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新しいモバイルサービスを支える インスタントメッセージ技術

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新しいモバイルサービスを支える インスタントメッセージ技術
新しいモバイルサービスを支える
インスタントメッセージ技術
New Mobile Service Based on Instant Message Technology
あらまし
携帯電話は,電話だけでなくメールなど新たなコミュニケーション手段を備え,様々な情
報サービスをいつでもどこでも受けることができるパーソナルな情報端末として急速に普
及している。本稿では,今後のインターネットインフラとして期待されているインスタント
メッセージ技術を活用した新しいモバイルサービスについて紹介する。インスタントメッセ
ージは,相手の今の状況を参照し,相手の状況に応じてリアルタイムに文字メッセージを送
ることができる技術である。まずはじめに,インスタントメッセージのプロトコル標準化動
向について紹介する。つぎに本技術を用いたモバイルコミュニケーションサービスとして,
開発し実験公開中のサービスおよびシステムについて,ユーザ評価を含めて紹介する。さら
に,モバイルコマースなど,インスタントメッセージ技術を活用した新しいモバイルサービ
スについても紹介する。
Abstract
Recently a mobile phone has not just become popular as a telephony device but also as a personal
communication & information device that could be used anytime, anywhere.
In this paper, we introduce some new mobile services and its architecture based on the Instant
Message (IM) technology. This will eventually be a new Internet infrastructure, because it provides
dynamic user profile and realtime information exchange. First, we will explain the current situation
of the IM standardization. Then, we will describe a mobile communication service based on the IM
technology, which we launched as a trial on Dec. 2000. This trial also helped us in evaluating the
mobile service based on IM technology.
technology as the next generation service.
Finally, we will launch a new mobile service on IM
奥山 敏(おくやま さとし)
角田 潤(かくた じゅん)
岩川明則(いわかわ あきのり)
パーソナル&サービス研究所情報
サービス研究部 所属
現在,モバイルコミュニケーショ
ンサービスシステムの研究開発に
従事。
パーソナル&サービス研究所情報
サービス研究部 所属
現在,モバイルコミュニケーショ
ンサービスシステムの研究開発に
従事。
パーソナル&サービス研究所情報
サービス研究部 所属
現在,インターネットにおけるコ
ミュニケーションサービスシステ
ムの研究開発に従事。
262
eps版P262:7月号−あらまし(1)白校→青校.doc 1/1 最終印刷日時:01/08/02 14:32
FUJITSU.52, 4, p.262-267 (07,2001)
新しいモバイルサービスを支えるインスタントメッセージ技術
ま え が き
プレゼンス情報画面
上部:自プレゼンス情報
設定部
下部:プレゼンス情報
付ユーザリスト
モバイル環境としての携帯電話の加入者数は6,000万
人に達し,電話やメールといったコミュニケーション
サービスに加えて,インターネット連携機能を持った情
報サービスの加入者もその1/2を超え,携帯電話が個人
文字によるリアルタイム
メッセージング画面
の情報端末として定着しつつある。しかし,携帯電話に
おける電話は,発信者が受信者の状況が分からず勝手に
割り込んでくるという従来の電話文化をそのまま継承し
ているため,必ずしも円滑なコミュニケーションが行え
ていない。
一方,メール,Webに続く,インターネットインフラ
として,インスタントメッセージ(以下,IM)が注目
されている。IMは,相手がネットワークに接続中かど
うかといった今の相手の状態を示すプレゼンス情報を参
照可能とし,リアルタイムに文字メッセージの交換が可
能な技術である。現在,メールのように世界中の相手と
プレゼンス情報やメッセージの交換を可能とするために,
プロトコルの標準化作業が進められている。
図-1 PCにおけるIMサービス画面例(富士通研究所で開発し
たIMプロトタイプの画面)
Fig.1-Example view of IM on PC (Prototyping at Fujitsu
Labs.).
このような背景から,IM技術をモバイル環境に適用
することで,従来の電話文化を超えた新しいコミュニ
IMは,リアルタイムに情報を交換できることから,
ケーションサービスや情報サービスを提供できると考え
コミュニケーションサービスだけでなく,電子コマース
た。本稿では,標準化を含めたIMの技術動向の紹介と
などの各種の情報サービスのためのインターネットイン
ともに,モバイル環境に適用した新しいサービスと今後
フラとして,大きく期待されている。
のサービス展望について紹介する。
富士通研究所では,オフィス環境でのリアルタイムコ
インスタントメッセージとは
ミュニケーションに着目し,サービス検証を進めてき
た(1),(2)
。 そして,インターネット上でのリアルタイムマル
IMは,1997年にイスラエルのMirabilis社がICQとい
チユーザコミュニケーション環境を提供するChocoa
うコミュニケーションサービスを開始したことから急速
Communicatorや,VoIPによるコミュニケーション環
に広がった(1998年AOLが買収)。以後,AOL Instant
境を提供するIP MEDIASERVEといった富士通製品の
MessengerやMSN Messengerなど,他社もIMサービス
製品化に貢献してきた。IMについてもインターネット
を展開し,通信料金の定額制などを背景に,PC環境に
インフラ技術としての可能性に早期に着目し,プロトコ
おいて米国を中心に広まった。日本でも今後急速に普及
ルの標準化に積極的に取り組んできた。
すると期待されている。
インスタントメッセージの標準化
IMは,図-1の画面例のように,コミュニケーション
サービスとして主に適用され,つぎの二つの機能から成
● 標準化動向
り立っている。
現在,IM技術を適用したコミュニケーションサービ
(1) オンライン,オフラインといった自分のネット
スでは,サービスを提供する各社が独自のIMプロトコ
ワーク利用状態などの状態情報(プレゼンス情報)
ルを採用している。このため,異なるサービスに加入し
の公開・参照を可能とし,変更した状態情報を通知
ているユーザ間で,プレゼンス情報やメッセージの交換
するプレゼンス機能
ができない状況にある。この問題を解決するため,イン
(2) ネットワーク越しの相手と1対1で文字メッセージ
を即時伝達できるメッセージング機能
ターネットにおける規格標準化団体IETF( Internet
Engineering Task Force ) の 下 部 組 織 で あ る IMPP
FUJITSU.52, 4, (07,2001)
P263-267:7月号−本文(1)白校→青校.doc 263/5 最終印刷日時:01/08/02 14:36
263
新しいモバイルサービスを支えるインスタントメッセージ技術
アクセス制御
機能
Subscribe
(プレゼンス情報を参
照したい)
参照
ユーザB
友人用
プレゼンス
情報
被参照ユーザ
参照ユーザ
Notify
(プレゼンス情報変わりま
したのでお知らせします)
ユーザCのプ
レゼンス情報
図-2 Subscribe-Notifyモデル
Fig.2-Subscribe-Notify model.
会社用
プレゼンス
情報
サークル用
プレゼンス
情報
参照
ユーザA
(Instant Messaging Presence Protocol)-WGでIMプ
マルチセク
ション機能
図-3 PePPのプライバシ保護機能
Fig.3-Privacy functions at PePP.
ロトコルの標準化作業が進められている。これまでに
IMの標準モデル(3)やプロトコル上の要求機能(4)が定義さ
れてきた。
より相手ごとにどのプレゼンス情報を見せるかどうかを
現在,IMPP-WGにおけるプロトコル標準化活動は,
設定できる。これにより,プライバシに配慮した状態情
三つのプロトコルグループによるそれぞれの仕様化活動
報を公開できる。これらの機能は,人との付き合いに応
と,これらのグループ間でサービス連携に必要な最小限
じて見せ方を変えるという選択的人間関係(5)を表現する
の合意事項の策定活動が並行して進められている。富士
ものとして,重要な機能と考えている。
通研究所も策定の中心メンバの一員として標準化に貢献
現在PePPは,IMPP-WGで策定が進められているグ
している。
ル ー プ の 一 つ で あ る PRIM ( Presence and Instant
● IMプロトコルモデル
Messaging Protocol)で,ほかのプロトコルと仕様を統
IMプロトコルに対する要求機能のうち最も基本的な
合し,上記プライバシ機能を反映して標準化作業中であ
ものとして,プレゼンス情報の変更に関するモデルが定
る。 2001年 度,標 準化に 向け て RFC( Request For
義されている。プレゼンス情報の変更通知は,一般に
Comments:標準化のための仕様を公開)化の見込みで
図-2に示すように,Subscribe-Notifyモデルと呼ばれる
ある。
プロトコルモデルに基づいて行われる。これは参照ユー
モバイルコミュニケーションサービス
ザが,プレゼンス情報を参照したい相手(被参照ユー
ザ)をあらかじめ指定(Subscribe)しておくことで,
● モバイル環境でのIM
被参照ユーザがプレゼンス情報を更新した際に,参照
コミュニケーションサービスとしてIMがインター
ユーザの端末にプレゼンス情報の変更通知(Notify)が
ネット環境で普及した理由は,相手がインターネットに
送信されるという仕組みである。
接続しているかどうかが分かり,接続中の場合は即座に
● 富士通研究所提案プロトコル:PePP
コミュニケーションができるという点にあった。
富士通研究所はIMPP-WGで定義された基本機能を満
携帯電話では,電源オフや圏外以外はいつでも連絡が
たした上で,プライバシの保護機能を盛り込んだプロト
可能である一方で,いつも身につけており,個人の状況
コ ル で あ る PePP ( Privacy enhanced Presence
は様々に変化する。そのため,相手が取込み中のときは
Protocol)を2000年6月にIMPP-WGに提案した。PePP
電話でなくメールで行うなど,相手の状況が事前に分か
のプライバシ保護は,つぎの機能によって実現される。
れば円滑にコミュニケーションが可能となる。また,
(1) 状態情報を保存する単位であるセクションを,複
時々刻々と変化するユーザの状態は,いつも携帯してい
数保持するマルチセクション機能
(2) 各セクションをどのユーザに対して参照可能とす
るかを設定するアクセス制御機能
る携帯電話で設定するのが最適である。こうした理由か
ら,モバイル環境こそがIMの利用環境としてふさわし
いと考えている。
図-3はこれらの機能を示した図である。マルチセク
● 携帯電話向けコミュニケーションサービス:チェプレ
ション機能により,友人向け,会社向けなど相手ごとに
現在,iモードに代表されるインターネット連携機能
異なるプレゼンス情報を設定でき,アクセス制御機能に
を持つ携帯電話の加入者は3,000万人を超え,モバイル
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P263-267:7月号−本文(1)白校→青校.doc 264/5 最終印刷日時:01/08/02 14:36
FUJITSU.52, 4, (07,2001)
新しいモバイルサービスを支えるインスタントメッセージ技術
携帯電話向けIMシステム
絵文字による
状態
文字による
状態情報
携帯電話
(iモード,WAPなど)
Mail
メンバ
リスト
Chepre
携帯電話
I/F
PRIM サーバ
PRIM
PRIM
クライアント
次世代携帯電話,
PDA,PC
PRIM I/F
PRIMコアライブラリ
携帯IMサーバ:チェプレ
HTTP
サーバ/クライアント型IMシステム
図-5 IMシステム構成図
Fig.5-IM system architecture.
図-4 チェプレの画面例
Fig.4-Example view of Chepre.
自分の状態
環境の代表格となっている。そこで,オンデマンドを中
心とした現在の携帯電話を対象に,IM技術を適用した
コミュニケーションサービスを早期に展開することを目
的として,システム開発を行った。開発したサービス
(チェプレ:Chepre)は,2000年12月からiモード向け
メンバ
リスト
に実験公開を開始した。その画面例を図-4に示す。サー
ビスの特徴は以下に示すとおりである。
状態(絵文字)
(1) モバイル環境を想定した多様なプレゼンス情報
文字による
状態情報
基本は常時オンのため,ユーザの多様な状態を表現で
きるよう,電話可否や取込み中などの情報や気分を表す
絵文字情報,近況を伝えるなどの文字情報をプレゼンス
図-6 PDA向けIM画面例
Fig.6-Example view of IM for PDA.
情報として扱い,設定や参照ができる。
(2) 変更が一目で分かるプレゼンス情報付きメンバリ
スト
ビスを提供する携帯電話I/F部を持つ。
メンバリスト表示で,状態の変更が一目で分かるよう
上記システムは,情報提供者と会員ユーザ間のサービ
にした。また変更をメールで通知することができる。
スにも適用できる。情報提供者側は,様々な情報をプレ
(3) コミュニケーション連携機能
プレゼンス情報を参照して電話やメールが行える。
(4) プライバシ保護機能
ゼンス情報として発信し,会員ユーザのプレゼンス情報
に応じたタイムリな情報を個別に発信することが可能に
なる。
プレゼンス情報の参照には相手の許可を必要とするよ
● サーバ/クライアント型IMシステム
うにし,相手ごとに文字によるプレゼンス情報を変える
次世代携帯電話やPDAなど,携帯端末でTCP/IPを直
などプライバシに配慮した。
接扱え,ユーザが自由にプログラムを搭載可能な環境を
(5) メールでメッセージング機能を代用
想定した,より高機能なIMを実現するシステムについ
現在の携帯電話では,リアルタイム機能を提供するイ
ても開発を行った。図-6にあるように基本的には先の
ンフラが,メールのみであることから,メッセージング
チェプレと同等のサービスを提供する。システムは,
機能はメールで代用した。
図-5で示したようにサーバ/クライアント構成をとって
システム構成を図-5に示す。サーバ側は,PRIMが持
おり,相手のプレゼンス情報がリアルタイムに通知され
つプライバシ機能を含むプレゼンス情報の管理機能を共
るとともに,リアルタイムなメッセージングも可能とな
通コアとして,ユーザごとの参照リストを保持してサー
る。クライアントは今後の様々な携帯端末への展開を考
FUJITSU.52, 4, (07,2001)
P263-267:7月号−本文(1)白校→青校.doc 265/5 最終印刷日時:01/08/02 14:36
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新しいモバイルサービスを支えるインスタントメッセージ技術
(2) コミュニケーションのきっかけに
慮し,Javaモジュールで実現している。
メールの約67%が,プレゼンス情報に関連した内容
試行評価実験
であり,プレゼンス情報がメールや電話などのコミュニ
ケーションのきっかけになったと考えられる。
チェプレの実験公開に先立って,2000年6月から8月
(3) リアルタイム通知機能も必須
までの3か月間,大学生11人に実際に利用してもらう評
価実験を実施し,利用傾向を分析した。その結果は以下
リアルタイムに状態変更をメールで通知する機能は,
に示すとおりである。
一人平均3.1人を設定していた。特定の相手の状態変更
はリアルタイムで伝える必要性があると考えられる。
(1) サービスとして定着
(4) 相手ごとに文字のプレゼンス情報を使い分ける
一人あたり1日平均で参照は22.7回,更新は2.8回と頻
繁に使用していた。全試行期間での1日のアクセスを10
相手に応じて見せる情報を変える行動が多くみられた。
分ごとに計測したところ,図-7に示すように1日4回程度
PePPで提案したプライバシ機能が重要な機能として活
のピークが見られ,サービスとして日常生活に定着して
用されたことは,大きな成果であった。
いったことが伺える。
モバイルサービスの今後の展開
今後のモバイルサービスの展開を考えるにあたっては,
8 .0
インターネット技術におけるサービス展開を考慮するこ
7 .0
とが重要である。その理由は,図-8に示すように,モバ
インターネットにおいては,第一の波としてメールが
2 2:00
0 .0
20 :00
● インターネットにおけるサービス展開
1 8:00
1 .0
1 6:00
スの展開について述べる。
1 4:00
2 .0
12 :00
ネットサービスの展開とこれを踏まえたモバイルサービ
10 :00
3 .0
8 :0 0
追うように発展しているからである。以下にインター
6 :0 0
4 .0
4:00
イルサービスを支える技術は,インターネットの技術を
2 :0 0
5 .0
0 :0 0
ア クセス 回数
6 .0
文字情報の伝達交換を可能とし,第二の波としてWebが
マルチメディア情報の伝達を可能とした。Web技術は当
時間
初,無料のカタログウェアの提供から始まった。その後,
認証技術の導入などにより,電子コマースが可能となり,
図-7 1日の平均利用アクセス回数
Fig.7-Average access frequency in a day at pre-trial.
現在の本格的な電子コマースを支えている。この流れは,
1992 1995 1998 2001 2003
インターネット
メール
電子コマース
私的送信
Web
電子コマース
カタログウエア
IM
モバイル
メール
Web
無料コミュニティ 電子コマース
私的送信
情報提供
IM
電子コマース
電子コマース
無料/有料
コミュニティ
電子
コマース
図-8 インターネットとモバイルにおける技術の流れ
Fig.8-Technology direction at Internet and mobile services.
266
P263-267:7月号−本文(1)白校→青校.doc 266/5 最終印刷日時:01/08/02 14:36
FUJITSU.52, 4, (07,2001)
新しいモバイルサービスを支えるインスタントメッセージ技術
今後も継続していくと思われる。しかしWeb技術は,リ
WAP Forumや,次世代携帯電話のための標準団体であ
アルタイム性の高いコミュニケーションや情報のやり取
る3GPP(3rd Generation Partnership Project)でも,
りには適していない。なぜならWeb技術は,ユーザから
IMの議論を開始したことなどから,その期待は大きい
の要求によって情報を得るための技術であり,ほかの
ことが分かる。
ユーザや電子コマースを提供する側から能動的にリアル
む す び
タイム性の高い情報をユーザに発信できないからである。
そこでユーザに向けてリアルタイムに情報を伝達する技
本稿では次世代のインターネットインフラとして期待
術として,IMが第三の波となると考えている。現在の
されているIM技術をモバイル環境に適用し,コミュニ
IMは,主に無料コミュニティサービスとして展開され
ケーションをはじめとした新しいサービスの可能性につ
ているが,これにセキュリティ機能を備えることで,本
いて紹介した。
格的な電子コマースのインフラ技術として活用されてい
今後,携帯電話にある電話帳との統合や,マナーモー
くと考えている。今後,Web技術とIM技術はインター
ドやドライブモードと連動したプレゼンス情報の設定な
ネットインフラの両輪となり,この上に電子コマースを
ど,端末内の機能との統合により,より使いやすいもの
中心とした様々なサービスが展開されるであろう。
にしていくことが課題である。また,位置情報など自動
● モバイルにおけるサービス展開
的に取得可能な情報との連携についてもプライバシを考
モバイル環境においては,先行しているインターネッ
慮して進める必要がある。
ト技術を適用することで,サービス展開が急速に進んで
今後も,ブロードバンド環境やモバイル環境を含めた
きた。
インターネットにおける新しいインフラ技術として,
インターネット上で技術が確立した中でメール,Web
IMの標準化に積極的に寄与していく。その上で,顧客
機能を提供するとともに,モバイルならではのサービス
ニーズに応じた様々なソリューションに,IMの標準技
環境も整備されたことが,サービス展開が急速に進んだ
術を適用することをめざして,研究開発を進めていく。
理由である。モバイルならではの環境とは,メールは携
最後にこの場を借りて実験評価に際して多くの有益な
帯電話に直接届き蓄積される,携帯キャリアが料金代行
助言をいただいた武庫川女子大学生活環境学部生活情報
徴収を行うインフラを提供したことで有料サービスが容
学科の藤本憲一助教授,ならびに生活情報学科の方々に
易に可能になったなどである。2001年サービス開始予
感謝いたします。
定のIMT-2000においては,個人情報を格納するUIM
(User Identity Module)カードが導入予定であり,本
格的な電子コマースへの展開が一層進むと思われる。
参 考 文 献
(1) 奥山敏ほか:オフィスコミュニケーションのためのアウ
さらに,モバイル環境においてもリアルタイム機能を
エウアネス支援サービスの一検討.信学技報,CQ97-13,
提供するために,IM技術がインターネットと同様に採
電子情報通信学会,1997,p.29-36.
用されていくと考えられる。IM技術の適用は,まずは
(2) 佐々木和雄ほか:オフィス向けコミュニケーションツー
コミュニケーションサービスから始まり,早期に電子コ
ルの実現.2000年電子情報通信学会総合大会講演論文集,
マースにも展開する流れは,先に説明したインターネッ
情報・システム1,D-9-11,電子情報通信学会,2000,
p.135.
トと同様と考えている。その上で,ユーザの位置情報や
今の状態といったモバイル環境ならではのプレゼンス情
(3) M. Day et al. :A Model for Presence and Instant
Messaging.RFC 2778,February 2000.
報のリアルタイム交換を活用することで,モバイル環境
での本格的な電子コマース展開が進むであろう。
(4) M.Day et al.:Instant Messaging/Presence Protocol
Requirements.RFC 2779,February 2000.
IM技術を用いたコミュニケーションサービスや電子
コマースサービスは,モバイル環境でのキラーアプリ
(5) 松田美佐:若者の友人関係と携帯電話利用-関係希薄論
ケーションとして期待されている。ワイヤレスアプリ
から選択的関係論へ.社会情報学研究No.4,日本社会情報
ケーションプロトコルを決める業界標準団体である
学会,2000,p111-122.
FUJITSU.52, 4, (07,2001)
P263-267:7月号−本文(1)白校→青校.doc 267/5 最終印刷日時:01/08/02 14:36
267
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