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カラチャイ湖サイトの例での地下媒体および 河川における放射性核種の
鉱床地質学・記載岩石学・鉱物学・ 地球化学研究所 ロシア科学アカデミー カラチャイ湖サイトの例での地下媒体および 河川における放射性核種の移行 Malkovsky V.I. 東京、2012年2月3~4日 汚染源の特徴 1. 閉塞湖であるカラチャイ湖は、1951年から液体放射性廃棄物(LRW)の貯蔵所とし て使用された。 その湖に放出されたLRWの総量は約3.5×106m3 で、β放射能は9×105Ci程度であった (Drozhko et al., 1995)。 このLRWは、溶質としての大量の非放射性成分を含む水溶液で、その溶質の主要成分は 硝酸イオンである。 2. この地域における表面汚染は、LWRのスチール製貯蔵容器の爆発が原因であり、 貯蔵所におけるLWRの総放射能は、最大 20⋅106 Ci であった。 カラチャイ湖 表面汚染 河川 海 研究の目的 地下媒体での放射性核種移行の主要メカニズムは 地下水による輸送である。 1. 汚染された地下水が流れる岩石領域の決定 2. 汚染された地下水が流れる岩石領域の決定 3. 放射性核種輸送形態の特性評価:イオン、錯化合物、コロイド、微粒子 4. 放射性核種移行予測の初期条件を指定するための放射性汚染に関す るデータの処理と一般化 5. 地下媒体における放射性核種移行のモデル 6. 河川における放射性核種輸送の研究と地球化学バリアの研究. 1.汚染された地下水が流れる岩石領域の特定 放射性核種移行領域の断面図 土壌層 風化殻 基盤岩 探鉱井 13000 12000 y,m 11000 10000 9000 8000 7000 6000 2000 3000 4000 5000 6000 x,m 基盤岩の起伏 14000 z ,m 13000 12000 260 240 y, m 11000 220 200 10000 180 9000 160 140 8000 120 100 7000 80 6000 5000 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 x, m 地表の起伏 14000 z ,m 13000 12000 264 260 y, m 11000 256 252 10000 248 244 9000 240 236 8000 232 228 7000 224 6000 5000 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 x, m 風化殻の厚さ 14000 Δz ,m y, m 13000 12000 160 11000 140 120 10000 100 9000 80 60 8000 40 7000 20 0 6000 5000 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 x, m 2.特定された岩石領域における 地球化学的条件の特性評価 Solodov I.N., Zotov A.V., Khoteev A.D. et al.「ロシア南ウラル地方カラチャイ湖地域の亀裂 のある基岩における天然地中水および汚染地中水の地球化学」//『応用地球化学』 1998. V.13. No 8. P.921-939 Laverov N. P., Velichkin V. I., Malkovsky V. I. et al.「チェリャビンスク州カラチャイ湖付近の 地質媒体における放射性汚染の拡散に関する包括的研究」//『鉱床地質学』 2010. V.52. No 1. P.5-13 地質媒体の保護特性 ξ = V f Vc -遅延係数 オリジナルのコンピュータ援用測定システム (多チャンネル水文地球化学プローブ) 1 4 3 1а 2 1 下げ穴内計器、1a ジャケットで保護されたセンサユニット、2 サーフェスブロック、 3 検層レコーダ、4 コンダクタ・サポートケーブルモーションセンサ 観測井戸と水文地球化学検層点の位置 水文地球化学検層データ ラインA-A、硝酸イオン(1998年) S-O NO3 5.5 5 4.5 4 3.5 3 0,045 g/l 2.5 2 1.5 10 g/l 1 0.5 -lg(NO3) N-W 2006年と1998年の井戸176号における 水文地球化学研究データの比較 Well 176 (30.12.06 GHP-9-48-03 and 1998 GHP-54-95) 4 Т,Co 8 12 0.0 Е, S/m 1.0 2.0 6.0 pH 8.0 10.0 0 Eh, mV 0 10 20 30 40 H, m 50 60 70 80 90 100 110 120 2006 1998 200 400 1 pNa 2 3 0 pNO3 2 4 3.放射性核種輸送形態の特性評価:イオン、 錯化合物、コロイド、微粒子 Malkovsky V.「地下水による放射性核種のコロイド媒介輸送の理論的分析」//「アクチニド ナノ粒子研究」(第9章)(Kalmykov S.N.およびDenecke M.A.編集)ベルリン、ハイデルベ ルク:シュプリンガー・フェアラーク社(2011年) P.195-243 コロイドおよび微粒子画分の抽出 ろ過された 溶液 溶 液 ろ過 孔径 γスペクトル 測定 γスペクトル 測定 オージェ分光法で決定される微粒子の局所表面組成 (地下水サンプリング深度は20m) Element 元 素 Percentage 割 合 1 2 3 4 5 6 Na 2.63 2.67 2.86 O 4.50 11.33 8.22 17.47 14.12 18.23 N 2.59 3.40 4.36 6.06 2.13 2.05 C 88.82 66.74 78.95 72.13 66.56 54.39 Cl 0.82 0.78 S 0.64 0.4 14.40 4.44 4.34 17.19 25.33 Si Ca Fe 1.46 X線光電子分光法による表面組成研究に おける微粒子表面のイオンエッチング X線光電子分光法の結果 深度20mのサンプル フィルタのポア直径0.2μm 元素 結合エネルギー , eV 原子濃度 % 化合物 C1s 284.3 286.7 289.8 30.2 9.0 4.0 C0 [CH(OH)(CH(OH)4CH(OH)] CaCO3 K2p 3/2 292.8 1.4 K2CO3 O1s 529.4 531.2 22.4 9.8 O2– (OH)1– Ca2p 3/2 347.0 2.3 CaCO3 Fe 2p 3/2 711.5 3.3 FeOOH Al2p 75.6 2.5 亜塩素酸塩 Si2p 102.8 4.9 亜塩素酸塩+タルク Mg2p 50.4 7.1 亜塩素酸塩+タルク N1s 399.0 402.0 404.5 408.1 0.2 1.2 0.2 0.8 C6H5CHNC6H5 phenyl benzimine NH4NO3 C5H11ONO (nitrosooxy)pentatene NH4NO3 X線光電子分光法の結果 深度20mのサンプル フィルタの孔直径0.2μm、エッチング100Å 元 素 化合物 eV 原子濃度 % C1s 284.4 286.7 289.4 291.5 9.4 4.5 3.3 2.1 C0 [CH(OH)(CH(OH)4CH(OH)] CaCO3 CH3OC(O)OCH3 ディメチルオキシメタノン K2p 3/2 293.6 0.5 K2CO3 O1s 529.4 27.0 O2– Ca2p 3/2 347.0 1.5 CaCO3 Fe 2p 3/2 711.4 20.2 FeOOH Al2p 75.5 5.6 亜塩素酸塩 Si2p 103.1 10.8 亜塩素酸塩+タルク Mg2p 50.4 7.8 亜塩素酸塩+タルク N1s 399.0 401.9 404.5 408.0 1.5 2.2 1.2 2.5 C6H5CHNC6H5 phenyl benzimine NH4NO3 C5H11ONO (nitrosooxy)pentatene NH4NO3 結合エネルギー, 4.放射性核種移行予測の初期条件を指定するため の放射性汚染に関するデータの処理と一般化 モニタリング井戸における汚染物質濃度測定の初期データは、ロシア科 学アカデミーの地球化学・分析化学研究所(GEOKHI RAS)によって 提示された。 データ処理手順の階層 データの以下のような特徴に注目すること: 地下水サンプリングの入手可能なデータは、様々な深度で様々な瞬間において採取された地下 水中の放射性核種および非放射性溶質の様々な集合の濃度によって表現されている。それは、 連続的瞬間に、同じ井戸において行われた測定であり、様々な放射性核種、様々な深度に関係し ている可能性がある。 瞬間の明確化 放射性核種の選択 放射性核種A V. I. Malkovsky, V. I. Velichkin, Yu. E. GorlinskyおよびE. I. Vladimirova 「ロシ ア研究センター・クルチャトフ研究所の 領域における地下水による放射性核種 移行のモデル」//『鉱床地質学 』2009. V.51. No 4. P.275-289 時間間隔の選択 濃度の深度分布に関する補正 空間分布の決定 濃度の深度分布 (井戸N14/68, x=1828m, y=6879m, 2004年) NO3 238 Pu 1 238 U C / Cmax 0.8 90 Sr 0.6 239 Pu 0.4 0.2 0 60 70 80 90 Sampling depth, m サンプリング深度(m) 100 濃度の深度分布 (井戸N39/70, x=1953m, y=9195.5m, 2004年) 90 Sr NO3 1 0.8 238 C / Cmax U 0.6 0.4 239 Pu 0.2 238 Pu 0 40 60 80 Sampling depth, m サンプリング深度(m) 100 濃度の深度分布 (井戸N43/78, x=3031m, y=6240m, 2000年) 1 241 Am 0.8 244 Cm C / Cmax 239 0.6 Pu NO3 237 Np 0.4 238 U 137 0.2 90 0 20 Cs Sr 30 40 50 Sampling depth, m サンプリング深度(m) 60 137Cs濃度の深度分布 1000 ¹ 2/99 (2000) 100 2/68 (2000) ¹ 63/68 (2006) 10 137 Cs, Bq/l ¹ ¹ 176 (1994) 1 ¹ 43/78 (2000) 0.1 20 40 60 Depth, m 深度(m) 80 100 硝酸イオンの分布 2002年 NO 3 12000 mg/liter 11000 52000 50000 45000 40000 35000 30000 25000 20000 15000 10000 100 0 y, m 10000 9000 8000 7000 6000 2000 3000 4000 x, m 5000 6000 237Npの分布 2002年 237 Np, 12000 Bq/liter 11000 16 14 10000 12 y, m 10 9000 8 6 8000 4 2 7000 0 6000 2000 3000 4000 x, m 5000 6000 239, 240Puの分布 2002年 239, 240 Pu, Bq/liter 12000 11000 7 6 10000 y, m 5 4 9000 3 2 8000 1 7000 0 6000 2000 3000 4000 x, m 5000 6000 238Uの分布 2002年 12000 238 U, 11000 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 10000 y ,m mg/liter 9000 8000 7000 6000 2000 3000 4000 x ,m 5000 6000 溶質分布の統合図 2002年 12000 239 11000 Pu 237 Np _ NO3 y ,m 10000 9000 8000 7000 6000 2000 3000 4000 x, m 5000 6000 5.地下媒体における放射性核種移行の モデル 地下水流のモデル + 地下水による放射性核種輸送のモデル Malkovsky V. I., Pek A.A., Velichkin V.I., Parker F.L.「クラスノヤルスク処分サイトにおける液体 放射性廃棄物(LRW)の深井戸注入からの汚染物質プルーム移動の予測」//『水文科学技術 ジャーナル』 1999. V.15. No 1-4. P.145-171 較正問題の解決 境界条件の明確化 透水係数分布のための初 期近似値の選択 浸透率分布のための初期 近似値の選択 運動量方程式の解 多重反復手順 浸透率および透水係 数分布の補正 不一致 観測井戸で測定された地下水 面高度との比較 十分な一致 較正の終了 6.河川における放射性核種輸送の研究と 地球化学バリアの吟味 放射性核種の長距離河川輸送の研究 バレンツ海 ノバヤゼムリャ カラ海の汚染源と調査サイト カーラ海 汚染源: ・マヤーク、トムスク-7 ・クラスノヤルスク-26 ・海流(セラフィールド) ・核実験 ・放射性降下物 生産合同 「マヤーク」 トムスク-7 クラスノヤルスク-26 サイト: ・1 - テカ川とイセチ川の合流域 ・2 - イセチ川とトボル川の合流域 ・3 - トボル川とエルティシ川の合流域 ・4 - エルティシ川とオビ川の合流域 ・5 - オビ川河口域 ・6 - カラ海の混合水帯 河川合流域における地球化学バリア 底質表層における137Csの分布)(Bk/kg) カラ海 カラ海 エニセイ湾 バイガチ島 サンプリン グステー ションの 位置 G. Ivanov (2002)によ る137Cs ゾー ン まとめ 修復手段の正しい評価は、対応したモデルに基づく汚染拡大の 予測に基づいて行える。 地下水による放射性核種移動の大部分は、コロイドもしくは微 粒子によって行われる。例えばネバダ試験場サイトにおいては、 137Csの移動の95%はコロイドによるものである。その為、地下水 における放射性核種の移動モデルにおいては、コロイドと粒子状 態での輸送を考慮する必要がある。従って、汚染地域においては、 地下水中のコロイド成分の特性を調査する必要がある。有効な手 段としては、限外ろ過によるコロイドの分離と、コロイドの成分と構 造の分析におけるオージェ分光分析とX線光電子分光法である。 まとめ イオンもしくはコロイド粒子状態での放射性核種の易動性は、地 下水の地球化学的特性(特にpH、Eh、塩度)に依存する。これら 地下水特性の手短な分析としては、IGEMで開発された水文地球 化学プローブが適用可能である。 地下水及び河川水と海水の混合は、地下水及び河川水に含ま れる粒子状物質の体積を引き起こす。従って、地下水及び河川 水でのコロイド及び粒子状物質堆積物試料と海水試料の混合は 望ましくない。 これら試料によって、汚染地域から運ばれた放射性核種のコロ イド及び粒子状物質の海岸(地下水排出域)及び河口における体 積状況を予測することが可能である。 ご静聴ありがとうございました! プレゼンテーションの詳細について何か疑問が生じた 場合は、Eメールにて当方にお問い合わせください。: [email protected]