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研修情報誌 HIYAKU 2016/03

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研修情報誌 HIYAKU 2016/03
滋賀県市町村職員研修センター
研修情報誌
2016.3
特集
職場の活性化と職員のモチベーション向上のために
職場の活性化と職員のモチベ
ション向上
特集
管理職に求められる危機管理の心得
特集
第4次市町村職員研修実施計画の検討を終
第4次市町村職員研修実施計画の検討を終えて
研修情報誌
2016.3
CONTENTS
特 集
職場の活性化と職員のモチベーション向上のために
同志社大学 政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授 太田 肇
1
特 集
管理職に求められる危機管理の心得
株式会社田中危機管理広報事務所 代表取締役 田中正博
5
特 集
第4次市町村職員研修実施計画の検討を終えて
研修計画策定委員会ワーキンググループ 座長
甲賀市総務部職員課 人事係長 井上大樹
12
紹介します、
わがまちの研修
彦根市:政策形成能力養成研修
草津市:新規採用職員の育成
彦根市総務部人事課 主事 髙橋恭子
14
草津市総合政策部職員課 主査 黒澤慎史
15
受講者レポート
公務員に求められるもの
∼現任職員(3部)
研修を受講して∼
愛荘町総務課 主査 居嶋晃司
16
いま、行政職に求められるもの
∼創造力・企画力向上研修を受講して∼
湖南市健康福祉部健康政策課 主事 木村静香
17
テーマ「協働」から得た「気づき」
∼政策課題研究を受講して∼
東近江市五個荘支所 主査 松尾法枝
18
内部講師レポート
当たり前のことを当たり前に
∼
「接遇」講師を担って∼
長浜市びわ支所 主幹 鐘居かおり
19
好きこそ物の上手なれ
∼
「半年を振り返って」講師を担って∼
滋賀県後期高齢者医療広域連合総務企画課 主査 棟方達郎
20
地方自治体職員の政策形成能力のスキルアップについて
∼
「政策形成過程と技法」講師を担って∼
大津市消防局通信指令課 係長 中西紀貴
21
3科目 53名の指導者が誕生!
22
平成28年度 おススメの研修を紹介します!
23
職場の活性化と職員のモチベーション向上のために
特集
職場の活性化と
職員のモチベーション
向上のために
同志社大学 政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授 太
田 肇
(平成27年度研修管理者研修 講師)
なぜ、モチベーションが大切か
そこで各地の自治体で活躍している「スーパー
公務員」と呼ばれるような人たちに注目してみ
職場改革を進めるうえで、「モチベーション」
た。すると、そこには共通する三つの特徴があ
は重要なキーワードである。それには二つ理由
ることがわかった。
がある。
第一に、彼らは強制や命令に従って受動的に
第一に、当たり前のことだが人間の行動は、
働くのではなく、自律的・自発的に仕事をして
そのほとんどがモチベーション=やる気にかかっ
いる。
ている。いろいろな制度をつくったり、心構え
第二に、組織の内外から認められる機会に恵
を説いたりしても効果がない場合は、たいてい
まれている。
やる気 を引き出す仕組みが備わっていない
第三に、上司の顔色をうかがい、組織の論理
からである。
を優先するのではなく、住民や社会など組織の
第二に、モチベーションは組織、個人、住民
外を向いて仕事をしている。
(社会)をつなぐキーワードである。 やる気
これら三つはそれぞれが無関係ではなく、相
があるのは本人にとって働きがいがある証拠だ
互に関連している。住民や社会のほうを向いて
し、 やる気 があれば仕事の生産性も上がる。
仕事をしようと思えば自律性・自発性が必要で
それは住民の利益にもつながる。近江商人が好
あるし、住民や社会のほうを向いて仕事するか
んで使ったといわれる「三方よし」が実現でき
ら認められる。いずれにしても、住民・社会の
るわけである。
ために仕事をして、認められ、それがつぎのモ
したがって組織の活性化も、モチベーション
チベーションを生むという好循環が形成されて
に照準を合わせて組織やマネジメントを改革す
いるわけである。
れば方向を誤らなくてすむ。
本稿では、職員のモチベーションを高めるた
めにどうすればよいかを論じることにしよう。
モチベーションアップのポイントは
「自分の仕事」という意識がもてるか
なかでも基本になるのが自律性である。自律
的に仕事ができることとモチベーションはどの
ように関係するのか。
モチベーションを高めるための出発点として、
たまたま上司が出張などでしばらく不在のと
実際にモチベーションが高く、活躍している人
き、責任ある仕事を任された部下が見違えるほ
に注目し、そこからヒントを探るという方法が
ど やる気 を出すことがある。それは、自分
ある。
の判断、裁量で仕事ができるようになり、「自
1
特集
特集
職場の活性化と職員のモチベーション向上のために
分の仕事」という意識が生まれたからである。
に就けるわけだし、その仕事で力を発揮するこ
良きにつけ悪しきにつけ仕事の結果は本人のも
ともできる。また将来の見通しがたつので能力
のと見なされ、成果をあげれば評価や称賛、昇
開発への意欲もわいてくる。自己啓発への投資
進・昇格など有形無形の報酬がついてくる。ま
もできるわけである。
た自分の判断や裁量で成し遂げることによって
その点、わが国では企業も役所もいわゆる「ゼ
自己効力感や有能感、平たくいえば自分の能力
ネラリスト育成」という方針から数年で異動さ
に対する自信がつく。自信がつけば挑戦しよう
せるのが通例であり、将来の見通しがたてにく
というさらなる意欲も湧いてくる。
いという欠点がある。かりに三年で異動するな
仕事の自律性を高めるには、思い切って権限
ら、三年間の計画しかたてられないわけである。
を委譲すること、すなわち仕事を任せることが
しかし、それでもキャリアの切り口を変えれ
必要だ。もちろん、いきなり重要な仕事を任せ
ば、ある程度長期的な展望も描けるようになる。
るわけにはいかない。組織にとってリスクが大
たとえば住民課、広報課、福祉課と異動しなが
きいし、失敗したら逆に本人に自信を失わせる
ら一貫して「住民サービスのプロ」をめざすと
ことにもなるからである。したがって、はじめ
か、税務課、経理課などを経験して「お金のこ
は小さな仕事を任せて成功体験を積み重ねさせ、
となら誰にも負けない」といえるような職員を
徐々に大きな仕事を任せるようにするとよい。
めざすことができる。
仕事のやり方を本人の裁量に委ねるためには、
さらに、組織の枠を超えたキャリア形成もあ
仕事の成果で管理しなければならない。成果の
る。これからは公務員といえども定年まで一か
みで管理するのはよくない場合もあるが、でき
所で働き続けるのが当たり前とはいえなくな
る限り仕事の「川下」すなわち自分の役割をしっ
るだろう。自治体間、国と地方、それに役所と
かり果たしているか、成果をあげているかどう
民間との間での転職や、役所で経験を積んだり
かに注目することが必要だ。それによって残業
資格を取ったりして独立する人は増えてくるは
や休暇取得などもある程度自分で調整できるよ
ずだ。
うになり、ワークライフバランスが向上し、さ
それは、本人にとってはもとより、役所にとっ
らなる意欲向上にもつながる。
ても住民にとってもマイナスになるとは限らな
また、自律的に仕事ができるかどうかは、本
い。将来の転職や独立をめざして やる気 を
人の意思や心構えにも左右される。上司や同僚
出せば、仕事の生産性も上がるからである。実
と相談しながら仕事を進めるにしても、自分な
際、民間企業でもスピンアウトしての起業や「の
りの仮説を立て 自分なりに創意工夫をする姿
れん分け」を目標にしている社員はモチベーショ
勢があれば「やらされ感」は小さくなるはずだ。
ンが高く、待遇と無関係に働くといわれる。
長期的な見通しがたつか
も視野に入れたキャリアカウンセリングを行っ
もう一つ見落としてはいけないのが、キャリ
ているところが多い。わが国でも転職や独立を
アの自律性である。キャリアとは時間軸でとら
選択肢の一つに加えてキャリア形成を行うべき
えた職業生活であり、自分でキャリアを設計し
時期に来ているのではなかろうか。
形成できるかどうかは、モチベーションに大き
くかかわってくる。
2
ちなみに欧米の役所では、将来の転職や独立
上手にほめるとモチベーションが上がる
キャリアを自分で設計・形成できれば、それ
つぎに「組織内外から認められる」ことにつ
だけ自分の好きな、あるいは自分に適した仕事
いて考えてみよう。
職場の活性化と職員のモチベーション向上のために
人間には、承認願望すなわち「認められたい」
ほめる場合にも、ほめ方によっては効果がない
という気持ちがある。承認は仲間として受け入
ばかりか、相手にプレッシャーを与えたり萎縮
れられたことを意味するだけでなく、さまざま
させたりして逆効果になることがある。効果を
な欲求の充足や自信にもつながるからである。
あげ、なおかつ弊害を防ぐためには、できるだ
いちばん身近な承認は、上司からほめられた
け具体的・客観的な事実に基づいてほめること、
り、認められたりすることである。
相手の行動や成功体験と連動させること、相手
私は2008年から公務員、民間企業の社員、病
の成熟度に合ったほめ方をすることなどがポイ
院の看護師、学校の生徒などを対象にほめたり
ントである。
認めたりすることの効果を実証する研究プロ
承認の効果は、相手の態度や行動に表れるだ
ジェクトを行っている。その結果、承認にはモ
けではない。承認のプロジェクトを通して上司
チベーションを直接・間接に高める効果のある
の評価能力が養われたとか、上司と部下の人間
ことが明らかになった。
関係や職場の空気もよくなったという声が聞か
ある公益企業で行った研究では、上司による
れた。さらに民間企業では、顧客のアンケート
承認が部下の内発的モチベーション(仕事の楽
や顧客から届いた感謝の声に基づいて社員を表
しさ、仕事への情熱などによる動機づけ)や自
彰しているところがあるが、それによって顧客
己効力感を高めることがわかった。また別の会
との関係にもよい影響が表れているという。
社で行った研究では、社員の挑戦意欲、会社に
役立っているという自信、それに評価への満足
住民からも「認められたい」
度を高める効果も確認された(拙著『承認とモ
公務員はとくに承認に対する願望が強い。と
チベーション』同文舘出版、2011年)。
りわけ市民や社会から認められたいと思ってい
もっとも、ただ承認すればよいというわけで
る人が多い。
はない。
地方公務員の中には市民や地域のために貢献
平成27年度研修管理者研修では、
「職員研修と人材育成」について講義をしていただきました。
3
特集
特集
職場の活性化と職員のモチベーション向上のために
したいという動機で就職した者が少なくない。
ときか?」と聞いてみた。すると興味深いこと
そして、市民から感謝され、認められることに
に、国内・国外、上司と部下本人のいずれも、
「プ
よって貢献した、役だったと実感できる。
ロジェクトに参加したとき」と答える者がとて
また地方公務員の多くは地元出身者であり、
も多かった。同時に、プロジェクトを通して成
親や親類、同級生や知り合いなどが地元に住ん
長したと振り返りながら語る者もたくさんいた。
でいる。それだけに彼らの目に映る自分の仕事
組織内外のプロジェクトに参加するとモチ
ぶり、地位などを強く意識する傾向がある。
ベーションが上がる理由はいくつかある。
したがって、職員が市民や社会のために貢献
まず、プロジェクトは目標がはっきりしてい
し、それによって市民から頼りにされたり、尊
て目に見える。また、命令や上意下達ではなく
敬されたりするような仕組みをつくれば彼ら
メンバー間の自然な協力によって仕事が進めら
のモチベーションを高めることができるわけで
れるので、個人の自律性が高い。さらに、多様
ある。
なメンバーと一緒に仕事をするなかでいろいろ
たとえば個人に裁量権を与えるとともに、で
な刺激を受ける。そしてメンバー同士が相手の
きるだけ個人の名を出して仕事をさせるとよ
個性や能力を認め合う。
い。これまで「公務員は黒子でなければいけな
このように、プロジェクトには人を動機づけ
い」というような観念があったが、責任感をも
る条件がそろっているのである。業務のアウト
たせるためにも、 やる気 を引き出すためにも、
ソーシングや業務の複雑化、急速な環境変化に
これからはむしろ積極的に個人の名を表に出す
ともなって民間企業ではプロジェクトベースの
べきだろう。
仕事が増えている。自治体でも行政と民間、第
また、できるだけ市民の中に入って市民と一
三セクター、NPO などが一緒にチームを組ん
緒に問題解決させるようにしたほうがよい。そ
で仕事をするケースが目立つようになった。職
うすれば市民から承認される機会が増えるし、
員を育成し、モチベーションを高める場として
自然と市民感覚や市民のニーズもつかめるよう
もプロジェクトを積極的に活用し、参加を後押
になる。インターネットやパソコン、スマホな
ししてやってほしい。
どが普及した現在、多くの仕事は役所にいなく
てもこなせるようになった。職種や仕事内容に
よっては普段から市民の中に入って仕事をし、
必要なときだけ役所で執務するという就業スタ
イルが広がっていくかもしれない。
プロジェクトに参加する機会を
ところで国内外の役所で、上司と部下本人の
それぞれに対して、
「やる気が出たのはどんな
▌講師プロフィール
太田 肇 〔同志社大学 政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授〕
公務員を経験の後、滋賀大学経済学部教授などを経て、2004年から同志社大学教授。専門は、組織論。著書は「個人を幸福にしない日
本の組織」
(新潮新書)、「公務員革命」
(ちくま新書)など多数。講演活動も自治体、民間を問わず、これまで約1,000回を超え、当研修セ
ンターでも、平成18・27年度の研修管理者研修に登壇されている。
4
管理職に求められる危機管理の心得
特集
管理職に求められる
危機管理の心得
株式会社田中危機管理広報事務所 代表取締役 田
中正博
(平成27年度1DAY セミナー「事例に学ぶ管理職の危機管理」 講師)
このため、ストーカーの被害者女性の住所が漏
不祥事を招く「3つの原因」を知る
洩し、ストーカー殺人事件を招いてしまいまし
不祥事が10件起きるとすれば、その原因も10
た。この課の課長以下の管理職は、なぜ誰一
通りあると言えます。しかし、これまで2,000
人、ログイン状態になっていることに疑問を抱
件を超える官民の不祥事のコンサルティングを
かなかったのでしょうか。「多分、大丈夫だろ
してきた経験から言えば、次の3つが最も多い
う。うちの役所にはそのような問題は起きない
ことに気づきました。
だろうから…」という甘い認識だったのでしょ
第一は、
「多分、大丈夫だろう…」という『甘
う。そもそも管理職の職務とは「自分の職務」
い認識』です。
をしっかりと務めることにあります。当然、納
「まさかこんな事になるとは思わなかった」、
税課という重要な個人情報を扱う職務である以
「あの時は多分、大丈夫だと思った」という述
上、終日ログイン状態であることに疑問を抱き、
懐を異口同音に聞かされました。なぜそう思う
部下に注意して、ルールに沿った手順で職務を
のか?…その理由は「経験」と「仕事の慣れ」
果たすよう指導しなければなりません。「多分、
です。
大丈夫だろう…」と思った時には、想像すらし
入庁して1、2年目の職員は、わからないこ
なかった思いがけない危機が後から迫ってくる
とや迷ったことがあれば、必ず先輩や上司に聞
…と認識し、自戒し、部下を指導することが大
いて仕事をします。そこで、おのずとダブル
切です。
チェックが入ります。ところが、10年も経つと
第二は、
「前からやっていることだから…」
役所の仕組みや、チェックシステムがわかって
という『甘い判断』です。
しまうため、つい気が緩んで「多分、大丈夫だ
役所には、民間企業に比べると「前例」や「慣
ろう」という思いが生まれる訳です。勤めて20
例」で判断しているケースが多くみられるよう
∼30年も経てばなおさらです。
です。著名な弁護士である久保利英明弁護士
ある市役所の納税課では、パソコン端末が終
は、「役所の慣例と前例はローカルルールに過
日ログイン状態になっており、納税課の職員の
ぎない」と指摘しています。つまり、誰か外部
誰もがパスワードを使うことなく、自席からも
の人が「これはおかしいのでは?」と疑問を抱
データを引き出すことが常態化していました。
き問題になると、「前例」や「慣例」で行って
5
特集
特集
管理職に求められる危機管理の心得
平成27年度1DAYセミナー「事例に学ぶ管理職の危機管理」では、田中先生の講義に受講者が熱心に聞き入りました。
6
きたことに、コンプライアンス違反の恐れが出
輩、後輩意識」が強くなりがちです。
てくるということです。以前、「プール金」と
コミュニケーション上から見れば申し分ない
か「預け」として、役所では何の疑問もなく行
のですが、逆に「人間関係のしがらみ」が生じ
われてきたことが表面化し、大問題になってそ
やすくなります。この「しがらみ」が不祥事を
の姿を消したことはその代表的事例です。
招く温床になりがちです。
管理職は、前任者からの「申し送り事項」が
退職したかつての上司がコンサルティングの
いろいろあろうかと思いますが、必ず「自分の
会社経営をしていて、元の職場の部下(今は係
職務」から見直して、是々非々で対応すべきで
長になっている)のところにやって来ては、役
す。決して唯々諾々と「ハイ、承知しました」
所の人事について詳しい話をする。このため、
とすべてを安易に引き継いではなりません。
「歴
係長は自分の人事に影響するかもしれないと思
代の課長、管理職が3代さかのぼって処分され
い込み、やってはいけないこととは知りながら
た」という報道に接することがありますが、こ
入札情報を教える関係になってしまった。結果
れも「安易な引き継ぎ」に潜むコンプライアン
的に、この元上司が起訴され、この係長も処分
ス違反に気づかなかったためです。
されることになりました。役所の人間関係で気
第三は、『誤った仲間意識』です。
を付けるべきはこの「しがらみ」であり、これ
市役所の職員は、地方転勤もなく、同じ職場
で身の破滅を招くケースが少なくありません。
内で勤務している関係上、同規模の社員数がい
特に管理職は、元上司に巻き込まれないよう、
る民間企業に比べて、どうしても「仲間意識」
「先
また元部下を巻き込まないよう、気を付けなけ
管理職に求められる危機管理の心得
ればなりません。「しがらみ」とは、一度関わ
違法行為だとは知らなかった」という人はいま
りを持ってしまうと容易に断ち切れない危険性
せん。共通する心理はただ一つ、「誰も見てい
があるからです。
ないだろう」、「誰にもわからないだろう」から
起こしてしまいます。
「魔が差した」というの
危機予防に重要な3つの意識
はすべてこの「誰も見ていないだろう…」とい
危機の原因がわかったところで、危機の未然
う 悪魔のささやき に誘惑されたからにすぎ
予防に重要な『3つの意識』を説明します。
ません。この 悪魔のささやき に負けないた
危機の予防では『知識よりも意識』の方がは
めには、
「誰かが見ている」という意識を持つ
るかに大事になります。なぜなら、公務員倫理
ことがベストの予防策になります。
やコンプライアンスの無知から不正行為や手抜
管理職の方々は、職場にこの意識を常に意識
きをする人はいないからです。
づけるよう心掛けることが大切です。
第一は、常に「ちょっと変だな…?」、「本当
第三は、危機管理は「自分の生活を守るため」
に大丈夫かな…?」という疑問の意識を持って
という一人ひとりの職員の意識です。
あらゆる事象に接することです。
「危機管理」という言葉の中の「管理」とい
ある市役所で、公用車の廃車処分を担当して
う言葉が「管理職のやることでは?」というイ
いる経験豊富な職員が、課内会議で『今使用中
メージを職員に与えがちでしょう。そこで、
「危
の2台の軽自動車は非常に故障が多い、いつ人
機管理」は、管理職の専従業務ではなく、一人
身事故を起こすかわからないから廃車にすべき
ひとりの職員にとって、自分と自分の家族の生
だ」と提案しました。役所の規定では「走行距
活を守るために重要な「自己管理」の一つで
離」と「使用年数」から廃車基準が決まってい
あるという意識に切り替えさせなければなりま
たのですが、上司は、2台とも廃車の規定に該
せん。
当しなかったにもかかわらず、
「人身事故が起
公務員の不祥事に対する市民の批判意識が極
きたら大変だ」と思ったのか、この提案を許可
めて高いため、職員の不祥事に対する処分は厳
し、廃車処分にしました。しかし、この職員は
しくなっています。目先のわずかな利得のため、
廃車した2台を業者から買い戻し、さらにイン
ちょっとした気のゆるみから、一生を台無しに
タネットで競売にかけて10数万円、稼いでいた
するような結果を招かないようにしなければな
ことが後で露見しました。この上司が「役所
りません。
の規定に満たないのに2台とも故障の連続?
ちょっと変だな?すぐに販売会社に点検を依頼
不祥事防止のための管理職の心得
しろ」という指示をしていれば、この不祥事は
職員が不祥事を起こす原因の一端は管理職に
防止できたはずです。
ある…、これまでの数多くの経験から私はこう
第二は、常に「誰かが見ている」、「誰かに見
断言しています。職場の不祥事防止のために、
られている」という意識を持つことです。
管理職は日頃、どのようなマネジメントを心
着服、横領、手抜き、パワハラ、業者との癒着、
掛けたらいいか、そのポイントについて説明し
飲酒運転、万引き、盗撮などいずれも「それは
ます。
7
特集
特集
管理職に求められる危機管理の心得
長は「上司は、今年の申請人数が急に増えたこ
①管理職は、部下の仕事に関心を示し、声をか
けること。
となど、自分の日々の仕事に関心を持ってい
た」ことに気づき、「申請人数が、前年比約2
これがなぜ、不祥事防止に役立つのか?その
倍の200名を超えたこと、その内90名余りが却
理由は、上司が「自分の仕事に関心を持ってい
下されたこと、これからその90名に連絡をしな
る」と感じた職員は、間違いなくモラルアップ
ければならないこと、必ずクレームが起きるこ
します。そして、もっと上司に評価されるよう
と、それを思うと頭が痛い…」などと説明する
な仕事をしようという前向きの気持ちになりま
ことでしょう。それに対して「そうか。それは
す。逆に、上司が「自分の仕事に関心を持って
大変だね。しかし、役所は基準に基づいて判定
いないのでは?」ということを何かの拍子に気
したのだから、そこはきちんと説明しないとね。
」
づいた職員は、その瞬間からモラルがダウンし
と伝えながら、さらに「もし、どうしても納得
ます。さらにモラルハザードから手抜きや誤魔
してもらえないようなクレームが来て困り抜い
化しをするようになります。
た場合には、私の方に回してもらって構わない
「まさか、あの職員がこんなことをしていた
よ。私からもきちんと説明してあげるから」と
なんて…」といった上司の述懐がマスコミ報道
一言声を掛けたらどうでしょうか。
で見かけますが、部下への日頃からの目配り、
「そうですか。それではお願いします」と即
気配りの欠如を自ら認めているようなものです。
座に上司の手助けにすがる係長はいないことと
管理職の職務とは、日頃から360度の角度で
思います。
「ありがとうございます。でも、こ
部下の仕事ぶりをウオッチし、ケアし、サポー
の仕事は毎年私が担当している仕事ですし、人
トし、アドバイスし、注意し、指導し、チェッ
数は90名以上ですが、何とか頑張ってみます」
クし、管理することです。
と意欲を見せることでしょう。
ある市役所のことです。障害者手帳の申請を
こうした「上司の一言」が、不祥事の未然防
担当している係長が、申請を却下された市民約
止に非常に重要なのです。
90名に対して結果の連絡をしないまま、その書
類を自分のロッカーの上の段ボールに入れて放
8
② ABC の視点からマネジメントすること。
置し、やがて問い合わせが殺到してきて初めて
前述しましたが、管理職は、360度の角度から、
上司の知るところとなった不祥事がありました。
部下の仕事をウオッチし、ケアすることが大切
理由は「申請却下の電話連絡をすると、なぜ認
ですが、何から何まで口出しするのは禁物です。
められないのか!というきついクレームを必ず
「うちの上司はさすがだな。ポイントを的確に
受ける。今年は、それが90名もいることで心理
把握し、ピンポイントで的確なアドバイスをし
的な重荷になっていたため」ということでした。
てくれる」と、尊敬され、憧憬の念を持たれる
もし、上司である課長補佐が、係長に「そろ
マネジメントが大切です。それが次の ABC か
そろ、今年も障害者手帳の申請の判定時期に
らのマネジメントです。
なったね。今年は何通の申請があったの?前年
A =アドバイス(助言)
比ではどうだった?」などと声をかけます。係
部下の仕事ぶりを見ていて、なにか困ってい
管理職に求められる危機管理の心得
る、迷っているように感じたときに、さりげな
話を説明しておくから、後で先生の事務所にも
く「頑張っているようだけど、どうした?」と、
らいに行けばいいよ」と付け加えます。ここで
ひと声掛けます。部下がその声に気づいて「今、
のバックアップとは、このように「言動」を伴っ
企画 A を作成中ですが、データ B がなくて弱っ
た指導を指します。これによって部下は、上司
ているところです。B があれば、企画 A の説得
に対して感謝の気持ちと畏敬の念を抱くことで
力がもっと高まるのですが…」と相談を持ちか
しょう。このように、知識と経験と人脈をもっ
けます。それに対して「それなら、市会議員の
ているのが管理職です。「必要なときに」
、「必
○○先生が3年前にライフワークとして全国の
要な情報」を「的確に」部下の指導に活かすよ
同規模自治体の B に関する資料を集めていたよ。
うにしてください。
3年前のデータでも大筋の動向は把握できるは
C =コンサルティング(相談に乗る)
ずだよ」とアドバイスします。これで、若い部
部下からの相談内容は、多種多様あるはずで
下にとって、仕事が一気に効率化することにな
す。その場合、部下の話は必ず「傾聴」する姿
るでしょう。
勢が大切です。「傾聴」とは、相手の話を途中
B =バックアップ(手助け)
で遮らない、相手の目を見ながら聞く、話の内
さらに「君は B 先生とは面識がないだろう。
容次第では相づちを打ちながら聞く、この3点
私は昔から知っているので、先生に一言、今の
がカギになります。
研修では、受講者が職員役と記者役に分かれて、模擬記者会見を行いました。
9
特集
特集
管理職に求められる危機管理の心得
聞いた後「君の要望(言い分、提案など)は、
要があります。
確かに 一理 あるね」と応答するのが肝心で
す。この一言で、部下は「上司が自分の話を聞
①「一何の原則」と「 30分ルールで報・連・相」
いてくれた」という印象を抱きます。その後で
「一何の原則」とは、初代の内閣安全保障室
「Yes,but…」話法で、できない理由をきちんと
長の佐々淳行さんが言った言葉で、「5W 1H」
説明するのですが、「結果は NO」であっても
の中の「WHAT(何)
」を指し、一つの異変が
部下に「納得感」を与えられます。部下とのコ
現場で起きた場合は、すぐ上司に報告せよ、と
ミュニケーションを取るうえで欠かせない上司
いう意味です。私はこの法則に30分ルールを更
としての応答の心得です。上下のコミュニケー
にプラスしました。市長の耳には30分以内に現
ションが取れている職場では、不祥事は起きに
場の危機情報を入れる意識を、日頃から組織の
くくなります。
中に浸透させておかねばなりません。
ちょっとした問題でも今は SNS であっとい
③
「性悪説」の視点を忘れないこと。
う間に拡がります。外部から問い合わせが入っ
組織運営には、どうしても「性悪説」の視点
た場合に市長が知らなかったとすると、相手(議
が欠かせません。性善説で済むなら、ルールも
員やマスコミ記者)はどう思うか考えて下さい。
管理もチェックも要りません。「ちょっと変だ
「外部の我々にもすでに情報が入っているのに
な?」、
「本当に大丈夫かな?」という気持ちを
市長が知らないとは…」と、役所の危機管理体
持つよう前述しましたが、まさに「性悪説の視
制に疑惑と批判が生まれます。一方、わずか5
点」とはこれを指します。
分の差でも先に情報が入っていれば、市長は「す
某社の製品検査を担当した専門の検査協会は
でに我々もその情報はキャッチしております。
「我々は性善説に立っていた。まさか、テスト
今、事実関係を確認するために、ただちに職員
のデータがねつ造だったとは知らなかった」と
を現場に急行させております。
」、「保健所にも
いう趣旨のコメントを出していましたが、では、
連絡しております。
」
「いずれ1時間以内にはもっ
この検査協会は何を検査していたのでしょうか。
と詳しい情報が入ると思います。
」などと答え
管理職の職務については前述しましたが、
「管
ることができます。聞いた相手は「もう市長か
理し」
、
「チェックする」ということは、
「性悪説」
ら指示が現場に出ている。さすがだ」と捉えて、
に立った視点を持たないとミスや不正を見逃す
疑惑も批判も生まれないはずです。
ことになります。
②部下の報告に「5W1H」を求めてはいけない。
危機発生時の初期対応の心得
10
危機発生時は、「5W 1H」はまだわからな
消火活動と同様に、職場の危機発生時は初動
いのが普通です。にもかかわらず、第一報を知
対応行動が非常に重要です。しかし、めったに
らせた部下に「そんな曖昧な情報では判断でき
経験しないために、最初の段階でつまずいてし
ないからもっと詳しく報告しろ」と上司が部下
まうケースが少なくありません。そこで、初動
に求めるのは失敗の元です。上司が「5W 1H」
対応の要点をしっかり職場に浸透させておく必
を求めると、部下はそれを把握するまで報告し
管理職に求められる危機管理の心得
ないため、結果的に対応が後手に回ってしまう
定」は、役所の意思だからです。役所の信頼の
からです。
失墜はマスコミ報道によって拡大されるのです。
したがって、今わかっている事実関係をすぐに
③部下からの報告には「わかった」、「ありがと
公表することが大事です。
う」を伝える。
この一言で、部下は「肝っ玉の据わった上司」
、
「責任回避をしない上司」という印象を持ちま
⑥「市民がどう見るか」という視点から判断す
ること。
す。
「ありがとう」の意味は、「一何の原則でよ
役所の危機とは、市民(社会)とかかわりが
く報告してくれた」という気持ちを表し、部下
生じるから危機になるのです。市民とかかわり
には「この上司には迷惑を掛けられない」とい
がない場合は、それは役所内の問題(人事問題
う気持ちを湧かせます。
や職場内の問題)に過ぎません。したがって、
何か問題が起きた場合は、役所の視点から判断
④問題を起こした部下をその場で絶対に叱らない。
するのではなく、常に「市民の目線」から判断
叱りたい気持ちはわかりますが、叱ると部下
することが大切です。「手続き上、問題ないの
は一番肝心な事を言わなくなります。議会に報
だから」、「法的には問題ないから」と役所サイ
告し、記者会見した数日後に「実は本当の理由
ドに立った対応が、思いがけない社会からの反
が判明した」場合、組織ぐるみで隠ぺいを図っ
発や抗議の対象になることがあります。常に「市
たのではと大問題になることがあります。大事
民の目線」を忘れずに判断の一端に入れること
なのは解決すること。処分するのと叱るのはそ
が大切です。
の後でいくらでもできます。
⑤
「公表の遅さ」でマスコミに批判されないこと。
マスコミは公表の遅さを非常に問題にします。
あわよくば隠ぺいしようとしたのではないか、
また、もし公表が早ければ第二、第三の被害は
避けられたのではないか、もしくはそもそも組
織としての危機管理意識がないのではないか、
こういった理由で問題を起こしたことよりも、
公表の遅さを大批判します。
「公表の時期の決
▌講師プロフィール
田中正博 〔株式会社田中危機管理広報事務所 代表取締役〕
1962年早稲田大学文学部卒。同年(株)電通 PR センター(現・電通パブリック・リレーションズ)入社。同社常務取締役、専務取締役、
顧問を経て、2010年から現職。緊急記者会見、クレーム対応、欠陥商品問題、訴訟問題、企業不祥事など、これまで2,000件を超える危
機管理コンサルティングに従事。民間企業をはじめ、中央官庁や全国の自治体で「管理職の危機管理必須心得」などのテーマで講演や実
践的な管理職研修に携わる。
11
特集
特集
第4次市町村職員研修実施計画の検討を終えて
特集
第4次市町村職員研修実施計画の
検討を終えて
研修計画策定委員会ワーキンググループ 座長
甲賀市総務部職員課 人事係長 井 上 大 樹
が一時的に発生し、急ぎ組織変更や人員確保が
はじめに
必要になる事態も生じています。一方で財政事
研修センターでは、現行の第 3 次研修実施
情の悪化や組織のスリム化のため、地方自治体
計画(平成24∼28年度)後の研修のあり方を
の職員数は全国的にも、また滋賀県内において
検討するため、市町の研修担当課長で構成さ
も年々減少し続けています。
れる第4次研修実施計画策定委員会を立ち上
また、ワーク・ライフ・バランスの推進や職
げました。
場における女性の活躍に関し積極的に取り組む
さらに、その下で具体的に実務を担うため、
ことについて、国から民間企業や地方自治体に
各市町研修担当者によるワーキンググループ
対して要請があり、今後は今までの長時間労働
を設け、第 4 次計画策定に向けて人材育成に
を前提とした働き方を社会全体で見直す動きが
関する課題等について議論を尽くしていただ
活発になり、事務事業の一層の効率的な執行が
きました。
求められると思います。
今回は、ワーキンググループの座長を務め
られた甲賀市の井上さんに、その取り組みに
ついて報告していただきました。
現状を振り返って
平成12年に地方分権一括法が施行されて以
こういった状況の中で、私達市町で働く職員
が等しく身につけなくてはいけない能力や意識
とは何なのか、ワーキンググループで考えるこ
とにしました。
第4次研修計画について
降、地方自治体が独自の施策を行えるように
地方自治体は多くの種類の事務事業を行って
なったことで、昨今では地方自治体は人口減少
おり、事務事業ごとに必要な知識や能力は異な
問題や地方創生などに関す
る新たな施策を展開してお
り、自治体職員が行う事務
事業の種類や量は増える傾
向にあります。
また、市町においては国
や県からの業務が移譲され
ることでこの傾向は一層顕
著 に な っ て い ま す。 さ ら
に、臨時給付金の支給やマ
イナンバー制度実施など国
の施策によって多量の業務
12
第1回ワーキンググループ会議
第4次市町村職員研修実施計画の検討を終えて
会議では、グループワークを行い、活発に意見が交わされました。
ります。こうした中で、地方自治体職員の多く
特にラインケアに関する科目を、課長補佐級に
は、定期的に異動するため、おのずと必要な知
は管理職としてのコンプライアンスやハラスメ
識や能力は変わることになります。このような
ント防止に関する科目を設け、さらに、部次長
状況で職員が等しく身につけていないといけな
級の職員を対象にトップマネジメント研修を新
い能力は何なのか?
設しました。
そこで、この研修計画では、これを『コミュ
ニケーション能力』としました。
『コミュニケー
これからすべきことは
ション能力』の向上は、以前から積極的に行わ
第3次計画に引き続き、職員の能力等の向上
れていますが、前述のとおり、今後ますます地
を図るための十分な研修計画ができたと思って
方自治体に求められるニーズが多様化する中、
います。
事務事業の効率的な処理方法や新たな担い手を
ただ、能力等が向上するために最も大切なの
模索し、効果的な実施方法を見つけ出したり生
は、職員の仕事に対する意欲、いわゆる『やる
み出したりするためには、組織内での報告・連
気』だということを、今回研修計画の策定に携
絡・相談をはじめ、関係団体との折衝・調整や
わらせていただく中で改めて認識させていただ
市民対応をスムーズに行うことの重要性は年々
くことができ、非常にありがたく思っています。
増していくと思います。
今後は、人事評価を活用し能力や自己研鑽意欲
このため、入庁当初からコミュニケーション
の向上を図ることもひとつだと考えていますし、
が大切という意識を職員の皆さんに持ってもら
複線型人事を充実することで職員の主体性を高
うため、新たな研修計画では現任職員(1部)
めることも効果的ではないかと考えています。
研修において、現在は選択科目の1つとしてい
最後になりましたが、研修計画策定にあたり
るコミュニケーションを必須科目とすることに
市町村職員研修センターの皆様、ご多忙の中熱
しました。
心に議論、検討いただきました各市町の担当職
コミュニケーションの他には、各役職に応じ
員の皆様には大変お世話になりました。末筆な
た能力と役割意識を高め組織力の強化を図るた
がら、感謝申し上げます。
め、係長級にコスト意識向上とメンタルヘルス、
13
特集
紹介します、わがまちの研修
紹介します、
わがまちの研修
彦根市
県内の各市町では、健全な人材育成のため研修担当者さんが日々がんばっておられます。
今回は、そんな特色あふれる取り組みについて、お二人からお話を伺いました。
政策形成能力養成研修
彦根市総務部人事課 主事 髙
橋恭子
■ この研修を始めたきっかけは?
新任係長職を対象(彦根市の場合)とした「政策形成能力
養成研修」は、彦根市・愛荘町・豊郷町・甲良町・多賀町の
1市4町で形成している「湖東定住自立圏」における職員交
流事業のひとつとして、平成22年度以降毎年実施しています。
それ以前は、本市のみで約10年間継続して実施していました。
■ 研修の内容を教えてください。
成果発表会
本研修では、職員の政策形成能力の向上を目的に、政策形成の理論および実施手法の概論について
学び、7月から約半年間のグループ研究を通じて政策立案過程を習得し、成果発表会において政策提
言を行います。
政策形成能力については、彦根市人材育成基本方針(平成26年3月策定)において、職員に求めら
れる能力の最上位に位置づけ、重点的に育成を図らなくてはならないものとして重要視しています。
また、係長級職員に求められる大きな役割の一つに、業務の実行計画を立て遂行し、必要な政策立案
を行うことがありますので、この研修は、その力を養成する場となっています。
なお、今年度は、受講者数25名、1グループ当たり5∼6名の4グループで実施しました。
■ この研修のよかったことや工夫していることはありますか?
事前に研究テーマの希望調査を行い、できる限り似かよっ
た研究テーマを希望する職員同士が同じグループになるよう
にしています。このことは、研究テーマに関して、より深く
探求できるようになることや研究に対するモチベーションを
維持することにつながっていると考えています。
また、採用後3年間と係長級昇任直後を二大集中育成期間
としており、市独自または他市町の職員合同で研修を受講す
グループ研究の様子
る機会を多く設けています。この研修でも、同年代、同じ役
職もしくは近隣で働く職員同士で交流を深めて、互いに啓発し合う貴重な機会となっています。
■ 人材育成への思いを伝えてください!
研修に参加することで、業務における専門性や幅広い知識を、職場を離れて集中して学ぶことがで
きます。
また、担当講師の話には、自分自身の生き方や仕事に対する姿勢に影響を与えてくれるようなヒン
トが隠されていることがあります。
このような機会を逃すことがないように、より多くの職員に研修の機会を提供し、職員の人材育成・
能力開発に貢献していく所存です。
14
紹介します、わがまちの研修
草津市
新規採用職員の育成
草津市総合政策部職員課 主査 黒
澤慎史
■ 育成方針について教えてください。
本市も他市町同様、急速な世代交代が進むなか、知識と技
術の確実な継承が必要となっていることから、特に新規採用
職員の育成については、採用後半年に渡って定期的な集合研
修を行い、その育成を支援しています。
■ 具体的な研修の内容を教えてください。
● 水防訓練[5月]
水防訓練
本格的な梅雨シーズンを目前に控え、水害の未然防止と軽減を図るため、市職員のほか、消防署、
消防団等と連携し、有事の際に、適切かつ的確に対応できる技術の習得を図るため、毎年5月に訓練
を行っています。
この機会を新規採用職員の体験型研修として位置付け、市民生活の安全を確保するという公務員と
しての使命を強く認識させ、積極的に行動できる職員の育成を図っています。汗を流しながら、土の
うを運ぶ頼もしい姿が見られます。
● キャリアデザイン研修[6月]
人事制度について学ぶ機会と併せて、これまでの経験・体験を振り返り、 人生のグラフ を書いて
もらいます。過去の転機や今いるステージを再認識し、これからの節目を考えることで、自分の将来
像をイメージし、自立的かつ積極的に取り組む意識を育みます。
また、この研修を通じて 自己を語る ことにより、同期の絆も深まっていきます。
● グループワーク研修[8月]
現任職員
(2部)
研修のような、グループワークによる政策提案(発表)です。5か月で吸収し、培っ
た知識と能力をフル活用して、市の強みと弱みの分析や、市の課題や方向性について検討し、草津市
の未来について模造紙やパワーポイントを使って、発表してもらいます。3時間という短い準備時間
ですので、全員必死になって取り組んでいます。
■ 人材育成への思いを伝えてください!
平成25年度にワークショップ・ファシリテーター養成研修を受講して、受講者レポートを寄稿した
縁もあり、平成26、27年度の2年間、職員研修担当として人材育成に携わっています。
今年の研修では、「1.01の法則、0.99の法則」を取り上げました。1.01の365乗(日)=37.8となり、0.99
の365乗
(日)=0.03となります。これは、毎日コツコツと努力すれば、やがて大きな力となる一方、少
しずつ怠ければ、やがて力がなくなっていくことを表しており、積極的に学ぶこと、努力することの
大切さを伝えています。
担当した2年間で、92名の新規採用職員をそれぞれの職場へと送り出しました。みんなには、大き
く飛躍できるようさらなる努力を積み重ねてほしいと思いますし、研修担当者として、職員がより輝
けるようさらなるサポートをしていきたいと思います。彼らの努力は、まだまだ始まったばかりです!
15
受講者レポート
受 講 者レポート
公務員に求められるもの
∼現任職員
(3部)
研修を受講して∼
愛荘町総務課 主査 居
今回、現任職員(3部)研修で、
「政策法務概
ないという、
「行ってはいけないこと」を行わ
論」
「メンタルタフネス」
「公務員倫理(JKET)
」
、
ないことだけではなく、住民の信頼を高めるた
選択科目として「コミュニケーション」につい
めに、
「行うべきこと」を行うことが必要であ
て、3日間学ぶ機会をいただきました。すべて
るということを学びました。また、公務員が不
において、私たち公務員が住民から信頼を得る
祥事を起こすと自分一人の問題では済まされな
ためには必要不可欠なものばかりであり、これ
い、家族や職場に多大な迷惑をかけることになっ
らの知識や能力を得るために受講しました。
てしまうことも再認識させていただきました。
「政策法務概論」では、地方分権の推進によ
今回の研修で公務員倫理について考え、グ
り、各自治体で判断が求められるようになって
ループワークを通して意見交換を行いましたが、
きました。各自治体が抱える独自の問題や住民
倫理観を高めるには、倫理的に正しいと思う行
のニーズに応える為には、職員一人ひとりが政
動を考えるだけではなく、実践して初めて意味
策法務能力を身につける必要があると考えます。
のあるものだということを教えていただきまし
政策法務能力が乏しければ問題を解決すること
た。今後は、より一層公務員であることを意識
が出来ずに住民の信頼を失います。その結果、
し仕事をしていきたいと思います。
良好なまちづくりができないことに結びつくの
「コミュニケーション」では、相手に納得し
ではないかと思いました。適切な政策法務能力
てもらう交渉術について教えていただきました。
を身につけ政策を実現していくことが現在の公
交渉において大事なことは笑顔や共感であり、
務員に求められていることだと感じました。
相手との信頼関係を築くことが重要であると感
「メンタルタフネス」では、ストレスの要因
じました。すぐに実践することは難しいとは思
や様々なストレスに対する対処方法、職場での
いますが、日頃から業務の中で意識していきた
コミュニケーションについて学びました。職場
いと思います。
でのコミュニケーションでは、自分の中で悩み
最後に、この研修を通して公務員に求められ
を溜め込まないで人に話すことで気持ちが楽に
ているものは何かを再認識することができまし
なり、新しい解決方法が見つかることもあると
た。今回の研修で学んだことを実践し、住民や
いうことや、相手の話を意識して聴くというこ
職場から信頼される職員を目指していきたいと
とがコミュニケーションの中で大事であるとい
考えています。今回このような貴重な研修に参
うことを教えていただきました。今後、業務の
加させていただき、ありがとうございました。
中で様々なストレスを感じることもあると思い
ます。その時は、今回の研修で学んだことを思
い出し対応していきたいと思います。
「公務員倫理(JKET)」について、この研修
を受ける前は、公務員倫理とは単純に不祥事を
起こさないことであると考えていました。しか
し、この研修で公務員倫理とは不祥事を起こさ
16
嶋晃司
受講者レポート
受 講 者レポート
いま、行政職に求められるもの
∼創造力・企画力向上研修を受講して∼
湖南市健康福祉部健康政策課 主事 木
村静香
「創造力・企画力」というと、民間経営の基
るという講師の言葉から、視野を拡げてアンテ
本というイメージが強いかと思います。実際、
ナを張ること(情報収集)は、発想を導き出す
その力は重要な役割を担っており、顧客の創造
第一歩なのだと感じました。情報に敏感になり、
という点で、欠かせない視点です。しかし、そ
市民のニーズを汲むことだけでなく、組織とし
れは民間だけのものではなく、行政職である私
て方向性を理解しながら新たな発想を持って提
たちにも必要な視点であることは間違いありま
案していくことは、自治体間の競争の中で大切
せん。
な役割があると思います。そのためには、まず
かつての地方自治体は、機関委任事務といっ
は現状をよく知ることが大切で、主事という立
て、国や県から言われたことをただやればいい
場であったとしても職員として主体性を持って
だけの仕事がほとんどであったことは否めませ
行動し、全体を考えながら疑問を持ち続けるこ
ん。良い意味で言えば、各自治体差異なく仕事
とが重要かと思います。
を全うできていました。しかし、地方分権改革
この研修を通して、職員としてあるべき姿を
が進み、各自治体が抱える課題を自ら解決する
再確認するとともに、行政職に求められる企画
必要が出てきて、実状に合わせた政策を展開す
力・創造力について学ぶことができました。今
ることが重要となってきました。民間と同様、
後は、発想を導く考え方ができるよう、習慣づ
行政サービスも住民から選ばれる立場になった
けていきたいと思います。そして、仕事外での
ということです。そのような時代の流れの中、
活動等を通して新しい知識を蓄え、視野を拡げ
高齢化や人口減少等の外的課題と財政状況等の
ながら、今回学んだことを仕事に活かしていき
内的課題が山積しながらも、どのようにして他
たいです。
の自治体と差をつけられるのかを考えたときに、
「創造力・企画力」の視点がでてきます。
私は平成23年度に採用さ
れてから行政に携わってき
て、職員一人ひとりに前述
した力が求められていると
感じ、今回の研修を受講し
ま し た。 研 修 は グ ル ー プ
ワークを中心に、講師の実
体験を交えて、様々な発想
方法を実践しながら能力の
向上を図るものでした。
現状に対して危機感を持
つことで問題意識が生まれ、
それが企画創造力の源とな
17
受講者レポート
受 講 者レポート
テーマ「協働」から得た「気づき」
∼政策課題研究を受講して∼
東近江市五個荘支所 主査 松
今回、この研修に受講しませんか?と声をか
識改革の必要性を感じることができました。
けていただいたときには、政策形成に対して苦
2つ目は、自分のまちに対する「気づき」で
手意識が強く不安もありためらっていましたが、
す。研究に取りかかる際、アドバイザーの助言
少しでも職員としてのスキルアップができれば
もあり、まずは自分のまちを知ることから始め
と思い受講を決めました。
ようと、担当課に話を聞き、まちづくりに関す
研修を受講して、現任職員(2部)
研修で学習
る講座や学習会に参加し、高島市と東近江市へ
した政策形成のプロセスをより具体的に掘り下
視察研修に行き、メンバーそれぞれの市町のま
げて学ぶことができ、たくさんの「気づき」を
ちづくりに関する条例や取り組みについても話
得ることが出来ました。
し合いました。
1つ目は、課題の本質を見抜き、解決策を生
その中で、自分たちの市町の行政・地域の取
み出すためには、現状を正確に分析し、お互い
り組み、抱えている課題を知ることができたの
の意見を聞き、議論を重ねること。そして目標
は、市職員としても一市民としても大変有意義
に向かって協力し、ともに進んでいけるチーム
であったと思います。
(組織)であることの大切さです。
このような貴重な経験を積む機会を与えてい
私たちは、米原市、高島市、日野町、東近江
ただき、快く送り出していただいた職場の皆さ
市から1名ずつ参加した4名の合同グループで、
んに感謝しつつ、今回の研修で気づき、学んだ
「協働」が研究のテーマとして与えられました。
ことが実践で活かせるようにしたいと思います。
「協働」という言葉はよく耳にするものの、漠
最後になりましたが、私たちが行き詰ったとき、
然とした印象があり、また、メンバーそれぞれ
お忙しい中時間を作って何度も駆けつけていた
のまちの規模やまちづくりの体制などに違いが
だいた守山市の坪内アドバイザーには本当にお
ある中、何から始めていいのか、どう進めてい
世話になりました。ありがとうございました。
けばいいのか戸惑いながらのスタートでした。
「協働とは何か?」研究を進め
る中で、私たちはこの問いかけに
何度もつまずき、ともに悩み、考
え、議論を繰り返してきました。
そうした議論を重ねる中で、まち
に暮らす人が幸せで安心した生活
を送れるようにすることは、私た
ち自治体職員の最大の役目であり、
そのために市民の立場にたち、市
民目線で考え、市民とともにまち
づくりを進めていくことの大切さ
や、職員のまちづくりに対する意
18
尾法枝
内部講師レポート
内 部 講 師 レ ポ ート
当たり前のことを当たり前に
∼「接遇」講師を担って∼
長浜市びわ支所 主幹 鐘居かおり
「公務員の接遇とは?」
して研鑽の場を持つことも大事になります。ま
私は、接遇の講師として受講者の前に立つこ
た、接遇とは人を大事にする、人を思う心が基
とになり、日々無意識に行ってきた行動を再度
本であることを考えると、市民に対してだけ頑
考えてみることにしました。
張ればよいというものではないことに思い至り
接遇の言葉の意味は、相手をもてなすことと
ます。職員同士、お互いがお互いを尊重し合う
されています。しかし、民間のサービス業とは
ことも接遇なのです。お互いを大切にできる職
違い、私達公務員は全体の奉仕者です。一部の
場であれば、市民に接するときも、穏やかに好
市民に対して何か特別なサービスを行うことが、
感のもてる対応ができる職員へと育つに違いあ
公務員のもてなしになるとは思えません。私達
りません。
が市民をもてなす方法、それは仕事の内容や手
こうして考えていくと、接遇とは「当たり前」
順、根拠法令をしっかりと把握し、堅実な業務
のことを「当たり前」に行うシンプルなことで
を行うこと、そしてそれをわかりやすい言葉で
ありながら、組織の根幹となり得るとても重要
説明し、市民に寄り添う細やかな心遣いをする
なことだとわかります。その根幹を揺るぎない
ことなのではないでしょうか。
ものにし、柔軟で力強い組織へと成長していく
こうした仕事や心遣いは、言わば「当たり前」
ために、私達は日々の努力を続けていかなくて
のことです。私達はこの「当たり前」を日々行っ
はなりません。
ているのです。新任研修の接遇研修では、特別
さあ、今日も笑顔で、気持ち良い職場にしま
なスキル・技術の習得よりもこの「当たり前」
しょう。そして、明るく市民をお迎えしようで
のことができることを大事にしています。採用
はありませんか。
されて半年がたち、少し仕事にも慣れてきた者
同士がもう一度、接遇とは何かを一緒に考え、
学び合う場となっています。
そして、こうした学び合
いは研修の場だけでなく、
毎日勤務している職場でも
実践していかなくてはなり
ません。業務内容はいつも
同じとは限りません。社会
の変化に柔軟に対応するた
めにも学ぶことが少なくな
ることもありません。日々、
新採職員もベテラン職員も、
各々が真摯に業務に取り組
むことはもちろん、組織と
19
内部講師レポート
内 部 講 師 レ ポ ート
好きこそ物の上手なれ
∼「半年を振り返って」講師を担って∼
滋賀県後期高齢者医療広域連合総務企画課 主査 棟
「半年を振り返って」と題した本研修は、公
た現在は、自治体も柔軟性、積極性、意欲、情
務員生活をスタートした新規採用職員を対象に
熱といった側面を持った職員の任用や人材育成
半年間の実務経験を振り返りながら、慣れない
に重点を置かれていると考えます。実際、役所
業務や環境から受けた悩みや不安などを他の自
がかつてのような「安定した職場」だと期待し
治体職員と共有し、解決に向けて考えながら、
て入庁される方は少なくなっているのではない
改めて仕事への意欲や目標を再確認することを
でしょうか。
目的に実施しています。
私はこの研修を通して、意欲に富んだ若い職
ファシリテーター(講師)として心掛けてい
員の皆さんと一緒に考え、新たな学びを得られ
ることは、受講される方々が 本音で話し合え
る喜びがある一方、自身の能力不足にも気付く
る 雰囲気を作ることと、受講後の仕事に対す
ことができました。今後は中堅職員としての知
る モチベーションの向上 に繋げることがで
識やスキルを積み、受講者に負けないようまち
きるよう、研修の進行や伝え方に意識を置いて
や職場を愛し、自分自身を大切にしながら仕事
います。
を楽しんで参りたいと考えています。
公務員の仕事はやりがいを感じることもある
最後になりますが、本研修プログラムは県内
反面、様々な困難や壁にぶつかることもありま
の自治体職員で構成されたワークショップ・ファ
す。その際、どの様にして乗り越えるのかを一
シリテーター研究会において作成されたもので
人で考えるのではなく、組織全体で解決方法を
す。公務員の先輩方が、共に働く若い職員の皆
導き出すことが重要です。研修ではその様な
さんに職場で明るく意欲的に行動して欲しいと
ことにも触れながら、同期という共通項を持つ
の想いから、自身の経験や勉強会などを踏まえ、
職員同士が本音で話し合い、
「自分は孤独では
プログラム内容の検討・改善が行われています。
ないこと」「チームで考えることの大切さ」に
その様な身近な存在の先輩達の想いも研修を受
ついて実感して欲しいと考えています。
講されて感じ取っていただければ幸いです。
また、
「将来のまちの姿」や「理
想の公務員像」についても自らデ
ザインを行うことで、まちや職場
を好きになり、自分自身を大切に
しながら仕事に対して意欲的に取
組んでいただきたいと思います。
地方分権が定着した昨今、これ
までの自治体職員は手堅く仕事を
こなす人材が求められてきました
が、行政経営のあり方が自治型社
会(住民を中心とした地域資源を
活用したまちづくり)へと変革し
20
方達郎
内部講師レポート
内 部 講 師 レ ポ ート
地方自治体職員の政策形成能力の
スキルアップについて
∼「政策形成過程と技法」講師を担って∼
大津市消防局通信指令課 係長 中
西紀貴
私は、平成27年度 政策形成指導者養成研修
政策形成に必要なヒントが含まれていますので、
を受講し、僭越ながら、同年度の現任職員(2
常に何事にも「傾聴」を意識して心掛ける必要
部)研修の講師として教壇に立たせていただき
があります。
ました。
そこで、各部課局内や各係にて「報告」
「連絡」
この研修を受講されたのは、各市町の採用後
「相談」の連携を図ることで、その貴重な情報
8∼9年目の職員で、それぞれの職種に就かれ、
の共有が重要になってきます。
現場の第一線で活躍されている方々に講義をい
また一方で、公務員の常識は、住民の非常識
たしました。
であることもあります。これからは、自分自身
2000年(平成12年)4月に地方分権一括法が
の考えに固執することなく、柔軟な発想、ひら
施行され、地方公共団体の政策実施に対する責
めきや創造等に必要なアンテナを大きく広げ、
任の範囲が増大しています。我々は、様々な情
必要な情報を自らが取りに行く姿勢が大切です。
報を基に、複雑多様化する行政を担っています。
そして、時期を逸することなく、地域の問題
この地方分権型社会においては、住民との協働
解決に向けた政策を考え、住民ニーズに沿った
による施策の展開を図る必要があり、そのため
施策を実行し、住民の期待に応えることが、我々
には、地域の実情に応じた住民ニーズを迅速か
の目指すところであります。
つ的確に把握することが重要となります。
最後に、日頃から職員同士のネットワークを
また、若手職員や専門職に従事している職員
作り、情報の収集能力を向上させるとともに、
の中には、「自分は政策形成には関係がない。
」
自分自身の業務に自信と誇りを持って、ご精励
と誤った認識をしている職員が多数見受けられ
いただくことを願っています。
ることから、このような意識を払拭する必要が
あります。政策形成は、年齢、経
験年数、役職や職種に関係なく、
全ての職員が意識し、市町単位で
一つの「チーム」であることを認
識しなければなりません。
特に注意するべきことは、日頃、
地域住民と接して会話した声(苦
情や要望等)も、住民はその担当
職員と話したことで、
「市町には
伝えた。報告(結果)は必ずある。
」
と感じておられることだと思いま
す。住民の些細な相談や質問には、
21
3科目 53名の指導者が誕生!
3科目 53名の指導者が誕生!
平成27年度は、3科目の指導者養成研修を実施し、下記の方々が修了されました。
今後、各所属の団体で実施される研修の講師として活躍を期待するとともに、当研修センター
では、接遇指導者には「新任職員
(後期)研修」
、政策形成指導者には「現任職員(2部)研修」
・
「政
策課題研究」、OJT 指導者には「係長級職員(2部)
研修」の指導を担当していただきます。
※敬称略
接遇指導者
大
津
市 鹿島 良平 彦
根
市 田中 翔 長
浜
市 鐘居かおり
近 江 八 幡 市 小島 尚和 草
津
市 杉谷 容代 草
津
市 小林 直輝
草
津
市 田川 祐子 草
津
市 佐藤 綾花 守
山
市 川中 彰彦
栗
東
市 西川 亜古 野
洲
市 井狩 昭彦 湖
南
市 森井 恵
湖
南
市 村惠 圭 高
島
市 竹井 由紀 東 近 江 市 深田 有香
米
原
市 伊藤 美佳 愛
荘
町 藤澤 雅史 湖南広域行政組合 中嶋 健
政策形成指導者
大
津
市 中西 紀貴 大
津
市 高橋 宏司 大
津
市 加藤 高明
彦
根
市 西林 剛志 長
浜
市 野邉 誠 近 江 八 幡 市 植村 利之
草
津
市 齊木 邦晃 守
山
市 徳田 光春 守
山
市 井上 紀彦
栗
東
市 三浦 英幸 甲
賀
市 西野 久俊 野
洲
市 玉川 俊之
湖
南
市 山元 達俊 高
島
市 岸本 広樹 東 近 江 市 久保 文裕
米
原
市 坂 仁美 滋 賀 県 市 町 村 職 員 研 修 セ ン タ ー 大西 知也
OJT指導者
大
22
津
市 野村 邦彦 彦
根
市 池田 征史 長
浜
市 村 晴美
近 江 八 幡 市 岡村 祥子 草
津
市 林 良作 守
山
市 大隅 信江
守
山
市 今野 裕美 守
山
市 堀井佐重喜 守
山
市 佐藤 志歩
栗
東
市 齊藤 勝 湖
南
市 蒲谷 律子 湖
南
市 米津 知揮
高
島
市 前川 一善 東 近 江 市 増倉 健雄 米
原
市 筒井 康一
日
野
町 吉澤 利夫 日
野
町 柴田 和英
野
町 奥野 彰久 日
平成28年度 おススメの研修を紹介します
平成28年度 おススメの研修を紹介します!
当研修センターでは、平成28年度も多くの研修を実施します。
その中のいくつかをここでご紹介します!
指導者養成研修
● JST 指導者養成研修
JST(人事院式監督者研修)を指導するために必要な知識および技術を習得し、その研修講師
としての指導方法を習得します。修了後には、各所属団体で実施される研修講師としてご活躍い
ただくことはもちろん、当研修センターの係長級職員(1部)
研修に登壇していただきます。
スキルアップしたい方、研修講師に興味をお持ちの方はぜひ受講ください !!
実務専門研修
● 契約事務担当者研修 「2年ぶりに実施します!」
契約事務を遂行するために必要な基礎的知識を習得し、実務能力の向上を図ります。
日頃、契約事務に携わっている職員で、原則としてその実務経験が2年以内の方が対象です。
特
別
研 修
● 危機管理能力向上研修 「1DAY セミナーからグレードアップします!」
平成27年度1DAY セミナーで高評価を得た「事例に学ぶ管理職の危機管理」研修を拡充し、
2日間の特別研修として実施します。
日頃の危機管理意識、組織の不祥事防止について、その知識や心構えについて理解を深め、模
擬記者会見等の演習を通じて、緊急対応におけるスキルを習得します。
● 情報収集・分析力向上研修 「初めての研修ですが…期待度大!です。
」
この分野の研修は、近年ニーズが高まっていま
す。国勢調査等の統計法に基づく調査の情報や計
画作成のためにとったアンケートの分析活用など、
コンサル任せになっていませんか?
職員自らが、データの活用から分析までできる
ようになれば、まさに鬼に金棒!です。
23
みなさんの飛躍−HIYAKU−を
期待しています !
平成27年度の研修センターでは、各種研修や研究会を実施し、延べ3,652名の方に
受講していただきました。
各職場での更なる飛躍を期待するとともに、
今後も人材育成と交流の場となるような研修を
実施していきますので、職員の皆様の積極的な
受講をお待ちしています。
編集後記
今年度の締めくくりに、無事に「HIYAKU」を刊行することが出来ました。今回ご執
筆いただいた、太田先生、田中先生、各市町の職員の皆様には、心からお礼を申し上げます。
さて、私事ですが、この「HIYAKU」の刊行を最後に、2年の派遣期間を終えて帰任
いたします。当初は、片道1時間強の通勤電車と慣れない研修業務に戸惑ってばかりでした
が、県内の研修担当者や内部講師の皆さんとの交流や研修事業を通じてたくさんの学びと気
づきを得ることができ、とても貴重で有意義な2年間となりました。また、お世話になった
研修センター事務局の皆様にはとても感謝しています。これからは、この2年間で得たもの
に磨きを掛けて、飛躍できるようにがんばります♪
滋賀県市町村職員研修センター事務局(長浜市派遣) 大西 知也
研修情報誌
2016.3
2016年(平成28年)3月発行
編集・発行 / 滋賀県市町村職員研修センター
住 所
〒520−0801
滋賀県大津市におの浜一丁目1番20号
ピアザ淡海4階 自治研修センター内
T E L
F A X
E-mail
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077−527−5270
077−527−5271
[email protected]
http://www.hiyaku.or.jp
滋賀県市町村職員研修センター
キャラクター
「 H I Y AK U くん」
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「HIYAKU くん」
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