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経営戦略プラン - 松江市上下水道局

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経営戦略プラン - 松江市上下水道局
第一次松江市水道事業
経営戦略プラン
松江市水道局
第一次松江市水道事業
経営戦略プラン ダイジェスト版
(平成16年度∼平成25年度)
平成16年1月
松江市水道局
ホームページ版
は
じ
め
に
松江市水道事業管理者
水道局長
小
川
正
幸
水の都、松江は、中国山地に源を発する斐伊川下流の大きな汽水湖
中海、宍道湖に囲まれ水辺を中心としたすばらしい自然と環境に恵ま
れ、出雲神話にみられるように古代文化発祥の地として、歴史や伝統
を育んできた国際文化観光都市です。
松江市の上水道は、大正7年通水開始以来、市勢の発展とともに増
加し続ける水需要及び慢性化する水不足に対応するため、昭和 40 年
代以降島根県用水供給事業に参画し、水源の確保と施設の拡充整備に
努め、現在まで85年の間、市民に欠かすことのできない都市基盤施
設の一つとして、市民の皆様の要望に応えるべく日夜努力をしている
ところであります。
しかしながら、ライフラインとしての水道の重要性から、安全で良
質な水の安定給水に万全を期すためには、災害対策、老朽施設の更新、
未給水地域の解消など取り組むべき課題はまだ多く残されています。
21世紀に入り急速な国際化、都市化、情報化の進展、ライフスタ
イルや価値観の多様化、産業構造の転換など社会経済情勢は大きく変
わりつつあり、また、水道の普及と共にめまぐるしく時代が変貌しつ
つある現在、市民の皆様の水道に対するニーズは量的充足から安全、
安心な質的向上へシフトしつつあり、より高水準な水道サービスが求
められています。
こうしたことから、今後、松江市水道
局におきましても、広範なアウトソーシ
ングの推進等民間経営手法を導入した経
営の効率化を進めるとともに、市町村合
併にあわせ簡易水道事業や近隣中小規模の上水道事業における経営
基盤の改善と強化を行ってまいります。
また、近い将来の水道事業経営を考える上でスケールメリットを求
めることが重要であり、さらには「水道事業の広域化、一元化」を推
し進めて行かなければなりません。
今後、県を含めた他市町村の課題として検討、協議を重ねてまいり
たいと考えます。
いずれにいたしましても、いかに市民の皆様に情報を開示し要望に
応えていくか、また、そのためにはどのような水道を造り上げるべき
かについて、中長期的展望にたったうえで明らかにすることが重要で
あると考えています。
この「第一次松江市水道事業経営戦略プラン」は、松江市水道局の
長期的な水道経営の基本計画として策定いたしました。
また、今後、市民の皆様から幅広くご意見をいただきながら、将来
にわたり信頼される水道づくりに努め、共に次世代に引き継いでいき
たいと考えています。
第一次松江市水道事業経営戦略プラン
ダイジェスト版 目次
第1章.水道事業の現状と課題
…………………………………P−
(1)全国的な情勢
………………………………………………P−
(2)本市の現状と課題
…………………………………………P−
第2章.経営戦略プラン策定にあたって
………………………P−
(1)経営戦略プラン策定の趣旨
………………………………P−
(2)経営戦略プラン策定に向けての基本的な考え方
………P−
(3)経営戦略プランの概要
……………………………………P−
第3章.個別事業戦略プラン
……………………………………P−
(1)水源の保全及び水質管理の強化
…………………………P−
(2)効率的な施設整備と維持管理
……………………………P−
(3)総合的な危機管理システムの確立
………………………P−
(4)お客様サービスの充実
……………………………………P−
(5)人材・組織等の見直し及び活性化
………………………P−
(6)情報基盤整備事業の推進
…………………………………P−
(7)簡易水道事業のあり方
……………………………………P−
(8)その他主要施策
……………………………………………P−
第4章.経営の健全化、効率化に向けて
………………………P−
1
2
3
7
8
11
17
21
22
26
35
40
47
52
57
61
77
(1)松江市水道事業計画
………………………………………P− 78
(2)松江市市水道事業の経営分析
……………………………P− 80
ア.収益的収支及び資本的収支の分析
……………………P− 80
イ.計画期間における収益的収支
及び資本的収支の推移予測
………………………P− 81
ウ.水需要予測を含む業務計画
……………………………P− 83
エ.起債の借入及び償還状況と今後のあり方
……………P− 84
オ.給水単価、供給単価、県受水単価の分析
……………P− 85
カ.各種経営指標の分析
(他類似事業体との比較検証を含め)
…………………P− 86
キ.内部留保資金の動向と今後のあり方について
………P−112
ク.引当金の考え方
…………………………………………P−114
ケ.適正な事業報酬(社会的必要余剰)の考え方
………P−116
(3)料金体系のあり方
………………………………………P−117
……………………………P−117
ア.料金審議会の開催について
(4)健全経営化に向けて
………………………………………P−118
第1章
水道事業の現状と課題
1−1
全国的な情勢
1−2
本市の状況と課題
1
1−1
全
国
的
な
情
勢
国においては、長期にわたる厳しい経済情勢が続き、財政状況の悪
化が見られる中、経済の活性化を図るため、「聖域なき構造改革」の
基本的方針のもと、簡素で効率的な行政システムを確立するため、時
代の要請に即応して行政の役割を見直し、行政組織等の減量・効率化
や特殊法人等改革などの構造改革が推進されています。
一方、規制緩和及び地方分権の一層の進展とともに、地方公共団体
においても、外部委託、PFI等の民間的経営手法の有効な活用、業
績評価手法の活用、情報の積極的開示など新たな環境の変化に的確に
対応することが要請されています。
水道事業の経営は、一般的に累積欠損金を抱えた他の公営企業と異
なり、これまで経営に対する危機感がさほどもたれていませんでした。
しかし、安定供給を目的とした新たな水源の整備負担、老朽管・施
設の整備、水質の維持に伴う関連整備、耐震化対策など、多くの課題
を抱える中、国庫補助金の削減、地方財政の逼迫に伴う建設投資の先
細りが懸念されています。また、一方で、料金収入の大幅な増収は見
込めない現状で、どのように投資原資を確保するかが大きな問題とし
て掲げられています。
2
1−2
本 市 の 状 況 と 課 題
本市の上水道は、大正 2 年 10 月に一級河川斐伊川水系の忌部川に
水源を求め、計画給水人口 5 万人、計画一日最大給水量 6,300 ㎥で事
業認可を受けた後、総工費 63 万 4 千円をかけて着工し、大正 7 年 3
月に今日にいたる千本ダムが完成、同年 6 月 1 日に通水を開始しま
した。続く昭和 28 年からの第 6 次拡張事業で忌部川支流に大谷ダム
の築造を計画、昭和 32 年 4 月 1 日から貯水を開始しました。
その後、市民生活の近代化に伴い、急増する水需要に対応するため、
昭和 44 年 6 月に島根県営布部ダムから受水(給水人口 95,000 人、
一日最大給水量 40,000 ㎥)を、また、昭和 48 年の異常渇水を契機
に、昭和 55 年 6 月に県営山佐ダムから受水(給水人口 140,200 人、
一日最大給水量 70,000
㎥)を開始しました。
以降、安定給水の確保
のため施設の改善、更新
等整備を進め有収率の
向上(H13 年度 90.2%)
に努め、貴重な水資源の
島根県営山佐ダム
3
有効利用と経営の健全化に努めて来ました。しかしながら、大きな自
己水源を持たない本市は、現在、約 17,536,000 ㎥(年間給水量)の
うち、63%を県受水に頼っています。
さらに今後、給水人口の
増加、下水道普及率の向
上、簡易水道への安定給
水などの対応のため、第
11 次拡張事業として平成
尾原ダム「1000年の森づくり」事業
23 年度から供給開始予定
の 斐 伊 川 水 系 県 営 尾 原 ダ ム 受 水 に 参 画 し て お り 、( 計 画 給 水 人 口
153,800 人、1日最大給水量 81,600 ㎥、H15.3.25 施行)これに
伴う受水関連施設の整備事業に約 50 億円、その他建設改良事業に約
100 億円を見込んでいます。したがって、これに伴う受水費は大幅に
増加するものと見込まれます。
本市水道事業は、
「安定供給の推進と有収率の向上」
「水道事業会計
の健全化」を基本方針に事業を進め、有収率は 90%を超え、また財
務状況については、経年約 2 億円程度の純利益を上げており、事業運
営はこれまで概ね良好に推移して来ています。しかしながら、今後の
水道事業を取り巻く状況は、人口の増加が大きく望まれないことに加
え、景気の低迷や節水意識の向上により、水需要の大幅な増加は期待
4
できない状況にありま
す。
一方、平成 14 年度決
算では、企業債の借入残
が 105 億円ありますが、
前述のように尾原受水
関連事業を含めた建設改良に伴う総事業費に 150 億円の資金が必要
です。
以上のように、本市にとって「収入の伸び悩み」と「整備事業費の大
幅な増」という 2 つの大きな課題を克服することが、中長期的な重要
課題となっています。
これら 2 つの大きな課題を解決する方法として「料金改定」あるい
は「経費の削減」が考えられます。前者については、市民に対し明確な
説明をし、理解が必要
とされますが、デフレ
経済、公共料金の下降
傾向、住民意識を考察
すれば、安易に値上げ
を出来る状況ではな
忌部浄水場(沈澱池・ろ過池)
5
く、今後十分な経営分析を行った上で、慎重に検討する必要がありま
す。
また、後者については、水道事業体としてコスト削減に向けて、業
務委託の推進、入札制度の見直し、PFIの活用などによる一層の工
夫が求められると同時に国・県レベルにおける水資源・水道事業の広
域化などを積極的に促進していく必要があります。
これらの課題の他、水道事業に関する情報を適時、積極的に提供し、
透明性を一層高めることにより、水道経営に対する市民理解の向上に
努める必要があります。
6
第2章
経営戦略プラン策定にあたって
2−1
経営戦略プラン策定の趣旨
2−2
経営戦略プラン策定に向けての基本的な考え方
2−3
経営戦略プランの概要
7
2−1
2−1−1
経営戦略プラン策定の趣旨
位 置 付 け
21世紀に入り、これまでの経済、社会面は右肩上がりの発展を前
提とした成長時代から成熟した時代へと大きな転換期を迎えていま
す。
そのような中、水道事業におきましても、水需要が伸びるのに伴い
施設拡大を図り、国民の公衆衛生の向上を目的とした事業のあり方か
ら本格的な少子高齢化の時代の中で良質な水を安定的、公平に供給す
ることが求められています。
この経営戦略プランは、従来の水道事業10ヵ年基本計画から第5
次松江市総合計画の安心・安全で
快適な生活環境を整える(快適に
くらせる基盤づくり)と連動しつ
つ、今後の事業運営視点を水道事
業の経営全般にわたる総合計画
と位置づけ、おおむね10ヵ年を
目途に「水源保全及び水質管理の
強化」「PFI手法の導入、事業
8
委託を含めた効率的な施設整
備と維持管理の推進」「総合的
な危機管理システムの確立」
「お客様サービスの充実」「人
材・組織の活性化」「経営分析
及び経営改善のあり方」等全て
の分野において現状分析を行った上で、将来にわたる水道経営の指針
となるような計画を策定し、経営の健全化・効率化を進めていく考え
であります。
なお、実施に当たっては諸課題や情勢の変化に適切に対応しながら、
今後、市民に安心と質の高いサービスの提供を行うために、将来に向
かって本局が目指す方向を具体的に示し、中長期の取り組みを明らか
にしていきます。
2−1−2
必
要
性
本市の上水道は、大正7年給水開始以来85年の間、絶えざる水と
の戦いであり、常に新水源を求めての調査及び第10次の拡張、2回
の改善事業により、市勢の発展や市民の毎日の暮らし、都市活動を支
え今日にいたりました。
現在、自己水源である千本・大谷、両ダムの忌部水系と左水水系、
9
島根県からの受水(飯梨水系布部、山佐ダムと新たに斐伊川水系尾原
ダム)により一日あたり給水能力81,600㎥を確保し、本市の1
53,800人に給水する水道として成長しました。
しかし、水道に対する要求は、災害時における市民生活や都市活動
に必要な水の確保やより安全でおいしい水の供給など、多様で水準の
高いものになっています。
今後、本局が、市民に今まで以上のサービスを提供し、信頼され続
けるためには、今一度本局の現状を認識した上で、長期的視野にたっ
た事業展開が必要であります。
10
2−2
経営戦略プラン策定に
向けての基本的な考え方
1において、水道事業における全国的な課題、或いは本市がかかえ
る個別的な課題を取り上げてきましたが、今後、これらの課題にどの
ように対処していくのかが今問われているのではないかと考えます。
本プランは、現状での諸々の課題を考慮し、市民意識の反映を図る
とともに、地方分権や行政改革の推進にも十分に留意しながら、下記
の6つの視点でプランの基本的な考え方を示すものです。
2−2−1
(経営基盤の強化)について
公営企業といえども、一つの企業体として、今後、「経営基盤の強
化」をどのように図っていくのかが重要であると考えます。
近年めまぐるしく変わる社会情勢や地方分権の推進に的確に対応
するためには、地方公営企業においても徹底した行政改革の推進が必
要です。
その第一歩として、昨年度において、労働組合との関係、特に、
「管
理運営事項の取り扱い」「労働協約のあり方」「賃金・諸手当の削減」
等の面から大幅な内部改革を行ったところです。
これらの改革を基礎としながら、企業経営の総点検を実施し、従来
11
以上に業務執行体制の簡素・合理化・業務の抜本的見直し、定員及び
給与の適正化、IT・行政経営評価の活用を進めることにより経営の
健全化・効率化を推進し、経営基盤の一層の強化を図る必要がありま
す。
なお、このような状況下において、経営基盤の強化を行うにあたっ
ては、経営感覚に富んだ管理者・管理職の強力なリーダーシップ及び
職員の協力が不可欠であり、また、そのような人材の育成が重要です。
併せて、地方公営企業法の管理者制度の趣旨等を踏まえ、経営に関
する識見と指導力を十分に発揮し21世紀に通用する水道事業を構
築していかなければならないと考えます。
2−2−2
「民間的経営手法の導入」について
平成13年6月に閣議決定された
「今後の経済財政運営及び経済社会
の構造改革に関する基本方針」等に
おいて、水道など地方公営企業への
民間的経営手法の導入を促進するこ
ととされており、アウトソーシング
やPFI等の有効活用による競争原
12
理の導入、さらには、業績評価手法の導入や経営情報の積極的な公開、
提供等による経営の透明化などを通じ、経営の一層の効率化やサービ
スの質の向上に努める必要があります。
2−2−3
「安全で良質な水の安定供給」について
阪神・淡路大震災、鳥取県西部地震以降、地震等の自然災害から水
道施設のライフラインとしての機能を確保することの重要性が改め
て認識されるようになってきました。
また、近年、水道水源である河川等公共用水域の水質汚濁に起因す
る、水道水中のトリハロメタン等の有害物質や異臭味の問題に加え、
クリプトスポリジウムによる集団感染症事件の発生、或いは、従来か
ら指摘されてきた鉛管対
策の問題等水道水に対す
る安全性に対し信頼が著
しく低下する事態が発生
しています。
水道のライフラインとしての機能を果たすためにも安全で良質な
水の安定供給は極めて重要であり、経営の健全性を確保しつつ、自然
災害や不測の事態による被害の未然防止又は多様化、高度化する住民
ニーズなどに対して的確に対応していかなければなりません。
13
2−2−4
「水道料金のあり方と情報公開」について
公共料金については、住民の関心が高く、各方面で色々な議論が行
われていますが、その中で、水道料金は、コアサービスに対する対価
として市民生活に大きな影響があると考えます。
したがって、利用者の理解、納得が得られるようなものであること
が強く求められるとともに、その収入により経営が維持されるという
独立採算の原則からも公営企業の経営の根幹に関わる重要なもので
あると考えます。
また、情報公開法の成立によって公共料金に対する情報公開への流
れが益々大きなものになろうとしており、平成 12 年 6 月には政府の
物価安定政策会議特別部会の公共料金情報公開検討委員会において
「公共料金分野における事業横断的な情報公開ガイドラインに関す
る報告書」がとりまとめられ、政府においてはこの報告書に沿って公
共料金に関する一層積極的な情報公開に取り組むこととなっていま
す。
したがって、本市においても、今後、料金を含む経営に関する情報
については積極的に情報公開に努めるとともに、様々な議論を通じ、
適時適切な料金問題への取り組みが行われるように努力をする必要
があります。
14
2−2−5
「尾原ダムへの参画問題」について
本市としては、水源の乏しい地域であり、この点を解消するための
方策として周辺市町村とともに平成 2 年に国が建設する尾原ダムへ
の参画を決定しました。
しかしながら、最近のダム建設につきましては地理的条件等による
開発地点の希少化・遠隔化、水源地域対策及び補償問題、財源問題等
により建設期間が長期化し、建設コストが増嵩する傾向が顕著となっ
ており、実際、尾原ダムの事業費も、当初計画に比べ概ね 5 割強のア
ップになっています。
このような状況の中で、本局としては、「安定給水の確保」という
観点から参画を決断しましたが、ダムの建設に多額の費用がかかるこ
とや長引く景気低迷或いは節水意識等の徹底による水需要の鈍化等、
社会、経済状況の変化を考え合わせると、結果として水道料金へ
15
の跳ね返りといった問題が生じてくるのではないかと予想していま
す。
したがって、今後、本局としては必要に応じて利水容量等の見直し、
経費節減等を行うとともに、市民の意見を聞きながら料金値上げに対
する市民生活への影響を極力、抑えていくことが重要ではないかと考
えます。
2−2−6
「当面する主要課題」について
本局としては、上記課題の他に、市町村合併を含む事業の広域化の
問題、下水道・松江鹿島水道企業団との統合問題、水道未普及地域の
解消、庁舎新(改)築問題、情報基盤整備等様々な課題を抱えていま
す。
本局として、これら諸課題を解決するため、市民サービスの向上、
効率性の視点をもって、速やかに取り組まなければならないと考えま
す。
これからの水道事業は、これらの山積する課題を適切に対処し、市
民生活の向上に貢献するため、一層の努力が求められています。
16
2−3
2−3−1
経営戦略プランの概要
基 本 理 念
第5次松江市総合計画の「快適で美しい都市」心豊かな暮らしと活
力ある交流をめざしての基本理念に「国際文化観光都市」の一翼を担
うため本局としても将来にむけて安定で安心な水の確保とより良い
市民サービスの提供による快適で豊かに使うことができる水道を目
指していきます。
また、市民が水道に求めるものとしては、市民生活の向上と共に、
「安心して飲める水」
「いつでも豊富に使える水」
「おいしい水」であ
ります。
そのため、ライフラインで
ある水道事業は、「安全」「安
定 」「 低 廉 」 を 基 本 理 念 に 、
将来にわたり市民の信頼を
得ることができるよう努力
をして行かなければならな
いと考えます。
17
2−3−2
進
め
方
総合計画の策定にあたっては、
施策の方向性と経営分析を審議
する外部委員会を設置し、外部の
有識者から意見をいただくとと
もに、各方面から専門的意見や市
民の立場に立った意見を踏まえながら検討をしていきます。
内容については、水道事業が歩んできた85年の歴史を振り返り、
過去の諸課題を今一度見直し、現在の水道事業に係る社会要請を踏ま
えつつ、将来の松江市水道局のめざす方向性を探り進めたいと考えま
す。
2−3−3
プランの概要
経営戦略プランの基本理念に基づき個別の具体的事業を進める上
においての概要について示します。
(1)個別事業戦略プラン(施策、事業計画等)
① 水源の保全及び水質管理の強化
広域的な水源保全・環境保全活動を積極的に行います。
水質管理体制の強化と水源から蛇口までのきめ細かなサービスを市民に提
供できるよう事業運営をします。
18
② 効率的な施設整備と維持管理
将来にわたり安全安定給水の確保、施設整備・拡充を推進します。
給水区域拡大、最新機器導入等による維持管理の効率化、委託化推進・検
討し事業運営の適正化をはかります。
③ 総合的な危機管理システムの確立
災害や不測の事態等を未然に防ぐため、ハード面、ソフト面を兼ね備え
た総合的な危機管理システムの確立を目指します。
④ お客様サービスの充実
生活様式の多様化、ITの急速な発達、普及等ライフスタイルに合った
サービスとより利便性の高いサービスを提供できるよう事業運営を行いま
す。
⑤ 人材・組織の活性化
事務の効率化、組織の活性化を追求
しつつ、最適な事務事業の形態を構築
し組織構造への転換、専門性を必要と
する職場での高度な知識と技術を幅広
く共有できる組織を目指し、人材育成
と職員意識改革及び有効かつ計画的な
配置を行うことで人材・組織の活性化
を図ります。
⑥ 情報基盤整備事業の推進
主要施策を見据えた全庁的な情報資産の共有化・耐久化を求め、新たな
情報管理システムの構築、既存システムの更新・見直しを行い、計画的情
報基盤の強化を図っていきます。
⑦ 簡易水道事業のあり方
平成15年7月より簡易水道事業の事務委任を受け、組織の一元化を図
ることが出来ました。今後は、尾原ダムからの受水開始に合わせて小規模
水源を転換するなど、安定給水を目指すとともに水道料金格差の解消につ
いても検討して行きます。
⑧ その他主要施策
市町村合併、他事業との統合、庁舎新(改)築等を主要施策と位置づけ
事業を進めます。
19
情報公開等による市民ニーズに対応するため、水道事業評価制度、入札
制度の見直しによる透明でわかりやすい事業運営を目指します。
(2)経営の健全化、効率化に向けて
本市水道事業の経営分析及び経営改善のあり方
① 収益的収支及び資本的収支の分析
② 計画期間における収益的収支及び資本的収支の推移予測
③ 水需要予測を含む業務計画
④ 起債の借入及び償還状況と今後のあり方
⑤ 給水単価、供給単価、県受水単価の分析
(他類似事業体との比較検証を含め)
⑥ 各種経営指標の分析
(他類似事業体との比較検証を含め)
⑦ 内部留保資金の動向と今後の
あり方について
⑧ 料金体系のあり方
分担金、基本料金、従量料金の妥当
性及び今後のあり方
(尾原受水を含む)
⑨ 適正な事業報酬(社会的必要
余剰)の考え方
20
第3章
個別事業戦略プラン
3−1 水源の保全及び水質管理の強化
3−2 効率的な施設整備と維持管理
3−3 総合的な危機管理システムの確立
3−4 お客様サービスの充実
3−5 人材・組織等の見直し及び活性化
3−6 情報基盤整備事業の推進
3−7 簡易水道事業のあり方
3−8 その他主要施策
21
3−1 水源の保全及び水質管理の強化
良質な水は、良質な水源から生まれるという認識のもと、広域的な水源保全・環境保全
活動を積極的に行います。また、松江市の水源を保全するとともに、水質汚染、クリプト
スポリジウム及び鉛管対策などの水をとりまく様々な問題に対応するため、水質管理体制
を強化し、水源から蛇口までのきめ細やかなサービスをお客様に提供できるよう、事業運
営を行います。
3−1−1 水道水源保全事業
本局は、将来に渡り安定した水源の確保を目指して、造林や人工複層林の育成を中心と
した森林整備、水源周辺の環境整備に取り組んでいきます。
また、上流域自治体や水源周辺地域と協力して森林・環境整備に取り組むことで、水資
源の大切さや水質汚濁の防止に対する使用者の認識を深めるとともに、親しみやすい水源
環境の形成を目指します。
森 林 整 備
忌部川流域の森林整備は、清浄水
の確保を原則としていることからマ
ツクイ虫の駆除に殺虫剤の空中散布
は実施せず、人工林の育成を推進し
ました。昭和60年から行なわれた
忌部地区の森林整備は平成14年に
新植面積174ha となり、今後は森
林の維持管理を年次的に実施し水源
保全に取り組みます。
また、上流域自治体の広瀬町・仁
多町・横田町の三町と協力し、水資
源の保全と宍道湖・中海の水質の保
全を目的として上下流域一体となっ
て森林整備を進めていきます。
大 谷 ダ ム
※人工複層林・・・森林を構成する樹木を部分的に伐採し、その跡に人工植裁をして、
樹齢や大きさが異なる樹木の組合せを考慮して森林を造成するも
ので、自然に近い形の方法。
22
水 源 保 全
ダム上流域の側条施肥田植機の購入者を対象にした補助金の交付を推進し、農業廃水に
よる水源汚染の防止に努めていきます。また、自己水源である千本・大谷ダムの水源上流
域の一斉清掃作業やダム周辺の環
境整備を地元自治会などと協力し
て行い、ダム周辺を広く親しまれ
るエリアとして整備していきます。
さらに、自己水源である斐伊川水
系の千本・大谷ダム及び県の用水
供給事業の水源である尾原ダム、
飯梨川水系の山佐・布部ダム周辺
地域の皆様と水道水源への理解を
一層深めて頂くようなイベントを
共同開催し、水源地域間の交流を
促進していきます。
大 谷 貯 水 地
3−1−2 クリプトスポリジウム対策
平成8年6月に埼玉県越生町において国内では始めてとなる水道水が原因でクリプト
スポリジウムの集団感染が発生しました。これを受け、厚生省(現厚生労働省)は、平成
9年3月にクリプトスポリジウム及びジアルジアの水道水源における存在状況を把握す
るための実態調査を行い、その結果、本
局の水源である忌部川からジアルジアが
検出されました。それ以降本局は、水源
におけるクリプトスポリジウム及びジア
ルジアの存在状況を把握すると共に、
「水
道におけるクリプトスポリジウム暫定対
策指針」に基づき、ろ過速度を5m/日
を超えない範囲での運用を行い、常時浄
水 質 試 験
水の濁度を0.1度以下に維持するよう
管理強化を図ってきており、今後も継続
実施します。
23
図 は ジ ア ル ジ ア
3−1−3 鉛 管 対 策
平成15年4月より鉛濃度の水質基準が0.05㎎/ℓから0.01㎎/ℓに強化されま
した。鉛製給水管(以下鉛管)は、昭和37年頃までは、給水管材料として主に使用され
おり、その後昭和46年頃まで、取扱いが容易で便利であるとしてメーター前後50㎝に
使用されてきました。給水管に鉛管が使用されている場合、通常の使用状況では問題あり
ませんが、長期間使用せず給水管の中に水道水が滞留すると、鉛が溶け出し一時的に水質
基準を超えてしまうことが考えられます。
そのため、
各家庭での鉛管の使用実態を調査し、
鉛管の取替を早期に推進する必要があります。
鉛管対策工事
本局は、宅地内の鉛管使用実態を書類および現地調査し、水道メーター前後50㎝に使
用されている鉛管の取替工事を平成17年度内で行います。また、宅地内の水道メーター
前後50㎝以外に使用されている鉛管ついては、お客様に鉛管を取替えていただくことを
奨励します。
その他鉛管対策関連工事
公道部分に布設されている鉛管については、配水管布設替工事等の公共工事に併せて取
替工事を行います。
①老朽管布設替工事・側溝改良工事等の公共工事に伴い鉛管を発見した際、公道内
の鉛管を完全に撤去します。
②公道部分で鉛管が原因で漏水した際、公道内の鉛管を完全に撤去します。
また、現在導・送・配水管の布設替工事については、国庫補助対象となりますが、給水
管については補助対象外とされています。鉛製配水管布設替については国庫補助対象とな
24
りますが、鉛管のほとんどが給水管であることから、鉛管についても国庫補助の対象とな
るように日本水道協会を通じて国等の関係機関に要望を行います。
3−1−4 水質管理の強化
本局の代表的な自己水源である千本ダム及び大谷ダムでは、特に夏場の渇水期において、
両ダムで水源原水の滞留が原因で藻類
や微生物が発生し、pH値が上昇する
などの影響により浄水処理に障害をき
たすことがあります。そのため、水源
原水の水質悪化を未然に予防若しくは、
最小限に抑えるよう水質管理を強化す
るとともに、水源水質の悪化時におけ
る有効な前処理、浄水処理の研究及び
処理方法を周知・徹底する必要があり
ます。
水質管理の強化
①原水水質と浄水処理過程における水質変化等の研究及び様々な原水状態において最
善な浄水処理法を研究し、マニュアルを作成します。このマニュアルにより専門的知識
を共有するとともに、浄水処理技術のさらなる向上を目指します。
②水質検査を自己検査及び20条検査機関である(財)島根県環境保健公社に委託によ
り行っています。水質検査の精度管理については、水道法施行規則の一部改正により義
務付けられる水質検査計画に必要な事項であるため、日本水道協会等の動向を見ながら
具体的に対応し、水質管理の強化に努めます。
※20条検査機関・・・水道法20条の定期及び臨時の水質検査を厚生労働省令の定め
るところにより行うことができる機関
島根県内の20条検査機関(平成 15 年 11 月 30 日現在)
① (財)島根県環境保健公社
〔松江〕
② (株)安来ハイテック
〔安来〕
③ (株)環境理化学研究所
〔出雲〕
25
3−2 効率的な施設整備と維持管理
水道事業は、独立採算を基本とする公営企業であるという認識のもと、将来にわたり安
全安定給水を確保するために、施設整備・拡充を推進します。また、給水区域の拡大や最
新機器の導入に伴い、拡大・高度化する維持管理業務について効率化及び委託化を推進・
検討し、事業運営の適正化を図ります。
3−2−1 水道施設の効率的な整備の推進
本市の水道事業は、大正7年6月に給水を開始
し以来市勢の発展に即応して過去10次にわたる
拡張事業を行い、現在の第11次拡張事業のもと
で、計画目標年度を平成34年度、計画給水人口
153,800人、計画一日最大給水量81,6
00㎥/日として「安定給水の確保」に向けた事業
経営を行っています。
計画一日最大給水量の内訳としては、自己水源
が26,600㎥、尾原ダム系を含む島根県水道用水供給事業からの受水が55,000
㎥となります。
水源の分散化によって、渇水による給水制限や減断水等の危険を回避することができま
すが、水道施設も分散して建設するとともに配水池間で相互運用できる施設の整備
も必要となります。将来の水道施設の統廃合や配水管整備を含め、今後はより効率的な水
道施設整備の推進が求められます。
今後の水道施設及び配水管等の整備に当たっては、事業の優先順位を決定し概算事業費
や年次計画を策定します。他の事業との同時施工や共同施工を有効に活用するとともに補
助事業の活用、PFIの活用も検討し、コストの縮減に努めます。
基本計画方針
事業計画の策定
上水道事業会計
の 負 担 軽 減
事 業 の 予 算 化
事業の優先順位
工法等の比較
(実施時期の検討)
概算事業費の算出
年次計画
国庫補助メニュー
採択基準等調査の実施
PFIの活用検討
同時施工
共同施工の検討(協定書、覚書)
長期財政計画への反映
26
主要事業の予定
竹矢ポンプ場ポンプ井・ポンプ設備増設工事や忌部配水池及び配水ポンプ場築造工事、
配水管整備工事や輻輳管及び公共工事に伴う拡張工事などを柱とし効率的な整備を推進
します
3−2−2 老朽施設等の基本更新計画の策定
本市の水道事業は、給水開始以来85年を経過しておりますが、創設当時の主要配水
管及び緩速ろ過池等が現役で活躍しております。また、ポンプ場や配水池といった構造
物には機械設備及び電気設備が配備され経過年数、点検と目視によって老朽化の度合い
を把握し更新しています。
配管や機器、構造物等の漏水や赤水、事故、警報の履歴を管理し総合的に更新計画を
策定することが今後
の課題となります。
水道施設の各履
歴を含む情報を施設
台帳、管路台帳とし
て整理し、情報管理
システムへ移行させ
ます。このシステム
を利用した管理、分
析によって今後の水
道施設基本更新計画
を策定し、優先順位
を設定します。
忌部浄水場 補砂業務
基本計画方針
履 歴 情 報 の 収 集
施設ごとの履歴台帳を整理し、情報管理システム
の中に構築
各履歴を基礎に設置年度、製造年度から老朽化を
判別
分析結果から、更新予定年度、事業費、概要等計
基本更新計画の策定
画を策定
履歴情報の管理・分析
27
主要事業の予定
忌部川河川監視システム更新工事や忌部浄水場沈でん池傾斜板改修工事、竹矢ポンプ
場ディーゼルエンジン更新工事、老朽管布設替工事や水管橋架替工事などを柱とする建
設改良事業10ヵ年の中で老朽施設等の基本更新計画を策定します。
3−2−3 浄水場業務、配水工事関連業務及び
収納業務等の委託の推進
本局は、地方公営企業法を適用し独立採算制を原則とした事業運営を行ってきました
が、委託化、効率化において改革が遅れ、企業としての経済性の発揮という点では課題
がありました。
配水工事関連特殊構造物の基本計画、地質調査、実施設計業務の委託化や行財政改革
の一環とした検針業務の委託がこれまでの主な委託業務内容として掲げられますが、浄
水場業務や配水工事関連
業務、収納業務等の委託
化、効率化においては事
務事業の見直しの余地が
残されています。したが
って、今後の水道事業運
営にあたっては企業とし
て経済性が発揮できるよ
うまた将来にわたる健全
経営を目指し、あらゆる
角度から事務事業を見直
し、業務の委託化及び効
率化を推進していく必要
があります。
中央管理センター 集中監視制御システム
上水道施設の管理運用業務の委託化
忌部浄水場で行っている業務は、ダム施設及び河川等原水の管理や24時間体制によ
る浄水場の運転管理、中央管理センターでの送・配水運転と施設全体の保守管理、並び
に毎日の水質検査など多種多様の業務を全て職員が行っています。下記基本的な考え方
により、業務委託化及び担当人員の見直しを行っていきます。
28
上水道施設の運用管理を業務委託するにあたり基本的な考え方
今後の水道事業の方向性を踏まえた事業展開を考える
地方公営企業としての健全経営化を保てる施策を検討する
本局が迎える施設の維持管理時代に対応できる体制を整える
専門技術・知識が必要な業務は専門の企業に委託する
上水道施設を極力包括的に委託し重要度により24時間体制の管理運用を行っ
ていく
職員が作業を行うことがコストパフォーマンスに合わない業務を委託化する
個人委託、パートタイム契約にて運用を行っている業務の中で、常時安定した労
働力の確保が必要とされる業務は法人委託に切替える
水道施設構造物の設計委託化
本局では、設計積算システムを導入し平成1
3年度配管工事設計分からこのシステムを使用
して職員が設計業務を行なっていますが、ポン
プ場や配水池築造などの特殊構造物や用地造成
の設計業務については、職員で対応できないた
め民間企業に業務委託を行っています。
今後は、
尾原受水地点となる各配水池の実施設計業務や
忌部配水池及び配水ポンプ場、矢田第2配水池
などの実施設計業務を民間に委託していく予定
です。
配管工事実施設計業務の一元化
配管工事の設計については、設計積算システムの導入によって図面作成、積算事務の高
速化が可能となりましたが、近年の下水道工事に伴う移設工事等依頼件数は減少の傾向
にあります。そこで、近年の設計件数の動向を調査し業務量を正確に把握しながら、
「簡
易水道事業の設計業務」や「修繕工事の設計及び工事管理業務」の一元化について検討
を進めていきます。
検針業務の委託化
行財政改革により、12名の職員(係長を除く)で行っていた検針業務、転宅精算業
務の約半数を平成15年度に民間委託しました。また、平成16年度には、全域の検針
業務、転宅精算業務を民間委託していきます。
これらの委託化によって、平成16年4月からは2名の職員で受託者の監督指導や閉
29
栓調査等を行い、人件費の削減と民間企業の柔軟性のある対応によるお客様サービス向
上を図ります。
滞納整理業務の委託化
行財政改革により、4名の職員で行っていた滞納整理業
務について、平成16年4月を目途に民間委託化します。
また、給水停止作業については、委託者が立会のもとで
受託者が実施していきます。
道路工事に伴う立会業務の委託化
道路占用工事調整会議等により道路掘削工事を行う場合には、協議書を提出し占用物
の事故防止を行うこととなっています。本局では協議書を受理後、配給水管の影響等を
協議し施工者に今後の対応について回答を行っています。管路に影響がある場合には施
工者の依頼により事前打合せ及び立会を行っていますが、そのうち配管位置確認作業の
立会に関しては水道工事事業者に業務委託化していきます。
配給水管及び付属装置調査・点検と管路台帳整備業務の委託化
各施設間を結ぶ送水管、
お客様まで水を送る配水管及び管に接続されている装置
(機
器)を計画的に維持管理するため、平成3年度に実施された管路情報調査を基に各設
備(仕切弁、空気弁、消火栓、減圧弁、
逆止弁、
水管橋等)
の台帳の作成を行い、
巡視、点検、診断、設備の修繕及び更新
計画の策定を行います。また、将来導入
される統合型GISの管理基盤となる管
理情報を構築していきます。
配給水管せん孔業務の見直し
本局において直営で管工事作業を行っているのは、配水管の穿孔作業のみです。配管
工事全体(特殊継手の接合、管の切断、管の接合、不断水工法等)を水道工事事業者が
行っている現在では、穿孔作業も他作業と変わりなく、コスト及び業務内容の適正化の
観点から判断しても直営作業から水道工事事業者の業務に変更していきます。
穿孔作業は作業上のミスが周辺にお住まいのお客様まで影響をおよぼす事故に発生す
るおそれがあるため、本局指定の講習会の開催等をおこない試行期間を経てから実施し
ます。
30
3−2−4 配水ブロックシステムの構築
本市は、市内全体が起伏の多い盆地状の地形をしていることから、一定の水圧にて市
内全域に水を給水することは困難です。そこで、給水地域のブロック化を行い配水コン
トロールを容易に行うことを目的に、配水ブロックシステムを構築して安定給水を目指
す必要があります。
配水ブロックシステムを構築する目的
給水地域の標高差が一定以上ある場合、標高が低いところでは水
圧が高くなり、標高が高いところでは水圧が低くなります。この
配水圧の適正 結果、地域内に給水圧の格差が生じ、過剰水圧及び水圧不足にな
化及び均等化 る可能性があります。配水ブロックシステムの導入により、給水
区域を標高差ごとに区分けすることで、地形に応じた水圧を確保
することが可能になります。
配 水 運 用
の 高 度 化
工事・事故
被 害 等 の
局
所
化
渇水等により高度な水運用が必要になった場合、配水区域内の水
需要を詳細に把握して適切な運用を行う必要性があります。ブロ
ック化を行った場合、複数の水源を融通してダムなどの貯留可能
な自己水源を温存できるほか、各ブロック間での水の相互融通を
行う応援体制を確立することができます。
工事及び事故被害の局所化を図ることで、計画的な管路の整備と
更新が行えるほか、地震時など大規模な被害が発生した際の復旧
を速やかに行えるようになります。断水ブロックの明確化により
末端の復旧を早めることが基本的な考え方であり、現在の配水管
網整備の基本的な考え方となっています。
配水ブロックシステムを構築するにあたり、各ブロックの基点となる配水池からの配
水経路と給水区域を検討し、ブロック化に必要な建設改良工事を計画立案します。その
後、計画に従い配水ブロックを順次構築し配給水基盤の強化を図ります。また、計画中
の尾原水系受水時の配水計画も踏まえ、恒久的に安定給水が行えるよう計画及び整備を
行います。
3−2−5 尾原受水関連事業の推進
近年の異常気象は局所的に渇水や大雨をもたらす傾向にあり、本局においても平成2
年、平成6年、平成12年と渇水によって島根県水道用水供給事業から受水量制限を受
けました。このことから本局では、水源の分散化によって渇水の危険を回避することが
極めて重要なこと、また島根県東部地域における大規模な水源開発が尾原ダムで最後に
31
なるであろうこと等を踏まえ、尾原
ダムから日量20,000㎥を受水
することによって安定給水を目指す
第11次拡張事業の変更認可を得て、
事業に着手しました。
島根県企業局が事業主体となる斐
伊川水道建設事業は、給水市町村を
松江市、平田市、東出雲町、八束町、
鹿島町、美保関町、八雲村、玉湯町、
宍道町、加茂町とし、計画給水量を
35,
400㎥として建設されます。
尾原ダム建設事業、斐伊川水道建設
事業の平成14年度末の各進捗状況
は、事業費ベースでそれぞれ約3
9%、約64%となり、ダム本体は
平成22年度の完成予定となります。
本局における今後の事業計画とし
ては、宍道湖北ルート受水地点とな
る大野配水池、菅田配水池、本庄配
水池の配水池築造工事、既設春日配
水池の整備、給水エリア変更に対応
する矢田第2配水池の整備があり、
莫大な事業費となることから、コストの縮減が課題となります。
事業の推進にあたっては、県(斐伊川水道建設事業)や市(ソフトビジネスパーク進
入路事業)との共同施工を有効に活用するとともにPFIの活用も検討し、コストの縮
減に努めていきます。また、受水量や受水方法、受水単価の詳細について本局にとって
有利となる条件で受水契約が締結できるように協議、調整していきます。
※PFI:Private Finance Initiative(P34 3−2−7で説明)
3−2−6 水道施設等の維持管理強化
通水を開始してから、10回の拡張事業を経て現在の
給水区域に至るまで85年経過しました。そこで、計画
的に施設の更新を行っておりますが、送配水施設及び配
管網の中には老朽化しているものもあり、これからは拡
張から維持管理の時代に移り変わってきたと言えます。
また、人口の増加による新しい住宅の供給により、貯水
32
槽以下の装置にもさまざまな給水方式を
採用した建築物(※1)が大量に建設さ
れたこともあわせ、より一層水道施設全
般の施設整備と維持管理を強化していく
必要性があります。
水道施設には本局が管理している浄
水場、ポンプ場、配水池、配水管等と、
お客様が管理されている給水管、貯水槽
以下の装置、水栓等があります。
本局の資産である浄水施設、送配水施
設及び配管網は施設管理を専門に行う部
署を新設し、より一層の管理業務の強化
を図って行きます。今後、水道事業の民
営化、民間委託化等の流れも想定されま
すが、その場合でも自己水源系の浄水場
運転管理のノウハウは職員の独自技術と
して維持し、今以上に技術向上を目指し
ながら施設管理運用の強化方法を検討し
乃白ポンプ場 ポンプ室
実施していきます。また、施設管理運転業務、維持管理業務、調査業務、修繕業務等は
民間企業の技術力と人材を活用して効率的な運用を行います。
お客様の資産である貯水槽以下の装置(貯水槽水道も含まれる)も、水道法の一部が
改正され設置者(建物の所有者等)の責任等、所要の事項(水槽の掃除、水槽の点検及
び管理、水質検査等を行う)を規定することで、設置者に衛生的な維持管理を行うこと
が義務付けられました。本局においても貯水槽以下の装置の設置者に、衛生面の確保を
していただくよう積極的に通知するとともに指導をして行きます。
※1:高所に宅地造成後、建築された住宅(貯水槽以下の装置)
貯 水 槽 水 道
貯水槽水道には「島根県簡易専用水道取扱要領」に基づいて管理規準
及び具体的な検査内容を定められている簡易専用水道と、それより貯水
容量が小さい小規模貯水槽水道(簡易専用水道以外の貯水槽水道)とが
あります。
貯 水 槽 水 道 の 定 義
簡易専用水道
受水槽の容量が10㎥を超えるもの
小規模貯水槽水道 受水槽の容量が10㎥以下のもの
33
3−2−7 PFI事業の研究
PFI (Private Finance Initiative:プライベート ファイナンス イニシアティ
ブ)とは、国や地方公共団体が従来型手法にて事業運営を行う方法に対して、民間の優
れた運営能力を活用することで効率的かつ効果的に行政サービスの提供を目指していく
手法です。民間の資金、経営能力、技術的能力を活用することで公営施設の設計、建設、
維持管理及び運営等を行うことは、事業全体のリスク管理の向上を図れるほか、設計か
ら運営までを一体的に扱うことで事業コストの削減が期待できます。
本局においても、施設拡張等においてPFIによる事業運営を採用することで、経営
の効率化が図れるか研究を行っていきます。
また、PFI事業を行うに当たり特定事業の選定に当たって必ず行わなければならな
い、費用に対してのサービスの供給量の価値評価「VFM評価」
(Value For Money)に
ついても研究し、支払いとサービスの水準を評価できる能力を備え効率的かつ効果的な
導入を行えるようにします。
協定等により明確な
役割分担・責任分担
水 道 局
民間事業者
サービス提供水準等の
適切なサーベイランス
(経済政策の相互監視)
事業選定、事業者選定等の
低廉かつ良質な
手続きの透明性の確保
公共サービスの提供
お 客 様
事業形態
PFIの主な事業形態と手法
事
業
内
容
行政は、民間事業者が住民に対して提供する公共サービスを購入し、その対価を
サ ー ビ ス
支払う。民間事業者は、主として行政からの支払いをもって施設の設計、建設、
購
入
型 管理及び運営に係るコストを回収する。
独
採
行政が民間事業者に事業の許認可を与え、民間事業者は施設利用者からの料金収
算
立
入のみにより、事業コストを回収する。このため、行政はPFI事業によるサー
型 ビスの提供に係る費用を負担しない。
行政と民間事業者の双方の資金を用いて公共施設の整備等を行う。事業の運営は
ジョイントベ
主として民間事業者が行う。民間事業者は、行政からの補助金等を活用するとと
ン チ ャ ー 型 もに、利用者からは料金等を徴収して事業コストを回収する。
事業種類
BOT
BOO
事
業
手
法
事業会社が施設を建設し、一定期間所有・運営した後、公共側に譲渡するもの。
BTO
施設の完成後、公共側に譲渡し、事業会社は施設の使用権を得てその運営を行う
もの。
事業会社が施設を建設した後、公共側に譲渡することなく所有・運営するもの。
34
3−3
総合的な危機管理システムの確立
水道事業は、市民生活に必要不可欠なものであり、災害や不測の事態が起き
ても機能を確保しなければなりません。
そのためには、被害を未然に防ぐため、水道施設の機能を確保するハード面
と、発生後の迅速な応急・復旧活動が行えるソフト面を兼ね備えた、あらゆる
災害や組織に重大な影響を及ぼす可能性のある不測の事態に対応できる総合的
な危機管理システムの確立を目指します。
3−3−1
危機管理体制の充実(危機管理マニュアルの策定)
地震・風水害等による自然災害への対応及び不測事態に対応するため、危機
管理マニュアルを策定します。
(1)災害対策マニュアルの策定
(地震・風水害、渇水及び凍結被害)
自然災害の発生により水道施設が被害を蒙り給水に支障が生じた場合には、
早期の復旧と応急給水の体制を確保するため、災害対策マニュアルを策定しま
す。
(2)不測事態対応マニュアルの策定
(テロ、水質事故、突発事故など)
日本においては、経済環境の悪化、テロの発生など何が起こるかわからない
状況となっています。自然災害を除くあらゆる分野で経営活動に伴うリスクを
想定し、これを未然に防ぐための防止策及び発生した場合の対応策を策定しま
す。
災害発生
早期の復旧
危機管理システム
の確立
35
3−3−2
応急給水、復旧体制の確立
日常業務における突発事故等による応急給水及び応急復旧については、早期
の復旧を目指し、断水等の被害が生じた場合に応急給水をするなど、体制づく
りを確立します。
応急給水の体制について
① 配水池間の連絡や配水幹線のループ化などバッ
クアップ機能の検討
②水の運用、配水運用システムの充実
③職員による時間外・休日当番制の運用
④その他、給水手段としての緊急飲料水用ポリ袋
や給水タンク車の整備計画の検討を行う。
復 旧 体 制 に つ い て
①「配給水修繕工事請負契約」を締結した企業の緊急出動体制による
応急復旧
②応急給水用具や応急復旧用材料など資材・機材の確保
3−3−3
耐震対策の推進
本局では、平成6年度より市内の避難場所
に緊急用地下貯水槽の設置を開始し、平成1
5年度末で8基を整備しました。今後は、松
江市防災交通対策室と協議しながら地域防災
計画との整合を図ります。
また、阪神淡路大震災以後は口径75ミリ
メートル以上の配水管布設及び布設替につい
て耐震継手管を使用し平成14年度末の耐震
対象管路延長461,256mに対し耐震管
路延長113,521m、耐震化率24.6
1%となっています。
現在、配水管整備事業、輻輳配管整備事業、
老朽管布設替事業の中で配水管の耐震化を進
めておりますが、今後は防災におけるライフ
乃白ポンプ場
自家用発電機
36
ライン対策として「水道施設耐震化基本計画」を策定し、施設の耐震診断の実
施による中長期的な施設の耐震化や管路耐震強化路線の選定による年次的管路
耐震化を実施することにより、震災に強い水道を目指します。
(1)応急給水基本計画及び水道施設耐震化基本計画の策定
平成16年度中に「応急給水基本計画」、「水道施設耐震化基本計画」を松江
市関係部署との協議により策定します。
応 急 給 水 基 本 計 画
・応急復旧、応急給水の目標
・応急給水の方法
・供給計画(応急給水拠点の整備計画)
・事業費及び負担
水道施設耐震化基本計
・整備区分
・拠点施設の耐震化整備方針
・対策の実施(短期及び中長期)
・耐震診断を実施する施設の検討
・管路の耐震化(整備方針、強化路線の選定)
(2)管 路 耐 震 化
本局で施行する建設改良事業(配水管
整備工事、輻輳管及び公共工事に伴う拡
張工事、老朽管布設替工事、公共工事に
伴う配水管布設替工事)において、口径
75ミリメートル以上の配水管路に耐震
継手管を使用し年間1万メートル程度を
耐震化する。
また、防災におけるライフライン対策
として今後、平成16年度中に「水道施
設耐震化基本計画」を策定し、管路につ
いても耐震強化路線の選定や優先順位、
37
災害時の応急給水拠点と整合性のとれた年次計画とします。
(3)緊急用地下貯水槽整備
耐震対策の推進として、震災時の給水拠点と
して避難場所に緊急用地下貯水槽を年次的に
設置し、災害時の飲料水確保に努めます。
平成6年度から平成15年度にかけて50
㎥の緊急用地下貯水槽を8基設置しました。
実
設
績
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
6年度
7年度
8年度
9年度
10 年度
11 年度
13 年度
15 年度
置
計
乃木地区
城西地区
津田地区
朝日地区
城東地区
川津地区
古志原地区
大庭地区
湖南中学校
内中原小学校
津田小学校
中央小学校
北公園
川津小学校
古志原小学校
湖東中学校
画
平成16年度
乃木・古志原地区
総合運動公園
(全9基整備完了)
平成17年度以降については、他の方法を検討します。
38
(4)給水管の耐震化
本局では、給水装置工事の設計審査にあたり給水取り出し部に係る耐震対策として伸
縮継手及び水道用ポリエチレンパイプの使用を指導しています。
また、老朽管布設替工事や公共工事に伴う配水管布設替工事においては、水道用サド
ル付分水栓に伸縮継手を接合してから既設給水管に接続することによって、給水管の耐
震対策を施しています。
実
施
計
画
① 給水装置工事設計審査時の指導強化
② 配水管布設替工事における使用の徹底
※ 伸縮継手とは
管路の場合、温度変化による伸縮、地震による地盤変位、地盤の不同沈下などを
吸収し、管路に無理な力が作用するのを避ける目的で使用され、伸縮性、可とう性
あるいは偏心性などに富む継手のこと。
※ 水道用サドル付分水栓とは
配水管から給水管を分岐するときに用いる給水器具のことでサドル機構と止水機
構を一体化した分水栓のこと。
39
3−4 お客様サービスの充実
水道は水を介したサービス産業であり、常にお客様第一主義でなければならないとの
認識のもと、生活様式の多様化及び情報技術(IT)の急速な発達や普及により、都市
活動が広域化していく現在、お客様のライフスタイルに合ったサービスとより利便性の
高いサービスを提供できるよう、事業運営を行います。
3−4−1 お客様の利便向上
(1)口座振替を利用するお客様の拡大
水道料金のお支払いを窓口でされているお客様に対して、
「口座振替」への変更のご
案内を促進していく必要性があります。そこで、水道の使用を申し込まれた時及び「納
入通知書」にてお支払いのお客様個々にご案内を行い、
「口座振替」でのお支払いを促
進して行きます。
① 金融機関の窓口及び本局の支払い窓口にて、申込み
並びにお支払いのお客様に対しての促進活動を行い
ます。
② 定期的に移動がある進入学生に対して、各学校の協
力のもと促進活動を行います。
③ 検針業務委託者(転居の受付業務も対応)による促
進活動を行います。
(2)集合住宅の検針、収納サービスの開始
本局では貯水槽以下の装置の解消の一環
として、3階建の建物の直結直圧給水化に取
り組んでおり、4階建以上の集合住宅等につ
いては貯水槽設置により対応し、水道料金に
関しては設置者(管理人)の管理となってい
ます。
しかし、公営の集合住宅等では入居者の高
齢化及び料金の集金トラブル等の問題が発生
しているため、各戸検針・各戸徴収の要望が
強く、一般の一戸建の住宅と同じように検針
40
から収納までの一連のサービス(所有者及び居住者から要望があった場合)を提供して
いきます。
一般生活用水への給水サービスの向上を図る制度と位置づけ、公営及び民営の集合住
宅を対象に平成16年4月 1 日から実施します。
主 た る 要 件 等
① 適用できる建物は住居専用の集合住宅とし、別に定める設備基準、各戸メータ
ーの設置基準に適合していること。
② 各戸に設置する水道メーターは本局が貸与し、本局が検定満期で取り替える。
③ 遠隔集中検針メーターの設置は要件としない。
④ 分担金は各戸に設置するメーターの口径に応じて徴収する。既に親メーターの
口径に応じた分担金を納入済みの場合には超過分を徴収する。
⑤ 基本料金は各戸に設置するメーターの口径に応じて徴収する。
⑥ 給水装置及び貯水槽以下の装置の維持管理については所有者が行なう。
⑦ 移行前に料金の滞納がある場合には、契約を締結しない。
⑧ 所有者は全入居者の各戸検針及び各戸徴収の同意書を、提出しなければならな
い。
⑨ 契約に違反したときは契約を解除できる。
(3)貯水槽以下の装置の高台造成団地の取扱いについて
現在、
「貯水槽以下の装置」に
て給水を行っている団地の 維
持管理(水道料金の徴収業務)は、
団地開発者または団地自治会に
て行われているが、関係者と協議
を行い水道使用者の負担の低減
が図れるように関与していきま
す。
また、新設の開発に関しては、
都市計画法の開発協議時に本局
規定に基づく指導を行い、極力新
設造成団地が「貯水槽以下の装置」とならないよう協議指導を行っていきます。
41
「貯水槽以下の装置」で給水している既設団地の対応
①調査・試験を行い直結直圧給水に変更する
②水圧、水量を確保できるように改善し直結直圧給水に変更する
③拡張事業等で改善が望める場合は事業開始時まで一時的にサービス(検針収納
等)を提供する
④将来的にも直結直圧給水が望めない場合は無償譲渡を受け対応する
高台に造成される新設の団地で開発協議を行う団地の対応
①直結直圧給水が行えるよう協議、指導を行っていく
②拡張事業等で改善が望める場合は事業開始時まで一時的にサービス(検針収納
等)を提供する
③将来的にも直結直圧給水が望めない場合は無償譲渡を受け対応する
●近隣の開発も見込まれ松江市水道給水条例第39条の「工事負担金」を徴収し
本局が建設する場合
●受託工事により本局が設計・監督業務を行い、施工完了後譲渡を受ける場合
●設計段階から関与し検査施工完了後譲渡を受ける場合
④開発者の判断により「貯水槽以下の装置」として造成管理する
高台に造成される小規模の団地
①直結直圧給水が行えるよう協議、指導を行っていく
②将来的にも直結直圧給水が望めずその他のサービスにて対応する
42
(4)料金収納におけるコンビニエンスストア利用の検討
全国のコンビニエンスストア(提携のみ15社程度)
で、上下水道料金を支払うことが出来るようにした場合
の検討を行い、本サービスを導入した場合の費用対効果
を調査算出し現実的な導入効果を検討します。
コンビニエンスストア収納代行業者との委託契約
料金調定システムのプログラム変更
払込取扱票(納入通知書等)の変更
また、時間外、閉庁日の収納サービスについては滞納
整理業務の委託に含めて集金、閉庁日営業等を検討しま
す。
3−4−2 窓口業務におけるお客様の利便性の向上(総合窓口)
本局では、
水道料金の収納業務、
各申請受付、
ご相談等を各関連部署にて対応しております。
また、電話によるお問い合わせに対しても各部
署にて行っており、統括的なお客様受付業務を
行うことでサービスの向上を図って行きます。
全てのお客様の申請及びお問い合わせの受付
窓口として総合窓口を設置します。来局される
お客様の対応及び電話によるコールセンター的
業務を集約し、将来的には情報管理システムを
利用したワンストップサービスを目指します。
総合窓口の担当者は、水道事業全般の高度な
知識を習得すると共に、来客応対並びに電話応
対等のきめ細やかな接遇を必要とすることから、
研修等により高度な対応が出来るよう育成を行
い利便性の向上を図ります。
3−4−3 指定給水装置工事事業者のお客様への周知
敷地内の給水装置の管理責任はお客様にあることから、各家庭において給水装置の状態
を熟知した専属の指定給水装置工事事業者(以下指定工事店)を置くことが、水道トラブ
43
ル時の早期対応等につながります。そのため普段より指定
工事店による維持管理の必要性を認識していいただけるよ
う、お客様にお知らせする必要があります。
そこで、積極的に広報活動を行うことにより、指定工事
店をお客様にお知らせすると共に、敷地内での水道トラブ
ルの際、
指定工事店で対応していただくよう呼びかけます。
また、指定工事店にもお客様の依頼等に柔軟に対応してい
ただくよう、呼びかけを行います。
3−4−4 新自動検針システムの研究
水道メーター内にマイクロコンピューターを内蔵した電子メーターを設置することで、
遠隔地にて水道使用量並びに管理情報を得る方法が開発されています。
この方法はIT時代に適合した高度な情報伝達システムとも連動でき、新しい水道事業
の運営方法のあり方を考えていくことができます。
本局においてもこのシステムを使用し、
水道事業以外での運用方法並びに新都市開発における新検針システムの開発等を研究しま
す。
新自動検針システムの試行的導入の検討
①地域情報網(光ファイバー網及びCATV網)を利用し、
「水道自動検針システム」
と合わせ「高齢者世帯等安否確認システム」の実用を研究します。
「水」は人が生活
していく中で必ず使用します。この信号(水道メーター以外の通報センサーとして呼
出押しボタン等も設置する)を読み取ることで安否を確認し、福祉担当者が緊急の対
応を行うことができます。
②「水道自動検針システム」は新規に開発された大型ニュータウン等において、検針業
務が必要となる事業体(電気、ガス等)とシステムを共同利用することで、お客様サ
ービスの向上並びに経費削減が図れるか研究を行います。
③その他、通信方式、情報の転送場所(センターシステムの形態)
、運用方法等も調査
研究を行います。
44
3−4−5 水道事業経営にあたっての意見募集
水道事業は地域独占事業でお客様に選択の余地がな
いという特殊性により、透明性及び公平性を確保する
ためにお客様との双方向での情報交換を踏まえた、コ
ミュニケーション型の事業運営が不可欠となっていま
す。
そのためあらゆる機会を捉えてお客様の意向・要望
の把握に努め、事業運営の各段階においてお客様が参
加しやすい環境を構築していく必要があります。
水 道 モ ニ タ ー
制 度 の 導 入
パブリックコメント
制 度 の 導 入
水道事業をお客様の身近なものとするとともに、モニタ
ーとなったお客様からお聴きした意見・意向・要望を参考
にして、お客様の視点に立った事業運営を行なうことを
目指します。
事業運営や各種計画を策定する際に、できるだけ多くの
情報を公開したうえで各種メディアを用いてお客様の意
見を募集し、事業や施策に反映していきます。
お客様が委員として参加する懇話会を設置するとともに
懇 話 会 の 設 置 委員の公募を推進し、日常の事業運営に対する意見・要
望の取り入れに積極的に努めていきます。
水道に関するアンケートの定期的な実施を推進します。
水道アンケート
さまざまなお客様からの要望・意見などを集約し、日々
の
実
施
の業務に反映していくよう努めます。
3−4−6 情報公開の推進
近年においては、水道サービスの内容や質に
対する関心が高まっており、行政では都道府県
を中心に情報公開制度が制定されるなど、事業
者責任として情報開示のあり方が問われていま
す。こうした状況の中、水道事業は地域独占事
業であり、お客様に選択の余地がないという特
殊性により、特に、透明性や公平性を確保する
ため、お客様との情報共有化を推進し、分かり
やすい情報公開を目指します。
45
情報公開の具体的方策
情報公開の推進のために、お客様が判断できる情報を分かりやすく提供し、水道事業
の透明性を高め、お客様の立場に立ち、最新の情報をリアルタイムに提供できるよう広
報活動の充実を図ります。
①市民向けの「広報まつえ」において「まつえの水道」の定期的発行
②水道局情報誌の発行・・・・水道事業の計画や事業の進捗状況等を掲載する情報誌
③ホームページ改善委員会の検討によるホームページの充実
④水道に関する便利帳の製作・・・・くらしの便利帳の水道版
⑤浄水場の施設見学者用の水道歴史資料室設置及び看板等の整備
⑥「出前・水道教室」の実施を検討
※「出前・水道教室」とは、職員が小学校へ出向いて「水資源の大切さ、水源保全の
重要性、水ができるまでのしくみ」などについて小学生に話しをし、水道についての
理解を深めてもらう取り組み
46
3−5
人材・組織等の見直し及び活性化
日本経済の低迷が続く中、各民間企業と同じく水道事業体に最も効率的な運
用形態を求めていくという認識のもと、本局においても事務の効率化、組織の
活性化を追求していかなければなり
ません。
そこで、最適な事務事業の形態を構
築するための組織構造への転換、専門
性を必要とする職場での高度な知識
と技術を幅広く共有できる組織を目
指し、人材の育成と職員の意識改革及
び有効かつ計画的な配置等を行うこ
とで人材・組織の活性化を図ります。
3−5−1
組織・機構・人員の見直し
今日の経済社会情勢における景気低迷、IT革命、環境問題、少子高齢化問
題等さまざまな変化の中、お客様の価値観も多様化し、複雑化してきています。
さらに地方分権や市町村合併の推進による行政の高度化・多様化に対応しつつ
あります。
職員数は、平成14年度以降退職不補充により減員を図っています。今後も
引き続き業務委託の活用と事務事業の見直しにより組織のスリム化を目指しま
すが、一方で下水道統合、松江鹿島水道企業団の統合、町村合併など人員増要
素もあるため、事務の効率化を図る中で常に適正な組織のあり方、人員配置の
見直しを行っていく必要があります。
これらの問題に的確に対応できるよう、柔軟かつ弾力的な行財政システムを
速やかに構築し、お客様サービス向上のため、事務事業の整理・合理化、組織
機構の効率的再編に努めていきます。
①スクラップアンドビルドを基本に、類似重複している事務事業等の
整理・統合による組織の簡素化及び人員の再配分
②内部的にはお客様のニーズや行政課題に効率よく対応できる体制
③外部的にはお客様に親しみやすく迅速な事務処理ができる体制
47
実
施
計
画
下水道業務との一体的な運営や松江鹿島水道企業団との統合及び委託等によ
る効率的な各業務の実施に伴う組織・機構・人員の見直しを行い、また、市町
村合併に伴う上下水道業務との連携を図ります。
①総合窓口の設置
水道・下水道に関する検針、料金、修繕等
の相談や苦情の窓口を一本化し、お客様の利
便性の向上を図ると共に業務の連携を強化し
ます。
②水源・浄水管理と配水管理体制の分担と強化
水源管理、取水、浄水管理、送水部門と配
水施設の維持管理部門の分化による体制を強
化します。
③合併に伴う管理部門の効率化と旧町村における施設維持管理の効率化
3−5−2
職員意識の改革と人材育成
水道事業は、水道料金の収入により事業を運営する独立採算制を基本として
おり、景気低迷が続く今日の状況においては、益々効率的な運営が求められて
います。
本局においても第11次拡張事業による設備投資や、
尾 原 ダ ム 受 水 開 始 に よ る 受 水 費負 担 の 増 加 に 対 応 で き
る経営基盤の強化が急務であり、経営基盤の強化を図る
ためには、事務事業の見直しによる合理化、組織のスリ
ム化を推進する必要があります。職員一人一人が企業意
識を持ち、事業経営者となった気持ちで業務に専念し、
お 客 様 に 接 す る こ と が で き る よう な 職 員 意 識 の 改 革 を
推進し、人材育成に努めていきます。
(1)職員研修計画
市町村合併や地方分権の推進など地方自治が新たな時
代を迎える中で、お客様のニーズに即応し、お客様の視点
に立った柔軟かつ効率的に対応する人材の育成を推進し
ていくため、島根県自治研修所研修及び本局独自研修を体
系化した計画表を策定し実施していきます。
48
① 政 策 形
成能力
②技術技
③ 職 務 遂
能の向上
④意識・姿勢
(お客様主体の
意識、高い公務
員意識、自己成
長意識、男女共
同意識)
行能力
⑤対人能力
(指導育成
能力、折衝交
渉能力)の向
上
(2)職員提案制度の実施
職員の創意工夫による提案を奨励することにより、政策提言や事務事業の改
善等の推進及び職員の勤務意欲の向上を目的として、職員提案制度を充実させ
ます。
(3)人事交流の拡大
本局は松江市関係部署と比べて市町村合併や公
務員制度改革の流れの加速に伴い、今後は企業性
の発揮と同時に組織として統一的な運営も追求し
ていく必要があります。そのため、積極的に松江
市関係部署との人事交流を行うことで相互理解を
深め、双方の組織の活性化と人材の育成を図り、
広い視野に立ったものの見方、考え方をもった職
員を育成することを目的とします。
(4)業務実績評定の導入
地方分権や市町村合併の推進による行政の高度化・多様化に対応していくた
めには、柔軟で弾力的な組織の構築、職員の能力開発が必要です。
そのためには、従来から行っている研修の充実に加え、ジョブローテーション
(採用時から人材育成の視点をもった人事異動)の実施、昇任昇格も含めた人
事管理諸制度全般にわたる「人材育成の進行管理」を行うことが必要であるこ
とから、業務実績評定制度を導入します。
49
業務実績評定制
度導入の効果
①所属長の職員育成責務が明確になります。
②所属長は客観的評価に基づき適切な時期に職員
を指導することができます。
③職員を適材適所に配置するための客観的資料と
して活用できます。
評 価 の 実 施
○ 部長→課長級を評価、
課長→係長以下一般職を評価
○ 評価は成績・能力・情意について
5段階の絶対評価
3−5−3
この制度の成否は評定の客観
性・公正性にかかっており、評
定者の資質向上を図るための評
定者研修を重点的に行っていき
ます。
給与体系の見直し
長期にわたる景気低迷や自治体財政の急激な悪化に伴い、各地方自治体・公
営企業とも財政の健全化に向けた早急な対策を迫られています。
地方公営企業が住民に対し質の高いサービスを効率的・安定的に提供してい
くためには、職員が身分保障に安住せず、その持てる能力を最大限に発揮する
ことが必要です。このため、能力本位で適材適所の任用や能力・職責・業績が
適切に反映される給与処遇を実現することが重要です。
公務員制度改革大綱においては能力・職責・業績を適切に反映した給与制度
の抜本的見直しが、平成18年度にも予定されています。このような公務員制
度の抜本的改革、或いは市町村合併を控え、今後は給与体系、諸手当の体系に
大きな変動があることも考えられます。
本局としては国、県及び松江市関係部署の動向を見極めながら、情勢適応原
則に基づき、適切な給与体系への見直しを図っていきます。
3−5−4
早期退職優遇制度
業務委託の拡大に伴う業務量に応じた適正な定員管理、組織内部の新陳代謝
の促進と活性化、多様化する職員のライフサイクルへの対応を目的に、勧奨対
象年齢の引き下げ、早期退職加算率の引き上げ等の優遇措置を松江市関係部署
と連携し時限的に導入します。
50
組織・人員の見直しにおいて、組織の効率化、スリム化を推進し、適正な人員にするこ
とを策定します。また、職員の数縮減を図りながら、一方で組織の硬直化、高齢化を防ぐ
ため若年層の人員配置も必要です。
3−5−5 松江市水道事業経営問題研究会の設置
近年においては、水道サービスの内容や質に対する関心が高まっており、お客様への説
明や情報の提供とともに意見を事業に反映させることが求められています。今後の水道行
政のあり方を検討するにあたっては、これまで以上に「お客様の視点」に立つことが重要
であり、事業に対する関心と理解を深めていただくための工夫と努力が必要となります。
お客様からの声を事業経営に生かすことを目的として、学識経験者や各分野の利用者で
構成される常設の松江市水道事業経営問題研究会を設置して、事業に反映させるなどお客
様の視点に立った経営を目指しま
す。
また、お客様ニーズの的確な把
握と事業運営への参加を促進する
など、
開かれた水道を目指します。
今後の水道事業経営のあり方につ
いて、幅広く外部の意見を求めな
がら、調査及び研究を行うことを
目的として、松江市水道事業経営
問題研究会を設置します。
51
3−6 情報基盤整備事業の推進
急速にIT基盤整備が推進される中、本局においても市町村合併等、その他主要施策を
見据えた全庁的な情報資産の共有化・恒久化を求めていくという認識のもと、新たな情報
管理システムの構築、既存システムの更新・見直しを行
い、計画的な情報基盤の強化を図っていきます。
※IT:Information Technology(情報技術)
3−6−1 情報管理システムの構築
本局は、今までの拡張の時代から維持管理の時代へと変
革期を迎えております。そこで、現在までの大量の帳簿と
して蓄積された施設管理資料、給水装置等の個人資産台帳、
水道使用者情報等の整理体系付けを行い、電子化情報とし
て保存並びに効率的に検索できるようにしていく必要が
あります。また、市町村合併による広域化と上下水道事業の統合を行うためには、新事業
体制での効率的な事業運営が実現できる情報基盤システムの構築が不可欠であり段階的に
導入していくことが必要です。
事務事業で活用する情報を電子化することで、多くの情報を効率的に検索可能とするこ
とができる「情報管理システム」を導入します。
「情報管理システム」は、職員間の情報の
共有化並びに恒久的な保存が可能となる機能を計画的に構築するものであり、本システム
の導入により公営企業である本局の基盤強化を図ります。基幹システムとしては、本局の
運営基盤となる施設情報を管理する「統合型GIS」と、水道料金計算並びにお客様情報
の管理を行う「上下水道営業電算システム」にて構成し、情報の参照・更新はセキュリテ
ィシステムの下で稼動する「グループウエア」にて行います。
「情報管理システム」は、個々に構成さ
れる各業務システムを統合管理し、その情
報をアクセスするクライアント(端末)も
階層セキュリティ管理するシステムです。
そのことから、構成するシステムの導入・
更新時期と情報入力の期間がシステム毎に
異なるため、年次的な導入計画による情報
の統合化を行います。
※ GIS:Geographic Information
System(地理情報システム)
52
第1次
情報統合化
第2次
情報統合化
第3次
情報統合化
第4次
情報統合化
第5次
情報統合化
情報管理システム導入計画
ファイリングシステムの導入
(ファイリング化に伴うデータベース作成)
上下水道営業電算システムの更新
庁舎新(改)築に伴うLANシステム完成
グループウエア導入(イントラネット稼動)
統合型GIS導入
○基本空間データの作成
(導・送・配・給水管位置図、施設情報、送配施設図等)
○デジタル画像
(ファイリングシステムとのリンケージ)
○施設・配管情報データベース
(浄水・送配水施設情報、送配水管情報、水栓番号等)
電子申請開始
電子入札開始
局内電子決済開始
※LAN:Local Area Network(構内ネットワーク)
3−6−2 新業務システムの導入
日本中の行政組織で取組が始まった、
「電子政府・電子自治体推進プログラ
ム」のアクションプランとなっている電
子窓口の整備と調達手続のオンライン
化は、本局においても実施に向け準備が
必要な課題です。そこで、今後下記業務
の電子化導入に向け検討を行っていく
必要があります。
①
②
③
④
お客様からの給水の申込手続き等インターネットによる申請受付
指定給水装置工事事業者からの電子申請受付
本局から他事業体に行う電子申請
水道管布設工事等の電子入札・開札
53
その他に、事務事業の効率化を目的とした業務管理用システムを導入し、更なる業務の
効率化とお客様対応の高速化によるサービスの向上を目指す必要があります。
また、その他の業務管理用システムは「グループウエア」導入時に、製品化されたパッ
ケージソフトをカスタマイズする形での導入を検討しコスト削減を図ります。
3−6−3 既存システムの更新
上 下 水 道 営 業 電 算 シ ス テ ム の 更新
水道料金の計算とお客さま情報の管理を行うため、昭和52年に導入以来現在まで開発
当初の基本システムを拡張して運用している「水道料金電算処理業務用システム」は、近
年のコンピューターの目覚しい技術革新による大容量小型化により、旧世代のシステムと
なりつつあります。また、度重なるシステム拡張により、今後迎える本局の広域化及び統
合化に対する新たな構築は不可能であり、新シス
テムへの更新を行う必要があります。
「水道料金電算処理業務用システム」は「上下
水道営業電算システム」として新システムに更新
を行い、
「上下水道料金調定システム」と「需要者
情報管理システム」の2つのシステムから構成し
ます。
「需要者情報管理システム」は、
「情報管理
システム」のお客様情報管理の基幹システムとな
ることから、お客様からの問合せ等サービスの向
上が図れるシステムが導入できるよう検討を行い
ます。
グ ル ー プ ウ エ ア
上下水道営業電算システム
上下水道料金
調定システム
需 要 者 情 報
管理システム
統合型GIS
ファイリングシステム
54
業 務 用 シ ス テ ム の 更 新
「上水道設計積算CADシステム」及び「財務会計システム」等の業務用システムは、
クライアント・サーバ型で導入して運用しており、OSのサポート保障期間とハードウエ
アの対応年数の関係で計画的な更新と保守メ
ンテナンスが必要となります。
今後、業務用システムも「情報管理システム」
にて情報の共有化が行えるか検討を行うと共
に、業務の体制に合った機能を有するシステム
を導入していく方向で更新計画を策定して行
きます。
※ CAD:Computer Aided Design
(設計図の作成や製図を行うシステム)
OS:Operating System(基本ソフト)
3−6−4 情報セキュリティポリシーの遵守
情 報 資 産 の 保 護
本局が取り扱う情報資産は、お客様
の個人情報をはじめ水道事業の運営上
重要な情報を多く含んでおります。こ
れらの大切な情報を保護するために、
情報資産に対する物理的・人的・技術
的なセキュリティを構築していくこと
が必要となります。本局の情報基盤整
備事業を推進していくうえで、ネット
ワークセキュリティだけでなく、文書
や会話・ハードウエア・各種記憶媒体
などのあらゆる情報資産を守るべく、
「松江市情報セキュリティポリシー」
に基づいた、システムの新規開発及び
運用等を行なう必要性があります。
55
情報セキュリティポリシーの順守
① 「松江市情報セキュリティポリシー」におけ
る情報セキュリティ対策基準に基づいた、情
報セキュリティ実施手順を情報システム毎に
策定します。
② 情報セキュリティポリシーが適正に実施さ
れるよう、普及・教育活動を行ないます。
③ 業務及び情報システム毎の実行手順をマニ
ュアル化し、情報セキュリティポリシーの運
用を適正に実行していきます。
④ 情報セキュリティポリシーが正しく実行さ
れていることを把握するため、定期的に監査
を実施します。また、監査結果や環境の変化
に対応するため定期的な見直しを行ないます。
情報セキュリティポリシーの位置付け
情報セキュリティポリシーは、松江市が所掌する情
報資産に関する情報セキュリティ対策について、総合
的、体系的かつ具体的にとりまとめたものであり、情
報セキュリティ対策の頂点に位置するものです。
56
3−7
簡易水道事業のあり方
簡易水道事業は、地理的悪条件な地域などに公衆衛生の向上や公共の福祉を
目的に水道の普及を図ってきたため、経営基盤が弱く独立採算制を維持するこ
とは困難であることから、一般会計からの繰出しや国からの補助金などによる
行政の保護が無ければ成り立たない事業です。
しかし、同じ行政区域内にあって料金やサービスに大きな格差があることは
望ましくないため、水道料金格差の問題等諸課題について検討する必要があり
ます。
松江市簡易水道事業のあり方
松江市簡易水道事業は、橋北地区東西部に分散する9つの簡易水道から構成
され、約7,500人の給水人口があります。
一般的に上水道事業が都市への人口集中による水道の需要増加を背景に発展
したのに対し、簡易水道事業は、山間部や家屋が極度に散在する地域など水道
を布設する上での条件に恵まれていないところに公衆衛生の向上や公共の福祉
を目的に水道の普及を図っています。
したがって多大な資本投資をする割に、経営基盤が弱く独立採算制を維持す
ることは困難であることから、一般会計からの繰出しや国からの補助金などに
よる行政の保護が無ければ成り立たない事業です。
本局は、平成15年7月に簡易水道業務の事務委任を受け、組織の一元化を
図りました。今後は平成18年度を目標とする施設整備の完了によって、良質
な自己水源(予備水源)を残す区域と尾原ダムからの受水開始に合わせて不安
定な小規模水源を転
換する区域を選別す
るとともに、財政問題
等の条件整備を進め
てまいります。現在は、
安定給水の面や水道
料金格差といった課
題がありますが、条件
整備が整った時点で
上水道へ統合するこ
とによって問題を解
消することが可能と
なります。
57
(1)水質管理の効率化
簡易水道事業の水質検査につい
ては、月に1回簡易水道係職員が現
場で採水し、島根県環境保健公社に
水質検査を依頼しています。
当分の間は現状のまま業務を実
施しますが、本局で水質検査出来る
項目については検査を一元化して
いきます。
忌部浄水場
水質試験室
簡易水道から島根県環境保健公社へ依頼している検査
○省略不可項目
(クリプト指標菌、残留塩素等)
○浄水、原水定期
○腸内細菌検査(関係職員の検便検査)
本 局 で 検 査 で き る 項 目
○浄水、原水定期検査のうち
一般細菌、大腸菌、カドミウム、水銀、セレン、鉛、
ひ素、六価クロム、シアン、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、
フッ素亜鉛、鉄、銅、ナトリウム、マンガン、塩素イオン、
カルシウム・マグネシウム等(硬度)、蒸発残留物、
フェノール類、陰イオン界面活性剤、
有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)、
PH値、味、臭気、色度、濁度
なお、
項目については、本局もH16年度から委託を検討します。
58
(2)施 設 整 備 計 画
簡易水道は、昭和33年秋鹿簡易水道を建設、給水開始以来9箇所の簡易水
道を整備し、地域の公衆衛生の向上を図り生活環境の改善と安定給水に取り組
んで来ました。
施設は、水源が33箇所(現在使用14箇所)に点在し、ポンプ施設が23
箇所、配水池が22箇所も存在し
ます。本庄簡易水道の水源となる
川部ダム浄水場の規模も小さく、
管網(送・配水管)、配水施設等も
老朽化しているため順次整備を実
施しますが、島根県水道用水供給
事業(尾原ダム系)からの受水開
始によって、不安定な小規模水源
は転換を実施するとともに、上水
道事業へ統合していきます。
(3)維持管理とお客様サービス
施設の維持管理
簡易水道施設の水源33箇所(現在使用14箇所)、
ポンプ施設23箇所、配水池22箇所について、現在は
2人の委託者を含め職員が巡視を行っていますが、施設
数が多く広域に分散していることから、施設の点検や巡
視の方法を見直し維持管理を強化して行きます。
お客様サービスの向上
簡易水道の料金は3ヶ月に1回請求します。請求額は、請求月の前3ヶ月の
使用水量を基に算出します。(別表1)
現在、簡易水道の料金支払い方法は、地元町内会による納付組合(48納付
組合)、自主納付の2通りがあり、それぞれ全体の75%が納付組合、25%が
自主納付となっています。(別表2)
お客様からは、口座振替の要望もあり平成16年度導入に向けて検討すると
ともに上水道窓口への一元化を目指します。
59
別表1
簡易水道施設名
秋鹿・大野・上宇部尾
長江・津の森
本庄・手角・枕木
別表2
自主納付
納付組合納付
請求月
4,7,10,1月
5,8,11,2月
6,9,12,3月
納入期限
各月の月末
金融機関窓口で直接お支払いいただきます
お近くの「水道使用料金納付組合」の方が集金にうかがいます
(4)組織・事業の一元化に向けた取組み
平成15年7月より簡易水道事業の業務統合を行い事務委任によって本局工
務課簡易水道係として事務職2名、技術職5名の合計7名の職員で業務を行っ
ています。簡易水道については、不安定な小規模水源を抱えており平成23年
度目標の島根県水道用水供給事業(尾原ダム系)からの受水開始によって水源
の転換を目指します。
また、簡易水道事業は独立採算が取れる事業ではないため、上水道事業との
統合については、当面、簡易水道特別会計を残し事務委任の形式による業務統
合としますが、簡易水道の設計業務や料金徴収、施設の維持管理等共通業務に
ついては年次的に上水道業務で実施できるよう見直しを行います。
簡 易 水 道 事 業 一 覧 表
秋
本
長
津
大
上
手
枕
野
名
称
鹿 簡 易 水
庄 簡 易 水
江 簡 易 水
ノ 森 簡 易 水
野 簡 易 水
宇 部 尾 簡 易 水
角 簡 易 水
木 簡 易 水
原
簡
易
水
道
道
道
道
道
道
道
道
計画給水人
2,370
2,500
1,340
530
1,950
104
220
140
道
口 一日最大給水量
人
557 ㎥
人
821 ㎥
人
400 ㎥
人
133 ㎥
人
440 ㎥
人
40 ㎥
人
34 ㎥
人
35 ㎥
140 人
60
42 ㎥
3−8
そ の 他 主 要 施 策
現代の激動する社会情勢においては、水道事業をとりまく環境も刻々と変化
しております。そのため、ニーズに合った施策を構築する必要があるとの認識
のもと、市町村合併や他事業との統合及び庁舎新(改)築等の問題を主要施策
と位置づけ、事業を進めます。また、情報開示が進み、お客様の水道事業に対
する関心が高まりつつある現状に対応するため、水道事業評価システムの導入
を推進するとともに、入札制度等の見直しを積極的に行い、より透明でわかり
やすい事業運営を目指します。その他、お客様からの信頼を高めること、環境
に配慮することを目的とし、ISO(国際標準規格)による品質、セキュリティ
及び環境マネジメントの研究を行います。
3−8−1
庁舎新(改)築計画
本局庁舎は、昭和46年に完成して以来32年が経ち、老朽化が進んでいま
す。現在の庁舎は、阪神・淡路大震災
級の地震に耐えられる構造ではなく、
倒壊など相当の被害が予想されてい
ます。
庁舎は、災害復旧時の拠点であり、
配水管、配水施設など水道事業に欠か
すことのできない情報を管理してい
る点からも本局庁舎の耐震構造への
改築又は耐震構造を持つ新庁舎の建
設が必要であり、また、高度情報化時
代に対応できる機能面など業務スペースも検討するほか、平成17年に予定さ
れる市町村合併による各町村及び松江鹿島水道企業団、下水道部の組織統合な
どを考慮して検討します。
方
針
水道サービスの拠点性を高めるため、ハード、ソフト面を総合的・相対的に
勘案してサービス拠点の整備を進めていきます。
整備計画としては、高度情報化時代に対応する機能・スペースの確保、耐震
構造への改築などを検討し、水道サービス及び災害復旧の両面を兼ね備えたサ
ービス拠点の整備を行います。
61
① 近年の高度情報化時代に対応した機能・スペース面の確保
② お客様サービスの向上に伴う改善
(総合窓口などお客様に関する改善)
③ 松江鹿島水道企業団・下水道部の業務統合によるスペース確保
④ 市町村合併に伴う組織統合によるスペース確保
⑤ 災害復旧時の拠点づくり
⑥ 中央管理システムの移設など本庁舎での一元管理体制の確立
基本的な考え方として下水道の統合を予定する平成20年度までは現庁舎を
活用しますが、松江鹿島水道企業団の統合が先行する見込みであるため、現庁
舎近くの市立病院の土地を買収し分庁舎を建てて活用するとともに、引き続き
隣接する日本生命所有地の買収について交渉を継続します。
分庁舎建築については、使用年数が短期間(5年程度)となることも予想さ
れるため、プレハブ構造によるリースやレンタルで建築することを検討します。
3−8−2
水道事業評価システムの導入
水道事業の事業運営については、健全で効率的な経営を目指すことが求めら
れており、事業の効率性と実施効果の両面から、明確な目標(数値化)に照ら
し、実施した事業の評価を行うシステムを
確立していく必要があります。
そこで本局が独自に実施する事業につ
いて、効率性と達成効果の両面から事業評
価を行い、その分析結果を事業計画にフィ
ードバックして、効率的な事業経営に生か
していきます。
また、事業評価システム要綱及び事業評
価実施要領を策定し、お客様にわかりやす
い評価手法について調査・研究するなどお
客様から見た事業評価を可能にするため、
次の経営効率化指標と達成率の情報を定期的に公表することを検討します。
○ 事業規模、内容について判断する指標
○ 料金水準及びコストについて判断する指標
○ 経営の安定化について判断する指標
62
事業評価の対象事業
1.配水施設整備事業
総合計画に反映(ローリング)
第一次松江市水道事業
経 営 戦 略 プ ラ ン
2.配水管整備事業
3.ライフライン対策事業
4.水源涵養事業
次年度
予算編成に反映
フィードバック
3−8−3
5.新規事業
予
算
編
成
事
業
実
施
事
業
評
価
入札制度の見直し
いわゆる談合事件等入札に関わる様々な不法行為は、
透明性・競争性を持ち施行されるべき公共工事に対する
信頼を失墜させる事態となっています。公共工事を発注
する側に、入札制度の改革が強く要請される社会情勢と
考えます。
基 本 的 な 問 題 点
① 入札参加者が少なく固定化されている。
② 情報の公開が不十分である。
今後の検討・実施課題
① 国の入札及び契約の適正化指針に定められた事項の実現を急ぎます。
② 透明性の確保により入札の公平性への信頼感を高め、競争の拡大を促
します。
③ 競争の拡大を前提として、それに伴う入札業務量の増大に対応する効
率的処理を図る方策を検討します。
63
(1)透明性を確保するための施策の調査・検討
「発注者の裁量の余地が少ない」制度を目指します。そのためには本局自身
が「裁量の余地の少ない」入札制度に改革し、公衆及び事業者に入札の公平性
への信頼感を持たれることが競争性拡大の基礎と考え、以下の事業を調査及び
検討を行います。
条 件 付 一 般 競 争
入 札 の 試 行
(試行のための要件)
入 札 情 報 の 公 開
①予定価格の事前公表
②現場説明の廃止
③工事成績評点の業者への公表
④苦情処理機関の設置
⑤入札情報の公開
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する
法及び適正化指針に基づく情報の公表事項をイン
ターネット上HPで公開する
「入札及び契約の過程並びに契約の内容について
第 三 者 機 関 の 設 置 学識経験を有する者等の第三者」機関の設置を検討
し、透明性確保を図るよう検討する(注1)
※当初は「第三者機関」として位置づけますが、指針に従い、競争の拡大に
伴い発生する紛争に対する「苦情処理機関」としての役割も持たせます。
(2)競争を拡大するための施策の調査・検討
入札については「入札に参加する可能性のある潜在的な競
争参加者の数が多く、競争性が高いことが求められる。」とさ
れています。
透明性の確保を基礎とし、競争の拡大は基本的に希望する
誰もが参加でき、誰が参加するのか分からないという2点が
重要と考え、そのために現行指名競争入札から一般競争入札
への制度の変更方法を調査検討していきます。
①
②
③
条件付一般競争入札の試行
郵便入札の試行
予定価格事前公表
④
低入札対策制度の導入
変動性最低制限価格制度
(変動性)低入札調査制度
64
(3)入札事務の効率的処理を図るための施策の調査・検討
国は平成15年度より電子入札を全面実施しており、22年度までに地方公
共団体を含めた全公共事業の電子入札化を計画
しています。県は国に従い、平成15年度には
システム基本設計を終了し、17年度には一部
運用、19年度に本格運用を予定しています。
松江市においては、県のシステムを基に一体的
運用を目指していくと考えられ、本局も松江市
のシステムに従うことを基本とします。
導入に際しては、事前に郵便入札の導入が可
能か検討します。また、下記事項に留意して、
事前に入札制度自体の改革を行なうことも含め
た導入方法の検討を行います。
①
②
制度改革・業務見直しの基礎の上に立って実施すること
全事業者に負担なく参加してもらえるシステムを作ること
○誰でも簡単に操作でき、動きが軽快であること・研修不要であること
○事業者が使っているパソコンをそのまま使えること
○新たな費用負担が発生しないこと(認証費用が不要であること)
○サポート体制の整備
③ 費用対効果の高いシステムを作ること
④ 財務会計システムとの連携を考慮すること
⑤ 導入スケジュールは事業者の立場に立って進めること
3−8−4
市町村合併による水道事業のあり方
松江・八束8市町村の合併は、
平成14年11月18日に松江八
束合併協議会(以下法定協)が設
置されて以来①住民の日常生活圏
の拡大②急速な少子高齢化③本格
的な地方分権時代、さらに④国、
地方を通じた厳しい財政状況への
対応を図るためにも、合併するこ
とによって各地域の個性を伸ばし、
8市町村が一体となったまちづく
65
りを目指す必要があるとして、積極的に協
議されています。水道事業についても、大
切な都市基盤施設であるとの位置付けで、
新市水道事業の建設計画や水道料金統一
等の様々な論議が行われています。
市町村合併後の新市の水道事業は、当面
の間、異なった事業形態でそれぞれ運営を
行い、お客様に水道を供給することとなり
ます。しかし、その後早い段階で、同じ市
の水道を使用されるお客様には同じサー
ビス・安全安定給水を提供できるよう努め
るのが新市の水道事業の課題であると思
われます。
本局は、新市の水道事業の課題をクリア
するため、また新市水道事業の将来像を見
据えて、上水道事業・簡易水道事業との統
合及び業務統合を施設整備・改良を行いな
がら積極的に進め、水道事業の一元化・広
松江市 水郷祭
域化を目指します。
新市の水道事業は、合併後当面の間、事業形態がそれぞれ異なり、水道料金、
手数料、検針月等についても異なる中で事業運営されることになります。しか
し、同じ市で水道を使用されるお客様には同じサービスを提供するように努め
なければならないという観点から、水道料金、手数料、検針月等の事務事業の
調整(統一)及び新市の建設計画について、現在、松江八束合併協議会、上下
水道部会、水道分科会で積極的に協議され、調整、策定されつつあります。
しかし、これらの調整及び策定をするには、事業統合・業務統合を行うこと
を前提として論議しなければ、結論を出すのが難しいため、本局は、これらの
協議の場の中で、水道事業の一
元化・広域化に向けた意見・提
言を行います。
※平成 15 年 11 月 26 日の第 13
回法定協議会で水道料金、加入
分担金、検針月・徴収月及び手
数料の取扱いについて調整がで
きるよう、現在上下水道部会、
水道分科会で協議中です。
松江市から望む八束町
66
3−8−5
松江鹿島水道企業団の統合
松江鹿島水道企業団(以下企業団)との統合については、松江市の行財政改
革の一環として以前より協議・検討を行っています。企業団との統合は、同市
の水道事業で同じサービスを提供できるよう努めるものであり、さらなる安全
安定給水を目指し推進するものであります。また、統合することで経費の削減・
合理化・省力化につながることから、事業運営の効率化及び健全経営の基盤を
拡大・強化することになります。
今後、老朽施設の改良・整備、老朽管の布設替え及び事務事業の統一など、
統合に向けての諸課題をクリアしていくことが必要となります。
松江鹿島水道企業団
(以下企業団)は、柿原
池を水源として古志浄
水場で浄水処理後、お客
様に給水しています。し
かし、柿原池に流入する
古曽志川及び講武川の
水利権を現在取得して
いないのが現状です。企
業団は、平成13年1月
より両河川の調査を行
っており、平成16年1
0月には水利使用許可
を取得予定ですが、本局
佐
陀
川
との統合までには水利
権を取得して、その水利権に基づき尾原受水計画を含んだ県知事認可を取得し、
企業団の事業規模を確定することが最低条件であると考えます。
一方、企業団の財政面については、平成 34 年度をピークとし、毎年企業債償
還金が増加する傾向にあります。また、退職給与引当金、修繕引当金を積立し
ていないこと等を含め、財源不足分をどのように解消するかが課題となります。
企業団は一部事務組合という位置付けのもと、松江・八束8市町村の合併時
に解散し、その業務及び所有する財産は、すべて新市に引き継ぐことが法定協
で議決されています。また、平成15年4月に企業団が料金改定したことによ
り、本局と企業団の料金格差はほとんどなくなりました。
そこで、平成16年度中に、企業団統合による起債償還金等の取扱いについ
て、松江市等関係部署と協議を行い、統合の方向性を決定します。
67
3−8−6
下 水 道 の 統 合
上・下水道事業の統合につきましては、組織の一本化を目指し、業務の効率
化を図りながらお客様サービスを向上させる必要があります。
現在、水道事業は、地方公営企業法適用による独立採算制で事業運営してお
りますが、下水道事業は現時点では、地方公営企業法適用による事業運営を行
うことができない事業であるため、今後下水道との統合については、最終的な
目標として地方公営企業法適用による企業会計への移行を目指しながら、当面
は、業務統合による効率化を図っていき、窓口の一本化などお客様サービスの
向上を目指す必要があります。
下水道との統合については、組織の一本化を
目指し、業務の効率化を図りながらお客様サー
ビスを向上させます。また、最終的な目標とし
て下水道事業特別会計を地方公営企業法適用の
企業会計へ移行する検討を行いながら、当面は、
業務統合による効率化を図っていき、窓口の一
本化などお客様サービスの向上を目指します。
①
下水道との統合における目標年度設定については、下水道の整備率が
100%になる平成 20 年度を目標とし、経営分析を行い、地方公営企
業法の適用を検討しながら、統合する。
② 業務統合においては、業務検討委員会を設置し、今後検討する。
③ 下水道との統合における庁舎スペースを検討する。
3−8−7
未普及地域の解消
現在、本市の行政区域においては松江市水道局、
松江鹿島水道企業団、松江市簡易水道の水道事業
が存在しています。
本局の給水区域内においては、約2%にあたる
2,600人が未普及の状態にあり、一方行政区
域内であっても、いずれの水道事業体の給水区域
に属さない未普及地域が存在しています。
給水区域内未給水人口の算定にあたっては、配
水管等の水道施設条件が整備されているにもかかわらず、個人の都合(自己水
源のみの使用等)によって給水申し込みをされないものも含まれるため、実際
に上水道が必要な区域や世帯を調査する必要があります。
68
よって、これらの未普及地域については、その現状を正確に把握し、生活基
盤の整備や公衆衛生の向上、公共の福祉を目的に行政と一体となった解消計画
の策定が今後の課題となります。
平成15年3月31日現在
行 政 区 域 内 人 口
149,133 人
給 水 区 域 内 人 口
133,009 人
給
水
人
口
130,400 人
給水区域内未給水人口
2,609 人
給 水 区 域 内 普 及 率
98.04 %
給水区域内未給水地域の解消
本局の給水区域内に存在する未給水地域について、現状を調査したうえで下
水道や他の公共事業計画に合わせた解消計画を策定し、実施します。
なお、計画の策定にあたっては、地元負担等のルール化が課題であり、関係
部署と協議の上平成16年度中に整理します。
上 東 川 津 町 の 一 部
下水道工事に合わせた整備の検討(H19∼)
対象人口
270人程度
給水区域外未給水地域の解消
松江市行政区域内に存在する3水道事業体の給水区域に入らない給水区域外
未給水地域について、現状を調査したうえで規模を把握し新規簡易水道事業や
飲料水供給施設整備事業など行政としての解消計画を策定し、実施します。
長
海
町
の
一
部
東持田町納蔵地区の一部
荘成町成相寺地区の一部
佐
草
町
の
一
部
新規簡易水道として整備を検討する
H15∼(水源は本局からの分水)
新規簡易水道として整備を検討する
H22∼(水源は、本局からの分水)
飲料水供給施設として整備を検討する
H24∼(水源は、松江鹿島からの分水)
飲料水安定確保対策事業(井戸掘り補助金)を実施
69
簡易水道事業
飲料水供給施設
*
計画給水人口が 101 人以上 5,000 人以下である水道
によって水を供給する水道事業
50 人以上 100 人以下の給水人口に対して飲用に供
する水を供給する施設。過疎地域など人口分布が希薄
な地域では、簡易水道の布設条件が整わないこともあ
り、これらの地域における水道の普及を目的として、
市町村が行う飲料水供給施設整備事業に対して国庫
補助がなされている。
飲料水供給施設整備事業とする場合には、松江市として飲料水供給事業の
条例制定が必要となる。
3−8−8
地方独立行政法人の検討
地方独立行政法人制度は、各地方公共団体の自主的な判断に基づき、地方公
共団体とは別の法人格を有する団体を設立し、自立的かつ弾力的な業務運営を
行うとともに、適切な事後評価と見直しにより業務の効率性やサービス水準の
向上を図ることを目的として、各地方公共団体における行政改革をより一層適
切に推進していくための新たな手法として位置づけられているものです。
本市では、行財政改革推進本部における新行政システム部会の中で「独立行
政法人の検討」が実施計画事項として掲げられておりますので、本局としても
連携をとりながら検討していかなければなりません。
平成16年4月1日施行の「地方独立行政法人法」第21条に基づく業務の
範囲の中に簡易水道事業を除く水道事業も含まれており、既に独立法人化され
た事業及び今後の他水道事業体の動向を調査していく必要性があります。
また、平成14年5月総務省に「地方公営企業と独立行政法人制度に関する
研究会」が設置され、地方公営企業分野に地方独立行政法人制度を導入する場
合の課題について検討が行われ、12月に「地方公営企業と独立行政法人制度
に関する研究会報告書」が発表されました。その内容を中心に、地方公営企業
である本局において地方独立行政法人制度は将
来的に協議課題となるか検討を行うとともに、
他事業体の動向を踏まえながら調査を継続して
いきます。
公営企業型地方独立行政法人の主な調査項目
は下記のようなものを行います。また、国の関
係機関及び他水道事業体の動向を調査し、本局
の運営方針の継続検討項目とします。
70
調
査
検
討
項
目
①
②
③
④
⑤
⑥
定義・目的(経営責任/法人の長の任命/議会の関与)
設立手続(事務事業の設立団体の負担)
財産的基礎等(財務諸表)
役職員の身分等
職員の身分等(公務員型/非公務員型)
目標による管理と評価の仕組み
(中期目標/中期計画/年度計画/評価委員会の事業実績評価)
⑦ 財務及び会計(会計監査/会計基準)
⑧ 財源処置等(長期借入金/債務保証)
3−8−9
ペットボトル事業
水道事業のPRに関しては、広報紙及びインターネット等を活用して積極的
な取り組みを行うべきであり、その中で水道水源の水質保全をお客様にPRす
るなど、水道事業への理解を深めていただくことが求められています。
松江の水道を支えている千本・大谷ダム、左水水源地の自己水源は、豊かな森
林や地元の水源保全へのご理解・ご協力によって、今日まで良質な水道水源と
して活用されています。その良質な原水である「左水」を利用してペットボト
ル「水郷松江 古代水」を製作します。
この「水郷松江 古代水」を松江市関係部署及び本局主催のイベントで広く
PRすることにより水源地域のPR及び水道水源の水質保全等、水道事業への
理解を深めていただくことを目的とし
ます。
また、災害時の備蓄用に使用するなど
災害に対して備えるとともに松江の水
という観点から観光施設を訪れる観光
客に松江の魅力について情報発信を行
うなど幅広い活用を考慮して事業展開
します。
ペットボトル事業については、平成
71
15 年度に試作品を製作することにより、ペットボトル「水郷松江 古代水」の
認知度を高め、モニタアンケートの結果を参考にするなど販売や災害備蓄用と
しての活用を検討します。また、販売に向けては、全国的な販売網の拡大を視
野に入れて、製造から販売に至る委託先など一貫した体制について研究し,コス
ト面についても、3Sプランの活用などコストの低下を検討します。
製造本数については、松江市及び本局のイベント等を考慮し、随時見直すこ
ととする。また、市イベントへのペットボトル提供については、原価を徴収す
るなど対応し、平成 16 年度に事業の再検討を行い、ペットボトル事業の円滑な
推進を図ります。
ペットボトルの使用目的
①
②
③
④
水道事業のPR用(水源の保全、本局のイベント等)
松江の観光PR用(松江市のイベント等)
災害時の備蓄用
販売用(検討中)
3−8−10
水道事業の広域化
島根県東部地域においては、
4市23町2村による島根県
東部広域水道整備促進協議会
が昭和54年6月6日に発足
しました。
市町村単独での水源の確保
が困難な状況の中、広域的な
観点に立った水源の確保と施
設の整備、水道普及の較差、
給水サービスの不均衡、水道
施設管理水準の較差等、水道
事業経営上の問題を含む諸問
題を解決するためには、県と
木次町 斐伊川
市町村が一体となって広域的
かつ計画的に整備する必要があり、これまで協議会として取り組まれてきまし
た。
しかし発足から20年以上経過し、普及率が高水準に達した今日の維持管理
時代においては、施設の共同管理や事務の共同処理等、ソフト面の広域化へと
その目的が変化して来ました。
72
また、平成2年8月1日には島根県水道用水供給事業(尾原系)に参画を予
定する市町村による尾原ダム受水地方公共団体連絡協議会が発足し、尾原ダム
の早期建設に向けた取り組みが実施され、現在は2市7町1村が参画していま
す。
本局においては、これら島根県東部広域水道整備促進協議会、尾原ダム受水
地方公共団体連絡協議会の事務局として取り組んできた経緯があり、今後尾原
ダムからの受水開始まで活動の中心として取り組んでいく必要があります。
島 根 県 水 道 用 水 供 給 事 業 計 画 図
水道事業広域化の基本的な考え
本局は、島根県東部広域水道整備促進協議会、尾原ダム受水地方公共団体連
絡協議会の事務局として、水源の広域化に向け、中心となって活動してきまし
た。
島根県東部広域水道整備促進協議会は、尾原ダム受水地方公共団体連絡協議
会の発足に伴い、会員による講習会や技術講習会が主な活動となりましたが、
尾原ダム受水地方公共団体連絡協議会についてはダムの早期建設を求めて活発
に要望活動を展開している現状にあります。
今後は、市町村合併による会員構成の再編が予測されることから、協議会の
結束に重点を置いた協議会運営をしていく必要があります。
また、これらの協議会を基盤として島根県企業局等との連携により水源の広域
化を推進していきます。
また、現在の松江市の受水計画では、飯梨系・尾原系の合計水量が、能力 87,400
㎥/日に対して 55,000 ㎥/日、約 63%となる上、平成17年予定の市町村合併
73
を加味すれば松江市の水量は更に増加します。(別表1)
このことからも、上水道事業として水源から給水栓までの一括管理を目指す
ためには、水道用水供給事業と水道末端給水事業の一本化が必要であり、更に
は近隣他町村の水道事業を含めた広域化によって事業の効率化や合理化につい
ても検討していく必要があります。
別表1.水量内訳
飯梨系
尾原系
今津浄水場
(能力 52,000 ㎥/日のうち、松江市 35,000 ㎥/日)
三代浄水場
(能力 35,400 ㎥/日のうち、松江市 20,000 ㎥/日)
島根県東部広域水道整備促進協議会
会員:松江市、出雲市、安来市、平田市、鹿島町、島根町、
美保関町、東出雲町、八雲村、玉湯町、宍道町、八束町、
広瀬町、伯太町、仁多町、横田町、大東町、加茂町、
木次町、三刀屋町、吉田村、掛合町、頓原町、赤来町、
斐川町、佐田町、多伎町、湖陵町、大社町
尾原ダム受水地方公共団体連絡協議会
会員:松江市、平田市、鹿島町、美保関町、東出雲町、八雲村、
玉湯町、宍道町、八束町、加茂町
74
3−8−11
ISO(国際標準規格)による品質、セキュリティ
及び環境マネジメントシステムの研究について
水道事業は、お客様に信頼される水道サービス
を提供しなければならないとの認識のもと、いか
にわかりやすく指標として公表できるかが今後の
課題となります。
この指標として、世界的に権威があり確立され
た規格ISO(国際標準規格)があります。
お客様に信頼される水道とは、水量、水質、料
金、環境、お客様満足度の達成されている状況と
考えられますが、これらはISOの指標によって
容易に把握や比較が可能となります。
今後は、ISO取得について中長期的な課題として研究していきます。
※
ISO とは、
International Organization for Standardization
スイス・ジュネーブに本部を置く非政府 組織の国際機関であり、国際連合
の諮問機関です。1947 年に発足し、現在は世界 138 カ国以上が参加し、工業製
品からサービスに至る様々な国際規格を決めています。
水道事業における ISO 規格について
①
②
③
④
ISO 9001
ISO 14001
ISO 17799
ISO/TC224
(品質マネジメントシステム規格)
(環境マネジメントシステム規格)
(セキュリティマネジメントシステム規格)
(水道及び下水道サービス活動に関する規格)
ISO/TC224 については、今後規格化を予定
水道事業における ISO 規格の活用について
①
②
③
④
事業の目標管理
事業の説明手段
委託業務の管理
水道事業体間の比較
75
ISO 9001
イメージ
(品質マネジメントシステム規格)
品質マネジメントシステムの継続的改善
顧 客
顧 客
経 営 者 の責 任
資源の運用管理
満足度
測定、分析及び改善
製品の実現
製 品
要 求 事
インプット
アウトプット
価 値 を付 加 する活 動
ISO 14001
イメージ
情 報 の流 れ
(環境マネジメントシステム規格)
Action
〈経営層による見直し〉
・環 境マネジメントシステム
の見 直し
継 続 的 改 善
環境方針(Policy)
P l a n
C h e c k
〈点 検 及 び是 正 〉
・監 視 及 び測 定
・実 施 ・運 用 の結 果 を点 検 ・是
正 及 び予 防 措 置
・記 録
・環 境マネジメントシステム監 査
(セキュリティマネジメントシステム規格)
継続的改善
ISO 17799
イメージ
D o
〈実 施 及 び運 用 〉
・体 制 及 び責 任
・訓 練 、自 覚 及 び能 力
・コミュニケーション
・環 境マネジメントシステム文 書
・文 書 管 理 、運 用 管 理
・緊 急 事 態 への準 備・対 応
〈 計 画 〉
・環 境 側 面
・法 的 、その他 の要 求 事 項
・目 的 及 び目 標 の設 定
・環 境 マネジメント
ブログラムの策 定
● PDCA サイクルによる
スパイラルアップ ●
ポリシー
策 定
Actio
Plan
D o
Chec
ISMS の 維 持
ISMS の 確 立
作成した
ポリシー
(方針)を
基に
●P l a n :
●D o
:
●C h e c k :
●A c t
:
及び改善
ISMS の 導 入
ISMS の 監 視
及び運用
及び見直し
情報セキュリティ対 策 の具 体 的 計 画 、方 針 を策 定 する。
計画 に基 づいて実 施 運 用 を行 う。
実施した結 果 の監 査を行 う。
経営 陣 による見 直 しを行い、改 善 する。
76
このサイクルを
継続的に繰り
返 し、情 報 セキ
ュリティレベル
の向 上を図る
第4章
経営の健全化、効率化
に向けて
(1)松江市水道事業計画
(2)松江市水道事業の経営分析
ア.収益的収支及び資本的収支の分析
イ.計画期間における収益的収支及び資本的収支の推移予測
ウ.水需要予測を含む業務計画
エ.起債の借入及び償還状況と今後のあり方
オ.給水単価、供給単価、県受水単価の分析
カ.各種経営指標の分析
キ.内部留保資金の動向と今後のあり方について
ク.引当金の考え方
ケ.適正な事業報酬(社会的必要余剰)の考え方
(3)料金体系のあり方
ア.尾原受水までの料金体系のあり方
イ.尾原受水後の料金体系のあり方
ウ.料金審議会の開催について
(4)健全経営化に向けて
77
4−1
松江市水道事業計画
本市の水道事業は大正 3 年に着工され、計画給水人口 5 万人、一日最大計画
給水量 6,300 ㎥、1 人 1 日最大給水量 126ℓの計画で大正 7 年 6 月 1 日から給水
を開始しました。
その後、幾度となく拡張事業を重ねてきましたが、昭和 48 年の大渇水で 134
日にも及ぶ給水制限を経験したことから、大きな水源開発が急務となりました。
幸い広域水道の見地から県営山佐ダムの建設が進められており、昭和 55 年度
から日量 25,000 ㎥の受水を確保できるようになりました。
昭和 57 年度には計画給水人口 140,200 人、一日最大計画給水量 70,000 ㎥の
体制ができましたが、平成5年度には計画一日最大給水量を 2,000 ㎥減少し
68,000 ㎥となり、平成 14 年度まで同じ規模で運営されてきました。
その後、斐伊川上流に多目的ダムを建設する計画があがり、最後の水源とし
て、本市のほか 9 市町村がそのダムから受水(本市は 20,000 ㎥)することが決
定しています。そして、その受水関連事業として平成 14 年度には計画給水人口
153,800 人、1 日最大計画給水量 81,600 ㎥、1 人 1 日最大給水量 530ℓ、1 人 1
日平均給水量 413ℓとする第 11 次拡張の事業認可を受け現在事業を進めている
ところです。
松江市上水道事業計画の推移
事業名
認可年
創
大正 2
設
第1次
拡
張
第2次
拡
張
第3次
拡
張
第4次
拡
張
第5次
拡
張
第6次
拡
張
第7次
拡
張
第8次
拡
張
昭和 2
昭和 8
昭和 10
昭和 14
昭和 26
昭和 27
昭和 37
昭和 43
着
工
完
成
総事業費
1 日 最 大
1人1日
1人1日
計
計画給水量
最大給水量
平均給水量
画
給水人口
大正3
千円
㎥
ℓ
ℓ
人
大正8
634
6,300
126
84
50,000
365
11,000
200
125
55,000
101
11,000
200
125
55,000
220
11,000
200
125
55,000
6,681
11,000
200
125
55,000
7,104
12,000
200
125
60,000
388,000
22,000
250
190
88,000
230,000
30,000
333
234
93,000
359,000
40,000
421
325
95,000
昭和2
昭和 4
昭和8
昭和 10
昭和 10
昭和 12
昭和 14
昭和 30
昭和 25
昭和 26
昭和 28
昭和 33
昭和 38
昭和 41
昭和 43
昭和 45
78
事業名
第9次
拡
張
認
可
着
工
年月日
完
成
昭和 46
昭和 47
昭和 49
水改善
昭和 49
第 10 次
昭和 50
昭和 50
拡
昭和 57
昭和 57
橋南給
昭和 57
水改善
昭和 59
経
営
変
更
平成
1人1日
計画給水量
最大給水量
平均給水量
160,000
43,000
439
351
98,000
857,840
43,000
439
351
98,000
70,000
594
463
118,000
5,536,443
70,000
499
374
140,200
1,892,400
70,000
499
374
140,200
70,000
499
389
140,200
515,078
70,000
499
389
140,200
772,256
70,000
499
389
140,200
760,514
68,000
483
387
140,700
81,600
530
443
153,800
2
東持田
地区給
水改善
湖北地
区給水
改
1人1日
善
忌部地
区水道
整備
計
画
給水人口
昭和 46
橋北給
張
1 日 最 大
総事業費
平成
3
平成
6
平成
3
平成
6
平成
5
平成
8
第 11 次
拡張
平成 15
平成 15
変更
配水能力等の分析
① 昭和49年当時、最大配水能力 43,000m3、最大給水量 41,220m3、最大稼
働率 95.9%にもなり、配水能力の限界に達しました。
昭和 50 年度には配水能力が 70,000m3( 山佐参画)となり、平成 5 年に 2,000
m3 減少しましたが平成 14 年度までこの配水能力を維持してきました。
② 平均配水量は徐々に増えましたが、平成 10 年度から下降気味となっていま
す。
③ 最大配水量は着実に増えてきましたが、昭和 50 年度以降配水能力を上回る
ことはありませんでした。平成 14 年度 62,206m3 を記録したが、これは寒波
に伴う水道管破裂の被害によるものです。
④ 給水人口は、緩やかに伸びてきましたが最近では鈍化しています。
⑤ 有収水量は、平成 11 年度まで順調に伸びてきましたが近年は横ばいとなり、
平成 14 年度はじめて減少しました。
⑥ 給水量は有収率の向上により、昭和 61 年度に一度は下がりましたがそれ以
降伸び、最近では横ばいの傾向にあります。
79
4−2
松江市水道事業の経営分析
ア. 収益的収支及び資本的収支の分析
①収益的収支の分析
本市の水道事業は昭和 48 年の大渇水の経験を経て、水源確保のため昭和 50 年
度から昭和 57 年度まで第 10 次拡張事業(約 55 億円)を実施し、その後、昭和 59
年度まで橋南給水改善事業(約 18 億 9 千万円)を実施しました。 結果として、事業
費用は昭和 49 年度には 6 億 9 千万円であったものが、昭和 59 年度には 29 億 1 千
万円となり約 4.2 倍となりました。
増えたものは受水費、支払利息、減価償却費です。 これらは全て受水に伴って
増えたもので、昭和 59 年の料金改定後は、ほぼこの事業規模で推移しています。 こ
れは受水費が横ばい、支払利息は減少してきましたが、減価償却費が同程度増加し
たためトータルで同規模になったものです。
収入は昭和 49 年度には約 5 億円(内水道料金約 4 億 4 千万円)であったものが、
昭和 59 年度には約 33 億5千万円(内水道料金約 30 億円)となり、約 6.7 倍(内水
道料金約 6.8 倍)となりました。 これは、この間の 5 回の料金改定(昭和 51 年 81.4%、
昭和 52 年 57.72%、昭和 54 年 18.35%、昭和 55 年 35.64%、昭和 59 年 29.49%)によ
るものです。
なお、収支のバランスは昭和 49 年度以降、昭和 58 年度までは、損失と利益が交
錯しながらも、欠損金が増え、昭和 58 年度末には 12 億 7 千万円の累積欠損金にな
りました。 しかし、昭和 59 年に 29.49%の料金改定を行ったため欠損金は 3 年後の
昭和 62 年にはすべてを解消することができました。その後平成 6 年に政策的見地か
ら 3.9%、平成 7 年には県からの繰り出し金を財源として 1.8%の 2 回の値下げを実施
し現在に至っています。昭和 59 年度以降は純損失を発生させていません。
②資本的収支の分析
資本的支出は、第 10 次拡張事業、橋南給水改善事業もあり、大きな事業が続き
ました。
昭和 49 年度当時の資本的支出はほとんどが建設改良費で、企業債償還金も少
額でした。 例えば昭和 54 年度には建設改良費が約 14 億円で、企業債償還金が
約 7 千7百万円でした。平成 13 年度の資本的支出を見てみると、建設改良費が同
程度の約 13 億 5 千万円であるのに対し企業債償還金が 5 億 5 千万円(約7倍)とな
っています。 建設改良費はほぼ同程度で推移していますが、企業債償還金が増え
ているためトータルで資本的支出は増えています。
昭和 49 年度当時の資本的収入は、ほとんどが借金の企業債です。 それは累積
欠損金があり、収益的支出の減価償却費も少なかったため、資本的支出の補てん
財源になる内部留保資金に乏しく、建設改良事業の財源を補てんするものが少なか
80
ったためです。しかし、昭和 59 年度の料金改定以降、収益的収入に改善が見られ
利益剰余金が発生し、減価償却費も増加して、内部留保資金が増えることとなりまし
た。 よって、資本的支出の不足額をこの内部留保資金で補てんすることができるよ
うになり、企業債の借り入れを抑えることができるようになりました。 昭和 59 年度以降
資本的支出は増えていますが、企業債の借入額は横ばいで推移しています。
イ.計画期間における収益的収支及び資本的収支の推移予測
①収益的収支の推移予測
事業収益の 95%以上を占める給水収益について、人口はほぼ横ばいで推移し
ますが、少子高齢化、食器洗い機の普及等で 1 人あたりの使用量が減少する
ため、わずかながら減少すると予測しており、年約 35 億円程度で推移すると
見込んでいます。
事業収益全体では年約 36 億円程度で推移すると見込んでいます。
平成 16 年度から平成 22 年度までの総収入は 252 億 7 千万円でこの内給水収
益が 245 億 1 千万円(総収入の 97%)となります。
支出は年度毎に見込み額を積み上げていますが、受水費は山佐ダムの企業
債の償還が終わり、資本費部分が少なくなるため減少、支払利息も最近の企
業債の借入利率が低くなっているため減少、委託料は委託化の推進により増
え、減価償却費は資産の取得により増加し、事業費用は約 34 億円程度で推移
すると見込んでいます。
平成 16 年度から平成 22 年度までの総支出は約 237 億 6 千万円となります。
平成 16 年度から平成 22 年度までの利益は 15 億 1 千 5 百万円となり、年間平
均2億 1 千 6 百万円程度の利益が発生すると見込んでいます。
尾原受水後の平成 23 年度から平成 25 年度の総収入は 107 億 9 千万円でこ
の内給水収益が 105 億 2 千万円(総収入の 97.5%)となります。
支出では受水費が平成 22 年度の 2 億 9 千万円から平成 23 年度には 13 億 3
千万円と約 4.6 倍となります。このことが支出の増大を招き、単年度に 6 億 7
千万円の純損失を生むことになります。平成 23 年度から平成 25 年度までの
受水費の合計は 40 億円となり総費用の 31%、水道料金の 38%、に相当するま
でになります。
事業費用は平成 23 年度から平成 25 年度の合計で 127 億 1 千万円となり、
年平均 42 億 3 千万円となります。
純損失は 23 年度から 25 年度までの合計で 19 億 2 千万円まで膨らみ単年度
の水道料金の約 54%にまでもなります。
平成 23 年度以降は尾原受水の高騰により料金値上げは避けては通れない事
態となります。
よって、値上げ幅を極力抑えるため経営の合理化、事業の見直し等により
費用の節約に努めなければなりません。
81
また、市民への理解を得るため情報開示を積極的に行なうと共に事業運営
に市民が参加できるシステムの構築も考える必要があります。
②資本的収支の推移予測
資本的支出は、尾原ダム関連事業のため多額の投資が予定されています。
建設改良費は 13 億円から 22 億円で推移し、平成 16 年度から平成 22 年度ま
での合計は 118 億 8 千万円で年平均 17 億円規模となります。
企業債償還金は 7 億から 5 億 5 千万円で推移し、平成 16 年度から平成 22
年度までの合計は 43 億 7 千万円となり、年平均 6 億2千万円となります。
資本的支出の計は 19 億円から 28 億円で推移し、平成 16 年度から平成 22
年度までの合計は 162 億 7 千万円で、年平均 23 億 2 千万円となります。
収入は、分担金が 9 千万円、工事負担金が 2 千万円、他会計補助金は 2 百
万円から 4 千万円で推移しています。
企業債は 3 億円から 10 億円と大きく変動しています。
企業債は平成 16 年度から平成 22 年度までの合計で 55 億円借り入れます。
年平均では 7 億 8 千万円となります。
企業債償還がこの間 43 億 7 千万円であるので、企業債残高が 11 億 3 千万円
増えることになります。
平成 23 年度から平成 25 年度の資本的支出は、建設改良費は 7 億円から 12
億円で推移し、平成 23 年度から平成 25 年度までの合計は 35 億 5 千万円で年
平均 11 億 8 千万円規模となります。
企業債償還金は平成 23 年度から平成 25 年度までの合計は 14 億 9 千万円と
なり、年平均約 5 億円となります。
資本的支出の計は 12 億円から 20 億円で推移し、平成 23 年度から平成 25
年度までの合計は 50 億 5 千万円で、年平均 16 億 8 千万円となります。
収入は、分担金が 9 千万円、工事負担金が 2 千万円、他会計補助金は 2 百
万円台で推移しています。 企業債は 1 億円から 6 億円で推移しています。
企業債は平成 23 年度から平成 25 年度までの合計で 12 億円借り入れること
にしています。
年平均では 4 億円となります。企業債償還がこの間 14 億円 9 千万円である
ので、企業債残高が 2 億 9 千万円減ることになります。
尾原受水後は経営体質を高めるため企業債を借りずにその残高を減らさな
ければなりません。そのためには建設改良事業の新規事業を極力抑え、内部
留保資金で補てんできる範囲内に止めることが肝要です。
82
ウ.水需要予測を含む業務計画
水道事業の健全経営を推進する観点から、給水収益の基礎となる有収水量の
予測を堅く見積もることとして、平成 14 年度の第 11 次拡張事業変更認可申請
の際に策定した水需要予測を含む業務計画を見直しました。
有収水量を見直す際の留意点
1. 有収水量が平成 14 年度に初めて前年度を下回った。(渇水年を除く)
2. 家事用及び家事兼営業用の 1 人あたりの使用量が下がっている。
3. 自動食器洗い機等に見るように節水型の電気製品が増え、工夫しなくて
も節水できるようになってきた。
4. 今後、雨水利用等が各家庭に普及すれば尚一層使用量が減る。
5. 少子高齢化が進む。
6. 下水道の普及に伴って、想定したほど水道の使用量が伸びなかった。
戦略プラン業務計画表
16 年度
給水人口(人)
有収水量(千
㎥)
給水量(千㎥)
給水人口(人)
有収水量(千
㎥)
給水量(千㎥)
17 年度
18 年度
19 年度
20 年度
130,941
131,138
131,320
131,489
131,648
15,834
15,850
15,865
15,908
15,892
17,594
17,611
17,628
17,675
17,658
21 年度
22 年度
23 年度
24 年度
25 年度
131,798
131,941
132,076
132,206
132,330
15,904
15,916
15,957
15,937
15,948
17,671
17,684
17,730
17,708
17,720
①給水人口の見込みについて
給水人口は平成 9 年度から平成 14 年度までの給水人口実績値を基に、時系
列推計を行い最も相関係数の高いべき曲線を採用した給水人口推計値を採用
しました。結果、平成 25 年度の給水人口は 132,330 人となり 9 年間で 1,389
人増えると見込みました。年平均 154 人の増加で、0.12%の伸びを見込んでお
ります。
②有収水量の見込みについて
年間有収水量は家事用及び家事兼営業用(有収水量の約 65%に相当)とその
83
他用の2種類に分けて計算し、それを合計する方法で算出しました。
家事用及び家事兼営業用の使用量は、平成 9 年度から平成 14 年度までの 1
人 1 日あたりの使用量の実績値を基に時系列推計を行い最も相関係数の高い
べき曲線による 1 人 1 日あたりの使用量推計値を求め、その数値に給水人口
を乗じて算出しました。
その他用は使用量の割合が全体の約 35%であり、使用量に大きな変動がない
ため平成 14 年度実績で一定にしました。
結果、平成 16 年度 15,834 千㎥が平成 25 年度には 15,948 千㎥となり 9 年
間で 114,000 ㎥増えると見込みました。
年平均 12,666 ㎥の増加で、0.08%の伸びを見込んでおります。
③給水量の見込みについて
給水量は有収率を 90%として有収水量から算出しました。
主な指標は上記のとおりですが、他の指標においても実績を基に推定し算
出しています。
エ.
起債の借入及び償還状況と今後のあり方
起債の借入と償還状況を見てみると、昭和49年度以降第10次拡張事業を
進めるために必要な資金は起債しかなく、借入額は増加しました。しかも、当
時の借入利率は8%から7%と高利だったため、支払利息の増加につながりま
した。償還方法が元利均等なので、現在償還額のほとんどが元金部分となって
います。
昭和59年度以降は、第10次拡張事業に伴う減価償却費や料金改定による
利益の増加によって建設改良資金は自己財源で補うことができたため、起債借
入額は減少しました。そうしたことにより、昭和60年度に99億まで増加し
た起債残高は平成7年度に約85億まで減少しました。
平成10年度以降、第10次拡張事業で整備した資産の更新事業等が発生し
たため、起債借入額が増加しました。当時の借入利率は2%台と低利であった
ため、支払利息は減少傾向が続きます。
平成17年度以降減債積立金はほぼ無くなります。また内部留保資金の残高
も平成20年度には底をつき、その後の資本的収支の不足分は当年度で発生す
る減価償却費と起債の借入で補てんしなければならなくなります。平成17年
度に借入れた起債の元金償還は平成22年度以降となるので負担は後年に出て
きます。
今後のあり方として、資本的収支の不足分を起債の借入で補てんする方法だ
と単年度ごとに借入額がばらつき、後年度の元利償還額に影響が出ます(借入
84
利率も不確定要素です)。
このことから、起債の借入が著しく増減しないよう内部留保資金をある程度
確保しておき緩衝させる必要があると思われます。
オ.
給水原価、供給単価、県受水単価の分析
給水原価、供給単価の分析について
第10次拡張事業当時は財政状況が厳しく赤字が続いていた為に給水原価が
供給単価を上回っていました(例えば昭和57年度給水原価 233.05 円、供給単
価 189.51 円)。しかし第10次拡張事業による事業規模が確立し昭和59年度
の料金改定により収益が改善すると供給単価が給水原価を上回り(昭和59年
度給水原価 236.69 円、供給単価 250.22 円)利益を計上できました。
その後給水収益は右肩上がりで増加しましたが、有収水量がそれ以上に増え
た為供給単価は平成14年度現在1m3 あたり 222.38 円まで減少しました。
一方給水原価も県受水費や、人件費、第10次拡張事業に伴う起債借入に起
因する支払利息の増加によって、平成元年度に1m3 あたり 244.68 円まで高騰
しました。
しかしその後は、支払利息と人件費が減少し、さらに営業努力による費用削
減効果もあって、平成14年度末現在1m3 あたり 210.73 円まで減少しました。
今後尾原受水までは、有収水量の増加はあまり見込まれない中支払利息は減
少するものの、減価償却費や委託料が増加するため給水原価は微増していくと
思われます。
尾原受水後は受水費の増大により1m3 あたりの給水原価は 265.11 円まで跳
ね上がります(供給単価は 219.91 円)。
〔算式〕
経常費用−(受託工事費+材料及び不用品売却原価+附帯事業費)
給水原価=
有収水量
給水収益
供給単価=
有収水量
85
県受水単価の分析について
ダム創設、送水管布設による高額な資本費も現在償還終期にきており、布部
系、山佐系ともに資本費部分は減少してきています。しかし今後は、整備され
た施設の改良事業が見込まれるため資本費は増加してきます(単価計算上予想
される改良費を計上)。平成18年度から20年度までの料金単価は、布部系で
1m3 あたり 20.57 円、山佐系で 41.54 円、平成21年度から23年度までは、
布部系で1m3 あたり 22.87 円、山佐系で 23.16 円、平成24年度から26年度
までは、布部系で1m3 あたり 24.86 円、山佐系で 23.52 円と推移します。
平成23年度以降は、尾原系だけでも契約水量7,320千m3 資本費 136.17
円(運転管理費 35.86 円)となり996,000千円余の総資本費を負担する
こととなります。
県受水単価は、収益的収支に多大な影響を及ぼすことになる為、建設工事の
遅れによる資本費の増加はもちろん、逆に負担の軽減を要望していかねばなり
ません。
カ.
各種経営指標の分析
経営指標による分析にあたって
水道事業の経営環境は、その置かれている歴史的、地理的条件により様々で
あり、健全経営のための基準を一律に設定することは困難です。しかし、個々
の水道事業をいくつかの要素により分類し、類型化することにより、類似した
経営環境の事業との比較が可能となり、自らの事業体の特徴、問題点を把握す
ることができます。
こうした観点から給水人口規模、水源による分類、給水区域面積1ha当た
りの年間有収水量により類型化された個々の事業体の中から類似団体を選び、
経営分析に有効な指標の平均値を求め、類似団体を含む同類型の団体の全国平
均値とともに比較・検討して分析します。
86
経営指標
本市
1.事業の概況
普 及 率
平均有収水量
有形固定資産減価償却率
2.施設の効率性
施設利用率
有収率 配水管利用効率
3.経営の効率性
総収支比率
経常収支比率
累積欠損金比率
繰入金比率(収益的収入分) 繰入金比率(資本的収入分)
職員一人当り給水人口
職員一人当り給水収益
給水収益に対する割合
うち職員給与費
うち企業債利息
うち減価償却費
料金回収率 1ヶ月20m3当たり家庭用料金
4.財務の状況
酸性試験比率(当座比率)
自己資本構成比率
固定資産対長期資本比率
類似団体 同 規 模
平
均 全国平均
(%)
(l)
(%)
87.30
333.00
36.71
98.08
306.00
27.00
98.35
321.00
28.93
(%)
(%)
(m3/m)
70.50
90.20
33.36
67.72
93.88
29.89
70.89
92.77
32.49
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(人)
(千円)
106.20
106.20
―
0.36
3.96
1,252
33,843
104.37
104.50
―
1.44
7.42
2,606
54,682
103.48
103.27
2.17
0.68
11.10
2,880
57,271
(%)
(%)
(%)
(%)
(円)
24.76
14.01
20.36
102.39
2,908
19.29
11.55
20.60
96.73
3,007
16.65
9.02
20.11
96.22
2,571
(%)
(%)
(%)
366.40
44.34
84.25
551.04
68.10
90.40
467.48
68.95
89.58
(注) 普及率=現在給水人口/行政区域内人口×100
※ 使用数値 (社)日本水道協会発行「水道事業経営指標」より集計(平成13年度)
□
本市の類型区分と比較団体の定義
本市
現在給水人口
主な水源
有収水量密度
130,214 人
受水
2.56 千 m 3 /ha
本市は、現在給水人口 130,214 人で、受水を主な水源としており、有収
水量密度 2.56 千 m 3 /ha で、
「水道事業経営指標」における分類では、給水
人口 10 万人以上 15 万人未満、主な水源は受水、有収水量密度は全国平均
87
(1.56 千 m 3 /ha)以上の類型(類型区分B3)に属します。
類似団体 ……… 本市と同じく「水道事業経営指標」において類型区
分B3に属している中でも、更に給水人口が本市に近
いこと、受水以外にダムからの取水があること、経営
状態が似通っている(黒字経営)ことなどの観点から比
較的本市に類似している、野田市(千葉県)、瀬戸市(愛
知県)、富田林市・河内長野市・箕面市(大阪府)、橿
原市(奈良県)の 6 団体であり、分析にはその6団体
の平均を使用します。
同規模全国平均 … 本市と同じく「類型区分B3」に属する、本市及び
類似団体6団体を含む32団体と、類型化される際に
用いられた有収水量密度が全国平均以下(類型区分b
3)の6団体をあわせた計38団体の平均です。
以下、「1.事業の概況」から分析を行います。
1.事業の概況
普及率、平均有収水量、有形固定資産減価償却率により、事業の概況を
みます。
(1)
普及率
普及率(対行政区域内人口)(%)=
※
現在給水人口
―――――――――
行政区域内人口
×100
対計画給水人口で比較する場合もある。
本市
普及率(対行政区域内人口)
類似団体平均 同規模全国平均
87.30
98.08
98.35
【全体の傾向】
普及率については、給水人口規模の大きい事業においては、都市部の占める
割合が比較的高いため、普及率も高くなるものと考えられます。
一方、給水人口規模の小さい事業においては、農山漁村地域等の占める割合
が高く、また、自家井戸水等に依存する人口が多いことにより、上水道の普及
率が低くなっているものと考えられます。
88
【本市の場合】
本市の行政区域に対する普及率は 87.30%であり、類似団体及び全国平均を
大きく下回っている。これは、給水区域内に一部未普及地域や自己水源による
未給水はあるものの、地理的な条件等により行政区域内9つの簡易水道、行政
区域をまたがって1つの一部事務組合(松江鹿島水道企業団)が整備されてい
るためです。
(これが統合された場合の普及率は、97.76%となり、ほぼ平均並
となります。)
平成 13 年度末現在給水人口
松 江 市 水 道 局 130,214人
簡
易
水
道
7,481人
松江鹿島水道企業団
8,050人
行 政 区 域 内 人 口 149,081人
(2)
平均有収水量
平均有収水量(l)=
平均有収水量(l)
1 日平均有収水量
―――――――――
現在給水人口
本市
類似団体平均
同規模全国平均
333.00
306.00
321.00
【全体の傾向】
平均有収水量については、給水人口規模の大きい事業が概ね高くなる傾向を
示しています。これは、都市部を抱える給水人口規模の大きい事業においては、
業務用等の大口使用者の影響により有収水量が多くなっているものと考えら
れます。
89
【本市の場合】
本市の平均有収水量は、類似団体平均を大きく上回っています。
これは、県庁所在地としての都市機能に加え、観光産業等による大口使用者
の影響によるものと思われます。
(3)
有形固定資産減価償却率
有形固定資産減価償却累計額
有形固定資産減価償却率(%)=
―――――――――――――――――――×100
有形固定資産のうち償却対象資産の帳簿原価
有形固定資産減価償却率(%)
本市
類似団体平均
同規模全国平均
36.71
27.00
28.93
【指標の見方】
有形固定資産減価償却率は、償却資産における減価償却済の部分の割合を示
す比率です。この比率により減価償却の進み具合や資産の経過年数を知ること
ができます。当比率の向上は、相対的に資本費(減価償却費)の減少を意味し
ますが、同時に施設の老朽化の度合を示していることから、修繕費の発生や生
産能力の低下を知らせるものでもあります。すなわち、償却資産の減価償却の
進み具合を分析することによって、将来の施設更新の必要性や今後の修繕費の
発生見込みを推測し、今後の設備投資計画を立てる際の参考とすることができ
ます。
また、さらに償却資産を電気設備・機械設備等の勘定科目ごとに分析するこ
とにより、緻密な投資計画を立てることができ、費用についてもそれぞれ修繕
費と比較することにより、施設管理の一層効果的な運用を図ることができます。
なお、この比率は減価償却に伴う資金の内部留保がどの程度図られているか
を示すものであり、資金計画を策定する上でも重要な判断材料の一つとなりま
す。
【全体の傾向】
有形固定資産減価償却率については、給水人口規模の大きい事業が高くなっ
ており、特に都及び指定都市は高い数値を示しています。これは一般に給水人
口規模の大きい事業の方が、供用開始年度が古く年数を経過した資産が多いこ
とから、減価償却が比較的進んでいることによるものと考えられます。
【本市の場合】
本市の有形固定資産減価償却率については類似団体、全国平均をともに上回
っているが、これは、供用開始が大正7年と類似団体と比べて古いためである
と考えられます。
90
また、これは同時に施設等の老朽化が進んでいることも意味しており、今後、
修繕費の増加、更新による建設改良費の増加が予測され、修繕引当金、内部留
保資金の分析も必要となってきます。
2.施設の効率性
水道事業は施設型の事業であり、適切な投資が行われているか否かが経営を
左右することになります。投資が適切であるか否かは、施設の効率性を分析す
ることにより判断することができます。
ここでは、施設利用率、有収率、配水管使用効率という代表的な指標を用い
て施設の効率性を考察します。
(1)
施設利用率
施設利用率(%)=
施設利用率(%)
1 日平均配水量
――――――――
1 日配水能力
×100
本市
類似団体平均
同規模全国平均
70.50
67.72
70.89
【指標の見方】
施設利用率は、1日平均配水能力に対する1日平均配水量の割合を示すもの
91
で、施設の利用状況を総合的に判断する上で重要な指標です。施設利用率はあ
くまでも平均利用率ですから、水道事業の様に季節によって需要変動のある事
業については、最大稼働率、負荷率と併せて施設規模を見ることが必要です。
施設利用率や最大稼動率が高いほど、施設の効率性が高いといえますが、高
すぎると、安定給水という視点から問題となり、逆に両方とも低い場合は、遊
休施設が存在していることとなります。
負荷率が低い場合は、季節等による需要変動の幅が大きいということです。
この場合、配水量のピーク時の安定給水を確保するため、配水能力を増強する
必要があり、増強の結果、稼動効率が悪くなっていることが考えられます。
参考
・最大稼働率=1日最大配水量/1日配水能力×100(%)
・負 荷 率=1日平均配水量/1日最大配水量×100(%)
本市
類似団体平均
同規模全国平均
最大稼働率(%)
85.30
83.97
84.38
負
82.60
80.77
83.93
荷
率(%)
【全体の傾向】
施設利用率については、給水人口規模の大きい事業が概ね高くなっています。
【本市の場合】
本市の施設利用率は、類似団体平均を上回り、全国平均ともほぼ同程度で、
負荷率では、若干全国平均を下回るものの、最大稼働率では上回っており、比
率的にも施設に若干の余裕も残しており、現在のところは全体的に効率的な施
設の利用をしていると考えられます。
しかし、水源の約6割を受水に頼っていることと、過去に 20%の受水制限
もあったことを考えれば、現在の施設能力が将来にわたって安全であるとはい
えないと考えられます。
92
(2)
有収率
有収率(%)=
有収率(%)
年間総有収水量
――――――――
年間総配水量
×100
本市
類似団体平均
同規模全国平均
90.20
93.88
92.77
【指標の見方】
施設効率を見る場合、施設の稼動状況がそのまま収益につながっているかに
ついては、有収率で確認することが重要です。有収率が低いということは、漏
水が多いこと、メーターの不感、公共用水、消防用水等いくつかの要因が考え
られますが、漏水、メーター不感等による場合は、施設効率が高くても収益に
つながらないこととなるため、有収率の向上対策を講ずる必要があります。
なお、有収率が著しく低い事業においては、(1)施設利用率及び(3)配水管使
用効率といった施設の効率性を分析する場合には割り引いて考える必要があ
ります。
【全体の傾向】
有収率については、給水人口規模の大きい事業ほど高くなっています。この
理由としては、給水人口規模の大きい事業は、比較的供用開始年度が古く、維
93
持管理期に移行していることなどから、老朽管更新等による漏水防止対策が進
んでいるものと考えられます。
【本市の場合】
本市の有収率は、類似団体、全国平均とも若干下回っていますが、漏水調査
を年次的に行っていること、漏水修繕業務の委託化による修繕の迅速化、老朽
管の更新を計画的に行うなど有収率の向上に努めてきているため、ここ数年間
上昇傾向にあり、平成14年度末では、91.20%となっています。
(3)
配水管使用効率
配水管使用効率(m3/m)=
配水管使用効率(m3/m)
年間総配水量
――――――――
導送配水管延長
本市
類似団体平均
同規模全国平均
33.36
29.89
32.49
【指標の見方】
(1)の施設利用率に加えて、施設の効率性を示す指標です。
配水管使用効率は、導・送・配水管の布設延長に対する年間総配水量の割合
であり、給水区域内における人口密度の影響を受けます。
【全体の傾向】
配水管使用効率については、給水人口規模の大きい事業が概ね高くなってい
ます。これは、給水人口規模の大きい事業ほど都市部を抱え、人家等の密集度
も高いことによるものと考えられます。また、有収水量密度による分類に大き
な差が生じているのは、地形的要因や需要構造の違いも影響しているものと考
94
えられます。なお、水源別でダムを水源とする事業の数値が他の水源と比較し
て高い数値となっているのは、団体数が比較的少ないうえに、都及び指定都市
の給水人口規模の大きい事業が含まれているためです。
【本市の場合】
本市の配水管使用効率は、類似団体、全国平均を上回っています。これは、
市街地が比較的狭い等の地理的要因に加え、1−(1)の普及率でも説明した
ように、地形的要因や人口密集度等の関係で簡易水道が多く残っているためで
す。
参考資料
名
称
施設利用率(%)
有収率(%)
3
配水管利用効率(m /m)
平成9年 平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年
69.76
71.81
71.65
70.4
70.7
70.5
88.5
87.5
88.9
89.91
90.21
91.2
36.29
35.49
35.14
33.32
33.36
35.89
3.経営の効率性
経営の効率性の項目では、収支の均衡度(収支比率)、繰入金の割合、生産
性等、経営状況に関する代表的な指標を用いて分析を行います。
(1) 総収支比率、経常収支比率
95
総収支比率(%)=
経常収支比率(%)=
総収益
――――
総費用
×100
営業収益+営業外収益
―――――――――――
営業費用+営業外費用
×100
本市
類似団体平均
同規模全国平均
総収支比率(%)
106.20
104.37
103.48
経常収支比率(%)
106.20
104.50
103.27
【指標の見方】
収支比率は、収益性を見る際の最も代表的な指標です。例えば、経常収支比
率は、経常費用が経常収益によってどの程度賄われているかを示すものです。
従って、この比率が高いほど経常利益率が高いことを表し、これが 100%未
満であることは経常損失が生じていることを意味します。
また、この指標を用いて分析を行う場合には、(3)繰入金比率及び(6)料金回
収率をあわせて見る必要があります。
なお、総収支比率、経常収支比率の差異は特別損益によるものです。また、
参考の営業収支比率ともあわせて見たほうが良いと思われます。
【全体の傾向】
収支比率は、総収支比率、経常収支比率とも 100%を上回っており、収支は
比較的良好といえます。
96
※参考
営業収支比率(%)=
営業収益−受託工事収益
――――――――――――― ×100
営業費用−受託工事費用
この比率は、総収支比率や経常収支比率と比べて、特別損益、営業外収支及
び受託費といった企業本来の活動とは直接結びつかない収支を除外して、企業
固有の経済活動に着目した収益性分析ができます。
営業収支比率(%)
本市
類似団体平均
同規模全国平均
124.32
112.32
110.63
【本市の場合】
本市については、昭和59年度以降黒字経営が続いており、経営状況は比較
的良好と言えます。しかし、平成23年度より新規ダム(尾原ダム)からの受
水を計画しており、受水費の大幅な増加や受水に係わる施設整備を企業債に頼
るため支払利息の増加も予想され、今後の見通しに十分注意する必要がありま
す。
97
(2)
累積欠損金比率
累積欠損金比率(%)=
累積欠損金比率(%)
累積欠損金
――――――――――――
営業収益−受託工事収益
×100
本市
類似団体平均
同規模全国平均
―
―
2.17
【指標の見方】
累積欠損金比率は、事業体の経営状況が健全な状態にあるかどうかを、累積
欠損金の有無により把握しようとするもので、営業収益に対する累積欠損金の
割合をいいます。
【全体の傾向】
累積欠損金比率については、給水人口規模の小さい事業ほど概ね高くなる傾
向を示しています。また、有収水量密度別区分で見ると、平均未満の団体の累
積欠損金比率が高くなっています。
【本市の場合】
本市については、累積欠損金が発生していません。次項の繰入金比率も全国
平均を下回っており、全体的に健全な経営状況にあると言えます。
しかしながら、平成23年度からの尾原ダム受水を控え、今後の経営状況に
注意する必要があります。
(3)
繰入金比率
繰入金比率(収益的収入分)(%)=
損益勘定繰入金
――――――――
収益的収入
×100
繰入金比率(資本的収入分)(%)=
資本勘定繰入金
――――――――
資本的収入
×100
本市
類似団体平均 同規模全国平均
繰入金比率(収益的収入分)(%)
0.36
1.44
0.68
繰入金比率(資本的収入分)(%)
3.96
7.42
11.10
98
【指標の見方】
繰入金比率は、収益的収入、資本的収入それぞれの収入における繰入金依存
度を分析しようとするものであり、これらが収支比率に与える影響を考察する
ことは重要であるといえます。
また、経営状況を正確に把握するためには、基準内繰入金、基準外繰入金に
分けて分析を行うことが必要です。
なお、繰入金比率が低い要因の一つとして、一般会計から繰出基準どおりの
繰入れを受けていないことも考えられるので、留意する必要があります。
99
【全体の傾向】
収益的収入に占める他会計繰入金の割合は、給水人口規模の小さい事業にお
いて高くなっています。また、有収水量密度別区分では、平均未満の団体の繰
入金比率が収益的収入、資本的収入ともに高くなっています。
【本市の場合】
本市においては、収益的収入に係る繰入金には、統合した簡易水道分の企業
債償還利息の繰入、消火栓の負担金、資本的収入に係る繰入金には、統合した
簡易水道分の企業債償還元金の繰入、児童手当特例給付補助金、消火栓の負担
金があります。
収益的収入に係る繰入金比率及び資本的収入に係る繰入金比率の双方とも、
全国平均を下回っています。
また、繰入金比率が低いものの、一般会計から繰出基準どおりの繰入れを受
け、基準外の繰入れもないことから、繰入金に依存しない経営が行われている
といえます。
しかし、行財政改革に盛り込まれている簡易水道、一部事務組合(松江鹿島
水道企業団)、下水道の統合問題、また平成 17 年度に予定されている市町村
合併等、繰入金について今後協議が必要となると考えられます。(特に基準外
の繰入金について)
(4)
生産性
職員1人あたりの給水人口(人)=
〃
給水収益(千円)=
現在給水人口
――――――――――
損益勘定所属職員数
給水収益
――――――――――
損益勘定所属職員数
本市
職員1人あたりの給水人口(人)
〃
給水収益(千円)
類似団体平均 同規模全国平均
1,252
2,660
2,880
33,843
54,682
57,271
【指標の見方】
損益勘定所属職員1人当たりの生産性について、給水人口及び給水収益を基
準として把握するための指標です。
なお、生産性の向上は、設備投資や事務のOA化による省力化や業務の委託
化と密接に関連しているので、生産性の指標は、設備投資や費用に関する他の
100
指標と併せて総合的に判断する必要があります。
【全体の傾向】
いずれの指標も、給水人口規模の大きい事業が概ね良好となっています。都
及び指定都市の比率が低いものとなっているのは、検針業務等を直営で行って
いる事業体があり、これらに従事する職員数が影響していることによるもので
す。
101
【本市の場合】
本市については、職員1人当たりの給水人口及び給水収益は類似団体、全国
平均を大きく下回っています。この要因としては、検針業務、滞納整理、浄水
場の運転管理業務等、直営で行っている業務が多い(検針業務については平成
14 年度より委託)ことが考えられます。ただし、業務委託を積極的に行い、
職員数を抑制しながら生産性を高めることはできますが、それに伴い委託料も
増加するので注意する必要があります。
しかし、次の表からも分かるとおり、本市が現在の事業を最小限の人員で行
っているとは言えません。そうであれば、全体的に事業の再検証を行い、組織、
人員の見直しを図り総合的な生産性の向上に努めるべきです。
参考資料(平成 13 年度地方公営企業年鑑より)
区 分
本 市
項 目
生産性(職員数と事業の状況との関係)に関する項目
有収水量1万m3/日当たり職員数 (人)
(損益勘定職員)
うち 原 水 関 係 職 員
浄 水 関 係 職 員
配 水 関 係 職 員
検 針 ・ 集 金 職 員
1 浄 水 場 当 た り 職 員 数 (人)
1 配 水 池 当 た り 職 員 数 (人)
102
24.00
0.23
3.69
9.23
3.00
8.00
3.64
同規模
全国平均
11.00
1.00
1.00
3.00
1.00
2.00
1.00
(5)
給水収益に対する割合
給水収益に対する職員給与費の割合(%)=
職員給与費
――――――
給水収益
×100
〃
企業債利息の割合(%)=
企業債利息
――――――
給水収益
×100
〃
減価償却費の割合(%)=
減価償却費
――――――
給水収益
×100
本市
給水収益に対する職員給与費の割合(%)
類似団体平均 同規模全国平均
24.76
19.29
16.65
〃
企業債利息の割合(%)
14.01
11.55
9.02
〃
減価償却費の割合(%)
20.36
20.60
20.11
103
【指標の見方】
給水収益と比較した場合の各費用の比率を示した指標です。費用構成比及び
有収水量1m 3 当たりの費用金額と併せて分析を行うことで、効率化を図るべ
き費用項目を把握することができます。
なお、給水収益は料金改定により変動するため、各指標の結果に大きく影響
することに留意する必要があります。
【全体の傾向】
各指標とも給水人口規模の小さな事業は概ね高くなっています。給水人口規
模の小さい事業は、施設利用率や配水管使用効率が悪く、投下資本の回収が困
難なことから、給水収益に対する企業債利息や減価償却費といった資本費が高
くなるものと考えられます。
【本市の場合】
給水収益に対する減価償却費は、ほぼ類似団体、全国平均と同程度ですが、
職員給与費、企業債利息の割合は全国平均を大きく上回っています。
これは、前述のとおり、多くの事業を直営で行っていることなどから人件費
が高くなっていること、昭和48年の異常渇水を教訓として、県より受水を受
けるべく、昭和50年度より行った第 10 次拡張事業を企業債に頼らざるを得
ず、平成 13 年度末の企業債残高が 106 億円余り(平成14年度末は約105
億円)となっていることによる企業債利息の増加によるものです。
今後の計画の中で、職員の再配分を含めて事業の見直しを図るとともに、尾
原ダムからの受水に係わる建設資金をできるかぎり、自己財源で賄えるよう収
益性、内部資金等慎重に検討する必要があります。
参考資料
経営の効率性
(%)
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
平成9年度
平成10年度
平成11年度
平成12年度
給水収益に対する割合(内職員給与費)(%)
給水収益に対する割合(内減価償却費)(%)
104
平成13年度
給水収益に対する割合(内企業債利息)(%)
平成14年度
(6)
料金回収率、1ヶ月 20m 3 あたりの家庭用料金
料金回収率(%)=
供給単価
―――――
給水原価
×100
ただし、
┌
│
経常費用−(受託工事費+材料及び不用品売却原価+附帯事業費)
給水原価(円・銭/m 3 )=
―――――――――――――――――――――――――――――
│
│
│
年間総有収水量
│
│
給水収益
│
│
┐
供給単価(円・銭/m 3 )=
│
――――――――
│
年間総有収水量
│
│
└
┘
本市
類似団体平均
同規模全国平均
料金回収率(%)
102.39
96.73
96.22
1 ケ月 20m 3 あたり家庭用料金(円)
2,908
3,007
2,571
【指標の見方】
料金回収率は、供給単価と給水原価との関係を見るものであり、料金回収率
が 100%を下回っている場合、給水にかかる費用が水道料金による収入以外に
他の収入で賄われていることを意味します。料金回収率が著しく低く、繰出基
準に定める事由以外の繰入金によって収入不足を補てんしているような事業
体にあっては、適正な料金収入の確保が求められます。なお、1ヶ月 20m 3 当
たりの家庭用料金は税込の金額を示しています。
【全体の傾向】
料金回収率については、給水人口規模の小さい事業においては概ね低くなる
傾向となっています。
また、1ヶ月 20m 3 当たりの家庭用料金については、給水人口規模の小さい
事業ほど高くなる傾向となっています。
105
【本市の場合】
本市の料金回収率は 102.39%で、類似団体、全国平均を上回っています。
現在のところ、おおむね良好であると思われます。
料金については、類似団体を若干下回るものの、全国平均に比べると高めと
なっています。
4.財務の状況
ここでは、財務の安全性(健全性)または設備投資の妥当性を見る指標とし
て、以下の指標を用います。
106
(1)
当座比率
当座比率(%)=
当座比率(%)
現金預金+未収金
―――――――――
流動負債
×100
本市
類似団体平均
同規模全国平均
366.40
551.04
467.48
【指標の見方】
当座比率は、支払義務としての流動負債に対する支払手段としての当座資産
(流動資産のうち、現金・預金、換金性の高い未収金等)の割合を示すもので
あり、短期債務に対する支払能力をあらわしています。趨勢的にこの指標が良
くなっていれば経営状況が好転しており、悪くなっていれば、経営は悪化して
きているといえます。
当座比率により支払能力を見る場合、単に数値の大小にとどまらず、その要
因が当座資産の大小にあるのか、流動負債の大小にあるのかを確かめることが
大切です。
【全体の傾向】
当座比率については、給水人口規模が小さいほど概ね高くなっています。こ
れは、給水人口規模が大きな事業に比べ当座資産が実額では少額であるものの、
流動負債との比較で見れば大きくなっているからです。一方、給水人口規模が
大きな事業は、当該比率が相対的に低くても、規模の経済(スケールメリット)
により支払い能力が確保されていると考えられます。
【本市の場合】
本市は、比率的には類似団体、全国平均を下回っていますが、年度による大
きな変動はなく、支払能力は安定していると思われます。
※ 平成13年度では、流動資産のうち現金預金約31億9千万円に対して、
未払金等流動負債は、約10億円です。
107
(2)
自己資本構成比率
自己資本構成比率(%)=
自己資本金+剰余金
――――――――――
負債・資本合計
本市
自己資本構成比率(%)
×100
類似団体平均 同規模全国平均
44.34
68.10
68.95
【指標の見方】
財務状態の長期的な安全性の見方として、その事業の資本構成がどのように
なっているかが重要です。自己資本構成比率は総資本(負債及び資本)に占め
る自己資本の割合であり、水道事業は施設の建設費の大部分を企業債(借入資
本金)によって調達していることから、自己資本構成比率は低いものとならざ
るを得ませんが、事業経営の安定化を図るためには、自己資本の造成が必要で
す。また、自己資本は、負債と異なり原則として返済する必要のない資本であ
り、支払利息が発生しないことから、自己資本による建設投資を行う方が資本
費を抑える結果となります。
なお、自己資本のうち剰余金等の内部留保の構成率が高いほど資本構成の安
全性が高いといえますが、例えば、起債の借入を抑制するために、建設投資の
財源を料金を源泉とする利益剰余金に過度に求めているような場合において
108
は、自己資本構成比率は高い数値となるものの世代間負担の公平が損なわれる
といったことも考えられるため留意する必要があります。
【全体の傾向】
自己資本構成比率については、給水人口規模が大きな事業が若干低くなる傾
向を示しています。
【本市の場合】
本市の自己資本構成比率は、類似団体、全国平均と比べ低い比率となってお
り、資本構成の安定度は低いといえます。
この理由の一つとしては、前述のとおり、第10次拡張事業を企業債に頼ら
ざるを得なかったことがあげられますが、過去5年間の推移では年々充実はし
てきています。ただし、今後10年間に約120億の建設資金が必要と見込ま
れていることから、資本構成の低下にならないよう努めなくてはなりません。
本市の今後の目標として、類似団体規模とはいわないまでも、少なくとも全
水道事業体の平均である、54.4%(平成 13 年度地方公営企業年鑑参照)まで
は近づけなくてはなりません。
(3)
固定資産対長期資本比率
固定資産対長期資本比率(%)=
固定資産対長期資本比率(%)
固定資産
――――――――――――×100
固定負債+資本金+剰余金
本市
類似団体平均
同規模全国平均
84.25
90.40
89.58
109
【指標の見方】
前掲の自己資本構成比率と同様、事業の固定的・長期的安全性を見る指標
です。固定資産対長期資本比率は、資金が長期的に拘束される固定資産が、
どの程度返済期限のない自己資本や長期に活用可能な固定負債などの長期資
本{自己資本(自己資本金+剰余金)及び長期借入金(借入資本金+固定負
債)}によって調達されているかを示すものです。この比率は常に 100%以下
で、かつ、低いことが望まれます。100%を上回っている場合には、固定資産
の一部が一時借入金等の流動負債によって調達されていることを示します。
一般に、最も安全性を阻害するのが流動負債で固定資産を取得することで、
この場合、当該比率は著しく高くなり、当座比率も低下するなど不良債務発
生の原因となります。なお、(1)の当座比率と関連づけて資金収支のバランス
を分析すると良いと思われます。
【全体の傾向】
固定資産対長期資本比率については、給水人口規模の大きい事業が高い傾
向にあり、当座比率と逆の傾向を示しています。この傾向にも、規模の経済
(スケールメリット)が働いているものと考えられます。
110
【本市の場合】
本市の固定資産対長期資本比率は類似団体、全国平均に比べ低い数値とな
っており、比較的良好な状態といえます。
参考資料
財務の状況
(%)
600
470.7
500
400
300
200
401.9
392.88
85.1
43.9
85.4
43.33
306.6
90.5
100
41.8
0
平成9年度
平成10年度
酸性試験比率(%)
平成11年度
345.46
366.4
84.6
42.75
84.2
44.34
平成12年度
自己資本構成比率(%)
平成13年度
83.9
47.2
平成14年度
固定資産対長期資本比率(%)
まとめ
1.事業の概況については、普及率にもあらわれているように、他の上水道、
9つの簡易水道が行政区域内に存在する特殊な環境といえます。同じ行政
区域内でありながら、水道料金を始めとする給水サービスの面でそれぞれ
に違う等の問題を解消するために、現在、全てを統合する方向で検討され
ていますが、平成17年度に予定されている市町村合併も含め細かく検討
していかなくてはなりません。
2.施設の効率性については、有収率が平均を若干下回るものの、施設利用
率、配水管使用効率を見た場合、比較的効率的な施設運用といえます。た
だし、水源の6割を受水で賄っている現状と、今後の水需要予測の中で水
の需要は伸びないとの予測を再度照らし合わせ、新たな受水への施設整備
を始めとした建設投資を詳細に分析、検討していかなくてはなりません。
3.経営の効率性については、総収支比率、経常収支比率、繰入金比率等を
見る限り、全体として現在のところは良好な経営状況にあるといえます。
しかし、職員一人あたりの給水人口や給水収益といった生産性で平均を
大きく下回り、また給水収益に対する職員給与費や企業債利息は平均を大
きく上回るなど、必ずしも効率的な経営をしていないこと、人件費や企業
債利息及び減価償却の進み具合によって施設の更新や修繕に要する費用の
増加が、今後の経営に大きな影響を及ぼす恐れがあることが明らかになり
ました。
このため、今後の事業の展開について詳細にわたる分析、検討を加える
111
とともに、退職者不補充を始めとした組織・人員等の抜本的な改革も含め
ながら経営の効率性を求めていくべきと考えられます。
4.財務の状況については、固定資産対長期資本比率、当座比率等を見る限
りでは、支払能力も高く現在のところ安定した状態であると思われます。
しかし、自己資本構成比率が全国平均を大きく下回っていることや、今
後10年間で多くの建設資金が必要となること、平成23年度から新たな
受水により受水費が増大することなどを考え、今後一層綿密な経営計画の
もと、できる限り自己資金(=水道料金)によって事業運営を行っていき、
自己資本構成比率を全国平均に近づけるよう努力しながら、財政基盤の強
化に努めなくてはなりません。
キ.
内部留保資金の動向と今後のあり方について
平成14年度末現在の内部留保資金としては、企業債の償還のための減債
積立金 13億1400万円余り(企業債残高約 105億400万)と、過年
度分及び当年度分損益勘定留保資金11億7800万円余りの計、24億9
200万円余りとなっています。
(別に未処分利益剰余金約 2億7400万
円)
この内部留保資金を将来にわたる経営の安定化そして尾原受水までの現行
水道料金の維持のためにあてていきたいと考えています。
第一次松江市水道事業経営戦略プランにおける、内部留保資金の取り崩し
は、資本的収入支出のとおりですが、内部留保資金の推移をグラフ化すると
下表の通りとなります。
112
補てん財源内訳
3,000,000
2,500,000
2,000,000
1,500,000
1,000,000
500,000
11
年
12 度
年
13 度
年
14 度
年
15 度
年
16 度
年
17 度
年
18 度
年
19 度
年
20 度
年
21 度
年
22 度
年
23 度
年
24 度
年
25 度
年
度
0
損益勘定留保資金等
建設改良積立金
内部留保残高
減債積立金
企業債
減債積立金残高
先ず減債積立金については、平成15年度より企業債の償還に優先的に充
てていき、17年度までに取り崩す予定となっています。
次に過年度分及び当年度分損益勘定留保資金については、尾原ダム関連事
業費(平成23年度受水開始予定の尾原ダム建設に係わる事業費)約50億
円をできる限り自己財源で賄い、企業債の借入れによって収益的収支におけ
る企業債利息の高騰につながらないよう注意しながら取り崩す予定としてい
ます。
しかしながら、内部留保資金の大部分が減価償却費によるものであり、減
価償却費の考え方の一つとして、後年度における施設等の更新に係わる建設
改良費等の補てん財源となることを考えた場合、取り崩し後の残高の一つの
基準としては、翌年度以降において計画されている建設改良費のうち少なく
とも改良費部分については、自己財源で賄えるよう推移させていくべきであ
ると考えます。つまり、計画では、下表のとおり平成20年度以降、次年度
計画の改良費を補てん財源で賄えないこととなるため内部留保資金の確保が
必要と思われます。
113
資本的収支不足額と内部留保資金残高
1,400,000
1,200,000
1,000,000
800,000
600,000
400,000
200,000
0
14年度
15年度
16年度
差引不足額
17年度
18年度
残 高
19年度
20年度
21年度
22年度
23年度
24年度
25年度
翌年度改良費
※ ・差引不足額は資本的収入が建設改良費に不足する額をグラフ化していま
す。
・平成25年度に翌年度改良費がないのは、基本計画が25年度までのた
めです。
ク.
引当金の考え方
引当金とは将来の特定の費用および損失であって、その発生が当期以前の事
象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることが
できる場合に、当期の負担に属する金額を当期の費用として引当金に繰り入れ、
当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部または資産の部に記載するものです
(企業会計原則注解注18)。
公営企業に例えていえば、退職給与金及び修繕費は、年度によって大きく変
動することがあります。そこでその支出額を毎年度平準化するため退職給与引
当金及び修繕引当金として費用化し、引当てることができるとされています。
この費用は、支払いを伴わないもので、その分の現金その他の資産が企業の
内部に留保されます。しかし、この留保された資金は、企業の自由な使途に充
114
て得る自己の正味の財産ではなく、最終的には、その特定目的(修繕費、退職
給与金)のために使用するために留保されたものです。
①
退職給与引当金
退職給与引当金については、一つの基準として、前事業年度末日に在職し
ていた全職員がその日に退職したと仮定した際に支払われるべき退職給与金
の額を、当該事業年度末日に在職している職員がその日に全員退職したと仮
定した際に支払われるべき退職給与金の額から差し引いた額とするというも
のがありますが、これは全職員の退職給与金を引き当てた後の基準であると
考えられます。これを本市におきかえると、14年度末で約9億5千万円(決
算は約2億8千7百万円)になり、同時に引当の限度額となります。
現在本市では、年度毎の退職給与金を平準化し損益に影響を与えないよう、
3人分までは退職給与金で支出し、それ以上は引当金を取り崩すようにして
います。また、将来の退職予定を基に毎年3千万円の引当金を計上していま
す。
(退職予定に基づいた場合、平成25年度に退職給与引当金は4億6千万
円となります。)
②
修繕引当金
修繕引当金は、特定資産の大修繕が予想される場合は、その修繕費が各年
度均等に支出されるよう計上するか、そうでなければ、過去数ヵ年の平均修
繕費の額か、または資産の帳簿価格の一定割合を引き当てるのが適当とされ
ており、修繕費の執行額が予算を下回った場合は残りを修繕引当金に引当て、
逆に予算を上回った場合に上回った額を取り崩すことが適当とされています。
本市の場合、現在修繕費を平準化するために基準を3億円とし、修繕費が
3億円を超えた場合引当金を取り崩し、下回った場合は引当金を計上するよ
うにしています。(14年度から。引当額は4千万を限度として。)
修繕引当金は現在5億1千万円ありますが、最近では取り崩した実績がな
いことから、引当金が増える傾向にあり、5億1千万円は平成14年度末の
固定資産の内、建物、機械及び装置の資産価格37億6千8百万円の約13.
5%となっています。
また一つの参考として、修繕費支弁基準を見てみると、静岡市の場合、資
産の 30%までを修繕費とするとなっており、これを本市の建物、機械及び装
置に限っておきかえると約11億3千万円となります。
(ある意味では理想額
といえる)
それでは、どれだけの引当金を確保すればよいのかと考えた場合、両者と
も理想額または限度額まで引き当てることは到底市民の理解を得られるはず
もないことから、今年度策定する経営戦略プランの中で、今後想定される職
員数や修繕費の推移を分析し、また、類似都市の現状等も調査した上で、新
115
たな基準を設けていきたいと考えています。
ケ.
適正な事業報酬(社会的必要余剰)の考え方
A
水道法は総括原価主義の考えを採用しています。適正利潤の算定の仕方
は「資本基準主義」となっています。資本基準主義による事業報酬の算出
は、費用積上げ方式で水道料金算定期間の人件費、動力費、薬品費等を計
上し、適正な原価を算出し、これに適正な資本報酬を貸借対照表の資本の
額を基準として年5%(自己資本利子2%、危険料3%)の割合で算入す
ることになっています。
B 水道料金の算定に「資産維持費」という考え方があり、資産維持費とは
事業の実体資本を維持する等のために、施設の拡充、改良及び企業債の償
還等に充当されるべき額であり、維持すべき資産に適正な率を乗じて算定
した額とされます。
Aの考え方で算出した場合14年度決算ベースで 412,650 千円になります。
Bの考え方で算出した場合14年度決算ベースで 166,195 千円になります。
さらに危険率1%加算すると 257,012 千円になります。
Bの考え方で同規模類似団体の自己資本構成比率(68.1%)で算出した場
合 208,049 千円になります。
本市の自己資本構成比率を他の同規模類似団体なみを目指すとすると最低
でも 208,049 千円の利益を確保しなければなりません。さらに危険率等を考
えれば今後の利益の推移を見ても分かるとおり十分とはいえません。
安全で安定した給水を確保する為には資産を維持管理することが重要です。
そのためには、適正な維持管理に相当する利益を確保しなければなりませ
ん。
〔算出方法〕
A 資本報酬
B
=(資本合計−企業債−分担金)×5%
=(21,336,000 千円−10,505,000 千円−2,578,000 千円)×5%
=412,650 千円
資産維持費=資産維持率(自己資本構成比率×起債借入利率)×対象資産
B−①
=0.5440×0.0183×16,694,289,927=166,195 千円
B−② 危険率加算 =0.5440×0.0283×16,694,289,927=257,012 千円
同規模類似団体=0.6810×0.0183×16,694,289,927=208,049 千円
116
本市としてはBの考え方を採用し算出した額と、起債借入金利が上昇した場
合の危険率を加算し算出した額の範囲内を資産維持費の基準としています。
4−3
料金体系のあり方
本局では水需要が急激に増加する時代背景を受けて、昭和 51 年に従前の用途
別料金体系から口径別料金体系に変更しました。
この料金改定において、需要増の主な原因と考えられる大口需要を抑制する
一方、低廉な生活用水を供給するという 2 つの目的を達成するため、従量料金
については使用量が増加するほど適用される単価が高くなるよう原価を逓増的
に配賦する逓増型料金体系を導入しました。
各水量区分には、個別原価主義に基づいて原価を配賦しております。
現在の逓増型料金体系では、最高単価が 360 円に設定されており、1 ㎥あたりの
最低単価 71 円(メーター口径 13mm で 10 ㎥使用した場合の 1 ㎥あたりの単価)
との比率を示す逓増度は、5.1 倍となっています。
今後は、水需要構造の変化や諸情勢の変化を受け、使用者間の負担の公平を
確保するという観点から、経営問題研究会や料金審議会といった外部委員会の
設置によって料金体系のあり方について検討しなければなりません。
ア.
料金審議会の開催について
料金審議会は料金改定するときには必ず設置し、委員からの意見を聴くこと
となっています。(松江市公共料金等に関する審議会条例)
本市の水道料金も過去に幾度となく改訂してきましたが、その都度料金審議
会を設置し、審議結果の意見を聴き料金改定に反映してきたところです。
現在の本市の水道料金水準ができあがった昭和 59 年の料金改定時には昭和
61 年までを料金算定期間として、43.29%の料金値上げの諮問を行いましたが、
計 4 回の審議の結果、市民への影響が大きいとし、予定より 10%以上引き下げ
るよう答申されました。その後、議会での修正もあり最終的に 29.49%の値上げ
になった経過があります。
平成 6 年には政策的見地から小口部分の給水料金(従量料金)を中心として
3.9%値下げし、平成 7 年には県からの繰出金を財源として同じく小口部分の給
水料金(従量料金)を 1.8%値下げしましたが、このときは実質 1 回の審議で諮
問通りの答申がありました。
この間の給水料金の推移は別表の通りであり、政策的見地から小口使用者の
料金が引き下げられていることがわかります。
117
給水料金(1㎥につき)の推移表
昭和 59 年
平成 6 年
29.49%値上げ
3.9%の値下げ
使用量㎥
1∼10
11∼20
21∼40
41∼60
61∼
単位:円
平成 7 年
1.8%の値下げ
口 径 25 ㎜以 下
口 径 40 ㎜以 上
口 径 25 ㎜以 下
口 径 40 ㎜以 上
78
158
280
330
360
95
175
280
330
360
71
151
280
330
360
88
168
280
330
360
95
175
280
330
360
一方、水需要構造の変化を見ると、最近では水需要が伸び悩んでいる上に、
大口需要家の使用量が減少し、小口使用者の件数が増える傾向にあります。
また、平成 6 年の料金審議会の要望事項にあった 40 ㎜以上の大口需要家の料
金軽減についても解決を迫られています。
このような状況であることから、水需要構造の変化に即した料金制度の見直
しも含めた料金改定に向け検討が必要になってきました。
よって、平成 16 年度において経営問題研究会を設置し、学識経験者や各種団
体の代表者、市民等の意見を聴き検討を行ってまいります。その上で料金審議
会を開催し、料金体系のあり方や料金改定について審議することといたしてお
ります。
4−4
経営健全化に向けて
今回経営分析を行なう理由は、市民の多様なニーズに応えるための総合的な
戦略プランを策定するにあたって、その財政的根拠、あるいは経営状況を分析
することに目的があります。
経営分析の結果、本市では更なる経営努力が必要であることがわかりました。
施設能力は現状では問題がありませんが、施設規模から見る営業収益や営業利
益が不足しており、労働生産性も低い現状にあります。いかにして、経費を抑
え、収入を図るかが問われています。経費の抑制についてはPFIの導入、入
札制度の見直し、事業の見直し等によって積極的に行なわなければなりません。
収入については、あらゆる角度からそれに関わる情報を得て増収を図る必要が
あります。
労働生産性が低いのは、人員が多いことにより職員給与費に見合った収益が
あがっていないことが原因です。また、職員に「売り上げ」や「利益」に対す
118
る問題意識が薄いこともあり意識改革が求められます。委託化を推進しながら、
職員の退職者不補充と適正配置を行いながら減員を行い、職員個人の質の向上
と専門性を高め、労働生産性を高めることが必要です。
今後の財政見通しでは、平成 22 年度までは水道料金の値上は極力抑えなけれ
ばなりませんが、現在の料金体系は最高単価と最低単価の比が政策的に実施し
た平成6年、平成7年の最低単価の引き下げによって5倍の格差となり、大口
需要家にとって高負担感を増す結果となっています。
このことから、経営問題研究会においては全使用者がどのように水道事業に
かかるコストを負担すべきかを研究し「以前から懸案事項であった大口需要家
の高負担感を解消するため、水道料金単価の逓増率をもっと緩やかにする料金
体系への見直しなど」について検討していく必要があります。
また、私たちは水源確保のための投資の結果として昭和 51 年から昭和 59 年
までの間に計 5 回の水道料金改定を行い約 6 倍の水道料金になった経験をしま
したが、当時は市民が飲料水を希求しており、高度経済成長時期でもありまし
た。
今後、水需要の伸びは大きく期待できない状況にあり、配水能力も当分賄え
る見通しであります。
これから予想される尾原受水後の水道料金改定(料金値上げ)については、
景気低迷が長期間続いている中で市民の理解を得ることは難しいと思われます。
今後は、より一層の経営努力によって尾原受水までは現行料金の維持に努め
ます。尾原受水に関しましては、長引く景気低迷や節水意識の徹底による水需
要の鈍化、受水関連事業費の増嵩、受水費の高騰による経営の圧迫などの問題
が生じてくるのではないかと予想されるため、今後、県受水量の見直し、受水
関連事業の徹底見直しによる事業費の圧縮を行うとともに、島根県に対し受水
費中の資本費負担軽減を強く要望していくことが必要です。このことは、受水
開始後の料金改定による市民への負担を極力抑えることにつながります。また、
市民に対しては情報開示を積極的に行うとともに市民からの要望も取り入れ、
水道経営への理解を得る努力も必要です。
119
Fly UP