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第11章 タイにおける外国企業のグローバル展開

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第11章 タイにおける外国企業のグローバル展開
第11章
タイにおける外国企業のグローバル展開
サマート・チアサクン
はじめに
日本の機械組立メーカーおよび主要部品メーカーの多くは、 東アジアへの生産拠点シフトを
加速させている。 1980年代後半、 日本およびアジアNIES (新興工業経済群) ―すなわち台湾、
シンガポール、 韓国―の企業は、 自動車、 家電、 電子製品といった最終製品を国内生産し輸出
するという戦略から、 海外における生産という戦略に転換した。 タイを含む東アジア諸国への
生産拠点移転により、 サポーティング・インダストリー (裾野産業) の多くも後を追うように
なった。 更に、 アジアおよび欧米諸国の多国籍企業は、 グローバルな貿易・投資における競争
力を向上させるために様々な種類の国際戦略を採用してきた。 例えば、 国際労働分業、 労働者
のクラスタリング・システム (clustering system)、 現地関連企業との生産協力などがある。
一方、 タイのような受入国政府は、 現地関連企業、 特に低∼中級技術を有する産業の技術能
力を向上させる手段として、 サポーティング・インダストリー分野の海外中小企業の移転を奨
励してきた。
本調査の目的は、 タイにおける機械・金属加工分野の外国企業が採用した海外生産拠点モデ
ルを検討することにある。 特に、 生産ならびにマーケティングの戦略的な計画策定に重点を置
いている。 小規模な外国企業は類似した戦略をとっているので、 そこで採用された方針ならび
に手段は検討する価値がある。 そのため、 低∼中級技術を有する産業に関し、 次の各項目につ
いてアジアおよび欧米企業間の比較を行った。
国と海外生産拠点間の市場環境、
政府による支援策、
本国企業と現地関連企業間の協力形態、
熟練労働者を含む労働者の能力、
本国政府および受入国
海外生産拠点の成功要因および調査対象企業が直面した問題/課題
査対象企業が期待する産業の種類、
本
岐阜県製造業に適切な海外生産拠点モデルの提言、
調
海
外 (タイ) への生産拠点移転を支援するうえで岐阜県が採用すべき方策への提言、 以上8項目
137
表1
調査対象企業の会社名および業種
技術
水準
分野
製品/生産工程
MNCプラスチックス
(MNC Plastics Co.Ltd)
(シンガポール)
中級
金型・ダイス型
金型/ダイス型およびプラスチック射出成形
製品
ロスティ (マラ)
(Rosti (Mala) Ltd)
(デンマーク)
中級
金型・ダイス型
金型/ダイス型およびプラスチック射出成形
製品
サミット・ステアリング・ホイール
(Summit Steering Wheel Co.Ltd)
(台湾)
中級
部品・コンポー
ハンドル (曲げ、 プレス (Bending, pressing))
ネンツ (自動
およびプラスチック射出成形製品
車)
マキシム・インテグレイティッド・
サーキット (タイ)
(Maxim Integrate Circuit
(Thailand) Ltd) (米国)
低級
IC (集積回路)
の試験
半導体試験工程
カオホン・インダストリアル
(Kaohong Industrial Co.Ltd)
(台湾)
低級
機械
工作機械 (マシニング・センター) の組立
会社名
1
2
3
4
5
(出所) 本調査
である。
2001年10月から12月にかけて現地調査を行った。 表1は、 調査対象企業の業種ならびに製品
を示している。 外国企業はいずれも中小企業で4カ国に及んでいる。 台湾系およびシンガポー
ル系企業は主として金型・ダイス製造に従事しており、 超精密と呼ばれるプラスチックの高品
質製品を自動車・電子産業向けに生産している。 ある台湾系企業は機械部門の生産拠点をタイ
に移転したが、 その生産工程は組立段階のみに限定した。 デンマークのロスティ社 (Rosti
Co. Ltd) は高い技術を有しており、 タイのマラ (Mala) 社とともにプラスチック製品製造の
合弁企業を設立した。 米国企業は最近、 他国で組み立てた半導体を低級技術を用いて試験する
事業を開始した。
企業が選定した立地・工場用地については、 調査対象企業が設立した製造工場は次の3カ所
である。
バンコク郊外に位置するミンブリ地区 (Minburi District) には、 これまで20年以上
にわたって工場が立地してきた。 これらの工場は主に、 タイ工業団地公社が運営している工業
団地に入居した。 しかし、 この10年間は (地方の) 他地域に工場を移転するインセンティブが
多くの企業に付与されてきた。 この地域はバンコク北方に位置し、 その周縁はバンコク都市部
と重なっている。
サムットプラカーン県 (Samutprakarn province) はバンコク市街地から東
方へ100㎞圏内にある。 同県は自動車および金属加工産業の中心地で、 多くの自動車組立工場
が立地している。 また、 チョンブリ (Chonburi)、 ラヨーン (Rayong)、 チャチェンサオ (Chac
heongsao) 各県にまたがる東部臨海地域 (Eastern Seaboard Area) に隣接している。 この地域
138
表2
会社名
調査対象企業の工場用地選定理由
設立年
用地選定理由
1
MNCプラスチックス
立地―アユタヤ県
1999
工場は (製品の供給先たる) 組立工場の周辺、 特にハイテク工
業団地およびバンパイン工業団地の周辺に立地した。
2
ロスティ (マラ)
立地―サムットプラカーン県
1991
工場はタイ側パートナーが20年以上前に取得した土地に立地
し、 この土地は拡張にも使用された。
3
サミット・ステアリング・ホイール
立地―サムットプラカーン県
1988
工場は人気のある地域に立地し、 組立工場への製品納入が容易
で時間が短くてすんでいる。
4
マキシム・インテグレイト・サー
キット (タイ)
立地―サムットプラカーン県
1999
工場用地の条件は米国親会社が設定した。 電気・水道やインフ
ラが整備されており、 生産開始までに必要な追加的投資が少な
くてすむ、 というものだった。
1990
この工業地区に立地する工場を所有、 操業している台湾投資家
グループの助言に従った。
5
カオホン・インダストリアル
立地―ミンブリ (バンコク)
(出所) 本調査
は第三次国家開発計画で開発され、 東部地域の製品生産および輸出が振興されるようになっ
た。 しかし、 サムットプラカーン県工業地域は現在、 環境汚染が生じており、 多くの企業が撤
退しているが、 同県には新国際空港 (Sawanhhphum 国際空港) が建設中で、 2007年には完工
の予定である。 これにより輸出志向のハイテク産業が戻ってくるものと見込まれる。
アユタ
ヤ県 (Ayudhaya) はバンコク北方 (約80㎞) に位置し、 バンコク近郊有数の工業地域の一つ
になっており、 ロジャナ (Rojana) およびバンパイン (Bang-Pa-In) 工業団地にホンダ、 キャ
ノン、 JVCといった数多くの日本企業が入居している。 電機部品および自動車部品・コンポー
ネンツのメーカーの大半は、 同県に進出している顧客 (供給先) から50㎞圏内に小規模な工場
を建てている。
このサンプル調査の対象となった企業から工場用地の選定理由を聴取した結果が表2であ
る。 これはタイに投資している企業の特徴をある程度反映している。
台湾およびシンガポール企業は、 タイで操業している友人、 カウンターパート、 現地駐在政
府官僚からの助言を求め、 これらを総合して検討を加えた。 米国企業はコーディネータに頼っ
ており、 コーディネータから満足のゆく回答が得られたので用地選定に関する決定を下した。
欧州企業の場合、 カウンターパート (タイ企業) が既に土地を所有し、 そこで生産をしていた
ので、 用地選定は容易だった。
第1節
本国企業と現地関連企業間の協力形態
本調査では、 当該企業が採用している製造工程のレベルにより2種類の協力形態がみられ
139
表3
調査対象企業の外国中小企業が採用した協力形態
会社名
1
MNCプラスチックス
技術水準
協力形態
中級
合弁
資本比率:シンガポール 90%;タイ 10%
2
ロスティ (マラ)
中級
合弁
資本比率:タイ 51%;デンマーク 49%
技術協力が行われており、 デンマーク側にロイヤル
ティーを支払っている
3
サミット・ステアリング・ホイール
中級
合弁
資本比率:タイ 51%;台湾 49%
ハンドル製造で技術協力が行われている
4
マキシム・インテグレイト・サーキット
(タイ)
低級
米国マキシム社による100%出資
5
カオホン・インダストリアル
低級
台湾のジホン (Jihong) 社による100%出資
(出所) 本調査
た。 工作機械や半導体といった産業がタイに移転された目的は、 組立および試験のためだけで
あり、 これらはローテク産業とみなされている。 現地スタッフだけで製造工程を上手に管理
し、 生産コストを引き下げなければならず、 特に、 低い技術水準の労働力しか必要としていな
い。 こうしたローテク製品を生産する1社は、 米国市場への輸出に関して一般特恵制度 (GS
P) の優遇措置を適用しており、 経営にあたってタイ側カウンターパートを必要としてこな
かった。 外国の中小企業が100%出資する理由は、 より高い収益をあげ、 本国の会社における
慣行を採用・適用できるようにするためである。 タイ投資委員会 (BOI) が付与する優遇措置
(promotional privileges) により、 外国企業は特に輸出志向事業において100%の株式保有が認
められてきた。
中級技術を有する外国企業はタイ現地企業との協力関係を求める際、 自分たちの目的を達成
するため、 生産技術だけでなくマーケティング管理においても現地企業の協力に期待してい
る。 第一次または第二次サプライヤーとして、 自動車組立メーカーと技術提携している企業
は、 生産コストの引き下げと製品の品質保証の両方を目的として現地企業との協力を求めてい
る。 合弁企業の資本比率がタイ側51%、 外国側49%となっているのは、 タイの会社として一定
の便益を受ける資格を確保するためである。
通貨・金融危機の際に、 現地関連企業の経営を支援するために資金を注入した外国企業は多
かったが、 調査対象企業の中にはこうした動きはなかった。
協力形態に関する規則や規制は存在しない。 タイ政府は、 どんな種類の協力であれ民間部門
に介入しておらず、 製造業部門での公正な競争と効率性を望んでいるため、 今後の協力の在り
方についていかなる情報も示していない。
協力形態および現地パートナーについての評価については表4のとおりである。 本調査対象
140
表4
協力形態および現地パートナーについての評価
会社名
1
2
MNCプラスチックス
ロスティ (マラ)
協力形態
協力形態および現地パートナーについての評価
合弁
―現地パートナーの役割は、 方針の立案 (policy planner) に
限定され、 マーケティング戦略およびその実施について調整を
行ってきた。
―シンガポール投資家は生産に責任を持つだけでよいので、 現地
パートナーの協力に大きく満足している。
合弁
―デンマーク側パートナーは現在の協力形態に満足しており、 技
術協力に対するロイヤルティー、 資本参加による配当を受け取っ
ている。 また、 タイ側パートナーは、 電子産業向けの金型・ダ
イス型、 プラスチック製品の製造に高い能力を有している。
3
サミット・ステアリング・ホ
イール
合弁
―タイ側パートナーは長年、 自動車産業に従事してきており、 製
品の品質とともに、 ハンドルの対国内最大手自動車組立メーカー
の第2次サプライヤーとしての地位を維持できた。
4
マキシム・インテグレイト・
サーキット (タイ)
子会社
(100%出資)
―タイ側パートナーの優れた調整により、 米国マキシム社の要求
する基準は十分に充たされてきた。
5
カオホン・インダストリアル
子会社
(100%出資)
―輸出向けマシニング・センターの単純組立に関する実績には満
足しており, また、 タイ国内の顧客に対してはサービスも提供
している。
表5
会社名
製造工場における重要な活動の役割分担
マーケティング
生産管理
労務管理
1
MNCプラスチックス
タイ側および日本人
シンガポール側
タイ側
2
ロスティ (マラ)
タイ側だが、 デンマーク側からの
支援も受けている
タイ側 (デンマーク人専門家か
らの技術支援を受けている)
タイ側
3
サミット・ステアリング・ホ
イール
台湾側 (技術協力に関して最初に
合意を結んでいる)
タイ側 (台湾側から技術支援を
受けている)
タイ側
4
マキシム・インテグレイト・
サーキット (タイ)
米国マキシム社
試験のみ (タイ側が管理)
タイ側
5
カオホン・インダストリアル
国内 ― 代理人
輸出 ― 台湾
台湾
タイ人/
台湾
(出所) 表4、 5とも本調査
企業はすべて、 現在の協力形態に満足しており、 通貨危機の間も変更しなかった。 今後も、 現
在の協力形態を継続していくつもりである。
外国中小企業およびタイ側カウンターパートの役割分担は表5のとおりである。 合弁企業に
おいては、 外国投資家と現地カウンターパートが効率性を高めるために調整を行い、 顧客先を
増やして、 企業の目的を達成してきたのは明白である。 本調査によれば、 マーケティング、 生
産管理、 労務管理について次のような役割分担が行われている。
タイは、 相対的に技術の低い産業および機械・金属加工産業における労働集約的な製造工程
の生産拠点として選ばれてきた。 これらの両部門に属する調査対象企業は、 表6に要約される
141
表6
調査対象企業の分業体制
会社名
分業体制
1
MNCプラスチックス
―当該現地関連企業は多数の工作機械を備えてきており、 本国企業と同
じ製品を生産することで本国企業の操業を支えることができた。 ま
た、 生産設備を十分活用するために製品を増加させることもできた。
2
ロスティ (マラ)
―本国企業は製品開発に従事するとともに、 当該現地関連企業に対し訓
練および支援を行っている。 現地関連企業は、 製品の付加価値を高め
るために製品を多様化しようと試みてきた。
3
サミット・ステアリング・ホイール
―当該現地関連企業が本国企業と同じ製品を生産する一方で本国企業は
ハンドルの研究開発に集中できた。
4
マキシム・インテグレイト・サー
キット (タイ)
―生産における国際的な垂直分業により、 当該現地関連企業は一定のモ
デル・シリーズの半導体に関する試験という労働集約的な分野を分担
している。
5
―生産における国際的な垂直分業により、 当該現地関連企業は、 台湾か
ら輸入した部品を組み立てるという労働集約的な分野を分担している。
カオホン・インダストリアル
(出所) 本調査
表7
海外生産拠点の利点
会社名
海外生産拠点の利点
1
MNCプラスチックス
―当該企業は、 タイの機械・金属加工産業が有する潜在的成長力を認識
し、 金型・ダイス型のマシニング作業所に投資した。 これにより、 総
売上高および利益が増加し, 利益率は30%を上回っている。
2
ロスティ (マラ)
―分業体制の確立によって、 本国企業は研究開発にシフトし、 タイの生
産拠点は家電産業向けプラスチック精密部品・コンポーネンツの生産
へと格上げできた。
3
サミット・ステアリング・ホイール
―当該企業は、 競争力を維持するための手段としてタイに生産拠点を設
立した。 現地関連企業は、 外国企業からの技術支援を受けて、 その技
術能力を向上させることができた。
4
5
マキシム・インテグレイト・サー ―当該企業は、 生産コストの削減とともに、 製品の品質管理を向上させ
キット (タイ)
た。
カオホン・インダストリアル
―当該企業は総売上高を増加させるとともに、 タイにおいてより良い修
理・保守サービスを提供することで, タイにおける顧客を増やした。
(出所) 本調査
分業体制を取っている。
表7は海外生産拠点の利点について評価した結果である。
本調査対象企業はすべて、 生産拠点の設立により便益を得ており、 長期的には企業は一層競
争力を増し、 アジアにネットワークシステムを持つ国際企業に成長できる可能性がある。
142
第2節
本国と海外生産拠点間の市場環境
調査した5企業はすべて、 マーケティングについて十分な準備を行ってきた。 そのやり方
は、 本国の既存ネットワークを利用するか、 あるいは顧客、 特にタイの新規顧客の期待に応え
るために積極的なマーケティング戦略を採る場合がある。
本調査対象企業の中には、 タイ現地市場で強い相手と競争しなければならない会社もあり、
これらは自社製品に対する顧客の信頼を得るマーケティング戦略を採用してきた。 各企業の市
場環境およびマーケティング戦略は表8に示すとおりである。
調査した外国中小企業の特徴として興味深いことは、 これらの会社はすべて、 その製品なら
表8
市場環境、 調査対象企業が採用したマーケティング戦略
会社名
1
2
3
4
5
市場条件
現地市場で顧客を見つける戦略
仕事と注文を求めて製造
業10∼20社が競争。 最も
手強い相手は日系企業。
―株主の一人は金型・ダイス型の高度技術者で, 製品の質
について顧客を納得させることができた。 また, 日本企
業とのコーディネータとして日本人を雇用した。 この社
員は日本文化・ビジネス慣行を知っており, 非常に有用
である。
競争は激しい。
―本合弁企業の現地パートナー, マラ・プラスチック社
(Mala Plastic Ltd) は, タイの消費者向けプラスチッ
ク製品市場を長期間支配してきた。 この合弁は, 新規企
業の設立により, 家電および自動車部品・コンポーネン
ツ向けに高品質製品を供給する国際的企業になるという
タイ側カウンターパートの強い意向に基づいている。
数社 (3∼4社) が自動
車産業のネットワーク体
制下にある。
―当該本国企業は日本ステアリング社 (Nippon SteeringC
ompany) と技術提携しており, タイで市場を確保する
うえでほとんど問題はない。 雇用した優秀なコーディ
ネータ (工場長) は, タイおよびマレーシアの自動車組
立メーカーの期待に応えるよう, 製品の品質を積極的に
向上させた。
マキシム・インテグレ
ト・サーキット (タイ)
IC製品の組立、 試験に従
事しているのは外資系企
業のみ。
―米国マキシム社が最近この小規模な試験施設 (testing l
aboratory) をタイに設立した目的は, ICの組立および
試験工程の効率化をはかるためである。 多様化している
市場において効率性はかなり向上している。 顧客の信頼
を得ることができたので, 製造工程の優れた管理はマー
ケティング戦略として優れたものであった。
カオホン・インダスト
リアル
2企業だけがタイで操業
している。 BOIの優遇措
置下で機械類は主に輸入
されている。
―投資ブーム中 (1990―1995年) は, タイの台湾投資家協
会 (Association of Taiwanese investors) を通じてマ
シニング・センターの売上高を伸ばした。 通貨危機が生
じてからは (1998年―現在), 顧客に対するサービス促
進に転換した。
MNCプラスチックス
ロスティ (マラ)
サミット・ステアリン
グ・ホイール
(出所) 本調査
143
表9
主要市場およびマーケティング担当スタッフ
会社名
主要市場
マーケティング担当スタッフ
90%
10%
国内市場―現地スタッフ
輸出―本国企業派遣スタッフ
1
MNCプラスチックス
―国内
―輸出
2
ロスティ (マラ)
―国内
―輸出
90%
10%
国内市場―現地スタッフ
輸出―現地スタッフが本国企業からの情報を得ながら行う。
3
サミット・ステアリング・ホイー
―国内
―輸出
90%
10%
国内市場―現地スタッフが自動車組立/部品メーカーとの
手配を行う。
輸出―本国企業派遣スタッフ
―輸出 100%
本国企業のスタッフがマーケティングを担当し、 顧客に満
足してもらえるようロジスティック生産拠点 (logistic
production base) を設立。
―国内 20%
―輸出 80%
(米国)
国内市場―現地流通業者を通じて行う。
輸出―本国企業のスタッフ
ル
4
5
マキシム・インテグレイト・サー
キット (タイ)
カオホン・インダストリアル
(出所) 本調査
表10
現地関連企業の売上高および従業員数
(本国企業の数値を100とする)
売上高 (指標)
従業員数 (指標)
会社名
5年前
現在
5年前
現在
1
MNCプラスチックス
150
300
80
200
2
ロスティ (マラ)
不明
不明
不明
不明
3
サミット・ステアリング・ホイール
20
50
40
90
4
マキシム・インテグレイト・サーキット (タイ)
―
2―3
―
不明
5
カオホン・インダストリアル
18―20
―
20
4
(出所) 本調査
(注) 調査対象企業のうち、 3社は1996年よりも後に操業を開始した。
びに商慣行が国際市場のユーザー標準をみたす国際企業という点である。
同様に、 収益をあげて利益を維持するため、 主要な輸出市場および外国企業の本国市場向け
に自社製品を例外なく輸出している。 表9では、 主要市場ならびにマーケティング担当者の詳
細を示している。
現地企業および本国企業双方の売上高・従業員数に関する情報が不完全なため、 各々の業績
を比較することは困難である (表10)。 さらに、 グローバル経済の影響で輸出志向企業の輸出
機会が減ってきている。 調査対象企業のスタッフ数は調査期間中、 金型・ダイス型メーカーで
は増加傾向にあり、 輸出志向企業では減少傾向にあった。
売上高および従業員数の指標によれば、 自動車部品・家電向けエンジニアリングプラスチッ
ク製品を生産する小規模な金型・ダイス型メーカーは売上および雇用で高い伸びを示してい
144
る。 輸出を徐々に増加させている企業は成長の勢いを維持できるだろう。 経済の停滞により輸
出機会に悪影響を受けているが、 マキシム、 カオホンなどは、 これは景気循環によるものでお
そらく今後1∼2年のうちに好転するとみている。
第3節
熟練労働者を含む労働者の能力
調査対象企業の製造工程は、 組立、 プラスチック射出成形、 IC試験という単純工程に限定さ
れており、 唯一、 金型・ダイス型製造がより複雑な工程を必要としている。 調査によれば、 ほ
とんどの機械・金属加工工場は、 以下のような様々なレベルの労働者訓練の準備をしている。
未熟練労働者―2∼3カ月間の訓練が必要、
熟練労働者―6カ月間以上の訓練が必要、
必要
半熟練労働者―3∼4カ月間の訓練が必要、
技術労働者―職業訓練学校生に対し約6カ月間
技師―与えられた職務に対しての訓練を一定期間大卒レベルに達するまで必要、 といっ
たものである。
未熟練労働者には英語能力が欠けているので、 ほとんど、 どのレベルの労働でも効率的な訓
練ができていない。 職業訓練学校生には、 理論面で強く、 しかも最新型機器による適切な訓練
を受けていることが求められるが、 多くの生産分野でこうした学生を見つけるのは困難であ
る。
本調査において、 対象となった機械・金属加工産業の技術労働者・技師の数は、 他業種の製
造工場よりも多い。 当該業種の技術者、 技師の数はそれぞれ総労働者数の5∼6%および1∼
2%を占めている。 また、 本国企業から派遣された技術スタッフは平均で1∼2人、 主として
設計作業、 金型・ダイス型の技術的な生産などを支援している (表11)。
技術労働者の技術能力については、 タイの技術者・技師は、 学校でエンジニアリングについ
ての特殊知識を学び、 最新機器による訓練を受けたというよりは、 主に一般的なバックグラウ
表11
現地ならびに外国人技術スタッフの数
現地技術スタッフ数
会社名
1
MNCプラスチックス
2
ロスティ (マラ)
3
サミット・ステアリング・ホイール
4
マキシム・インテグレイト・サーキット (タイ)
5
カオホン・インダストリアル
未熟練
労働者
熟 練
労働者
技 術
労働者
技師
合計
外国人技術
スタッフ数
50
60
20
15
205
3
400*
50
30
8
488
2
―
40
15
5
60
1
不明
不明
不明
不明
134
2
―
―
5
―
5
1
(出所) 本調査
(注) *人数には管理部門スタッフも含まれる。
145
ンドを身につけているだけである。
様々な技術レベルの仕事に対する労働者を用意するため、 機械・金属加工の企業は技術労働
者に適切な訓練を施さなければならず、 これは、 マニュアルを使用する必要がある者や機械の
機能などもっと学ばねばならない技術者向けの英語コースから始まる。
しかし、 各工場の未熟練・半熟練労働者の技術能力も、 技術的ノウハウおよびマネジメント
を伝える技術者の能力に左右される。 調査対象企業はすべて、 生産管理を現地技師長あるいは
主任技術者に依存している。 つまり、 技術労働者は人事管理、 特に技術業務と人員配置につい
て責任を負っていることを意味している。
機械・金属加工産業の熟練労働者ないし技師が、 試作品製作あるいは生産開発ができるかど
うかを判断するのは難しい。 というのも、 現地関連企業の現地スタッフが製品もしくは製造工
程の研究開発に取り組んだり、 従事したりすることは許されてこなかったためである。
本調査では、 試作品の製作あるいは生産開発を行うと報告した現地関連企業は一社もなかっ
た。 これらの会社はその理由を数多く挙げており、 それは技術能力や研究開発に必要な支援設
備などに関連するものだった。
しかし、 現地関連企業の技術者や技師は、 国内外の顧客の要求を満たすため、 生産効率や製
品の品質を向上させる任務を与えられている。
第4節
本国政府および受入国政府による支援策
本調査対象企業はすべて、 タイ投資委員会 (BOI) から優遇措置を受けてきた。 具体的に
は、 8年目までの法人所得税の免除、 製造工程で使用される機械および原材料に対する関税免
除などである。
これらの魅力的な特典により、 資源生産性を高める新品の機械・生産設備を伴って、 海外の
投資がタイに流入してきた。
機械・金属加工産業に対するタイ政府の支援策については、 BOIが 「BUILD」 室を設立し、
クラスター・システム (clusters system) を強化するために、 外国投資家と現地投資家または
部品サプライヤー、 もしくは両方をマッチングする業務を行っている。
操業開始時に、 優遇措置を得た企業は主にほとんど全てが、 工業省 (MOI) の運営する工業
団地に工場を設立している。 こうした工業団地は、 外国投資家に対し必要なサービスをすべて
提供している。 優遇装置を受けておらず、 工業省運営の工業団地に立地していない企業は、 同
省の産業部に登録を申請しなければならない。
金融支援に関しては、 製造業部門の企業に対する金融支援を所掌する政府機関、 すなわちタ
イ産業金融公社 (IFCT) および小規模産業金融公社 (SIFC) が、 数多くの合弁企業に低利融
146
表12
受入国政府および本国政府の支援策
会社名
受入国政府
外国投資企業本国政府
1
MNCプラスチックス
BOI―優遇措置
なし
2
ロスティ (マラ)
BOI―優遇措置
不明
3
サミット・ステアリング・ホイール
BOI―優遇措置
台湾政府が運営している研究開発機
関からの技術支援
4
マキシム・インテグレイト・サーキット (タイ)
BOI―優遇措置
なし
5
カオホン・インダストリアル
BOI―優遇措置
なし
(出所) 本調査
資を行っており、 操業立ち上げに役立っている。 また、 輸出志向企業は、 輸出業務への金融支
援をタイ輸出入銀行 (EXIM Bank) から得られる。
しかし、 調査した5企業は商業銀行に依存しており、 投資パートナーおよび輸出市場に関す
る情報についての支援のみを求めてきた。 台湾系のサミット・ステアリング・ホイールは、 製
品の改良および新しい試作品の製作をしようとした際に、 生産ノウハウに関して政府当局から
の技術支援を受けている。 表12では受入国政府および外国投資企業本国政府の支援策について
詳細を示している。
第5節
海外生産拠点の成功要因および直面した問題/課題
調査した各企業の海外生産成功要因について以下に列挙したとおりである。
1.
MNCプラスチックス社
シンガポール人投資家は、 業務および文化面での融合をはかることでタイ側カウンターパー
トとうまく統合した。
シンガポール人投資家は、 香港の金型・ダイス型製造専門家と提携す
ることで、 技術能力向上に専念した。
日本の顧客を獲得するうえで日本人のマーケティング
担当を雇用したのがうまくいった。
2.
ロスティ (マラ) 社
異業種の有力会社間、 すなわちデンマークのロスティ社 (金型製造) およびタイのマラ社
(プラスチック製造) 間の合弁がビジネスを成功に導いた。
優秀なパートナーを正しく選択できた。
技術能力および資金手当の面で
採用したマーケティング戦略は、 技術者が製品を改
良する上で、 エンド・ユーザのニーズを学べるようにマーケティング・チームに参加できるよ
うにするものだった。
147
3.
サミット・ステアリング・ホイール社
合弁企業の現地側パートナーが優れていた。 具体的には、 現地企業が自動車産業での技術的
バックアップ体制がしっかりしていて、 良いコーディネータの存在により、 高品質の製品を生
産できるようになった。
コストを削減するとともに、 ハンドル製造技術の進歩に遅れないよ
うにすることができた。
現地関連企業および本国企業間の分業体制がうまくいった。
4.
マキシム・インテグレイト・サーキット (タイ) 社
ユニークな生産管理である管理システムを支援する企業文化が強い。
信頼性を高めた。
技術に対する評価・
研究開発面の支援体制が強固で質の高い技師から常にサポートされてい
る。
5.
カオホン・インダストリアル社
タイの一般特恵制度 (GSP) を利用して、 工作機械を米国市場に輸出している。
現地ス
タッフの生産性を向上させるとともに、 工作機械の質を台湾製と同じ水準に維持することがで
きた。
不況期には、 エンド・ユーザに直接アプローチし、 修理・保守サービスを提供してい
る。
表13
会社名
1
MNC プ ラ ス
チックス
2
ロスティ (マ
ラ)
3
サミット・ステ
アリング・ホイー
ル
4
マキシム・イン
テグレイト・サー
キット (タイ)
5
カオホン・イン
ダストリアル
直面する問題・課題
操業前
操業開始時点
現在
―受注を定期的に確保するた
め、 適切なマーケティング戦
略をどのようにたてるか。
―立地する地域で、 質の高い ―問題・課題は最小限に抑え
技術者を集めるのが困難。
られているが、 ただ、 ミスコ
ミュニケーションにより、 生
産性の向上が困難になってい
る。
―技術スタッフの不足、 労働
者の技術的基盤が弱いこと。
―デンマークの技術および同
国から輸入した機械のノウハ
ウについてよく知らなかった。
―不良品の割合を最小限に留
めようとしており、 日本人専
門家の支援を求めている。
―マーケティング適任者を見
つけるのが難しく、 操業開始
に向け受注を確保するのが困
難。
―製造工場で, 機械と製造工
程とを合わせる業務を行う適
任者を見つけるのが困難。
―特にハンドルの安全基準が
常に厳しくなっているので、
いかに技術変化対しスタッフ
を備えるかが課題。
―会社設立を手配するコー ―質の高い技術者を集めるの
ディネータを見つけること。
が困難。
―BOIの優遇措置の下、 税金
払い戻しをスピードアップす
る必要がある。
―技術者を集めるのが困難。
―停滞期に、 経験を積んだ労
働者を一時解雇しなければな
らなかった。 操業が回復すれ
ば、 彼らを再び雇い、 訓練し
なければならないかもしれな
い。
―米国市場で要求される標準
をみたす品質を確保するた
め、 製造工程を注意深く準備
しなければならなかった。
148
また、 調査した企業に対し、 操業前、 操業開始時点、 現在の3時期各々において直面した問
題・課題を挙げてもらった。 その結果を表13に要約する。
第6節
調査対象企業が期待する機械・金属加工産業
本調査対象企業は一定の製造段階に従事しており、 その技術水準は比較的低い。 また、 既存
のサプライヤーおよび本国のどちらかあるいは両方から、 原材料、 部品・コンポーネンツを輸
入してきたが、 その理由は仕様にあるといわれる。 こうした輸入は、 タイに外国投資を誘致す
る手段としてBOIが付与するインセンティブによるところが大きい。 そのため、 機械・金属加
工産業分野においては現地生産の製品を使おうとしてこなかった。
機械・金属加工産業が発展する要因としては、 一般に、 標準的な品質を確保できる鋳造業そ
の他の金属加工に関連する活動が存在することである。 これらの存在によって、 建設産業、 農
業機械、 自動車・家電向けの金型・ダイス型、 プラスチック製品向け金型・ダイス型、 アルミ
製装備品などの成長が促されるであろう。
本調査により、 各企業が進出を期待する機械・金属加工産業が明らかになった。 その結果を
表14に要約する。
表14
今後の投資計画および進出が期待される機械・金属加工産業
会社名
1
MNCプラスチックス
2
ロスティ (マラ)
今後の計画
進出が期待される機械・金属加工産業
金属打抜き (Metal-stam-ping) 部品
の生産
―電子産業向け金属打抜き部品のため
の金型・ダイス型
―打抜き部品用の機械は輸入する予定
電子産業の部品・コンポーネンツ向け
エンジニアリング・プラスチック
―プラスチック射出成形用金型・ダイ
ス型
3
サミット・ステアリング・ホ
イール
未だ計画は立案しておらず、 自動車産
業の状況に左右されている様子。
―ハンドル製造用金型・ダイス型
4
マキシム・インテグレイト・
サーキット (タイ)
今後2年間で半導体向け試験サービス
を拡大し、 従業員を600人増やす予定。
―なし
5
カオホン・インダストリアル
景気の好転と米国市場の需要増加を
待っている。
―鋳鉄 (Casted iron) だが、 台湾の
親会社から輸入する予定。
第7節
1.
岐阜県製造業に適切な海外生産拠点モデルの提言
海外生産モデルおよび成功要因
タイで機械・金属加工産業に従事する外国中小企業のビジネス実績から東アジアの海外生産
149
モデルは戦略および技術水準によって次のモデルに分類できる。
貿易・投資主導型戦略―こ
の戦略を採る外国中小企業は、 タイ投資委員会 (BOI) から付与される優遇措置を得るととも
に、 親会社から機械・設備を持ち込む。 現地パートナーの有無にかかわらず、 タイ国内市場お
よび輸出市場を拡大することができるであろう。
技術主導型戦略―タイの機械・金属加工産
業に精通するオペレータのいる外国中小企業は、 生産管理がしっかりとした生産拠点を設立
し、 組立工場からの受注確保のためマーケティング・ミックス (marketing-mix) 戦略を適用し
てきた。
グローバル・ソーシングおよびサプライ・チェーン・ネットワーク型戦略―サプラ
イ・チェーン・ネットワーク化を通じて設立された外国中小企業は、 タイに生産拠点を設立す
ることで、 コスト削減および品質管理を目指している。 その際、 技術能力とその集積が考慮さ
れた。
ビジネス機会追求型戦略―この投資戦略を採用した外国中小企業は、 金属加工産業に
サービスを提供する工場を設立し、 現地金属加工産業を支援するため、 相当の請負業務を行っ
ている。 こうしたサービス提供企業は、 長期的には、 機械部品・金属部品の事業所設立を目論
んでおり、 その次の段階では機械メーカーになるであろう。
次に、 本調査により判明したタイ生産拠点の成功要因を、 技術水準、 本国企業が有する技術
の採用・適用の観点から以下に要約する。
技術水準が中級レベルの産業にはカー・オーディオ部品、 接続子部品、 電話部品、 高品質
なスピーディング・ホイール (speeding wheel) 用のエンジニアリング・プラスチックを製造
し、 大手組立メーカーに供給する金型・ダイス型産業が該当する。 調査した企業が挙げた成功
要因は次のとおりである。 ①質の高い技師あるいは技術者を有する本国企業の技術能力の高さ
②金融支援体制がしっかりしている現地関連企業、 長年にわたって機械・金属加工産業に従事
してきた現地企業家の存在③技術移転および高品質な製品を確保するための技術協力に必要な
コーディネータの存在④様々な操業段階、 操業開始前、 操業中、 今後の操業に関し、 適切な
マーケティング戦略ができること⑤文化的背景を考慮し、 相互信頼・理解を得ることで、 現地
企業および親企業間の関係を良好なものにすること。
技術水準が低級レベルの産業、 労働
集約的な金属加工産業には、 IC向けサービス提供・試験、 親企業から輸入した部品・コンポー
ネンツの機械ないし工作機械への組立などが含まれる。 この種のローテク産業は、 低生産コス
トおよび高品質製品を確保し、 製造業の世界標準を満たすためのサプライ・チェーン・ネット
ワーク化戦略を採用・適用している。 本調査で判明した成功要因は次のとおりである。 ①政府
からの支援保証を取りつけ、 事業を開始させることのできるコーディネータの存在②その専門
性によって低廉な運転コストが保障されるような核となるビジネスに集中すること③明確なビ
ジネスプラン、 コスト削減とともに生産性を向上させ、 製造工程の継続を確保すること。
150
2.
岐阜県製造業に適切な海外生産拠点モデル
岐阜県は、 ジェトロ (JETRO) および国際協力事業団 (JICA) のバンコク事務所を通じ
(工業省のMIDIの協力を得ながら)、 タイの情報・組織ネットワークを利用すべきである。 そ
して、 海外での金属加工産業の研究生産拠点モデルは、 次のような適切なモデルを導入すべき
である。
技術主導型戦略モデルとして
程を特定する、
る、
現地パートナーの視点でハイテクとみなされる製品・生産工
技術的背景および関連活動を考慮し、 当該事業に最適な現地企業を特定す
それぞれの活動やビジネスについてその市場およびマネジメントの背景を特定するか、
または市場主導型戦略モデルとして
る、
市場環境およびマーケティング・チャンネルを評価す
調達部門のスタッフ (主にタイ人) にアプローチするためのマーケティング・チームを
組織するといった戦略を策定する。
また、 日本企業文化の採用・導入を図り、 現地スタッフを雇用し、 訓練を施して日本式で働
けるようにし、 品質管理を確実に行える管理システムを構築する。
更に、 岐阜県から進出してくる新しい企業は、 大半の中小企業と同じように、 次の3時期に
各々の措置を取ることで、 運転コストを最小限に抑えなければならない。
操業開始前には、 スタッフの雇用、 特に技術労働者および熟練労働者について達成目標を設
定し、 受入国政府当局への対処から生じる問題に取り組むため、 テクニカル・コーディネータ
を任命する。
操業開始時点では、 製造工程で使用される新しい機械・設備に労働者が慣れるまでの時間的
余裕を与える。
今後、 取り組むべき長期的課題としては、 内部要因として
学)
組織図作成
管理システム評価
生産性
コスト削減 (価値工
あらゆるレベルの労働者の業務の調整、 外部要因とし
ては政府政策へのフォローアップといったことが挙げられる。
第8節
岐阜県が採用すべき方策への提言
岐阜県は長野県のように、 JETROバンコク事務所内に現地事務所を構え、 工業省の工業振興
部 (Department of Industrial Promotion, Ministry of Industry)、 特にMIDI (Metal-Working Indu
stry Development Institute) の協力を得て、 現地パートナー、 コーディネータ、 現地スタッフ
を獲得すべきである。
また、 機械・金属加工産業の各分野におけるコーディネータおよびスタッフを一緒に探して
くれる政府官僚との関係を築くことも重要である。 さらに、 この部門における成長企業 (主と
して外国企業から構成される) および非成長企業 (タイの中小企業) に関する情報を常に更新
151
し、 活動を検討すべきである。 各分野の製品・サービスの多くは、 既に供給力が過剰となって
おり、 価格値下げ競争に走る可能性がある。
投資前段階としては、 一般情報として
投資委員会 (BOI) が認可する投資および優遇措置
他政府関連部署、 すなわち税関、 工業省、 商務省の役割および活動
タイ工業団地公社 (IE
AT) が販売する工業用地、 地価、 土地条件 (外国企業はIEATの運営する土地で操業すべきで
ある) および工業区域ゾーニング
可能性
て
教育機関が立地する地域の技術学校生ならびに技師の利用
企業が立地を予定している工業地域の潜在的顧客を調査する。 また、 内部組織につい
企業の目的を達成するための協力形態を決定させる
本国企業からのスタッフの受入態勢
を準備させ、 タイの文化・生活様式に関する知識を提供するといったことが挙げられる。
操業立上げ前には、
用地運営に関する検討
現地スタッフおよび本国企業間の調整の試用
管理システムの試用等が挙げられる。
操業開始時点では、
スの導入
会社におけるコーディネイトの効率性を評価するための手法・プロセ
効率性を評価し、 現地労働者の労働慣行に変化を促すための会合を毎週、 あるいは
隔週で開くといったことが挙げられる。
152
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