミッション計画。
そのほかの環境活動に関するデータ ……………………………
グローバルでの知識創造
世界中の医療ニーズを満たすために。 ……… 社会的責任に関する指標と
付加価値の分配 ……………………………………………… ステークホルダーズの皆様からのご意見 ……… エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
5PQ.FTTBHF
環境・社会報告書 2009 の読者の皆様へ
世界情勢は、米国のサブプライム問題に端を発する世界的
経済危機、新型インフルエンザの大流行などにより大きな変動
事業活動の原動力
̶ヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念
が起きております。2009 年 7 月にイタリア・ラクイラで開催された
G8サミットの首脳宣言でも経済危機、貧困及び気候変動と密
当社グループは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義
接に結びついた課題に取り組んでいく決意が表明され、気候
に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念として
変動に関しては第 15 回国連気候変動枠組み条約の締約国
定款に定めております。当社の事業活動の本質は、この理念
会議(COP15)に向けて、すべての主要国が責任をもって次
のもと、未だ満たされていない医療ニーズの充足、高品質製
期枠組みに参加することの重要性が再認識されました。日本
品の安定供給、薬剤の安全性と有効性を含む有用性情報の
政府も温室効果ガスの中期削減目標を発表しており、持続
伝達によって患者様価値の増大をはかることであります。hhc
可能な社会の実現のために課せられた企業の社会的責任
理念の実践にあたっては、患者様とそのご家族、生活者の方々
(Corporate Social Responsibility :CSR)はますます重 要と
の顕在的なニーズにお応えすることはもちろんのこと、患者様
なっております。
ご自身もお気づきでない潜在的な欲求を理解し、それに対応
することによる「顧客歓喜」を実現したいと考えています。当社
エーザイのCSRに対する考え方
グループでは、社員一人ひとりが企業理念を理解し、日常業
務において実践できるよう、専門部署を設置し、実際に患者
エーザイグループのCSRに対する考え方は3つの側面があり
様のもとに赴き患者様の声にならない思いを知るための活動を
ます。第一に、明確な企業理念を持ち、これを全社員が理解・
推進しています。
(詳しくはP5 ∼ 6をご覧ください。
)このような
共有し、日々の事業活動を通じて企業に課せられた使命、すな
取り組みでのみ気づくことができる発見や患者様の思いを職場
わちステークホルダーズの皆様に対する価値創造を実践するこ
で話し合い、その思いに応えるために社員自らが何をすべきか
とです。企業理念は現代企業の行動の原動力であり、社会
を考え、行動することを事業活動の基本としております。
が大きく変革する時代にこそ企業の経営を正しい方向に導く指
針となりえるものです。第二の側面は、利益が正しい方法と適
かけがえのない地球環境保全への取り組み
切なプロセスにより生み出されているということです。
当社グルー
プの事業活動の最大の使命は患者様満足の増大であり、利
地球環境問題は人類が直面する喫緊の課題であり、企業に
益はその結果生み出されるものです。この使命と結果の順序
よる環境保全への積極な取り組みが社会からも強く求められて
が大変重要であると考えております。そして第三の側面は、社
おります。当社グループでは、地球環境の保護を重視した企
会の一員としてコンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々の
業活動を行うことを基本として策定された行動指針に基づき、
事業活動の根幹に据え、社会の期待に応えていくことです。
環境管理体制を整備して、環境保全活動を展開しております。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
国内主要生産拠点においては ISO14001の認証を取得し、その
ほかの事業所・グループ企業においても質の高い独自の管理
体制を構築し、継続的な活動とレベルの向上をはかっており
ます。また、事業活動における資源の投入と環境への負荷を定
量的に把握し、省資源と環境負荷削減に取り組んでおります。
特に日本経済団体連合会の「環境自主行動計画」に参加し、
地球温暖化対策および廃棄物対策に関して、数値目標を設定
し取り組んでおります。
環境・社会報告書 2009 の発行にあたり
『環境・社会報告書 2009』では、hhc理念に基づく活動をは
じめとし、2008 年度に実施した当社グループの事業活動の
社会的活動および環境保全に関する活動状況を紹介しており
ます。また、今年度の特集として、当社のhhc理念の紹介と
社員の声(P5 ∼ 8)
、自然環境や地域の方々との調和が具現
化された事例としての川島工園のご紹介(P27 ∼ 30)を掲載
させていただいております。巻末には、当社の活動に対する
患者様のご家族、医療従事者、環境オピニオンリーダーの方
からのご意見を頂戴し、ステークホルダーズからの声(P51 ∼
54)として紹介しております。
代表執行役社長 兼 最高経営責任者
(CEO)
今後もhhc企業をめざし、世界各国でCSR活動を推進し、
よき企業市民としてステークホルダーズの皆様の信頼の獲得に
努めてまいります。皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げ
ます。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
特集 1
なぜエーザイは
ヒューマン・
ヘルスケアを
追求するのか?
製薬企業最大の責任とは何でしょうか。
エーザイはこの問いに対して、ヒューマン・ヘルスケアという言葉で
社員一人ひとりの意識共有をはかり、事業活動を通じて
応えることを使命としています。
ア ン プ ル 、 バ イア ル に 貼 付 ラ ベ ル
エーザイのアンプルやバイアルの製品名ラベルは、
製品名部分が取り外し可能なシール状になっていて、
注射器や点滴の容器に直接貼付することができます。
これは医療機関で注射器や点滴の容器に製品を移
し替える際の取り違いを防ぐために行った工夫です。
製品を移した後でも製品名がわかりやすくなるため、
取り違いミスの防止につながっています。hhc理念に
基づくエーザイの取り組みの一つです。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
世の中変わります。
あなたは変われますか
です。患者様とそのご家族のために。相手を思
いやりさらに共感することは、相手の視線でみ
1989 年、経営トップから社員に投げかけら
つめ、こころを重ね合わせ、相手の気持ちを受け
れたある言葉は、社員の心に深く響き渡りまし
入れることなくして成し得るものではありません。
た。
「世の中変わります。
あなたは変われますか」
知創部主催の「現場体験研修」では介護・
で始まるエーザイ・イノベーション宣言は、私た
医療施設を訪問します。また、
「高齢者疑似体
ちのビジネスを、そして自分自身をも顧みるの
験」では、体におもりをつけ、高齢者の日常生
に十分なものでした。
活を体験します。患者様とともに時間を過ごした
私たちが事業活動を行う上でめざさなければ
り、生活を疑似体験することで、研究所やオフィ
ならないものは、患者様とそのご家族、生活
スでは見えないニーズを捉えようというものです。
者のベネフィット向上です。これを唯一の道標
知創とは「知識を創造する」ことです。知創
として、全社員が業務を遂行し、そして自分た
部では、社員一人ひとりのhhcに基づく「知」
ちの仕事に誇りを持ちたい。これがエーザイの
を結集し、組織として結実させる「hhcプロジェ
考えるヒューマン・ヘルスケア(hhc)です。エー
クト」も推進しています。hhcという共有化され
ザイの唯一の事業目的は、顧客である患者様
た財産の上に創出された、組織的なプロジェク
の価値を増大させることです。売上や利益は、
トを表彰しています。
患者様が満足を得られた結果によってもたらさ
エーザイはヒューマン・ヘルスケア(hhc)を
れると考えています。この目的と結果の順序が
追求しています。それはエーザイの原動力なの
大切であると考えています。
です。
理念を共有し、社員の原動力とする
◀現場体験研修
このhhc理念を全世界 1 万人を超えるエーザ
イグループ社員が共有し、組織として実現する
ために、
「知創部」という組織があります。
1997 年に創設された知創部は、hhcの社員
高齢者疑似体験▶
への浸透をグローバルに推進していく専任組織
〈
〈 エーザイの 企 業 理 念 〉
〉
1. 本会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽
本会社は、以下を旨としてステークホルダーズの
を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献
価値増大をはかるとともに良好な関係の発展・
することを企業理念と定め、この企業理念の
もとヒューマン・ヘルスケア
(hhc)企業をめざす。
維持に努める。
2. 本会社の使命は、患者様満足の増大であり、
その結果として売上、利益がもたらされ、この
使命と結果の順序を重要と考える。
3. 本 会 社は、コンプライアンス( 法 令と倫 理の
遵守)を日々の活動の根幹に据え、社会的責任
の遂行に努める。
4. 本会社の主要なステークホルダーズは、患者様
と生活者の皆様、株主の皆様および社員である。
① 未だ満たされていない医療ニーズの充足、
高品質製品の安定供給、薬剤の安全性と
有効性を含む有用性情報の伝達
② 経営情報の適時開示、企業価値の向上、
積極的な株主還元
③ 安定的な雇用の確保、やりがいのある仕事
の提供、能力開発機会の充実
定款(2006 年6月23日改正)第1章第 2 条より
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
患者様の 喜怒哀楽 を考える
社員一 人ひとりがh h c活動を実 践しています
エーザイの企業理念であるヒューマン・ヘルスケア(hhc)の考えの一つに「患者様の喜怒哀楽を考える」という言葉があります。
しかし、実際に患者様の喜怒哀楽を知ることは、簡単に成し得ることではありません。
患者様の声にならない思いを知るために、エーザイ社員一人ひとりがhhc活動に取り組んでいます。
研究
開発
患者様の中に飛び込む
生産
思いやりがhhcの原点
〉
〉
〉
〉
私は神経領域の創薬研究を行っていますが、研究者が患者様と接す
川島工場でボトル製品の製造ラインを担当している私は、日々の業務
る機会はほとんどありません。私は研究所を飛び出し、認知症患者様の
の中でhhcを感じています。たとえば、現状の設備や作業に満足せず、
デイ・ケア施設でアートセラピーのお手伝いをしています。患者様との会
さらに高品質な製品を安定的に供給するための改善点を常に考える、と
話や様子を直に感じながら、認知症のこと、薬のこと、地域医療のこと、
もに働く仲間のために作業環境を改善するなど、思いやりの気持ちから
医療スタッフの生の声など多くを学んでいます。たとえば、薬の副作用で
生まれる行動はすべてhhc理念に基づいたものです。また、患者様や生
めまいを起こし、患者様が不安そうに歩く姿を見て、副作用のない薬の
活者の方々からいただくお問い合わせやクレームも、製品改善のヒントと
大切さを改めて認識しました。
捉え、欠かさずにチェックすることも大切なhhc活動です。
筑波探索研究本部
バイオファーマコロジー部
伊野 充洋
川島工場 製剤部包装室
お客様
ホットライン
MR
求められている情報を自分から発信
〉
〉
患者様に「安心」を届けたい
〉
〉
現在、MR(医薬情報担当者:Medical Representative)として東京・
お客様ホットラインで社内外からのお問い合わせに対応しています。
品川区の開業医を中心に担当しています。私が注力しているhhc活動は、
心がけているのは、お問い合わせの先にいる患者様がもしも自分の家族
2009 年 1月から実施しているセミナーです。心房細動治療(薬物)のガ
だったら、自分が患者だったらという視点です。患者様からの薬の副作
イドラインが改定となり、当社の「ワーファリン」
(血液の抗凝固剤)の処
用や疾患に対する不安のお問い合わせに、こうした視点で丁寧にご説
方機会が増えることが予想されています。
このセミナーでは、
「ワーファリン」
明した際に「よいお薬を処方していただき、感謝します」というお言葉を
の安全な使い方を主に開業医の先生方に啓発し、製品の正しい情報を
いただきました。私たちが提供するすべての情報は患者様の安心につな
お届けしています。
がることを忘れず、一人でも多くの患者様に貢献していきたいです。
東京エリア 東京医薬五部
浜本 晋輔
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
荻田 恵梨
CJ部 顧客価値情報センター
医療用医薬品第 2グループ
内 藤 えり子
タイ
Never Stop Learning
中国
患者様の切迫する思いに応えたい
〉
〉
〉
〉
タイのエーザイで、広報活動やhhc活動を推進しています。hhc理念
中国のエーザイでは、2008 年 5 月に発生した四川大地震の際に現地
は医療に携わる企業の根幹であると考えています。また、昨今のビジ
の赤十字や行政機関を通じ、医療機関に救援物資を提供する活動に取
ネスでは、企業活動において様々なイノベーションが求められています。
り組みました。私自身も医師として救急の患者様を治療した経験があり、
イノベーションは新しいことを学びつづけることによって達成できます。
被災地の医療現場の状況や一刻も早く治療してもらいたいという被災者
Never Stop Learningーこれが私のモットーです。患者様や介護の方々
の方々の切迫する思いは容易に想像できたのです。今回の地震では多
の視点で考えることで新しい学びを得て、さらに多くの方々のQOLに貢
くの方々が被災されましたが、今後も中国でのhhc理念の実現をめざし、
献していきたいです。
一人でも多くの患者様・ご家族に貢献していきたいと思っています。
Eisai (Thailand) Marketing Co., Ltd.(タイ)
コーポレート・アフェアーズ・マネージャー
衛材(中国)薬業有限公司
アソシエイト・ナショナル・セールス・ディレクター
マリカ・フルクサラジュ
米国
日常に溢れる、hhc実現の機会
〉
〉
デービッド・チェン
欧州
イタリア文化の中のヒューマン・ヘルスケア
〉
〉
MRとしての日常的な業務では、患者様やそのご家族、医療従事者
私はイタリアで財務や総務、人事関係などを担当しています。日常業
の方々に貢献し、hhcを実現させる機会が溢れています。私は、院内で
務では、hhc企業らしい、働きやすい環境づくりを心がけています。イタ
の患者様向け勉強会のお手伝い、医療従事者団体の地域支部の設営
リアでは、助け合いの精神が特に浸透しており、お年寄りや子ども、困っ
の協力、院内ボランティアの実施など、アンメット・メディカル・ニーズを
ている人に対し手を差し伸べるのはごく自然なこととして受け止められてい
満たすため、あらゆる機会を活用すべく心がけています。情報提供や支
ます。これは世界の患者様のベネフィット向上に貢献するというhhcの理
援の方法はたくさんあると思いますが、患者様や介護者の方々が希望を
念にも通ずるものがあり、2009 年 4 月に発生したイタリア中部地震でも
感じてくださることが私の励みになっています。
すぐに仲間とともに救援活動を実施しました。
Eisai Inc.(米国)
シニア・メディカルセールス・スペシャリスト
キャロリン・ウェイバー
Eisai S.r.l.(イタリア)
財務・ロジスティクス担当ディレクター
ロベルト・ブラッティ
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
−研究 開発−
新しい価値のある
医薬品を開発するために。
常務執行役
チーフプロダクトクリエーションオフィサー
筑波研究所にて
患者様に貢献できる新しい価値のある医薬品を一刻も早くつくり、病気に悩む
患者様の生 命と
生活の質の
改善をめざした
研究開発。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
多くの人々にお届けすること。それが研究開発部門のめざすヒューマン・ヘルスケア
(hhc)です。エーザイでは、高い技術、先進的な科学を追求するとともに、患者様
が抱える課題や問題に対して、革新的な治療を提供することにより、患者様の
生命・生活の質を改善することをめざしています。そのためにグローバルな体制の
構築や患者様と接する活動を通して、未だ満たされていない医療ニーズの充足や
患者様のベネフィット向上に貢献する研究開発に取り組んでいます。
エーザイの
社会的活動
集中した研究開発領域
認申請・取得までの一連のプロセスをタイム
エーザイグループでは、未だ満たされて
リーに行うことに対し責任を負います。また、
いない医療ニーズが多く存在する、
「神経」
グローバル・クラスの能力を獲得、維持し、
「がん」および「血管・免疫反応」に集中
技術、運用、薬制などの面からサポートを行
した研究開発活動を行い、有効性、安全
う「コア・ファンクション・ユニット」が、それ
性、経済性に優れた医薬品の開発に積極
ぞれの経験・専門知識を活かしながら製品
的に取り組んでいます。
創出を推進します。このような社内ベンチャー
神経領域では、アルツハイマー型認知症
体制により、製品創出活動における生産性
に代表される神経変性疾患の新たな治療
の向上をはかり、患者様の様々な課題に対
もらうために社員が患者様やそのご家族の
薬の開発をめざすとともに、てんかん、神
する革新的治療薬の早期創出をめざします。
喜怒哀楽を考える機会を支援しています。
「ピンクハウス」でのボランティア活動風景
その取り組みの一つが、筑波研究所で実
経因性疼痛などその他の神経・精神疾患に
関する研究を着実に進めています。特にア
欧州の新社屋に「知」を集結
ルツハイマー型認知症に関しては、原因療
2008 年度に完成した欧州ナレッジセン
「ピンクハウス」でのボランティア活動です。
法を追い求め、低分子薬の開発、抗体医
ター(英国ハットフィールド)では、探索研
毎週 1 回「アートセラピー」に参加し、患者
薬やワクチンなどの免疫療法および原因遺
究、臨床研究、生産、マーケティング、欧
様の創作活動のお手伝いを行っています。
施している重度認知症患者デイ・ケア施設
伝子関連の研究など、多面的なアプローチ
州統括機能などを集約し、欧州地域での
また、臨床研究センターの社員を中心に
を推進しています。
事業展開における中核的な役割を担ってい
「臨床研究センター hhcカンファレンス」を
がん領域では、がん細胞の増殖阻害や
ます。それぞれの機能が相互に働き合いな
開催しています。
血管新生を抑制する低分子薬、抗体医薬、
がら、新たな知識創造活動を進めることで、
■ 2008 年 9 月
治療用DNAワクチンなど、抗がん剤開発に
新薬の創出、そして高い効率性と生産性を
NPO法人J.POSH(日本乳がんピンクリボ
向けた様々なアプローチを展開しています。
実現させることをめざします。
ン運動)副理事長・事務局長の松田寿美
さらに、がんにおける支持療法の分野での
子氏を特別講師としてお招きし、
「乳がん患
製品ラインナップの拡充も進め、がん領域
者様とそのご家族、医療関係者の悩み、製
の研究・開発を積極的に展開していきます。
薬企業に期待すること」をテーマに講演して
いただきました。約 270 人の社員が参加し、
プロダクト・クリエーションに
向けた新体制
「乳がんを製薬企業の社員としてではなく、
あなた自身や身近で起こる問題として捉えて
ほしい」というメッセージを受け取りました。
エーザイグループでは、2009 年 7 月から、
患者様の真実を理解し、患者様の生命・
欧州ナレッジセンターの外観
■ 2009 年 1 月
聖路加国際病院副院長 小児総合医療
生活の質を改善することを目的に、研究開
発体制を刷新しました。
患者様の喜怒哀楽を考える
センター長の細谷亮太先生を特別講師に
新体制では、強いリーダーシップのもと、
エーザイグループの事業活動の本質は、
お招きし、
「小児医療(小児がん)の現状と
神経、がんなどの各創薬領域に設置された
患者様やそのご家族に思いをはせ、その
課題」をテーマに、医師の立場から講演し
「プロダクト・クリエーション・ユニット」と呼
ベネフィット向上に貢献することです。この
ていただきました。製薬企業として何ができ
ばれる組織が新薬候補の発明・発見から承
理念を社員一人ひとりが共有し、実践して
るかを改めて考える機会となりました。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
くすりが生まれるまで
新薬が誕生するまでには、長くて厳しい道のりがあります。
新薬になりそうな候補物質の探索から、臨床試験や承認申請、審査など、
安全で、有効な薬を創るために、様々な過程を経ています。
基礎研究
非臨床試験
(2 ∼ 3 年)
(3 ∼ 5 年)
臨床試験/治験
(3 ∼ 7 年)
薬となる可能性のある新しい物質(候補
培養細胞や動物で、候補化合物の
非臨床試験を通過した候補化合物
の有効性や安全性を、ヒトを対象に
化合物)や成分を発見したり、化学的
有効性や安全性などを研究します。
に作り出す研究です。植物・動物・微
また、その物質の動態(吸収・分布・
確認する段階です。これは治験とも
生物などの天然素材から抽出するほか、
代 謝・ 排 泄 の 過 程 )や、 品 質、
言われ、病 院などの医 療 機 関で
合成、バイオテクノロジーなどの多様な科
安定性に関する試験も行います。
同意を得た方を対象に行われます。
学技術を駆使した手法が用いられます。
難治性小児てんかんの治療剤
米国で承認
ドロップタイプの
乗りもの酔い薬を発売
服用時のストレスを軽減し、ぶどう味は、お
2008 年 11 月、 米 国 で 抗 てん か ん 剤
乗りもの酔いを経験しているお子様の多
子様や従来の乗りもの酔い薬に抵抗がある
「BANZEL」が、4 歳以上の小児と成人の
くには、薬の持つイメージに対する抵抗感
方にも服用しやすくなっています。
レノックス・ガストー症候群(LGS)に伴うて
から、薬を服用せず、症状を我慢している
エーザイグループは、患者様と生活者の
んかん発作の併用治療薬として承認されま
ケースが見受けられます。
方々の様々なニーズにお応えする製品のご
した。LGSはもっとも重篤な小児期てんか
2009年2月に発売した
「トラベルミン チュ
提供に、今後も取り組んでいきます。
んの一つで、米国では、小児てんかん患
ロップぶどう味」は、一般用医薬品(OTC)
者様全体(14 歳未満では約 30 万人)の1
では初となるドロップタイプの乗りもの酔い
∼ 4%を占めています。複数の発作型を示
薬で、めまいや吐き気などの症状を予防、
ネグレクテッド・ディジーズに
対する取り組み
し、発作が頻回に発生することが特徴で、
緩和します。
有効な治療薬が開発されず、そのままに
LGS患者様の3 ∼ 7%が 10 年以内に死亡
されている病気「ネグレクテッド・ディジーズ」
すると言われています。本剤の承認取得に
という問題があります。
より、患者様に新たな治療のオプションを
シャーガス病はこの一つで、中南米では
提供することが可能となりました。なお、本
マラリアに次いで深刻とされる熱帯病です。
剤の開発を通じた取り組みは、2009 年 5
貧困層を中心に、2 千万人以上の方々が
月、米 国の 希 少 疾 患 患 者 団 体National
感染されていると推定されており、場合に
Organization for Rare Disorders (全米希
少疾患患者組織)により表彰されました。
口に含みやすいドロップタイプは、薬の
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
よっては心臓疾患を発症し、死に至ること
「トラベルミン チュロップぶどう味」
もあります。現在、慢性症状に対する治療
エーザイの
社会的活動
承認申請と審査
承 認と販 売
市販後調査・試験
(1 ∼ 2 年)
審査ののち、製造販売の承認を得ます。
実際に医療機関で多くの患者様に
有効性や安全性、品質を確認した
薬の価格「薬価」の決め方は国によって
使われることで初めて発見できる副
後、厚 生 労 働 省など各 国の規 制
様々ですが、政府によって価格が定め
作用や適切な使い方に関する情報
当局に承認の申請を行い、審査を
られる国が多数あります。日本では、
を継続的に収集します。その後の
受けます。
医療保険の対象となる医療用医薬品の
改良や次の新薬開発のヒントになる
品目と薬価は薬価基準制度に基づいて
こともあります。
厚生労働省により決められています。
参照:日本製薬工業協会ウェブサイトなど
薬はありません。
則)など、研究開発に関するすべての規制
動物福祉に配慮した動物実験
エーザイは国際的非営利医薬品開発
を遵守するとともに、hhc理念に基づく高い
エーザイにおけるすべての動物実験は、
団 体 で あるDNDi (Drugs for Neglected
倫理観を持って医薬品の研究活動を行っ
動物福祉に配慮して、厚生労働省の「動
ています。
物実験等に関する基本指針」に準拠し、
*
Diseases initiative )と、シャーガス病の
外部専門家を含む動物実験委員会の厳格
治療薬開発に対して、エーザイが創製した
抗真菌剤「ラブコナゾール」を提供すること
臨床試験における倫理
な審査を経て実施されています。2008 年
で、治療薬創出への協力を行っています。
新たな医薬品を開発するための臨床試
度も、動物実験の実施状況を自己点検・
* ネグレクテッド・ディジーズの現状を打開するため、2003
年にケニア中央医学研究所、インド医科学研究評議会、
オスワルド・クルーズ財団、マレーシア保健省、パスツー
ル研究所、WHO、国境なき医師団などが共同設立
験では、その医薬品を患者様にご使用いた
評価し、適正な実施を確認しました。
だき、有効性と安全性を確認します。臨床
これらの動物実験への取り組みは2008
試験においては、参加される患者様の人
年 4 月に発足した財団法人ヒューマンサイ
権や安全の確保、福祉に対する配慮が何
エンス振興財団の動物実験実施施設認証
高い倫理観に基づく研究活動
よりも優先されなければなりません。
センターより、厚生労働省の定める基本指
公正で正確な研究活動は、エーザイグ
エーザイグループは臨床試験の実施にあ
針に基づき動物実験を適正に実施している
ループの企業活動における基本です。
たり、ヘルシンキ宣言や薬事法、GCPなど
として評価され、認証を取得しました。
エーザイグループでは、GLP(医薬品の
の規制を遵守しています。また、社内治験
今後とも引き続き3R*の原則を踏まえた
安全性に関する非臨床試験の実施の基準)
審査委員会を設置し、臨床試験の倫理と
適正な動物実験の実施に努めていきます。
やGCP(医薬品の臨床試験の実施の基
科学的妥当性を審査するなど、治験におけ
準)
、ヘルシンキ宣言(世界医師会が採択
る倫理の確保に努めています。
* 3R: 使用する動物数の削減(Reduction)
、動物を用いな
い実験の可能性の追求(Replacement)
、動物の苦痛軽
減(Refinement)
したヒトを対象とする医学研究の倫理的原
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
−製品の安定 供 給 −
安心で安全な薬を
患者様にお届けするために。
執行役 デマンド・チェーン本部長
川島工場にて
「我々の造る一錠、一カプセル、一管が患者様の命とつながっている」
。この、
患者様視点に
立った
安定供給で
顧客歓喜を創る。
エーザイグループ品質方針に基づき、高品質な医薬品をグローバルに安定供給
するために、各地域に適合した品質保証体制の構築や、社外の有識者からの
評価を定期的に受ける仕組みづくり、パンデミックや偽造医薬品への対策などを
積極的に進めています。今後は特に、
供給(サプライ)からお客様の需要(デマンド)
に目を向け、顧客満足の増大、さらに患者様の潜在的な要求に応える顧客歓喜の
創出をめざしていきます。そのために、社員一人ひとりが高品質な製品の安定供給
に対する意識を共有し、実行しています。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
エーザイの
社会的活動
グローバルに品質を保証
世界中の「安全」のスタンダード
GxPの遵守
エーザイは、高品質な医薬品の安定的
エーザイグループはグローバルに展開し
医薬品の研究開発および製造において
な供給を通じて患者様に貢献するため、製
ている製品(臨床開発中の化合物を含む)
は、研究者や事業者が遵守すべき行動
剤技術研究(品質設計)から生産(製造品
について、その安全性情報を世界中で収
規範が様々に定められており、それらを通
質)そして流通(流通品質)を経て、患者
集・評価し、適切な対策を講じるために「医
例GxPと呼びます。たとえば臨床試験に
様が服用されるまでの品質確保に努めてい
薬品安全性監視に関するコーポレートSOP
おけるGCP(Good Clinical Practice)、
(標準作業手順書)
」を定めています。各
製造および品質管理におけるGMPなどで、
医薬品は人の生命・健康に直結してお
拠点がこのコーポレートSOPを遵守するこ
その遵守が求められます。エーザイでは、
り、均質な品質を保証する必要がありま
とで、各国・地域の関連する法令に従い、
GxP遵守を監視する専門機能を設け、専
す。そのためGMP(Good Manufacturing
必要な安全性情報が患者様・医療機関に
門家が世界各国の研究開発、生産および
Practice)と呼ばれる「医薬品の製造管理
迅速に伝達される体制を整えています。
販売に関わる拠点を定期的に監査し、G
および品質管理に関する基準」に則って製
この体制では、各地域および国レベル
xPの遵守を保証すると同時に、その標準
造することが求められます。
で安全性責任者を設置し、国レベルの責
化と向上をはかっています。
エーザイのグローバルな品質保証体制
任者が自国の医薬品安全性監視業務を行
の基本的な枠組みは、コーポレートQA
い、地域レベルの責任者がこれを統括して
ます。
(Quality Assurance : 品質 保 証 )機 能を
安定した生産体制の強化
います。こうして収集した安全性情報はデー
高品質の医薬品を患者様の手元まで安
軸として、日米欧アジアの各地域QA機能、
タベース化され、製品ごとに定められた安
定的にお届けすることは、私たち製薬企業
および、実際の製造を担当する工場のQA
全性評価の責任者により評価されています。
の使命です。そのために当社では、常に安
機能の3レベルの品質保証責任者で構成
さらに、各地域の安全性専門医師など
定した生産体制を築いています。
されています。各レベルの責任を明確にし、
でエーザイGlobal Safety Boardを組織し、
2008 年度は「アリセプト」の速崩錠(す
各地域/国により異なる規制要件を遵守し
臨床開発中の化合物を含む製品の医薬品
ぐに溶ける錠剤)と「パリエット」錠につい
ながら高品質の製品を提供することを保証
安全性問題を議論し、添付文書改訂の提
て、
工場をあげて増産対応をしました。また、
しています。
案などの意思決定をしています。
安定供給体制の強化のために、原薬(有
効成分)と医薬品の両方において予備の
グローバルな品質保証体制
製造ラインを確保することを目標としており、
現地法人・子会社
委託製造元
現地法人・子会社
地域QA
米国
地域QA
欧州
委託製造元
現在、英国とインドに自社の製造拠点の立
ち上げを行っています。
また、医療現場と患者様に貢献するため
に、識別性の向上と印刷不良の低減を目
エーザイ
コーポレート
QA
的に、自社開発のUVレーザーを用いたカ
美里工場
川島工場
現地法人・子会社
委託製造元
地域QA
アジア
地域QA
日本
鹿島事業所
ナ文字印刷を検討しました。2008 年 7 月
に国内「パリエット」10mg錠の生産で使用
サンノーバ
を開始し、2009 年にはソフトカプセルにも
委託製造元
導入する予定です。
QA:Quality Assurance
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
くすりが届くまで
高品質で安全な薬が患者様のもとに届くまでには、
いくつもの生産工程と品質・安全性のチェックが行われています。
ここでは、錠剤やカプセル剤の製造工程をご紹介します。
原料入庫∼計量
造粒・整粒
充填・打錠
混合
厳密な計量で 1 粒 1 粒に効き目を
いくつもの検査を経て薬の姿に
長い研究開発を経て創られた薬は、工場
で製品化されます。薬の主成分となる原
薬は正しい効き目を発揮するために、必要
な量が正確に計量されます。その後、固ま
りやすくするために添加物などとともに混合
し、均一に主成分が入った顆粒にします。
顆粒は、その後の工程を経て錠剤やカプ
セル剤になります。錠剤の場合は、顆粒
に圧力をかけて錠剤の形にし、さらに薬の
苦味などを防止するために砂糖の入った
液などで錠剤をコーティングします。一方、
カプセル剤は、顆粒を直接カプセルに充填
カプセルには1粒1粒に適量の薬
します。また、各製造工程においても品質 を注入してロックをしていきます
のチェックを行います。
製造工程では人為的ミスをなくす
ために材料は無人搬送車で運び
ます
偽造医薬品対策
いる地域においては、有効性、経済性を
爆発的な病気の流行への備え
偽造医薬品とは、意図的または詐欺目
考慮した上でホログラム技術を利用した偽
パンデミック(新型インフルエンザなど感
的で医薬品名や製造・販売元が偽表示さ
造防止ラベル、カラーシフトなどを包装に取
染症の世界的大流行)や大規模災害など
れている医薬品のことです。包装が偽造で
り入れる対策が2007年8月に終了しました。
の非常事態への対策として、エーザイは
あるもの、有効成分が含まれていない、あ
「アリセプト」以外の品目についてもノース
2006 年 7 月から日本、米国、欧州、アジ
るいは量が正しくないものなどがあり、見分
カロライナ工場、蘇州工場などにおいてすで
アの各地域で製品の在庫量を増やしてきま
けるのは困難なのが現状です。
に対応を終了しました。現在、台南工場、ボ
した。現在では、2 ∼ 3カ月分の在庫量を
エーザイグループでは偽造医薬品に対し
ゴール工場についても随時対応を進めていま
常に確保しており、非常事態発生時も製品
て、もっとも影響が大きいと想定される「ア
す。また、日本からアジアや中東諸国などへ
を安定して供給できるように備えています。
リセプト」を第一優先品目として対策を進め
輸出している医薬品についても2008 年 8 月
また、2008 年 度には、生 産 部 門を中
てきました。日本以外の工場から供給して
の生産よりホログラムの対応を開始しました。
心にプロジェクトを発足し、新型インフル
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
エーザイの
社会的活動
我々の造る一錠、一カプセル、一管が患者様の命とつながっている
エーザイグループの品質方針
印刷・包装
PTP包装
流通、そして患者様へ
外装
製品となった薬は、いくつもの
品質検査を経て、出荷され、よ
出荷
うやく患者様の手元に届きます。
エーザイでは、患者様のために
高品質で安全な薬を、早く届け
るための生産物流体制を築いて
います。
患者様が使いやすい薬として
錠剤やカプセルになった薬は、何の薬か見分けがつくように、1粒1粒に数字や
記号を印刷し、さらに大きさがそろっているか、印刷がきちんとされているかなど
をチェックする外観検査を行います。こうして創られた薬は包装工程に送られま
す。一般に多く使用されているPTP包装(Press Through Package /押して取
り出す包装)などが行われます。包装時にも、決められた数量の錠剤やカプセ
ル剤がボトルやPTPシートに入っているかどうかの検査が行われ、不良品は取
り除かれます。包装された薬は必ず添付文書とともに箱詰めされていきます。
PTP包装からダンボールの箱詰め
まで1つのラインで製造しています
エンザの大流行を想定した事業継続計画
流通管理におけるICチップの活用
また、医療現場での取り違えなどの防止
(Business Continuity Plan:BCP)の策 定
国内の医療用医薬品の流通では、
ICチッ
対策として、バイアルやシリンジなど調剤包
に着手しました。
プ付梱包ラベルの導入を進めています。製
装単位にもICチップ付ラベルを貼付するこ
また、2009 年度の新型インフルエンザ
品の情報を保存したICチップを埋め込んだ
とを検討し始めており、造影剤「イオメロン
発生時には、工場に勤める全従業員に対
ラベルを梱包箱に貼付し、流通の効率化や
シリンジ」で導入が決定しています。
しての出社前検温や、工場内でのマスク
流通経路のトラッキング強化をはかります。
着用をはじめ、工場従業員の外出・出張
現在、睡眠導入剤「サイレース錠1mg、サ
制限、工場内への入場規制などを実施しま
イレース錠2mg」および麻酔導入剤「サイ
した。こうした対策によって、感染を防止し、
レース静注2mg」の梱包箱で導入が開始さ
医薬品の安定的な製造と供給に努めてい
れています。今年度中に、国内医療用医薬
ます。
品全製品に導入を開始していく計画です。
包装箱に貼られたICチップラベル。
中央がチップの心臓部分
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
−情報提供−
患者様視点に立った
情報を提供するために。
常務執行役
日本事業本部担当 日本事業本部にて
医薬品が安全かつ有効に使用されるためには、適正な量や副作用、効能など
正確な情報の提供が不可欠です。このため当社では医薬情報担当者(MR)
、
正しい情 報を
より早く
患者様のもとへ。
お客様ホットライン、
ウェブサイトなど様々なチャネルを通した情報提供・収集を行って
います。また、hhc理念のもと、コミュニティ・ネットワーク支援室を設置し、社会の
皆様が疾患への理解を深めることなどを通じて、
「病気になっても安心して暮らせる
まちづくり」
をめざす活動に取り組んでいます。さらに、
ジェネリック医薬品のラインナッ
プを増やすなど、患者様の様々なニーズにお応えする取り組みを強化し、一人でも
多くの患者様や生活者の皆様へ貢献するための活動を継続していきます。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
エーザイの
社会的活動
情報提供活動の充実
お客様の声と製品改善
ウェブサイトでの情報提供
医薬品が効果を発揮し、患者様の医療
エーザイでは、お客様のご質問やご指摘
当社では医療従事者と一般生活者の
ニーズに応えるためには、正しい情報が提
に迅速に対応するために、365日フリーダ
方々向けに、それぞれウェブサイトでの情報
供されなければなりません。当社では、医
イヤルでお客様ホットラインを設置していま
提供を行っています。
薬情報担当者(Medical Representative:
す。こうした取り組みによって、1990 年の
「 医 療 関 係 者 の みなさまへ 」
(http://
MR)
、お客様ホットライン、ウェブサイトの
発足時からの累計で 87 万件以上のお問い
www2.eisai.co.jp/)では最新かつ正確な
3つを中心に幅広く情報提供・収集を行っ
合わせをいただいています。2008 年度は
製品情報や製品の変更に関するご案内など
ています。
8万6,260件のお問い合わせをいただきまし
を掲載しています。さらに、薬剤師の方々
さらに今後のグローバルなマーケティング
た。お客様ホットラインに寄せられたご意見
向けのコンテンツや、お問い合わせの多い
活動を展開するにあたって、各エリアをつな
やご質問は、重要な情報として、関係部署
製品についてのQ&Aを掲載しています。
ぐグローバルマーケティング体制を一層強
に共有され製品の改善に反映しています。
一般生活者向けには、
「肩こり・腰痛倶
化し、より質の高い情報を適切に伝達する
たとえば、ドロップタイプの乗りもの酔い
楽部」
(http://www.nabolin.com/)や
体制を充実させています。
薬「トラベルミン チュロップぶどう味」は錠剤
認知症に対する理解を深めるウェブサイト
また、各エリアにおいてもアルツハイマー
の乗りもの酔い薬をお子様が飲みやすいよ
(http://www.e-65.net/)など、一般用医
病協会や専門医への支援、ならびに疾患
うに、いつもすり潰して飲ませているという、
薬品の製品ブランドサイトや、疾患につい
啓発活動を通して、患者様とそのご家族、
保護者の方のご意見から誕生したものです。
介護者、生活者の方々に対して関連情報
の提供を行っています。
てわかりやすく解説したウェブサイトを開設
しています。セルフチェックができるコーナー
お客様ホットラインへのお問い合わせ件数
や、普段の生活における注意点や専門医
(件)
90,000
からのアドバイスなど、製品情報だけではカ
81,516
86,260
エーザイのMRの役割
75,000
MRの仕事は、主に病院や薬局に従事す
60,000
ます。また、一部の製品についてはモバイ
る医療従事者に医薬情報を提供することで
45,000
ルサイトも開設しています。
す。医薬品の効果を示す「有効性情報」と
30,000
副作用などに関する「安全性情報」の両面
15,000
から情報収集・提供を行っています。副作
0
バーしきれない内容についても網羅してい
72,385 72,464 75,000
7,387
1990
2004
2005
2006
2007
2008
用などが発生した場合には、関係部署に
速やかに報告し、迅速に適切な対応ができ
お客様ホットラインへのお問い合わせ内容の内訳
る仕組みになっています。
さらに、エーザイのMRは医療機関への
その他
一般用医薬品
1,637件
21,805件
(1.9%)
(25.3%)
情報提供・収集を行うだけでなく、一般の
方々に向けて医師会や行政と連携して疾患
啓発を目的としたフォーラムを開催。患者様
86,260
件
やそのご家族の潜在的な医療ニーズの収集
医療用医薬品
や情報の提供も積極的に実施しています。
(72.8%)
62,818件
「肩こり・腰痛倶楽部」のウェブサイト
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
“顧客歓喜”をめざした活動
求を満たす製品、情報、サービス、ネットワー
が患者様にやさしい「まち」の実現をめざし
エーザイグループは、hhcを実践するた
クをパッケージで提供し、hhc理念を実現し
ています。
めに患者様の顕在化した欲求を満たすこと
ていきます。
活動の第一弾として、アルツハイマー型
で得られる顧客満足だけでなく、潜在的な
認知症治療剤「アリセプト」を販売する製
欲求を知り、それに応えることで得られる
薬企業の立場から、
「認知症になっても安
顧客歓喜(CJ:Customer Joy)の実現を
心して暮らせるまちづくり」を支援していま
めざしていきたいと考えています。こうした
す。たとえば、認知症フォーラムなど認知症
潜在的な要求を知るためには、患者様とと
への理解と受診の促進のための啓発活動、
もに過ごす実体験のプロセスが重要になり
保健・医療・福祉関係者と協力した介護マ
ます。
ニュアルの作成、早期診断支援システムの
そのための専任組織として、エーザイで
CJ部発足宣言をする内藤社長
開発と普及を通じたかかりつけ医と専門医
の連携の支援など、患者様を取り巻く社会
は2009 年 4 月に「CJ部」を新設しました。
CJにつながる実体験の場の構築と推進や、
患者様が安心して暮らせるまち
環境を整備するお手伝いをしています。
CJを創出するテーマの推進、社外からの
エーザイでは、2008 年度に病気を抱え
今後、これらの経験を生かして、骨粗しょ
お問い合わせ対応、社内の情報発信・共
た患者様が安心して暮らせる「まちづくり」
う症、関節リウマチ、心房細動などについ
ても、活動を展開していきます。
有、集約された情報から製品改善に迅速
を支援するコミュニティ・ネットワーク支援室
につなげることなどを担っています。
を発足しました。地域住民が患者様の抱え
今後はCJ部がけん引し、患者様や生活
る疾患を理解している「まち」
、病気になっ
者の皆様の真の声を理解し、潜在的な欲
ても早期診断・治療が可能な「まち」
、地域
認 知 症になっても安心して暮らせるまちづくり
思い出せない
徘徊してしまう
不安
恐怖
地方自治体や患者様・
介護者のネットワークづくり
早期発見・治療に向けた
診断・治療ネットワークづくり
● 受診管理
● 検診システム
● 病気の気づき
エーザイが取り組む「まち」づくり
● 家族のチェック
市民フォーラムの
実施
● 住民の理解
● 住民が認知症を理解している「まち」
● 認知症になっても早期診断・
治療が可能な「まち」
● 地域が患者様にやさしい「まち」
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
エーザイの
社会的活動
フォーラムで認知症の理解を推進
ことなく、胸やけなどの自覚症状に苦しまれ
や、発症時の対処方法を知ってもらうことが
2009 年 2 月、東京・目黒区のめぐろパー
ています。エーザイでは、この逆流性食道
大切と考え、この活動を進めています。
シモンホールにて「寄り添う心、支える社
炎に対し、新聞広告、専用ウェブサイト開設、
会」をテーマに、認知症フォーラム(主催:
無料小冊子配布、院内ポスターや患者様
バリアフリーな情報提供
NHK厚生文化事業団、NHKエンタープライ
指導せんの提供などにより疾患啓発活動を
患者様ご自身が疾患や治療などについて
ズ、後援:厚生労働省ほか、協賛:エー
展開しています。
の知識を深め、医療従事者とのコミュニケー
ザイ、ファイザー)が開催されました。
またこれらには、国民的キャラクターであ
ションを高めるツールとして、
「患者様向け
このフォーラムは、たとえ認知症になって
る「鉄腕アトム」を起用。患者様の消化器
指導せん」の提供を行っています。この取り
も住み慣れた家で家族とともに生きられる
疾患と薬剤に対する関心と理解を高め、医
組みの中で、全国で約 30 万人と言われる
地域、働きながら自分らしく生き続けられる
療従事者とのコミュニケーション向上に役
視覚障がいのある方々へ、従来は資料の
社会について、認知症患者様のご家族や、
立つことを期待しています。
一部を点字にして提供していました。
しかし、
治療・介護に関わる方々と一緒に考えること
実際は視覚障がいのある方々の約 90%は
を目的としており、当社の認知症啓発活動
点字を利用できず、医療現場では口頭で
の一環として継続的に開催されています。
お伝えしていることがわかりました。
フォーラムには、認知症治療に関わる医
そこでエーザイでは、専用の活字文書読
師や看護師、介護の専門家などがパネリス
み上げ装置により文章を「音声」として聴く
トとして参加し、VTRを交えながらパネル
ことができる2 次元コード(音声コード)付き
ディスカッションを行いました。
の「患者様向け指導せん」の提供を開始し
2008 年度はこのほか、京都でも認知症
ました。切手サイズのバーコードの中に、日
フォーラムを開催し、合わせて1,000 人以
本語で最大1,000文字分の情報を盛り込む
上の方々にご参加いただきました。
ことができます。
逆流性食道炎チェックリスト
この取り組みは、製薬企業の中で初の試
みとして、2006 年より開始しました。現在
血栓症の市民公開講座を開催
認知症フォーラム 2009
では約 20 種類の音声コード付きの「患者
血栓塞栓症の予防と治療に関する啓発
様指導せん」を提供しています。今後もす
を目的に、日本血栓止血学会との共催で
べての患者様にとって読みやすく、わかりや
2005 年から継続的に「市民公開講座」を
すい医薬品情報のバリアフリー化を推進し
開催しています。重要な臓器である脳、
心臓、
ていきます。
肺に起こる血栓塞栓症は致死率が高く、救
音声コード付き
患者様指導せん
命されても患者様のQOLを著しく低下させる
逆流性食道炎の啓発活動
上、
ご家族にも負担をかける重篤な疾患です。
逆流性食道炎は、日本で近年増加傾向
「ワーファリン」
(血栓塞栓症の治療、予防
にあり、未治療のケースが大変多いと言わ
に用いられる抗凝固剤)
を製造販売するエー
れています。しかし、疾患としての認知は
ザイとしては、医療従事者への情報提供を
低く、多くの患者様が適切な治療を受ける
徹底するとともに、一般生活者にも予防法
音声コードリーダー
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
−企業統治とコンプライアンス−
経営の透明性を
高めるために。
公正で透明な経営
築による自律性を確保して、経営の活力を
ます。
エーザイグループは、経営の活力が増大
増大させています。
具体的には、グループ企業すべてに適
し、経営の公正性が確保されるとともに経
社外取締役が過半数を占める取締役会
用されるグローバルな内部統制ポリシーお
営の透明性が向上するシステムの整備を、
は、執行役の業務執行全般の監督に専念
よび内部統制基本規程などを制定。日本、
コーポレートガバナンスの要諦と位置づけ
し、経営の公正性を確保しています。
米国、欧州、中国、アジア・大洋州・中東
て、これを実現するための施策を継続的に
加えて、当社は経営に関する重要な情
の各地域における内部統制システムの整備
実施してきました。
報について、適時、適切に、わかりやすく、
と、グループ企業の内部監査部署と連携し
当社グループのコーポレートガバナンスの
アクセスしやすい方法で開示するとともに、
た内部監査を実施しています。
機軸は、委員会設置会社であることを最大
ステークホルダーズの皆様とのよいコミュニ
特にグループ全体に内部統制マインドを
限に活用した経営の監督機能と業務執行
ケーションに努めています。
浸透させるため、各地域を統括する組織と
の連携を深め、内部統制に関わるグローバ
機能の明確な分離であり、それを徹底する
ための独立性・中立性のある社外取締役
グローバルな内部統制の実践
ルな委員会等を通して、各地域の内部統
の選任にあります。
当社グループでは、内部統制システムの
制システムの整備を推進することに重点を
経営と執行の分離において、取締役会
整備をグローバルに推進する「内部統制推
置いています。
から執行役へ意思決定権限の大幅な委任
進部」と客観的な評価機能を有する「内部
をしており、執行役は業務執行の機動性と
監査部」を設置して、全役員および従業員
内部統制の自己評価
柔軟性を高めつつ、同時に内部統制の構
が内部統制の整備、実践に取り組んでい
内部統制の目的には、①財務報告の信
頼性、②業務の有効性・効率性、③コン
プライアンス、④資産の保全の4つがありま
コーポレートガバナンス体制
す。これらに関しては、継続的に状況改善
株主総会
をはかるために、毎年CSA(Control Self
取締役会 11 名(社外 7 名、社内 4 名) 議長:社外取締役
日常的なリスクを発見し、統制活動の改善
業務決定の大幅委任
経営監査部
監査委員会監査
監査委員会
Assessment:統制自己評価)を実施し、
指名委員会
報酬委員会
社外取締役独立委員会
を行っています。
また、①財務報告の信頼性に関しては、
取締役会事務局
金融商品取引法における「内部統制報告
制度」への対応を企図し、会計監査人との
監査委員会監査
連携
連携のもと、財務報告に関わる内部統制シ
執行部門
ステムの整備を進めています。連結対象会
代表執行役社長兼CEO
社の責任者および各部門長が財務報告に
執行役会
関わる内部統制に関する内部宣誓書を提
会計監査
会計監査人
内部統制担当執行役
内部統制推進部
内部監査部
執行役
CEOおよびCFOが内部統制報告書を承認
各部門・国内外子会社
内部統制システムの構築・内部監査
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
出し、内部統制担当執行役の確認を経て、
する組織的な取り組みを行っています。
エーザイの
社会的活動
コンプライアンス体制
コンプライアンス情報の共有
コンプライアンス・カウンター
日々の企業活動の中では様々な判断が
コンプライアンスに関しては、トップ・マネ
コンプライアンス・カウンターは、社員が
求められますが、その基本となるのがコンプ
ジメントに対する役員研修をはじめ、部門
法律の解釈などコンプライアンスに関して判
ライアンス(法令と倫理の遵守)であると考
別、新任組織長、新入社員など対象者を
断に迷った場合や、自分自身の行動や上
えています。当社グループでは、企業理念
絞った研修や、リスク・アセスメント研修(社
司、同僚の行動がコンプライアンスに則っ
の中にコンプライアンスを盛り込み、さらに
員一人ひとりがコンプライアンス・リスクを抽
ているか疑問を感じた場合の社内相談窓
それを定款に定めて、企業活動の根幹とし
出し、社外弁護士を交えてグループディス
口として、2000 年 4 月に企業倫理推進部
ています。この考えのもと、コンプライアン
カッションにより分析・評価する研修)
、受
と社外の弁護士事務所に開設されました。
ス推進を統轄する執行役であるチーフ・コ
講者の時間に合わせて受講できるコンプラ
2008 年度に企業倫理推進部が運営するコ
ンプライアンス・オフィサーのもとに企業倫
イアンスe-ラーニング(インターネットを用い
ンプライアンス・カウンターが受けた問い合
理推進専任部署を日本、米国、欧州に設
た研修)など、様々な取り組みを実施して
わせの総件数は 874 件(月平均 72 件)で
置し、グローバルにコンプライアンス活動が
います。
した。コンプライアンス・カウンターは、社
推進されています。
さらに全世界の社員が同じコンプライアン
員にとって身近な相談窓口になっています。
当社グループのコンプライアンス活動は、
ス・マインドで活動できるよう、ビジネスの
さらに、2006 年 4 月には、コンプライア
コンプライアンス委員会により、定期的にレ
基本となる「ENW企業行動憲章」や考え方
ンス・カウンターに相談しにくいケースでも
ビューを受けています。コンプライアンス委
を示した「ENW行動指針」を定めています。
社員が相談しやすいように、社外相談員が
員会は、日米欧の各エリアの弁護士やコン
これらを『コンプライアンス・ハンドブック』と
運営する社外相談窓口「ガイディア」が設
サルタントなど、社外専門家からなる諮問委
して13カ国語で発行し、全世界の社員で
置され、コンプライアンスを充実するための
員会であり、厳しい客観的なレビューを行う
共有しています。
環境を整備しています。
とともに、チーフ・コンプライアンス・オフィサー
に適切な助言を行っています。
内部統制推進体制
コンプライアンス推進体制
代表執行役社長兼CEO
代表執行役社長兼CEO
内部統制担当執行役
内部統制推進部
グループ企業
(米国)
グループ企業
(欧州)
チーフ・
コンプライアンス・
オフィサー
内部監査部
グループ企業
(日本)
グループ企業
(中国)
グループ企業
(アジア・
大洋州・中東)
エーザイ株式会社
企業倫理推進部長
グループ企業
(日本)
グループ企業
(中国)
米州統括会社
コンプライアンス・
オフィサー
助言・勧告
コンプライアンス
委員会
欧州統括会社
コンプライアンス・
オフィサー
グループ企業
グループ企業
(アジア・
(米国)
大洋州・中東)
グループ企業
(欧州)
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
−人材活用−
働きやすい環境の整備と
hhcを実践する人材の育成。
社員は重要なステークホルダー
働きがいを生むための環境整備
きるプログラムを整備しています。業務上
エーザイは、定款第 2 条に企業理念の
エーザイでは採用、昇格・昇進、配置、
必要な知識・技術の習得などをサポートす
条文を設け、エーザイの実現したい姿を社
能力などにおいて、多様な機会を提供して
るため、各国のニーズに応じて、ビジネス
内外に対して明確にしています。条文では、
います。社員一人ひとりの働き方を尊重す
スクール、ロースクールや各種外部短期資
主要なステークホルダーズを患者様と生活
る制度として、社員のライフプランの選択肢
格取得コースなどへの派遣も行っています。
者の皆様、株主および社員であると規定し、
を拡大する諸制度や育児支援制度を積極
また、グローバルなヒューマン・リソース・
ステークホルダーズの価値増大をはかるとと
的に提供し、能力を十分に発揮できる環境
マネジメント戦略を担う専門組織を設置し、
もに良好な関係の発展・維持に努めること
整備に取り組んでいます。
国境を越えた人材交流やジョブローテー
としています。その中でも社員に対しては、
加えて、就労環境を定期的に点検し、
ションを促進するシステムの構築、国際レ
安定的な雇用の確保、やりがいのある仕事
社員がより安全で健康に働けるよう職場環
ベルでのリーダーシップ研修制度の導入な
の提供、能力開発の機会を充実することを
境の向上に努めています。
ど、社員のグローバルなキャリア開発に積
表明しています。
また、健康保険組合や企業年金基金の
極的に取り組んでいます。
また、当社では社員を自ら企業価値を高
健全な運営により、社員が安心して働くこと
めることができる唯一のステークホルダーで
ができる環境を整えるとともに、国内外エー
国際展開を支える人材育成・交流
あると考えています。エーザイグループの1
ザイグループ企業においても、各国の状況
エーザイグループでは2006年度∼2011
万人を超えるすべての社員が企業理念を
に応じて保険パッケージの提供や個人の年
年度の6年間にわたる第Ⅴ期中期戦略計画
共有し、日々の事業活動を通じて企業理念
金プログラムへのサポートを整備しています。
(ドラマティック リープ プラン)のコンセプト
の実践に取り組むことをめざしています。そ
である「ベストな人による ベストな場所での
のために、社員の個性と意欲を尊重して能
社員の能力開発・キャリア開発
ベストなストラクチャーでの価値創造」を実
力開発をはかるとともに、すべての社員が
エーザイグループでは社員が新たな知識
現するために、グローバル人事ポリシーや
誇りを持って前向きに仕事に取り組める職
を創造することで自己成長を遂げ、継続的
リーダーシップモデルなど、人材育成や人
場づくりを進めています。
に業務の革新を生み出すために、社員一
材活用に関するガイドラインを策定しました。
人ひとりが自発的に自己変革をすることがで
このガイドラインに則り、国や地域を越え
エーザイの主な福利厚生
転勤社宅制度
福祉共済会
給付・貸付・レクリエーション
助成事業など
育児短時間
勤務制度
育児に専念するため
子どもが満 6 歳に達した
次の3月末日までの期間、
短時間勤務ができる制度
独身寮
3 5 歳までの独身者が入居できる寮
持株会
社員の財産形成および
生活安定のための制度
新婚社宅制度
結婚後 5 年間入居できる社宅
財形貯蓄
社員の財産形成および
生活安定のための制度
リフレッシュ
休暇制度
4 0 歳・5 0 歳で2 週間連続で
休暇を取得できる制度
給食施設
事業所に給食施設を設け、
昼食を提供
介護休職制度
介護を行う必要のある社員が
一定期間休職できる制度
ドナー
休暇制度
社員がドナーとなった場合、
休暇を取得できる制度
保養施設
社有保養所 2カ所、提携保養施設全国多数
介護短時間
勤務制度
介護を行う必要のある社員が
一定期間短時間勤務できる制度
ボランティア
休暇制度
数日のボランティアを行った場合、
休暇を取得できる制度
育児休職制度
育児に専念するため子どもが
満 3 歳に達する日まで休職できる制度
看護休暇
制度
看護が必要な子女が出た場合、
年間 5日まで休暇を取得できる制度
医務室
転勤者家族が入居できる社宅
本社・研究所・工場に医務室完備
(定期的に医師在勤)
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
エーザイの
社会的活動
た、積極的な人材交流に向けた仕組みや
企業内企業家の創出
て、お互いに刺激し合い切磋琢磨すること
グローバル規模のリーダーシップ研修を整
エーザイグループでは、日本、米国、欧
を基本として設計されています。
備し、実施しています。これらの諸施策によ
州、アジアの全地域のマネージャーを対象
2008 年に日本で行われた第 1 期E-elite
り、当社の国際展開を支えるグローバル人
に、第Ⅴ期中期戦略計画の実現と、今後
Japanでは、エーザイと国内グループ企業
材の育成をさらに加速させています。
の継続的な社の成長を支える人材の早期
から24 人の選抜メンバーが参加。9つの
育成を目的とした「E-elite」
プログラム
(Eisai
モジュールに1 年を通して取り組みます。
グローバルなリーダーの育成
Emerging Leaders In Talent Evolution
2007 年度、グローバルリーダーの育成を
Program)を実施しています。
人権に配慮した職場づくり
目的とした人材育成プログラム「E-GOLD」
E-eliteプログラムは、企業内において新
国内エーザイグループでは、人権を尊
(Eisai-Global Opportunity for Leadership
規ビジネスや新たなスキームを立ち上げる
重し、差別のない働きがいのある職場づく
Development)がスタートしました。
責務を負うことができる企業家精神とスキル
りに向けて、人権研修を継続実施していま
2 回目の実施となる2008 年度は全 25 人
を有した「人財」
(企業内企業家=イントラ
す。2008 年度は各種ハラスメントをテーマ
のメンバーが各地域・機能から参加。プロ
プレナー)の創出を目的としています。
に、セクハラ、パワハラなどの背景にある差
グラムは日本でのキックオフ会議を皮切り
プログラムは参加者が、
外部の企業家や、
別意識や差別形態の多様化などについて、
に、米国ビジネススクールでのリーダーシッ
講師陣、プログラムの同期生との交流によっ
事例や視聴覚教材も活用して合計 48 回実
プ研修や参加者の目標設定に対する担当
施し、総計で 3,837 人が参加しました。
部署での360°
評価など、5つのモジュール
また社内ウェブサイト「人権の窓」に世界
で構成されており、約 1 年間をかけて行わ
人権宣言や啓発標語などの人権関連記事
れました。
を年間 9 回掲載し、年間 10,797 回のアク
E-GOLDプログラムはグローバルなリー
セスがありました。
ダー意識の育成はもちろん、各国・各部署
からの参加者たちと交流することで、一人
ひとりのモチベーションと参加者同士の一
E-eliteプログラム
体感を高める貴重な機会となっています。
& NQMPZFF*OUFSWJFX
「エーザイの革新力を高める E-eliteプログラム」
E-GOLDプログラム
地域営業チームのリーダーに昇進が決
このプログラムは、現在も継続中です
定した際、E-eliteの参加者に選ばれまし
が、参加者全員と機能を超えた活発な交
た。プログラムで学んだコミュニケーショ
流を通じて切磋琢磨し、自らが掲げる目
ンスキルを生かし、チームメンバーと組織
標達成に向けて、組織を巻き込み創造す
の方向性やビジョンの共有をはかることが
る「企業内企業家」へ変革していきたいと
できました。
考えています。
また、トップマネジメントや他部署の社
員との交流により、グローバルな観点や社
の将来ビジョンについての理解を深めるな
どの刺激を受けています。
Eisai, Inc.(米国)
リージョナル・セールス・ディレクター
ブレント・ジョンソン
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
−社会貢献活 動 −
ヒューマン・ヘルスケア企業としての
社会への貢献。
社会の中のエーザイグループ
研究者に対する研究の場の提供、研究会
一先生は、1994 年にブラジルでの医療協
エーザイグループは世界のヘルスケアの
の実施、シンポジウムの開催、委託研究
力のため、国際協力機構(JICA)のプロ
多様なニーズを充足するために事業活動を
の実施、
機関誌『医療と社会』の定期刊行、
ジェクトのチームリーダーとして参加されまし
行い、いかなる医療システム下においても、
研究助成ならびに研究成果の刊行を主な
た。テーマは、現地で大きな問題となって
存在意義のあるヒューマン・ヘルスケア企業
活動としています。
いた「消化器の出血性疾患ならびにエイズ
感染症に対する技術協力」です。
となることをめざしています。
治療薬の提供を超えて人々の暮らしや
医療における功労者を表彰
山本先生を含むプロジェクトメンバーは、
健康をサポートする「疾患啓発活動」
、未
国内外では、困難な医療環境のもとで、
ブラジル人医師たちに日本の最新医療技
来の医療レベルの向上に向けた研究活動
地域住民のため、長年医療に従事し、顕
術の伝達や医療機材の提供を行い、同国
を支援する研究所や財団の運営支援を中
著な功績をあげた方々がいます。こうした
内における医療格差の是正に努めました。
心とする「医学の発展に関する活動」
、医
方々にスポットを当て、表彰する「医療功労
また、当時多数のエイズ発病者への対
薬に関する博物館の無料公開を中心とした
賞」
(主催:読売新聞社、後援:厚生労
策として、死因の首位を占める合併真菌感
「地域社会での取り組み」など、本業であ
働省、日本テレビ放送網)に、当社はhhc
染症を制圧するため、医療機材の提供や
る「薬」を中心に、様々な社会貢献活動に
理念と合致した重要な社会貢献活動とし
診療技術の向上に注力し、サンパウロ周
積極的に取り組んでいます。
て、1986 年の第 15 回より協賛し続けてい
辺地区でのエイズによる病院死を半減させ
ます。
ることに成功しました。
基礎研究を奨励・支援
2009 年 3 月16日には、第 37 回医療功
従来、人類の疾病の予防と治療に関す
労賞の表彰式が東京・帝国ホテルにて執り
歩けば歩くほど社会貢献
る自然科学の基礎研究は、欧米諸国に依
行われました。国内部門では、難病患者
エーザイでは、厚生労働省科学研究へ
存することが多くありました。そこで当社は、
様のケアや、離島、山間、豪雪地帯など
の協力としてウォーキングマイレージを実施
1969 年に基礎研究を奨励し、学術の振興
自然条件との戦いを強いられる現場などに
しています。これは、ウォーキングが健康
および人類の福祉に寄与することを目的に、
おける地域医療に長年取り組んでこられた
維持・改善に与える影響を科学的に調査す
内藤記念科学振興財団を設立しました。
方々16 人が受賞しました。
るとともに、歩いた歩数に応じて参加者が
内藤記念科学振興財団では、わが国に
表彰式終了後には受賞者の方々が、皇
選んだ団体に会社が社会貢献活動の一環
優れた研究者が誕生することを願い、研究
居にて天皇、皇后両陛下より長年の労をね
として寄付するシステムです。
助成や海外留学助成など多彩な助成事業
ぎらうお言葉を受けられました。
社員の健康維持や増進とともに、社会
を行うとともに、特定研究領域の第一線の
海外部門の受賞者である医師の山本惠
貢献をすることができる合理的な仕組みと
研究者が最新の情報を発表する「内藤コン
なっています。
ファレンス」を毎年開催しています。
2008 年度は歩数実績ポイントが 200 万
円となり、世界自然保護基金、セーブ・ザ・
幅広く研究の場を提供
チルドレン、国際連合世界食糧計画の3 団
医療科学研究所は、当社創業 50 周年
体に寄付しました。
記念事業の寄付を基本財産に、1990 年
に設立されました。医療経済研究を中心と
した医療に関する学際的研究を主軸とし、
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
「医療功労賞」表彰式
エーザイの
社会的活動
日本初のくすりの博物館
内藤記念くすり博物館(くすり博物館)
は、国内初の薬に関する総合的な資料館と
してエーザイの創業者・内藤豊次によって
1971 年に開設されました。現在の収蔵資
料は約 6 万 5 千点、図書が約 6 万 2 千点
におよび、医薬に関する史・資料の収蔵と
「江戸に学ぶ からだと養生」企画展
市民講演会
しては、わが国有数となっています。
また、
くすり博物館の前庭には約 7,000m²
により多くの方々に薬を身近に感じていただ
した。
からなる薬用植物園が併設されており、約
くことができました。
参加した保護者の方々などからは、
「正
600 種類の薬草・薬木が栽培されています。
2009 年度は「江戸に学ぶ からだと養
しい知識を持たずに薬を服用してしまう時
くすり博物館の収蔵資料は医療関係者の
生」と題して、江戸時代の蘭学関係、解剖
があり、学童の時から薬の正しい知識を与
研究に役立てるとともに、一般来館者に対
図、医学翻訳書や養生書などの資料を紹
えることは大切」など、くすり教育に対する
しても薬に対する正しい知識の普及を目的
介しています。当時の人々が体や健康につ
前向きな声が多く寄せられました。
に無料で公開しており、年間 4 万 5 千人の
いてどのように考えていたのか、また体をい
来館者があります。
たわり長生きするためにはどのようなことを
近代化産業遺産として認定
行っていたのかを探ります。今の時代にも
くすり博物館は、2009 年 2 月、経済産
通じる、当時の健康管理についてわかりや
業省より近代化産業遺産として認定を受け
すく解説しています。
ました。
近代化産業遺産とは、幕末から昭和初
内藤記念くすり博物館
地域社会に開かれた博物館
期にかけての産業近代化の過程で、今日
くすり博物館は社会に開かれ、地域の
の「モノづくり大国・日本」の礎として、また
人々に親しまれる博物館をめざしています。
今日の基幹産業のルーツとして大きな意義
ボランティアの方々と一緒になって開催する
を持っている建造物・機械・文書などの資
薬草園フェスタ、夏休みの親子教室、小学
料が対象となります。
毎年、企画展を開催
生を対象にしたわくわく体験など、年間を通
認定を受けたくすり博物館の資料は、く
くすり博物館では、毎年企画展を開催し
して、地域の多くの人々が集う様々なイベン
すり看板・くすり広告・製薬道具・はかり道
ています。2008 年度は「くすりの夜明け ̶
トを開催しています。
具および医薬品と衛生道具です。これらは、
近代の薬品と看護̶」をテーマに企画展を
こうした活動に加え、2008 年度は、
「く
「先人のベンチャー・スピリットが花開き、
開催しました。
すりに対する正しい知識は子供のときから」
多岐に発展した化学工業の歩みを物語る
この企画展では、近代から戦前にかけて
(後援:岐阜県薬剤師会、各務原市教育
の薬品、効能書、診断器具、看護用品、
委員会)をテーマに市民講演会を主催しま
衛生ポスターなどを展示し、先人たちがど
した。講師には東京薬科大学・加藤哲太
のような努力を積み重ね、薬品を創製して
教授をお迎えし、くすり教育の意義や教材・
きたかをご紹介しました。こうした取り組み
教育方法などをわかりやすくお話いただきま
近代化産業遺産群」として認定されました。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
特集2
川島
工園
ヒュー マン・ヘ ルスケアと
環 境 が 共 生 する 場 所
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
人の、企業の営みとは、
何でしょうか?
人は自然とともに生きている 。そのことを社
会がともすると軽んじた高度成長の時代。
エーザイは命に貢献するという使命と、世代
を超えて残すべき自然に思いを馳せて研究・
生産環境のあり方を考えました。
「地域環境にできるだけ手を加えず、自然の
中で社員が働くような施設をつくりたい」。エー
ザイの創業者・内藤豊次は、米国で視察した
緑に囲まれた製薬工場に感動し、理想の工場
づくりを構想しました。
そして出会ったのが、黒松の森と木曽川の
清流に恵まれた岐阜県各務原市。1964年に
エーザイは14万坪の用地をこの地に取得し、
「緑豊かな工場にする」、
「工場排水は自ら浄
化して木曽川に還す」など、生態系保護や地
域生活との調和を工場の構想段階から意識し
ました。
こうして川島工場は1966年に開所し、
「公園
のような工場」という建設の理想を表わす 川
島工園 の名称が与えられました。今日でも建
ぺい率は20 %以下を保ち、開所当時と変わら
ない森の緑と野鳥たちが、医薬技術の進歩を
静かに見つめています。
川 島 工 園 (かわしま こうえん)
製薬工場内であることを忘れるかのような
木々に囲まれた静謐の中、木曽川へ還元
される水が一時的に貯められる池には、エー
ザイの理想が浮かぶ。エーザイの生産・研究
施設である川島工園は、製薬企業として環境
との向き合い方を考えた一つの応えとして、
今も「工園」であり続けている。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
木 曽 川 の 水 を 生 か し、黒 松 の
川 島 工 園は 研 究 開 発 施 設と製 造 施 設を
併せ持ち、
「内藤記念くすり博物館」などの一
日本庭園
処理場で浄化された排水が流れ込む
3つの池と美しい緑が広がる日本庭園。
ここを経由して、排水は木曽川に還元
されます。
設計に永遠の繁栄を祈願する中国の
蓬莱思想が取り入れられた第二池に
は、
エーザイがめざす理想の象徴であ
る蓬莱島が浮かび、
手前の石は夢に向
かって進むエーザイ社員を乗せた船を
表しています。
また、
池の周囲には四季
折々の草花が美しく植えられています。
般 市 民との交流の場も持つ複 合 施 設です。
工場では開所当時には珍しい原薬製造から包
装までの一貫生産を行い、生産の効率化を牽
引してきました。現在は、医療用医薬品やビ
タミンEの原薬など27品目を生産しています。
またアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプ
ト」のFDA(米国食品医薬品局)の製造承認を
受ける、グローバルな生産拠点でもあります。
川島工園が開所当初から取り組んできた
のは、医薬品の生産工程で使用する大量の
水を、責任を持って浄化して自然に還し、豊か
な自然環境を守るということです。工場排水
は国の排水基準の10分の1以下にまで浄化さ
れ、日本庭園内の池を通って木曽川へと放流
されます。また、
「木を一本切ったら、三本植
えよ」という内藤豊次の思想を受け継ぎ、自ら
の手で黒松の苗木を育成しています。
2000年からは環境負荷の低減と省エネに
貢献するコ・ジェネレーションシステムを導入。
そのほかにも焼却炉の廃止、伐採樹木の有効
利用など全方位から環境配慮を推進し、創業
者の想いを新しい技術を用いて継承していま
す。こうした資源の有効利用における取り組
みが評価され、川島工園は2008年、3 R推進
功労者等表彰において「厚生労働大臣賞」を
受賞しました。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
排水処理施設
製剤棟、
研究所、
食堂などからの排水
を活性汚泥法によって処理し、
清浄な
水にする設備です。処理能力は1日あ
たり、
1,000t。万が一、
地震などによって
漏水があった場合でも、
すぐに確認が
できるように高床に設計されています。
排水中の有機物は微生物の働きで分
解された後、水質自動計測器によって
水質を確認し、
日本庭園の調整池を経
由して外部へと放流されています。
森 を 守 る こと か ら 始 まりました。
黒松の育成
黒松は旧川島町(現・各務原市)の町
木として親しまれてきましたが、近年の
開発や樹齢によって、本数が激減して
います。
川島工園内には約3,000本の黒松があ
り、
その保護育成のために苗田を設置。
黒松と松枯れに強い抵抗松を育て、川
島工園内で植林しています。
また、
病気
で倒れてしまった木は、
テーブルやベン
チとして再利用されています。
内藤記念くすり博物館
国内初の薬に関する総合的な資料館
として1971年に開設した博物館です。
6万点以上の薬に関する資料や所蔵品
を収蔵するほか、
図書館も併設し、
入場
無料で一般に開放されています。
2008年には開設からの累計来場者が
125万人を突破しました。
また、近接す
る薬草園では約600種類の薬草を栽
培し、約100人の地元のボランティアの
方々の協力により管理されています。
排熱利用
発電に使った排熱を利用し、電気と熱
を取り出して暖房や給湯等に利用す
る天然ガスのコ・ジェネレーションシス
テム
(ガスタービン:6,000kW×1)
を
2000年に導入しました。
平均的な火力発電所の運転効率は
40%程度ですが、川島工園では電気
と蒸気の効率的なバランスを模索し、
70%を超える非常に高い運転効率を
実現しています。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
−エーザイの環 境 活 動 −
地球環境に配慮した
事業活動。
執行役 信頼性保証・環境安全担当
エーザイ本社会議室にて
エーザイグループでは、当社グループで定めた環境方針に基づく環境管理体制
地球環境や
限りある資源
なくしては事業は
成し得ません。
のもと、役員および社員が環境基本理念を共有し、各事業所・企業単位で環境
保全活動を展開しています。国内主要生産拠点においては、ISO14001 の認証を
取得し、そのほかの各事業所・企業では独自の管理体制を構築し、継続的な活動
とレベルの向上をはかっています。
そして、資源の投入と環境への負荷を定量的に把握するとともに、地球温暖化
防止、廃棄物削減とリサイクルの推進、化学物質の適正な管理と使用量削減、
グリー
ン購入など、環境負荷低減への取り組みを進めています。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
エーザイの
環境活動
資源投入と環境への負荷
企業活動では、必要な資源を投入することで、環境への負荷が発生します。
エーザイグループでは、事業活動全体での環境負荷の把握に努め、
継続的な負荷削減に取り組んでいます。
数値の見方
電気(MWh)
0,000 +
国内エーザイグループの資源投入と環境負荷
エネルギー
電気(MWh)
105,436 + 19,054
124,490
都市ガス(千Nm3)
13,132 + 1,052
14,185
水
ジクロロメタン(t)
3
そのほか
トルエン(t)
容器・包装使用量(t)
103 + 14
2,982 + 89
353 + 0
189 + 0
820 + 28
117
3,072
353
189
848
コピー用紙
購入(万枚)
灯油(kℓ)
2 + 51
3,384 + 786
53
A重油(kℓ)
購入蒸気(t)
11 + 193
37,984 + 0
204
主なPRTR法該当物質(届出量)
水の使用量(千m )
LPG(t)
…エーザイ
… 国内グループ企業
… 国内エーザイグループ *1
0,000
0,000
4,171
資源の投入
製品を研究・開発・製造・販売
するために必要な資源
37,984
国内エーザイグループの
事業活動
様々な資源を使って
患者様に製品を提供
総発生量(t)
7,095 + 1,178
8,273
リサイクル量(t)
その結果、地球に排出されるもの
排水量(千m3)
環境への負荷
2,641 + 76
2,717
BOD(t)
10.2 + 0.3
5.0 + 1.2
3,143
10.5
6.2
最終埋立量(t)
COD(t)
リン(t)
ばいじん(t)
16.4 + 1.4
1.3 + 0.0
17.9
1.3
*2
CO2(t)
窒素(t)
2,771 + 372
NOx(t)
ジクロロメタン(t)
74,987 + 10,835
営業用車両の
CO2(t)
業務用車両の
CO2(t)
SOx(t)
3.1 + 0.7
0.2 + 0.3
4,662 + 612
57 + 206
2.4 + 0.0
38
3.8
0.6
5,275
263
2.4
水系への排出
車両からの排ガス*3
0.73
トルエン(t)
26 + 12
廃棄物
0.73 + 0.00
85,822
0.59 + 0.00
0.59
大気への排出
*1 端数処理のためAとBの合計値が Cと合致しない項目があります。
*2 CO2 排出量はエネルギー使用によるもののみ。
*3 国内エーザイグループの国内における医薬品の物流や配送については、エーザイ物流が担っていますが、同社は主に流通の管理や物流センターの管理を行っており、
輸配送はすべて外部の業者に委託しています。エーザイ物流の業務用車両は輸配送には一切使用せず、社内用にのみ使用しています。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
− 環境マネジメント−
地球環境への配慮を
推進する仕組み。
環境基本理念
エーザイネットワーク企業(ENW*)環境方針
エーザイグループでは、1997 年に「エー
ザイ環境方針」を制定し、2002 年に「エー
環境基本理念
ザイネットワーク企業(ENW)環境方針」と
して改訂しました。継続的な改善のもと、
ENWは、地球環境の保護を重視した
企業活動を行い、環境保全に努めます。
これに基づく環境管理体制を構築してきま
した。全社員が環境基本理念を共有する
環境行動指針
とともに、各事業所・企業単位で環境活動
かけがえのない地球環境を守るため、従業員一人ひとりが「自然の尊さ・
大切さ」に思いをめぐらせ、企業活動を行います。
製品の研究・開発から製造、流通、販売、使用、廃棄に至る全ての段
階において、環境保全を最優先します。
て、社員一人ひとりが、このENW環境方
環境管理体制を整備し、環境保全活動を推進します。
針を理解し、日々の業務の中で実践するこ
環境関連法、規則および協定の遵守はもとより、さらに厳しい自主基準
を定めて活動します。
とに努めています。この環境方針は、海外
科学技術の進歩を積極的に採り入れ、最先端の環境負荷低減技術を確
保します。
ます。
すべての企業活動において、省資源・省エネルギー、廃棄物削減およ
び再利用に努めます。
環境管理体制
環境に影響を及ぼす化学物質の使用量削減、除去を推進し、環境汚染
の未然防止に努めます。
全従業員が環境基本理念を共有するとともに、各職場で求められる専門
性強化をはかる教育訓練を計画的かつ継続的に実施します。
環境保全に関する方針、目標、プログラムおよび実績などの情報を、積
極的に開示します。
* エーザイネットワーク企業=エーザイグループ企業
を展開しています。
世界中で事業を行うグローバル企業とし
の各拠点にも配布し、全社員が共有してい
エーザイには、環境に関連した重要事項
の審議・決定機関として「全社環境安全委
員会」
(年 4 回開催)が設置されています。
一方、国内グループ企業の環境管理推
進体制としては「国内ENW環境安全協議
会」があります。
国内主要生産拠点では、ISO 14001の
認証取得を完了しています。各事業所で
環境管理体制図(2008 年度)
は、環境関連会議を定期的に開催するな
社長
ど、主体的な管理・推進体制を築きつつ、
環境安全担当執行役
グループ全体での継続的な活動とレベルの
環境安全部
向上をはかっています。
全社環境安全委員会
専門委員会
全社省エネ検討会
全社廃棄物検討会
グリーン購入推進者会
国内ENW環境安全協議会
専門委員会
ENW省エネ検討会
ENW廃棄物検討会
自主性をめざした環境教育
「一人ひとりの自覚と行動で、かけがえのな
い地球環境を守ろう」
各事業所
国内グループ企業(12 社)
環境関連会議
各企業関連会議
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
海外グループ企業(39 社)
国内エーザイグループが掲げたこのス
ローガンは、社員一人ひとりに当事者意識
エーザイの
環境活動
2008 年度の環境リスクに関する事例と対策
環境リスク
事業所名/企業名
筑波研究所
漏洩
内 容
対 応
ターボ冷凍機の冷媒フィルタードライヤ配管のねじ込み部よ
り冷媒漏洩があった。
①冷媒フィルタードライヤ配管ねじ込み部の再施工を実施。
②毎月冷媒漏洩検査の実施を行う。
ターボ冷凍機の凝縮器液溜冷媒出口冷媒配管、オスアダ
プタ継手ねじ込み部および、圧縮機2段ケーシング歯車室
の組立部からの冷媒漏れが発生した。
①凝縮器液溜冷媒出口冷媒配管、オスアダプタ継手ねじ込み部の再施工の実施。
②圧縮機2段ケーシング歯車室の組立部分解、Oリング取替及び組立実施。
③継手部の一部フランジ化、毎月冷媒漏洩検査の実施を行う。
三光純薬
茨城事業所
生産研究棟の屋上にて空調設備の屋外機から冷媒(R22) 定期的な業者点検を計画中。
が漏洩した。
美里工場
糖衣廃液を充填した150ℓポリドラム3 本をアルミパレットに
載せ、リーチフォークで運搬中、雨で濡れたパレットから2本
ポリドラムがズレ落ちた。
その衝撃でドラム蓋が外れ、内袋の結束バンドも外れ、充
填した糖衣廃液がJセンター前のトラックヤードに流出した。
設備環境安全室・エネルギーセンター・環境資源センターの応援の下、流出廃液の回
収と洗浄、側溝から工場外への流出を防ぐため、河川への水門を閉めた。遊水池に
一時貯めた廃液洗浄水は、ポンプで排水処理施設へ送り、活性汚泥処理を行ったた
め、外部への環境影響はなかった。
を持って、地球環境を重視して業務に取り
は、ボストン研究所で 2008 年 10 月、環境
働災害・事故発生報告および集計基準」を
組んでもらいたいという、エーザイグループ
に関するフェアを開催しました。仕事や家
策定しており、迅速な対応で被害を最小限
の考えを象徴しています。
庭でのリサイクルについて掲示などで紹介し
に抑えるとともに、再発防止策を講じるよう
エーザイグループでは、各事業所・グルー
ました。さらに、省エネ製品やエコ商品を
にしています。
プ企業単位での自主的な計画・管理・活動
従業員に紹介し、 商品を通じてエコにつ
をめざしています。
いて考える という、新たな試みを推進して
環境と安全の点検巡視
その一つとして、各事業所・企業ごとに
います。その取り組みの一環として、低価
エーザイグループでは「ENW環境・安全
環境教育担当者を育成し、環境教育担当
格のコンパクト蛍光灯の販売や、買い物用
点検巡視規定」に則り、環境安全担当執
者による、それぞれの事業特性・課題に沿っ
に無料でエコバッグの配布を行いました。
行役の点検・巡視と、事業所長の自主内
た環境教育を実施しています。環境教育担
また、中国の事業会社・衛材(中国)薬
部監査を実施しています。海外では、法
当者は、それぞれが所属する組織における
業有限公司においては、新規雇用者や環
規制の把握・遵守状況、
「ENW環境方針」
環境活動をリードし、社員に浸透させます。
境責任者など受講対象者を変えて、廃棄
に基づく環境管理活動の実施状況などを
一方で、新入社員の全体研修、MR新
物処理についてなど、様々な環境教育の機
確認しています。
人研修や新任組織長研修などの機会を活
会を設けています。2008 年度は合計で 22
2008 年度は、エーザイ15 事業所、国
用し、全社的に環境安全研修を行っていま
回の研修を実施しました。
内グループ企業7社
(8事業所)
、
海外グルー
す。また2008 年度は、筑波研究所で「地
プ企業 8 事業所の点検・巡視を実施。31
球温暖化の現状と温室効果ガス排出削減
環境リスク回避対策
事業所のいずれにおいても、緊急かつ重
の取り組み」をテーマに講演を行い、自主
国内エーザイグループでは、漏洩事故な
大な問題はありませんでした。
的に集まった約 60 人が参加。階層や職種
どの緊急事態を想定し、定期的な訓練と
に合わせた研修を行うことで、より深い理
準備を行っています。
解をはかっています。
万が一事故が発生した場合の対応として
グローバルでの社員の環境教育として
は、
「ENW災害・事故対応マニュアル」
「労
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
−地球温暖化 防 止 −
省エネや新エネルギーの
導入によるCO2 の削減。
2008年度のトピックス
廃熱利用のヒートポンプ
各工場に導入を検討。
製造品質と地球環境配慮の両立
なアイディアや取り組みを共有しています。
国内エーザイグループでは、数値目標を
また、各事業所内には環境担当者がお
設定して、CO2 排出量削減による温暖化
り、省エネ部会を事業所別に開催。省エ
防止に取り組んでいます。2007 年度から
ネに対するアイディアの募集や、取り組み
の励行などを行っています。
省エネ検討会では、CO2 削減の新たな取
は「2008 年∼ 2012 年の平均値を1990 年
り組みを 2007 年度から模索してきました。
レベルにする」こととしました。
美里工場でのエネルギー転換を最後に、
製薬業界では、製造段階のみでなく製
省エネ診断を実施
品・原料の保管でも製品の品質を保つた
国内エーザイグループにおける2008 年
そこで浮上したのが、従来のボイラー熱利
め、GMP(P14をご覧ください)などの基
度 のCO2 排 出 量 は、85,822トンでした。
用に代わって、エネルギー効率の高いヒー
準に沿って、一定の温湿度管理を行う必要
2008 年度の特徴的な成果としては、工場
トポンプの技術を利用した空調への置き換
があります。このため、省エネルギー化にあ
および研究所や事業所に対して新技術の
たっては高いハードルがあるのが現状です。
導入検討を企図した、省エネ診断を行いま
エーザイグループではこうした課題を解決
した。
しながら削減目標を達成するために、年 3
2009 年度はこの省エネ診断の結果に
回関連会社を含む全事業所の環境担当者
よって得られた改善策を各施設で順次実施
が集まる「省エネ検討会」を実施し、新た
し、その効果を検証していきます。
新たなエネルギー転換の施策を検討し始め
ました。
えです。筑波研究所では、すでに導入を
開始しており、そのほかの各工場・研究所
での実 地 検 証も終え、2009 年 度からは
順次導入していきます。
美里工場は前年度比
6.2%の削減を達成。
美里工場では、2007 年8月に、A重油か
CO2 排出量の推移
ら都市ガスへのエネルギー転換とボイラー
(t)
100,000
を更 新しました。 同 工 場での 2008 年 度
エーザイ
のCO2 排 出 量は 前 年 度に比べて93.8%
87,026
と、6.2%の削減を達成。エネルギー転換
によってCO2 排出量削減に大きく貢献して
79,492
80,000
います。
12,073
84,899
10,897
88,125
10,744
国内グループ企業
85,822
10,835
11,627
国内エーザイ
グループの
CO2 排出削減目標
60,000
51,658
7,082
74,953
74,002
77,381
74,987
2005
2006
2007
2008
40,000
2008年∼2012年の
平均値を
1990年レベルにする
67,865
44,575
20,000
0
1990
2004
(年度)
注)2007年度データは、経団連「環境自主行動計画」に基づき、CO2 排出量を算定しておりますが、目標年度および係数の見直しがあり、
これに基づいてCO2 排出量を変更しました。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
エーザイの
環境活動
効率的なエネルギーへの転換
グリーン購入
エーザイでは、CO2 排出量削減の取り組
国内エーザイグループでは、
「グリーン購
みの一つとして、製造拠点でのA重油から
入に関するエーザイガイドライン」を定め、
都市ガスへの燃料転換(第一次燃料転換)
グリーン購入を推進しています。2008 年度
に取り組んでいます。2007 年 8 月の美里
のグリーン購入率は 32%で、前年度比 1%
工場を最後に、エーザイ本体すべての、第
の減少となっています。
一次燃料転換は完了しました。
施設を循環するヒートポンプ
今後は、機械設備の老朽化に伴う更新
快適厨房コンテストで特別賞
などに合わせ、さらにエネルギー効率の高
効率をあげることで省エネになり、CO2 排
いものへと転換を進めていく予定で、第二
出量に換算すると、試算では年間約 156ト
「電化厨房フォーラム21」
(運営:東
次としては、都市ガスから電気への転換を
ンの削減が見込めます。
京電力株式会社)が主催する「快適厨
房コンテスト2008」で、筑波研究所が
順次実行に移していきます。
特別賞を受賞しました。
自然エネルギー
2008 年度エネルギー内訳
(国内エーザイグループ、原油換算)
A重油
購入蒸気
206(0.4%)
980(2.1%)
灯油
50(0.1%)
LPG
都市ガス
電気
46,365
153(0.3%)
16,395
受賞の理由として、審査員からは、省
エーザイは、日本自然エネルギー株式会
エネ、衛生・安全対策がしっかりされて
社のグリーン電力証書システム*設立当初か
いることなどが評価されました。
らグリーン電力購入プログラムに加入してい
ます。2008年度は、94
万 9 千kWhのグリーン
◀筑波研究所の
社員食堂
電力を購入しました。
(35.4%)
28,581
(61.6%)
(単位:kℓ)
* 風力、バイオマスなどの自
然エネルギーにより発電さ
れた電力を、企業の環境
対策に利用する仕組み
受賞式の様子▶
廃熱利用と水加温で排出削減
エーザイグループでの電力消費は、生産
& NQMPZFF*OUFSWJFX
工場に続いて、研究所での消費も少なくあ
りません。研究所では、実験機器などを使
用するため、機器の熱負荷に対しては通年
「省エネのアイデア募集に 40 の提案が集まりました」
川島工園では省エネ検討、推進や啓
アは考えるだけでも、一人ひとりの省エネ
発を目的として、エネルギー有効利用委
意識を向上させることができます。今後
での空調管理をする必要があります。
員会を設け、社員から実施済み省エネ提
も素晴らしいアイデアにめぐり逢えるまで、
筑波研究所では、空調システムに廃熱
案を募集してきました。しかし、最近では
募集を継続していきます。
の利用と加温への工夫をすることで、空調
簡単に実施できるような省エネ提案も少な
くなり、提案の応募数が伸び悩んでいま
での省エネに取り組んでいます。施設内を
した。事務局としても、何とかこの壁を越
循環する水を利用し冷房時は室内の熱を
えようと2008 年度はアイデアレベルでも
奪い循環水へ放出、暖房時には、循環水
応募可能として募集をしたところ、約 40
件もの提案が集まりました。省エネアイデ
川島工場 設備環境安全室
安富 祥式
の熱を使って暖房効果を生んでいます。熱
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
−廃棄物削減 −
エーザイの2010 年度
ゼロエミッション計画。
2008年度のトピックス
2010 年度ゼロエミッション計画
法を改善し、汚泥を処理する際の薬品の
国内エーザイグループでは、限られた
種類や添加物などを見直したことで、最終
川島工園が 3Rで
厚生労働大臣賞を受賞。
資源を有効活用するため、2010 年度に
的な廃棄物発生量を大幅に削減しました。
「最終埋立量/廃棄物発生量の比率」を
2008 年度もこの処理方法を踏襲し、さら
リデュース・リユース・リサイクル推進協議
1%未満に抑えることを目的に「2010 年度
に廃棄物発生量の前年比を下回ることがで
会が毎年実施する「リデュース・リユース・
ゼロエミッション計画」を策定しています。
きました。
リサイクル推進功労者等表彰」において、
その実現に向けて①廃棄物発生量の削減
2008 年度の厚生労働大臣賞に川島工園
が選ばれました。今回で 17 回目を迎えた
この表彰は、3Rに率先して取り組む個人
②最終埋立量の削減 ③リサイクル量の拡
ゼロエミッションを達成
大に取り組んでいます。
国内エーザイグループでは、
「2010 年度
ゼロエミッション計画」を達成するために、
や事業所などを対象とした歴史ある制度で
す。川島工園の環境への取り組みはP2730 で特集しています。
廃棄物業者の見学会で
社員意識の向上。
本庄事業所をはじめエーザイおよび国内
エーザイグループ企業の一部では、廃棄
廃棄物は前年の 95%に削減
事業所単位で廃棄物発生量、
リサイクル量、
国内エーザイグループにおける2008 年
最終埋立量の目標数値を年度ごとに段階
度の廃棄物発生量は、前年度比 95%に削
的に設定しています。
減されました。
2008 年度は、グループ全体で最終埋立
2007 年度は、これまで廃棄物発生量の
量/廃棄物発生量の比率が0.46%となりま
4 割以上を占めていた有機汚泥の処理方
した。これにより、2010 年度に予定してい
物処理を行う工場への見学会を実施してい
ます。社員が実際の廃棄物処理現場に立
廃棄物とリサイクル、最終埋立量の推移
ち会うことにより、さらなる意識の向上と廃
(t)
15,000
棄物処理に対する理解を深めています。
最終埋立量/廃棄物発生量の比率
最終埋立量 太数字:廃棄物発生量
リサイクル量
2.5
2.5%
グラフ左:エーザイ グラフ右:国内グループ企業
12,707
2.0
12,000
10,611
3,388
9,536
2,944
9,000
1.5
7,634
2,771
7,095
1.2%
1.1%
3,007
6,000
2,771
1.0
0.9%
3,000
0.5%
2,165
1,780
476
210
1,519
514
74
124
25
122
1,178
1,070
370
18
90
330
372
17
26
12
0
2004
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
2005
2006
2007
0.5
2008
0
(年度)
エーザイの
環境活動
き、達成したことになります。今後もさらな
廃棄物処理委託先とともに
進めるリサイクル
る廃棄物削減と、ゼロエミッション計画達
国内エーザイグループでは、廃棄物処理
成の継続に向けて取り組んでいきます。
にあたり、リサイクルを推進している企業を
オフィスでのペーパーレス化
優先的に選定し、業務を委託しています。
エーザイではオフィスにおいても、廃棄物
るゼロミッション計画を2006 年度に引き続
た後に、全社環境安全委員会で審議の上
で契約するというプロセスを取っています。
リサイクルとリユース
また、各事業所・グループ企業では、廃
削減の取り組みを進めています。各事業所
廃棄物の最適化のためには廃棄物の
棄物担当者会などを通じて、廃棄物処理
においては、両面コピーを推奨するポスター
発生量を削減しつつ、リサイクル、リユー
委託先についての情報を共有しています。
のコピー機やプリンター付近での掲出、ゴ
スへの取り組みを行うことが不可欠です。
2008 年度は、最終埋立量が 2007 年度よ
ミの分別強化のための色分け式リサイクル
国内エーザイグループでは、取り組みの
りも69トン減少しました。
BOXの設置、廃棄量実績のフィードバック
など、紙資源をはじめとした廃棄物のリサイ
一環として金属、廃油、紙類などの有価物
の売却処分を推進しています。試験機器な
廃棄物処理委託先の現地確認調査
クル・分別を積極的に推進しています。
ど、そのままリユースできる物品については、
国内エーザイグループの各工場では、廃
また、一部の国内グループ企業では、
売却ルートを探し、それができない鉄くず、
棄物処理の委託契約先企業に対して、作
会議で使用する資料の電子化を始め、ペー
食堂の廃油などは有価売却やリサイクル処
業状況や適正に廃棄物処理が実施されて
パーレス化をめざしています。
理を行っています。
いるかを確認するため、収集・運搬、最終
また、社員が分別廃棄の意識を持つこと
処分における委託先企業の現地確認調査
で、リサイクルの推進につなげています。
を実施しています。
調査には、国内エーザイグループ共通の
試薬保冷剤の再利用
調査表を使用し、直接現地を訪問して行っ
筑波研究所では、2008 年から冷蔵試
ています。
薬の購入時に、梱包されている保冷剤を
また、不法処理防止のために、新規契
再利用することに取り組んでいます。保冷
約先に対しては、現地確認調査を実施し
鹿島事業所での分別の色分け表示
剤は24 種類、年間で約 900kg近くもの廃
棄物となっていましたが、これらほとんどを
& NQMPZFF*OUFSWJFX
循環利用し、破損品のみ廃棄処理すること
で廃棄量を大幅に減らすことができました。
「パンフレットなどの販促物の無駄を減らしました」
医療従事者や患者様向けの印刷物や
原則は認めていなかった戻入を可能とし、
プロモーション物は、各エリアから自由に
資材の再活用も可能になりました。エリア
取り寄せることが可能でした。そのため、
の担当者が取り組みの趣旨をよく理解し、
必要部数を上回る量を取り寄せたり、改
本部・販管センター・エリアが一体となっ
訂時には旧版を廃棄としていたため、大
て活動した結果、廃棄数量が前年比で
量に廃棄が発生していました。そこで仮
大幅に減少しました。
想在庫を考え、取り寄せ数量制限などの
取り組みを行い、廃棄が減少。改訂時で
も、旧版が継続使用可能な場合には事
前に周知して無駄がなくなりました。また、
医薬統括部 学術情報部長
本川 靖政
試薬の保冷剤
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
そのほかの環境活動に関するデータ
■ 2008 年度の環境保全コスト(「主な実施事項」の○は投資を、 △は費用を表しています)
大分類
中分類
主な実施事項
○環境資源センターDO計更新
1.環境管理体制
△I
SO更新、SHE定期審査費用
(単位:百万円)
○投資
△費用
3
6
主な効果(成果)
関連頁
P33
・環境保全活動の推進
・CO2排出量、年326t 削減予定*1
○冷却原体窒素消費抑制工事
○ユーティリティ省エネ工事
○動力変圧器の高効率化
2.省エネ・
地球温暖化防止
136
○HF蛍光灯人感センター
10
P35-36
○チラー更新
(A)環境目的達成コスト
△低燃費車導入
・70 台
△グリーン電力購入
・94.
9万kWh
△中水設備維持管理費用
3.省資源活動
△グリーン購入
○凍結乾燥機冷凍機更新
4.大気汚染防止
○酸性ガス吸収装置更新
5.化学物質管理
△PRTR関連調査費用
6.廃棄物の削減等
の取り組み
△機密書類ボックス
0
4,460
83
24
0
30
0
252
△廃棄物処理委託費用
・中水(再利用水57.
7千m3)
P37-41
・環境配慮型製品・包材の購入促進
・大気汚染防止
P41
・化学物質の適正な管理の推進
P39
・廃棄物発生量430 t 減
・リサイクル量 194 t 減
P37-38
・外部最終埋立量69 t 削減
7.製品設計
△廃棄物分析費用
1.廃棄物の
法規制対応
△廃棄物施設管理費用*2
0
0
3
137
13
201
0
0
0
14
0
145
237
5,280
・関連法規制対策
P37-38
○排水ポンプ更新
(B)環境関連法規制
対応コスト
○排水処理設備等の改修
2.公害防止
△排水処理施設管理費用* 1
△ 土壌汚染調査費用
△ A重油漏洩検査
4.容器包装リサイクル
△容器包装リサイクル委託コスト
1.A、B以外の
環境関連コスト
△環境報告書の発行
△緑化維持管理コスト
合 計
■ 環境保全対策に伴う経済効果
項 目
内 容
12
水再利用による上水購入費の節減額
中水設備による水再利用(中水)に伴う上水購入費節減額
12
合成溶媒循環利用による使用量の節減額
工程内での廃溶媒の蒸留による購入量の節減額
■ 2008 年度PRTRデータ*(届出量
亜鉛の水溶化化合物
届出
事業所数
国内エーザイグループ)
事業所
取扱量
大気へ
移動量
水域へ
50.432
0.000
0.151
アクリルアミド
2
1
10.094
0.000
アセトニトリル
12
3
15.255
0.221
廃棄物として
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
15.034
0.000
40
1
5.271
0.000
0.000
0.997
0.000
1
352.949
0.728
0.000
98.413
0.000
N,N-ジメチルホルムアミド
172
1
1.880
0.000
0.000
1.880
0.000
銅水溶性塩(錯塩を除く)
207
1
5.121
0.000
0.010
0.000
0.000
227
2
188.718
0.594
0.021
179.700
0.000
ベンゼン
299
1
2.957
0.000
0.000
0.001
0.000
ほう素およびその化合物
304
1
2.311
0.000
0.014
0.000
0.000
ホルムアルデヒド
310
1
1.440
0.090
0.000
0.397
0.000
マンガンおよびその化合物
311
1
30.061
0.000
0.005
0.000
0.000
* PRTR法の対象となっている化学物質の使用実態データ
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
集計範囲:エーザイ(川島工園、美里工場、鹿島事業所、
筑波研究所、本社ビル群およびCO)+国
内グループ企業 11 社
対象期間:2008 年 4 月 1 日∼ 2009 年 3 月 31 日
注1 金額は 10 万円単位を四捨五入しています。 注 2 人件費については、2004 年度より委託業者分の
みを計上しています。 *1 2008 年度の投資による効果。 * 2 減価償却費を含む。 ■ ジクロロメタン使用量の推移
(年度)
下水へ
145
トルエン
(単位:t )
排出量
2
エチルベンゼン
・コミュニケーションの向上
49
1
ジクロロメタン
(別名:塩化メチレン)
・自然と共生した事業活動の推進
25
合 計
P34
・容器包装リサイクル法の遵守
金 額
再資源化(有償物)により得られた収入額
物質
番号
・土壌・地下水汚染防止
(単位:百万円)
製品以外の副生物の売却額
物質名
P41
△排水・地下水・騒音・振動・悪臭測定費用
3.土壌対策
(C)環境管理活動コスト
・汚染物質流出防止
1,111
2004
318
2005
1,193
2006
533
2007
615
2008
0
300
600
900
注:使用量には再利用分も含みます
1,200 1,500
(t)
エーザイの
環境活動
資源投入・環境負荷データ
■ 各拠点別CO 2 排出量の推移
■ 各拠点別廃棄物排出量の推移
■ 2004 ■ 2005 ■ 2006 ■ 2007 ■ 2008
0
<エーザイ>
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
(t)
30,000
川島工園
■ 2004 ■ 2005 ■ 2006 ■ 2007 ■ 2008
0
<エーザイ>
2,000
4,000
川島工園
26,483
美里工場(本庄含む)
1,461
美里工場(本庄含む)
19,261
1,481
鹿島事業所
鹿島事業所
6,660
2,959
筑波研究所
筑波研究所
19,308
415
本社ビル群
本社ビル群
1,837
コミュニケーションオフィス
(営業拠点)
(t)
8,000
6,000
653
コミュニケーションオフィス
(営業拠点)
1,439
<国内エーザイグループ>
127
<国内エーザイグループ>
サンノーバ
サンノーバ
6,281
783
サンプラネット
サンプラネット
1,454
エーザイ物流
1,228
95
0
200
400
600
三光純薬
800
(t)
1,000
エーザイ物流
52
0
20
40
60
80
100
(t)
120
三光純薬
620
エーザイ生科研
67
エーザイ生科研
100
327
カン研究所
カン研究所
579
エーザイマシナリー
22
エーザイマシナリー
80
ブラッコ・エーザイ
6
ブラッコ・エーザイ
84
エルメッドエーザイ
21
エルメッドエーザイ
136
エーザイフード・ケミカル
5
エーザイフード・ケミカル
32
パルマビーズ研究所
25
パルマビーズ研究所
15
3
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
■ 大気汚染物質排出量の推移
■ 2008 年度の各工場・研究所の大気汚染物質排出量
分類
2005
2006
2007
2008
■ エーザイ
■ 国内グループ企業
■ エーザイ
■ 国内グループ企業
■ エーザイ
■ 国内グループ企業
■ エーザイ
■ 国内グループ企業
ばいじん
エーザイ
0
1.3
SOx
事業所名・企業名
ばいじん
SOx
(単位:kg)
NOx
川島工園
552
1,779
10,237
美里工場
598
332
3,235
本庄事業所
ー
ー
ー
鹿島事業所
ー
ー
ー
筑波研究所
170
292
2,965
サンノーバ
ー
ー
1,396
エーザイ生科研
熊本事業所
ー
ー
ー
サンプラネット
BMRセンター
ー
ー
ー
サンプラネット美里ラボ
ー
ー
ー
三光純薬茨城事業所
3.2
23.0
37.0
0
2.4
NOx
16.4
0
5
1.4
10
15
国内
グループ企業
20
25(t)
ー:測定していない
■ 排水負荷の推移
■ 2008 年度の各工場・研究所の排水負荷
分類
2005
2006
2007
2008
■ エーザイ
■ 国内グループ企業
■ エーザイ
■ 国内グループ企業
■ エーザイ
■ 国内グループ企業
■ エーザイ
■ 国内グループ企業
BOD
エーザイ
0.3
10.2
COD
3.1
0.7
事業所名・企業名
1.2
国内
グループ企業
窒素
リン
2,217.6
ー
2,845.7
70.5
美里工場
422.6
2,271.6
1,700.8
76.9
本庄事業所
1,410.4
ー
75.2
22.3
鹿島事業所
648.5
789.8
348.7
48.4
筑波研究所
5,513.0
ー
ー
ー
33.6
271.5
156.2
9.5
291.2
388.8
1,035.6
326.5
3.7
25.6
ー
ー
サンプラネット美里ラボ
(美里本部含む)
ー
ー
ー
ー
三光純薬茨城事業所
5.6
8.9
21.6
0.3
エーザイ生科研
熊本事業所
5.0
(単位:kg)
COD
川島工園
サンノーバ
窒素
BOD
サンプラネット
BMRセンター
リン
0.34
0.2
0
3
6
9
12
15(t)
ー:測定していない
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
エーザイの
環境活動
資源投入・環境負荷データ(海外)
■ ノースカロライナ工場(米国)
■ 蘇州工場(中国)
2006
2007
2008
2006
20,200
20,691
23,019
(deca-therm*1) 919,439
94,894
95,904
1,795
1,795
エネルギー使用量
電気
ガス
(ガロン*2)
1,795
廃棄物処理実績
焼却処理量
(有害廃棄物)
(USt
*3
)
5
6
7
リサイクル量
(USt)
11
9
4
(USt)
282
274
303
最終埋立量
(USt)
181
186
146
廃棄物総発生量
(USt)
479
475
460
0.9
1.1
1.2
(千kWh)
7,456
ガス
(m3)
156
蒸気
(t)
6,718
7,061
20.83
(USt)
(t) 201.070 146.420
291
441
メタノール
(t)
1.700
1.179
8,556
8,914
アセトニトリル
(t)
0.660
0.635
イソプロパノール
(t)
0.200
0.091
塩酸
(t)
7.080
4.536
水酸化ナトリウム
(t)
ー
0.181
24.36
35.82
有害廃棄物
発生量
(t)
2.28
0.73
0.43
リサイクル量
(t)
16.33
17.40
18.37
ー
ー
13.42
廃プラスチック
(USt)
0.1
2.4
3.8
アルミ缶
(USt)
0.1
0.1
0.3
段ボール
アルミニウム
(t)
(t)
ー
ー
バッテリー
(電池)
(USt)
0.1
0.6
0.4
鉄
(t)
ー
ー
1.75
(USt)
46.3
35.3
93.9
廃プラスチック
(t)
ー
ー
2.32
紙くず
(USt)
48.9
33.4
42.1
木くず
(t)
ー
ー
0.08
段ボール
(USt)
114.4
94.8
51.1
紙くず
(t)
ー
ー
0.60
木くず
(USt)
70.8
105.1
109.2
(USt)
合計
(USt)
ー
ー
281.6
272.8
0.7
302.7
* 1 decatherm(サーム)= 1,050MJ
* 2 1 ガロン= 3.785 ℓ * 3 USt = 0.907185 t
ー:測定していない
2006
■ 台南工場(台湾)
2007
2008
エネルギー使用量
2007
2008
エネルギー使用量
電気
(千kWh)
13,790
16,523
16,302
ガス
(千m3)
2,639
1,162
2,371
重油
(ガロン*2)
1,453
1,477
1,550
電気
(千kWh)
1,666
1,717
1,929
ガス
(t)
0.08
0.08
0.06
廃棄物処理実績
廃棄物発生量
(t)
21.29
20.09
21.22
有害廃棄物
発生量
(t)
0.29
0.29
0.18
リサイクル量
廃棄物処理実績
化学物質
(USt)
161.0
142.0
160.0
医療廃棄物
(USt)
15.0
22.0
25.0
リサイクル量
(USt)
19.0
50.0
55.8
廃棄物総発生量
(USt)
195.0
214.0
242.6
廃棄物リサイクル量の内訳
ヘプタン
(t)
6.900
7.711
メタノール
(t)
15.330
20.865
メチル第三ブチルエーテル
(t)
15.420
10.160
イソプロパノール
(t)
2.540
ー
酢酸エチル
(t)
3.270
5.897
トルエン
(t)
ー
2.268
アセトン
(t)
1.910
5.625
アセトニトリル
(t)
1.450
5.443
ジクロロメタン
(t)
1.360
3.084
テトラヒドロフラン
(t)
0.910
7.257
ロンドン研究所
2006
■ ボストン研究所(米国)
ボストン研究所
0.20
エタノール
廃油
2008
エタノール
廃棄物処理実績
(t)
2007
7,592
廃棄物リサイクル量の内訳
廃棄物リサイクル量の内訳
ガラスくず
ノースカロライナ工場
電気
廃棄物発生量
焼却処理量
(非有害廃棄物)
海外エーザイグループ企業で使用した
主な化学物質
2008
エネルギー使用量
(千kWh)
重油
2007
焼却量
最終埋立量
(t)
(t)
(t)
10.84
2.25
7.91
10.23
9.57
0.00
9.84
11.21
0.00
廃棄物リサイクル量の内訳
ガラスくず
(t)
0
0
0
アセトニトリル
(t)
0.300
0.310
ジクロロメタン
(t)
0.880
0.516
ヘキサン
(t)
0.450
0.468
酢酸エチル
(t)
0.710
0.541
エタノール
(t)
0.140
0.085
メタノール
(t)
0.340
0.162
蘇州工場
エタノール
(t)
6.097
6.682
メタノール
(t)
0.458
0.286
アセトニトリル
(t)
0.192
0.253
酢酸エチル
(t)
0.048
0.010
クロロホルム
(t)
ー
0.009
塩酸
(t)
0.618
0.712
メタノール
(t)
0.400
0.308
アセトニトリル
(t)
0.128
0.120
塩酸
(t)
ー
0.014
酢酸エチル
(t)
ー
0.010
イソプロピル・アルコール
(t)
ー
0.006
台南工場
金属ドラム
(USt)
ー
ー
0.3
廃プラスチック
(t)
0.3
0.2
0
タイベック
(USt)
5.5
7.2
9.0
アルミニウム
(t)
0
0
0
0.2
1.1
紙くず
(t)
0.04
0.03
0.07
1.5
2.3
2.1
0.1
0.3
段ボール
(t)
7.1
8.5
8.2
(t)
3.4
1.5
1.62
ヘキサン
(t)
ー
0.004
10.84
10.23
9.84
ジエチルエーテル
(t)
ー
0.003
アセトン
(t)
ー
0.003
無水酢酸
(t)
ー
0.002
(t)
ー
0.002
蛍光灯/安定器
(USt)
コンピュータ機器
(USt)
電池
(USt)
紙くず
(USt)
12.0
40.0
43.0
木くず
合計
(USt)
19.0
50.0
55.8
合計
■ ロンドン研究所(英国)
2006
■ ボゴール工場(インドネシア)
2007
2008
エネルギー使用量
電気
1,098
1,407
1,526
(千m3)
29.03
19.16
31.7
蒸気
(t)
252
518
626
廃棄物リサイクル量の内訳
(t)
2008
1.49
1.43
1.08
(ℓ) 163.000 168.000
アセトニトリル
(ℓ)
83.500 100.000
1,347
エタノール
(ℓ)
67.300
3,990
クロロホルム
(ℓ)
17.500
5.000
イソアミルアルコール
(ℓ)
17.500
10.000
酢酸
(ℓ)
10.500
10.000
塩酸
(ℓ)
20.000
2.500
硫酸
(ℓ)
11.000
1.000
水酸化ナトリウム
(kg)
2.000
0.000
水酸化カリウム
(kg)
1.000
1.000
(千kWh)
1,400
1,498
1,382
ガス
(kg)
1,576
1,195
重油
(ℓ)
900
2,120
ガソリン
(ℓ)
510
330
(t)
段ボール・ポリ
スチレン包装材
(t)
(t)
0.16
0.37
2,625
0.15
0.36
2,516
0.00
0.28
2,700
廃棄物発生量
有害廃棄物
発生量
リサイクル量
(t)
(t)
(t)
3.72
0.31
6.7
3.84
0.22
9.7
ボゴール工場
メタノール
電気
325
廃棄物処理実績
溶剤ビン(行政
機関により再生
使用)
溶 剤(トータル
使 用 量 の 約
75%リサイクル)
2007
エネルギー使用量
(千kWh)
ガス
溶剤ビン(製造
業者により再使
用・再生使用)
2006
トリエタノールアミン
4.72
0.18
8.8
35.000
注:年度ごとに使用量の多い化学物質を掲載しました。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
−グローバルでの知 識 創 造 −
世界中の
医療ニーズを
満たすために。
Eisai Corporation of North America
Eisai Inc. / Research Triangle Park(RTP )
5PQJ D エーザイグループの各地域拠点では、
研究開発から生産・販売まで一貫した体制のもと、事業を展開しています。
世界 20 カ国以上、1 万人を超える社員で
世界中の患者様とそのご家族のベネフィット向上に努めています。
世界中の「知」を結集すること
エーザイグループのミッションである「世界
中の未だ満たされていない医療ニーズの充足」
は国を限定して果たされるものではありません。
5IF"NFSJDBT
エーザイグループが世界展開するにあたり
重要視しているのが、hhc理念の全社員の共
米国
がん領域への転換と主力品を通じた
患者様価値の増大
有です。何のために働くのか、社員一人ひとり
が考えることから始めて、これを会社の原動力
とする。そのためのhhc活動でもあります。
(詳
しくは冒頭特集P 5 - 8をご覧ください)
さらに、世界的な医療のニーズは各国・各
地によって異なります。エーザイグループでは
地域特性に合わせた事業活動を行うために、
各地域に統括機能を置き、グローバルに事業
を進めています。
米国事業においては、
主力品のアルツハイマー型認知症治療剤
「ア
リセプト」
、プロトンポンプ阻害型抗潰瘍剤「アシフェックス(日本
製品名:パリエット)
」を中心に事業展開を進めてきました。そして、
近年実施したM&A(買収・合併)などにより、米国における事業
基盤が一層強化されるとともに、がん関連領域への本格的な参入
を果たしました。
また、
「アリセプト」
「アシフェックス」については、医療ニーズの高
い疾患領域製品であり、今後も患者様の価値向上をめざし、パッ
チ製剤や徐放製剤、長時間作用型製剤などの新剤形の開発や効
能追加などに取り組んでいます。
あわせて、がん関連領域や敗血症治療剤を代表とするクリティカ
ルケア関連領域においても製品の開発・提供を進めていきます。
一方で、世界各地で萌芽する10 , 977人の
知識創造は、一つの組織の中で有機的に集
積・統合されることで、新たなイノベーションを
生まなければ、組織として機能的であるとはい
えません。
そのための仕組みとして、グローバル人材育
成や、各地間のコミュニケーションを活発化す
る、数々の取り組みを行っています。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
5PQJ D がん関連領域での一層の貢献
ノースカロライナ工場では抗がん剤の
生産や製剤化研究の拠点整備を目的
とし、施設の拡充を行っています。約
5,900㎡の建築面積に、無菌製剤(注
射剤)や治験薬の製造ラインなどを建
設。2010 年度から稼働する予定です。
ノースカロライナ工場内新施設
(構想図)
5PQJ D Eisai Europe Ltd.
5PQJ D 衛材(中国)薬業有限公司 蘇州工場
5PQJ D Eisai Pharmatechnology &
Manufacturing Pvt. Ltd.
&VSPQF
欧州
医療ニーズを満たすため
欧州全域での「知」の統合
欧州では、高い効率性・生産性を有する新たな
ビジネスモデルへの転換をはかっています。その
中心となる欧州ナレッジセンター(英国ハットフィー
ルド)では、探索研究、臨床研究、生産、マー
ケティング、欧州統括機能が集約され、現在本
格稼働に向けた準備が進められています。
$IJOB
中国
地域の医療ニーズに
合った製品の探索と提供
中国では、地域特性や医療ニーズに見合っ
た製品の充足に励んでいます。
患者様の疾病管理と治療およびクオリティ・
オブ・ライフ(QOL)向上をめざし、主力品の
5PQJ D 欧州ナレッジセンター
2009 年春に完成
5PQJ D 蘇州でナレッジ・
リーダー研修を実施
2007年7月に、中国・蘇州工場
にて老人ホームの訪問と、高齢
者疑似体験を行う「ナレッジ・
トレーニング」を実施。hhcマイ
ンドの醸成に取り組んでいます。
「アリセプト」
「パリエット」とともに、肝疾患
治療剤、糖尿病や筋骨格系疾患の治療剤な
どを取りそろえて事業を進めています。
また、MRを約 540 人へと増強し、広大な中
国において主要 100 都市をカバーする体制
を構築しています。
エーザイの様々な機
能で得る知識を結集
することで、新たなイ
ノベーションの創出
に取り組んでいきま
す。
欧州ナレッジセンター
蘇州工場
"TJB0DFBOJBUIF.JEEMF&BTU
5PQJ D アジア
他
第 4 の知識創造拠点、インド
アジア・大洋州・中東地域(AOME地域)で
は現在、シンガポールに統括機能を設置し、
主力品「アリセプト」
「パリエット」に加え、末
梢性神経障害治療剤「メチコバール」
、筋緊
の質を高める活動を展開しています。
そうした中、エーザイグループでは、近年
インドを第4の知識創造拠点として位置づけ、
販売・マーケティングおよび臨床データマネジ
メント機能や原薬・製剤に関する生産・研究
機能を有する施設を構築中です。
また、現地のアルツハイマー協会等と協力し、 さらにマラリア、結核、HIVなど治療法の確
認知症の啓発プログラムを推進するなど、そ 立していない熱帯の感染症に対する治療薬
れぞれの地域に適した製品・情報・サービス の創薬研究も行う予定です。
インド バイザッグに
新たな拠点を建設中
インド東部のバイザッグでは、
原薬研究・生産会社を設立し、
2009 年度の稼働をめざして建
設工事が進んでいます。
張改善剤「ミオナール」
などの販促展開を行っ
ています。
建設中の研究棟
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
米国
5IF"NFSJDBT
深部静脈血栓症の啓発用ツールを作成
米国で血液凝固阻止剤「FRAGMIN」を販売するチームは2008 年 3
月、深部静脈血栓症(DVT)予防月間にあたり、DVT疾病啓発ツール
を作成しました。DVTは大静脈に発生した血栓によって発症し、放置し
ておくと肺塞栓症を引き起こす深刻な病気です。米国では毎年 2 百万
人の人がDVTを発症すると言われていますが、適切な方法により予防
や治療が可能でもあります。
米国の事業会社Eisai Inc. が作成したツールは、DVTが起こるしくみ
や症状、予防法に関する情報をまとめたポスターやパンフレット、啓発
用のバッジなどで、医薬情報担当者を通じて全米各地域の医療従事者
や患者様に配布を行ったほか、医療機関、地域のコミュニティセンター、
介護施設で行われたDVT予防月間の展示に活用されました。また、一
部の医療機関では医師や職員向けの勉強会も開催し、DVTや肺塞栓
アーカンソー州で実施されたDVT予防月間の
展示におけるツール・ディスプレイ
症についての情報提供を行いました。
DVT疾病啓発ツール
工場に環境問題の対策委員会を設置
全米てんかん支援ウォーキング大会を後援
持続可能な環境保全活動と社会的責任はエーザイグループの
グローバルな事業活動において大変重要となります。米国におけ
る生産拠点であるノースカロライナ工場では、2008 年 7 月、工
場における環境保全およびCSR活動を推進するため、
「環境のた
めの行動と責任委員会」を設置しました。
Eisai Inc.の「BANZEL」
(抗てんかん剤)を販売するセールス・チームは2009
年 3 月、ワシントンD.C.で行われた第3回てんかんナショナル・ウォークに参加しま
この委員会は、工場内の様々な部門から社員が参加し、
「環
境に関する社内研修・啓発活動」
「資源保全」
「廃棄物削減」
「地
域社会での奉仕」の4つのテーマについて年度ごとの具体的な目
標を策定し、工場全体の活動推進の支援を行っています。
2009 年度は、省エネルギーや節水対策への取り組みや、電
子メールなどを活用した社員啓発活動、および通勤時における
CO₂排出量削減への取り組み(例:公共交通手段の利用促進)な
ど、4つの項目について目標設定を実施し、活動を行う予定です。
した。この取り組みはレノックス・ガストー症候群(LGS:重篤なてんかんの一つ)
基金の支援の一環として行われたもので、ウォーク当日は全米から9,000 人を超え
る参加者が集まりました。
このウォークで集められた募金は、
てんかん患者様の支援や治療法の
研 究 助 成に役 立てられます。Eisai
Inc. の参加者はLGS基金のメンバー
の方々と一緒に歩き、多くの患者様
やご家族の方と意見交換を行いまし
た。
てんかんナショナル・ウォークに参加した
「BANZEL」のセールス・チーム
中学校の屋外実験室建設を支援
エーザイの米国拠点における社会貢献活動の一環として、ウッドクリフ中学校
(ニュージャージー州)での屋外実験室の建築プロジェクトを支援し、9 百万ドル
の寄付を行いました。この屋外実験
室は全部で 4つのエリアに分かれて
おり、地元原生の動植物の生息、環
境問題などをインタラクティブに学習
できるようになっているほか、日本庭
ノースカロライナ工場
園も設置されています。
「環境のための行動と責任委員会」メンバー
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
屋外実験室内の日本庭園
−グローバルでの知 識 創 造 −
欧州
&VSPQF
高齢者の日常を疑似体験
「働きがいのある会社リスト」にノミネート
2008 年 11月、欧州各拠点でのヒューマン・ヘルスケアの実現
をめざした社員研修プログラムが 2日間にわたって行われました。
その一環として高齢者の日常生活を体感する「高齢者疑似体験」
が英国・ハートフォードシャー大学内で開催されました。
ドイツの事業会社Eisai GmbHは、
「ドイツ国内
の働きがいのある会社リスト」にノミネートされまし
た。このリストは、Great Place to Work Institute
(職場環境に関する国際的研究・コンサルティン
「高齢者疑似体験」には、高齢の患者様が日々感じている困
難や苦労についての理解を深める目的があります。高齢者疑似
体験キットを身に付けた社員が、新聞を読んだり、薬のボトルを
開けて錠剤を取り出したりするなどの日常動作を経験。研修を通
じて、患者様とそのご家族、介護者の視点から考え、ヘルスケア
が提供するベネフィットをいかに増大させることができるかについ
て学びました。疑似体験の研修後は、地域の高齢者介護施設
や特別養護学校の訪問も行いました。
グ機関)がドイツ国内の企業を対象に従業員アン
ケート調査などを行い選出したものです。今回Eisai
GmbHは、
小規模企業部門
(従業員数50∼500人)
の第 13 位にノミネートされました。
被災地での仮設クリニック
イタリアの事業会社Eisai S.r.l.は、2009 年 4 月に発生したイタリア中部地震の
被災地バリシアーノ市における仮設クリニックの設置プロジェクトをバリシアーノ市
長および地元行政機関との連携のもと、実施しました。バリシアーノ市は地震が発
生したラクイラ近郊にある人口約 1,800 人の
町です。クリニックはプレハブ住居を利用し
たものですが、必要なライフラインがあり衛
高齢者疑似体験
アジア
他
生的で快適な環境が確保されているほか、
手術や日帰り入院もできる設備が整っていま
す。クリニックの医療サービスは被災者の方
が日常的な生活に戻れるまで提供される予
定です。
"TJB0DFBOJB
UIF.JEEMF&BTU
中国
仮設クリニック
$IJOB
タイで疾患啓発活動を実施
四川大震災での支援活動
タイでは、患者様やそのご家族、医療従事者の方々に対し健康増進や疾患
に関する情報提供を行うため、エーザイ・クラブという会員組織を創設していま
中国の事業会社・衛材(中国)薬業有限公司(江蘇省)では、2008 年
の5 月に中国・四川省で発生した大地震での被災者の方々に対する救済活
す。会員にはニュースレターが提供されるとともに、年一回「エーザイ・デー」と
呼ばれるオープン・セミナーを
動のために、
中国赤十字社に対して500万元の寄付および援助物資を含め、
日本円にして総額 9 千万円
開講し、病気や介護について
知識を深める機会となっていま
す。2008 年 1月に開催された
「エーザイ・デー」では、めまい、
首・腰の痛み、骨粗しょう症に
伴う末梢神経障害など、特に
ご高齢の方が日常的に感じら
相当の支援を行いました。
あわせて、被災地の医
療施設に対して、救急医
療 品、マスク、ガ ーゼな
どの物資を提供したほか、
エーザイの現地子会社の
社員を中心として、被災地
れる悩みに関する話題を取り上
げました。
でのボランティア活動も行
いました。
エーザイ・デーの様子
義援金贈呈式
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
社会的責任に関する指標と付加価値の分配
エーザイグループでは、企業活動をトータルかつ客観的にとらえるために、
社会的責任に関する指標と、ステークホルダーズへの経済的付加価値分配内訳を用いています。
社会的責任に関する指標
エーザイグループでは、社会的責任に関する取り組みを客観的にはかるための指標を定めています。
これらの指標は報告書の構成に合わせて分類し、年度ごとに取り組みの検証を行っています。
患者様との関わり
指標
個別/連結
期間
エーザイグループ
年度
443
497
566
現場体験研修 参加者
エーザイ
年度
1,359 人
233 人
258 人
累計参加者
エーザイ
年度
2,877 人
3,110 人
3,368 人
参加率(累計参加者/社員数)
エーザイ
年度
70.0%
73.6%
77.0%
国内
エーザイ
年度
9 品目
6 品目
6 品目
海外
エーザイグループ
年度
4 品目
9 品目
6 品目
国内
エーザイ
年度
2 品目
4 品目
2 品目
海外
エーザイグループ
年度
2 品目
1 品目
7 品目
エーザイグループ
年度
171 件
180 件
206 件
エーザイ
年度
74,579 件
81,516 件
86,260 件
うちウェブサイトのフォームによるお問い合わせ数
エーザイ
年度
1,218 件
1,192 件
1,253 件
うちクレーム件数(製品の品質に関するクレーム)
エーザイ
年度
266 件
283 件
345 件
PCC(製品クレーム委員会)実施回数
エーザイ
年度
12 回
12 回
12 回
病院
エーザイ
年度末時点
5,804 軒
5,805 軒
5,805 軒
診療所
エーザイ
年度末時点
95,704 軒
94,485 軒
96,270 軒
調剤薬局
エーザイ
年度末時点
10,165 軒
9,406 軒
9,645 軒
薬局
エーザイ
年度末時点
41,821 軒
44,215 軒
44,670 軒
代理店
エーザイ
年度末時点
103 社
97 社
94 社
ベンダー
エーザイ
年度末時点
211 社
220 社
208 社
エーザイ
年度
93 回
84 回
74 回
アリセプト承認取得国数
エーザイグループ
年度末時点
91ヵ国
91ヵ国
91ヵ国
パリエット/アシフェックス承認取得国数
エーザイグループ
年度末時点
92ヵ国
97ヵ国
99ヵ国
hhcプロジェクトの数
2006 年度
2007 年度
2008 年度
P6 参照
申請中の医療用医薬品数
*1
承認取得した医療用医薬品数
特許件数(特許出願件数)
「お客様ホットライン」お問い合わせ数
お取引先
ベンダーバリデーションの回数
* 1 適応および剤形の追加を含みます。 * 2 2008 年度は海外子会社扱い分含む
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
*2
社会との関わり
指標
個別/連結
期間
2006 年度
2007 年度
2008 年度
開催回数
エーザイ
年度
2回
1回
2回
参加者数
エーザイ
年度
約 5,600 人
約 4,300 人
約 4,000 人
寄付金額
エーザイグループ
年度
3,081 百万円
3,809 百万円
3,346 百万円
納税金額
エーザイグループ
年度
41,850 百万円
40,000 百万円
25,087 百万円
エーザイ
年度
45,136 人
46,517 人
45,136 人
川島工園
エーザイ
年度
4,669 人
5,973 人
5,368 人
美里工場
エーザイ
年度
678 人
442 人
602 人
美里工場
エーザイ
年度
10,681 人
11,654 人
11,140 人
認知症啓発活動(もの忘れフォーラム)
P20参照
くすり博物館来館者数
工場見学者数
厚生施設利用者
コーポレートガバナンス/コンプライアンス
指標
個別/連結
期間
取締役数
エーザイ
年度末時点
11 人
11 人
11 人
うち社外取締役数
エーザイ
年度末時点
7人
7人
7人
社外取締役比率(社外取締役数/取締役数)
エーザイ
年度末時点
63.6%
63.6%
63.6%
執行役数
エーザイ
年度末時点
22 人
24 人
26 人
執行役の平均年齢
エーザイ
年度末時点
55.8 歳
54.9 歳
54.3 歳
取締役(社内)
エーザイ
年度末時点
11,923 万円
12,039 万円
12,198 万円
取締役(社外)
エーザイ
年度末時点
10,150 万円
9,974 万円
7,997 万円
執行役
エーザイ
年度末時点
113,590 万円
121,397 万円
113,620 万円
開催回数
エーザイ
年度
128 回
116 回
130 回
うち役員対象研修
エーザイ
年度
3回
2回
2回
延べ参加人数
エーザイ
年度
約 9,200 人
約 9,900 人
約 11,000 人
開催回数
エーザイ
年度
48 回
61 回
48 回
人数
エーザイ
年度
3,922 人
4,634 人
3,837 人
コンプライアンスeラーニング平均実施率
エーザイ
年度
98.9%
96.5%
99.2%
コンプライアンス・カウンターアクセス数
エーザイ
年度
679 回
726 回
874 回
GUIDEA(ガイディア)相談件数
エーザイ
年度
39 件
63 件
104 件
報酬額(基本報酬、賞与、退職慰労金など)
コンプライアンス研修
2006 年度
2007 年度
2008 年度
人権研修
P22参照
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
社員との関わり
指標
個別/連結
期間
エーザイグループ
年度末時点
9,649 人
10,686 人
10,977 人
日本
エーザイグループ
年度末時点
5,334 人
5,453 人
5,592 人
米国
エーザイグループ
年度末時点
1,975 人
2,699 人
2,647 人
欧州
エーザイグループ
年度末時点
765 人
861 人
951 人
中国
エーザイグループ
年度末時点
777 人
834 人
944 人
アジア(日本、中国除く)
エーザイグループ
年度末時点
798 人
839 人
843 人
合計
エーザイ
年度末時点
4,111 人
4,224 人
4,371 人
3,349 人
従業員数
地域別従業員数
社員数
2006 年度
2007 年度
2008 年度
男性
エーザイ
年度末時点
3,186 人
3,250 人
女性
エーザイ
年度末時点
925 人
974 人
1,022 人
管理職
エーザイ
年度末時点
1,302 人
1,370 人
1,410 人
女性管理職比率(女性管理職数/管理職(理事含む)
)
エーザイ
年度末時点
1.5%
2.1%
2.4%
平均年齢
エーザイ
年度末時点
42.1 歳
42.0 歳
41.7 歳
平均勤続年数
エーザイ
年度末時点
18.8 年
18.5 年
18.2 年
離職率
エーザイ
年度
1.6%
1.4%
1.0%
介護休職制度利用者数
エーザイ
年度
8人
9人
7人
介護短時間勤務制度利用者数
エーザイ
年度
0人
1人
1人
合計
エーザイ
年度
61 人
67 人
67 人
男性
エーザイ
年度
1人
1人
0人
女性
エーザイ
年度
60 人
66 人
67 人
育児短時間勤務制度利用者数
エーザイ
年度
53 人
66 人
65 人
平均年間給与(有価証券報告書より)
エーザイ
年度
10,988 千円
10,899 千円
10,775 千円
障がい者雇用率
エーザイ
年度
1.82%
1.86%
1.88%
年度内入社人数
エーザイ
年度
276 人
236 人
265 人
所定労働時間(年間一人あたり)
エーザイ
年度
1,904 時間
1,896 時間
1,888 時間
23 件
育児休職制度利用者数
労働災害発生件数
エーザイ
年度
25 件
39 件
エーザイグループ
随時
─
─
実施
被保険者
エーザイ
年度
99.3%
99.6%
99.6%
配偶者
エーザイ
年度
エーザイ
年度末時点
社員満足度調査
健康診断の受診率
労働組合加入率
68.1%
61.3%
66.2%
98.89%
99.02%
99.12%
有給休暇の平均取得日数(組合員一人あたり)
エーザイ
年度
12.8日
12.5日
13.0日
ウォーキングマイレージ参加者数
エーザイ
年度
1,277 人
1,095 人
887 人
継続雇用制度利用者
エーザイ
年度末時点
42 人
89 人
135 人
E-GOLD研修受講者
エーザイグループ
年度
─
20 人
25 人
E-elite研修受講者
エーザイグループ
年度
─
─
127 人
*1
*1
P25参照
P24参照
* 1 エーザイの正社員の人数をベースとしたものです。
環境との関わり
指標
個別/連結
期間
CO₂ 排出量
エーザイグループ
年度
84,899t
廃棄物発生量
エーザイグループ
年度
14,226t
8,703t
化学物質(PRTR法対象物質)取扱量
エーザイグループ
年度
983t
599t
グリーン購入金額
エーザイグループ
年度
4,149 百万円
5,101 百万円
4,378 百万円
廃棄物のリサイクル率
エーザイグループ
年度
26.42%
38.34%
37.99%
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
2006 年度
2007 年度
88,125t
2008 年度
85,822t
8,273t
666t
社 会 的 責 任に対する指 標と付 加 価 値の分 配
株主との関わり
指標
個別/連結
期間
2006 年度
2007 年度
2008 年度
株主数
エーザイ
年度末時点
42,849 人
66,930 人
68,148 人
発行済株式総数
エーザイ
年度末時点
296,566 千株
296,566 千株
296,566 千株
外国法人等の所有株式数比率
エーザイ
年度末時点
31.1%
25.8%
23.3%
「個人・そのほか」株主比率
エーザイ
年度末時点
95.6%
96.9%
97.1%
自己資本利益率(ROE)
エーザイグループ
年度
13.2%
△ 3.4%
10.9%
配当性向
エーザイグループ
年度
48.4%
─
83.7%
純資産配当率(DOE)
エーザイグループ
年度
6.4%
7.4%
9.1%
配当金総額
エーザイ
年度
34,088 百万円
36,938 百万円
38,462 百万円
一株あたり配当額
エーザイ
年度
120 円
130 円
140 円
投資家向け説明会の開催回数
エーザイ
年度
10 回
13 回
16 回
ステークホルダーズへの付加価値の分配
エーザイグループは、高品質な医薬品を提供することでお客様から対価をいただいています。
その対価の中から、お取引先に必要経費をお支払いし、生み出した経済的付加価値を従業員、株主、国・地方自治体(行政)
、
社会など、様々なステークホルダーズに分配しています。
また、その一部は、新たな医薬品を生み出すための研究開発に投資され、創薬によってさらなる社会的・経済的な価値がもたらされます。
こうした経済的活動をつづけることで、新たな医薬品を生み出し、未だ満たされていない医療ニーズを充足するという
企業使命を果たしていくことができると考えています。
分配計算にあたっては、
「SPI-Finance2002」やR-BEC007「CSRガイドライン」などを参考にし、数値の信頼性を確保する観点から、
財務会計を構成する各勘定科目を適宜組み替えて作成しています。
<収入の部>
<支出の部>
788,634
788,634
そのほかの
収入*1
ステークホルダーズ
への分配*4
6,891
224,629
付加価値の分配の内訳 (単位:百万円)
社会
国・地方
自治体
(行政)
11.2%
1.5%
従業員
内部留保
役員
1,898
株主
39,134
4.1%
債権者
債権者
3.4%
売上高
781,743
業務上必要な
支払い*2
そのほかの
費用・損失*3
20,583
(単位:百万円)
*1
*2
*3
*4
17.4%
役員
0.8%
543,422
営業外収益と特別利益および自己株式処分差益の合計。
販売費、一般管理費および売上原価から、人件費と寄付金額等を除いた額。
支払利息を除く営業外費用と特別損失の合計。
収入から業務上必要な支払いとそのほかの費用・損失を除いた額。
株主
従業員
61.6%
国・地方自治体(行政)
138,317
7,632
25,087
社会
3,346
内部留保
9,216
従業員:販売費、一般管理費および売上原価中の人件費(給与、賞与および福利厚生費)の合計
役員 :取締役と執行役への報酬額
株主 :配当金の総額と少数株主利益の合計
債権者:支払利息
国・地方自治体(行政)
:法人税、住民税および事業税、法人税等調整額、租税公課
社会 :寄付金額
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
ステークホルダーズの皆様からのご意見
エーザイグループがhhcを実現していくために、ステークホルダーズの皆様が何を思い、エーザイグループに何を求めているのか、
貴重なご意見をいただきました。いただいたご意見は今後の取り組みに反映させていきます。
医療従事者
からのご意見
「まちづくりは、認知症対策のファイナルゴール」
̶ 認知症医療・介護の第一人者である長谷川先生が高齢者医療
に携わられたいきさつは何だったのでしょうか。
とっても医師にとっても大きな福音
高齢者医療に関わって40 数年になりますが、その基点は何といっ
でも多くの患者さんに「アリセプト」
てもフィールドワークです。1973 年から実施した5,000 人を対象にし
をお届けする使命と責任があり、
た東京都の在宅認知症患者の調査では、当時、実態が把握されて
それが、薬を開発した企業の責
いなかった認知症が疑われる患者さんのお宅を、雪の日も風の日も往
務だと思っています。
診してまわり、患者さんの不安や悲しむご家族の苦労など、介護の現
認知症の患者さんやそのご家
場の本当の姿を痛感したのです。
族は、この病気と付き合いながら
社会福祉法人 浴風会
認知症介護研究・研修東京センター
名誉センター長
長谷川 和夫
といえます。エーザイには、一人
患者さんや介護者の不安・苦しみを知ったことは、後に聖マリアン
暮らしていくことを余儀なくされて
ナ大学病院で始めたデイ・ケアサービスの原点でもあります。デイ・ケ
おり、周囲に暮らす住民や行政な
アでは、外来の診察時間では対応しきれないご家族の悩みや相談を
ど、患者さんを支える地域の協力を必要としています。地域が中心と
十分な時間をかけて解消し、少しでも援助したいと考えたのです。治
なった「認知症になっても暮らしやすいまちづくり」の活動に対して、
エー
療の中にケアを取り入れたスタイルは、当時、大きな反響を呼びました。
ザイも一緒になって取り組んでいただきたいと期待しています。
̶ その後、アルツハイマー型認知症治療剤として「アリセプト」の
臨床試験が始まりましたが、当時の様子を教えてください。
̶ 先生が取り組む「まちづくり」に対して、エーザイに求められるこ
とは何でしょうか。
アルツハイマー病には、
「アリセプト」が発売されるまで薬はありませ
認知症対策は、一人では太刀打ちできません。お互いに支え合う
んでした。告知をするときにも「この病気は治りません。ケアをして付き
ことが大切です。その意味でも、私は、地域中心のまちづくりは、認
氏
合っていくことが大切です」という説明をするしかなく、これは、患者さ
知症対策のファイナルゴールであると考えています。
んにもご家族にも大変辛いことでした。
エーザイに対しては、フィールドワークの重要性をよく認識して、医
1989 年、
「アリセプト」の臨床試験が開始されましたが、アルツハイ
療や介護の現場に足を運んで現実の実情をよく把握した上で活動し
マー病の症状である「もの忘れ」は、記憶を失うわけですから、患者
てほしいと思います。
企業として、
認知症医療・介護に関する情報やツー
さんの病識は必ずしも十分とはいえません。薬を服用したことで、回
ルの提供、検診などを通じた早期発見、疾患啓発フォーラムの開催、
復したことを実証するのは、非常にむずかしかったのです。
そして、住民が手をとりあい支えていくコミュニティーづくりなどを推進し
客観的な効果を実証するために、診察医、評価者、臨床心理士、
てほしいと思います。その結果、認知症の患者さんやご家族が、生き
看護師という体制で、
大変苦労しながら臨床試験を実施しました。エー
がいを持って安心して暮らせるまちづくりが実現するでしょう。
ザイの内藤社長からも直々に「薬を待ち望む患者様に応えたい」とい
エーザイにおいては、hhcを社員一人ひとりが実践するために、
「患
う情熱を受け取り、約 10 年かけて臨床試験を終えたのです。
者様に貢献したい」という熱いパッションを持ち、これをミッションに変
えて、活動していくことを期待しています。
̶ 「アリセプト」が患者様にお届けされている今、エーザイに期待
することは何でしょうか。
認知症の治療薬が開発されたことは、患者さんの暮らしや認知症
の診療構造を大きく変化させました。エーザイはこの功績を誇りに思っ
てほしいですね。認知症の進行を抑える薬があることは、患者さんに
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
1SPGJMF
聖マリアンナ医科大学名誉教授、同理事長。専門は老年精神医学・
認知症。1974 年に認知症の症状の有無を検査する長谷川式認知症ス
ケール(HDS-R)を開発して以来、常に認知症医療・介護の領域で第
一人者として活躍中。「痴呆」から「認知症」への名称変更を主導した。
医療従事者
からのご意見
「看護の現場と協力した患者さんへの貢献活動を」
̶ 医療現場で、どのような姿勢で患者さんに向き合っていらっしゃい
ますか。
という経営理念が看護の現場で
美原記念病院の理念は、
「愛・和・学(あいわまなぶ)
」です。愛は、
ました。私は看護師の人材育成
患者さんに対してやさしさといたわりの心を持とう、和は、職員は互い
をする上で、いつも伝えているこ
に助け合い協力し合う心を持とう、学は、自分自身に対して向上心を
とは、
「重症・軽症にかかわらず、
忘れず学ぶ心を持とう、という願いが込められています。
患者さんや家族の不安は同じ。
また、看護部は病院の理念に基づいて「心ある看護の提供」
(看
自分がその立場だったら、と考え
護部の理念)を念頭に、患者さんやご家族の一人ひとりに関心を持っ
れば正しい看護の答えは自然と出
財団法人脳血管研究所 美原記念病院(群馬県伊勢崎市)
看護部長
て相手と向き合い、しっかりとコミュニケーションをとるように努めていま
てくる」
ということです。この考えは、
髙橋 陽子
す。看護の仕事は、単なる業務ではなく、患者さんの生命を預かって
エーザイが掲げるhhcの理念と同
いるという高い使命感に支えられています。看護によって患者さんが
じではないでしょうか。また、知創部の活動として、医療現場体験研
満足されるという達成感が仕事のやりがいにもつながっています。
の想いととても似ていることに驚き
氏
修から得た気付きから、知識創造活動を通し患者様貢献を進めてい
ることも興味深いことです。どういう方々がどういう状況で薬を飲んで
̶ チーム医療は美原記念病院の特長ですが、具体的な医療体制を
教えてください。
いるのか、実際のイメージを形成できるのは大きいことだと思います。
当院のチーム医療は、現場主義、専門性、協力体制という三つの
̶ 看護の立場から、今後のエーザイに期待することを教えてください。
視点から、各病棟にそれぞれの専門職者が配属されています。つまり、
例えば、患者さんが薬を飲み忘れたり、薬が床に落ちていたりする
ミキシング(注射剤混注業務)
、配薬、持参薬の管理、服薬指導は
ことは、家族にとっては「きちんと診てくれているのだろうか」という大き
薬剤師、急性期からの積極的なリハビリはリハビリスタッフ、栄養指導
な不安になります。薬は、家族にとって「これさえ飲んでいれば」とい
は管理栄養士、退院調整は相談員などそれぞれの専門分野の職種
う心の拠り所なのです。こうした問題を一つでも解決できるように、同
が積極的に関わっています。このような環境であれば、専門職者がわ
じ価値観を持った者同士として、医療現場と製薬企業が一緒に研究
ざわざ集合しなくても、患者さんにより近いところで治療看護について
できる環境があれば理想的です。
話し合うことができます。
また、
「アリセプト」が、アルツハイマー型認知症の症状を少し遅ら
また、チーム医療を実践するにあたり、もっとも大切とされるのは職
せるということだけでも、患者さんを持つご家族にとっては大きな希望
種間の情報共有です。当院は、職種間の迅速な情報共有を目的に、
です。しかし、すべての人がそれを知っているわけではない。こうした
2004 年より電子カルテを導入しました。転倒転落、褥瘡管理などの
情報提供を製薬企業だけではなく、もっとベッドサイドにいる私たち看
情報が電子化され、効率・効果的な運用ができ、直接看護業務量の
護師と協力して、行っていければと思います。
増加にもつながりました。直接看護業務量が増加したことは、看護の
専門性がより発揮される環境となり、看護に対するやりがいにつながり、
人材育成にもプラスになっています。
̶ そのような看護を実践されている立場から見て、エーザイのhhc活
動をどのようにご覧になっていますか?
1SPGJMF
1988 年、伊勢崎総合保健センター付属高等看護学院卒。急性期病棟、
手術室に勤務した後、病棟主任、看護師長を経て 2004 年より看護部
長。群馬県看護協会理事。2002 年、診療録管理士取得、認定看護管
エーザイの医療現場体験研修に参加させていただいてから、hhc
理者制度セカンドレベル教育課程終了。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
患者様のご家族
からのご意見
「病気を抱えるすべての子どもに将来の希望を」
̶ あすなろ会はどのような活動をされているのでしょうか?
どのようにして薬がつくられている
主な活動は、若年性関節リウマチの子ども(患児)を持つ親からの
のかを知ることで、子どもにも「こ
相談や専門医の紹介をはじめ、患児を持つ家族同士の交流も支援し
の薬は自分の病気に対して必要
ており、地域ごとの意見交換会や専門医や患児も参加するサマーキャ
なもの」という意識が芽生えてきた
ンプを開催しています。また最近では患児の親向けに病気をわかりや
ように思います。これは大きな変
すく解説した冊子の制作も行っています。
化であり、ただ言われたから薬を
若年性関節リウマチは長きにわたり付き合っていかなければならない
飲むのとはまったく意味が違いま
病気ですが、親にとって自分より大切な子どもの痛みが直接わからな
す。また親たちが薬に抱く印象も、
いのに治療を続けさせなければならないということは、大変大きな悩み
副作用などのネガティブな情報か
です。子どもが友達の目が気になり学校で薬を飲まなくなるなど、親は
ら、よい薬をつくるには医師・患
治療を進める中で様々な問題に直面します。さらに、今の治療でよい
者・製薬企業がそれぞれに協力し合うことが必要であるという認識に
のかといった不安や強い焦りを感じているのです。あすなろ会は、こう
かわってきたように感じます。
あすなろ会
ホームページ担当理事 大内 晴子
氏
した親の悩みに対する受け皿となればと考えています。実際に、会に
相談にこられた方の多くは、悩みを話されただけで問題の半分を解決
̶ これからのエーザイに期待することは何でしょう?
しているのだと思います。
若年性関節リウマチの治療薬はいろいろなものが開発されています
̶ エーザイの活動をどのように評価されていますか?
いるのが現状です。まずは、全国で均一の治療を受けられる環境づく
エーザイとの関わりは、2007 年からサマーキャンプの活動に参加し
りが私たちの理想です。病気がよくなることは、患者にとって生活の劇
が、地域によっては、まだ自分にあった薬にめぐり合えていない患児も
ていただいているのをはじめ、エーザイの筑波研究所の見学会や研
的な変化です。製薬企業は、その変化を起こすことができる力を持っ
究者との意見交換会も実施しました。こうした形で製薬企業の立場か
ているのですから、これからも子どもたちに対して、薬がもたらす希望
ら患者会に関わることは、勇気のいることだったと思います。多数の
を与えてほしいと思います。子どもたちにとって「これからもっとよい薬
企業にご賛助いただいていますが、創薬部門や育薬部門、さらに社
ができるかもしれない。そうしたら、君はもっとよくなって痛みなく歩ける
内教育部門の社員の方々が直接患児とその家族の声に耳を傾けられ
ようになるかもしれない」という言葉は、何よりも希望になるはずです。
たのは、エーザイが先駆けだったのではないでしょうか。私たちの「製
あすなろ会でも、全国の子どもたちに薬の必要性や可能性を伝えてい
薬企業はお医者さん側にいる」というイメージは、
「製薬企業は患者
くので、その傍らにエーザイの患者視点のサポートがあることを期待し
に寄り添っている」というイメージに変化しています。
ています。
̶ 活動を通じて、薬に対するイメージはどう変化しましたか?
筑波研究所で、研究者の方々から一つの薬が開発されるまでの長
い工程や開発のむずかしさについてお話を聞かせてもらいましたが、
これをきっかけにその場に参加していた患児が以前より納得して薬を
飲んだり、点滴を受けるようになりました。患者にとって薬は普段、医
師から処方された通りに飲めばよいという程度の認識しかないと思いま
す。特に子どもは、薬の必要性が大人のように理解できません。でも、
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
1SPGJMF
若年性関節リウマチの子どもを持つ親の会「あすなろ会」で理事を務
める。自身も小学校 6 年生の息子が 1 歳から発症し、あすなろ会の活
動に参加。昨年度までは主に会報作成などの広報を担当、今年度よ
りホームページの制作などに尽力している。
ステークホルダーズの皆様からのご意見
環境専門家
からのご意見
「環境問題へ果敢に挑む率先的な取り組みを」
̶ エーザイの環境活動についてお聞かせください。
開しないのはもったいないです。
今日は、せっかくのこうした機会ですので、敢えて少し厳しいことを
また、報告書の読者には様々
言わせてください。先に申し上げておきますが、2008 年、2009 年の
なステークホルダーがいますから、
「エーザイ環境・社会報告書」を読ませていただき、基本的な環境に
人によっては必要のない情報もあ
対する取り組みについて本当によくやっていらっしゃると思いました。特
るかもしれませんが、私のような
に資源循環について言えば、ゼロエミッション達成というのは、非常に
環境を専門とする者は、企業の
素晴らしいと評価します。
環境活動だけとっても、かなり多
これ以上の活動となれば、高度な経営判断を伴う莫大な投資を必
方面にわたる情報を見ます。その
要とするものになるのかもしれませんが、基本的な取り組みができてい
意味では、環境に関して毎回トー
るエーザイだからこそ、果敢に挑む姿とその成果を業界の中で率先し
マツさんの監査を入れているの
て見せてほしい、と思うのです。
は、信頼性を担保するものとして、非常によいと思います。
̶ 具体的にはどういったことがあるでしょうか?
全体の取り組みとして総括し、グループ全体での取り組みを強化すべ
エーザイの環境活動は、すでに基本的な取り組みはできているわけ
きと思います。まだまだ十分ではないという印象を受けました。
株式会社 エコマネジメント研究所
代表
森下 研
氏
また、環境マネジメントについては、海外も含めたエーザイグループ
ですから、その上で、環境に対する取り組みは第2ステージに差し掛かっ
ているのではないでしょうか。まず、地球温暖化対策については、社会
̶ エーザイについてはどういった印象ですか?
的な背景を踏まえた上での、意欲的な中長期ビジョンの策定が必要で
テレビCM等を通して「がんばっていきましょう。エーザイ」とともに、
す。現状ではそれを達成する実行段階がうまくいっていないと思います。
「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)
」というのをよく目にしています。hhcと
地球温暖化対策は、企業の社会的責任ということと同時に、実際
いう企業理念は、この報告書の全体を見てもわかる通り、素晴らしい
問題としても本格的なCO2 排出権取引などが始まれば、企業にとって
理念だと思います。ただ、
せっかくここまで認知されているhhcですから、
は多くの経済的負担となる訳です。当然、投資家はこのあたりに対し
それを環境とのかかわりでとらえた時に、どのように考えるのかというの
て敏感になっているでしょうし、何よりも積極的に環境に配慮しない企
をもう少し詳しく記載してもらいたいと思いました。環境に対するエー
業は、社会的な責任を果たしていないということで企業活動を継続で
ザイなりの応えとして、それがわかるとよりよいのではないでしょうか。
きない、ということになる日もそう遠くはないでしょう。
医薬品事業を通して、どのように環境に対して向き合っていくのか。
社会に対してどのように貢献するのか、それを具体的に示していただき
̶ 地球温暖化対策以外ではいかがでしょうか?
たいと思います。この全世界的な課題に対して、グローバル企業とし
これはエーザイに限らずですが、製薬企業には、
「生物多様性*」
てトップも含め一丸となって取り組む中で、今後、新たなhhcの展開が
についての積極的な取り組みを期待します。製薬企業の研究開発に
見られることを期待しています。
ついては、詳しいことを存じ上げないので恐縮ですが、少なくとも原
* 生物多様性 : 遺伝子・種・生態系の各レベルでの多様性(バラエティの豊富さ)が保たれ
ていることやその状態。人間の経済活動等による生態系の破壊によって、現在「種の多
様性」の急激な喪失が問題となっている。
料調達、バイオの面などで、生物多様性についての配慮が必要です。
すでに取り組んでいるのであれば、それを公表していくべきです。もち
ろん報告書の中では紙面上の制約がありますから、例えばウェブサイ
トなども含めてエーザイについてもっと知ることができる機会があるとよ
いですね。せっかく一所懸命に努力している取り組みを社会に広く公
1SPGJMF
大学在学中から空き缶問題にかかわる。日本エコライフセンター事
務局長などを務めた後、1993 年、リサイクルシステムづくり、企業
等の環境対策・環境監査の推進、LCAの研究等を中心とした、
(株)
エコマネジメント研究所を設立、代表取締役に就任、現在に至る。
エーザイ株式会社 環境・社会報告書 2009
2009 年8月発行
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