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経済”を審問する - 東京外国語大学

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経済”を審問する - 東京外国語大学
東京 外国語大学 ・i 日
国際協 力講座 を中心 とす る科研 グル ー プ ( 「
戦争 ・
経済 ・メデ ィアか らみ るグロー バ ル世界秩序 の複合 的研 究」
基盤研究 B 、 代表 : 西 谷修 ) で は、現在 の グ ロー バ ル経済 システムの危機 を根本 的 に考 え直すため、 フランスか ら M A U S S 雑 誌 の
代表 ア ラ ン ・カイ エ 氏 を招聘 して議論 の場 を設定 す ることにな りま した。
アラン・
カイエ氏 (Alain C調
16,1944)は 、
現在パ リ第 10大学 (ナンテール)社会学教授の職 にあり、「
経済 ・
組織 ・
社会」の博士 コー
・
ー
スを指導するとともに、SOPHIPOL(政 治的 社会学/哲 学/人 類学ラボラトリ )の 共lH」
代表を務めていますが、なにより雑誌
MAUSS(Mouvelment Anti―
U dlitanste dans les Sciellccs SOCials社
会科学 における反功利主義運動)の 創始者にして主幹 として
知 られてお ります。
モ ー ス雑 誌 ( L a r e v u e d u M A U S S ) は、 社会科学 と政 治哲学 を字際 的 に横 断 す る研 究誌 と
して 1 9 8 1 年 に創 刊 され、E d i t i o n s L a cD oもu v e r t e から刊 行 され る とともに、 ウ ェ ヴサ イ ト
umauss.com)も
( w w w , r e veLdモ
展 開 し、近 年 は 済 発 な議 論 の た め の ジ ヤ ー ナ ル ・サ イ ト
設 けて い ます。
(wwwJournaldumauss,llet)も
わ た した ちが現在 MAUSSに
あ らためて注 目す るの は、 この知 的運動体 がすで に四 半世紀
以上 にわ た って 、現代 の経 済 主義 的社 会統 治 の原理 的批判 を展 開 し、 オ ル タナテ ィヴ理 論 の
共 同的練威 に向 けてたゆ まぬ活動 を続 けて きたか らです。
2008年 秋 以降の世 界経済 危機 は、 たん にアメ リカ式金融 シス テ ムの披綻 、 あ るいは新 自由
主義 的統 治 イデオ ロ ギ ー の失墜 とい うに とどま らず、 さ らに長 い射程 で 、産 業 シス テム を軸
と した経 済主義 的社会形成 全般 の危機 を露 景 した もの と兄 る こ とが で きます (こ こで 資本 主
義 とい う用語 をあえて避 けるの は、事態 を資本 主義 /社 会主義 あ るいは右派/左 派 といった、
歴史 的負荷 の大 きい硬 直 した期論 的枠組 みの中 に落 とし込 んで しまわ な いた めです )。
現在 の経 済危機 の淵源 とみな され る 70年 代初頭 の ドルの変動相場制 へ の移行 は、 アメ リカに新 自由主義 を台頭 させ 、 これがや
がて英米 で主 導権 を とって以 来 、情報 革 命 と 「
嘘 の 崩壊」 に よる市場 一 元化 を通 して グ ローバ ル化 の イデオ ロ ギ ー とな り、市場原
理主義 を世 界 に広 め ま した。その結 果、政治が後退 す る経済主義 的な世界統治が語 られ も しま したが 、ただ し この統 治 システムは 「テ
ロ との戦争 Jと い う超 国家 的 「
安全」保 障体制 を要請 して い ま した。 そ してわれ われが現在 日の当た りに して い るの は、 この新 た
ー
な戦 争 レジ ム と新 自由主義 的統 治 の二 重 の破 綻 です。付言 す るな ら、経済 と軍事 の カ ップ リン グに よって政 治 をは じき出 そ う と
した この グ ロー バ ル世界統治 システム とは、植 民地 支配 として展 開 され た産 業化 以後 の 西洋主導 の世界化 プ ロセ ス を、 アメ リカ的
「自由」 の イデオ ロギ ー に よって更新 し、永統 化す るための装 置 だ とい う ことで す。
けれ ども、振 り返 ってみれ ばその端境 の ころ、つ ま り 1970年 代初頭 か ら、産業 ・経済主義 的社会組成 に対 す る根本 的な異論や
批判 が現 れ て きて い ま した。 すで に K・ ポ ランニ ー の 市場経済批 判 が あ りま tン
たが、N・ ジ ョー ジ ェス ク=レ ー ゲ ン、I・イ リッチ
らが登場 し、正統 的経済 学 (新古典派)や 経 済主義 的 ヴ ィジ ョンを支 えて いた 「
成長 紳話」が批半じされ るよ うにな ります。 フラン
・
・
スで はアン ドレ ゴル ツや フラ ンソ ワ パ ル タ ンな どが 、多様 な角度 か らの批半導
が展 開 しま した。
その流 れ を受 けて、 たん に新 しい経済学 を構想 す るので はな く、経済学 を軸 とした社会 科学全般 に浸透 す る 「
功利主義」 その も
の を審問 して、人間社会 を考察 す る別 の知 の方法 を入文 , 社 会科学 の横 断的 な共 同作業 に よって糠
成 しよ う とい う目的で創設 され たのが M A U S S で す。 い うまで もな くこの命名 は、西洋近 代の経済
に 「
tjt念
贈 与」 の概念 で異論 を突 きつ けたM , モ ー スの 名 にか け られて い ます。
わ た したちの科研 グル ー プで は、経済や政治 が根本 的 に問 われて い るこの時期 に、すで に必 要 な方
t,le all[re
し
sclellcc
econollllque
向 に向 けてL 7 L l世紀
半 の活動 を展 開 して きた M A U S S 代
表 の ア ラ ン ・カイエ氏 を招 き、 その経験 と成
果 につ いて報 告を受 け る とともに、 日本 の 関係者、関心 を共 有す る方 がた と議論 の機 会 を作 るこ と
にいた しま した。
なお、 この 企画 は東京 日仏会鎌 フランス事務所 の全 面 的 な賛 同 を受 け、講演 お よび ラウ ン ド ・テ ー
ブルの会場 を提供 して い ただ くこ とにな りま した。館長 マル ク ・ア ンベ ー ル氏 と研 究員 イザ ベ ル ・
ジ ロー ドゥー女史 の ご厚意 に感 謝 いた します。
(文責 :西 谷修 )
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要
著
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一
一
一
一
一
作
Th6orie anti―Lltilitariste de llactioniFragnlellts dtune sociologie nも
gもrale,Editions La Dё coliverte,2009.
Don,intも rёt et d6sintё
ressenlelltBourdiell,h/4auss,Piaton et quelques autres,Editions La D6couverte,2005.
Dもヽ
penser it6conoHllqllciC01ltre le ratalisme,Editions La D6collverte,2004.
Critiqtle de la raison tltilitall`
e,Editiolls La DもcoLIVerte,2003
The WVorld of the Giff,NIcgill Qlleen' s University Press, 1999.
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