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Vol.30, No.3(December 2006)

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Vol.30, No.3(December 2006)
The Journal of the International Society
for Prosthetics and Orthotics
Prosthetics and
Orthotics
International
論文和文要旨
December 2006,Vol.30,No.3
Contens
/Clinical field testing of vulcanized jaipur rubber feet for trans-tibial amputees in low-income countries
発展途上国における下腿切断者への加硫処理された Jaipur rubber feet(以下,ジャイプール足部)臨床試験
(訳:坂井 一浩 )
/The application of critical psychology to facilitate reflective clinical practice in orthotics /prosthetics
義肢装具の臨床への反映を促進する重要な心理学の適応(訳:佐々木
伸
)
/Consumer opinions of a stance control knee orthosis
立脚期制御膝装具のユーザー意見(訳:中村 隆 )
/Effects of fluid insert volume changes on socket pressures and shear stresses:Case studies from two trans-tibial
amputee subjects
ソケット圧力と剪断力への Fluid insert (液体インサート)の影響について:2名の下腿切断者による実例研
究(訳:柴田 晃希 )
/Improved comfort and function of arm prosthesis after implantation of a Humerus-T-Prosthesis in trans-humeral
amputees
上腕切断者に対して Humerus‐T‐Prosthesis:上腕-T-義手のインプラント後の上腕義手の快適性と機能
の向上(訳:大沼 雅之 )
/Stump ulcers and continued prosthetic limb use
断端潰瘍と継続的義肢の使用(訳:寺尾
香名子)
/The effects of prosthetic foot roll-over shape arc length on the gait of trans-tibial prosthesis users
下腿義足ユーザーの歩行における、足部のロールオーバーの形とアークの長さによる影響
(訳:森本 哲平 )
/The Locomotor Capability Index in diagram form: The Stanmore-Kingston Splat
スタンモアキングストンスプラットを用いて描く運動能力指数(LCI)(訳:寺尾 香名子)
/Fatigue test of low-cost flexible-shank monolimb trans-tibial prosthesis
ソケットとパイプを一体成形してパイプに可撓性を付与した安価な下腿義足の疲労テスト
(訳:村原 伸 )
/The effect of rotationplasty on the ankle joint: Long-term results
ローテーションプラスティを施した症例に対する足関節への影響の長期経過観察結果(訳:足立 英樹 )
/Shoe adaptation after amputation of the II-V phalangeal bones of the foot
足部の第2中足骨から第5中足骨に対しての切断術後の靴の改造 (訳:磯貝 美穂 )
/Clinical field testing of vulcanized jaipur rubber feet for trans-tibial amputees in
low-income countries
発展途上国における下腿切断者への加硫処理された Jaipur rubber feet(以下,ジャイプール
足部)臨床試験
J. Steen Jensen & Wilfried Raab
International Society for Prosthetics and Orthotics, Copenhagen, Denmark
本研究の目的は,発展途上国の熱帯地方におけるジャイパー足部の性能および耐久性を調査することである.
下腿義足用ジャイパー足部には 2 つのシリーズがあり,それぞれ異なる 2 つのメーカー(MUKTI 社と NISHA 社)
によって製造されている.本調査はベトナム・ホーチミン市の国際赤十字委員会(以下,ICRC)において行わ
れ,16 ヶ月間に 41 足の MUKTI 社製足部と 40 足の NISHA 社製足部がテストされた.本研究の結果を,ISPO に
よって行われた先行調査の結果と比較するために,テストでは義足コンポーネントとして ICRC のポリプロピ
レン・モジュラー・システムを用いた.被験者の切断時年齢は 7 歳から 48 歳で平均 20 歳であり,調査時の年
齢は 51 歳であった.
結果,ジャイパー足部に対する被験者の受け入れについては良好であった.1 日の平均使用時間は 14 時間であ
り,1 日の歩行距離は 1km 以上であった.また,これは先行調査の基準を満たすものであった.MUKTI 社製足
部使用における不良の原因は足部構造そのものに起因するものではなく,ICRC コンポーネントとの接続に必要
な特殊な細工の仕方に起因するものであった.もっとも頻度の高かった破損はかかとブロック部のひび割れ,
および足部内部スポンジ層の剥離であり,被験者の 25%にみられた.またこれらの不良は NISHA 社製足部によ
り頻発し,テスト開始 12 ヶ月後で足部交換を強いられたケースは 20%に及んだ.一方で,最終的な調査終了
時での比較では両者間に優位差はなく,また,ゴム製足部に関する先行調査の結果とも大差なかった.
Jensen らが 2006 年に発表した義足足部の臨床耐久性試験結果では,米退役軍人財団による VI-Solid や
VI-Cavity Heel などの足部はいずれも使用後 18 ヶ月を経過した時点で 90%以上の足部が継続使用可能であっ
たということと比較すると,ジャイパー足部の耐久性はこれらのものよりも劣る.ジャイパー足部に頻発する
かかと部の破損は,これが技術的な問題,すなわちスポンジゴム・プレート部の構造に起因していることを示
している.これらのことから,2 種のジャイパー足部は他のゴム製足部と比較していずれも使用者の受け入れ
や実際の使用については高評価であるが,一方で,耐久性については劣っていると結論づけられる.
/The application of critical psychology to facilitate reflective clinical practice in
orthotics /prosthetics
義肢装具の臨床への反映を促進する重要な心理学の適応
Ilz Grobler ¹; Gertina J. van Schalkwyk 2; Claire Wagner³
¹Tshwane University of Technology, Pretoria, South Africa, ²University of Macau, and
³University of Pretoria, South
Africa
要約
義肢装具の卒後訓練過程における心理学モジュールの構築は、南アフリカ地域の歴史の中で初めて社会的に構
築されたものである。この論文は、義肢装具士としての、専門的な主体性の発達の為のモデルとしての、理論
と実技の統合を説明するものである。訓練生が、“専門的な知識”という観念を再構築させる事を可能にさせ
ると共に、彼らの実技を発達させる為の環境を作り上げる上で、義肢装具士は科学的な臨床者という立場から、
交渉される代替的な立場を反映する臨床者に移行する。その知識を構築する過程で、代替的な教授法が展開し
ている。結果は、健康に関わる専門家によって生活の中で確かに実行されている。
紹介
心理学の、義肢装具士による異分野間の教育への貢献は、1977年の義肢装具インターナショナル以来認識、
また述べられてきた。そのような心理学は、(義肢装具の)臨床者たちを認定されたセラピストにする事を目
的とした訓練プログラムではないが、身体的なリハビリテーションに影響を及ぼすであろう、心理社会的な問
題の理解力向上の重要性は、過大評価は出来ない。
著者達は、伝統的な心理学における訓練モジュールを通して、臨床者のそれら心理社会的な問題への感受性を
育てる事を認識している。しかし、臨床者の、臨床における患者との遭遇において、代替的な心理学の訓練、
すなわち義肢装具士は科学的な臨床者という立場から、交渉される代替的な立場を反映する臨床者に移行する
事が提案される。
結論
この論文は、義肢装具士への理論と実技の統合をする訓練コースを探求したものである。“専門的な知識”と
いう観念の訓練、そして特権を与えられた訓練経験の利用、記憶、地域の感心を育てる事、反映するジャーナ
ルの執筆、そして定義された儀式等が紹介された。生きた経験を褒め称える事、知識、技術、そしてこの助け
合いの分野に招待された義肢装具士達の要望について、職業的な介在の価値についてそのアプローチが適する
か、また患者達にとって有用であるかという実用的な基準 (抽象的な“真実”であるという考え方ではなくて)
を用いる事によって、彼らは勇気付けられる。故に、義肢装具士は科学的な臨床者という立場から、交渉され
る代替的な立場を反映する臨床者に移行する事が可能になる。応用心理学2の訓練モジュールに横たわる哲学
は、義肢装具士達が、個々の専門的なアイデンティティの発達を仲介する働きを経験する事を後押しする。
/Consumer opinions of a stance control knee orthosis
立脚期制御膝装具のユーザー意見
Kathie A. Bernhardt , Steven E. Irby ,& Kenton R. Kaufman
Motion Analysis Laboratory, Mayo Clinic, Rochester, Minnesota, USA
はじめに
長下肢装具(KAFO)は古くからユーザーの受け入れが悪く、その理由として重さ、大きさ、外観、装脱着
の煩わしさなどがあげられている。一方、アシストデバイスに対する重要な因子は、機能性(残存能力を高め
る)、操作性(思い通りに動かせる)
、信頼性(どんな状況でも正確に動く)と報告されている。KAFOは 70
年代からほとんど変化がなかったが、2002 年以降、アシストデバイスである立脚制御の膝継手をもった長下肢
装具が開発されるようになった。しかし、それらの生力学的な有効性やユーザーによる評価はあまり報告され
ていない。本研究は立脚制御付き装具に対するユーザー意見の定量化に関するものである。
方法
対象者は 20 名であり、内 14 名が装具を使用、6 名が非使用者であった。使用者の内 9 名は膝固定のKAFO,
5 名がフリーの膝継手のKAFOを装着していた。主な障害原因はポリオである。本研究では筆者らが開発し
たダイナミックニーブレイスシステム(DKBS)を、全ての対象者に 6 ヶ月間試用してもらった。0、3、
6ヶ月目に実験室で歩行分析や体力テストを行い、その際にDKBSについての意見(彼らの日常使用する装
具との比較を含む)を調査した。
結果
最初(0 ヶ月)の調査ではすべてのユーザーが装脱着の難しさを指摘し、重さや外観も日常装具よりも悪いと
述べた。立脚時や歩行時の安定性はわずかによかった。装具使用者の意見では彼らの日常装具よりも悪い点と
して、外観が一番に指摘され、非使用者の中では重さが一番であった。2,3 回目(3,6 ヶ月)の調査でもユ
ーザー全体の意見はほとんど変わらず、DKBSの立脚および歩行時の安定性は彼らの装具よりも少しよいと
いうものであった。ただし固定膝のユーザーに限っては、最初は立脚制御を信用しなかったが、2 回目の調査
では立脚制御による安定性がよいという意見に変わった。
考察
全体としてDKBSの意見は肯定的であり、他の立脚制御付き装具の報告と同じであった。ユーザーは機能性、
操作性、信頼性があれば多少の重さや大きさは受け入れられると述べ、重さや大きさは立脚制御付き装具を否
定することにはならないであろう。装着については、バッテリーとコントローラーの問題があるがこれらは将
来的には、より小さく軽くなるであろう。筆者らは今回の結果をもとに、ユーザーが満足できるようにDKB
Sを改良している。
/Effects of fluid insert volume changes on socket pressures and shear stresses:Case
studies from two trans-tibial amputee subjects
ソケット圧力と剪断力への Fluid insert (液体インサート)の影響について:2名の下腿切断
者による実例研究
J.E.SANDERS¹, A.K.JACOBSEN¹, & J.R.FERGASON²
¹Department of Bioengineering and ²Department of Rehabilitation Medicine, University of Washington, Seattle,
Washington, USA
研究目的
短期間、または長期間での断端ボリュームと形状の変化は起こり、それらは下腿義足ソケット(以下ソケット)
が不適合になりうる原因のひとつであるといえる。そのため断端の変化に対するソケットの適合は多くの義足
使用者にとって非常に難しい課題である。
断端変化によるソケット不適合を改善するための手段として、ソケットボリュームを調整するために断端とソ
ケットの間に材料等を追加する方法がある。その方法の一つとして断端袋による調整がある。その他の選択肢
としてはバック状のインサートを空気で膨らませることによりソケットボリュームの調整を行う Air-filled
sacks がある。しかし Air-filled sacks の問題点は低い空気圧の設定時にはインサートは非常に柔らかく、中
程度より高い空気圧の設定時には注入された空気がインサート内で圧縮されるため、インサート自体の膨張率
は非常に低くなる。つまり Air-filled sacks は非常に狭い範囲でのソケットボリューム調整しか望めないた
め、それらの用途は限られている。それに対し同じ理論を用いた Fluid insert(液体インサート)がある。こ
れはポリウレタン製のバックに液体(プロピレングリコール希釈液)を注入する方法である。Fluid insert
に注入された液体は圧縮できないために Fluid insert は Air-filled sacks に比べて広い範囲でのソケットボ
リューム調整に有効に使用できる。そのため研究者は Fluid insert は断端ボリューム変化が原因である適合
問題に対して有効に活用できる可能性を持っていると主張している。
本実験の目的は、Fluid insert を下腿義足ソケット内に設置し、Fluid insert の液体を段階的に増やすこと
によりソケットボリュームを変化させ、そのことが歩行時の断端に対するソケット圧力と剪断力に対してどの
ような影響を及ぼすかについて評価を行うことである。本研究は2名の片側下腿切断者を被験者にした実例研
究である。
方法
本研究では各被験者に製作された計測用下腿義足を用いて計測を行っている。ソケット圧力と剪断力はソケッ
トの13箇所で計測されている。計測は被験者の至適速度での歩行中に行われ、立脚期での各データをサンプ
リングし分析を行っている。用意された Fluid insert は医療用ポリウレタンで製作され、
大きさは長さ 140mm、
平均幅 46mm(最大幅 64mm)の涙型の形状をしている。この Fluid insert は脛骨の骨隆起の形状に影響を与え
ないことを考慮して、腓腹筋、ヒラメ筋上のソケット後面内外側の2箇所に設置されている。また予備実験を
行い各被験者の至適歩行速度と受け入れ可能な液体ボリューム範囲の各条件を決定している。本実験開始時に
は Fluid insert の液体ボリュームは各被験者での最低値に設定されている。その後、段階的に液体の量を増
やし、各液体設定で 20.8m の歩行路での2歩行の計測を行っている。
結論
ソケット内に設置した Fluid insert に液体を追加することによりソケット圧力と剪断力は変化している。少
量の流体変化に対してもソケット圧力、剪断力の変化量は比較的大きい。一般的には液体の増加と共にソケッ
ト圧力と剪断力の値は増加している。また興味深いことに2名の被験者の主観的評価は共に高いソケットスト
レスを引き起こす原因となる比較的高い液体ボリュームの設定(つまり周径がきつめの設定されたソケット適
合)を好んでいる。研究者はこの結果について説明を行っている。1)剪断力と圧力の割合の減少。2)計測
時間が短時間である。3)ストレスが減少した場所が計測器により計測されていない。1)については断端へ
の圧力が高まったことにより軟部組織が圧縮され、結果として断端の硬度が増した。そのため剪断力が減少す
ることとなり快適と感じる適合状態となったと考察している。剪断力、圧力の割合(比率)はストレスの大き
さを表すより快適性を表していると考えたほうが良いと述べている。2)については高い液体ボリューム設定
を行った計測時間は短時間であり、被験者は比較的高い圧力を感じていない。また被験者がこの適合において
の長時間の義足歩行は不快感を訴える原因となることが予想でき、より低い液体ボリュームが快適である可能
性も述べている。3)については今回の計測器が設置されていなかった脛骨骨端、腓骨頭、脛骨稜などの骨突
起部でのストレスが実は減少していた可能性を述べている。今後の計測課題としてソケット内全面でのソケッ
ト圧力、剪断力の計測と、断端自体のボリューム変化を含めた計測が必要であることを挙げている。またそれ
らが Fluid insert の液体ボリューム、断端ボリューム変化、ソケットストレス分布のつながりを明らかにす
る手助けとなり、さらにはソケット適合の手助けとなる可能性が示された研究であると報告をまとめている。
/Improved comfort and function of arm prosthesis after implantation of a
Humerus-T-Prosthesis in trans-humeral amputees
上腕切断者に対して Humerus‐T‐Prosthesis:上腕-T-義手のインプラント後の上腕義手の
快適性と機能の向上
Eivind Wits 123, Tomm Kristensen2 , P l Benum 1235, Svein Sivertsen 4, Leif Persen 1, Are
Funderud 5, Tordis Magne 4, Hans Petter Aursand , Arild Aamodt1135
¹Department of Orthopaedic Surgery, St Olav's University Hospital, Trondheim, ²Norwegian University of Science and
Technology, Trondheim, ³Norwegian Orthopaedic Implant Research Unit, Trondheim,
Orthopaedic, Technical
Department, St Olav's University Hospital, Trondheim, Scandinavian Customized Prosthesis, Trondheim, and
Norwegian Technical Orthopaedics, Hamar, Norway
上腕切断者における義手の使用にはさまざまな制限がある。例えば断端形状が円錐状であるためハーネス等が
必要になり、それに伴う肩や背部の痛みなどにより 50%の上腕切断者が義手を使用していない。今回、‘Hu
merus‐T‐Prosthesis:上腕-T-義手’と呼ばれる上腕骨顆部の形状したインプラントが 3 人の被験者に使用
された。そのうち 2 名は初期においては外側の人工上腕骨顆部に痛みを訴えたものの、今回の新しい上腕義手
の適応に成功した。この新しい上腕義手は上腕骨とインプラントのみでソケットの懸垂と安定性を得る構造に
なっている。また義手による牽引力や回旋に対する安定性はインプラントによって形成された人工上腕顆部の
周りを押さえる調整可能なプレッシャーパッドによりコントロールされる。3 人目は人工上腕骨顆部の外側周
囲に圧による外傷を形成。治癒はしたものの後に別の外傷で同側の肩甲骨骨折したことにより、現在義手の使
用は制限されている。義手の加重負荷や回旋に対するズレや抜け落ちなどはほとんど起こらず、また肩関節の
稼動域についても向上が見られた。本研究より今回の上腕切断に対する新しい義手のコンセプトは見込みがあ
ると考えるが、しかし別のインプラント形状をテストする必要がある。
/Stump ulcers and continued prosthetic limb use
断端潰瘍と継続的義肢の使用
A.Salawu 1 , C. Middleton 2, A. Gilbertson 3, K. Kodavali 4, & V. Neumann¹
¹Department of Rehabilitation Medicine, ²Prosthetic Department, Chapel Allerton Hospital, Leeds ³Portsmouth DSC, St
Mary's Hospital, Portsmouth, and
Department of Rehabilitation Medicine, Brighton General Hospital, Brighton, UK
要約
切断者にとって断端潰瘍はよく見られる問題である。そのため、一時的な義肢の使用中断は創の治癒促進を目
的として頻繁に用いられる。しかし、切断者の出勤を妨げるなどの、活動を制限することとなる。本調査は、
断端潰瘍を有する患者でも、義肢の継続使用は指導の下であれば、潰瘍に悪影響を与えたり、創の回復を妨げ
たりすることはないだろうという前提で実行された。また、この調査は断端潰瘍の管理に関する今後のガイド
ラインの発展の基礎となるだろう。2003 年 1 月から 2004 年 5 月の間、チャペルアラートンホスピタル(CAH:
Chapel Allerton Hospital)の義肢クリニックに通院している既存患者全員がこの研究に採用された。6 週間の
間隔を空けた計 2 回の潰瘍の表面積変化と臨床写真の変化が、主に結果測定に用いられた。年齢の中間値が
60 歳(レンジ:18-88 歳)の 102 名が採用され、既存義肢ユーザーの内 8 名は研究を終えなかったため分析
からは外された。52 名の患者は手術創回復の遅延により受診し、42 名は最低でも 1 年以上のキャリアを持つ
義肢使用者である。義肢の継続使用は有意に潰瘍のサイズを減少(p<0.05)させた。初回・次回に観察された
潰瘍サイズの中間値はそれぞれ 3.30cm2(レンジ: 0.06-81)と 0.70cm2(レンジ:0.00-13.00)であった。2
例では変化が見られなかったが、83 例では潰瘍の改善が見られた。潰瘍の悪化は 9 例で観察された。現在は、
断端潰瘍が存在してもほとんどの場合、義肢の装着の開始や継続を許される。観察研究の中で 2%の症例では
潰瘍に変化はなかったが、6 週間の研究期間の内に、義肢を継続使用したにも関わらず、60 例(64%)で潰瘍
が完治し、23 例(25%)で潰瘍サイズが減少した。しかし、症状の悪化も 9 例(9%)で見られた。この調査
は、現在も行われており、義肢を継続使用させることは安全であるということを示唆している。今後、この方
針が回復率に変化をもたらしているか、また新規や既存の切断者に他にも不利益があるかどうかを明確にさせ
る必要がある。
キーワード:
ユーザー、下肢断端、義肢使用
序論
断端トラブルは一般的ではあるが、それは日々の義肢装着を中断させ、切断者の自立や日常生活を妨げるなど
の問題を発生させる。義肢の適合の遅延は切断後のリハビリテーションコストを上げる主な原因である(Vigier
ら 1999)。これらの問題は、断端の軟部組織が荷重支持に(手掌や足底のようには)適さないにもかかわらず、
自身の体重を上回った圧縮力や摩擦力が断端で生じることによって引き起こされる。この断端皮膚トラブルは、
ある一定期間の体重支持の回避によって改善される。
この調査は“断端潰瘍・組織の損傷は一般的なことではあるが、摩擦と圧力軽減のための適切な処置を用いれ
ば、義肢の継続使用は創の治癒に悪影響はないだろう”という前提に基づいている。著者らは既存義足ユーザ
ーの継続的義肢の使用と、断端潰瘍と創の一時治癒の遅延で病院を紹介された新規の下肢切断者について調査
をした。6 週間間隔で 2 回計測された潰瘍の表面積で結果を測定した。
方法
調査期間中に、CAH の義肢クリニックに受診している断端組織の損傷を伴った全ての下肢切断者が参加した。
既存義肢ユーザーは最低でも 1 年の義肢使用経験を持っている患者とした。
潰瘍は最低でも直径 0.25cm の断端皮膚の損傷と定義した。
潰瘍は主に、カテゴリーの 型であった。
潰瘍は格子付写真と共に創専用のテープメジャーを用いて計測され、正確な位置は 6 週の間隔をあけて記録さ
れた。2 回目の調査の際には、新たな皮膚損傷も計測・撮影の後、記録された。採取された潰瘍の培養物の結
果とドレッシングの材料も記録された。
調査期間中、個々の患者への義肢ユーザーに関してのアドバイスは以下の項目について記録された。
1.
一時的な義足使用の中断
2.
インターフェイス材の綿ソックスを用いた継続的義肢使用
3.
インターフェイス材のシリコンスリーブを用いた継続的義肢使用
ソケット調整は必要に応じて行われ、新規使用者には採型とフィッティングも行われた。
2 回目の調査時に、既存義肢ユーザーへは、義肢使用頻度が〔減少・増加・変わらない〕のどれに当てはまる
かを尋ねた。新規ユーザーへは、診療期間中での義肢リハビリテーション、モビリティの進行度と、義肢使用
の結果として観察される問題を尋ねた。・
描写的統計術と Fischer’s Exact Test(2 方向)を用いて SPSS(Statistical package for the Social Sciences)
のバージョン 11.5 を使って分析された。
結果
調査期間中、新規患者 328 名を含む 1888 名の患者が CHA 義肢適合センターを受診した。この期間中 52 名の
新規患者は不治性断端創傷で、50 名の既存義肢ユーザーは断端潰瘍で調査に参加した。8 名の長期義肢ユーザ
ーの症例(男性 6 名、女性 2 名/下腿切断者 7 名、大腿切断者 1 名)では 6 週間目での評価をすることができ
なかったため、分析対象からは外された。
潰瘍位置と数
潰瘍は主に手術痕上(35 例)、断端表面の前面(25 例)と表面遠位(17 例)で観察された。15 名の患者が 2
個以上の潰瘍を断端に形成しており、79 名の患者では 1 個のみであった。
義足使用/潰瘍治癒
この調査中、5 名の患者は義足使用の中断を勧められた。しかし、勧めにも関わらず、5 名全員は次回の調査
時までに義足の使用を継続し、このうちの 2 名は潰瘍が悪化していた。義足の継続使用を認められた患者の内、
35 名はスタンプソックスを、24 名はシリコンスリーブを義足と共に装着し、20 名の患者にソケット調節が行
われた。表 は 0 週間目と 6 週間目での新規・既存切断者の潰瘍表面積の中間値を表しており、表 は治癒の
進退を表している。
全体の 83 例(88%)は継続的体重支持と共に潰瘍の改善が見られた。そのうちの 60 例は 6 週間以内で潰瘍が
完治し、23 例で潰瘍サイズの縮小が観察された。2 例(2%)で潰瘍サイズに変化はなく、 潰瘍表面積が増加
する悪化症状は 9 名(10%)で見られた。15 名の患者は断端に複数箇所の皮膚損傷があり、10 名は一下肢に
対し 2 箇所、4 名は一下肢に対し 3 箇所、1 名は 5 箇所での潰瘍が確認された。
考察
断端皮膚の状態は切断者の義肢使用能力と早期発見に大きく関係し、皮膚病変の治療は大変に重要である
(Levy 1995)。皮膚損傷の最も多い原因は、褥瘡を誘発する圧迫力と部分的炎症や損傷を引き起こす摩擦力で
ある(Lyon ら 2000)。
これらには一定期間の非体重支持を含む様々な対処法があり、その根拠は体重支持部位での非荷重によって、
歩行に伴う反復的外傷は防がれ、結果治癒を促進することにある(Boulton ら 2004)。これは、義肢ソケット
が荷重を損傷している部分から他へ移動・再配分することや、摩擦を吸収するためのシリコンを緩衝材として
取り込むことで可能となる。また、体重支持と継続的なアクティビティは、多くの場合、創の治癒を促進と浮
腫をコントロールに有効であるといわれている(Wilson 1922; Zettl ら 1969)。ドッシングの使用は体重支持
と同様に断端潰瘍治療において用いられてきた(Pinzur と Osterman 1990)。英リハビリテーション医学会
(BSRM:British Society of Rehabilitation Medicine)のガイドラインとスタンダード(第 2 版)は、切断
リハビリテーションにおいての潰瘍管理について、多くのことを記載しているが、明確なガイドラインを明記
するところまでは至っていない(BSRM 2003)。
著者らの観察研究は、直接外力と摩擦力の軽減が実現できれば義肢の継続使用は、ほとんどの既存切断者の問
題を悪化させないことを示した。また、不治性創傷を有している新規切断者の多くは、創が悪化することなく
義肢リハビリテーションの再開が可能であった。全体の 83 例はこの方針によって改善し、60 例は完治した。
潰瘍サイズにおいて 9 例で悪化が見られた(表 )。これらの患者は年齢中間値が 65 歳と、60 歳の改善したグ
ループに比べ高く、それに加え、切断からの期間(中間値 125 ヶ月)は、潰瘍発現までの時間(中間値 84 日)
と同じく、より時間が経過していた。また、これらの患者の中には、再発性蜂窩織炎と同様に、断端での重度
の虚血症状のための大腿膝窩動脈バイパス含めた、様々な付加的な治療を必要とする医療的問題を抱えていた。
著者らは、この潰瘍管理へのアプローチが、義肢の使用を継続した患者に改善をもたらしたかは確かではない。
義肢での移動量が少ないグループにくらべ、移動量の多いグループ(P value=0.024)の方が治癒は良好だっ
た。その他、年、性別、診断、潰瘍数、切断レベル、抗生物質使用や潰瘍発現までの期間は潰瘍治癒と大きな
関係性は示さなかった(p>0.05)。Prinapore は 44 例(47%)でドレッシング材料として使われていた。こ
れは断端のボリュームと形への影響が最小で、かさばらないため、ソケットに組み込まれることがしばしば見
られる(Pinzur と Osterman 1900)。
また、この研究は義肢使用の中断を勧められた患者、僅か 5 名(7%)の小さなサンプルを含み、彼らの内 2
名は潰瘍が悪化した。この研究は多中心性の性質ゆえ上に挙げた問題を全て解明するだろう。深さは減少した
際は記録されたが、この調査の潰瘍の深さは精密に測れていないところが欠点として挙げられる。
他の研究でも用いられているが、患者に義肢を〔より多く・より少なく・いつもと変わらず〕使ったかを尋ね
る方法は、精度が高いとは言えない(Datta ら 1996)。
それでもなお、義肢使用は断端潰瘍や不治性手術創があっても、安全であるということを更なる研究が裏付け
るのであれば、それは切断者の自立、就労、日常生活において多大な影響を与えることができるであろう。切
断者のほとんどは 65 歳を超えており、このうち 45%が労働年齢にあたり(NASDAB 2004)、彼らのほとんど
は常勤のため、仕事において義肢が欠かせない(Schoppen 2001)。
治癒不良の潰瘍をどのように改善へと導くかの調査と研究が望まれている。潰瘍の悪化は骨髄炎、さらに近位
での切断、広範囲に及ぶ壊死や敗血症でさえ導くかもしれない。
しかしながら、義肢使用は断端潰瘍が改善した場合は中止せず、義肢フィッティングとリハビリを除いて、切
断手術後の一時治癒の遅延や失敗がみられた場合は中断すべきである。
/The effects of prosthetic foot roll-over shape arc length on the gait of trans-tibial
prosthesis users
下腿義足ユーザーの歩行における、足部のロールオーバーの形とアークの長さによる影響
ANDREW H. HANSEN1, MARGRIT R. MEIER1, PINATA H. SESSOMS2, & DUDLEY S.
CHILDRESS1, 2
1
Department of Physical Medicine and Rehabilitation, Northwestern University Feinberg School of Medicine, Chicago,
Illinois and 2Department of Biomedical Engineering, McCormick School of Engineering and Applied Science,
Northwestern University, Evanston, Illinois, USA
要約
本研究は、14 名の下腿義足ユーザーに「Roll&Shape 足部(本研究参照)」を使用し、足部のロールオーバーの
形とアークの長さによる歩行への影響について分析した。
計測方法は以下のように定めた。アライメント、義足長、そして足部の踵の硬さや中足部の特徴を変えずに各
足部のみを変更し計測した。そして、単純修正された義足足部は、有効な前側部のロッカーバーの長さを変更
するために使用された。
計測結果は次の通りである。ロール・オーバーアーク長を短くするとすべての歩行速度(p、アーク長の主効果
<0.001)で、義足側の瞬間最大背屈角度の著しい減少を引き起こした。これは、ロール・オーバーアーク長を
短くすると足部足関節に対する前足部のモーメントの縮小によるものである。
ロール・オーバーアーク長が健足側踵接地時の床反力に顕著に影響を与えたのは、前足部ロッカーアーク長が
最も短く修正した義足足部であった。さらに、この差は統計的に有意ではなかったが(主効果 p=0.06)、健足側
の歩幅の長さと義足側の歩幅の差が、ロッカーアーク長が最も短く修正した義足足部のアーク長条件で最も大
きく現れた。
考察から短いロール・オーバーアーク長に修正した義足足部を使用した義足ユーザーは、義足側の単脚支持後
期、すなわち踏み切り期に drop-off を経験するかもしれないということが分かった。また、それは反対側の
脚に、より大きな衝撃(床反力)を与えることになり、歩幅の現象につながるということが考えられる。
/The Locomotor Capability Index in diagram form: The Stanmore-Kingston Splat
スタンモアキングストンスプラットを用いて描く運動能力指数(LCI)
Tom Geake 1 , Rajiv Hanspal 2, David Wertheim 1,& Jennifer Fulton²
¹Faculty of Computing, Information Systems and Mathematics, Kingston University, Surrey and ²Stanmore Disablement
Services Centre, Royal National Orthopaedic Hospital, Stanmore, Middlesex, UK
要約
スタンモアキングストンスプラットは、LCI を用いた切断リハ患者のゴールや成果をグラフで表現したもので
ある。図表は色や斜線と共に放射線状のポリグラム内に表示される。これらの 3 つの数値:義足が供給される
時点での患者の能力、定められたリハビリでのゴール、治療後の最終的な成果、が示される。主な利点は迅速、
かつ療法士にとって瞬時の認識が容易、そして患者の目標設定や進展状況の見直しについての話し合いにおい
て便利な点である。スプラットはスタンモア障害者サービスセンターで用いられており、今後、他の施設への
使用拡大も予定されている。
キーワード:
目標設定、リハビリテーション、LCL チャート
序論
リハビリテーション医学を専門とする英国内科医師会の基準では、リハビリテーションプログラムに登録され
ている全ての患者に公式な目標を設定し、またそのプログラムに公認の結果測定法によって記録された成果を
記すことの2つが要求されている。義肢のリハビリテーションには様々な結果測定法があり、それらは疼痛、
ソケットの快適性、活動性、モビリティと切断前機能に関連したその他の項目を検査し、数ある測定法の中か
ら最も適したものが選ばれる。ハロルドウッドスタンモア(Harold Wood-Stanmore)モビリティグレードは、
依然としてモビリティの障害測定の際に最も一般的に使われるが、英リハビリテーション医学会は、より最近
に訂正・承認された SIGAM グレードを推奨している。これらのグレードは、義肢によって得られたモビリテ
ィの全体像を瞬時に伝える。一方で特に理学療法士は LCI を使用する。それは恐らく義肢装着後のリハビリテ
ーションや歩行の再教育に関わる特定の項目を測定するためである。LCI は認証されている切断者アンケート
による義肢分析結果(Prosthetic Profile of the Amputee Questionnaire:PPA)の一部であり、いくつかのリ
ハビリテーションセンターで使われている。
LCI は 0 から 3 の目盛が振られたそれぞれ 7 つの基本・応用動作で患者に成績をつけ、そのスコアの満点は
42 となっている。通常 LCI は治療プログラムの終わりに 1 回行われる。その合計点から患者の総合的なモビ
リィティの印象が得られるかもしれないが、各項目についての情報は多く得ることができない。合計点は能力
との関連性が僅かしかないのに対し、各点数はその時点での患者の機能的能力を明確に表す点や、神経学的リ
ハビリテーションでの目標設定に使える点においては、LCI は FIM+/-FAM に類似していると言える。
Nyein ら(1997)はまた、各患者の FIM+/-FAM 結果の画像描写をデザインしている。
義肢装着後初期には、患者は理学療法士と共に LCI の 14 項目を用いた歩行再教育を行う。FIM+/-FAM
のように、スタンモアキングストンスプラットは、英国内科医師会の基準となっている、
〔患者との目標設定〕
と〔転帰スコアの記録〕の双方の要件を満たすだろう。そのためスプラットはこれらの時点:義肢支給後の治
療プログラム前の能力を示す際、治療プログラム開始時点での目標設定の際、歩行再教育の際、プログラム終
了の退院時、での 3 つの得点を示すように設計されている。これらは患者の臨床そして身体的改善を表現する
ため、益々監査の対象となるサービスにおいて、付加価値のある指示を容易に得ることができる。そのため簡
単な全 3 つの能力指数の画像表示はこのニーズに合致するだろう。
目的
この論文の目的は、リハビリテーション成果を臨床医が直感的に理解しやすく、かつ患者に説明しやすい図表
を用いた画像描写システムを考案することだった。図表はまた、個々の動作得点をそこから簡単に読み取れ、
患者記録としてや監査のために、印刷物や電子機器での保管に適している。これは従来の患者記録データから
図表を描くソフトウェアの発展に影響を与えるだろう。
解説
著者らはマイクロソフトエクセルを用いて、LCI データをグラフ表示するシステムを改良している。いくつか
の図表を試した結果、放射線状グラフのポリグラムフォームは、色や濃淡の違いによって関連のある区域の差
別化ができるため採用された。7 つの基本動作の成績は右、応用動作の成績は左に示される。計測結果が表す
ものは較正目盛や、グラフの形や大きさの総合的な印象から簡単に読み取れるようになっている。スプラット
という名前は、ケーキの上に振りかけられた淡い色のアイシングシュガーが、ある実験での図表に似ていたこ
とから付けたれた。大体の義肢支給時の計測数値はゼロ値となる。そのため、偽のゼロ値を考慮しない場合、
スプラットの義肢支給時の範囲が中央の一点に集中する傾向があり、ゼロ値の位置は偽のゼロ値と区別できる
ように外側に設けられた。時計の文字盤の 12 時のところから時計回りに読めるように、基本動作はスプラッ
トの右側に表示され、同様に表でも右側に表示される。
図 1 は LCI テーブルと対応しているスプラットの一例で、リハビリテーション病院で見られる典型的な結果
が、どのように表示されるかを示している。その例の中で、患者は基本動作のゴールのうち、2 つの動作〔歩
道縁石の上り・下り〕以外の全ては獲得されている。応用動作では、その患者は 3 つのゴールに到達してない
が一つの活動については目標を超えた成果を出している。図 2 は稀な状況ではあるが、治療プログラムの期間
中、退行している患者のスプラットの試験用のデータで、そのデータは極端な状況のスプラット表示をテスト
するために抽出された。このスプラットでは、床からの起き上がり動作の義肢支給時の点数(無地の黄色の区
域)はゴール(ピンクの点線)部分を突き抜け、臨床的異常への注意を描き出している。他の動作では 14 の
内 10 の目標が達成され、3 つは目標を超えた成績を出した。
この 2 つの例では、義肢支給時での患者の能力は無地(黄色)部分で示される。点線(ピンク)部分は目標ま
で達成しなかった動作を示す。方眼模様(緑)は患者の獲得した範囲に塗られ、縞模様(青)部分は患者が目
標値を超えた動作を明確に示している。(色の詳細についてはオンライン参照)
スプラットは患者データの表を単独で使用するに比べ、明らかに有意な利点がある。例えば、療法士は患者の
能力の概要をとても迅速に、かつ少しの鍛錬で獲得できるだろう。また期待される能力や獲得される能力は、
どれでも放射状の線の長さによって示されるため、スプラットは患者にとっても容易に理解できるであろう。
この理解の容易さは、特に目標設定や進展状況の見直しの際に重要である。そのため、データの表のみ用いる
場合は、より多くの経験や計算能力を必要とすると考えられる。
適応
スタンモアキングストンスプラットは、スタンモア DSC で有望な結果と共に、現在の患者データ記録と並行
して実験的に使われている。イギリスにある他の地方義肢施設でのスプラットの採用が計画されている。
結論
スプラットシステムは LCI データ表示の迅速で効果的な手法であり、患者の目標設定の助けとなる。マイクロ
ソフトエクセルが使われているため、様々な機関での利用が可能であると考えられる。
/Fatigue test of low-cost flexible-shank monolimb trans-tibial prosthesis
ソケットとパイプを一体成形してパイプに可撓性を付与した安価な下腿義足の疲労テスト
Winson C. C. Lee & Ming Zhang
Department of Health Technology and Informatics, The Hong Kong Polytechnic University, Hong Kong, PR China
本研究は,ソケットとパイプを熱可塑性プラスチックで一体成形した下腿義足に関するものである。適切なデ
ザインであれば,一体成形したパイプの撓みによって,足関節の底背屈可動域の不足を補うことが可能である。
しかし,通常,パイプの撓みは義足全体の強度低下につながる。有限要素法及び Taguchi の方法を用いたこれ
までの我々の研究において,パイプの十分な撓み及び静荷重に対する適切な強度を得るためのパイプ形状及び
太さを検討した。ただし,この研究の段階では疲労試験は行なっていなかった。繰り返し負荷の場合,比較的
小さな荷重でも疲労破壊が生じる可能性がある。そこで今回は,形状及びアライメントが同一の下腿義足を基
に,一体成形した 2 種類の下腿義足の前足部に,800N の力を 50 万回繰り返して加えた場合の影響を検討した。
50 万回という回数は,義足側での歩数を 1 日 1300 歩として 1 年間使用することに相当する。パイプの断面形
状は楕円形で,長軸は内径 45mm,短軸は内径 25mm とした。パイプの長さは 250mm。足部とパイプを連結する
ボルトアダプターは,長軸 45mm,短軸 25mm,高さ 35mm の楕円柱状を基準としたが,比較のため,楕円柱形状
のうち足部に接する側が厚さ 5mm のフランジ(帽子のつばのような出っ張り)形状になったボルトアダプターも
用いた。足部は既製の SACH 足部としてボルトにて連結・固定した。その結果,足部とパイプを連結するボル
トアダプターの形状が重要な役割を果たしていることが判った。すなわち,フランジのない楕円柱形状のボル
トアダプターを用いた下腿義足では,2 万回の繰り返し負荷に至る前に足部を連結するボルトが破断した。一
方,フランジ付きボルトアダプターを用いた下腿義足では,繰り返し負荷を除去した後,背屈方向に 3.8°変
形していたが,目視の範囲では材料に降伏を認めることなく,50 万回の疲労試験をクリアした。
/The effect of rotationplasty on the ankle joint: Long-term results
C. Gebert 1, J. Hardes1, V. Vieth 3, A. Hillmann 2, W. Winkelmann 1, G. Gosheger¹
ローテーションプラスティを施した症例に対する足関節への影響の長期経過観察結果
¹Department of Orthopaedics, University of M nster, M nster,² Department of Orthopaedics, Klinikum Ingolstadt,
Ingolstadt ³Department of Radiology, University of M nster, M nster, Germany
ローテーションプラスティは悪性の骨腫瘍に対する安全な外科的処置として知られている。義肢によって失
われた患肢を補う場合に比べて、重篤な合併症が少ないというメリットもある。ただ、バイオメカニクス的な
観点から足関節に着目すると、体重を支持する部分は変化し、支持する範囲も減少するなどの理由から、関節
軟骨にはたらく負荷は増加すると考えられ、足関節の状態は劇的に変化しているといえる。また装具を使用す
るため、皮膚や軟部組織に炎症や痛みを生ずることもありうる。このようなバイオメカニクス的な変化によっ
て、足関節の変形や皮膚炎が引き起こされてしまうことが予期されるが、過伸展されたままの足関節に着目し
て長期にわたって経過観察されたデータはあまり見受けられない。
そこで本研究では、悪性の骨腫瘍や大腿部の損傷によってローテーションプラスティを施した21の症例
(女:13人、男:8人)に対して長期間経過観察おこない、足関節の状態の変化について報告する。
対象者は1978年から1993年の期間にローテーションプラスティが施されており、そのうち20例が
悪性の骨腫瘍(骨肉腫:16例、ユーイング肉腫:3例、悪性線維性組織球腫:1例)によるもので、1例が大
腿部の損傷によるものである。対象者の手術時の平均年齢は29.5歳(7歳~65歳)、平均経過観察期間は
13.5年(10~25年)であった。日常生活、スポーツ活動度などに焦点をあて、X線やMRIによって皮
膚や軟部組織など部分的に軟らかい箇所の変性、足部や足先部の変形などを毎年観察記録し、足関節の可動域
なども計測した。X線撮影は、荷重負荷状態での前後左右方向と荷重を負荷しない状態での前後左右方向から
骨組織の変性について評価した。5症例に対してはMRIでの検査を実施することができた。
本研究での経過観察中には、全ての症例において痛みを訴えることはなく、日常生活上の制約を受けているも
のもいなかった。特に足関節に着目しても、荷重負荷時の痛みや早朝に痛みを生じるといった訴えもなかった。
回旋された足部で主に荷重のかかる部分には皮膚の硬化が観察された。このような変性は義足の適合状態を調
整することにより効果的に減少することができた。4つの症例では、術後12~15年経過した後、関節腔が
わずかに減少する兆候がレントゲンにより観察された。1症例では、小さな骨棘とともに軟骨が硬化している
状態が観察された。
高齢の症例においては、足関節の関節可動域が減少することから、足関節を最大伸展した状態でも義足の外観
上に問題を生じてしまう場合もあるが、機能的に深刻な問題とはいえなかった。
今回の調査結果からは、足関節部はローテーションプラスティを施した後の荷重変化に順応することが可能で
あること、関節症を引き起こさないということが示された。今後は高齢の症例を含めて、さらなる長期経過の
観察が必要である。
/Shoe adaptation after amputation of the II-V phalangeal bones of the foot
足部の第2中足骨から第5中足骨に対しての切断術後の靴の改造
G. M. ROMMERS1,4, H. J. M. DIEPSTRATEN2, E. BAKKER3, & E. LINDEMAN4
¹Centre for Rehabilitation, University Medical Centre, Groningen, ²Orthopaedic Shoetechnics, Maarssen³Department of
Surgery, Hofpoort Hospital, Woerden, and
Department of Rehabilitation Medicine, University Medical Centre, Utrecht,
The Netherlands
要約
オランダでは、下肢切断全体の約 50%は、足趾および前足部の切断である。足趾や中足部の外傷は稀である。
足部の保存は治療の主要目的である。足部の挫滅症は高い罹患率と関係があるかもしれない。この症例報告は、
第2中足骨から第5中足骨に対する切断術後に、唯一残った第1中足骨に対して足底装具によって解決を試み
たものである。前足部の切断術後の典型的な対処方法は、靴底を硬くする方法と toe-off の段階で前足部の負
担を軽くするように改善させるためにロッカーバーを使用する方法である。患者が過剰に階段を昇る仕事をし
なければならないため、もうひとつの解決法が選ばれた。足底装具として歩行時の toe-off や荷重時の自由運
動を確保する目的で金属製の底板を製作した。その底板は安全性と toe-off 後の自動調節機能を備えている。
これは、靴の技術者にロッカーバーや過度に硬い足底板を製作せずに靴を作ることができるようにするものだ。
その 0.5 ㎜厚のカスタムメイドの弾力に富む鋼の板は、工業用の安全靴の中にもまた保護の目的で使用されて
いる。靴の改造についての進歩は、足部の部分的な切断に対する日常的な解決法について、医師や靴の技術者
に報告するために、もっと調査し、症例報告を公表しなければならない。
はじめに
オランダの中で、下肢切断全体の約 50%は足趾および前足部の切断である(Prismant 2002)。フィンランドか
らの初期報告では、一般人口のなかの切断術に関して約 25%が足趾の切断である(Pohjolainen and Alaranta
1999)。
ほとんどの場合、血管病理学と糖尿病が切断にいたる主な原因である(Prismant 2002; Pohjolainen and
Alaranta 1999)。足趾と中足部の外傷は稀である(Richter et al. 2001)。足部の保存は、治療のもっとも重要な
目標である。足部の挫滅症は高い罹患率と関係があるかもしれない。初期に管理をすべきなのは、早めに軟部
組織の適応範囲のコンパートメント症候群を見分けることとその治療に向かって指導すること、そして軟部組
織を治すことで増やし、硬い骨格をを安定させることである(Myerson et al. 1994)。
しかしながら、外傷の外科治療をするときに、破砕のある第1中足骨の保存について議論される。もし、第2
中足骨から第5中足骨を除去すると、足部を正常に使うのに不可欠な第1中足骨をまずまずな位置に定めるこ
とができない。足部の負担部分を除去することと、組織の保護は肝心だ。著者の理解によると、それらの文献
は、外傷性の足部の症例で、靴に対する足底板の構造と負担分布についての十分な証拠となる。この症例報告
発表は、第2中足骨から第5中足骨の切断術後の第1中足骨のための足底板による解決法の1つである。
症例
受傷歴のない53歳の健康な成人男性で、糖尿病や血管病理学が関係しておらず、労働災害によって第 1 中足
骨から第5中足骨までが押しつぶされて破砕され、皮膚と筋とともに軟部組織の損傷が起こった。
破砕され、めちゃめちゃになった組織を K-wires を使って第2中足骨から第4中足骨の骨折を固定された後、
回復へ向かった。本文中図1)
相談役であるリハビリ医のなかには、機能的な第1中足骨を保護するために、第2中足骨から第5中足骨を
MTP 関節から切断することと、歩行を最大限に生かすための靴の改造に対する十分な可能性についての助言
もあった。
骨折後と回復中の数週間は、第1MTP に痛みや酷使がないようにするために可動域が制限された。本文中
図2)靴の改造と歩行訓練のために、外来患者のためのリハビリテーションのある診療所へ紹介した。
靴の改造
靴の改造の最も重要な目的は、足部の荷重時に対する負担を支持することと快適な歩行を保護することである。
それらは、第1中足骨を十分に支持するためのいくつかの解決法である。長い目で見れば、それらは第1中足
骨の循環と足趾の爪の部分を圧迫する危険性がある。一般的な靴は、全荷重中、第1中足骨が前進し、背屈す
る間に問題が発生するのと、特に第1趾の安全性に対して特にデパートの靴に与えるために必要だ。歩行中、
第1MTP 関節の動きやすさを制限させるために足底板を適合させることは必要である。通常、ロッカー・バー
は足底板と併用して、最初の挿絵のサポートとともに配置する。ロッカー・バーはすべての普通靴と安全靴に
選ばれ、適応されるべきである。なぜこのようなことを言うかというと、その患者は過剰に階段を上らなけれ
ばならないため、別の解決法が選ばれたのだ。
足底板の改造
スプリングスチールメタルソールの足底装具は、歩行中の荷重時と toe-off の間中、ずっと自由運動をするた
めに作られた。そのソールプレートは toe-off のあと自動的に調整する特性と安全性を供給する。このおかげ
で、靴の製作者はロッカーバーや堅すぎる足底板を使わないで靴を製作を製作することができるようになった。
その 0.5 ㎜のカスタムメイドのスプリングスチールプレートは、さらに工業用安全靴に保護のために使用され
ている。本文中図3)
足部にギプス包帯を巻くときは、杖を使って立位姿勢を作らせる。このモデルを使ってその足底板を製作する。
多くの種類から成り立っているその基礎段階は、平らな裏面を得るために付加的にコルクを使用している。接
着剤を使用しての金属性の底板の固定は、mid-stance から toe-off の間ずっと第1中足骨の位置を調整するた
めの付加的なサポートとして、上層部のプラスタゾートに象眼細工を施している。本文中図4)
この足底板の利点は、柔軟な性質を使っての薄い装具で、それ以上の改造をしない安全靴を含めて、正常歩行
やさまざまな靴に使用される場合が考えられる。本文中図5・図6)その特別な足底板を入れた靴を 2 年間広
範囲に使ったが、材料によるいくらかの技術的な失敗は見られなかった。足部に余分な胼胝の形成や他の痛み
の変化があったかについての報告がないので臨床をさらに継続していく必要がある。
考察
それらの文献(Recal and PubMed databases)のなかには、外傷性の足趾の切断術後の治療法について、靴を改
造して使用することに対しての十分な証拠がある。外科医は最適な圧に耐える足と肢を救済することについて
主に関心を抱く。機能的な靴との関係については公表されていない。適した圧力の分布と力の伝達には優れて
いる。その著者たちは、靴の改造として、ロッカーバーを使わないで、金属の板によってソールの矯正と歩行
の改善による解決法を紹介したのだ。
前足部の切断後のための標準的な改造は、toe-off のときに前足部への負荷を減少させるために硬い素材の靴底
やロッカーバーを製作したりする(Postema et al.1998;His et al.2004)。標準的な靴の改造は、中心の厚い足底
板を使用し、階段の昇降時にあまり快適ではない。私たちは、快適な歩行と階段を昇ることの安全性を実現す
る為に、この足底板を製作した。
足部の外傷の心理的な影響は、靴の改造を受け入れるために重要な場合もある。約 20%のケースが装飾の傷が
原因で心的外傷後ストレス障害とうつ病になるといわれている(Fukunishi 1999)。治療中にこのような点も注
目すべきである。
装飾的な外観に改造した靴を使用することを奨励することは重要だ。著者の足底板は改造された靴に対して装
飾的に製作されることを保障する。
靴の改造を進歩させるためには、足部の部分的な切断に対する日々の解決法について、より多くの調査と臨床
報告を公表し、医師や靴の技術者に報告しなければならない。
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