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医療と法(田宮武文)

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医療と法(田宮武文)
医療と法(田宮武文)
1
2、3年前期
選択必修
2単位
集中
科目内容・目標
この授業は、医療という通常の法律家にとっては専門外の分野において生じる法的問題について、最近の立
法、判例及び実務を踏まえ、また、現場の実情も適宜紹介しつつ、講述するものである。
医療と関わる法律問題は、民事法・刑事法、あるいは、実体法・訴訟法を問わず、全法律的分野において生じ
るため、個別法分野における断片的知識のみでは適切に対応することは困難である。
また、そもそも医療に関する専門的知識を全く欠いたままでは、問題の所在を理解することすら覚束ない。
そこで、この授業は、発展・先端科目として位置づけた上で、基幹法律科目を修得し、法律学全般にわたる基
本的・体系的な知識を有する者を対象とする。
また、単に法律論を学修するのみならず、基礎的な医療知識も併せて習得することで、この分野における問
題の本質を理解することができるようになることを目標とする。
内容は多岐に渡るが、日本における医療訴訟の特色・類型をふまえた上で、医療契約総論、医療水準、医師
に課せられる法的義務といった基本問題、患者の自己決定権とその限界、尊厳死、医療過誤訴訟において特有
の手続的問題、因果関係論、損害論、そして、医療危機管理等に分けて講述する。
2
授業の基本方針
現在、多数の医療過誤事件がマスコミ等により報道されている。
これからも医学の進歩に伴い、新しい医療技術・医療機器・薬剤などが開発されていく一方で、医療を行う機
関側の注意義務違反(過失)による医療過誤事件が増大していくことが予測される。
ところが医療過誤事件は、専門的な案件として、比較的少数の医療専門の弁護士が関与していることが多く、
一般の弁護士は知識と経験が不足しているといわれている。
しかし、法曹になる以上、例えば弁護士として、日常起こりうる医療に関する相談を受けたとき、苦手意識を持
って最初から逃げてしまうようでは到底一人前の弁護士とは言えない。
裁判官や検察官になった場合でも、医療に関する事件を扱う機会はいつでも訪れ得るのである。
本授業では、医療分野特有の問題点、切り口をふまえつつ、必要最低限度の対応ができる法曹を養成するこ
とを目標とする。
その上で、法科大学院の設立の趣旨にも鑑み、医療の世界を題材にし、実務をふまえつつも、基本的な法的
思考方法を習熟させることも意識した授業を展開することを目指す。
これらを実現させるため、以下のような基本方針をとる。
1 目標とするのは、医療に関する案件でも法曹として最低限度の対応ができるに足る法的思考方法と、基本
的知識の習得である。 より深い医学的専門知識については、法曹資格を現実に得、具体的事件を扱う段階
で徹底的に勉強する必要があるが、ここでは、その前提となる基本的姿勢を修練していきたい。
2 法曹として、医療に関与する立場は様々であることに鑑み、患者側・遺族側の立場からのアプローチを中
心としつつも、病院や医師、場合によっては行政機関からのアプローチ等、なるべく多方面から光を当てるこ
とを心掛けたい。
3 本授業は、「前期集中授業」として実施されるが、その名の通り、授業時間中は真剣勝負で臨んでいただき
たい。しかし反面、学生には授業時間以外の負担は極力かけないよう、配慮・工夫するつもりである。
-1-
3
成績評価
学生の理解を確認するために実施する予定である総合演習の結果、及び毎回の授業への取組みの姿勢、具
体的には、重要判例についての発表や授業における質問ないし発問に対する応答等を総合的に勘案して、厳
格な成績評価を行う。
評価の割合は、総合演習の結果(5 割)、重要判例についての発表又は授業における質問ないし発問に対す
る応答等(5 割)を基本とする。
4
教材
講義用レジメ・資料(講義に必要な判例等)を事前に配付する。教科書としては、特に指定はしない。
5
授業計画
全 15 回の授業予定は、以下のとおりである。
なお本講義は「前期集中授業」として、集中的に実施する予定である。
第1回
1
2
3
日本における医療訴訟の特色及び類型について
日本における医事関係訴訟事件(医療訴訟)の動向
日本における医療訴訟の特色
医療訴訟の類型
第 2 回 医療訴訟改革の実態と、法律家としての関わり方について
第 3 回 現代の医療における医師の注意義務(医療水準と診療上の注意義務)
1 医療契約総論
2 医療水準
第4回
1
2
3
具体的な局面における医師の義務と責任
問診義務
転医義務
その他の義務
第5回
1
2
3
医師の説明義務(1)
説明義務の意義
医師に説明義務が発生する根拠
説明義務の発生とその内容
-2-
第6回
1
2
3
4
5
6
医師の説明義務(2)
説明義務の限界
特殊な医療行為について
説明の時期
説明の相手方
説明義務違反についての主張・立証責任
説明義務違反の効果
第7回
1
2
3
患者の自己決定権とその限界
自己決定権とは何か
日本法における患者の自己決定権
自己決定権の限界
第8回
1
2
3
生命倫理
安楽死・尊厳死
信仰に基づく輸血拒否
その他の諸問題
第9回
1
2
3
医療に関する法律相談について
調査の必要性と重要性
遺体解剖について
事実経過に関する証拠の収集
証拠保全手続
医学的知見の収集
4
第 10 回 訴訟以外の解決方法について
1 訴訟前交渉
2 医薬品副作用被害救済制度
第 11 回 医療訴訟(1)
1 提訴における注意点
2 因果関係論
第 12 回 医療訴訟(2)
1 損害論
2 証人尋問
第 13 回 医療危機管理
第 14 回
総合演習 (1)
前回までの授業に基づいて、学生の理解を確認するための演習を行う。
第 15 回
総合演習(2)
同 上
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