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カナダ・モントリオールにて行われたICCAIAの春期総会へ参加(PDF
工業会活動 カナダ・モントリオールにて行われた ICCAIAの春期総会へ参加 5月10日、SJACが加盟しているICCAIAの総会がカナダ・モントリオールにて開催さ れたので出席した。また、前日の9日にICAOの日本代表部を訪問し、CO2排出削減に向 けた国際会議を前にした意見交換等を行った。 (ICCAIA= International Coordinating Council of Aerospace Industry Associations: 国際航空宇宙工業会、ICAO= International Civil Aviation Organization: 国際民間航空機 関、国連の専門機関の一つ。) 1.ICCAIA春期モントリオール会議 (5月10日) ICCAIAは現在、USA(AIA)、欧州(ASD)、 カ ナ ダ(AIAC)、日 本(SJAC)、ブ ラ ジ ル (AIAB)、ロシア(UAI)の6ヵ国の航空宇宙 に各工業会の専務クラス、ICAOへの駐在員、 4つの委員会から2つの委員長が集まり、ICAO 本部内の会議室を借用して議題を審議した。 以下、主たるトピックスを記す。 工業会で構成されている。ICAOへ2名の駐在 員を置き、昨今ICAO本部内に事務所を設け た。 (1)ICCAIAカナダでの登記に関するサイン ICCAIAは法人格を持っていなかったが、 5月12日からICAOのGlobal MBMに関する国 ICAO内に事務所を設けるに伴い法人登記が 際会議が開かれる機会に合わせ、前日の11日 必要になり、6団体専務が法人登記に必要な 40 平成28年6月 第750号 申請書類にサインを行った。(①新規委員長 の議決、②メンバーの登録、③メンバーの確 定、④Qualification、⑤電気の配送) ト扉の強化の紹介があった。 ・ICCAIAの4つの委員会に設置されている事 務局の業務規定を、内部規定(By-Law)の 中に組み込むことが報告された。 (2)会員勧誘の手紙 ICAO建屋内に事務所と駐在員を置いたこ (4)委員会報告 とで組織の運営費が増加するが、各国の負担 今後ICCAIAの4つの委員会の説明書を作成 増を抑えるため新規工業会の加盟が必要に し、表紙に趣旨、活動内容など、裏面にICAO なっており、インド、韓国、中国、メキシコ、 委員会との関係を表し、その委員会の概要を オーストラリアの5ヵ国に加盟を勧誘する案 記述することの紹介があった。各委員会の報 がある。会議では事務局で用意した手紙とブ 告は次の通り。 ローシャを発信することを確認した。ただし、 ①Security Committee 会 員 規 約 の 趣 旨 に 則 っ た Membership の ・ASDから2名、AIAから1名の参加で活動 Eligibility、即ち、政府から独立した工業会で している。SJACは委員の派遣を求められ あることを条件とする旨をレターに明記する た。 よう、SJACから求めた。新加入国の会費をど うするかは次回の課題となった。 ・ICAOの次の会議に参加し、産業界から 提言を行っている。 −Aviation Security Panel(AVSECP) (3)ICAO内駐在員:Jim Dow, Vince Galottiか らの報告・提案事項 ・今秋開かれる3年に一度のICAO第39回総会 へのWorking Paperの発行について、提案が −Working Group on Innovative Aviation Security(WGIAS) −Industry High Level Group on Cybersecurity (IHLG) 出された。会長から、5ヵ国語への翻訳費 はICCAIAの予算内に留める様に指示が出 た。 ②Aircraft Noise & Engine Emissions Committee (ANNEC) ・代 替 ハ ロ ン 消 火 剤、Performance Based ・ICAOのCommittee on Aviation Environmental Navigation(PBN)、サイバー関連の議論に Protection(CAEP)傘下のWorking Group ついては、担当の技術委員会から参加する 1∼3をはじめとする、9つの委員会に参 ことが提案された。 加している。参加状況はおおむね良好と ・I C C A I A は N e x t G e n e r a t i o n A v i a t i o n のこと。 Professionals(NGAP)と称した航空管制の ・CAEP10に向けてCO2 Standardの他にNOx スタッフの養成に支援が求められていると Standardを、また、環境関係はAir Transport のことで、Jim Dowが窓口になることになっ Action Group(ATAG)とともに、後述す た。 るMBMを準備している。 ・最近ICAOで検討が進んでいる事項:リチ ・事務局のLeslie Riegleから、議長がMuni ウムイオン電池の貨物室搭載禁止、機体運 Majjigi氏(GE)からDan Carnelly氏(Airbus) 航のトラッキング、事故時のフライトレ に変更になった旨の紹介があった。 コーダ分離、19席以下の航空機のコクピッ ・Muni氏からCAEPの今年の2月会合の結果 41 CO2(KG of fuel / KM of flown) 工業会活動 2023年元日以降、上側の線が現在製造中・ 運行中の航空機に対する規制値として発効す る。線 を 上 回 る CO2 を 排 出 す る 航 空 機 は、 2028年以降、製造禁止になる。 2020年元日以降、新規に型式承認を取得 する航空機は、CO2 排出を下側の線以下 に抑えなければならない。 MTOW(KG) が報告された。 −CO2 Standardが可決された。航空機が める。 −MBMに対する技術的支援は終了した。 排出するCO2量は巡航状態で評価され、 単 位 距 離 当 た り の 消 費 燃 料(kg/km) が指標となる。2020年以降に型式承認 / Air Traffic Management Committee(CNS/ を取得する航空機には、厳しい基準が ATM) 適用される。現時点で製造中・運航中 14の小委員会があり、各々主にテレコン の航空機に対して、2023年から専用の やE-mailで運営している。SJACから1名が 基準が適用される。2028年以降、基準 参加している。 を満たさない航空機は製造禁止にな ・9月のICAO総会に向けて4つのペーパー る。 −NOx Standardが設定され、25台のエン ジン試験を2017年までに行う。 −亜音速騒音では、欧米でヘリコプター と無人機の騒音が懸案となっている。 −超音速騒音への対応は6∼9年かけて決 42 ③Communication, Navigation and Surveillance を作成済。また、小型無人機(マルチコ プター等のいわゆるドローン)と商用無 人 機 の 境 が 不 明 に な る 中 で 安 全 性、 Global Navigation Satellite System(GNSS) のバックアップの必要性、航空機の後流 への要求変更など、2つのペーパーを作 平成28年6月 第750号 成予定とのこと。 (5)その他 ・当 該 Committee 議 長 の Dider Delibes 氏 ・昨年のICAOのIndustry High Level Committee (Boeing)から、ICAOに有益な支援を行っ でセキュリティの優先順位を高めて検討す ているとして次の小委員会の活動状況が るとなっていたが、同会議の開催時期が不 報告された。 明。JIM Quickが調べて報告する。 −Instrument Flight Procedure Panel(IFPP) ・昔は各国の統計データを交換していたが、 −Flight Operations Panel(FLTOPSP) 最近は行われていない。SJACから、各国の −Separation & Airspace Safety Panel データを年1回情報交換し、ICCAIAのWEB (SASP) −Operations Panel(OPSP) に 掲 載 し た ら ど う か と い う 提 案 を し た。 Vince Galottiが検討する。 −ATM Operations Panel(ATMOPSP) −Wake Turbulence Working Group (WTSG) −Operational Data Link Working Group (OPDLWG) 2.ICAO日本代表部への訪問(5月9日) ICCAIAの総会に先立ち、SJAC専務ととも に日本政府代表部の上田奈生子常駐代表、石 −Navigation Systems Panel(NSP) 井政和代表代理、および吉村源代表代理を表 −Ground Based Augmentation System 敬訪問し、意見交換する機会を得た。 (GBAS) −Performance Based Navigation Study Group(PBNSG) (1)Global MBM*1 5月11日からICAOでHigh Level国際会議が 開催され、上田代表は日本の環境関係の責任 ④Airworthiness Committee 者として会議に参加される。日本政府の考え 11の小委員会を持っている。 委員長は今回 を伺い、意見交換をしてICCAIAの立場との 不参加で、 モントリオール駐在のVince Galotti 整合性を確認した。 氏 か ら 報 告 が あ っ た。Wake Turbulence 上田代表によると、中国および途上国の協 Study GroupはICCAIAからの委員が確保さ 力を得て1つの国際的なルールにすることが れておらず、懸案になっている。主たるも 大きな課題で、各国間で国益に関わる様々な のは次の通り。 議論がある中で、先進国vs途上国という構図 −Dangerous Good Panel(DGP)(リチウ でなく、航空輸送市場をゆがめないやり方に ムイオン電池の搭載) 合意を得ることが目標という。例えば、同じ −Cargo Compartment Halon Replacement ルートを飛行する場合に、先進国と途上国の Working Group(CCHRWG)( 16 年 10 エアラインで異なる課金を設定するといった 月に終了予定) 方策は市場をゆがめることにつながり、こう −International Airways Volcano Watch Operations Group(IAVWOPSG) いったことを避けたいという考えである。 この点でICCAIAは同じ立場におり、SJAC −R e m o t e l y P i l o t e d A i r c r a f t S y s t e m s からは、新型機種などの燃費の良い航空機を (RPAS)(JARUS が ICAO へ の 窓 口 に 購入して運航に供するエアラインにはその分 なっており、AIAとASDがその会員で のインセンティブを与えるといった考え方が ICCAIAは不参加) 望ましく、工業会は新型機の導入を支えてい 43 工業会活動 く旨を伝えた。 日にストックホルムでICAOの会議が行わ *1:Global MBM(Market Based Measure):航空機運 航によるCO2削減のための方策の1つとして、排 出量が基準値を超えた分を運航者に課金する(運 行者がクレジットを購入する)方策によりCO2の 削減を促進していくもので、ICAOが国際基準の 設定へ向けて活動中である。 れていた。) ・整備の分野のカテゴリー分けを、シカゴ条 約のANNEX6:運航からANNEX8:耐空性 に移し替えることを行っており、これは相 互認証の促進につながるとのことである。 ・航空機の追跡が不能になる事態(2014年3 (2)無人機や整備分野の話 月のマレーシア航空370便)が生じたため、 吉村代表代理は航空委員会の分野を担当し 通常時は15分ごとにエアラインの本部に衛 ており、次の話を伺った。 星通信などで情報を発信すること、異常時 ・無 人 機(RPAS = Remote Piloted Aircraft には解析に必要な情報を緊急的に発信 System)の分野では、近々にICAOとしての (Dump)させることとし、墜落時にブラッ ガイダンスをまとめて国際的な標準にする クボックスを機体から分離(Deploy)する 考えがあることを伺った。ICAOの懸案の 案は下火になってきているとのことだっ 一つは、長期飛行させる場合、飛行中に遠 た。 隔地にいるパイロットが切り替わることが 想定されることで、この際の手順や要求事 項の検討を進めているとのことである。 (同 3.所感 今回初めてICCAIAの会議に参加し、他国 ICAO事務所通路脇のMRJのSolid Model (後方右上は、中国のC919) 44 平成28年6月 第750号 の工業会メンバーとの面識を得られ、また、 なお、ICAOビルの入り口には主要な新型 国際工業会の中でのSJACの置かれている状況 中型機・大型機の模型が置かれており、国際 を知ることができ、大変有益であった。MRJ 会議場に向かう通路脇にはMRJの模型が目立 が 運 航 を 開 始 す る 暁 に は、日 本 は 商 業 用 つように置かれていた。中国のC919等の模型 ジェット旅客機のOEMを持つ国として主要国 も置かれており、これらの対比を見て、MRJ と肩を並べる。それに伴い国際工業会やICAO の型式承認取得が順調に進むことを願う思い への参画の深度を増し、航空分野における国 が一層強くなった。 際的な地位を上げていく必要を強く感じた。 〔(一社)日本航空宇宙工業会 国際部部長 川平 浩司〕 45