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監理団体が外国人技能実習生に対し実施する 「法的保護講習」について

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監理団体が外国人技能実習生に対し実施する 「法的保護講習」について
2015.7
Vol.122
アンコール・ワットは、カンボジア北西部に位置するユネスコの世界遺産
(文化遺産)であるアンコール遺跡の一つであり、その遺跡群を代表す
るヒンドゥー教寺院建築である。サンスクリット語でアンコー ルは王都、
クメール語でワットは寺院を意味する。大伽藍と美しい彫刻を特徴としク
メール建築の傑作とされ、カンボジア国旗の中央にも同国の象徴として
描かれている。(『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』より引用)
トピックス1
1
2015年度JITCO事業計画について
2015年度事業計画に関する概要説明
トピックス2
4
技能実習制度の見直しについて ―法務省・厚生労働省合同有識者懇談会報告書を中心に―
トピックス3
11
JITCOスキルマップ推進事業に参加する実習実施機関の募集を開始します
日本語指導お困りですか?
12
来日後の講習の日本語指導について、技能実習生がもっと話せるように、授業ではどんな工夫ができるでしょうか?
労務管理の窓から
14
1年単位の変形労働時間制の適正な運用に向けて
もっと役立つ入管指南
16
監理団体が外国人技能実習生に対し実施する「法的保護講習」について
18
■
海外情報
タイ労働大臣の来訪について ■ フィリピン送出し機関・監理団体とのジョイントセミナーの開催について
JITCO の教材
<新刊> <改訂>
■ 外国人建設就労者 入国・在留諸申請用書式と記載例集CD版
■ 外国人造船就労者 入国・在留諸申請用書式と記載例集CD版
■ 外国人技能実習制度における技能実習計画第1分冊改訂CD版 ■ 外国人技能実習制度における技能実習計画第3分冊CD版
20 <既刊> ■ アーク溶接等作業の安全 ■ 改訂 グラインダ安全必携−研削といしの取替え・試運転特別教育用テキスト−
JITCO ニュース
■ 技能実習2号移行対象職種・作業の追加について(果樹作業・牛豚食肉処理加工業職種・惣菜製造業職種)
■ 外国人造船就労者の受入れに係る地方入国管理局に提出する申請書類の点検・取次ぎサービスについて
■「外国人技能実習生労務管理ハンドブック」2015 年 3 月版の掲載について
■【法令改正】特別教育を必要とする業務の追加について(足場の組立て等の業務)
■ 安全衛生セミナー・実習指導員セミナー開催のご案内
21 ■ <JITCO ホームページ
(技能実習 Days)
>・<技能実習生の友(表紙)
>に掲載する写真を募集しています!
24 外国人技能実習生統計/ JITCO カレンダー/編集後記
技能実習Days
● 宮田村商工会 ● 中四国農水産食品協同組合 ● セントラルリバー建設株式会社
トピックス1
トピックス
1
2015年度
JITCO事業計画について
2015年3月18日に開催された第12回理事会において、当機構の2015年度の事業計画
案が審議され、全会一致で承認されました。
総 論
政府・日銀は「金融政策」、「財政政策」、「成長戦略」の一
体的な政策を展開しているが、消費税率引き上げ後の需要減
の影響が長引き、我が国経済の回復は力強さに欠け、足踏み
技能実習制度の適正な運用を促進するため、次の三つを柱とし
て推し進めていく。
第一の柱は、「多様化・高度化していく新興国の拡大する人
を続けている。しかし、最近の原油価格の下落を受け、輸出、
材育成ニーズへの的確かつ迅速な対応」である。日本の「もの
生産、個人消費が持ち直しつつあり、本格的な景気回復が視
づくり」のノウハウを身につけた人材を育成していこうとするアジア
野に入りつつある。また、企業はグローバルな最適経営の観点
経済圏新興国等は着実に拡大し、我が国受入れ側でもこれま
から、海外展開を活発化しつつある。
で蓄積したノウハウを活かし、積極的に間口を拡げようとしてい
こうした中、我が国のアジア経済圏等新興国・途上国との経
る。このため当機構としては新興国・発展途上国と受入れ側と
済的相互依存関係は一層強化されていくとともに、その中で我
のそれぞれのニーズのマッチング向上のための環境整備をして
が国が果たすべき役割拡充への期待は更に高まっていくものと
いくとともに、技能実習制度等の円滑適正な運用のために迅速
予想される。
な対応と的確な支援を行っていく。
当機構がその推進に中核的役割を担っている外国人技能実
第二の柱は、「見込まれている抜本的な制度改正への的確
習制度は、我が国において蓄積された技能・技術・知識の移転
な情報提供」である。制度見直しにおいて新設・改正される関
を通じて新興国の経済発展に貢献することが目的であり、新興国
係法令、告示等の施行については、技能実習制度の関係者
等の人材育成ニーズは、今後も着実に拡大すると見込まれる。
が国内外に跨がっていることから、実習の現場において混乱が
一方、2014 年 6 月24日、政府は「『日本再興戦略 』 改訂
2014」において、管理監督体制の強化を前提に技能実習制度
を拡充することを示している。今回の見直しは、技能実習制度
おきないよう、当機構として積極的に周知活動を行うなど的確か
つ迅速な対応を行っていく。
第三の柱として、「技能実習制度管理運用機関の設置に伴
管理運用機関の設置等を盛り込んだ抜本的な制度改正であり、
い、支援活動としての機能を求められる当機構の的確な対応」
今後の技能実習制度の運用に大きな影響を及ぼすとともに、技
である。2015 年 10月以降運用機関が順次整備され 2016 年 3
能実習制度の中核的機関である当機構の活動に変更を迫るも
月に稼働する予定である。当機構としては新制度の下において、
のである。2015 年度は、
このような制度改正の動きに対応しつつ、
関係者による円滑適正な制度運用が行われるよう支援を行う。
各 論(抜粋)
Ⅰ 公益目的事業
1 相談・助言
(1)海外の送出し機関等との相談等の実施
送出し国政府へ使節団を派遣し、定期協議を実施し、
本制度の周知を図るとともに、当該国との間で締結され
た R / D の在り方について協議する。
(2)監理団体及び実習実施機関に対する相談等の支援
① 技能実習生を受け入れる監理団体・実習実施機関に
対し、円滑な受入れをするために必要な入国・在留手
続等に関する法制度、必要書類及び申請手続について
かけはし 2015.7 Vol.122 1
トピックス1
総合的に相談に応ずる。また、監理団体が行う職業紹
実施機関等の技能実習責任者・担当者等を対象とした
介事業に関し、必要に応じ情報提供等を行う。
団体監理型コースセミナーや企業単独型コースセミナー
② 技能実習制度の適正かつ効果的な運営を図るため、
実習実施機関・監理団体に対する地方駐在事務所によ
る巡回指導を推進し、適切な助言・指導を実施する。
等を開催する。
(3)申請書類の作成のための講習会の開催
入国・在留手続等の支援の一環として、地方入国管
特に、賃金に関わる事項についての調査指導の充実に
理局に提出する各種申請書類の作成方法等を説明する
努め、その履行状況に問題がある場合には、自主的な
講習会を開催する。また、法務省令等で規定される監
改善に向けて必要な指導を実施する。技能実習生との
理団体等からの地方入国管理局に対する報告等に関す
面談では、引き続き賃金の確認を重点的に行うとともに、
る説明を行うほか、地方入国管理局の担当者を招いて
メンタル面を含めた生活状況の確認等に留意する。
また、
申請書類及び報告書作成上の留意事項についての講
監理団体・実習実施機関を対象に、技能実習が労働
義を行う。
法令等に従って適正に実施されているかについて自主的
に点検するよう促す。
(4)技能実習制度の留意事項等に関する説明会の開催
技能実習制度の改正内容や改正に伴う留意事項等
③ 技能実習生の作業の安全及び健康の確保のために、
に関する説明会を開催する。
安全衛生アドバイザーが実習実施機関を訪問し助言・
(5)技能実習生等に対する法令等の周知
指導等を行う巡回指導や、技能実習生のメンタルヘルス
講習の適正な実施を支援するため、監理団体が講習
のケアを図るために、メンタルヘルスアドバイザーが助言
期間中に行う「技能実習生の法的保護に必要な情報」
支援を行う巡回指導を実施する。また、労災保険制度
に関し、入管法令・労働関係法令・不正行為への対応
の理解不足等が懸念される実習実施機関又は監理団
に精通した専門講師を派遣する。
体に対し、労災給付相談員による電話等による相談・
指導等を実施する。
④ 行方不明者数の統計を公表する等、行方不明者発
生防止に関する注意喚起を行う。
(3)技能実習生に対する母国語相談等の実施
(6)技能実習生に対する母国語情報提供
① 母国語・日本語併用の技能実習生手帳(中国語、イン
ドネシア語、ベトナム語、タイ語、英語、フィリピン語の 6
言語)を作成し、技能実習生に地方入国管理局経由で
交付する。
技能実習生に対し、母国語(中国語・ベトナム語・イン
② 技能実習生に対し、関係法令等、技能実習生の権
ドネシア語・フィリピン語)で電話等による相談・支援を実
利保護に関する情報のほか、各種事故や犯罪防止に
施する。また、相談内容が重大・悪質な事案は、監理
向けた注意喚起、日本の習慣や生活文化等円滑な技
団体等の問題点の改善が図られるよう、また、技能実
能実習の実施に有益な情報と国内ニュース記事を掲載
習生の権利を確保し、保護できるよう助言・指導を行う。
した「技能実習生の友」
(中国語、インドネシア語、ベトナ
ム語、タイ語、英語の 5 言語)
を発行し送付するとともに、
2 講習・人材育成
(1)送出し機関に対するセミナー開催による技能実習制度の周知
送出し国との定期協議等の機会を捉え、送出し国政
府の協力の下に送出し機関に対するセミナーを開催し、
制度の周知徹底を図る。
(2)受入れ機関に対するセミナーの開催
PDF 版をホームページに掲載する。
3 調査・資料収集
(1)海外関係機関との連携及び協議、 情報の収集・提供
① 送出し国政府要人の訪問受入れ及び送出し国在京大
使館との意見交換
本制度の説明及び個別相談を行うために開催する技
送出し国政府要人等の訪問に積極的に応え、本制度
能実習制度説明会について、団体監理型・企業単独
の推進を図るための意見交換を行う。必要に応じ、送
型を統合した内容の説明会の開催を原則とし、参加人
出し国政府要人の招聘を検討するとともに、各国の在京
員に応じて適宜追加開催する。また、監理団体・実習
大使館との連携を強化する。
2 かけはし 2015.7 Vol.122
トピックス1
② 送出し国情報の収集・提供
監理団体の送出し機関からの受入れが円滑に行われ
るよう支援するため、送出し国政府との R / D に基づき
送出し国政府から提供を受けた情報に基づく認定送出
し機関情報を、監理団体からの求めに応じて提供する。
③ 送出し機関と監理団体との情報交換会の開催
送出し国政府窓口による送出し国事情の説明会及び
送出し機関と監理団体との情報交換会 (ジョイントセミ
ナー)
を適宜開催する。
(2)関係機関との連携及び協議、 情報の収集・提供
技能実習制度の円滑かつ適正な運営を図るため、法
団体等の申請に基づき、監理団体等の行う技能実習生
受入れ事業を評価・認定する。評価・認定に当たっては、
必要に応じ実習実施機関等の調査を行う。
(4)技能実習生の技能修得の促進
実習実施機関に対し、技能実習生の育成に有効な
指導のモデルを提供し、技能移転が職場レベルで着実
に実施されるよう、必要な助言等を行う。
(5)日本語作文コンクールの実施
技能実習生・研修生の日本語能力の向上に資するた
め、外国人技能実習生・研修生日本語作文コンクール
を実施する。
務省及び地方入国管理局との意見交換会を実施する。
また、地方駐在事務所による関係地方行政機関等との
連絡会議を担当地域の都道府県において開催し制度の
Ⅱ 共益事業
状況及び問題事案等について情報交換を行い、地域レ
ベルでの連携を図る。
入国・在留関係申請書類の事前点検・取次ぎサービスの実施
監理団体等が地方入国管理局に対し在留資格認定証
4 その他の事業
(1)技能実習 1 号から技能実習 2 号への移行評価の実施
① 試験実施機関との緊密な連携等により、必要な技能評
明書交付申請、在留資格変更許可申請及び在留期間更
新許可申請等をする際に必要な書類の事前点検・取次ぎ
サービスの迅速化・適正化を図るとともに、点検業務の標
準化を推進する。
価試験の受験を的確に手配し、修得技能等の評価を適
正・円滑に行う。監理団体・実習実施機関に対し適切な
技能実習 1 号計画・技能実習 2 号計画の作成及び技能
Ⅲ 収益事業
実習記録の作成を指導する。
② 技能実習2 号計画の評価を適正かつ効率的に行い、そ
外国人技能実習生総合保険等の普及 の適否を判断し、監理団体・実習実施機関に対し必要に
技能実習生等が事故に遭遇した際に治療費等の経
応じ助言・指導を行う。その結果については、修得技能
済的負担を懸念すること無く技能実習に専念できるよう
等の評価結果と併せて、地方入国管理局に速やかに報
にするため、また、技能実習生等の事故・疾病により突
告する。
発的に多額の関連出費(賠償金や救援者費用)等が必
③ 修得技能等の評価及び計画の対象となる技能実習の職
種・作業の範囲について、ホームページ等により監理団
要となる場合に備えるため、外国人技能実習生総合保
険等の周知を図る。
体及び実習実施機関に対して周知指導を行う。
(2)技能実習2号移行対象職種の拡大支援
国の技能検定職種以外の技能実習 2 号移行対象職
種の追加については、公的評価システムの認定を受け
られるよう、拡大への支援を行う。また、技能実習 2 号
移行対象職種・作業に係る業界団体等のニーズの把握
※2015 年度事業計画の詳細につきましては、以下をご
覧ください。
等情報収集に努める。
(3)技能実習生受入れ事業の評価・認定
http://www.jitco.or.jp/about/joho_kokai.html
適切かつ効果的な技能実習の実施を図るため、監理
かけはし 2015.7 Vol.122 3
トピックス2
トピックス
2
技能実習制度の見直しについて
技能実習制度の見直しに関する法務省・
厚生労働省合同有識者懇談会報告書を中心に
1
はじめに
2014 年 6 月24日に政府は「『日本再興戦略 』 改訂
能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する
2014−未来への挑戦」(以下 「改訂日本再興戦略」
法律案」 が閣議決定され、第 189 回通常国会に提出
という)を閣議決定した。アベノミクスの第三の矢といわ
されている。
れる政府の「成長戦略」 である。この中で、管理監
このように、技能実習制度は、大きな転換期を迎えようと
督体制の抜本的強化を図りつつ、対象職種の拡大、
している。そこで、今回の「かけはし」では、
「技能実習
技能実習期間の延長(最大3年間→最大5年間)、受
制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇
入れ枠の拡大等を行い、2015 年度中に新制度の施行
談会報告書」において提言されている制度見直しの具体
を目指すことが示された。
的な方策を紹介することとしたい。読者の皆様にとって新制
この方針に基づき、2015 年 3 月6日に「外国人の技
2
度の姿をイメージしていただく、一助となれば幸いである。
有識者懇談会報告書の概要
(1)報告書の構成と制度の見直しに関す
る基本的な考え方
○ 制度の見直しに当たっては、国際貢献を目的とすると
法務省及び厚生労働省は、労使や学識経験者等の
いう趣旨を徹底するため、まずは、 現在指摘されて
<制度見直しに関する基本的な考え方>
有識者で構成する「技能実習制度の見直しに関する
いる問題点の徹底的な改善を図り、 併せて、 制度の
法務省・厚生労働省合同有識者懇談会」(以下 「懇
活用を図ることとする。
談会」という)を設置し、広く各界の意見を募り、2015
○ 技能等の修得・移転の確保については、 実習の各段
年 1 月30日に報告書を公表した(報告書の全文は、法
階での技能評価の推進及び実習生の帰国後フォロー
務省サイトhttp://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/
アップ・技能発揮の推進を図るべきである。
kouhou/nyuukokukanri07_00082.html 又は厚生労働省
○ 監理団体及び実習実施機関の適正化については、監
サイトhttp://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072543.
理団体及び実習実施機関のガバナンス強化並びに問
html 参照。
)
題のある機関の排除、 新たな法律に基づく制度管理
「懇談会」 報告書では、制度の趣旨・目的に沿った
運用機関の創設、 不適正な監理団体等に対する罰則
技能等の修得・移転が確保され、かつ、技能実習生の
や名称の公表制度の整備並びに関係機関による取組・
人権確保が図られるよう、管理監督体制の強化を前提と
連携の強化を行うべきである。
しつつ、優良な受入れ機関に対しては制度の拡充を認
○ また、技能実習制度を適正かつ円滑に推進するため、
めていくという「改訂日本再興戦略」で示された技能実
監理団体や実習実施機関に対する必要な支援が引き
習制度見直しの方針を具現化するための検討が行われ、
続き行われることが重要である。
以下に抜粋した基本的な考え方に基づき、「制度適正化
○ 実習生に対する人権侵害行為等の防止及び対策につ
方策」と「制度拡充方策」が項目ごとに示されている。
いては、 制度管理運用機関における通報・申告窓口
4 かけはし 2015.7 Vol.122
トピックス2
の整備、実習先変更支援の充実、技能実習の延長又
できる実技面の試験のみを必須とすべきである。な
は再実習(以下 「3 号」という)の際の実習先の選
お、技能実習 2 号移行の際と同様、実技試験及び
択可能化、 実習生の賃金等の処遇の適正化及び関係
学科試験の双方を課すこととすべきであるとの意見
法令等に関する啓発活動の推進を行うべきである。
があった。これを踏まえ、学科試験について、受検
○ 送出し機関の適正化については、 送出し国との政府
を勧奨するとともに、将来的に、例えば、経済連携
(当局) 間取決めの作成及び監理団体及び実習実施
協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候
機関による送出し機関・実習生間の契約確認の義務
補者の受入れに関する政府の取組等を参考に、試
化を行うべきである。
験時間の延長等の措置を講じた上で必須化につい
○ 技能実習 3 号については、 一定の要件を満たす監理
団体、 実習実施機関及び実習生について、 一旦帰
国の後、 認めるものとすべきである。
て、当面の受検状況も踏まえつつ、検討することと
すべきである。
② 関係機関の責務
○ 受入れ人数枠の見直しについては、優良な受入れ機関
○ 国においては、 実習生の技能等の修得等が適正に
への受入れ人数枠の拡大及び実習実施機関の常勤職
行われるよう、 技能検定等の整備その他実習生の
員数に応じた受入れ人数枠の均整化を行うべきである。
技能等の修得等に係る技能評価を行うため、 技能
○ 対象職種の拡大等については、「地域ごとの産業特
評価試験の整備支援、 受検のコーディネート等の
性を踏まえた職種」 等の追加を可能とする措置、 多
必要な措置を講じるべきである。また、 技能実習 1
能工化のニーズへの対応等を行うべきである。
号のみの実習生に対しても、 技能検定基礎 2 級相
当の技能評価試験がある職種については、 技能検
(2)制度適正化方策
定基礎 2 級相当の技能評価試験の受検を勧奨する
制度適正化方策として報告書に示されている事項に
とともに、 現在、 技能検定基礎 2 級相当の技能評
ついて、該当箇所を抜粋し、特に、重要であると思わ
価試験がない職種については、 将来的に、 技能評
れるポイントを下線で補足すると、以下のとおり。
価試験が整備されるよう、 業界団体等を助言・指
導すべきである。
<技能等の修得・移転の確保>
① 実習生に対する技能評価試験の受検の義務化
○ 技能等の適正な修得等を確保するため、 実習の段
階に応じ、 実習生ごとに技能実習の目標、 内容、
○ 技能実習の効果測定の必要性に鑑み、 実習生は、
期間等を記載する技能実習計画を認定制とし、 監
イ) 技能実習の 1 号修了時に、 従前どおり、 技能
理団体と実習実施機関が共同して(企業単独型の
検定基礎 2 級相当の技能評価試験を受検すること
場合は実習実施機関が)これを作成しなければなら
(2 号移行予定者のみ)に加え、
ロ)技能実習の 2 号修了時には、 技能検定 3 級相
当の技能評価試験、
ハ)技能実習の 3 号修了時には、 技能検定 2 級相
当の技能評価試験
ないこととすべきである。
○ また、監理団体においては、実習実施機関に対し、技
能評価について、情報の提供、指導及び助言、関係
機関との連絡調整その他必要な支援を行うべきである。
○ 実習実施機関においては、 実習生に対し技能等の
を受検することを義務とし、 実習生が修得等した技
修得等をさせることはもとより、 必要な受検機会の
能等の評価が適切に行われるようにすべきである。
確保等を通じ、技能評価試験を確実に受検させるべ
○ 受検科目について、 技能検定基礎 2 級相当の試験
では、 技能実習 2 号に移行するために必要な安全
衛生面も含めた基礎的な知識の修得を担保するた
きである。
③ 実習生の帰国後のフォローアップの推進
○ 実習生が修得した技能等の帰国後の活用状況に関
め、 引き続き、 実技試験及び学科試験の双方を課
する追跡調査(フォローアップ調査)については、
すこととすべきである。
実習生の自由な回答を引き出せるものとし、 送出し
○ 技能実習 2 号又は 3 号修了時に実習生に対し受検
国及び送出し機関等の協力を得ながら、 実習生の
させる必要のある技能評価試験について、本人の負
帰国後、 適当な時期に我が国政府において実施す
担軽減を図る観点等から、母国でより直接的に活用
べきである。
かけはし 2015.7 Vol.122 5
トピックス2
○ 監理団体においても、 国が行ったフォローアップ結
ていないこと等を必要とすることとし、 その際、 送
果等を通じて技能移転の状況を確認し、 次回以降
出し機関又はブローカーを含め、 監理団体と直接・
の適正な受入れのために活用する等して、 技能等
間接の利害関係を有する者による外部役員の参画
が確実に移転されるよう努めるものとすべきである。
や外部監査の実施を防止すべきである。 なお、 小
○ 追跡調査の主な事項は、例えば、以下のとおりとする。
規模な監理団体に対する外部役員又は外部監査を
・技能実習の効果の有無・内容
導入することについては、 その負担感や有効性の
・帰国後の就職状況・従事内容
面から慎重に行うべきとの意見があった。
・保証金の有無
・在留中の法令違反や人権侵害等の問題の有無・内容
④ 技能評価システムの移転の推進
○ 帰国した実習生が活躍しやすい環境づくりを促すた
め、 東南アジア諸国等に対し、 技能等の修得状況
を客観的に評価するシステムとして、日本の技能検
○ 外部監査として、関係法令の遵守、 技能実習の計
画的・段階的実施に関する指導をはじめ、中立的な
運営体制により実習実施機関に対する監理が行われ
ているか等について、監査を行う能力のある者によ
るチェックを受ける必要があることとすべきである。
○ 実習生の実習実施機関への受入れの準備、 技能等
定制度を移転する現行の事業(現地技能評価者の
の修得等に係る実習実施機関への支援、 保護等、
研修や技能検定試験の試行的実施等)を一層推進
技能実習全般の適正な実施を確保するため、これ
すべきである。
らを統括管理する責任者(以下 「監理責任者」 と
⑤ 修得技能等の見える化
いう)を監理団体の事業所ごとに配置することとす
○ 技能実習修了者が修得したスキル・経験を外国語
べきである。また、 監理責任者に対し、 技能実習
(実習生数の多い中国、 ベトナム、フィリピン、 イ
制度や入管法令、 労働関係法令等の知識の向上を
ンドネシア、タイ語)で記載できる文書(グローバル・
図るための講習を整備した上で、 その受講を段階
ジョブ・カード(仮称))(注) の雛形を国が作成・
的に義務化すべきである。
公表し、 監理団体等に対しその活用を促進すること
等により、 修得技能等が送出し国において理解・評
② 実習実施機関の適正化・ガバナンス強化
○ 実習実施機関については、 実習生との間に労働契
価されやすくする仕組み作りを推進すべきである。
約が存在し、 労働関係法令による直接規制及び労
(注)具体的内容・項目としては、例えば、氏名、実習期間、
技能評価試験結果、実習職種、修得したスキル・経験の内
容等が考えられる。
働基準監督機関による指導がなされていること等も
踏まえ、 許可制よりも緩やかな届出制とし、 報告徴
収・改善命令等の必要な指導監督(改善されない
<監理団体及び実習実施機関の適正化>
① 監理団体の適正化・ガバナンス強化
○ 監理団体については、人権を侵害する行為、偽変造
場合等、 必要に応じて技能実習の廃止を命ずるこ
とを含む)を行うこととすべきである。
○ 実習実施機関は、 実習生に対し、 技能実習計画を
文書等の行使・提供等の不正行為が見られたことから、
実習開始前に示し、 その内容について実習生の理
新たに許可制とし、 報告徴収・改善命令等の必要な
解を促しながら、 技能実習を効果的に実施すること
指導監督(改善されない場合等、 必要に応じて許可
とすべきである。
を取り消すことを含む)を行うこととすべきである。
○ 一方で、 新たに、 監理団体の許可制を導入すれば、
○ 実習生の技能等の修得等、 保護、 生活の支援等、
技能実習全般の適正な実施を確保するため、これ
当該許可の申請と実習生に係る職業紹介事業の許可
らを統括管理する責任者(以下 「実習責任者」 と
申請又は届出が別々に必要となることから、 申請者
いう)を実習実施機関の事業所ごとに配置すること
の負担軽減と関係行政機関の業務の一元化・効率化
とすべきである。また、 実習責任者に対し、 技能
を図る観点から、 新制度では、 実習生に係る職業紹
実習制度や入管法令、 労働関係法令等の知識の向
介を含めた形で、 新たに監理団体の許可を行う仕組
上を図るための講習を整備した上で、 その受講を
みを検討すべきである。
段階的に義務化すべきである。
○ 監理団体の許可に際しては、 例えば、 外部役員又
は外部監査を導入していること、 関係法令に違反し
6 かけはし 2015.7 Vol.122
③ 適正化・ガバナンス強化へのインセンティブの付与
○ 優良な監理団体等については、 手続の簡素化等、
トピックス2
インセンティブを付与すべきである。
④ 新たな法律に基づく制度管理運用機関の創設
国語で申告・相談することができる通報窓口を設置
するとともに、 実習実施機関又は監理団体は、 実
○ 監理団体の許可、 監理団体及び実習実施機関への
習生が前記申告を行ったことを理由に、 不利益な
立入検査、 報告徴収等の新たな指導監督権限の行
取扱いをしてはならないこととし、 これを担保する
使に当たっては、 法務省・厚生労働省の 2 省の所管
ための罰則を整備すべきである。
に関わる事項について一貫した指導監督を行うこと
○ 実習生から制度管理運用機関に対し申告があった
が望ましいことから、 制度管理運用機関を新設し、
場合、 必要に応じて、 当該実習生に対し、 一時退
これに指導監督に関する業務を行わせるものとすべ
避先の提供、 実習先変更支援が行われることとす
きである。
べきである。
○ その際、 制度運営の効率化を最大限図りつつ、 関
○ 制度管理運用機関は、 必要に応じて専門機関につ
係法令の遵守、 技能実習の計画的・段階的実施等、
なぐ等、きめ細かな相談対応をすべきである。
実習生の技能等の修得等の確保が徹底されるよう、
② 実習先変更支援の充実、 3 号移行の際の実習先の
また、 制度管理運用機関が技能実習の実施状況等
選択可能化
を把握しながら地方レベルでの指導監督等を十分に
○ 実習実施機関又は監理団体が、 倒産、 解散、 経
行えるよう、地方事務所の設置を含め、必要な体制・
営状況の悪化、 人権侵害等の不適正な行為等によ
役職員の確保をするとともに、所管する業務の性質
り、技能実習を継続することが困難となる場合には、
を踏まえながら、 必要な予算を確保すべきである。
引き続き日本での技能実習を希望する実習生が技
○ なお、 技能実習制度を適正かつ円滑に推進するた
能実習を行うことができるよう、 可能な限り早期に
め、 監理団体や実習実施機関に対する必要な支援
他の実習実施機関又は監理団体その他関係者との
(対象職種拡大に係る相談支援、 技能実習指導員
連絡調整その他の便宜の提供を行うべきである。
の養成等)が引き続き行われることが重要である。
○ また、 上記の場合に、 実習生から制度管理運用機
⑤ 不適正な監理団体等に対する罰則や名称の公表制度
関に申告・相談があり、 同機関が、 実習生に責任
の整備
○ 適正な技能実習の実施を担保するという観点から、
がないと判断する場合であって、 本人が継続して実
習を希望し、 かつ、 実習実施機関及び監理団体に
刑事罰をもって対応するのが相当と考えられる監理
よる実習先変更等の支援が十分に受けられない場
団体や実習実施機関の行為については、 適切に対
合には、 国において、 関係者相互間の連絡調整、
応できるよう罰則を整備すべきである。
関係者に対する助言等、 実習先の変更等の支援を
○ 不適正な行為を行った監理団体や実習実施機関に
実施すべきである。 なお、 このほか、 監理団体・
ついては、 事案の重大性に応じてその名称及び行
実習実施機関から制度管理運用機関に対し申告・
政処分等の事実を公表すべきである。
相談があった場合にも、 必要に応じて、 当該実習
⑥ 関係機関による取組・連携の強化(業所管庁による
監督や地域技能実習協議会(仮称)の設置)
生に対し、 一時退避先の提供、 実習先変更支援が
行われることとすべきである。
○ 制度の適正化に向け、 関係省庁(業所管省庁を含
○ 計画的・段階的な技能等の修得を確保する観点か
む)の出先機関、 都道府県等(必要に応じて市町
らは、実習生が実習実施機関を自由に変更できるよ
村を含む)の関係行政機関から成る地域技能実習
うにすることは困難であるが、 例えば、 上記の場合
協議会(仮称)を設置し、地域の取組方針の確認、
のほか、 技能実習 2 号を修了して、 技能実習 3 号
必要な情報等の共有、 密接な連携の確保等を図る
に移行する際に、 適切な時期に、 実習生本人が希
べきである。
望し、 計画的・段階的な技能等の修得が担保され
ると認められる場合には、 他の実習実施機関での
<人権侵害行為等の防止及び対策>
① 制度管理運用機関における通報・申告窓口の整備
実習を認めることとすべきである。
③ 実習生の賃金等の処遇の適正化
○ 実習生が実習実施機関又は監理団体により不適正
○ 実習実施機関に比較対象となる日本人の労働者が
な行為を受けた場合には、 制度管理運用機関に母
いる場合には、「日本人が従事する場合の報酬と同
かけはし 2015.7 Vol.122 7
トピックス2
等額以上」 であることが確認できるよう、 実習実
施機関から制度管理運用機関及び監理団体(団体
<送出し機関の適正化>
① 送出し国との政府(当局)間取決めの作成
監理型の場合)に対し、 実習生に支払っている賃
○ 技能等の移転を確実に担保するとともに、 保証金
金額や、 受け入れる予定の実習生と同じ程度の技
等不当な金銭の徴収や管理、 労働契約不履行に係
能等を有する日本人の労働者に支払っている賃金
る違約金を定めるような悪質な送出し機関を排除す
額を示し、 要件を満たしていることについて説明し
るためには、 送出し国政府の協力を得て、 送出し
なければならないこととすべきである。
機関の適正化を図ることが必要である。
○ 実習実施機関に比較対象となる日本人の労働者が
○ このため、 実習生の送出しを希望する国との間で、
いない場合には、 実習実施機関から制度管理運用
例えば以下を主な内容とする政府(当局) 間取決
機関及び監理団体(団体監理型の場合)に対し、
めを作成し、 それらの国から実習生を受け入れるこ
例えば同実習実施機関の賃金規定等に基づき、 受
とを目指すべきである。
け入れる予定の実習生と同じ程度の経験を有する
・送出し国政府が、 技能実習制度の趣旨を踏まえ
者に支払われるべき賃金額を提示することや、 経
た上で、 実習生を日本に送出ししようとする機関
験年数が異なる他の労働者の報酬から類推して、
であって、 適当と認められるものを認定する。
根拠を提示する等、 適切な予定賃金額の設定がさ
・適当と認められるものの要件には、実習生に対し、
れていることについて、 客観的に合理的な理由を
技能実習制度の趣旨を周知徹底すること、保証金、
説明しなければならないこととすべきである。
違約金その他名目の如何を問わず、不正な金銭を
○ 上記の対応がなされない場合には、 必要に応じて、
実習実施機関又は監理団体に対する指導等がなさ
れるべきである。
○ なお、「日本人が従事する場合の報酬と同等額以
徴収しないこととしていること等が含まれる。
・当該送出し国からは、 認定された送出し機関以
外の機関が送り出す実習生の受入れを認めない。
・送出し機関について問題事案があった場合、 送
上」 という法務省令の実効性を確保する観点から、
出し国政府に対し、 当該送出し機関への必要な
実習生の技能等の修得状況を評価した上で、 分野
調査や指導監督を求めることができる。
や修得状況ごとのより具体的指標を定めるなどの措
置を講じるべきであるとの意見があった。
○ 2 号実習生及び 3 号実習生の予定賃金額を決める
際には、 それぞれ同一の実習実施機関内の 1 号実
習生及び 2 号実習生の賃金を上回らなければならな
いこととすべきである。
④ 関係法令等に関する啓発活動の推進
○ 国は、労働関係法令等の概要や行政機関等の申告・
相談窓口等の情報を主要な外国語で記載した 「技
能実習生手帳」 の作成及び全実習生への配布を継
続すべきである。
・送出し機関に対し、 実習生の帰国後の技能移転
の状況等について、 追跡調査に協力するよう送
出し国政府が指導する。
・失踪者が発生した場合の取扱いについて、 送出
し国政府と協議する。
○ また、 送出し国の産業発展等に即した政策ニーズ
や技能等の移転を必要としている分野・職種につい
ても把握・分析し、制度運営の参考とすべきである。
② 監理団体及び実習実施機関による送出し機関・実習
生間の契約確認の義務化
○ 監理団体は、 送出し機関と実習生との間で保証金
○ 国は、 監理団体や実習実施機関に対し、 労働関係
や違約金の契約を行わないことを送出し機関との
法令、 労働・社会保険関係法令が実習生にも適用
間の契約上明らかにするとともに、 実習実施機関
される旨を記載したパンフレットや実習生の労務管
は、 実習生本人に送出し機関との間で保証金、 違
理に関する資料を通じ、 関係法令等の周知を推進
約金その他不正な金銭の支払義務を課す契約がな
すべきである。また、国は、監理団体に配置するこ
いことを書面で確認することとし、 監理団体や実
ととされている監理責任者並びに実習実施機関に
習実施機関がこうした行為を怠った場合には、 許
配置することとされている実習責任者、技能実習指
可の取消しも含め相応の処分が下されること等と
導員及び生活指導員に対し、 労働関係法令等の知
すべきである。
識の向上を図るための講習を整備すべきである。
8 かけはし 2015.7 Vol.122
トピックス2
(3)制度拡充方策
制度拡充方策として報告書に示されている事項につ
いて、該当箇所を抜粋し、特に、重要であると思われ
るポイントを下線で補足すると、以下のとおり。
機関が優良でなければ、当該実習実施機関では3号
への移行は認められないこととなる)。
② 3 号への移行が可能となる実習生の要件設定等
○ 技能実習 3 号への移行が可能となる実習生の要件と
して、 具体的には、 技能検定 3 級相当の実技試験
<実習期間の延長・再実習等>
① 優良な監理団体及び実習実施機関の要件設定
○ 優 良な監 理 団 体 及 び 実 習 実 施 機 関の要 件として
は、 技能実習の適正な実施へのインセンティブを高
に合格していなければならないこととすべきである。
(注)技能実習 2 号の修了時期や、技能検定 3 級相当の実技
試験の合格時期については、特に問わない。
○ 技能実習 2 号を修了し、 3 号に移行するまでの間
めるため (注 1)、 例えば、
には、 実習生が家族と離れている期間が長期化す
・監理団体については①∼③、
ること等に鑑み、一旦帰国(例えば原則1か月以上)
・実習実施機関(団体監理型)については②∼⑤、
することとすべきである。
・実習実施機関(企業単独型)については①∼⑤
を満たすこととすべきである。
(要件例)
① 実習生に対する適切な相談体制を整備していること
② 行方不明者が発生していないこと(監理団体及
○ 一旦帰国に係る渡航費用は、 監理団体又は実習実
施機関が負担するものとすべきである。
③ 入国前の研修成果に応じた講習期間の柔軟化、 地
域社会との共生の推進
○ 一定の日本語能力試験等に合格している場合には、
び実習実施機関の責めに帰すべき理由がない場
講習期間のうち日本語の講習部分は一定程度短縮
合を除く)(注 2)
することも可能と考えられるが、その際においても、
③ 技能実習計画等に基づき技能等の修得が着実に
監理団体においては、 短縮された期間を活用して、
行われたこと(過去 3 年間(新制度施行前の期
例えば監理団体職員と実習生のコミュニケーション
間を除く)の実習生の技能評価試験の合格率)
を深める等、 講習が技能実習の実情を踏まえた、
④ 実習生に対する適切な指導体制を整備していること
⑤ 実習生と地域社会との共生に向けた取組を実施
していること
(注 1)技能評価を実施していることや不適正な行為が行われて
いないことが前提である。
(注 2)現行制度における不正行為に関する行方不明者の取扱い
と同様、責めに帰すべき理由がない場合とは、技能実習が技
能実習計画に沿って実施され、賃金の支払等が労働契約どお
りに行われていることなど監理団体や実習実施機関がその責務
を果たしている場合をいう。
なお、上記のうち、実習生の技能評価試験の合
より効果的なものとなるよう工夫すべきである。
○ 国は、 実習生と地域社会との共生に向けた取組に
関する好事例収集・分析及びその周知広報等を通
じて、 監理団体や実習実施機関による実習生と地
域社会との共生のための取組を推進すべきである。
<受入れ人数枠の見直し>
① 優良な監理団体及び実習実施機関における受入れ人
数枠の拡大
○ 優良な受入れ機関に対しては、 受入れ体制を勘案
格率については、現行制度における受検状況(注 3・4)
し、適正な技能実習が実施できる範囲で、例えば現
を踏まえつつ、適切な水準を設定していくべきである。
行の 2 倍程度まで受入れ人数枠の増加を認めるべき
(注 3)平成 25 年度における技能検定職種随時 3 級(学科及び
実技)合格率は84.4%(合格者 54 人 / 受検者 64 人)
、技能
検定に準ずる検定又は試験(15 職種 43 作業)の職種 3 級相当
(学科及び実技)合格率は94.1%(合格者 64 人 / 受検者 68 人)
(注 4)平成 25 年度における日本人向けの技能検定 3 級(都道府
県方式)合格率は、学科 87.7%(合格者 25,565 人 / 受検者
29,158 人)
、実技 83.5%(合格者 24,922 人 / 受検者 29,862 人)
、
学科及び実技 76.5%(合格者 23,979 人 / 受検者 31,329 人)
○ 技能実習3号への移行については、優良な監理団
である。なお、旧制度ではあるが、既に 2 倍程度ま
での受入れ人数枠の増加を許容している「外国人
研修受入れ特区」では失踪や労働関係法令違反等
の事例が顕在化しているところもあるため、安易な
緩和の考えはとるべきではないとの意見があった。
② 実習実施機関の常勤職員数に応じた受入れ人数枠の
均整化
体及び優良な実習実施機関においてのみ可能とす
○ 現行制度の受入れ人数枠は、 常勤職員数が 50 人
べきである(監理団体が優良であっても、実習実施
以下の実習実施機関は一律 3 人まで、 51 人以上
かけはし 2015.7 Vol.122 9
トピックス2
100 人以下の実習実施機関は 6 人までとされている
内検定を活用する職種」)
(3 年間受入れる場合にはこの 3 倍となる) など、
○ 「地域ごとの産業特性を踏まえた職種」 の追加が
必ずしもきめ細かな区分とはなっていないことから、
可能となる措置を講ずべきである。 なお、 職種追
例えば、 常勤職員数が 50 人以下の場合について、
加に当たっては、 当該職種が送出し国のニーズに
30 人 以 下 は 3 人、 31 人 以 上 40 人 以 下 は 4 人、
合致すること、 他の技能評価試験の対象職種と競
41 人以上 50 人以下は 5 人までとすべきである。
合しないようにすること、 教育訓練・評価の専門家
なお、 新制度移行後の施行状況等を踏まえ、 常
等による公的評価システム認定会議で審査するこ
勤職員数が 30 人以下の実習実施機関について、
と等、 適正な運用を確保すべきである。
適正な技能実習が達成できていないような場合に
○ 「企業単独型において社内検定を活用する職種」
は、 さらなる受入れ人数枠の均整化についても検
の追加が可能となる措置を講ずべきである。なお、
討すべきである。
職種追加に当たっては、教育訓練・評価等の専門家
等による公的評価システム認定会議で審査するこ
<対象職種の拡大等>
実習生を直接指導する者が試験業務に関わってはな
① 対象職種の拡大
○ 介護分野の対象職種への追加については、「様々
らないとすること等、適正な運用を確保すべきである。
な懸念に対し適切な対応が図られるよう、 具体的な
○ いずれの職種についても、 実際に技能実習を行う
制度設計を進めることとし、 技能実習制度の見直し
場合には、 技能実習で修得した技能等を要する業
の詳細が確定した段階で、 介護固有の具体的方策
務に送出し国で従事することが予定されていること
を併せ講じることにより、 様々な懸念に対し適切に
等が必要であることとすべきである。
対応できることを確認した上で、新たな技能実習制
③ 多能工化ニーズへの対応(複数職種の実習)
度の施行と同時に職種追加を行うことが適当であ
○ 送出し国側の多能工化のニーズと我が国の実習実
る」 という 「外国人介護人材受入れの在り方に関
施機関側のキャパシティに対応し、複数職種の技能
する検討会」 における検討結果を踏まえて適切に
実習を行うことができるように措置すべきである。こ
対応すべきである。
の場合、試験の実施や受検の負担等も考慮し、主
○ その他の職種については、制度趣旨や送出し国の
な職種(複数)のうちのいずれかの職種の技能評価
ニーズ等を踏まえ、移転すべき技能として適当なもの
試験の受検が義務付けられるものとすべきである。
について、随時対象職種に追加していくべきである。
○ 産業ごとの変化や実態、 技術の進歩等にも応じて、
② 技能評価試験の適正化・柔軟化(「地域ごとの産業
特性を踏まえた職種」 や 「企業単独型において社
と、毎年度、試験の実施結果を国に報告すること、
3
使用する素材等の要件を緩和する等、 技能実習計
画をより柔軟に作成できるようにすべきである。
終わりに
今回の制度見直しについて、JITCOとしては、制度
等の各種サービスについて、新制度への切り替え時の
が適正かつ円滑に運営されるためには、政府による不
対応はもとより、制度改正後も、安心して制度をご活用
適正事案に対する「取締」 の強化に加え、これまで
いただけるように、これまで以上に一層充実した支援活
JITCO が担ってきた受入れ・送出しに関する各種の「支
動を展開してまいりたいと考えているので、引き続き、ご
援」 が「車の両輪」として機能していくことが不可欠
支援・ご協力をお願いしたい。
であると考えている。
なお、外国人技能実習の適正な実施及び技能実習
そのため、新制度が施行された場合、JITCO は、
生の保護に関する法律案が国会での審議を経て、可
業務の在り方を見直し、地方におけるサービスの維持・
決・成立した場合、本誌においても、法律の概要をご
発展を図り、賛助会員の皆様に対する新制度に関連し
案内したいと考えております。
た法令等の案内・解説、情報提供・相談、手続支援
10 かけはし 2015.7 Vol.122
トピックス3
トピックス
3
実習実施機関の募集を開始します
詳細は、2015年7月1日からJITCOホームページにおいてご案内します
◆スキルマップ推進事業とは
この事業は、技能実習生の職務遂行能力(仕
事力)の改善向上とその証明を行いたいとする実習
実施機関を対象に実施します。
この事業の狙いは、実習実施機関が、技能実
習生一人一人の目標レベルに合わせてスキルマップ
(職務と成果向上の羅針盤)を作成して、自発的持
続的な目標達成の取組みを促すとともに、その成果を
「見える化」して技能実習生の職務遂行能力の到
達段階を証明することにあります。
JITCO は、この事業に参加して技能実習生の職
務遂行能力の改善向上に取り組む実習実施機関
を、技能等の移転を着実に行っている事業所として
認定いたします。
スキルマップのイメージ
∼現場の仕事力を図式的に示す∼
◆初めて参加申請する実習実施機関
へのサポート
JITCO は、本事業に初めて参加する実習実施
機関に対して、以下のフルサポートを行います。
ⅰ JITCO 担当者は実習実施機関を訪問して、
「人
材育成のためのガイドライン」を提供し、技
能実習指導員とともに現場ニーズを反映する
スキルマップを作成します。
ⅱ 成果向上のための目標管理(指導評価)の方
法や達成度評価の方法について助言します。
ⅲ 目標管理の完了時に、目標達成スキルマップ
のとりまとめについて助言します。
ⅳ 目標管理の方法がガイドラインに則って実施
されたことを確認して、実習実施機関及び技
能実習生(被認定者)に対して認定証を発行
します。
なお、技能実習計画の計画目標(技能検定3級
の合格など)の達成に有効な目標管理(短期集中
的なトレーニングと評価採点)の方法についても、
要望があれば、助言指導を行います。
◆参加申請料及び認定証発行手数料
職務目標を企業横断的
に 類 型 化 し、 一 般 に 理
解しやすい言葉で説明
職場技能を現場の言葉で列記
連絡先
詳細は、JITCO ホームページをご覧ください。
◆参加申請の方法
JITCO ホームページに掲載する「JITCO スキル
マップ推進事業に関する実施の概要及び実施計画」
をご覧いただき、「参加申請書」をダウンロードして
必要事項を記載のうえ、下記の連絡先にご送付くだ
さい。 受領次第、詳細について打合せをさせていた
だきます。
〒 105-0013 東京都港区浜松町 1-18-16 住友浜松町ビル 4 階
公益財団法人国際研修協力機構 能力開発部移行業務課(担当 川上・坂井)
TEL:03-6430-1185 / 03-6430-1192 FAX:03-6430-1115
かけはし 2015.7 Vol.122 11
日本語指導お困りですか?
日本語指導 お 困 り で す か?
監理団体や実習実施機関から寄せられる日本語指導に関するご相談に対するアドバイスを
ご紹介しています。今回は、来日後の講習の日本語指導についてのご相談です。
実習実施機関からの要望として、もっと話せ
るようにしてきてほしいと言われるので、 来日
直後の約1ヶ月の講習では、 日本語指導に多くの時
間を割く予定です。しかし、 指導にあたるのは団体
の職員で、日本語の教え方の知識はありません。 技
能実習生がもっと話せるように、 授業ではどんな工夫
ができるでしょうか。
(O 協同組合 S さん)
来日直後の技能実習生の口から出るのは、簡単な挨
拶や丸暗記した自己紹介ばかりで、日本語を聞いたり話し
たりして情報のやりとりをすることがなかなかできないのが
現実です。技能実習生は来日前に母国で日本語を勉強し
てくる場合がほとんどですから、日本語の初歩の単語や
文法の知識は技能実習生の頭の中にあるはずなのです
が、頭の中にある日本語を外に出すところに大きな困難が
あるのです。このことは、日本人の多くが中学校や高校
で英語を勉強しているにもかかわらず、いざ英語を話す
場面に出くわした時に、言いたいことがなかなか口から出
てこないという状況と同じだとお考えいただければ理解で
きることでしょう。
アドバイス 1
母国で勉強してきたことを実際に
「使う場」を提供しましょう。
そこで、来日後の講習でまずめざしたいのは、技能実
習生が来日前に勉強してきた日本語を、実際に「使える」
よ
うにすることです。そもそも、来日直後の技能実習生は家
族と離れて異国である日本にやってきて不安と緊張でいっ
ぱいで、日本語学習の成果を発揮する余裕などない場合
がほとんどです。ですから講習では、技能実習生に日本
語を「使う場」をどんどん提供して、母国で勉強してきた自
分の日本語が現実の日本で「通じた」という喜びを積み重
ねてもらうことが大切です。そのことは技能実習生の緊張
をときほぐすことにもつながります。
講習で日本語指導を担当する方は、外国人に対する日
本語の教え方のテクニックや知識を身につけたプロの日本
語教師ではなく、多くは監理団体の職員等なので、例え
ば新しい表現や文法について、技能実習生が理解できる
ように過不足なく示すのは至難の業です。しかしながら、
日本語を「使う場」を提供すること、ここに焦点を置いて指
12 かけはし 2015.7 Vol.122
導をすれば、プロの日本語教師でなくても、良い授業にな
るのではないでしょうか。
実際、講習では、新しい表現等を無理に教える必要は
ありません。技能実習生が既に持っている日本語の知識を
「使う場」を作るという観点で日常生活の場面を見直して、
講習の授業を計画しましょう。
そのために重要なのは、技能実習生が来日前に何を学
んできたかを知ることです。できれば、来日前に使ってい
た教科書を見せてもらう(多くの技能実習生が持参してい
ます)などして、どんな文型(言い回し)
を勉強してきたか、
どんな単語を勉強してきたかをおさえておきましょう。
アドバイス 2
日本語で何ができることが期待され
ているか、技能実習生に具体的に
示しましょう。
「使う場」の提供という観点から、講習中に実際に体験
してほしいことをリストにして、体験したら印をつける、とい
うスタンプラリーのようなチェックリストを技能実習生に示す
のも楽しい工夫です。技能実習生にとっても、
日本語を使っ
て何ができることが期待されているかが具体的にわかり、
動機づけにつながります。
チェック項目は講習場所の周囲の状況に合わせて決め
ていきます。場面としては、できるだけ講習の指導員以外
の人とのやりとりができる状況を考えてみてください。ごく
簡単なことでも技能実習生にとっては大きな「成功体験」に
なります。次の例を参考にしてみてください。
例
□ スーパーのレジの人に袋を頼む
□ スーパーの店員にトイレの場所を尋ねる
□ スーパーの店員に砂糖の場所を尋ねる
□ コンビニで買い物をした時に袋を断る
□ 郵便局で切手を買う
□ 食料品店で商品の値段を尋ねてお礼を言う
□ 近くのだれかに時間を尋ねてお礼を言う
□ 近くの店で開店時間、閉店時間を尋ねる
□ 近くの店で休業日を尋ねる
□ ……
※注 技能実習生には翻訳文を併記して渡しましょう。
教室で練習してから挑戦してもかまいません。
日本語指導お困りですか?
アドバイス 3
そのほか、こんな教室活動も取り
入れてみましょう。
●カタカナの言葉を読む練習を毎日取り入れましょう
前回の「かけはし」では、来日前の学習に焦点を当て
てお話しし、そこでもカタカナの重要性をお伝えしました
が、実際に来日してみると、技能実習生の想像以上に日
常生活のいたるところでカタカナを目にすることに気づくは
ずです。道を歩けば看板やポスターに、買い物をすれば
ペットボトルにも生活雑貨にもカタカナがあります。
講習では、技能実習生自身が目にしたカタカナについ
て、発音したり意味を調べたりする練習を毎日取り入れて
みてください。日常生活で目にする日本語は、ひらがなだ
け読めても意味のある言葉にならない場合が多いのです
が、カタカナはたいてい意味のある言葉である上に、教
科書には載っていないのに生活ではよく使う語も多く、技
能実習生にとっても実用的で楽しい活動です。また、辞
書を引く練習にもなり、技能実習生の今後の日本での生
活に役立つスキルが身につきます。
使ったり、全体で一斉に練習したり、少人数に分かれ
て練習したりなど、飽きずに繰り返せる工夫が必要です。
こうした練習のバリエーションについては、J
ITCOの「日
本語指導セミナー」や「日本語指導ワークショップ」で具
体的にご紹介していますので、是非ご参加いただき、
指導にお役立てください。
2015 年度 日本語指導員向け講座のご案内
内容等詳細は JITCO ホームページをご覧くださ
い。申込用紙もダウンロードできます。オンライン申込
もできます。
全講座、日本語指導の経験がない方もご参加可
能です。具体的な日本語指導のイメージをつかんで
いただけます。
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「JITCO 日本語教材ひろば」 内の教材等もご紹介します。
賛助会員:10,000 円、 非会員:13,000 円(1名)
7/9(木)仙台、10/23(金)東京、12/3(木)名古屋、
ひらがなは
「の」
だけで、
その意味もわかりませんが、
カタカナの「フレッシュ」
「セール」などは、発音したり
意味を調べたりすることができます。漢字の部分は、
読み方を教えたあと、辞書を引く練習ができます。
※講習ではこれらの漢字の読みを覚える必要はありません。
12/4(金)岡山、1/21(木)大阪、1/22(金)福岡、2/10(水)東京
*** プログラム ***
1.講習の日本語指導のポイント
2.講習の日本語指導計画
3.インターネットサイト「JITCO 日本語教材ひろば」と
サイト内教材の紹介
4.
「聞く」「話す」 力をつけるための教室活動
●繰り返す練習につきあうのも大切な仕事です
教科書を読んで、翻訳して、練習問題を少しやって、
あとは自分で練習するようにと指示を出して、繰り返し練
習の部分を技能実習生任せにしていませんか。外国語
を身につけるには、「繰り返すこと」があらゆる場面で重
要です。ですから指導する人は、技能実習生が繰り返
して練習する時間を提供して、その練習につきあってあ
げることが大切です。この地道な練習が技能実習生の
日本語力に直結します。
そうは言っても、機械的で単純な繰り返しばかりでは
技能実習生も退屈しますから、イラストや文字カードを
5.授業実習
☆日本語指導ワークショップ
テーマに沿ってピンポイントで考える約3時間のコースです。
賛助会員:5,000 円、 非会員:8,000 円(1名)
9/4(金)東京 AM プログラムA、PM プログラムB
3/3(木)東京 AM プログラムB、PM プログラムA
プログラムA:はじめての日本語指導
プログラムB:日本語指導員のための日本語文法入門
☆日本語指導オンデマンド
ご希望日に JITCO の日本語指導専門スタッフがお伺いしま
す。上記のセミナーやワークショップの日程が合わない場合等
にご利用ください。
賛助会員:5,000 円、 非会員:8,000 円(1名)
1回約3時間です。講師の交通費を別途ご負担いただきます。
■技能実習生に対する日本語指導全般について、
ご相談・ご質問を受け付けています。
能力開発部援助課 メール:[email protected]
TEL:03-6430-1950 FAX:03-6430-1115
かけはし 2015.7 Vol.122 13
労務管理の窓から
Q&A
1年単位の変形労働時間制の適正な運用に向けて
技能実習生に対する変形労働時間制の適用については、技能実習生が単なる労
働者ではなく、技能移転による国際貢献を目的とした制度の対象者であることを考
えると、慎重に適用しなければなりません。今回は変形労働時間制の中でも特に制
限の多い1年単位の変形労働時間制について、適正な運用のための注意点を整理
してみることにします。
Q1
1年のうち季節的に業務の繁閑がある事業場等
なお、技能実習生を含めて、常時10人以上の労働者を
については、1年単位の変形労働時間制がある
使用している事業場については、1年単位の変形労働時
と聞きますが、どのようなものですか。
間制を採用する旨を就業規則に記載したうえで、これを監
督署長に届け出る必要があります。
A1
業務に繁閑のある事業場について、繁忙期に長
い労働時間を設定し、閑散期に短い労働時間を
1年単位の変形労働時間制を導入する場合に、
設定することにより効率的に労働時間を配分して、年間の
Q3
総労働時間の短縮を図ることを目的にした労働時間制度
ければならない点を教えてください。
いろいろな制限があると聞きますが、注意しな
です。
労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出る
ことにより、1ヶ月を超え1年以内の一定期間を平均し1週
A3
一般に「1年単位の変形労働時間制」と呼んで
いるので、1年が単位のように聞こえますが、最
間の労働時間を40時間以下にした場合、特定の日や週に
長が1年ということで、1ヶ月を超え1年以内の期間であれ
ついて1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて
ば、例えば3ヶ月、4ヶ月、半年などの対象期間で採用する
労働させることができます。
ことも可能です。ここでは、1年間を対象とした期間で説
明します。
Q2
監督署長に届け出る労使協定にはどのような内
容を盛り込めばいいのでしょうか。
① 1年間の全労働日と労働時間の特定が必要です。
一般的には年間カレンダーで労働日と休日を特定し、
労使協定や就業規則で労働時間を特定します。
A2
労使協定では次の5項目について協定を締結す
② 1年間の労働日数は280日が限度となります。
る必要があります。
③ 連続労働日数は原則として最長6日までです。
① 対象労働者の範囲
(1ヶ月を超え1年以内の期間に限る)
及び起算日
② 対象期間
③ 特定期間(対象期間のうち特に繁忙な期間)
④ 労働日及び労働日ごとの労働時間
⑤ 労使協定の有効期間
14 かけはし 2015.7 Vol.122
週1日の休みは必ず確保することが必要です。
④ 1日の労働時間は10時間、1週間の労働時間は52時
間が限度です。
上記以外にも、週48時間を超える運用を行う場合は制約
がありますのでお近くの労働基準監督署にご相談ください。
労務管理の窓から
Q4
対象期間を1年間とした場合に、事前に1年間
労使協定で1日8時間を超える時間を定めた日はその
の全労働日と労働時間を指定することになって
時間を超えて労働した時間、それ以外の日は8時間を
いますが、全てを事前に指定するのが難しい場合に、何か
いい方法がありますか。
超えて労働した時間
② 1週の法定時間外労働
労使協定で1週40時間を超える時間を定めた週はその
A4
対象期間における労働日ごとの労働時間をあら
時間を超えて労働した時間、それ以外の週は1週40時
かじめ特定しなければならないのは、あらかじめ
間を超えて労働した時間(①で残業となる時間を除く)
1日の労働時間を労働者に指定することによって、生活の
予定を立てるようにするためで、労使協定において特定さ
れた日又は週の労働時間を対象期間の途中で変更するこ
③ 対象期間の法定時間外労働
対象期間の法定労働時間総枠を超えて労働した時間
(①または②で残業となる時間を除く)
とはできません。
ただし、1年単位の変形労働時間制は、対象期間が長期
にわたるので、これを1ヶ月以上の複数の期間に区分する
Q6
外国人技能実習生は1年単位の変形労働時間
制の協定期間の途中での採用や退職が多くな
こととした場合には、対象期間全ての労働日ごとの労働時
りますが、協定期間を満たさない場合でも1年単位の変形
間を対象期間に入る前に特定する必要はなく、
制適用は可能でしょうか。また、その場合割増賃金の清算
① 最初の期間における労働日
はどのように行えばいいのでしょうか。
② 最初の期間における労働日ごとの労働時間
③ 最初の期間を除く各期間における労働日数
④ 最初の期間を除く各期間における総労働時間
A6
以前は協定期間を満たさない者には適用はでき
ませんでしたが、現行は適用可能です。対象期間
を定めておけばいいことになっています。
より短い労働をした者に対しては、使用者はこれらの労働者
なお、最初の期間を除く各期間の労働日と労働日ごとの
に実際に労働させた期間を平均して週40時間を超えた労
労働時間については、その期間の始まる少なくとも30日
働時間については、次の式により労働基準法第37条の規
前に、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合
定の例による割増賃金を支払うことが必要です。割増賃金
がある場合においてはその労働組合(労働者の過半数で組
の清算を行う時期は、途中採用者の場合は対象期間が終了
織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表す
した時点、途中退職者の場合は、退職した時点となります。
る者)
の同意を得て、書面により定めなければなりません。
計算式(所定労働時間だけ、労働したものとする)
Q5
1年単位の変形労働時間制を採用した場合に、
残
割増賃金を支払う時間
業はあまりなくなると思いますが、どうしても残
= 実労働期間における実労働時間 −
業してもらう必要が出た場合に注意することはありますか。
実労働期間における法定労働時間の総枠
実労働期間における法定労働時間の総枠の計算式は次の
A5
1年単位の変形労働時間制は1年間の業務の
とおりです。
繁閑を読み込んだ労働時間制度ですから、残業
(実労働期間の歴日数 ÷ 7日)× 40時間
は原則としてはないのが好ましいですが、どうしても残業
をする必要が生じた場合は、時間外・休日労働協定を事前
◎最後に
に労使で結び監督署長に届け出て、協定の範囲内で残業
技能実習制度は日本の高度な技能を習得してもらい、
をさせることができますが、固定的な労働時間制度を取る
母国で生かしてもらうことを前提にした制度ですから、日
事業場に比べて残業時間の上限が短く制限されているこ
本での労働は技能実習計画に基づき技能習得に必要な範
とに注意が必要です(例えば、1ヶ月の残業限度時間が通
囲で認められるものです。
常は45時間以内ですが、1年単位の変形制の場合は42
1年単位の変形労働時間制は業務の繁閑を見込んで、
時間以内となります)。
それに合わせて労働時間を配分するものですので、突発
また、割増賃金の支払いについては、次の3種類の支払
的なものを除き、恒常的な時間外労働はないことを前提
いの必要が考えられます。
としたものであることをよく理解して、厳格な運用をお願
① 1日の法定時間外労働
いしたいと思います。
かけはし 2015.7 Vol.122 15
もっと役立つ入管指南
監理団体が外国人技能実習生に対し実施する
「法的保護講習」について
技能実習生に対して実施する「講習」に関する留意点については以前
本誌でも取り上げましたが、今回は、監理団体の皆様からお問合わせ
が多い専門的な知識を有する者が行う「法的保護講習」に関する内容を
中心に紹介します。
Q. 技能実習生に対し専門的な知識を有する者
団体又は実習実施機関に所属する者は法的保
が行う法的保護講習の具体的な内容につい
護講習の講師になることはできず、本人が所属す
て教えてください。
る機関が実施する講習だけではなく、他の監理
A. 技能実習生に係る法的保護講習の課目としては、
以下の内容が挙げられます。
団体が実施する講習の講師となることも認められ
ていません。これは、技能実習生に対する不正
行為や問題行為及びそのような行為があった際
技能実習生に係る法的保護講習の課目
①出入国管理及び難民認定法
②労働基準法
③ ⅰ 技能実習に係る不正行為が行われている
ことを知ったときの対応方法
ⅱその他技能実習生の法的保護に必要な情報
の対応方法について、専門的な知識を持った外
部講師による客観的かつ公正な立場から技能実
習生に情報を提供し、保護の充実を図る必要が
あるためです。
Q. 法的保護講習を行うこととなる講師の必要な
要件等はあるのでしょうか。
A. 法的保護講習については、専門的な知識を持っ
Q. 団体監理型で技能実習生の受入れを行い、
た方が講師となり講義を行うことが必要です。専
法的保護講習の実施を計画しています。
門的な知識を持った外部講師が講義を行うもので
日頃から技能実習生とのやり取りにも慣れ
なければ、上陸基準省令に定める講習として認
ているので、 監理団体の職員や実習実施
められません。専門的な知識を有する講師の例と
機関の従業員に法的保護講習の講師を任
しては国や地方公共団体の職員、弁護士、社
せても構いませんか?
会保険労務士、行政書士などが該当しますが、
A. 専門的な知識を持っていても、いずれかの監理
16 かけはし 2015.7 Vol.122
それら以外の者が専門的な知識を有する者に該
もっと役立つ入管指南
当するかどうかは、その者の職務経歴や受講し
められていません。講習が実習実施機関の施設
た研修等に基づき地方入国管理局が個々に判断
で行われることは技能実習生が実習実施機関の
することになります。
配下に置かれる恐れもあり望ましくありませんが、
会場が確保できない場合など、やむを得ない事
Q. 行政書士や社会保険労務士、 弁護士といっ
情により実習実施機関の会議室等を使われる場
ても、 誰に法的保護講習をお願いすれば良
合は、監理団体の職員を講習場所に配置するな
いのかわかりません。
どして、実習実施機関が技能実習生に対し、指
A. JITCO では、技能実習生の法的保護に関して
専門知識を持った講師を派遣するサービスを行っ
揮命令等を行うことがないよう必要な措置を講じ
る必要があります。
ています。全国各地で対応可能ですので、詳細
は JITCO 出 入 国 部 講 習 支 援 課(03-6430-
Q. 法 的 保 護 講 習 の 会 場を選 ぶ 上 で 気をつ け
1981)
までお問い合わせください。
なければいけないことについて教えてくだ
お申込みは、申込 書( J I T C O ホームページ
さい。
[適正実施のために > 法的保護情報 「専門講
A. 技能実習生に対する講習の実施にあたっては、
師派遣」 > JITCO 専門講師派遣]に PDF 版
まず技能実習生が講義の内容をよく理解できるよ
を掲載しています)にご記入の上、FAX にて承
う配慮しなければなりません。人数に対して会場
ります。
が狭い場合など、音声が反響して内容が聞き取
なお、派遣講師による講義の際の通訳は皆様
れず内容が全く理解できなくなるケースも考えられ
において手配をお願いしております。
ます。ホワイトボード等会場に備え付けの設備が
あれば積極的に使い、より分かりやすい講義を行
Q. 講習の実施場所は必ず監理団体が確保しな
うための工夫も必要です。以上の点から、会場
ければなりませんか? 実習実施機関の会
の選 定においては法 的 保 護 講 習の受 講 人 数、
議室を使うことは問題ないでしょうか?
規模、講義の進行方法等と照らし合わせて最適
A. 講習を行う施設は監理団体が確保することが要
件となっています(上陸基準省令「1号ロ」第 10
な設備の整った会場を選ぶことが大切と言えるで
しょう。
号)。講習の期間中は実習実施機関と技能実習
生の間に雇用関係は生じておらず、実習実施機
関が技能実習生に対して指揮命令することは認
●「講習」に係る「不正行為」について ●
2015 年 4 月 14 日法務省入国管理局公表「平成 26 年の「不正行為」について」によると、 講習期間中
に実習実施機関の業務に従事させていたという事案は平成 25 年に 79 件、 同 26 年に 74 件に上ってい
ます。
技能実習生の受入れを行う監理団体、 実習実施機関の皆様には講習において、 法的保護講習の実施が
義務づけられた理由、 すなわち、 技能実習生の保護の重要性を再確認していただきたいと思います。
かけはし 2015.7 Vol.122 17
海外情報
タイ労働大臣の来訪について
JITCO は、3月23日にタイの政府窓口である労働
省(MOL)のスラサック労働大臣一行の表敬訪問を
受け、技能実習制度の見直しを中心に意見交換を
行いました。JITCO からは、技能実習制度に関す
る基本的フレームワークに加えて、制度見直しにつ
いて厳格化と拡充という観点から説明を行いました。
タイ側からは、タイ国内で増加する外国人労働者の
状況をふまえて、熱心な質疑が行われました。
「外国人技能実習制度の現状と制度見直しの方向性」
について
講演する JITCO 新島 専務理事
フィリピンの政府窓口である労働雇用省海外雇用庁
(POEA)のライセンスを有する送出し機関の有志に
より設立された組織である APLATIP(Association
of Philippine Licensed Agencies for Technical
Internship Program)の会員とフィリピンからの技能
実習生の受入れに関心のある日本の監理団体とを対
象とするジョイントセミナーを開催しました。今回も前
スラサック労働大臣
(左)
回と同様に、APLATIP より技能実習生の受入れに
関心のある日本の監理団体との会合を持ちたいとの
希望が寄せられ、当機構がこれを受け入れる形で
開催する運びとなりました。
当日は、フィリピン側からは、在京フィリピン大使館
の海外労働事務所(POLO)労働アタッシェ、労働雇
用省の関係者をはじめとして36の送出し機関53名、
日本側からは、72の監理団体101名のご参加をい
ただきました。
タイ労働大臣一行
午前は JITCO 鈴木理事長の開会挨拶で始まり、
フィリピン側からの挨拶の後、JITCO 側からは新島
フィリピン送出し機関・
監理団体とのジョイントセミナーの
開催について
5月19日、東京にて2012年5月以来2回目となる
18 かけはし 2015.7 Vol.122
専務理事より、外国人技能実習制度の現状と制度
見直しの方向性に関する説明がなされました。フィリ
ピン側からは、APLATIP ナバロ理事長より、監理
団体と送出し機関との契約から始まり技能実習生の
出国までの流れ及び各手続にかかる標準的な期間
海外情報
在京フィリピン大使館の海外労働事務所
(POLO)
マリア ルズ L. タレント労働担当官によるフィリピン側の講演
に関する説明がなされました。引き続き、POLO タレ
技能実習生の送出しについて説明する APLATIP ナバロ理事長
午後は、送出し機関と監理団体が個別に面談を
ント労働担当官から、送出しの流れにおいて最初の
行い、パートナーを探すという「ビジネスマッチング」
審査手続となる POLO における手続の説明及び申
が行われ、活気と熱気のあふれる打合せが続き、多
請書類の作成上の留意点について具体的な事例を
くの参加者より高い評価を得ることができました。
交えながらの説明がなされました。
質疑応答では、監理団体よりPOEA や POLO に
当機構では、時期は未定ですが今後も各国の送
出し機関とのジョイントセミナーの開催を予定していま
おける審査手続や送出し機関の複数登録に関する
す。開催の折には是非ご参加ください。
質問が出され、それに対してフィリピン側から説明が
本件に関する問い合わせ先:
なされました。また、監理団体より出された手続等に
国際部第二課【電話】03-6430-1151
関する要望についてはフィリピン側より本国政府に伝
えるとの回答がなされるなど、有意義な意見交換の
場となりました。
セミナーの様子
JITCO では、送出し国事情や認定送出し機関などについての情報
提供を行っています。
お問い合わせ先 TEL:03-6430-1150/1151
ビジネス・マッチングの様子
◆
国際部
◆
FAX:03-6430-1112
かけはし 2015.7 Vol.122 19
JITCOの教材
既刊・改
刊本の
新
訂紹
の介
紹介
外国人建設就労者 入国・在留諸申請用書式と記載例集CD版 (賛助会員は割引)
定価6,
480円(本体6,
000円+税) 記載例集 A4判141頁 申請書類 A4判63頁
外国人造船就労者 入国・在留諸申請用書式と記載例集CD版 (賛助会員は割引)
定価6,
480円(本体6,
000円+税) 記載例集 A4判171頁 申請書類 A4判79頁
地方入国管理局に対して行う在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請及び在留期間更新許可
申請に当たって提出すべき書式、資料等とその記載例を紹介したもので、それぞれPDF形式でCDに収録し
ていますので、必要とする箇所をプリントアウトしてご使用ください。書式については、手書き入力となります。
外国人技能実習制度における技能実習計画第1分冊改訂CD版(19職種31作業)(賛助会員は割引)
※従来のCD版に、新たに下着類製造職種
(1職種1作業)
を追加したものです。
(19職種31作業)A4判356頁
定価2,
268円(本体2,
100円+税)
外国人技能実習制度における技能実習計画第3分冊CD版(15職種22作業)(賛助会員は割引)
※このCD版は、従来の第3分冊教材をそのままPDF化し収録したものです。
定価2,
268円(本体2,
(15職種22作業)A4判318頁
100円+税/定価改訂)
これらの教材は、作業ごとに①技能実習計画の作成についての解説、②ダイジェスト版(技能
実習計画の作成にかかる部分を抜き出して要約)、③技能実習計画モデル例、④試験科目及び
その範囲並びに細目対比表の4つの項目から成り立っています。
監理団体や実習実施機関が技能実習計画を作成するための必要な知識やノウハウをまとめた
もので、技能実習計画作成の必携書です。
なお、第2・4分冊も引き続き販売しておりますのであわせてご活用ください。
■外国人技能実習制度における技能実習計画第2分冊 (賛助会員は割引)
定価2,
700円(本体2,
500円+税)(17職種35作業)A4判427頁
■外国人技能実習制度における技能実習計画第4分冊改訂CD版 (賛助会員は割引) 定価2,
376円(本体2,
200円+税)(18職種38作業)A4判584頁
既刊本の紹介
アーク溶接等作業の安全 (賛助会員は割引)
■中国語版、■英語版、■インドネシア語版、■ベトナム語版
定価:各2,
571円(本体2,
381円+税) B5判 435頁
本書は、アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断の業務に就くときには、アーク溶接等の業務に関す
る基礎知識を学習するとともに、アーク溶接装置の取扱いやアーク溶接等の作業の方法について、指導者向
けに特別教育用テキストとしてまとめたもので、各編に復習問題を掲載しておりますので、学習後の活用によ
って一層理解が深められるよう工夫しています。日本語との対訳形式で4ヶ国語を販売しております。
改訂 グラインダ安全必携 −研削といしの取替え・試運転特別教育用テキスト−(賛助会員は割引)
■中国語版、■英語版、■インドネシア語版、■ベトナム語版
定価:各2,
057円(本体1,
905円+税) A5判 393頁
本書は、グラインダ作業について、現場作業者のための機材の図や写真を多用してわかりやすく説き明か
したもので、単に研削といしの取替え又は取替え時の試運転業務の特別教育用テキストにとどまらず、グライ
ンダ作業の技術書としても有用なものになっています。日本語との対訳形式で4ヶ国語を販売しております。
【教材に関するお問い合わせ先】 JITCO 教材センター
電話:03-6430-1110 Fax:03-6430-1116 E-mail:[email protected]
20 かけはし 2015.7 Vol.122
JITCOニュース
ニュース
技能実習2号移行対象職種・作業の追
加について(果樹作業・牛豚食肉処理
加工業職種・惣菜製造業職種)
外国人造船就労者の受入れに係る
地方入国管理局に提出する申請書類の
点検・取次ぎサービスについて
JITCO は、2015 年 3月31日付にて公的評価システム
の認定(果樹作業・牛豚食肉処理加工業職種・惣菜製
造業職種)を公表したところですが、厚生労働大臣公示
「技能実習制度推進事業等運営基本方針」が 4月1日付
にて一部改正され、同方針別表「技能実習2号移行対
象職種」に上記職種・作業が追加されましたので、お知
らせします。
<厚生労働省ホームページ>
●技能実習制度
JITCO では、地方入国管理局に提出する技能実習
生の入国・在留諸申請に係る申請書類の点検及び取次
ぎサービスを行っておりますが、2015 年 4月1日に外国人
造船就労者の受入れが開始されることに伴い、新たに外
国人造船就労者の申請書類の点検及び取次ぎも行うこと
としました。点検・取次ぎは、入管法令及び入国・在留
手続に精通した職員が行っており、一層多くの方々に活
用していただきたいと思います。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/
▶お問い合わせ先
出入国部企画管理課 TEL:03-6430-1127
koyou_roudou/shokugyounouryoku/global_
cooperation/gaikoku/index.html
●技能実習制度推進事業等運営基本方針
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-
「外国人技能実習生労務管理ハンドブ
ック」2015 年 3 月版の掲載について
Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000081120.pdf
●
(別表 技能実習 2 号移行対象職種)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000081121.pdf
従来 JITCO が公表していた「職種・作業の範囲」に
ついては、今年度より厚生労働省が公表する予定です。
今般追加となった職種・作業(果樹作業・牛豚食肉処理
加工業職種・惣菜製造業職種)の「職種・作業の範囲」
についても、現在、厚生労働省が内容の検討を行ってい
るところですので、公表され次第、当機構ホームページで
もお知らせします。
なお、今般追加になった職種・作業における技能評価
試験の試験細目については、試験実施機関から入手可
能ですので、各試験実施機関に個別にお問い合わせく
ださい。
職種
作業
試験実施機関
連絡先
(TEL)
耕種農業
果樹
全国農業
会議所
03-6910-1124
牛豚食肉 牛豚部分肉 公益社団法人
処理加工業
製造
全国食肉学校
0270-65-2571
一般社団法人
日本惣菜協会
03-3263-0957
惣菜製造業
惣菜加工
▶お問い合わせ先
能力開発部移行業務課 TEL:03-6430-1194
JITCO は、監理団体及び実習実施機関が労働基準
法等を十分理解し、法違反を未然に防止するよう「外国
人技能実習生労務管理ハンドブック」を作成・普及してお
ります。
下記より、ダウンロードできますので、本ハンドブックを適
正な技能実習の実施にご活用頂ければ幸いです。
※冊子ではなく、PDF のみでの提供となります。ご了承く
ださい。
http://www.jitco.or.jp/download/data/handbook.pdf
[内容]
1. 技
能実習生に係る労働関係法令、労働・社会保険
関係法令等の適用
2. 労働契約
(雇用契約)
の締結と終了
3. 賃金
4. 労働時間と休憩
5. 休日と年次有給休暇等の付与
6. 就業規則による労務管理
7. 報告、届出及び記録・帳簿の保存
8. 寄
宿舎
(私生活の自由・人権の確保と安全衛生管理)
9. 結
婚・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁
止等
10.職場におけるセクシュアルハラスメントの対策
11.実習実施機関の講ずべき安全・健康確保措置
かけはし 2015.7 Vol.122 21
JITCOニュース
ニュース
12.保険への加入
13.参考資料
▶お問い合わせ先
能力開発部援助課 TEL:03-6430-1183
【法令改正】
特別教育を必要とする業務の
追加について(足場の組立て等の業務)
労働安全衛生法(第 59 条第 3 項)では、事業者は、
危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに
労働者を就かせるときは、厚生労働省令で定めるところに
より、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教
育が義務化されています。
建設業における労働災害は重篤度が高い(2013 年度
の JITCO 集計では、技能実習生の場合、休業 4日以
上が 60% 以上を占めます)のが特徴で、近年は足場の
組立て・解体時の足場からの墜落災害も増加傾向にあり
ます。
かかる状況下、足場からの墜落防止対策の強化の一
環として、足場の組立て、解体又は変更の作業に係る
業務
(地上又は堅固な床上における補助作業の業務を除
く)が、今般、特別教育を必要とする業務に追加され、
2015 年 7月1日から適用されることとなりました。
<厚生労働省ホームページ>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/
bunya/0000081917.html
つきましては、2015 年 7月1日以降に新規に足場の組
立て等の業務に従事される場合は、作業前までに当該
業務に係る特別教育の実施が必要となりましたのでお知
らせいたします。
なお、経過措置として2015 年 7月1日以前から当該業
務に従事されている場合は2 年間の猶予期間が設けられ
ているため、2017 年 6 月30日までの間は当該特別教育
の実施を要しません。
▶お問い合わせ先
能力開発部対策課 TEL:03-6430-1175
安全衛生セミナー・
実習指導員セミナー開催のご案内
ます標記セミナーについて、今年度の開催日程が確定し、
お申込みの受付を開始しましたのでご案内いたします。
今年度は、
【A】
安全衛生セミナー及び
【B】
技能実習指
導員セミナーの2種類を、下記の内容で実施いたします。
皆様のご参加をお待ちしております。
【A】安全衛生セミナー
〔内 容〕技能実習生の受入れに関係のある労働関係
法令の概要や、事故防止のための具体的な
対策について、実際の災害事例等の紹介をま
じえながら分かりやすく解説いたします。また、
母国から遠く離れた日本で暮らす技能実習生
が抱えやすいメンタル面の様々な不安・悩みを
取り除き、心身ともに健康な状態で実習に望む
ための、日頃からの効果的な生活指導のポイ
ントについてご紹介いたします。
〔対 象〕監理団体・実習実施機関の経営者、実習生
受け入れご担当者、生活指導員等
〔参加費〕無料
〔時 間〕13:00~16:15
〔場 所〕全国13箇所
(日程や会場などの詳細はこちらでご確認ください)
http://www.jitco.or.jp/introduction/index.
html#anzeneisei
【B】技能実習指導員セミナー
〔内 容〕日本での実習生活が実りあるものにするために
は、技能修得活動に対する技能実習生の意
欲的な姿勢が不可欠です。本セミナーでは、
技能実習生のモチベーションを高めるための
効果的な指導方法や、彼らの実習生活を支
える技能実習指導員の役割、技能実習の現
場における指導技法をご紹介します。また、
安全衛生に関する基礎知識、労働安全衛
生法関係令等について、分かりやすく解説し
ます。
〔対 象〕監理団体・実習実施機関の経営者、技能実
習生受入れご担当者、実習指導員等
〔参加費〕無料
〔時 間〕13:00~16:15
〔場 所〕全国5箇所
(日程や会場などの詳細はこちらでご確認ください)
http://www.jitco.or.jp/introduction/index.html#sidouin
▶お問い合わせ先
厚生労働省の委託事業の一環として毎年開催しており
22 かけはし 2015.7 Vol.122
能力開発部対策課 TEL:03-6430-1176
JT
I CO
<JITCOホームページ(技能実習 Days)>・
<技能実習生の友(表紙)>に掲載す
る写真を募集しています!
JITCO ホームページ(技能実習 Days)及び母国語
情報誌「技能実習生の友」表紙(「技能実習生今月の一
枚」
コーナー)
に掲載する写真を募集しています。
掲載を希望される方は以下の要領をお読みになり、ふ
るってご応募ください。
【募集内容】
技能実習生の写真
(技能実習生の活動の様子がわかるもの。日常の実習
活動、研修を受けている様子、地元行事への参加、弁
論大会への出場、社内で表彰を受けた時の様子、技
能実習生のユニークな活躍事例 etc...)
【お知らせいただきたい項目】
⑴ 受入れ機関名(監理団体又は企業名、実習実施機
関名)
⑵ ご連絡先
(ご住所、お電話番号)
⑶ ご担当者のお名前
⑷ お送りいただく写真に関するコメント
(写真の様子が何
をされている場面かわかるようにしてください)
【応募方法】
メールの表題に「技能実習生の写真募集の件」と明
記し、以下アドレスまでメールに写真を添付してお送りく
ださい。
[email protected]
※1 度の応募につき、写真は 3 枚まで添付できます。写
真の画像は
「JPEG 形式」1 枚のサイズは
「2MB 以内」
でお願いいたします。
【ご応募いただく際の留意事項】
※被 写体となる方の了解を得た上でご応募ください。ま
た原則として、技能実習生以外の人物が写っている
場合は、掲載の了解や肖像権の確認が困難などの観
点から掲載できない場合があります。
※商 業目的のもの、誹謗・中傷するもの、プライバシーを
侵害するもの等、掲載が不適当と判断するものは掲
載いたしません。
※選 考結果に係るお問い合わせはご遠慮ください。
※ご応募いただいた写真は JITCO が発行する冊子等
で使わせていただく場合があります。
その他、応募に関する詳細は「総務部 広報室(03-
ニュース
6430-1166)[email protected]」までお問い合わせく
ださい。
【掲載イメージ】
▼技能実習生の友 表紙
▼ JITCO ホームページ 技能実習 Days
本誌裏表紙でも
「技能実習 Days」をご紹介しています。
是非ご覧ください。
かけはし 2015.7 Vol.122 23
外国人技能実習生統計(2015年2月末)
〈JITCOホームページの「業務統計」もご覧ください。〉
JITCO入国支援技能実習生(1号)数(性別・国籍別)
(注1)
暦年別
性別
総数
国籍別
男性
女性
中国
2010年
44,194
17,927
26,267
36,302
ベトナム インドネシア フィリピン
2,552
2,285
1,658
839
558
2011年
48,297
19,696
28,601
38,825
4,064
2,367
1,522
847
672
2012年
44,043
17,497
26,546
34,794
4,495
1,556
1,489
781
928
2013年
40,410
16,889
23,521
28,805
6,114
1,619
1,749
1,043
1,080
2014年
タイ
その他
46,667
21,555
25,112
26,585
11,166
2,275
2,773
1,446
2,422
2015年1∼2月(注3)
9,020
4,082
4,938
4,629
2,834
287
484
274
512
対前年同期比
(%)
(注4)
13.2
18.4
9.2
-12.7
100.1
-10.9
-3.0
42.7
113.3
技能実習2号移行申請者数(性別・国籍別)
(注2)
総数
年度別
性別
企業数(注5) 人数
ベトナム フィリピン インドネシア
男性
女性
中国
15,554
46,985
19,882
27,103
36,918
3,582
2,778
2,490
762
455
2011年度
16,178
51,109
23,490
27,619
38,779
5,388
2,452
2,871
1,045
574
2012年度
17,179
53,791
24,769
29,022
38,808
6,488
3,413
3,326
1,072
684
2013年度
17,075
51,747
24,318
27,429
35,611
7,584
3,215
3,325
1,252
760
2014年度 4月∼2月
(注3) 21,599
53,024
27,199
25,825
30,736
11,704
4,152
3,942
1,462
1,028
11.5
22.0
2.3
-6.4
69.2
38.9
30.3
32.7
51.8
14.1
2.技 能 実 習2号 移 行 申 請 者 数とは、
監理団体・実習実施機関がJITCO
の地方駐在事務所に申請した人数
である。
3.暫定値であり、事後に変更される可
能性がある。
国籍別
2010年度
対前年同期比
(%)
(注4)
(注)
1.JITCO入国支援技能実習生数とは、
JITCOの支援サービスである入国
申請書類の事前点検の対象となっ
た者の数である。
尚、「技能実習生(1号)」のみを表
示しており、「研 修 生」の 数は除 い
ている。
タイ
その他
4.対前年(前年度)同期比(%)は、1
年前の同じ期間に対する増減率で、
増減数/前年(前年度)の同期間の
人数×100である。
5.企業数の当年度及び月次の数値は
延べ数である。
JITCOカレンダー
内 容
7月
8月
9月
場 所
担当部
TEL
1
( 水)
技能実習制度説明会
東京
企業部相談課
03-6430-1160
2
( 木)
安全衛生セミナー
岡山
能力開発部対策課
03-6430-1176
9
( 木)
日本語指導セミナー
仙台
能力開発部援助課
03-6430-1950
14
( 火)
技能実習生とのコミュニケーション実践講座(中国語)
東京
企業部相談課
03-6430-1160
15
( 水)
安全衛生セミナー
高松
能力開発部対策課
03-6430-1176
23
( 木)
安全衛生セミナー
福岡
能力開発部対策課
03-6430-1176
5
( 水)
技能実習制度説明会
東京
企業部相談課
03-6430-1160
2
( 水)
技能実習制度説明会
東京
企業部相談課
03-6430-1160
4
( 金)
日本語指導ワークショップ プログラムA・プログラムB
東京
能力開発部援助課
03-6430-1950
9
( 水)
技能実習生 受入れ実務セミナー ∼企業単独型コース∼
東京
企業部企画課
03-6430-1156
10
( 木)
安全衛生セミナー
大阪
能力開発部対策課
03-6430-1176
15
( 火)
技能実習生とのコミュニケーション実践講座(ベトナム語)
東京
企業部相談課
03-6340-1160
17
( 木)
安全衛生セミナー
松山
能力開発部対策課
03-6430-1176
編 集 後 記
■この「かけはし」が皆様のお手元に届く頃には、梅雨も終わって暑い夏を迎えて
いることでしょう。
今回の「かけはし」のトピックス2では、この1月末に報告された法務省・厚生労
働省合同有識者懇談会にて取り纏められた報告書について特集いたしました。
ちょうど7月は、3月6日閣議決定された「外国人の技能実習の適正な実施及び
かけはし(JITCO JOURNAL)
第 24 巻 122 号
発 行 日
発 行
2015 年(平成27 年)7月1日
公益財団法人 国際研修協力機構
技能実習生の保護に関する法律案」が国会に提出されています。これからの半
〒105- 0013
年、大きな動きから目が離せません。JITCOからは逐次タイムリーに情報発信を
東 京 都 港 区 浜 松 町 1-18-16
して参りますが、JITCOホームページ、賛助会員ポータル、
「かけはし」、メールマ
住 友 浜 松 町ビル 4 階
ガジンとそれぞれの媒体ごとにお届けする情報の鮮度が異なります。賛助会員の皆
様は、より早く情報発信が可能なメールマガジンへのご登録もお願いいたします。
本誌JITCOニュースでもお願いしていますが、
「JITCOホームページ(技能実
習Days)」及び「技能実習生の友」表紙などに掲載する写真を募集しています。
技能実習生の日常の実習活動や研修を受けている様子、また地元行事への参加
や休日の様子など日本での暮らしぶりもホームページや誌面で紹介できれば良い
と思っています。
(O)
24 かけはし 2015.7 Vol.122
企画編集
総務部 広報室
Tel:03 - 6430 - 1166 Fax:03 - 6430 - 1112
E-mail:k o u h o u @ j i t c o . o r . j p
JITCOホームページ http://www.jitco.or.jp/
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