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登録医ニュース
放射線治療部門の紹介
東京医療センターへのご支援ご協力いつもありがと
うございます。近年の医学の流れに従い当院の放射線
科は業務上大きく二つの部門に分かれ、今後は放射線
診断科と放射線治療科の表示を予定しています。今回
は当院の放射線治療の現状と新たに更新される放射線
治療装置についてご案内させていただきます。尚、現
在は残る 1 台で引き続き治療実施中です。
放射線治療科は悪性腫瘍に対して放射線を利用して
根治ないし症状緩和のために治療を施すことを目的と
しています。当院では年間 1600 名の新患の方ががん
と診断されています。このうち 700 名、つまり 4 割以
上の方が当院で放射線治療を受けています。欧米では
一般にがん患者さんの半数以上が放射線治療を受けて
いますので、当院でも今後さらに多くの方が放射線治
療を受けることが予想されます。原発巣別に症例数を
みると、前立腺、乳腺、消化器(食道、胃腸、肝胆膵)、
呼吸器、頭頸部、婦人科、血液リンパ、脳脊髄、皮膚
軟部の順となります。放射線治療は手術や化学療法に
比べ高齢者や合併症のある患者さんにも優しい治療で
あり、治療法や機器の進化が著しく、現在は集学的治
療の柱です。10 年前に比べ件数が 3 倍に増加し、根治
的治療の割合が圧倒的に増えましたが、同時に症状緩
和の照射も増えています。
2013 年 2 月より稼働する新しい放射線治療装置(リ
ニアック)では赤外線と 2 方向 X 線撮影を用いた画像
誘導放射線治療が可能となり、これまでよりはるかに
位置精度の高い治療が可能となります。次に、リニア
ックの寝台上で CT 撮影を行うことができるため、腫
瘍の位置を補正して高精度の照射を行うことができま
す。これらを利用して脳転移などに対して非侵襲的な
定位放射線治療が可能となります。また、当院では
2010 年 1 月より IMRT(強度変調放射線治療)を年間
100 例行っていますが、今後は回転型 IMRT が可能と
なり、大変効率的となります。これらの機能を十分発
揮することにより、全身からピンポイントまであらゆ
る治療を高精度に安全に実施できることが期待されま
す。
新たに可能となる治療として、脳転移のピンポイン
ト治療があります。ガンマナイフなどと同様の治療が
可能となり、3 個までの小さな脳転移であれば遠方に
紹介する必要がなくなります。適応がありそうな患者
さんがいれば地域連携を介してご紹介いただきたいと
思います。また、小さな肺がんに対するピンポイント
照射が可能となり、1 週間で照射が完了します。前立
腺がんのみならず、複雑な照射となる頭頸部がんや子
宮がん、脳腫瘍などに対する IMRT の計画実施を拡大
することも大きな目標です。
また、前立腺がん、子宮がん、口腔がんなどに対す
る小線源治療はすでに世界有数の実績を有しています
が、今後も引き続き行います。多発性骨転移に対し、
全身治療であるストロンチウムを含め全面的に取り組
みます。
現在の人員構成は萬医長、スタッフ医師 3 名、レジ
デント 2 名と治療専従の技師 5 名(うち 2 名が物理士
資格、1 名は治療専門技師)、院外から 1 名の専門医と
1 名の物理士の援助を受けています。患者さんの気持
ちに寄りそえるように看護師 1 名、受付事務 1 名、病
棟から放射線療法認定看護師 1 名の協力があります。
現在の高度な放射線治療を行う上ではこれでも欧米に
比べスタッフは十分とはいえませんが、他科との連携
では定評があります。診察は毎日 3 列で行っています。
紹介も可能な限り随時受け付けております。もし不明
なことがあれば遠慮なく放射線治療の受付にお電話を
いただければ誠意をもって対応いたします。
独立行政法人国立病院機構東京医療センター
登録医ニュース
第21号
2012年10月発行
[入院による難治性めまい専門治療]
日本めまい平衡医学会専門会員
耳鼻咽頭科 五島 史行
めまいは体験した人にしかわからないつらい症状です。
めまいという言葉には回転性のものから、ふらふらする歩行
障害のようなものなど、様々なものを含みます。そのため、
原因は複 数の診療 科にまたがり、患者はどの診療 科にか
かるべきか悩む症状です。まずは脳からくるめまいを心配し
て神 経 内 科や脳 外 科 、総 合 内 科 を受 診することが多いと
思います。そちらではっきりした異常が見つからない場合に
は耳鼻咽喉科を紹介されることが多いようです。しかし、必
ずしもめまい診療を受けた患者の満足度は高いものとは言
えないようです。患者はより専門的な診断、治療を希望して
いるような印象を持ちます。これまでめまいの治療は投薬に
よるものが主流でした。しかし投薬で治らないめまい患者は
少 なくありません。昔 から「家 宝は寝 て待 て」といいますが
「めまいは寝 てては治 りません」。当 院 耳 鼻 咽 喉 科 では、
様々な検査を行い正確な診断を行った上で新しい治療と
して入院による難治性めまい専門治療を行っています。
めまいは単なる身体疾患ではなく、不安や抑うつなどの
心理的な問題でもあります。めまい患者の多くは不安であり、
この不安に対する対応が予後を決めます。実際に軽度なも
のも含めると約 40%に精神疾患の合併を認めます。忙しい
外来 業務ではこの不安に対して十 分対 応することは困難
です。限られた外来診療時間でめまい患者の不安に対応
しようとすると、医師も不安になり、それによりめまい患者の
不安もさらに増悪し、悪循環に入ってしまいます (図 1)。
そのためには入院して集中的に治療する必要があります。
このような考えから当院では、難治性のめまい症例に対
しては広い病院設備を最大限に活用し入院して、めまいの
リハビリテーションを 4 泊 5 日の間、徹底的に行っています。
入院中はめまい疾患や病態についての学習を行い、リハビ
リテーションの方法や理論を学習します。また「同病相哀れ
む」という言葉通り、同じめまいに苦しむ患者同士が、治療
という目的で入院生活を過ごすことも、患者にとっては安心
につながるようです。現在、平均一ヶ月間で約 20 人のめま
いの方が入院しリハビリテーションを行っています。一度に
入院されるのは 7-8 人です(図 2)。現在までのところ、すべ
ての方のめまいに何らかの症状の改善がありました。しかし、
入院中に完全にめまいが治るわけではありません。退院後
もリハビリテーションを患者さんが継続することによってめま
いは改善していきます。医師は患者さん自身でめまいを直
すための方法をお教えするだけです。治るか治らないかは
患者さん自身の治りたいという気持ちにかかっています。医
師はその気持ちを最大限にサポートします。さらに今後はリ
ハビリテーション科の協力をえて、より効果的な治療プログ
ラムを立案していきます。難治性めまいの定義は一般的に
は 3 ヶ月以上の一般治療にもかかわらず改善が認められな
いとしていますが、苦痛度が高い場合にはこの限りではあり
ません。疾患としては片 側前 庭機 能低 下後の代 償不 全、
老人性平衡障害、心因性めまい、反復性良性発作性頭位
めまい症、メニエール病の方が多いようです。
最後になりますが、「良い医師は病気を治すが、偉大な
医師は患者を治す」(Sir William Osler)という有名な言葉が
あります。病気ももちろんですが、患者を治せるような医療
を行えるよう日々精進する次第です。治りにくい、そしてうる
さいめまいの患者さんに困りましたら是非当科(月曜初診)
までご紹介ください。
公開医局講演会
2012 年 7 月 5 日
平成 24 年度東京医療センター
公開医局講演会
「地 域 のがん診 療 を支 える~が
ん診 療 連携 拠 点 病 院の目 指す
もの~」
内科医長 大中 俊宏
医療従事者である皆様は,これまで多くの方の死亡
診断書を記載されたり,あるいは目にされた機会がお
ありでしょう.ところで,いつかはわれわれ医療従事
者も死亡診断書を記載される立場になりますが,皆様
はご自分の「直接死因」について想像されたことはお
ありでしょうか.2009 年の人口動態統計によると,な
ん と 30% は 悪 性 腫 瘍 , 心 疾 患 16% , 脳 血 管 障 害
11%,
・・・と続き,おそらく多くの人が望んでいる大
往生,すなわち老衰は 3%に過ぎません.
毎年,70 万人の人が新たに「がん」と診断され,35
万人が亡くなっています.男女ともに一生に一回「が
ん」と診断を受ける可能性は 50%です.総合病院の入
院患者のうち,3〜4 割が「がん」患者であるとされて
います.最も身近な慢性疾患の一つになっていると言
えるでしょう.
ところで,死亡診断書には「死亡したところの種類」
も記載しなくてはなりません.皆様はそれがどこにな
るとお考えですか. 1950 年ごろは自宅でなくなる方
が 9 割,医療機関を含む施設で亡くなる方が 1 割でし
たが,今日では完全に逆転し,それぞれ 1 割,9 割と
なっています.今後どうなるのかについて,多くの研
究者が共通した興味深いデータを出しています.日本
の人口は 2006 年の 1 億 3000 万人をピークにすでに減
尐に転じており,2100 年には 5000 万人を割り込むと
予想されています.一方,これから急激に尐子高齢化
が進み,死亡率が高まっていきます.現在,年間死亡
者は約 100 万人(がん 35 万人)ですが,平成 52 年に
はピークを迎え 166 万人(がん 80 万人)になるとさ
れます.現在 47 歳の自分は,平均寿命通りならばそ
のピーク前後に死を迎えます.
そこで,先の質問に戻りましょう.
「死亡したところ
の種類」がどこになるか.これから死亡者数が急増す
る中,医療機関を含む施設の数が今と変わらず,自宅
での看取りが今と変わらないと仮定すると,近い将来
3 割近くの人は「7 その他の場所」,つまり「山や川,
路上」で死亡せざるを得なくなる,と言われています.
考えれば考えるほどブルーになってしまう話ですが,
でも何か対策を考えなければなりません.
これから将来,病院医療の資源が大幅に増える可能
性はないので,在宅医療・ケアを手厚くするしかない
のではないでしょうか.
「病院は治療の場」,
「自宅は生
活の場」という役割分担は明白にし,治療が必要なと
きには病院機能も利用しながら患者さんは生活の場と
の間でフローできるように,コーディネートする立場
が必要になっていく・・・.
がん医療においてそのコーディネートを期待される
のが「地域がん診療連携拠点病院」です.平成 18 年
の「がん対策基本法」を受けて,平成 19 年に「がん
対策推進基本計画」が策定され,これを背景に平成 24
年 4 月 1 日現在 397 ヶ所のがん診療連携拠点病院が整
備されています.その「任務」は二次医療圏全体のが
ん診療をまとめることです.平成 24 年に 5 年ぶりに
がん対策推進基本計画(全文
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_keikak
u02.pdf)(抜粋
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_keikak
u01.pdf)の見直しが行われました.抜粋を尐し読んで
みましょう.例えば,
第 4 分野別施策と個別目標
1.がん医療
(4)地域の医療・介護サービス提供体制の構築
3年位内に拠点病院のあり方を検討し,5年位内に
その機能をさらに充実させる.また,在宅医療・介護
サービス提供体制の構築を目指す.
この部分の全文を読むと,がん診療連携拠点が核と
なって,その地域の医療・介護サービス提供の連携体
制を整えていくことを求めています.
とても大変なこと,ですが大事なこと.
「がんになっ
ても安心して暮らせる地域づくり」のために,何がで
きるかご一緒に考えてみませんか.
地域医療カンファレンス
2012 年 9 月 20 日
第77 回
「外傷外科と Acute care
Surgery」
救命センター医長
尾本 健一郎
外傷(けが)はありふれた疾患でありますが、生死
を分けるような重症多発外傷は多いものではありませ
ん。そのため現代社会における無視されている疾患
(neglected disease)ともいわれ、急性冠症候群や脳
血管疾患、悪性疾患などにくらべると質の高い診療が
とられているとはいえません。不慮の事故による死亡
は若年者が多く、大きな社会的損失であります。
Prevental trauma death(PTD)とは?
適切な救急医療サービスを受けることができなかった
ために,本来であれば助かっていたはずの患者が亡く
なってしまう「防ぎ得た外傷死」のことをいいます。
PTD を減尐させることが重症外傷治療の目標です。
ATLS と JATEC
米 国 で 1 9 7 6 年 ATLS ( Advanced trauma life
support)という外傷初期診療のマニュアルが生まれま
した。米国の整形外科医 James Styner が自家用飛行機
を操縦しネブラスカ郊外の片田舎の畑に墜落しました。
妻は即死し,彼と3人の子供が重傷を負いました。混乱
した現場で彼が目にしたのは初期診療体制の不備でし
た。これは改善する必要があるのではないか?そんな
彼の疑問からはじまり、現在、米国をはじめ世界各地
で導入されております。
このような光景はつい最近まで、
( 施設によっては今
現在でも)我が国でみられておりました。複数の医師
がからむことで、治療のプライオリティーが医師間の
パワーバランスなどで決定されがちであり、一人一人
が単独で各臓器に対する十分な知識、技量があっても
助からなくなるケースがでてきます。お互いに外傷に
関した共通言語、理解が前提としてないと複数の臓器
が傷ついた患者を、どの治療からすれば助かるかを瞬
時に判断、治療を行うことは難しいのです。
こ の ATLS を 元 に 日 本 版 ATLS と し て JATEC(Japan
Advanced trauma Evaluation & Care)が立ち上げられ
ました。その根幹はバイタルから多発外傷診療をアプ
ローチ、蘇生を開始し(primary survey)状態の安定
化を確認したうえで各部位の本格的な診断や治療
(secondary survey)に移行するという実戦的内容か
らなっています。
JATEC は臨床研修教育にも導入されており、初期研修
医制度のおかげもあり、多数の医師に普及してきまし
た。また、北米型 ER(Emergency Room)の流行もあり、
当初の目標であった初期診療の標準化は徐々に改善さ
れつつあると思われます。
しかしこれらはあくまでも初期治療に限った内容であ
り、今後、初期治療が改善されたことのより次の改善
点として、今まで以上に根本治療(definitive care)
の重要性が増してきます。根本治療の標準化は困難で
あり、ケースバイケースで知識、技術が必要なのです。
外傷外科の機会減尐と Acute care surgery
ところで外傷そのものの件数は減尐してきており
代表的な外傷である交通事故もシートベルト、エアー
バックの着用、飲酒運転の厳罰化の効果もあり、この
20年で死者は半減しています。件数、負傷者も平成
15年頃より低下傾向にあります。社会にとってはよ
いことでありますが、このような外傷絶対数の減尐、
また近年の放射線治療の進歩からカテーテルで治療で
きてしまう(Interventional Radiology)こと、また
病態の理解がすすみ手術せずに保存的に治療できる
(NOM:non-operative management)の適応拡大もあり、
外傷外科の手術機会は減尐しております。しかし出番
が減っているからといってなくなるものではなく、今
後の手術適応はより緊急度、重症度の高い症例のみに
なると予想されます。このことはより外傷の多いイメ
ージのある米国でも同様で、このような数尐ない厳し
いケースのみでは技量の維持、次世代の養成ができな
くなるとして Acute care surgery という概念が生まれ
ました。これは外科系救急医と一般外科医の連携とも
いえ、外科を subspecialty とする救急医がスキルアッ
プ、技量の維持のため常に手術機会にさらされるよう
に、外傷のみならず守備範囲を急性腹症等の内因性外
科救急疾患にも広げていこうとするものです。また、
外科系救急医の集中治療の知識を一般外科医の先生方
にも還元する目的もあります。
当院においても救命救急センターから一般外科とコ
ラボレーションしながら私を含め3人の外科系救命科
医師が双方の患者の治療にあたっております。今後と
もよろ しくお願いたします。
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