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B-26

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B-26
B-26
イットリウム酸化物を用いた熱電界放射陰極の特性評価
室蘭工業大学
○手塚 磨也、川久保 貴史、中根 英章、安達 洋
1. はじめに
現在、用いられている電子源には、ZrO/W(100)陰
極が広く普及している。この仕事関数は 2.7eV 程度で
ある。ZrO/W(100)陰極の仕事関数が下がる理由は、一
般的には Zr-O 複合体の電気双極子モーメントの強さが
関係していると考えられている[1]。
本研究では、ZrO/W(100)陰極より仕事関数の低い陰
極の作製と、その特性評価を行うことを目的とした。
陰極基体となる針を W で作製し、拡散物質が ZrO2 の
ZrO/W(100)陰極と、電気双極子モーメントが Zr-O よ
り強い Y-O により構成した YO/W(100)陰極を用いて実
験した。
2. 陰極の作製
切り出した一辺 0.1mm の W<100>方位角柱を、ステ
ムに固定した W のV字フィラメントに、スポット溶接
した。角柱先端を 2N-NaOH 溶液で電解研磨し、先端
曲率半径 0.1μm 程度の針状に加工した。できた W 陰
極の針とV字フィラメントのスポット溶接部付近に、
コロジョン溶液に溶いた Y2O3 を細い筆で塗布した。
3. 電界放射実験
作製した陰極を、超高真空装置に導入し、装置内を
排気して、ベークを行い、到達圧は 10-7Pa 台となった。
陰極を 1800K で 5 秒間フラッシングを行い、次に
1500K 程度にして拡散物質を針先まで拡散させた。陰
極と、陰極に対向させた蛍光板の間に高電圧を印加し
て、蛍光板上に現れる電子放射像を観察した。このと
きの放射電流を、印加電圧を変えて記録する。ただし、
1500K 程度で加熱したままだと、V字フィラメントか
ら大量の熱電子が放出され、電子放射像を観察できな
い。また、それが放射電流にも加算されてしまう。そ
のため、温度を室温付近まで下げて電子放射像を観察
し、放射電流を記録して、Fowler-Nordheim(F-N)プロ
ットを得た。
電界放射実験後の針の先端曲率半径を SEM で読み、
F-N プロットから仕事関数を算出した。
陰極を取り出し、V字フィラメントから放出される
熱電子を遮断するためサプレッサー内に入れ、再び装
置内に導入し、10-7Pa 台の到達圧で実験した。
拡散後の放射パターンが観察されてから、Shottky
プロットを取り、陰極を様々な温度で加熱し、それぞ
れで放射電流の安定性を確認する。
4. 実験結果
拡散物質の拡散前と、拡散後の代表的な放射パター
ンを、それぞれ図 1、図 2 に示す。図1では中央に黒点
の(100)面があり、図 2 ではその点が最も明るく輝いて
いる。YO/W(100)陰極で得た、図 2 の状態での F-N プ
ロットを図 3 に示す。図 3 から算出される仕事関数は
2.1eV であった。
図 1 拡散前の放射パターン
図3
図 2 拡散後の放射パターン
Y2O3 を拡散物質とした陰極の F-N プロット
5.考察
ZrO/W(100)陰極での実験から算出した仕事関数は
2.6eV となった。知られている ZrO/W(100)陰極の仕事
関数は 2.4~2.9eV 程度であるため、実験に使用した超
高真空装置で妥当な仕事関数測定ができることを確認
した。図2は YO/W(100)陰極での実験からで得た低仕
事面である。繰り返し行った実験から、YO/W(100)陰
極の仕事関数は 2.1eV 程度であると考えられる。
参項文献
[1] 斎藤 泰,矢田 慶治,安達 洋:“ErO/W(100)
及び LuO/W(100)陰極の電界放射特性”
,電子情報通信
学会,信学技報
[2]須藤 一,田村 今男,西澤 泰二:
“金属組織学”
,
丸善株式会社,1972
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