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原 著 Doxycyclin 誘導性 ERα 陽性 BRCA1 枯渇ヒト乳腺細胞の樹立

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原 著 Doxycyclin 誘導性 ERα 陽性 BRCA1 枯渇ヒト乳腺細胞の樹立
151
原
聖マリアンナ医科大学雑誌
著
Vol. 43, pp. 151–162, 2015
Doxycyclin 誘導性 ERα 陽性 BRCA1 枯渇ヒト乳腺細胞の樹立
くろ だ
たか こ
黒田 貴子1, 2
おか だ
ま
い
こ
つ がわこういちろう
岡田麻衣子1
津川浩一郎2
おお た
ともひこ
太田 智彦1
(受付:平成 27 年 8 月 20 日)
抄
録
BRCA1 遺伝子の生殖細胞系列変異は家族性乳癌および卵巣癌の主要因の一つである。その
臓器特異的な発癌機序は解明されていないものの,癌発生母地の組織学的知見からエストロゲ
ンレセプター α (ERα) が何らかの役割を果たすと考えられている。このため発癌における両因
子の関連性解明には,正常な二倍体細胞を用いて BRCA1 機能不全における ERα の影響を解析
することが重要である。しかしながら株化された ERα 陽性二倍体細胞は存在しない。そこで,
本研究では解析に適したモデル細胞株として,遺伝子工学的手法を用いた ERα 陽性 BRCA1 枯
渇のヒト乳腺細胞の樹立を行った。
まず ERα 陰性の正常乳腺細胞株である MCF10A を用いて,doxycyclin (Dox) 誘導性 BRCA1
枯渇細胞を作成した。BRCA1 に対する shRNA 配列をエントリーベクターにクローニングし,
Gateway 法にて CS-RfA-ETBsd-shBRCA1 レンチウィルスベクターを作成した。Lenti-X 293T
細胞より調整したレンチウィルスを MCF10A 細胞に感染後,Blasticidin で選択して MCF10ADox-shBRCA1 細胞株を樹立した。同様にして,CSIV-TRE-Rfa-Ubc-puro-ERα 由来レンチウィ
ルスを作成し,Puromycin の選択下で Dox 誘導性に ERα を発現する MCF10A-Dox-ERα 細胞
を樹立した。さらに MCF10A-Dox-ERα 細胞に CS-RfA-ETBsd-shBRCA1 由来レンチウイルス
を感染後,Blasticidin と Puromycin の両抗生剤選択下で MCF10A-Dox-ERα-shBRCA1 細胞を
樹立した。MCF10A-Dox-ERα-shBRCA1 細胞において Dox 添加により BRCA1 の発現が低下
すると同時に ERα が発現することを確認した。
最後に細胞増殖能を指標として,BRCA1 枯渇時における ERα の影響を検討した。興味深い
ことに,BRCA1 正常発現細胞では ERα の発現は細胞増殖に影響を与えないのに対して,BRCA1
枯渇細胞では ERα 発現により細胞増殖の著しい低下が観察された。
以上,Dox で誘導可能な ERα 陽性 BRCA1 枯渇ヒト乳腺細胞を樹立した。今後,BRCA1 機
能不全を背景とした ERα による遺伝子不安定性への影響を解析するための有用なツールになる
と思われる。
索引用語
BRCA1,ERα,doxycyclin,shRNA,tet-on,tet-off
緒
(BRCA1) 遺伝子1) は,その生殖細胞系列変異により
言
家族性乳癌および卵巣癌を発症し,欧米では変異キャ
リアに対してリスク低減両側乳房切除術や両側卵巣
Breast and ovarian cancer susceptibility gene 1
付属器切除術が施行されている2)3)。遺伝子変異以外
1 聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科 応用分子腫瘍学
2 聖マリアンナ医科大学 外科学 (乳腺・内分泌外科)
にもプロモーターのメチル化や miRNA による発現
29
黒田貴子 岡田麻衣子 ら
152
抑制が予後の悪い Basal-like 型乳癌や漿液性卵巣癌
が,現在乳腺においては MCF10A と HMEC という
の原因となること ,さらにそれを標的とした合成
限られた細胞株が利用可能なのみで,いずれも ERα
致死性を利用した化学療法の有用性6–8)から臨床的に
は陰性である。近年,RNAi (RNA interference) や薬
非常に重要な遺伝子である。
剤誘導性の遺伝子発現技術の進歩により,効率の良
4)5)
BRCA1 変異によって生じる癌の特徴は,そのほ
いベクターの利用が可能となっている。そこで,本
とんどが女性特有の乳房と卵巣のみに発症するとい
研究では遺伝子工学的手法を用いて doxycyclin (Dox)
う臓器特異性であるが,なぜこのような臓器特異性
による tet-off と tet-on システムを利用した ERα 陽
が生じるかは明らかとなっていない。古くよりエス
性 BRCA1 枯渇のヒト乳腺細胞を樹立した。
トロゲンとの関連が示唆されていたが,BRCA1 機
材料および方法
能不全によって発症する Basal-like 型乳癌は,一般
にエストロゲンレセプター α (ERα) 陰性,プロゲス
テロンレセプター陰性,HER2 陰性のトリプルネガ
① プラスミド
ティブ乳癌である9)。また,卵巣はエストロゲンの産
乳腺細胞に生じる分子機構を必ずしも反映しない。
Dox 誘導性 BRCA1 特異的 shRNA 発現用レンチ
ウィルスプラスミド CS-RfA-ETBsd-shBRCA1 の作
成:まず, BRCA1 特異的 shRNA 配列 (siBRCA1)
を含む下記オリゴ DNA
5’-GATCCCCGGAGGGGCTTTCATCGTTCACGT
GTGCTGTCCGTGAATGATGAAAGCTCCTTCTT
TTTGGAAAT-3’
5’-GATCTAAAGGTTTTTCTTCCTCGAAAGTAG
TAAGTGCCTGTCGTGTGCAATTGCTACTTTCG
GGGAGGCCC-3’
をアニーリングし,制限酵素 BglII と XbaI で切断し
た pENTR4-H1tetOx1 エントリーベクターのヒト H1
プロモーターと tet オペレーター (H1tetO) の下流に
組み入れた。さらに Gateway 法による LR 相同組換
え反応により,Blasticidin 抵抗性蛋白質と TetR レセ
プターを同時に発現しうる CS-RfA-ETBsd ベクター
に組み替えた (図 1 左)。
Dox 誘導性 ERα 発現用レンチウィルスプラスミ
ド CSIV-TRE-Rfa-Ubc-ETPuro-ERα の作成:まず,
pcDNA-FLAG-ERα プラスミドの ERα 遺伝子領域下
流に mutagenesis により XhoI 認識配列を導入した。
このプラスミドを制限酵素 BamH1 および Xho1 で
切断して得られたヒト ERα の遺伝子配列全長を
pENTR1A1 エントリーベクターに組み入れた。さら
に Gateway 法による LR 相同組換え反応により,
Puromycin 抵抗性蛋白質と rtTA (Reverse Tet-con‐
trolled transactivator) を 同 時 に 発 現 し う る CSIVTRE-Rfa-Ubc-ETPuro ベクターに組み替えた (図 1
右 ) 。 pENTR4H1tetOx1 , pENTR1A1 , CSIV-TRERfa-Ubc-ETPuro , CS-RfA-ETBsd は理化学研究所
この問題を解決するためには正常細胞あるいは遺伝
バイオリソースセンター三好浩之先生より御供与い
子が正常に近い二倍体 (diploid) の細胞株が必要だ
ただいた。レンチウィルスパッケージングプラスミ
生臓器であるが,標的臓器ではなく,ERα の発現も
低い。しかし最近になってエストロゲンとの関連を
示唆する証拠として,Basal-like 乳癌の発生母地は
ERα 陽性の乳腺上皮管腔前駆細胞由来であることが
示されている10)。また,予防的卵巣付属器切除検体
の病理所見から,これまで卵巣癌と考えられていた
癌は,実は卵管より発生する可能性が指摘された11)。
事実,卵管特異的に BRCA1 を枯渇させたマウスで
は漿液性卵巣癌が発症する12)。興味深いことに,ヒ
ト卵管上皮は ERα が陽性であることから,BRCA1
枯渇によって発生する癌はエストロゲンと関連する
という仮説が成り立つ。エストロゲン阻害薬である
タモキシフェンが BRCA1 変異乳癌に対して予防効
果を持つことからも 13) ,エストロゲンシグナルが
BRCA1 機能不全に起因する癌発症に何らかの役割
を果たすことが示唆される。
BRCA1 の主要な機能は遺伝子の恒常性維持であ
り,DNA 二本鎖切断をエラーなく修復するための
相同組替え修復に必須の役割を果たす14)15)。したがっ
て,ERα による転写を含む何らかの作用が,BRCA1
不全による遺伝子不安定性を促進することが予想さ
れるが,このことを直接的に解析した研究はこれま
でにない。手法の 1 つとして ERα 陽性細胞株を用い
た解析が有用と考えられるが,現在存在する ERα 陽
性細胞株は MCF-7 および T47D など,限られた細
胞株のみで,全て乳癌由来の細胞である。癌細胞は
遺伝子異常を伴っているため遺伝子不安定性を解析
するためには理想的なモデルとはいえず,また正常
30
ERα 陽性 BRCA1 枯渇細胞の樹立
153
Figure 1. Schematic representation of plasmid subcloning, lentivirus generation and cell line establishment employed in
the study. The targeted BRCA1 sequence is shown at the top. The sequences of oligo DNAs used for shRNA
are shown in the square box. Shaded texts are the sequences corresponding to the targeted region with under‐
lined three mutations. attL1, L2, R1, and R2: Sites for site-specific recombination with a Gateway vecror (Invi‐
trogen), H1: Human H1 promoter, tetO: tet operator, TetR: Tet repressor, Bsd: blasticidin resistance gene, TRE
P: Tet-responsive promoter, Puro: puromycin resistance gene, rtTA: Reverse Tet-controlled transactivator (TetOn-Advanced).
ド pRSV-Rev, pRRE and pVSVG は Yue Xiong
て培養した。Lenti-X 293T は Clontech 社 (Mountain
(ノースカロライナ大学) より御供与いただいた。
View, USA) より,HeLa,MCF7 および U2OS 細胞
は同様に ATCC より購入し,10% FBS ,1% L-glu‐
② 細胞培養
tamine および 1% Antibiotic-Antimycotic 含有の DMEM にて培養した。
ヒト正常乳腺由来近二倍体細胞である MCF10A
細 胞 は ATCC (American type culture collection,
Manassas,USA) より購入し,L-glutamine/phenol red
含 有 D-MEM (Dulbecco’s Modified Eagle’s Me‐
dium) / Ham’s F-12 with (Wako 社,Osaka, Japan)に
2.5% Fetal Bovine Serum (FBS),100 ng/ml コレラ
トキシン (#100B; List biological laboratories, INC.
社,Campbell, USA),10 μg/ml インスリン (I9278;
SIGMA 社,St. Louis, USA),500 ng/ml ハイドロコ
ルチゾン (H0135; SIGMA 社,St. Louis, USA),20
ng/μl EGF (Epidermal growth factor) (E9644;
SIGMA 社,St. Louis, USA) および 1% AntibioticAntimycotic (Thermo Fisher SCIENTIFIC 社, Wal‐
tham, USA) を加えた培養液中で 37°C,5% CO2 に
③ RNA interference
BRCA1 を標的にした siRNA オリゴヌクレオチド
(ON-TARGETplus set of 4 siRNA, J-003461) は GE
Healthcare 社 (Little Chalfont, UK) より,コント
ロールの siRNA オリゴヌクレオチド (Negative Con‐
trol siRNA #1, AM4635) は Thermo Fisher SCIEN‐
TIFIC 社 (Waltham, USA) より購入した。増殖期
HeLa 細 胞 に Lipofectamine RNAiMAX (Thermo
Fisher SCIENTIFIC 社,Waltham, USA) を用いて二
本鎖 RNA (最終濃度 10 nM) をトランスフェクショ
ンし,72 時間培養後に蛋白質発現抑制効果について
解析を行った。
31
154
黒田貴子 岡田麻衣子 ら
④ レンチウィルスの作成
Little Chalfont, UK) 1:5000 倍希釈を用いた。それぞ
れ 1 時間インキュベートしたのち ECL キット (GE
Healthcare 社,Little Chalfont, United Kingdom) に
て発光させ,LAS3000 イメージアナライザー (富士
フイルム株式会社,Tokyo, Japan) にて撮影した。
15 cm ディッシュで培養した約 80%コンフルエン
トの Lenti-X 293T (レンチウイルスパッケージンン
グ細胞株) に,リン酸カルシウム法を用いてパッケー
ジングプラスミド pRRE,pRSV-Rev および pVSVG
(各 10 μg) と 17 μg の SIN ベクタープラスミド (CSRfA-ETBsd-shBRCA1 あ る い は CSIV-TRE-RfaUbc-ETPuro-ERα) をトランスフェクションした (図
1) 。 24 時間後に 10 μM のフォルスコリン (F6886;
SIGMA 社,St. Louis, USA) を添加してさらに約 48
間 0.5% Triton X-100 /PBS にて膜の透過処理を行っ
時間培養したのち,ウイルス含有培養上清を回収し
た。PBS で洗浄,3%ヤギ血清アルブミン含有 0.1%
た。0.45 μm フィルターを通して浮遊細胞を除去し,
Triton X-100 /PBS にて 1 時間ブロッキングした後,
同ブロッキング液に一次抗体として抗 ERα 抗体
(1:100 倍希釈 ) を加え 1 時間インキュベートした。
PBS で洗浄後,2 次抗体として FITC 標識抗ラビッ
ト IgG 抗 体 (Jakson Immuno Research 社 , West
Grove, USA) と 1 時間インキュベートした。退色防
止 剤 prolong gold Antifade with DAPI (Thermo
Fisher SCIENTIFIC 社,Waltham, USA)) で封入し,
共焦点レーザー顕微鏡 (LSM510; Carl Zeiss 社,
Oberkochen, Germany) にて検鏡した。
⑦ 蛍光免疫染色
8 well チャンバースライド上で培養した細胞を 2%
ホルマリンにて 20 分間固定,PBS で洗浄後,20 分
45000 rpm (平均遠心力 148500 g,アングルロータ
P70AT; HITACHI, Tokyo, Japan) ,4°C,2 時間の超
遠心にてウイルス液の濃縮を行った。
⑤ 安定細胞株の樹立
6well ディッシュに播種した各種細胞 (1×105 /
well) に④のレンチウィルス濃縮液全量を上清に添加
した。さらに 48 時間培養したのち,ベクターに対
応する抗生剤 (Blasticidin 10 μg/ml あるいは Puro‐
mycin 0.5 μg/ml) にて安定細胞株の選択を行った (図
1)。
⑧ 逆転写定量ポリメラーゼ連鎖反応法 (RT-qPCR)
各種培養細胞より RNase Plus Mini (QIAGEN 社,
Venlo, Netherlands) を用いて RNA を抽出した。この
RNA を鋳型に PrimeScript RT Master Mix (TaKaRa
社,Shiga, Japan) を用いて逆転写反応を行い cDNA
を取得した。各遺伝子の mRNA の発現は,この
cDNA を鋳型として pwer SYBR Green PCR Mastar
Mix (Thermo Fisher SCIENTIFIC 社 , Waltham,
USA) を用いて Step One システム (Thermo Fisher
SCIENTIFIC 社,Waltham, USA) によるリアルタイ
ム qPCR にて解析した。使用した primer は以下の通
⑥ ウェスタンブロット
1x107 個の細胞あたり 200 μl の RIPA バッファー
(50 mM Tris-HCl pH7.5, 150 mM NaCl, 0.1% SDS,
0.5% デオキシコール酸,1% Triton x-100) にて全細
胞抽出液を作成した。蛋白質濃度を測定し,1 レー
ンあたり 40–50 μg のサンプルを 6%および 9%のア
クリルアミドゲルにて SDS-PAGE 電気泳動したの
ち,PVDF 膜に転写した。1 次抗体として抗 BRCA1
ラビットポリクローナル抗体 (C20) (sc-543; Santa
Cruz Biotechnology 社, Dallas, USA) 1:1000 倍希
釈 , 抗 BARD1 ラ ビ ッ ト ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体
(A300-263A; Bethyl Labo 社 ) 1:1000 倍希釈,抗
ERα ラビットポリクローナル抗体 (HC-20) (sc-543;
Santa Cruz Biotechnology 社 , Dallas, USA) 1:1000
倍希釈,抗 Tubulinα マウスモノクローナル抗体
(MS-581-P0; Thermo Fisher SCIENTIFIC 社, Wal‐
tham, USA) 1:10000 倍希釈,二次抗体としてペルオ
キシダーゼ標識抗マウス抗体 (IgG) (GE Healthcare
社,Little Chalfont, UK)) 1:5000 倍希釈,ペルオキ
シダーゼ標識抗ウサギ抗体 (IgG) (GE Healthcare 社,
りである。
hFOS; Forward primer 5’-CGTCTTCCTTCGTCTT
CACC-3’, Reverse primer 5’-GTCAGAGGAAGGC
TCATTGC-3’.
hGAPDH; Forward primer 5’-ATGAGTCCTTCCAC
GATACC-3’, Reverse primer 5’-ATCCCATCACCAT
CTTCCAG-3’.
hFOS の 発 現 は hGAPDH の 値 で 補 正 し た 後 ,
MCF10A の Fold 変化で表記した。
32
ERα 陽性 BRCA1 枯渇細胞の樹立
155
Figure 2. (A) Evaluation of the efficiency of siRNAs for BRCA1. HeLa cells
were transfected with a series of siRNAs specific to BRCA1 and sub‐
jected to western blot with indicated antibodies. (B) Schematic repre‐
sentation of the tet-off technique with TetR and H1tetO promoter for
shBRCA1 expression employed in the study. (C and D) Dox-induced
inhibition of steady state level of BRCA1 and BARD1 in cell lines in‐
corporated
with
CS-RfA-ETBsd-shBRCA1.
MCF10A-DoxshBRCA1 cells were induced with indicated amount (μg/ml) of Dox
for 24 hours (C). Indicated cells were induced (+) or not (-) with 1
μg/ml of Dox for 24 hours (D). Cells were subjected to western blot
with indicated antibodies. Tubulin: loading control.
⑨ 細胞生存性測定
細胞内での shRNA の作用効率を上げるためベクター
96 well プレートに 2x10 個の各種 MCF10A 樹立
内の hairpin 領域に存在する標的配列に対するセン
細胞株を播種し,Dox 含有培地あるいは Dox 非含有
ス鎖に 3 箇所のミスマッチ変異 (図 1,アンダーライ
培地で 7 日間培養後の生存細胞率を celltiter-blue
(Promega 社,Tokyo, Japan) にて測定した。各種細
胞の Dox 添加群の値を非添加群の値で補正し,生存
ン) を加えた。
クターを作成し,レンチウィルス液を調整した。こ
細胞率を解析した。
のウィルス液を MCF10A に感染させ,Blasticidin に
2
結
この配列を用いて,CS-RfA-ETBsd-shBRCA1 ベ
て選択をかけ,遺伝子が安定的に導入された細胞株
果
を樹立した。本細胞では Dox 非添加時には Tet レプ
Dox 誘 導 性 BRCA1 枯 渇 細 胞 の 樹 立 (MCF10ADox-shBRCA1)
BRCA1 の発現を抑制する至適 shRNA 配列を決定
するために,4 種の BRCA1 に対する siRNA および
コントロール siRNA を,Lipofectamine RNAiMAX
レッサー (TetR) が H1tetO プロモーターに結合し
shBRCA1 の転写を抑制しているが,Dox 添加によ
り TetR がはずれ (tet-off),shBRCA1 の転写が起こ
る Dox 誘導性の BRCA1 発現抑制システムである
(図 2B)。ウェスタンブロット解析にて Dox の濃度依
存的に BRCA1 が抑制することを確認した (図 2C)。
また,BARD 蛋白は BRCA1 とヘテロダイマーを形
成し,BRCA1 によって蛋白質安定性が維持される
ことが知られている。Dox 濃度依存的に,BARD1
にてトランスフェクションし,ウェスタンブロット
で発現を確認した (図 2A)。その結果,No.11 と No.
12 で BRCA1 の発現抑制が得られ,このうち No.12
の配列 (図 1) を shRNA の配列に用いることとした。
33
黒田貴子 岡田麻衣子 ら
156
Figure 3. (A) Schematic representation of the tet-on technique with rtTA transactiva‐
tor and TRE promoter for ERα expression employed in the study. (B and C)
Dox-induced expression of ERα in MCF10A-Dox-ERα cells. Cells were in‐
duced (+) or not (-) with 1 μg/ml of Dox for 24 hours and subjected to west‐
ern blot with indicated antibodies (B) or immunofluorescence with ERα an‐
tibody (C). Nucleus were counterstained with DAPI. (D) Transcriptional
activity of the exogenous ERα. The mRNA expression level of an ERα-tar‐
get gene Fos from indicated cells were analyzed by RT-qPCR and normal‐
ized with that from parental MCF10A cells.
も BRCA1 と共に発現レベルの低下が観察され,Dox
Dox 非添加時には Tet 反応性プロモーター (TRE P)
からの転写は生じないが,Dox 添加により rtTA ト
ランスアクチベーターが活性化 (tet-on) して,TRE
P 上に結合して ERα の転写が起こる (図 3A)。Dox
1μg/ml 添加後 24 時間後にウェスタンブロットを行
い,ERα の発現を確認した (図 3B)。蛍光免疫染色
法により,発現した ERα の核内局在が観察された
(図 3C)。さらに,ERα の標的遺伝子である hFOS の
発現を RT-qPCR にて解析した。その結果,MCF10A
細胞に比べて,MCF10A-Dox-ERα で hFOS 遺伝子
の mRNA の発現亢進が確認された (図 3D)。これら
の結果により,発現した ERα が機能的であることが
誘導時には BRCA1 が機能不全であることが推察さ
れた。
HeLa , MCF7 お よ び U2OS 細 胞 で も 効 率 的 に
Dox 誘導性に BRCA1 および BARD1 の発現が抑制
できる細胞が樹立され,本法で作成されたレンチウ
イルスの有効性が示された (図 2D)。
Dox 誘導性 ERα 発現細胞の樹立 (MCF10A-DoxERα)
続いて,Dox 誘導性 ERα を発現する細胞株の樹
立 を 行 っ た 。 Puromycin 耐 性 の CSIV-TRE-RfAUbC-KT-Puro-ERα ベクター を作成し,レンチウィ
ルス液を調整した。このウィルス液を MCF10A に
感染させて Puromycin にて選択をかけ,遺伝子が安
推察された。
定的に導入された細胞株を樹立した。本細胞では
34
ERα 陽性 BRCA1 枯渇細胞の樹立
157
Figure 4. (A) Dox-induced inhibition of BRCA1 and BARD1, and simultaneous expression
of ERα in MCF10A-Dox-ERα-shBRCA1 cells. Cells were induced (+) or not (-)
with 1 μg/ml of Dox for 24 hours and subjected to western blot with indicated
antibodies. (B) Effect of ERα in the cell proliferation of BRCA1 deficient cells.
Parental MCF10A, MCF10A-Dox-ERα, MCF10A-Dox-shBRCA1 or MCF10ADox-ERα-shBRCA1 cells were incubated with (+) or without (-) 1 μg/ml Dox for
6 days and the viable cell counts were estimated with CellTiter Blue. Average ±
SEM. normalized to cells without Dox were derived from triplicate experiments.
Dox 誘 導 性 ERα 発 現 BRCA1 枯 渇 細 胞 の 樹 立
(MCF10A-Dox-ERα-shBRCA1)
次に,Dox 誘導性に ERα を発現し且つ BRCA1 が
発現抑制される細胞株の樹立を行った。Blasticidin
耐性 CS-RfA-ETshBRCA1 を用いたレンチウィルス
を MCF10A-Dox-ERα 細胞に感染させ,Puromycin
および Blasticidin により二重選択下で両遺伝子が安
定的に導入された細胞株を樹立した (図 1 中央)。こ
の細胞を用いて,ERα および BRCA1 の発現をウェ
スタンブロットで確認した。その結果,Dox 添加に
より BRCA1 の発現抑制と共に ERα の発現が確認さ
れた (図 4A)。
最後に,これらの樹立細胞株を用いて,BRCA1
と ERα の関係性について細胞増殖を指標に検討し
た。各種細胞株の Dox 誘導時における細胞増殖を
CellTiter Blue にて解析した。その結果,親株の
MCF10A 細胞および MCF10A-Dox-ERα 細胞では
Dox 添加による細胞増殖の変化はみられなかった。
一方,MCF10A-Dox-shBRCA1 では細胞数の低下が
確認された。興味深いことに,MCF10A-Dox-ERαshBRCA1 細胞では MCF10A-Dox-shBRCA1 に比べ
て顕著な細胞数の低下を認めた (図 4B)。これらの結
果から,BRCA1 枯渇細胞においては外因性蛋白が
非特異的に細胞増殖を抑制する可能性は残るものの,
ERα によって細胞増殖の抑制ないし細胞死の増加が
起こる可能性が示唆された。
考
察
家族性乳癌および卵巣癌の原因遺伝子として
BRCA1 が同定されてからすでに 20 年以上が経過し
たが,未だに臓器特異性の分子機構は解明されてい
な い 。 前 述 し た よ う に BRCA1 欠 損 に 起 因 す る
Basal-like 乳癌および漿液性卵巣癌の発生母地が ERα
陽性細胞であるということから, ERα の作用が
BRCA1 欠損による発癌を助長している可能性が考
えられる。
本 研 究 結 果 に お い て ,図 4 に 示 し た よ う に,
BRCA1 が正常に発現している細胞では Dox 添加に
よる ERα の発現は細胞増殖にほとんど影響を与えな
かったのに対して,BRCA1 枯渇細胞では ERα の発
現によって顕著な細胞数の低下が観察された。一般
に BRCA1 が機能しない細胞では,DNA 複製や転写
の際に自然発生する DNA 損傷の修復が完全に行え
ないことから,MCF10A 細胞のように野生型 TP53
35
158
黒田貴子 岡田麻衣子 ら
を有する細胞ではチェックポイント機能により G1-
症する22)。サテライト DNA 領域は H3K9 メチル化
S 期進行の遅れを引き起こす16)。一時的に細胞の増
領域であり,メチル化 H3K9 と結合するヘテロクロ
殖は低下するが,ゲノム不安定性の結果,一部の細
マチンプロテイン 1 (HP1) によってヘテロクロマチ
胞から癌化が生じる。BRCA1 枯渇 ERα 発現細胞に
ン構造が保たれている23)。BRCA1 枯渇と ERα の相
おいては,ERα の発現に起因する付加的な DNA 損
乗効果によってヘテロクロマチンが解除され,癌が
傷が生じた結果,それを処理することができず,G1S 期進行のさらなる遅延あるいはアポトーシスの亢
進を来した可能性が考えられる。ただし,BRCA1
生じることが考えられる。また,著者らは最近,HP1
の二本鎖切断に対する相同組換え修復において必須
欠損を有する細胞において外因性に発現させた蛋白
の役割を果たすことを見出しており24)25),相同組換
を介した BRCA1 の DNA 損傷局所への集積が DNA
質が非特異的に細胞増殖を抑制する可能性も否定で
え修復能にも ERα は間接的な役割を果たしている可
きず,今後,ERα 特異的な DNA 損傷の解析や非特
能性が考えられる。
異的な蛋白質の発現が及ぼす作用についても解析を
3) R-loop の解除
さらに,最近 BRCA1 および BRCA2 の新しい機
能として R-loop の解除が報告された26)27)28)。R-loop
とは,転写に伴い,開いた DNA 二本鎖の転写鎖と
mRNA が DNA:RNA ハイブリッドを形成し,非転
写鎖が一本鎖 DNA として蓄積する状態で,DNA 損
傷を来す大きな要因となる。したがって,BRCA1
の機能不全があると ERα による R-loop が蓄積し,
行う必要がある。著者らは ERα に起因するゲノム不
安定性の機序として以下の 3 つのメカニズムを考え
ており,今後,本研究で作成した細胞株を用いて検
討していく予定である。
1) ERα による DNA 損傷
ERα が転写を行う際には二本鎖 DNA のねじれが
生じるが,このねじれを解消するために TopoIIβ に
よる DNA の二本鎖切断と再結合が必要となる 17) 。
再結合の過程では DNA 修復因子が共役しており,
これらが機能しないと DNA 二本鎖切断が修復され
ずに残る可能性がある。実際に BRCA1 がバックアッ
ゲノム不安定性の要因となることが考えられる。
上記可能性のいずれかの,或いは重複したメカニ
ズムによってゲノムの不安定性および発癌が起因さ
れるというモデルは非常に興味あるモデルである。
プシステムとして働いていることが予想される。実
しかしながら,これらを証明するためにはいずれも
際に,ERα シグナルによって DNA 二本鎖切断が生
ることが明らかとなっている19)20)。これらの事実か
二倍体或いは近二倍体で BRCA1 機能不全を有する
ERα 陽性細胞が必要である。
現在,ERα 陽性の diploid 細胞株は存在しないた
め,ERα を介したエストロゲン作用の細胞レベルで
の解析は MCF7 など,ごく限られた癌細胞で行われ
ら,BRCA1 機能不全が存在する細胞において,ERα
ており,遺伝子背景によるバイアスがかかっている。
じることが報告されている 18) 。さらに, Androgen
Receptor (AR) の転写でも同様な機構が存在し,AR
と TopoIIβ による DNA 損傷が前立腺癌の原因とな
と TopoIIβ による DNA 二本鎖切断が修復されず,
BRCA1 以外の解析においても ERα 陽性の正常細胞
ゲノム不安定性,乳癌の原因となることが考えられ
株が樹立されれば,これまでとは異なるより正常に
る。
近いエストロゲン作用の解析が可能となり,きわめ
て重要なマテリアルとなる。
2) エストロゲンないし ERα が起因するヘテロクロ
本研究では上記の解析系として Dox 誘導,tet-on
マチンの変化
および tet-off の技術を用いて ERα 陽性 BRCA1 枯
ERα はヒストン脱メチル化酵素である KDM1
(LSD1) と共役してヒストン H3 の Lys9 残基 (H3K9)
渇ヒト乳腺細胞を樹立した。本研究においては,恒
常的な安定発現細胞株ではなく,Dox 誘導誘導性細
を脱メチル化してヘテロクロマチン構造を解除す
胞株であることが非常に重要である。BRCA1 機能
る21)。一方,BRCA1 のユビキチンリガーゼ (E3) 活
不全はゲノム不安定性を誘発するため,恒常的な
性が欠損するとサテライト DNA 領域におけるヒス
BRCA1 枯渇細胞株では培養過程で既に二次的なゲ
トン H2A のユビキチン化が阻害され,この領域の
ノム変化を引き起こす可能性が懸念される。一方,
脱ヘテロクロマチン化が生じてこれによって癌が発
本研究で樹立した細胞株は Dox 非存在下では正常な
36
ERα 陽性 BRCA1 枯渇細胞の樹立
遺伝子発現の維持が可能であり,上記問題点の抜本
的解決となる。このように本細胞株により,従来困
難であった BRCA1 枯渇時の初期のゲノム変化やこ
れに対する ERα の直接的な作用点を捉えることが可
能である。また,siRNA やプラスミドを用いた一過
4)
的なノックダウンや過剰発現と異なり,ゲノム安定
性に与える BRCA1 枯渇と ERα の相乗効果の“継時
的な”観察が可能である。
以上より,本研究で樹立した細胞は BRCA1,乳
癌および卵巣癌の領域の発展に貢献できるものと考
えている。
5)
ま と め
本研究ではレンチウイルスベクターを用いて,tetoff および tet-off 技術による Dox 誘導で ERα の発現
と同時に BRCA1 が枯渇ヒト細胞を樹立し,BRCA1
枯渇するヒト正常乳腺細胞を樹立した。この細胞は
BRCA1 機能低下における ERα 依存的な DNA 損傷
6)
およびゲノム不安定の解析に有用であると考えられ
る。
謝
辞
ベクターをご供与いただいた理化学研究所バイオ
リソースセンター三好浩之先生,ノースカロライナ
大学 Yue Xiong 先生,本研究に多大なるお力添えを
賜りました聖マリアンナ医科大学大学院附属先端医
7)
学研究施設西川裕之氏,応用分子腫瘍学呉文文氏お
よび花木慎子氏に深く感謝致します。
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Abstract
Establishment of A Doxycycline-inducible BRCA1 Deficient and
Estrogen Receptor Expressing Human Breast Cell Line
Takako Kuroda1, 2, Maiko Okada1, Koichiro Tsugawa2, and Tomohiko Ohta1
Germline mutations of BRCA1 cause familial breast and ovarian cancer. The mechanism responsible for
the tissue specificity is unknown, although it is considered that estrogen receptor α (ERα) plays a critical role.
However, lack of a diploid cell line expressing ERα has prevented researchers from analyzing the impact of
ERα on generating genomic instability in the cells with BRCA1 deficiency. To overcome this problem, here we
established BRCA1 deficient and ERα positive human breast cell line using biogenetic technology. First we
generated doxycyclin (Dox)-inducible BRCA1-defective cells from MCF10A, an ERα-negative normal breast
cell line. CS-RfA-ETBsd-shBRCA1 lentiviral vector was generated from oligonucleotides responsible for
shRNA sequence in BRCA1 by Gateway recombination from pENTR4-H1tetOx1 entry vector. MCF10AshBRCA1 cells were established from CS-RfA-ETBsd-shBRCA1-lentivitral infected MCF10A cells with blas‐
ticidin selection. Next we generated Dox-inducible ERα-expressing cell line from MCF10A cells by infection
of CSIV-TRE-Rfa-Ubc-puro-ERα lentivirus followed by puromycin selection (MCF10A-ERα cells). Finally
MCF10A-ERα-shBRCA1 cell line was established by infection of MCF10A-ERα cells with CS-RfA-ETBsdshBRCA1 followed by double selection with blasticidin and puromycin. The effective inhibition of BRCA1 ex‐
pression and simultaneous expression of ERα was verified by immunoblotting. Interestingly, whereas ERα ex‐
pression had no effect on the proliferation of BRCA1 expressing cells, it dramatically suppressed the
proliferation of BRCA1-defective cells. Thus, we established a human breast cell line with conditional inhibi‐
tion of BRCA1 with simultaneous expression of ERα by Dox. This material would be valuable for analyzing
ERα-induced genomic instability specifically occurring in a BRCA1-deficient genetic background.
1 Department of Translational Oncology, St. Marianna University Graduate School of Medicine
2 Division of Breast and Endocrine Surgery, St. Marianna University School of Medicine
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