Comments
Description
Transcript
今後のIT化取組方針
今後のIT化取組方針 -業務と情報システムの最適化を目指して- 平成 19 年 9月 東 京 都 目 次 Ⅰ 策定の目的 1 「今後のIT化取組方針」策定の趣旨 ……………………………………………… 1 2 方針の位置づけ………………………………………………………………………… Ⅱ 2 都のITをめぐる状況 1 これまでの都のIT化の取組………………………………………………………… 3 2 都のIT化の現況 4 Ⅲ ………………………………………………………………… 電子都庁推進計画後の課題 1 業務改革へのさらなるITの利活用が必要である………………………………… 7 2 IT投資の費用対効果のさらなる向上が必要である……………………………… 8 3 情報セキュリティ対策の強化が急務である………………………………………… 8 Ⅳ 今後のIT化取組の基本的視点 1 業務・情報システムの最適化………………………………………………………… 9 2 IT調達の見直し……………………………………………………………………… 9 3 情報セキュリティ対策の強化………………………………………………………… 10 4 IT人材の育成………………………………………………………………………… 10 5 IT部門の組織改革…………………………………………………………………… 11 Ⅴ 今後の取組施策 1 業務・情報システムの最適化への取組……………………………………………… 12 2 システム総点検の実施と最適化計画の策定・実行………………………………… 14 3 16 システム評価制度の見直し………………………………………………………… 4 IT調達の見直し……………………………………………………………………… 18 5 情報セキュリティ対策の強化………………………………………………………… 20 6 IT人材の計画的な育成……………………………………………………………… 22 7 IT化と業務改革の推進体制の確立………………………………………………… 25 8 IT基盤の更新・利活用……………………………………………………………… 26 9 Ⅵ その他の課題 ……………………………………………………………………… 30 取組施策の具体的進め方 ………………………………………………… 31 Ⅰ 策定の目的 1 「今後のIT化取組方針」策定の趣旨 東京都は、平成 13 年度から実施した「電子都庁推進計画」及びその後の取組により、電 子申請・電子調達等の新たな住民サービスシステムや情報ネットワーク等の基盤整備を進 め、全国自治体トップクラスのIT化を実現しました。 この結果、都のあらゆる職場でITが利活用され、今や業務とITは密接不可分な関係 になっています。 しかしながら、情報システム全体を見渡すと、業務の改善の余地が残されていることや、 類似した機能の情報システムが存在していることなど、都全体として業務と情報システム の最適化1を図ることが大きな課題となっています。 都では、昨年、21 世紀における新たな行財政システムの構築を目指して「行財政改革実 行プログラム」を定めました。団塊世代の職員の大量退職時代を迎え、スリムで仕事がで きる効率的な都庁を実現するため、改めて、都庁全体を俯瞰しITをツールとして業務改 革を推進する新しいITの段階(ステージ)に入る必要があります。 さらに、本格的な少子高齢社会を迎え、限られた資源と組織で、多様化・高度化する都 民のニーズに応えて、質が高くスピード感のある都民サービスを展開していくには、都全 体でのITのさらなる利活用が不可欠です。 また、昨今では、情報セキュリティ対策の強化や予期せぬ災害等に備えた業務継続計画 (BCP)2の整備など、安全性確保のための全庁的な取組が喫緊の課題となっています。 さらに、いわゆる Web2.03といわれる新しい潮流、検索エンジンの飛躍的な発達、電話 網に代わるマルチメディア対応の次世代ネットワーク(NGN)4などITをめぐる新技術につ 1 業務と情報システムの最適化: 業務の改善・改革を伴って情報システムを利活用することにより、都民サービス向上と業務効率化の効果を最大化す るとともに、部局を横断して見渡したときに、情報システム間で機能の重複や運用のアンバランス等による非効率等 がないようにすること(13 頁以下参照) 。 2 業務継続計画(BCP) : 予期しない災害等の発生時に短時間で重要な業務を再開し、事業を継続するために事前に準備しておく対応方針。BCP は Business 3 Continuity Plan の略 Web2.0: 従来(Web1.0)とは異なる新しいウェブの世界の特徴、技術やサービスの開発姿勢の総称。 多くの利用者がコンテン ツの制作、サービスの開発に積極的に参加する「利用者参加」とサービス提供者が、自ら保有する情報を広く公開し、 他者による利用を積極的に促すという「オープン志向」に特色がある。 4 次世代ネットワーク(NGN): 現在の電話網に代わる IP(インターネットプロトコル)技術を利用した次世代型ネットワーク。IP をベースに音声だ けでなく映像やデータ等の広範なマルチメディアサービスを提供する次世代のネットワーク。NGN は Next Generation Network の略 -1- いて、有効性を十分に見極めた上で積極的に採り入れていくことも重要な課題です。 こうした状況を踏まえ、今後の都のIT化について、現在のIT基盤を経営革新ツールに 変えるための取組方針を策定しました。 2 方針の位置づけ 本方針は、「行財政改革実行プログラム」を上位計画として策定するものです。都にお いて戦略的にITを利活用して業務改革を進めるために、IT化に係る手続、制度、体制 及びIT基盤の見直しの方向を明らかにし、業務・情報システムの最適化へ向けた道筋を 示すガイドラインです。 なお、平成 19 年度から平成 23 年度までの5年間を本方針の対象期間とします。 また、対象範囲は、知事部局、行政委員会等、公営企業局とします。 [行財政改革実行プログラム等との関係] 東京都職員人材育成 基本方針 行財政改革の 新たな指針 今後の財政運営の指針 行財政改革実行 プログラム 今後のI T 化 取 組 方 針 業務・情報システムの 最適化計画 -2- Ⅱ 都のITをめぐる状況 1 これまでの都のIT化の取組 (1) 昭和 60 年代 都は、昭和 60 年9月に「東京都OA化推進計画(第一次) 」を、さらに昭和 62 年 11 月に「第二次東京都OA化推進計画」を策定し、都立病院情報システム、税務情報 総合オンラインシステム、財務会計システム等の大量定型事務を処理する基幹業務シ ステムや災害情報システム等の情報提供系システムを整備してきました。これら各種 情報システムによって、窓口業務、情報提供、安全対策等の都民サービスの向上が図 られるとともに、行政の簡素・効率化が推進されました。 また、ワープロ、ファクシミリ、専用端末機等のOA機器が多数導入され、事務処 理に必要不可欠な機器として定着しました。 (2) 平成3年(新都庁舎移転)以降 平成3年の新都庁舎移転時には、インテリジェントビルとして東京都行政情報ネッ トワークや東京都カードシステムなどを整備しました。 しかし、新都庁舎移転時期にOA経費が急激に増大したため、平成4年には、 「これ からのOA化に向けて(OA化指針)」を策定し、膨らんだOA予算の見直し削減に 努めました。その後、平成7年の「これからの都の情報化のあり方」及び平成9年の 「情報化推進計画」によって、それまでの情報機器の活用を目的としたOA化から、 情報の活用を目的とした高度情報化の段階(ステージ)に入りました。 同時に、情報システム統制の取組として、システムアセスメント制度によるシステ ムの開発目的、運用状況等の妥当性の検証や汎用大型コンピュータからのダウンサイ ジング5やアウトソーシングによるシステムの改善に取り組みました。 (3) 平成 13 年以降 平成 13 年からは、 「電子都庁推進計画」 (平成 13 年度∼15 年度)に基づき、ITの 急速な進展やインターネット人口の増加などの社会環境の変化に的確に対応するた め、本庁・事業所のネットワークの増強、インターネットを利用した電子申請・電子 調達の導入、TAIMS6端末の職員一人1台体制の整備など、都政にITを積極的か つ効果的に導入することにより、都民サービスの向上や事務の効率化を図りました。 5 ダウンサイジング: 6 大型汎用コンピュータを小型機種を使ったシステムへ再構築し、コスト削減や開発期間の短縮を行うこと。 TAIMS: Tokyo Advanced Information Management System(東京都高度情報化推進システム)の略。情報系ネットワークを 中心として形成される基盤システム。TAIMS 端末は、パソコン、電子メール、掲示板、各種業務端末等の機能を持つ。 -3- 都のI T化の流れ 都 の計 画 「今 後 のI T 化 取 組 方 針 」 「電子都庁推進計画」 「最 適 化 計 画 」 平成12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 2005年度 2000年度 国 の動 き 「e-Japan 「e-Japan 戦略」 IT新改革 戦略 戦略Ⅱ」 セキュア・ジャパン 2006∼ アナログ 波停止 地上放送のデジタル化 解消 ブロードバンドゼロ地域の解消 2 23 2010 都のIT化の現況 (1) IT基盤の概要 現在、都では、概ね職員一人1台のTAIMS端末を始め、次のようなIT基 盤が整備され、各種業務において広く日常的に利用されています。 都のIT化は、IT専門誌や大学による最近の調査で高い評価を得ており、全国の 自治体の中で上位にランクされるまでになっています。 第二庁舎及び議会棟 第一庁舎 東京都ホームページ アクセス数 約22,000件/日 各 フ ロア 各フロア 支 線 L AN 1 0 0 M b p s イ ンター ネ ット 支 線 L A N 1 0 0 M b p s T A IM S 端 末 T A IM S 端 末 インターネット インター ネ ット デ ー タセ ンター フ ロア スイッ チ フロア スイ ッチ LG W AN LGWAN 庁外各事業所 庁内ス ー パー バ ック ボ ー ン T A IM S 端 末 光ケーブル 光 ケ回線等 ーブル回 線等 T A IM S 全 庁 サ ー バ等のシステム サーバ群 幹 線 L AN 1Gbps 中 央 コン ピ ュ ー タ 室 職員メール送受 信数 230,000 件/日 [情報システム基盤] -4- 接続スイッチ 事 業 所 LAN 庁外スーパーバックボーン 1 2 8 K b p s∼ 1 0 0 M b p s (約 600 事業所) TAIMS端 末 スーパーバックボーン 約 31,000 台 約 730 回線 都のIT基盤(知事部局等) 凡例: IT基 盤 =基盤等の分類 =情報システム部整備 =部局整備 =外部団体整備 =情報システム基盤やネットワーク、TAIMSを活用し共有利用しているシステム群 情報システム基盤 データ通信ネットワーク(TAIMS系、業務系、音声系) 情報系ネットワーク (スーパーバックボーン) 部門LAN(事業所LAN、独自部門LAN) 共通基盤システム TAIMS TAIMS(グループウェア) TAIMS端末 インターネットデータセンター(IDC) 内部認証システム 総合行政ネットワーク(LGWAN) 庁内連携システム 住民基本台帳ネットワーク 電子認証基盤 内部認証基盤 LGPKI(組織認証基盤) 外部認証基盤 中央コンピュータ室運営 JPKI(公的個人認証) 基盤を活用している業務システム群 民間認証サービス TAIMS利用システム 文書総合管理システム カードシステム 庶務事務システム e-人事システム 電子申請システム 電子調達システム 財産情報システム 予算係数情報システム 財務会計システム 個別単独システム 人事・給与システム 災害情報システム (2) 外 情報システムの全体経費 都の情報システム関連予算の全体額は、新都庁舎移転直後の平成4年度が ピークで、約 730 億円に達していました。その後、大型開発案件の終了、情報 システムのダウンサイジングなどによる経費削減努力により、縮減してきました。 「電子都庁推進計画」 (平成 13 年度∼15 年度)に基づくシステム整備のための 一時的な経費増もありましたが、その後、500 億円以下に抑えています。 -5- 800 (億円) 情報システム関連予算の推移 700 600 500 400 300 200 100 0 0 2 3 4 1 8 5 9 6 7 61 62 63 H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H1 H1 H1 H1 H1 H1 H1 H1 H1 H1 S S S (知事部局・行政委員会・公営企業局・警視庁・東京消防庁の合計) 平成 19年度の情報システム関連予算は、約 460 億円(知事部局、行政委員会、 公営企業局、警視庁及び東京消防庁の合計)ですが、内訳については「電子都庁 推進計画」に基づく大規模な情報システムの新規開発は終了しているため、保守 運用経費が約 9 割(約 400 億円)を占めています。 -6- Ⅲ 電子都庁推進計画後の課題 都のIT化は、 「電子都庁推進計画」等により、基幹システムの構築が終了するとともに、 ネットワーク等の情報インフラが整備され、都民サービスから内部事務まであらゆる業務 でITが利用されています。ⅠT化のステージとしては、電算機導入の第一段階を終え、 業務のIT化の第二段階の取組を一巡し、組織全体としての最適化が課題となる第三段階 を迎えたところといえます(下図参照)。 電子都庁が実現し、業務システムが高度化した一方で、都庁全体の業務・情報システムを 経営の視点から見ると、以下のような課題も生じています。 1 業務改革へのさらなるITの利活用が必要である ITを利用して業務の効率化を図る場合、単に従来業務をITで置き換えるのではな く、手続の簡略化や添付書類の省略など、それまでの業務フロー自体を十分見直し、手 作業で処理する部分も含めた業務全体の見直しを図ることが重要です。 その意味で、本来、IT化は業務改革とセットで進めていく必要がありますが、これ まではこの点が必ずしも十分とはいえなかった面があります。今後は業務改革に向けて ITを一層有効に利活用していくことが求められています。 -7- 2 IT投資の費用対効果のさらなる向上が必要である 都全体のIT経費は、これまでの情報システムのダウンサイジングやシステム経費の 適正化の取組により大幅に削減されてきました。 しかし、依然として都全体では多額のIT経費がかかっており、現状に満足すること なく、一層の経費抑制につなげていかなければなりません。そのためには、現在、オー プンシステム7化が中心になりつつある情報システムに適合した評価基準を確立してい くことが必要です。今後、情報システムの効果について、より客観性を持たせるための 評価方法や評価指標の見直しを行い、費用対効果を明確に示すこと、この評価に基づい て改めて情報システムの必要性や経費全体を見直すことが求められています。 3 情報セキュリティ対策の強化が急務である 近年、ITは、各家庭でのインターネットの普及を始めとして、社会経済活動全 般で活用されています。IT化の進展により利便性が向上する一方で、コンピュー タウイルスによる情報漏えいや企業の大規模システムの障害発生などが、私たちの 日常生活に深刻な影響を及ぼしかねない状況にあります。 情報漏えいやシステム障害などの情報セキュリティ事故は、今日多くの業務で情 報システムの利活用が進んでいる都においても、発生の危険性が潜在しています。 都では、これまでも情報セキュリティポリシーの制定や研修の実施など、情報セ キュリティ対策に尽力してきましたが、より一層の対策強化が急務となっています。 7 オープンシステム: 様々なメーカのソフトウェアやハードウェアを組み合わせた情報システム。今日では、Unix や Windows が代表的。 -8- Ⅳ 今後のIT化取組の基本的視点 このような「電子都庁推進計画」実施後に顕在化している課題を都は今後のIT化の取 組の中で抜本的に解決していかなければなりません。 そこで、次の「都庁ITビジョン」を掲げ、これまで整備してきたIT基盤を業務改革 のツールとして適切に利活用し、より高度な行政サービスとスリムで効率的な行政運営 を目指します。 【都庁ITビジョン】 1 質の高い行政サービスを実現するIT 2 費用対効果の高い効率的な執行体制を築くIT 3 高い情報セキュリティを確保し都民に信頼されるIT この都庁ITビジョンの達成へ向けて、都は次の基本的視点に立って取組を進めてい きます。 1 業務・情報システムの最適化 都のIT基盤を「行財政改革実行プログラム」で掲げている「スリムで仕事ができる 効率的な都庁」を実現する確かなツールに変えるため、従来、情報システムでカバーし ていた部分のみではなく、紙や口頭で行っている部分を含めた、業務全体をとらえた最 適化(業務改善)を行っていきます。 さらには、相互に関連性を持つ情報システムについては、局や部といった組織を横断 した情報システムの連携等によるさらなる業務効率化の可能性を探り、見直していきま す。 また、業務・情報システムの最適化を一層推進するために、現行のシステムアセスメ ント(評価)制度について、業務改革の視点からの評価をより重視するなどの見直しを 行っていきます。 2 IT調達の見直し ITの調達にあたっては、これまでも情報システムのダウンサイジングやシステム経費 適正化の取組により、経費の削減に努めてきました。しかしながら、情報システムの多機 能化・高度化等に伴い、発注仕様の定義や経費見積りの難しさ、保守運用委託契約で特命 随意契約が多いことによる運用経費の硬直化などの問題が存在しています。 厳しい財政状況のなかでIT基盤を維持していくためには、高品質かつ低廉なITの調 -9- 達が求められています。 このため、ITの調達において、公正な競争環境を確保しながら、一層のコスト低減に 取組むための見直しを推進していきます。 3 情報セキュリティ対策の強化 近年、情報セキュリティに係る事故の報道件数が増大しています。 社員・職員や委託先の従業員における、パソコンの盗難やウイルスに感染した端末から 個人情報が漏えいするなどの事案が発生しており、都もそのリスクは例外ではありません。 都では、これまでも情報セキュリティ対策に取り組んできましたが、情報セキュリティ 対策の達成レベルの全庁統一的な底上げ、あるいは職員の情報セキュリティへの意識向上 等が課題となっています。 このような状況を踏まえ、都では昨年、 「情報セキュリティ事故をゼロにする。」ことを 目標にした「情報セキュリティ対策の強化に向けた新たな取組」を策定しました。 情報セキュリティに係る脅威及び対策技術等は日々変化しています。現在は万全である 対策が、いつ破られるか分かりません。このため、絶えず、情報セキュリティ対策の実効 性を評価し、見直していきます。 4 IT人材の育成 ITを活用して業務を改革するためには、技術的な知識に加え、経営戦略の一環とし てIT利活用の戦略を進めることができる力を持った人材を計画的に育成していく必要 があります。 これからは、業務部門が達成しようとする政策目標を理解し、問題点を分析し、解決 策を提示し、その目標達成に資するIT化を推進していくことのできる人材が求められ ます。 また、技術の面に関しても、発注仕様書の作成や予定価格の積算が適切に行え、新し い情報技術や製品の知識を持ち、委託業者等に対して対等に交渉できる人材がますます 必要となってきます。 しかし、これらの要請に応えられるスキルと経験を備えた人材は、情報システムの数 の増加・複雑化、アウトソーシングの進展、情報セキュリティ対策の高度化、職員大量 退職時期の到来などを背景に、絶対的に不足してきています。 今後、中央・局のIT管理部門や主要情報システムの所管部門等を担う職員の育成に向 けて、研修、OJT、自己啓発等を通じ、以上のようなスキルの向上を図っていきます。 一方、即戦力、高度な専門性といったニーズに応える必要がある場合には、外部の有能 な人材も積極的に活用していきます。 また、情報システム担当部門以外の職員においても、TAIMS端末等を有効に使い こなして円滑な意思決定や業務遂行につなげる一人ひとりの情報リテラシーの向上に加 え、ITを活用して業務改革やサービス改善に結びつくアイディアを提案できる能力を - 10 - 育成していきます。 5 IT部門の組織改革 全庁的な見地からITを利活用した業務改革を強力に推進していくには、局横断的な 調整を行う強力なリーダーシップが必要です。そのために、平成 19 年度から情報統括責 任者8を設置しました。そして、この情報統括責任者の下でIT中央管理部門及び各局I T管理部門が共同して業務・情報システムの見直しを推進していく体制を確立し、機能 させていきます。 IT中央管理部門は、その役割について、従来の基幹システムの整備、保守から、I Tの利活用による業務改革の支援(コンサルティング、新しい技術・手法の提案、調達 統一基準の策定・指導)と低コストで安全なIT基盤の提供へと比重を移し、情報統括 責任者を補佐して、都における業務・情報システムの最適化等を推進していく役割を果 たしていきます。 8 情報統括責任者: 組織の経営戦略を実現するためのIT戦略を企画立案し実行する中核的役割を担う人。 - 11 - Ⅴ 今後の取組施策 1 業務・情報システムの最適化への取組 (1) 最適化の考え方 業務・情報システムの最適化は、大きく 2 つの視点で捉えます。 第一に、業務・情報システム単位で見た場合に、情報システムだけでなく業務 そのものも含めた全体を通じて、最少の経費で最大の効果を上げていることです。 それには、ITの長所(情報の共有など)を極力活かしながら、業務の見直し・ 改革が行われていることが条件になります。 第二に、全庁を見渡した場合に、関連のある他の業務・情報システムとの関係 において、データの入出力や管理の重複による無駄がないこと、利用技術・運用 レベルが適正でアンバランスがないことです。 具体的には、以下のような項目に重点を置いて、業務・情報システムを見直し、 最適化を進めていきます。 ア システムの効果検証 (ア) 経費の計画値からの乖離の有無の確認 (イ) システムの定量的効果、定性的効果の可視化・検証 (ウ) システムの必要性の検証 イ 業務改革(BPR9)の実施状況の調査 (ア) 業務の棚おろし(業務プロセスの可視化) (イ) システム化前・後におけるBPRの達成状況の確認 (ウ) 将来に向けたBPRの可能性の調査 ウ システムの効率化の可能性調査 (ア) データの連携状況及び更なる連携の可能性の調査 (イ) システムの標準化・共通化の可能性の調査 エ 利用者ニーズの反映 (ア) システム化の検討段階における利用者等の意見の反映状況の確認 (イ) 運用段階における利用者等の意見を反映する仕組みの確認 (2) 最適化のプロセス ア 9 システム総点検の実施と業務・情報システムの最適化計画の策定 BPR: 業務内容や業務の流れを見直すこと。Business Process Reengineering の略 - 12 - まず、IT管理部門(中央・局)は、主要な情報システムを対象として、当 該システムを利用する業務担当者の参加の下、システム総点検(運用段階のシ ステム評価)を実施します。その点検結果に基づき、改善の必要がある業務・ 情報システムについて最適化計画を策定します(→以下項目2) 。 イ IT化を統制する制度の見直し また、システム総点検と並行してIT化を統制するシステム評価、調達、情 報セキュリティ等の各制度を見直し、情報システムのライフサイクルを通じて 業務改革の推進、経費適正化、情報セキュリティレベルの向上等を図るマネジ メントサイクル(計画→実行→評価→改善)を確立していきます(→以下項目 3∼5) 。 一方、組織面では、情報統括責任者を中心とした体制により、都庁全体でI T化と業務改革を一体的に強力に推進していきます(→以下項目8) 。 ウ 業務・情報システムの最適化推進 そして、策定した最適化計画を着実に実行していくとともに、最適化計画対象 外の情報システムについても、業務改革、経費適正化、情報セキュリティの向 上等を志向したマネジメントサイクルを適用していくことにより、都庁全体の 業務・情報システムの最適化を進めていきます。 最適化の理念とプロセス 業務・情報システムの最適化とは 1 業務・情報システム単位で見た場合 IT利活用+業務改革→最大の効果 2 都庁全体を見渡した場合-他の業務・情報システムとの関連で- 機能重複等のムダや運用のアンバランスがない システム評価制度 の見直し システム総点検 (運用段階のシ ステムの評価) の実施 IT調達の見直し 最適化計 画の実行 最適化計画 の策定 ※IT中央管理部門と各局IT管理部門とが協力して実施 情報 統括 責任者 IT・業務改革会議 システム評価委員会 - 13 - スリムで仕事が できる効率的な 都庁 情報セキュリティ 対策の強化 最適な 業務・情報 システム 2 システム総点検の実施と最適化計画の策定・実行 IT管理部門(中央・局)では、システム評価委員会(項目7参照)における民間専門家 の意見なども参考に、システム総点検を実施していきます。 さらに、システム総点検の結果を踏まえ、事業効果の低いシステムの改廃も含め、総務 企画部門などと連携して、業務・情報システムの将来の構想や要求機能、制度改正、優先 順位などを踏まえた最適化計画を策定・実行していきます。 (1) システム総点検の実施 ア 実施目的と着目点 各情報システムが抱える問題を明らかにして、都庁全体の最適な業務・情報シス テムの実現につなげていくためにシステム総点検を実施します。 具体的には、稼働中の情報システムについて、その有効性の検証や、情報システ ムの効率化及び業務のさらなる改革につながる課題の洗い出しを目的として、平成 19 年度から 20 年度まで実施します。また、実施にあたっては、システム化による 効果(費用対効果の検証など)や、業務改革(BPR)の実施状況、他の情報システム との連携など標準化・共通化の可能性について着目していきます。 イ 点検対象の情報システム (ア) IT中央管理部門実施分:原則として、運用開発経費が1億円以上、かつ、 ユーザーが複数局にわたる情報システム 【文書総合管理システム、電子調達システム、人事給与 システム、内部庶務事務システム、財務会計システム、 e−人事システム、行政情報ネットワーク、内部認証 システム、データセンター、TAIMS、東京都カー ドシステム、予算計数情報システム】 (イ) 各局実施分 :IT中央管理部門実施分以外の各局等の基幹システム (各任命権者を含む) 【電子カルテシステム等、都営住宅管理総合システム、 税務総合支援システムなど】 ウ 進め方 (ア) IT中央管理部門実施分:平成19∼20年度に実施 まず、システム評価委員会において点検方法・指標について検討します。 平成19年度は、その検討結果を踏まえ情報システムを点検します。そして、こ の点検結果に基づき、必要に応じて詳細な追加点検を実施します。この追加点検 は、20年度末までに実施・完了させます。 - 14 - (イ) 各局IT管理部門実施分:平成20年度に実施 実施にあたっては、前年度にIT中央管理部門が実施した点検で得られた経験 や知識を活用します。 (2) 最適化計画の策定・実行 平成20年度以降、システム総点検の結果を踏まえ、IT中央管理部門と局IT管理部 門及び業務所管部門とが協力して、業務の見直しを検討します。さらに、この見直しに 伴い情報システムの改修などが必要な場合は、システムの更新時期などを考慮しつつ、 さらに、全庁的な視点からの費用対効果も踏まえて対応を検討します。 これらの業務・情報システム全体の業務改善案を、最適化計画としてとりまとめます。 最適化計画の策定後、各局IT管理部門及び業務所管部門は、IT中央管理部門の支 援を受け、最適化計画を着実に実行していきます。 - 15 - 3 システム評価制度の見直し IT中央管理部門では、情報システムのマネジメントサイクル(計画→実行→評価→改 善)を確立するために、システム評価委員会(項目7参照)での民間専門家の意見なども 参考に、現行のシステム評価制度(システムアセスメント制度)を見直し、業務の効率化 や情報システムの費用対効果の更なる向上を目指します。また、併せて各局への指導・支 援体制を確立します。 (1) 評価の視点、指標の見直し 現行のシステム評価制度では、業務改革の視点からの評価が十分ではありませんで した。 そこで、情報システムの導入の際、制度そのものを含めた業務の抜本的改善の可能 性についての評価をより重視します。評価の実施にあたっては、情報システム担当部 門だけではなく、業務部門や必要に応じて総務企画部門も参画する仕組みとします(項 目7参照)。 また、現行のシステム評価制度で運用している調査票についても、例えばバランス・ スコアカード10など民間企業で採用されている評価指標の適用など、総合的な評価指標 の補強を検討していきます。 これらの取組みを通じて、情報システムの適切な評価を実施していきます。 (2) 運用段階評価の重視とIT中央管理部門によるフォローの充実 今日、都の情報システムは、ほとんどがオープンシステム化されています。技術 の進歩が早いITの世界では、情報システムのライフサイクルが短くなってきてい ます。これまでは、情報システムの運用段階の評価は稼動後5年を実施時期として おり、情報システムの態様の変化への柔軟な対応が不足していました。 このため、情報システムの態様や重要度に応じて必要な時期に評価できるように、 現行のシステム評価制度を改め、運用します。 また、IT中央管理部門では、評価実施後の改善計画の進行管理を適切に行う等、 フォローも充実していきます。 これらの取組みを通じて、継続的な業務・情報システムの改善につなげていきま す。 (3) 各局IT管理部門による評価の実施と全庁的な情報共有による最適化の推進 現行のシステム評価制度では、知事部局のシステムについてはIT中央管理部門に おいて、公営企業局、教育庁のシステムについては各局IT管理部門において、それ ぞれ一定規模以上の情報システムを対象に評価を実施しています。 10 バランス・スコアカード: 企業の業績や経営内容を多面的に評価する手法。財務の視点、顧客の視点、内部プロセスの視点、学習と成長の視点 という 4 つの基本評価指標を用いる。 - 16 - しかし、システム評価対象外の情報システムについて、例えばシステム化の前提とな る業務等の改善検討が不十分なため、システム化による効果を十分引き出せないといっ た課題があります。 今後、IT中央管理部門では、現行システム評価制度の対象外である情報システムに ついて、各局IT管理部門が中心となり評価を実施するよう、企画段階での業務改善を 含めた整理検討項目を明示するなど、情報システムの評価制度をより充実させていきま す。 また、IT中央管理部門では、各局における情報システムの開発情報や稼働中の情報 システムに関する情報を集約・整理します。これにより、各局IT管理部門は、情報シ ステム開発の際、IT中央管理部門の保有する情報を参考に、例えば類似機能を有する 既存の情報システムとの一元化を視野に入れて検討することが可能になります。こうし た取組を通じて、都全体の業務・情報システムの最適化を推進していきます。 - 17 - 4 IT調達の見直し 情報システム関連経費の一層の縮減を図っていくため、契約内容等の明確化を進めるた めの各局への支援強化を行う等、現行の調達制度の見直しを行っていきます。 (1) マニュアルの充実 IT中央管理部門では、現行の「IT経費適正化マニュアル」について、より一層 内容の充実を図り、情報システムの調達や保守運用委託契約に関する契約内容等の明 確化を推進していきます。 ア 発注仕様の明確化 情報システムの開発や保守運用委託の内容を明確にするためには、標準的な発注 仕様の整備が必要です。 今後、各局が発注の際に仕様を明確化できるよう、 「参考仕様書」を整備・提供し ていきます。 イ 経費見積の精度の向上 公正な競争環境下で適切な価格の情報システムを調達するためには、経費見積の 精度向上が不可欠です。 そのために、例えば保守料算定の考え方や再リース時における経費見積り上の確 認項目を追加するなど、積算に関する内容をより一層充実させていきます。 ウ 競争性の向上 これまで情報システムの保守運用委託契約は、システムに求められている安定度、 システム規模等により、競争性の導入については困難な面がありました。 今後は、管理運用面において、システムの開発業者と特命随意契約せざるを得な い項目と、情報システムに関する一定レベルの知識や経験を有していれば履行可能 な項目とに分離する考え方を整理し、提示します。また、システム開発時に整備す べきドキュメント類の参考事例を提示する等を通じ、一層の競争性向上につなげて いきます。 (2) 参考事例の共有 企画段階での経費見積りは、過去の多くの類似した情報システムの事例を比較検討す ることが有効です。 IT中央管理部門では、情報システムの代表例のいくつかについて、規模や要した経 費などの情報をデータベースとして整備するなど、過去の事例を参考情報として活用で きる仕組みの構築を検討し、各局への支援強化を図っていきます。 - 18 - (3) 総合評価一般競争入札の見直し 情報システムの開発委託契約は、「総合評価一般競争入札」方式を原則としています が、現在の運用では次年度以降の開発経費や運用経費などライフサイクル全体で必要と なる経費を縮減する視点が必ずしも十分ではありませんでした。今後は、後年度負担額 をより重視することを検討していきます。 - 19 - 5 情報セキュリティ対策の強化 平成 18 年度に策定した「情報セキュリティ対策の強化に向けた新たな取組」に掲げ る情報セキュリティ事故ゼロの実現に向けて、全庁的に情報セキュリティ対策の強化 を推進していきます。 (1) 東京都情報セキュリティポリシーの改定 現行の東京都情報セキュリティポリシー(東京都情報セキュリティ基本方針 及び対策基準)をサイバー攻撃など新たな脅威への対応や、情報の重要度別分 類及び管理基準等を明記したものに改定し、原則として全庁共通に適用します。 この改定後、各局において現行の情報セキュリティ実施手順を新しい東京都情 報セキュリティポリシーに適合するよう改定作業を進め、順次運用していきま す。 これらの取組を通じて、新たな東京都情報セキュリティポリシーによる対策を 全庁に渡って展開させていきます。 (2) 職員の意識向上 「セキュリティ一人ひとりが責任者」11と言われるように情報セキュリティ対 策を実施する上で、人的な対策は極めて重要です。 今後は、職員の意識啓発活動を強化し、適正な情報資産の管理等について重点 的な取組を行います。 具体的には、遵守事項について職員への周知徹底を図り、また、全管理職を対 象として、新たな東京都情報セキュリティポリシーの内容を中心とした教育を 実施していきます。 さらに、各職場において、管理職から一般職員に対する最新の身近で具体的な 実例を交えた教育を行うなど、情報セキュリティ対策の重要性に関する全庁的 な意識啓発活動の強化に取り組んでいきます。 (3) 定期的な自己点検・監査の実施 情報システムにおいて、定期的な自己点検及び監査を実施し、情報セキュリテ ィ対策状況の正確な把握と迅速な改善を行います。 具体的には、各局ホームページなど脆弱性が危惧される情報システム等を始め としたすべての情報システムについて、情報システム所管部署自らが、定期的 なセキュリティ点検を実施していきます。さらには、情報システム所管部署以 外の第三者の視点から、情報セキュリティ対策の状況を確認するための監査を 実施していきます。 11 「セキュリティ一人ひとりが責任者」: 平成 18 年度東京都情報セキュリティ強化月間における最優秀情報セキュリティ標語 - 20 - これらの情報セキュリティにおける自己点検・監査体制の確立を通じて、全庁 的な情報セキュリティレベルの維持向上につなげていきます。 (4) インシデント12情報の全庁集約・共有化 情報セキュリティ対策のレベルを全庁で維持向上させるためには、まず、全庁 で情報セキュリティに係るインシデント情報を一元化し、共有することが必要 です。 今後は、OS(オペレーティング・システム)13などのソフトウェアの脆弱性や 最新のコンピュータウイルスに関する情報セキュリティ関係情報を、TAIM Sを活用してデータベース化し、提供することで、迅速・的確な情報セキュリテ ィ対策を行っていきます。 12 インシデント: 重大な事故につながりかねないような事象、事案 13 0S(オペレーティング・システム) : コンピュータのハードウエアやソフトウエアの動作を制御するプログラムの総称 - 21 - 6 IT人材の計画的な育成 ITを利活用した業務改革を推進できる人材を計画的に育成・確保していきます。また、 日常の業務を担う一人ひとりの職員のITスキルのレベルアップを図ります。その際、「東 京都職員人材育成基本方針」で示されたプロ職員としての強みを主体的に確立していく視点 を踏まえて、職員が自立的・主体的にITのキャリアアップが図れるよう配慮していきます。 さらに、高度な専門的能力を有する外部の人材を積極的に活用していきます。 (1) ITを利活用した業務改革を推進できる人材の育成 「電子都庁推進計画」等に基づき構築した多くの情報システムは、開発後一定期間が 経過し、今後は、システム総点検を行った上で見直しを図っていくことになります。こ の見直しにあたっては、ITの技術的な知識だけでなく、業務と情報システム全体を見 渡して問題点を「見える化」し、改革を推進していける能力が不可欠になってきます。 こうした能力を持つ人材を早急に育成するため以下の施策を推進していきます。 ア IT管理部門等のリーダーとなる管理職の養成を目的とした「情報化推進リーダー 研修」を「IT・業務改革リーダー研修(仮称)」に改めます。業務改革手法や情報 システムの仕様定義、積算手法などのカリキュラムを拡充し、ITを利活用した業務 改革の推進ができる能力を付与していきます。 また、同研修に 19 年度から導入した産業技術大学院大学における問題解決型の演習 (PBL:Project Based Learning)を充実し、より実践的な研修としていきます。 具体的には、実際の都の業務を対象にして、現状分析、課題抽出及びITを利活用し た新たな業務モデルの構築といった実践的な演習を実施するなど、最適な業務・情報 システムの実現へ向けた改革を提案できる能力を身に付けます。 さらに、管理職候補者がITを利活用した業務改革の重要性や手法を習得する研修 等の方策を検討していきます。 イ 各局の情報システム担当者等を対象とした現行の「システム評価実務研修」を「I T・業務改革実務研修(仮称)」に発展させ、プロジェクトマネージメントやEA14手 法の講義を充実するとともに、実践的な手法や能力を習得するため、実例を題材にし た演習を採り入れるなど、カリキュラムを見直していきます。 一方、委託業者との対等な折衝などに必要なより高度な実務スキルを習得するため に、産業技術大学院大学などの機関と連携して継続的に学習する研修なども検討して いきます。 ウ こうした研修を受講した職員が習得したノウハウをOJTを通じて効率的に組織 へ還元できるよう、情報システム構築・運用の打合せ会議の進行や業者折衝等のポイ 14 EA(エンタープライズ・アーキテクチャ): 組織全体を通じた業務の最適化を図る設計手法。Enterprise - 22 - Architecture の略 ントをまとめたOJTチェックシートの作成などの方法を検討します。 エ 自己申告制度や公募制などを活用して、IT人材として意欲と適性のある職員の発 掘・活用に努めていきます。 (2) 職員のITスキルのレベルアップ 原則一人 1 台配備されたTAIMS端末を最大限有効に使いこなして、適切かつ迅 速な意思決定や業務遂行に役立てていくため、職員(管理職を含む。)のITスキルの 一層の向上を図ります。 その際、都の職員として習得しておくことが望ましい基礎的レベルから上級レベル までのIT利用スキルの目安を明らかにし、研修を行う際の目標とするとともに、職 員が主体的に自己啓発・能力開発に取り組んでいけるようにしていきます。 一方、各職場内においてデータベース・ソフトを利用して情報・業務の「見える化」 や効率化を推進したり、事業所内のネットワークの管理を適正に行う際、そのリーダ ーに必要なデータベースやネットワークなどのスキルに関する研修やマニュアル提 供などの支援を充実していきます。 なお、ITスキルの研修の実施に当たっては、効率的、効果的に行うためにe− ラーニングの活用も検討していきます。 さらに、高度なスキルを身につけた実務担当者を全庁で育成・活用していくため、 まず、各職場・職務ごとに求められるITスキルの内容・レベルの一覧(スキル・マ ップ)を作成します。その上で、直近の高度なIT研修を受講した者を一定のITス キルが要求されるポストに局横断的かつ計画的に配置管理して、スキルを向上させ、 活用していくキャリア・パスの確立を目指していきます。 (3) 外部人材の登用 職員の大量退職時期を迎え、研修やOJTだけでは、短期間に高度なスキルを持っ た職員を育成することは困難です。また、そうした人材を全て都の内部で確保しよう とすることは、必ずしも適切とはいえません。 こうしたことから、即戦力となる人材を確保するため、外部の高度な専門的知識や 経験を有する人材の積極的な登用が必要となっています。 ア 専門人材採用の活用 都ではこれまでも、経験者採用試験等を通じて、民間企業などで情報システムの構 築・運用経験がある職員を採用し、IT関連部門に配置してきました。平成 19 年度か らは新たに実施される専門人材(主任)採用試験も活用して、情報システム業務の即 戦力となる職員を確保していきます。その上で、職員の有する専門性と職場の求める 専門性のマッチングを配慮しながら配置していきます。 イ 任期付き職員採用制度の活用 業務改革のコンサルティングや情報システム構築のプロジェクト管理などの経験 - 23 - のある外部の専門家を、任期付き職員採用制度を活用して、情報システムの更新時の プロジェクトリーダーやシステム評価など高度なITスキルが求められるポストに 配置します。これにより、組織として高度な専門知識を採り入れるとともに、個々の 職員においては業務を通じて専門家からノウハウを習得して、スキルの向上効果も期 待できます。 - 24 - 7 IT化と業務改革の推進体制の確立 (1) ア IT中央管理部門の整備 情報統括責任者 都の経営戦略と一体となったIT戦略を構築し、業務改革を踏まえたIT化の 推進及び既存情報システムの見直しを推進していくために、 「情報統括責任者」 を設置しました。 「IT・業務改革会議」の座長として、業務改革を踏まえた都庁全体のIT化 について総合的な調整を行い、全体最適化を図っていきます。 イ IT化・業務改革の一体的な推進体制 情報統括責任者を補佐して、業務・情報システムの一体的な改革を全庁的に統 制・支援していくため、行政改革推進部門と情報システムの評価・指導部門の組 織を統合しました。これにより、全庁的なITを利活用した業務改革プログラ ムの進行を統括・支援していきます。 ウ IT・業務改革会議 IT政策・業務改革の企画及び推進、業務・情報システムの見直し、情報セ キュリティ対策などを全庁挙げて推進するために、情報統括責任者を座長とす る「IT・業務改革会議」を設置しました。 知事部局だけでなく、公営企業局及び教育庁を構成員に含め、全庁横断的な視 点から業務・情報システムの見直し等を行っていきます。 エ システム評価委員会 民間専門家の専門知識を採り入れながら、業務・情報システムの最適化を推進 するために、情報統括責任者を委員長にITに関する専門家等で構成する「シ ステム評価委員会」を設置しました。 IT中央管理部門では、システム評価委員会の意見を参考にしてシステム総 点検を実施するほか、システム評価制度の見直しを進めていきます。 (2) 局IT管理部門の整備 各局情報化推進担当においても、各局のITを利活用した業務改革を支援してい く機能の強化に取り組んでいきます。 具体的には、局基幹システムの総点検の実施及び最適化計画の策定・実行にあたっ て、局の総務企画部門、業務所管部門が参画した体制の整備を、大規模なシステム 再構築等の際には必要により民間システムインテグレーターやコンサルタントの 活用等を検討していきます。 - 25 - 8 IT基盤の更新・利活用 都のIT基盤である情報系ネットワーク及び共通基盤システム(TAIMS、内部認証な ど)等は、業務遂行に必要不可欠な重要ツールとなっており、様々な業務上のニーズへの対 応、信頼性や安全性の向上、情報システム間連携の柔軟性の確保等、一層の改善強化を図 る必要があります。 このため、IT中央管理部門は、業務・情報システムの最適化を容易にし、「利活用しや すいIT基盤」の実現を目指したIT基盤の更新・利活用を推進していきます。また、I T基盤の効率的な連携により、技術、運用両面で適切なコストでのサービス提供を推進し ます。 「利活用しやすいIT基盤」の実現を目指した将来像 コンピュータ室 (中央コンピュータ室) 利用方法の見直し (TAIMS・内部認証) 連携強化・最適化 TAIMS (内部事務システム) 各システム間のDB最適化 庶務事務・カード 内部認証 画面デザインなどの ユーザビリティ向上 庁内映像設備のデジタル化 インターネットデータセンタ (インターネットデータセンタ) ホームページの見やすさの向上 (ネットワーク・放送設備) (ネットワーク) 庁外事業所へ 回線環境の改善 (TAIMS・内部認証・ ネットワーク) TAIMSの利用拡大 (電話) 電話設備のIP化の推進 (技術支援) 庁外事業所 システム構築手法の見直し 緊急時対応マニュアル・訓練 (1)IT基盤の最適化 IT基盤は、各情報システム間の連携を支援する汎用性と、ユーザニーズ等に的確に 対応できる柔軟性を備えていなければなりません。次期の更新時期等を踏まえ、TAI MSと内部認証システム間、さらには内部事務システム(庶務事務や職員カード)等の複 数システム間の統合及び共有化など、資源の有効利用によるIT基盤の最適化や事務の 見直しによるコスト低減を図っていきます。 具体的には、TAIMSや内部認証システム等による連携により、それぞれが持つ「情 報提供・流通機能」15を整理し資源の最適化を図ります。また、内部事務システムで使 15 情報提供・流通機能: ホームページのように情報を一方的に配信する機能を情報提供機能、メールや掲示板のように、情報を相互に交換し あう機能を情報流通機能と定義している。 - 26 - 用している基礎DBを共有化して最適化を進めていきます。 さらに、TAIMS端末を最大限利活用できる基盤を目指して、情報セキュリティに 優れた最新の端末の技術16の適用や、TAIMS端末と業務専用端末の一体化の可能性 などを検討し、多面的に最適化を推進します。 (2) IT基盤の信頼性・安定性の向上 現在、職員は一人1台配備されたTAIMS端末から、メールやデータべース、イ ンターネット、業務システムなど様々な手段で情報の交換、収集、共有等を行って、日 常業務に活用しています。 これらはすべてIT基盤上で行っているため、IT基盤の障害は、すべての事務の遂 行に大きな影響を与えることになり、ひいては都民サービスの中断や質の低下を招くこ とになります。これまでも、IT基盤の信頼性・安定性の向上に取り組んできましたが、 より重点的に努めていきます。 今後、保守運用においては、再構築等を契機に委託業者との間にSLA17によるサー ビス確保指標を設定します。また、TAIMS等の利用拡大に伴う、過度のアクセス 集中や機器の障害などの安定稼働を脅かす事態にも的確に対応できる堅牢なシステム とするため、その構築手法を見直したり最新のセキュリティ対策を施すなどして、情 報システムの安定化に努めます。 更に、万が一、システム障害が発生した場合や大規模停電などの事故や災害が発生 した場合にも的確に対応し、情報システムの短時間復旧を可能とするため、マニュア ルの整備や訓練を行っていきます。 (3) TAIMSの利用拡大 平成 17 年 7 月に作成された「都におけるマンパワーの動向と今後の方向」に、「業 務委託(アウトソーシング)の推進」や「人材派遣の活用」が示されているように、 今後多くの派遣職員や委託社員等が同じ都庁内で職員と共に働くことになります。ま た、テレワークなど新たな勤務形態の動向を見据えていくことも必要です。現在、派 遣職員や委託社員は、TAIMSの機能を制限して利用していますが、今後は、情報 セキュリティの確保に留意しつつ、更にTAIMSの利用対象範囲と機能を広げて利 用していく必要が生じてきます。 このため、様々な条件にも対応できる今後のTAIMSの利用拡大の方針を定め、 セキュリティを確保しつつ汎用性を加味した技術的要件を整え、派遣職員等がTAI MSを有効に利用できるようにしていきます。 (4) ユーザビリティの向上 全ての職員等が情報を自在に活用し効率的に事務処理ができるよう、ガイドライン 16 最新の端末の技術: 17 情報セキュリティの向上や管理運用経費の削減を図るため、サーバ側でソフトやファイルを管理して最低限の機能し かもたない端末=「シンクライアント」 、ソフトの実行環境のみ搭載した端末=「リッチクライアント」や暗号化等の 技術 SLA: Service Level Agreement の略 サービス提供事業者が、利用者にサービスの品質を保証する制度 - 27 - の作成や画面デザインを見直すなど分りやすく使いやすい情報システムを目指しま す。 また、超高齢社会を見据えて都民への情報提供など対外的サービスにおいては、音 声読み上げ機能やCMS18等の最新技術を視野に入れ、ホームページの見やすさの向 上を推進します。 更に、島しょ部等、回線速度の速い通信回線の利用が困難な地域には、回線の帯域 圧縮技術19等を利用して、IT基盤等の利用環境の改善を図っていきます。 (5) 中央コンピュータ室の運用管理の見直し 中央コンピュータ室の集約化に伴い、庁内スペースを有効活用するとともに、室管 理やシステム運用を最適化しコスト削減とセキュリティの向上を図ります。 更に、集約後の中央コンピュータ室の運用方法について、外部リソースの活用など 最適化を踏まえた管理手法について検討していきます。 (6) 電話設備のIP化 本庁舎の電話設備は、データ通信ネットワークを共用する方式で内線電話のIP化 が完了しました。 今後は、外線のIP化について通信事業者の公衆用IP電話回線の回線障害に対す る安定化策実施の動向を見据えるとともに、モデル職場で試験的に導入して信頼性を 検証し、災害時等の通信機能を十分確保した上で、試行的かつ段階的に導入を行って いきます。 さらに事業所のIP電話導入についても、通信コストの削減が見込まれることから、 モデル事業所を設定し実証試験を実施します。その結果を踏まえ、各局が行う事業所 電話設備更新などに対応できるIP化の指針を策定していきます。 (7) 庁内映像設備のデジタル化 CHTV設備20は、平成 23 年7月の地上波アナログ放送終了までにデジタル放送対 応設備に更新する必要があります。このため、今後の庁内放送設備のあり方を検討す る中で、データ通信ネットワーク、TAIMS端末を活用した放送の同時IP再送信 21を視野に入れ、議会中継放送、研修教材、都民向け映像などメディア情報の発信に ついて、適切なサービス提供の実現を目指します。 (8) 省エネルギー・省資源への配慮 18 19 20 21 CMS: Contents Management System の略。 Web コンテンツを構成するテキストや画像、レイアウト情報などを一元 的に保存・管理し、サイトを構築したり編集したりするソフトウェアのこと 帯域圧縮技術: 島嶼地区等ブロードバンド環境が整っていない地区において、回線間に設置することで、ネットワークを利用した web アクセスやアプリケーション利用を、ブロードバンド環境により近い状況に改善するしくみをいう。 CHTV設備 : City Hall TV の略。 都庁の構内有線テレビ局(シティホールテレビ) 同時IP再送信: IPネットワークで、放送番組をリアルタイムに再送信すること。 - 28 - 地球温暖化防止へ向けた都庁の温室効果ガス排出量抑制、省エネルギーの取組を踏ま えて、IT基盤の更新にあたっては、必要にして十分な性能を設定するとともに、消費 電力の低い機器、再生可能な材料を用いた製品などを用いて(グリーン購入)、環境へ の負荷の低減へ向けた配慮を行っていきます。 - 29 - 9 その他の課題 都の政策の動向等を踏まえ、下記の事項に係るITの利活用について、必要な研 究・検討を行っていきます。 (1) 災害時等の事業継続計画の整備への対応 東京都事業継続計画の整備の動きに合わせて、防災主管部門、庁舎管理部門と連 携しながら、情報システム等におけるデータバックアップの基準の整備、発災後の 早期復旧のための情報システムの技術支援など、IT管理部門(中央・局)として必 要な対応を検討していきます。 (2) 大量退職に備えた庁内「ナレッジコミュニティ」の構築 都においても、今後の職員の大量退職に対応するために、ベテラン職員等のノウ ハウを集約・継承していく必要があります。 一方で、現在、Web2.0 の特徴が活かされた仕組みの一つとして「ユーザー参加型の Q&Aサイト」の利用が注目されています。 これは、検索エンジンを利用して、不特定多数のユーザーに対して知識などの情報提 供を求めるサービスを提供するサイトのことで、一般にナレッジコミュニティ、知識検 索、知恵袋、Q&Aサービスなどと呼ばれています。 都庁においては、港湾局、教育庁、水道局などでDBソフトを使ってベテラン職員が 持っている知識やノウハウを共有するためのツールを作成し利用拡大へ向けて努力し ています。 今後は、共有すべきナレッジの抽出や継続的なメンテナンスを行える体制、仕組み づくり等について検討を行ったうえで、雛形ツールの提供や活用方法の説明会を行うな ど、全庁展開に向けた支援をしていきます。 (3) 区市町村との連携の推進 都では、都区市町村IT推進協議会や東京電子自治体共同運営協議会を設置して、 都と区市町村がITの利活用に関する有益な情報、ノウハウ等を共有し、LGWA N22等の広域ネットワークの導入・活用、共同運営の推進など、東京の地域全体の電 子自治体化を推進してきました。 今後とも、広域的な対応が必要な行政施策を中心にITの利活用について区市町 村との連絡調整を進め、東京の住み良さの向上に役立てていきます。 また、東京電子自治体共同運営事業が、平成 22 年度から次の事業期間を迎えるた め、現在までの電子申請・電子調達の共同運営の成果と課題を踏まえて、次期事業 のあり方を検討していきます。 22 LGWAN: 地方公共団体を相互に接続する総合的な行政専用通信ネットワーク - 30 - Local Government Wide Area Network の略 Ⅵ 取組施策の具体的進め方 以上に述べた業務・情報システムの最適化へ向けた総点検・最適化及びIT統制の仕 組みの整備に係る各施策は、下表の年次別スケジュールに沿って推進していきます。 なお、本指針は、今後のIT化に関する社会環境の変化、新技術の動向及び都の政 策の動きなどにより、適宜必要な見直しを行っていきます。 別表 事 項 計画の策定 システム評価 制度の見直し の最適化 業務・情報システム システム総点検の実施と最適化 評価制度改正 19年度 21年度 改正 検討 試行・見直し DB整備 提供 内容検討 施行 参考事例の共有 DB整備 提供 総合評価一般競争入札の見直し 検討・制度改正 施行 ポリシー改定 改定 研修の実施 実施 点検・監査 実施 IT調達の 見直し 実 情報セキュリティ 対策の強化 インシデント情報の集約・共有 施行 集約 提供 検討 実施 職員の IT スキルのレベルアップ 検討 実施 外部人材の登用 登用 IT中央管理部門の整備 19 年4月整備完了・運営 局IT管理部門の整備 準備 化 ITを利活用した業務改革を推 IT人材 の育成 進できる人材の育成 IT部門の 組織改革 - 31 - 23年度 施行 有 IT経費適正化マニュアルの充 22年度 最適化計画策定・実行 総点検 各局による評価の実施 システム情報の全庁共 20年度 運営 施行