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葬送の変化と祖先祭祀行事の 自動車社会化
国立歴史民俗博物館研究報告 第 191 集 2015 年 2 月 葬送の変化と祖先祭祀行事の 自動車社会化 沖縄本島中南部の事例 Changes in Funeral Customs and the Increasing Use of Automobiles at Ancestor Worship: A Case Study of the South-Central Part of Okinawa Main Island 武井基晃 TAKEI Motoaki はじめに ❶沖縄の葬送・墓制と自動車社会化 ❷調査地概要 ❸昭和・平成の葬送事例の報告と比較 ❹自動車の利用 ❺自動車での移動をともなう祖先祭祀行事の実例 おわりに 【論文要旨】 本稿では火葬の導入・葬祭業者の関与および自動車社会化の進展という 2 つの変化を通して戦 後の沖縄での高度経済成長とその前後における葬送墓制の変化という課題を考えていく。❶では沖 縄の葬送・墓制と自動車社会化についての概略を記述する。❷では調査対象地とした沖縄本島中南 部の中頭郡中城村(家族墓地域)の集落についてその概要や屋取集落という歴史的背景を説明す る。また『死・葬送・墓制資料集成』での沖縄県の調査対象地域だった南風原町(門中墓地域)の 喜屋武についても概要を述べる。❸では中城村の昭和と平成の葬送の調査票を参照しながら火葬の 導入や葬祭業者の関与による変化を論じる。たとえば葬儀の日程は火葬場の利用スケジュールをお さえられるかに左右される。葬祭業者の関与については最近のある葬式の経費を提示し告別式から 四十九日までの支出の傾向を分析する。また南風原町喜屋武の事例との比較も試みる。 ❹ではまず記事をもとに自動車社会化の進展と葬法の変化も相まって遺体運搬に用いられてきた 龕が廃され自動車(霊柩車)が導入される過程などを追う。また自家用の乗用自動車台数や県下の 免許保有者数などの統計資料を提示し戦後から復帰前の沖縄でどのように自動車社会化が進んだか を明らかにする。そして❺では今日の沖縄で祖先祭祀の行事(清明祭の墓参りやウマチーという宗 家のブツダン参り)が自動車での移動を前提に実際どのように行われているかを筆者が同行した事 例から記述する。そこから自動車での移動のおかげで年配者でも行事に参加し続けられる一方でそ のことが行事の参加者の世代交替を阻んでいる面もあることを指摘する。 【キーワード】火葬の導入,葬祭業者の関与,昭和の事例と平成の事例,祖先祭祀,自動車社会化 315