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Japan Tax Update 租税条約・租税協定の進展状況
www.pwc.com/jp/tax Japan Tax Update 租税条約・租税協定の進展状況 Issue 70, February 2012 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 本ニュースレターは、2011 年 1 月 1 日以後に進展のあった租税条約及 び租税協定についての概要を取りま とめ、その状況を解説しています。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1. はじめに 2012 年 2 月 29 日現在、日本が締結している租税条約・ 租税協定は 53 を数え、64 カ国(ここには旧ソビエト連邦を 構成したロシア等が含まれています)との間に適用されて います。 2011 年1月1日以後に、日香港租税協定を含む 5 つの新 たな租税協定及び租税条約が発効し、さらに、オランダと の新条約、ルクセンブルクならびにスイスとの条約改正議 定書も発効しました。 また、租税に関する様々な行政支援(情報交換、徴収共 助、送達共助)を相互に行うことを目的とした税務行政執 行共助条約及び改正議定書(「租税に関する相互行政支 援に関する条約」、「租税に関する相互行政支援に関する 条約を改正する議定書」)が署名されました。 本ニュースレターでは、2011年1月1日から2012年2月29日 までの、租税条約ならびに租税協定に係る進展状況につ いて解説します。 Japan Tax Update 2. 進展状況の概要 2011 年 1 月 1 日から 2012 年 2 月 29 日までに、我が国の租税条約または租税協定について以下の進展がありました。 - 新規締結の租税条約・租税協定として、香港(中華人民共和国香港特別行政区政府)との租税協定が 2011 年 8 月 14 日に、また、サウジアラビアとの租税条約が同年 9 月 1 日にそれぞれ発効しました。ともに 2012 年 1 月 1 日より適用されます。2011 年 12 月 19 日に署名された、ポルトガルとの租税条約はまだ発効しておりません。 - オランダとの新たな租税条約(1970 年に締結された条約(1992 年に一部改正)の内容を全面的に改正するもの) が 2011 年 12 月 29 日に発効しました。改正により、投資所得(配当、利子及び使用料)の課税の更なる減免が 図られると共に、租税回避行為の防止のための特典制限条項等が新たに設けられ、税務当局間の協議に係る仲 裁手続も導入されました。また、スイスとの租税条約(1971 年締結)を改正する議定書も 2011 年 12 月 30 日に発 効し、オランダとの条約とほぼ同様の改正が行われました(税務当局間の協議に係る仲裁手続の規定は設けられ ておりません)。ともに 2012 年 1 月 1 日より適用されます。 - 情報交換を主体とするバハマ、ケイマン諸島及びマン島との租税協定が署名され、2011 年中に発効しました。ジ ャージー及びガーンジーとの同様の租税協定も署名されましたが、まだ発効しておりません。 - 2 国間の租税条約とは別に、政府は 2011 年 11 月 3 日、フランスのカンヌ(G20 サミット)において、税務行政執 行共助条約及び改正議定書に署名しました。本条約は、本条約の締結国間で租税に関する様々な行政支援 (情報交換、徴収共助、送達共助)を相互に行うことを規定するものであり、本条約を締結することにより、本条約 を締結している多くの国の税務当局との協力を通じ、国際的な脱税及び租税回避行為に適切に対処していくこと が可能になります。2011 年 11 月 3 日時点で日本を含む 32 カ国が署名しています。 - 米国との租税条約の一部改正交渉、ドイツとの租税協定の改正交渉が開始されています。 3. 租税条約・租税協定の発効 (1)租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止を主たる目的とする条約または協定 投資所得に対する源泉地国課税の軽減または免除 発効日 相手国 条約名または協定名 (適用日) 配当 利子 使用料 香港 サウジアラ ビア オランダ PwC 2011 年 8 月 14 日 (2012 年 1 月 1 日) 2011 年 9月1日 (2012 年 1 月 1 日) 2011 年 12 月 29 日 (2012 年 1 月 1 日) 「所得に対する租税に関する二重課税の回 避及び脱税の防止のための日本国政府と 中華人民共和国香港特別行政区政府との 間の協定」 「所得に対する租税に関する二重課税の回 避及び脱税の防止のための日本国政府と サウジアラビア王国政府との間の条約」 「所得に対する租税に関する二重課税の回 避及び脱税の防止のための日本国とオラン ダ王国との間の条約」 5%(持株 10%以上)* 10%(その他) 免税(政府等) 10%(その他) 5% ・匿名組合所得課税 ・不動産及び株式等の譲渡益課税 ・協定濫用防止規定 ・相互協議規定、情報交換規定、仲裁手続規定 5%(持株 10%以上)* 10%(その他) 免税(政府等) 10%(その他) 5% (設備) 10%(そ の他) ・不動産及び株式等の譲渡益課税 ・相互協議規定及び情報交換規定 免税(持株 50%以上)* 5%(持株 10%以上)* 10%(その他) 免税(政府、銀行 等) 10%(その他) 免税 ・租税回避行為防止規定 ・匿名組合契約の所得課税 ・課税上の取扱いの異なる団体への対応 ・仲裁手続規定 2 Japan Tax Update スイス 2011 年 12 月 30 日 (2012 年 1 月 1 日) 「所得に対する租税に関する二重課税の回 避のための日本国とスイスとの間の条約を 改正する議定書」 ルクセンブ ルグ 2011 年 12 月 30 日 (2011 年 12 月 30 日) 「所得に対する租税及びある種の他の租税 に関する二重課税の回避及び脱税の防止 のための日本国とルクセンブルグ大公国と の間の条約を改正する議定書」 (2)租税に関する情報交換を主たる目的とする協定 発効日 相手国 協定名 (適用日) 2011 年 「脱税の防止のための情報の交換及び個人 8 月 25 日 の所得についての課税権の配分に関する バハマ (2011 年 8 日本国政府とバハマ国政府との間の協定」 月 25 日) 2011 年 9月1日 「租税に関する情報の交換のための日本国 (2011 年 政府とマン島政府との間の協定」 マン島 9 月 1 日) 2011 年 「脱税の防止のための情報の交換及び個人 ケイマン 11 月 13 日 の所得についての課税権の配分に関する 諸島 (2012 年 1 日本国政府とケイマン諸島政府との間の協 月 1 日) 定」 * 免税(持株 50%以上)* 5%(持株 10%以上)* 10%(その他) 免税(政府、銀行 等) 10%(その他) 免税 ・租税回避行為防止規定 ・匿名組合契約の所得課税 ・課税上の取扱いの異なる団体への対応 ・国際標準に沿った情報交換規定を導入 ・情報交換規定を国際標準に沿った規定に改正 ・利子免税の対象となる機関名を改正 主たる内容 租税に関する国際標準に基づく税務当局間の実効的な 情報交換の実施及び国際的な脱税・租税回避行為の防 止 特定目的会社・投資法人等の日本における課税所得の計算上受益者に対して支払う配当を控除することができる法人によって支払われる配当につ いては原則として適用されません。この場合には、10%の限度税率が適用されます。 4. 租税条約・租税協定の署名 署名が行われていますが、締結国の国内手続きが完了していないため、まだ発効していない条約は下記のとおりです。 (1)租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止を主たる目的とする条約 相手国 署名日 ポルトガル 2011 年 12 月 19 日 (未発効) 条約名 「所得に対する租税に関する二重課税の回 避及び脱税の防止のための日本国とポルト ガル共和国との間の条約」 投資所得に対する源泉地国課税の軽減または免除 配当 利子 使用料 免税(政府等) 5%(持株 10%以上) 5%(銀行) 5% 10%(その他) 10%(その他) ・相互協議規定、情報交換規定、仲裁手続規定 ・条約濫用防止規定 ・匿名組合に対する課税 (2)租税に関する情報交換を主たる目的とする協定 相手国 ジャージー ガーンジー PwC 署名日 2011 年 12 月 2 日 (未発効) 2011 年 12 月 6 日 (未発効) 協定名 「脱税の防止のための情報の交換及び個人 の所得に対する租税に関する二重課税の回 避のための日本国政府とジャージー政府と の間の協定」 「租税に関する情報の交換及び個人の所得 に対する租税に関する二重課税の回避のた めの日本国政府とガーンジー政府との間の 協定」 主たる内容 租税に関する国際標準に基づく税務当局間の実効的 な情報交換の実施及び国際的な脱税・租税回避行為 の防止 3 Japan Tax Update (3)税務行政執行共助条約 相手国 署名日 多国間 条約 2011 年 11 月 3 日 (未発効) 5. 条約名 主たる内容 「租税に関する相互行政支援に関する 条約」、「租税に関する相互行政支援に 関する条約を改正する議定書」 情報交換、徴収共助、送達共助 租税条約・租税協定の交渉開始または基本合意 相手国 主たる内容 米国 現行の租税条約(2004 年発効)の一部を改正するための交渉を開始(2011 年 6 月 8 日)。 「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とオマーン国政府との間の協定」 について基本合意に至る(2011 年 12 月)。 現行の租税協定(1967 年発効)を改正するための交渉を開始(2011 年 12 月 12 日)。 オマーン ドイツ より詳しい情報、または個別案件への取り組みにつきましては、当法人の貴社担当者もしくは下記までお問い合わせく ださい。 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース 〒100-6015 東京都千代田区霞が関 3 丁目 2 番 5 号 霞が関ビル 15 階 電話 : 03-5251-2400(代表) http://www.pwc.com/jp/tax パートナー マネージング ディレクター 鬼頭 朱実 川崎 陽子 荒井 優美子 03-5251-2461 03-5251-2450 03-5251-2475 [email protected] [email protected] [email protected] 税理士法人プライスウォーターハウスクーパースは、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)グローバルネットワークの日本におけるメンバー ファームです。公認会計士、 税理士等約 480 人のスタッフを有する日本最大級のタックスアドバイザーとして、法人・個人の申告をはじめ、金融・不動産関連、移転価格、M&A、事業再編、国際税務、連 結納税制度等、幅広い分野において税務コンサルティングを提供しています。 PwC は、世界 158 カ国 におよぶグローバルネットワークに約 169,000 人のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスの提供を通じて、企業・団体や個人 の価値創造を支援しています。詳細は www.pwc.com をご覧ください。 本書は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けるこ となく、本書の情報を基に判断し行動されないようお願いします。本書に含まれる情報は正確性または完全性を、(明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するものではあ りません。また、本書に含まれる情報に基づき、意思決定し何らかの行動を起こされたり、起こされなかったことによって発生した結果について、税理士法人プライスウォータ ーハウスクーパース、およびその関係会社、パートナー、職員、代理人は、法律によって認められる範囲においていかなる賠償責任、責任、義務も負いません。 © 2012 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース 無断複写・転載を禁じます。 本書において、PwC とは、税理士法人プライスウォーターハウスクーパース、または文脈によりプライスウォーターハウスクーパース インターナショナル リミテッドを中心に構 成されるメンバーファームのネットワークあるいは PwC のネットワークに属する各メンバーファームを指しています。PwC の各メンバーファームは、別組織となっています。税 理士法人プライスウォーターハウスクーパースは、PwC のメンバーファームです。 PwC 4