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国立歴史民俗博物館蔵五山版目録解題
国立歴史民俗博物館蔵五山版目録解題 ( Summary ) An Annotated Bibliography of Gozan-ban Editions in the Collection of the National Museum of Japanese History SUMIYOSHI Tomohiko 〔目録〕 〔解題〕 〔総説〕 【論文要旨】 住吉朋彦 両面に四、六張を列した版木の様式が類推される資料を、いくつか含んでいた。特に とは、新設の機関として極めて異例である。 れた諸伝本には、整った早印の完帙が多く、書物としての五山版の意義をよく発揚し 蔵書家に用いられた点も注意される。そして、当時一流の蔵書家の見識により選択さ これらの五山版が禅院の学問を潤した様子も、その書入や蔵印から明らかな伝本が 多い。また地方の禅院や、禅宗以外の寺院への流布を示す等、五山版の流通を基礎と 来朝刻工関与の版本では、六張一版の様式を確認できる場合があった。 これらの五山版を通覧すると、禅籍を中心として、一般の仏典、漢籍の外典、国書 を数点ずつ収め、五山版全体の構成が再現されているのみでなく、南禅寺、臨川寺、 国立歴史民俗博物館は、開館当初から日本の印刷文化を重視し、中世以前将来の中 国刊本、日本中世の刊本や、朝鮮版など、多くの古版本を蒐集して来た。その中でも、 天龍寺といった、当時の主要な禅院の出版書を含む他、臨川寺版『禅林類聚』や兪良 ている。 中世の印刷文化を体現する諸版本の収蔵は特に篤く、二十餘種もの五山版を擁するこ 甫版『唐柳先生文集』等、禅院の出版事業に関与して南北朝後半の展開を担った、来 【キーワード】五山版、来朝刻工、版木、禅籍、漢籍 する、中近世の学問の広がりを証言する点は貴重であり、その他、近世、近代の学者、 朝刻工の代表的な版本を収めている。さらに外典では、室町期出版の地方的展開にも 本稿は、上記の諸点を書誌学的に整理し、目録解題として記述、当館収蔵の五山版 コレクションの特色を示したものである。 及ぶ所である。 こうした収蔵の副産物として、中世の印刷技術を垣間見ることができる点も意義深 く、伝存の殆どない南北朝の五山版の版木について、一面に二、三張を配し、一版の 31