笑いの写真

（１）主題名 生命の尊重〔中学校３−（２）
〕 関連項目〔２−（２） １−（２）
〕
（２）ねらい 生命の尊さを理解し，かけがえのない自他の生命を尊重する態度を育てる。
（３）資料名 「だからあなたも生きぬいて」
（出典：大平光代著 講談社）
資料の概要
転校先で度重なるいじめを受け，自分を裏切った友人に復讐するため割腹自殺をはかった
私は，意識がもうろうとする中で，祖母の笑顔を思い出し，
「生きたい」という気持ちになっ
た。通りがかった人に，叫んだ。「たす・・・け・・・て・・」（大平光代著「だからあなた
も生きぬいて」より抜粋）
導
入
（４）学習指導過程
学習活動
主な発問と生徒の心の動き
留意点
１ 大平さんの写 ○この人は，大平光代さんという方で ○小さい頃の写真や家族
真を見て，どん
すが，どんな職業をしている人だと
の写真等も見せ，大平さ
な人か考える。
思いますか。
んが自殺をはかったこ
・保育士
とを知らせる。
・先生
・カウンセラー
２ 資料を読んで
落書きされた時
の「私」の気持
ち，周りの生徒
の様子，「私」を
いじめて笑う女
の子の「笑い」
について考え
る。
○机の上に落書きされた時の気持ちは ○「私」の持って行きよう
どんな気持ちだったろうか。
のない悲しさ不安を理
・悲しい
解させる。
・誰がしたんだろう
展
開
○くすくす笑っていた周りの生徒たち ○いじめは，このような人
の心の醜さや弱さから
の気持ちはどんなものだろうか。
ひどくなっていくこと
・自分でなくてよかった
をおさえる。
・
「私」を一緒にいじめていないと，次
は自分になるかも知れない
○「私」をいじめている女の子の笑い ○人を馬鹿にする笑いが
「私」をますます追いつ
はどんな笑いですか。
めていったことを理解
・大勢で一人を馬鹿にしている
させる。
・いじめを笑いながらするとてもいや
なもの
３ 「生きたい」 ◎復讐のため自殺をはかった「私」が， ○祖母の笑顔が「私」は一
と「私」が思っ
人ではないということ
「生きたい」と思ったのはなぜだと
たのはなぜか考
や，生きる勇気を与えて
思いますか。
える。
くれたことをおさえる。
・祖母の笑顔を思い出した
・こんなことで死ぬなんてみじめだ
・私には家族がいる
終
末
４ 教師の説話を ○その後の「私」の人生がどうなった ○著者の思いにふれなが
聞いて授業の感
かを紹介をします。その後，感想を
ら，感想を書かせたい。
想を書く。
書いてください。
・どんなことがあっても生きることっ
て大切だ
・大平さんってすごい
実践報告にみる留意事項
１ 資料・題材について
間の尊厳を深く傷つける笑いと人間の愛や
「だからあなたも生きぬいて」という資
慈しみといった温かい祖母の笑顔。どちら
料は，現在弁護士で活躍されている大平光
にも「笑」の字はあるがその違いの大きさ
代さんの半生を綴った実話である。
を考えさせるよう意図した。
資料は，第一章いじめの「落書き」
「ごみ
くず」第二章自殺未遂の「裏切り」
「命びろ
４ 生徒の反応
い」から一部抜粋して作成した。すさまじ
多くの生徒が，資料や教師の説話に高い
いいじめと割腹自殺というショッキングな
関心を示した。
内容になっているため，本書をよく読み，
・大平さんはすごい
著者の思いをきちんとつかんで指導すべき
・生きるのは大切なことだと思った。
である。
・私は，１年生の時自殺を考えた。先輩か
ら呼び出されたり，机に悪口を書かれた
２ 指導過程の工夫
りした。だけど，家族の支えがあって死
主題を生命尊重［３−（２）
］に設定し，
ななくてすんだ。家族は私の宝です。
導入は，著書に掲載されている大平さんの
・私は，いじめる側にいたことがあるので
写真を拡大カラーコピーして見せながら，
今はすごく反省しています。いじめてい
大平さんの生育歴や家族構成にふれてから
る時はあんまり深く考えていなかったけ
資料に入った。
どいじめについて考えるたびに，つらく
展開は，資料本文の中略部分は解説を加
えながら状況の把握をさせていった。
終末は，自殺後の大平さんの人生を説話
なります。
等，自分の生活と重ね合わせてこれまでの
いじめを受けた経験やいじめをした経験を
の中で語っていった。
書く生徒もがいた。
３ 発問の工夫
５ 授業後のフォローアップ
中心発問は，主題である生命尊重に迫る
大平さんのショッキングな半生にふれて
べく，どうして「生きたい」と思うように
高い関心を持って考えていた。いじめを受
なったかにした。自分を裏切った友人に対
けた経験のある生徒にとっては，いじめを
するどうしようもない怒りとそれまで受け
受けている場面の状況はかなりショックを
てきたいじめによって，復讐のために自殺
受けることが予想される。また，いじめを
しようと考えた大平さんが，祖母の笑顔に
していたことを感想で書く生徒もおり，授
よってハッとわれにかえる瞬間をしっかり
業中での様子や感想をよく把握し，様々な
と考えさせたい。
フォローを考えておく必要がある。
大平さんを追いつめていく冷ややかで人
（八次中学校）