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太陽エネルギーの利用 - 化学工学会産学官連携センター SCE・Net

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太陽エネルギーの利用 - 化学工学会産学官連携センター SCE・Net
E07B10
K.YUGE
【新エネルギー】
太陽エネルギーの利用
弓削 耕
(化学工学会 SCE・Net)
1.講義の目標
新エネルギーとして期待されている太陽エネルギーはどんなものであるか、どのように利用され
ているかを知り、今後どのように利用していったら良いかを考える。
2.講義の概要
(1)太陽エネルギー
人類は創生以来、太陽の恩恵を受けており、太陽なしには人類の発生も発展もなかったといえ
る。しかし長い間、自然の恵みとして消極的な利用に止まっていた。太陽に人類の智恵、科学技
術の進歩を活用して、太陽を人類にとって利用し易い形で積極的に利用しようとするのが、太陽
光発電であり、太陽熱発電であり、ソーラーシステムである。
太陽は地球の役 110 倍の大きさで、表面温度は 6000K、地球から 1.5 億km離れたところにあり、
地球上に注ぐ太陽エネルギーは1kW/m2で、40 分の太陽照射量で現在の全世界の使用エネルギ
ーを賄うことが出来る。
(2)太陽電池の原理
太陽電池は半導体に太陽光を当てた時に生ずる光電効果を利用し電気を発生させるもので、
光電効果は 1839 年に Becquerel が発見した。
太陽電池は化学・物理・
生物電池に分類すると、物
理電池に属し、電池といっ
太陽電池の原理
ても電気を貯めることは出
来ず、太陽光が当らないと
電気は発生しないし、当っ
ている限りは発電を続けら
太陽光
(−)電極
反射防止膜
㊀
れる。
太陽電池の実用化は
1954 年 に ベ ル 研 究 所 の
Pearson、Fuler、Chapin ら3
㊀
㊀
㊀
電子
電子
n型半導体
㊉
㊉
㊀
p型半導体
㊉
負荷
㊀
pn 接合部
正孔
㊉
㊉
電流
㊉
㊉
(+)電極
人の技術者がシリコン太陽
電池を発明したことにより
太陽エネルギーの活用
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耕
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始まった。まず、人工衛星への搭載が行われ、日本では 1959 年から開発が始まり、無線中継所、
灯台などで利用されたが、高価格のため普及は進まなかった。オイルショック後に見直され、各国
で検討が進められ、特に日本では政府の経済的支援もあり、一般家庭にも普及が進み、1998 年
にアメリカを抜いて、世界1の生産量になったが、設置設備能力では最近ドイツに抜かれ 2 位とな
っている。
太陽光を受ける半導体(n型、p型)が光を吸収すると、n型半導体には ㊀の電子、p型半導体
には ㊉の正孔が発生し、㊀の電子が陰極に、 ㊉の正孔が陽極に集まり、両電極を導線で接続
すると、不安定になったn型半導体の ㊀電子が導線を伝わってp型半導体の ㊉正孔 に向かっ
て移動し、電流が流れる。発生した電流は直流なので、インバーターで交流に変換する。このよう
にして、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する。このエネルギーの変換効率は 10
−20%程度である。
(3) 太陽電池の構造
半導体はシリコンを原料
にし、インゴットからウエハ
を作り、エッチングをして、
拡散剤を塗布し、塗布膜中
の燐をウエハ中に拡散させ、
pn 結合を形成し、受光側の
表面に反射防止膜を作る。
太陽光発電
太陽電池で太陽エネルギーを電気エネルギーに変える
(発電する)
太陽電池の構成
セル
モジュール セルを接続して必要な電圧が得られるように
加工したもの、設置する場合の最小単位
裏面には Al ペーストと Ag
ペーストをスクリーン印刷、
焼成して裏面電解層(電
極)を作成する。表面には
角叉は丸の薄い板で、最小の電池機能を持つ
アレイ
モジュールをガラス、フィルム、透明樹脂などで
包み、耐候性や機械強度を持たせ、大容量の
電力を取り出せるように架台に並べたもの
Ag ペーストを用いたスクリ
ーン印刷で電極を形成する。
これで出来上がったセルを、組み合わせてモジュールを作る。セルの受光面側にガラスの透明
基板をおいて支持板とし、セル間に配線し、その下に透明な樹脂材料を充填し、裏面保護シート
を敷いて、アルミ枠でフレームを組立てるとモジュールは完成する。そのモジュールを架台に並べ
て大容量の電力が取り出せるようにしたものがアレイである。
太陽電池の主原料は結晶系のシリコン、特に多結晶シリコンであり、従来は半導体製造の余剰
品で賄っていたが、太陽電池の生産が増えると、シリコンを両者で分け合うようになり、原料源の
確保とコスト高が問題になってきている。シリコン系ではアモルファス系や薄膜にするとか、結晶シ
リコン基板の両面をアモルファスシリコンで接合した HIT や、球状のシリコンを使うとかの検討が行
われている。
コストダウンや変換効率の向上を目指してガリウム、インジウム、銅、セレンなどを原料とする
CIS、CIGS の化合物系電池や、酸化チタンに色素を吸着させた色素増感型や、有機半導体など
太陽エネルギーの活用
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の開発も進められている。太陽電池のさらなる普及には、個々の材料の品質向上、電池や据付
費のコスト低減、信頼できるシステムの構築などの検討が必要である。
(4)太陽光発電
太陽光発電はクリーンで、枯渇せず、長持ちするが、エネルギー密度が低く、気象条件に左右さ
れ、まだコストが高いのが問題である。世界の太陽電池の生産量は 2005 年で 1660MW、日本は
50%以上の生産を分担し、日本ではシャープ㈱の生産量が半分を占めている。日本の累計設備容
量は 2005 年に 142 万kW で 2010 年には 482 万kW を目標にしている。1997 年に導入基盤整備
事業として、太陽電池を住宅に設置する費用を補助し、設置容量は増えたが、2005 年で打ち切ら
れ、設置が減少傾向にある。一方でドイツでは設置優遇策を続け、年間設置容量で日本を超えて
いる。家庭用には3kW 能力の電池を設置し、電力会社と連系し、売買し需要変動に対応すること
が多い。
(5)太陽熱利用
太陽光中の赤外線を集光し、
熱に変換して蒸気を発生させ、
発電するのが太陽熱発電であ
る。しかし直達光しか集光出来
ず、曇ると急激に効率が悪くな
太陽熱利用
集熱法の分類
集熱法
線集光形 円筒放物面鏡形 分散方式
追尾形
太陽熱発電
り、散乱光の多い地域では十分
固定鏡形
点集光形 回転放物面鏡形 ディッシュ式
な効率が得られない。日本は世
タワー集光形
界に先駆けて 1981 年、太陽熱
固定形
発電に取組み成果をあげたが、
(非追尾形)
日本では散乱光が多く、直達光
太陽熱
が少く、実用規模の発電には適
温水利用
非集光形 平板形
真空形
集光形
集中方式
ソーラーシステム 、
太陽熱温水器
サイドミラー形
半球形
していない。条件に恵まれてい
るアメリカや欧州では実用化が
進んでいる。集熱した太陽熱を冷暖房のエネルギーに使用するのが、強制循環型のソーラーシス
テム、自然循環型の太陽熱温水器で、平板型や真空管型の集熱器で得た熱を熱媒で吸収し温水
などを得る。石油危機の時期に急激に伸びましたが、現在は期待の割には伸びていない。
(6)今後の展望
新エネルギーとしては太陽エネルギーは期待されているが、安価、高効率、軽量化など、今後
の技術開発課題も多い。しかし、クリーンな無限の資源としての期待も大きい。コストダウンによる
普及で、公共設備で、家庭での発電、温水利用で、今後大いに使用されることが期待される。
太陽エネルギーの活用
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