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スイスにおける使用済燃料貯蔵

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スイスにおける使用済燃料貯蔵
資料(輸)28−12
資料(貯)22−12
スイスにおける使用済燃料貯蔵
2009 年 8 月 31 日、スイス連邦原子力庁(ENSI)及びビューレンリンゲン中間貯蔵施
設(ZWILAG)を訪問し標記について意見交換を行った。概要以下のとおり。
1.概観
スイスでは、現在、5 基の原子力発電所が稼働しており、これらが国内の電力需要
の約 4 割を賄っている。また、現在、更に 3 基の新規原子力発電所(既設サイト内)
の設置申請が出されており、原子力発電は国民生活において重要な役割を果たしてい
る。
スイスにおける使用済燃料政策は、原子力法(最新改正は 2003 年)に規定されて
おり、その内容は概ね以下のとおりである。
①
使用済燃料の管理責任は発生者責任原則に基づくことが明示されている。(これ
に基づき廃棄物処分組合「NAGRA : National Cooperative for the Disposal of
Radioactive Waste」が 1972 年に設立されている。)
②
使用済燃料の処理については、従来、英仏に搬出し再処理を行ってきた。具体的
には、これまでに総計 1,200tU の再処理契約が締結され、このうち 1,139tU が
英仏に輸送済みである。しかしながら、2006 年以降は再処理オプションを 10 年
間凍結(モラトリアム)しており、現在、海外再処理向けの輸送は行われていな
い。
③
現在、使用済燃料はその処分方策が決まるまでの間、中間貯蔵施設に貯蔵されて
いる。最大の中間貯蔵施設であるビューレンリンゲン(ZWILAG:Zwischenlager
Wurenlingen AG)
)には、2001 年の操業開始以降現在までに 31 のキャスクに収
納された使用済燃料 1,625tU が貯蔵されている。同施設には、使用済燃料に加え、
海外での再処理に伴い発生し返還された高レベルガラス固化体(224 キャニスタ
ー)が収納されたキャスク 8 本も保管されている。これらの貯蔵期間は許認可上
明示されていないが、少なくとも 40 年間を想定している。
④
現在、これらのガラス固化体及び使用済燃料を処分する施設(いずれも地下深度
処分)のサイト選定プロセスを 2008 年から開始しているところである。
2.中間貯蔵施設
2−1.施設の概要
ZWILAG はスイス中部の大都市チューリッヒから北西方向に電車で 15 分程にある保
養都市バーデンの郊外にある。周辺はアルプスを源流とするアール川沿いに開けた土
1
地であり、とうもろこしやブドウが栽培されているほか、羊や馬牛の放牧も見られる
のどかな場所である。
バーデンからタクシーで約 20 分程度行くと、アール川沿いの林を切りひらいて作
られた原子力関連施設の立地する「パウル・シェラー研究所(PSI)」が目に入ってく
る。PSI はアール川の両岸に橋を介して設けられており、サイクロトロンや各種実験
施設、規制行政庁である ENSI 等が立地している。中間貯蔵施設 ZWILAG はこの PSI の
東岸の一角に位置している。
← PSI 外観。なお、PSI 内部にス
イス原子力庁(ENSI)がある。
ZWILAG は複数の建物から成り、使用済燃料・高レベル廃棄物の中間貯蔵施設の他
に低レベル放射性廃棄物の減容炉、低レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設(スイスで
は低レベル放射性廃棄物も地中深度処分することとなっている)、ホットセル等の施
設がある。ZWILAG はスイス国内で原子力発電所を運営する 4 つの事業会社の共同出
資により設立され、1990 年に許認可申請を行い、2000 年には操業許可が出されてい
る。
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このうち、使用済燃料貯蔵建屋は幅 41m×長さ 68m×高さ 18m の空間を有し、2 箇
所のキャスク受入れ施設と 1 基の 140t 天井クレーンを有している。施設の中には合
計 200 基の金属キャスクを貯蔵することができるとのことであった。なお、訪問時に
おいてはこのうち使用済燃料を収納したキャスクが 25 基(TN(フランス)及び CASTOR
(ドイツ)キャスクであり、最大のものは TN97L 型(BWR 燃料集合体 97 基収納、直
径 2.9m、高さ 6.5m)
)
、高レベルガラス固化体を収納したキャスクが 8 基の合計 33 基
であった。1
なお、スイスにおいては、ZWILAG 及びもう1カ所の中間貯蔵施設(ベツナウ・キ
ャスク 36 基)をあわせて、スイスが保有する原子力発電所について、モラトリアム
政策導入後廃炉までの間(ベツナウ、ミュールベルグ発電所については 40 年、ゴス
ゲン及びライプシュタット発電所については 50 年)に発生する全ての使用済燃料を
貯蔵できることとして設計がなされているとのことであった。
ZWILAG の従業員は 56 名、また、貯蔵料金は全て出資元親会社の使用済燃料である
ことから、料金という考え方でなく、毎年発生した費用を出資割合に応じて負担して
もらっている(したがって利益・損失は発生しない)とのことであった。
2−2.安全確保の考え方
①
輸送
スイスにおいては、使用済燃料は、国内の各発電所から ZWILAG に主としてトラ
ック輸送により運ばれてくる。鉄道による輸送も使われるものの、これは主として
現状で貯蔵されているキャスクは上記2種類だが、現在、HOLTEC Histar 180 と
TN-NOVA について申請予定があるとのことであった。
1
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フランスからの返還ガラス固化体を対象に行われており、この場合、施設の近傍に
ある専用の引き込み線(およそ貨車3両が停車できるフェンスで囲われた積み替え
スペース)で貨車からトラックに積み替えた上で施設に搬入される。
スイスにおいては、ドイツで見られるような輸送に対する過激な反対行動は見ら
れない。
←ZWILAG から約 1km に位置する専用
引き込み線
輸送中のキャスクは、一次蓋・二次蓋の二重の密封機構が施されており、それぞれの
蓋部には金属ガスケットが用いられ、輸送中の規制要求(10-5 レベル2の密封機能)
が満足されている。
②
貯蔵受入れ時
中間貯蔵施設では、輸送されてきたキャスクの受入れ時に、キャスク1基当たり
約1週間をかけて厳格な受入れ検査及び貯蔵仕立て作業が実施されている。ZWILAG
にはキャスク受入れ施設が 2 つあるため同時に 2 基のキャスクについて受入れ検査
が実施可能である。
(一度に搬入されるキャスクは最大でも 3 基であるため、一度
に実施される受入れ検査に要する期間は最大で 2 週間である。)
貯蔵受入れ時に行う作業は、以下のとおりである。
A:
まず二次蓋を外し、二次蓋と一次蓋との間の空間について、スミア法による表
面汚染検査を行う。
B:
一次蓋のポートを通じて、キャスクキャビティ内の圧力が設計どおり維持され
ていることを測定する。
(設計では 0.2 気圧)
単位は確認していない。ここでは、貯蔵中の規制レベル(5 ページ)より 3 桁程度差があ
る点が重要な技術情報と考える。
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C:
一次蓋のポートを通じて、キャスクキャビティ内のガスサンプリングを行う。
具体的には小型ポンプによりHeガスの吸引を行う。(吸引ガスはヘパフィル
ターを通じて外部に排出されるが、その際、Heガス中に核種が含まれていれ
ばその放射線(ガンマ線)を検出できるようにしておき、これにより内部の使
用済燃料の破損の有無の確認を行う。
)
D:
一次蓋のガスケット間空間を真空引きし、漏えい率を確認する。
二次蓋
A
D
B, C
6~7
気圧
一次蓋
0.2 気圧
キャスク蓋部の断面図
以上の後、二次蓋側の金属ガスケットを新品のものに交換して貯蔵専用の二次蓋
(蓋間空間が輸送用の二次蓋より大きいもの)に付け替え、貯蔵中の規制要求(10-8
レベルの密封機能)が満たされていることを測定により確認し、その上から対航空
機衝突用のカバーを付けた上で、天井クレーンにより貯蔵スペースに移動し、貯蔵
する。
上記作業の中で、仮に一次蓋側の密封機能やキャスクキャビティ空間ガスに異常
がある場合には、キャスクをホットセルに搬入し措置を行うことになるが、これま
ではそうした事例はなく、搬入時にホットセルを使用したことはない。(ただし、
一部の原子力発電所から搬入されるキャスクは当該発電所のクレーン容量上小規
模(集合体 7 体収納)であるため、これについては全てホットセルに搬入し、一次
蓋を開封した上で、貯蔵用の大型キャスクに詰め替えを行っている。)
③
貯蔵受入れ後
貯蔵受入れ検査を経てキャスクを受け入れた後は、貯蔵中のキャスクの管理は蓋
間圧力の測定のみとなる。ただし、圧力測定はドイツのようなスイッチ式(一定圧
力以下に低下した場合にのみ発報)でなく、24時間圧力を測定する方式を採用し、
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圧力が低下しはじめればその段階でただちにトレンドを把握可能としている。更に、
こうした計測機器は誤作動を考慮して3系統設けられている。かつて、圧力データ
に低下が見られたケースがあったが、それはこうした3系統のうち1系統だけであ
ったため、測定機器の故障が理由であると判断できた。貯蔵中の不具合はこれまで
この事象以外はないということであった。
貯蔵受入れ後の検査は上記のみであるため、貯蔵期間中に収納物の健全性を検査
することはなく、現在その予定もないとのことであった。キャスクの開封をすると
すれば、一次蓋の密封機能が低下した場合だけであり、上記のとおりこれまでそう
した事象は生じていない。
なお、貯蔵中のキャスクについては、以前、規制要求として輸送ライセンスを求
めていたが、現在、その要求は撤廃されているとのことである。(実際にも既にい
くつかのキャスクで輸送ライセンスが失効している。)この理由としては、輸送ラ
イセンス自体、スイスは自らキャスクを製造しておらず、海外のキャスク製造国に
おけるライセンスを裏書きする規制方式となっていることが挙げられる。ただし、
貯蔵開始時点では現在でも輸送ライセンスが必要とされている。この場合、将来搬
出する際の規制上の扱いが問題となり得るが、そもそも施設にホットセルが付置さ
れておりいかなる対応も可能であり、そうした規制要求については実際に輸送が必
要となった段階で判断すれば十分であるというのが現状の整理となっているよう
である。
④
その他
ZWILAG に付置されているホットセルは乾式の施設であり、ZWILAG のキャスク受
入れ施設に隣接して設けられている。構造は、地下階の密封空間にキャスクを縦置
きし、キャスク蓋部を通じて地上階に収納物を出し入れすることが可能な形態であ
る。地上部は分厚い鉛ガラスを通じてマニュピレータで操作できる構造になってい
る。
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ZWILAG 施設内にこのような大型のホットセルがあることから、日常的な使用(上
記小型キャスクで搬入された燃料の大型貯蔵キャスクへの詰め替え作業)以外に、
使用済燃料の最終処分に向けた取扱いに関する様々な技術開発にも同施設が用い
られ、有効利用と施設技術者(総計 56 名)の技術力維持に大いに役立っている様
子であった。
3.最終処分場の選定
スイスにおける最終処分場の選定プロセスは、3 つのステップからなり、そのうち
第一ステップが 2008 年に開始されている。第一ステップでは、スイス国内の地質調
査を行い、純粋に科学的な観点から(社会・経済的な観点を入れないで)地層処分に
適した場所を選ぶというものである。その後の第二ステップではこれに社会・経済的
な要素を加味して国内から 2 カ所の候補サイトを選定し、最後の第三ステップにおい
てサイトの選定と事業許可手続を行うというものである。これらの3つのステップに
必要な期間は約 10∼12 年と想定しており、2018∼2020 年に最終処分サイトの選定が
行われる計画となっている。
サイトの選定プロセスの主体は上述の NAGRA であり、現在、上記の選定プロセス
(narrowing-in)を行った結果、高・中レベル処分サイトとして3カ所、低レベル処
分サイトとして5カ所までの絞り込みがなされているとのことであった。(高・中レ
ベル処分サイトとされた3カ所(Zurcher Weinland、North of Lageren、Bozberg)
はいずれも低レベル処分サイトとしても選定されている。
4.規制当局の役割
スイスにおける原子力安全規制機関は ENSI である。ENSI には現在約 110 名のスタ
ッフ(内訳は技術職 90 名、行政職 20 名)がおり、上述のとおり新規原子力発電所の
審査もあることから、数年内に 125 名まで増員する計画とのことである。技術職の内
訳としては、物理、機械、電気、工学、化学、地学、IT、生物学及び心理学がある。
組織の毎年の予算額は約 37 百万スイスフラン(34 百万米ドル)であり、このうち
98%は事業者が支払う各種手数料を原資としている。残りの 2%は国庫から支出され
ているが、この理由は ENSI が国会等に対して政策判断に必要な資料を作成・提出す
るコストであるとの説明であった。
ENSI は以前はエネルギー省に所属しており HSK という名称であったが、規制の独
立性・透明性を向上させるため、本年初より独立機関となったとのことである。ENSI
には、その業務を監督するために理事会が設けられているほか、ENSI の外部にセカ
ンドオピニオンを提供するための専門家集団 KNS が設けられているということであ
った。
なお、ENSI による中間貯蔵の規制は、以下の5項目からなっているとのことであ
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った。
①基礎(Fundamentals)
事業者の品質マネジメント体制のチェック、責任体制の確認等
②設計(Design)
除熱、臨界防止、放射線、密封機能の確認等
③製作(Construction/Assembly)
製作過程の第三者によるチェック、設計逸脱事項に対する適切な対応等
④運営(Operation)
キャスクへの収納、施設到着時におけるチェック、貯蔵中の密封性監視、PSA
(Probablistic Safety Analysis)の実施等
⑤文書化(Documentation)
海外のキャスクライセンスの承認、キャスクについての貯蔵に関する安全解析文書、
製造時・試験時データ、内容物・収納時の記録等
5.その他
スイスにおいては、上記のように、再処理のモラトリアム政策と最終処分場選定計
画の進捗もあり、原子燃料を再処理を考慮せずに最大限に有効利用するようになって
おり、最近のものでは照射 5 サイクル、燃焼度で最高 70GWd/t までの高燃焼度化に取
り組んでいるということであった。
説明によれば、こうした高燃焼度燃料の場合、中間貯蔵するための乾式キャスクに
収納するために必要な除熱を行うのに、最低 15 年程度のプールでの冷却が必要にな
るとのことであった。このため、ゴスゲン発電所内に湿式の貯蔵施設「Nasslager」
(収納集合体容量 1,008 体、現在の貯蔵量 60 体)を新たに設けている。
これらの燃料は将来キャスクに収納されることとなるが、こうした高燃焼度の燃料
の乾式貯蔵は各国とも例がないことから、安全評価をどのように実施するのか等は今
後の課題となるものと考えられる。
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(参考)
面談先
ENSI
Dr. Hans Wanner
Division Head, Member of the Management
Dr. Stefan Thesis
Section Head, Deputy Division Head
Dr. Elefteria Askitoglu
Dr. Frank A. Koch
ZWILAG
Dr. Hans-Joachim Lau
Fachingenieur, Ressort Chemie und Strahlenschutz
Mr. Christian Hoesli
Leiter Betrieb
NOK
Dr. Jan van Aarle
Fachgebietsspezialist Dienste
Kernbrennstoffe
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