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地下鉄駅構内における時間的音響特性 1 はじめに

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地下鉄駅構内における時間的音響特性 1 はじめに
日本音響学会2008年春季研究発表会
講演番号:1-3-1
2008年3月17日
地下鉄駅構内における時間的音響特性
下倉良太 添田喜治
(独)産業技術総合研究所
人間福祉医工学研究部門 くらし情報工学グループ
1 はじめに
‡ 本研究は、今まで策が講じられてこなかった鉄道駅構内・車
内音環境の改善に取り組み、駅職員・利用者に対する快適
性の向上と公共交通の中核としての鉄道整備に寄与するも
のである。
‡ 最近ではエコを謳う鉄道会社のCMも見られる。ひと1人を1
㎞運ぶのにかかるCO2排出量は、鉄道は自動車の1/9と少
ない。
‡ しかし利用者を誘致するためには宣伝だけでなく、駅構内・
電車内の快適性を向上させる調査・研究・企業努力がより必
要と考える。
1
2 本研究の目的
‡ その中で今回は騒音レベルが80から100dB(1)と高い地下鉄駅構内音環
境評価を行う。
‡ 一般駅と異なり、地下鉄駅は複雑な反射音が内在する閉鎖空間である。
‡ 従来のサウンドレベルメーターでの音環境測定では、どのような音がどこ
から到来するのかといった音源評価・音場評価を行うのに不十分である。
‡ そこで本研究はコンサートホールなどの室内音場測定などに用いられる
ダミーヘッドマイク・三次元マイクを使って電車走行音・駅構内アナウンス
を録音し、地下鉄駅構内音環境を評価した。
‡ 今発表では、地下鉄駅の時間的特徴について示す。
(1)
勝田千利、松井昌幸「地下鉄停車場の騒音低減法の研究」日本建築学会大会学術講演要旨集、p247(1962)
3 地下鉄駅室形状
‡ 単式:ホームの片側のみが線路に接し、乗降に用いられるもの(例 大阪谷町線
南森町駅 神戸西神・山手線 三宮駅)
‡ 相対式:単式ホームを2つ向かい合わせにしたもの (例 大阪千日前線西長堀駅
京都烏丸線烏丸御池駅)
‡ 島式:ホームの両側が線路に接しているもの (例 大阪御堂筋線梅田駅 神戸
海岸線みなと元町駅)
‡ 複合型:上記を組み合わせたもの(例 大阪御堂筋線天王寺駅 神戸西神・山手
線新神戸駅)
単式
相対式
島式
2
4 音響測定
‡ 地下鉄駅のプラットホームタイプの違いを考慮し、3つの駅を
選択。
‡ ホームドアは転落・接触防止のため、ホームと線路を隔てた
仕切り壁で、電車が停車し電車のドアが開くと同時に開く 。
‡ 走行音に着目するため、測定は利用客の少ないデータイム
(午前11時から午後3時)に行った。
路線
路線A
制御(集電)方式
駅(形式)
チョッパ制御(架空線)方式 駅I(島式)
駅II(相対式)
路線B
VVVF制御(架空線)方式
駅III(島式ホーム
ドアつき)
ホームドア
5 受音点位置
駅I(島式)
p2
p1
p4
p3
p6
p5
駅II(相対式)
p3
p4
p5
p6
駅III(島式・ホームドアつき)
p2
p1
p1
p2
p4
p3
p6
p5
ホームドア
3
6 測定機材
‡ ダミーヘッドマイク:左右両鼓膜の位置にマイクを取り付けた擬似頭で、実際にヒト
が聞いている音と同じ状態で録音することができる。
‡ 三次元マイク:同じ中心点を持つ4つのカプセル・アレーで構成され、4つの異なる
指向特性(W:無指向・X:前後方向・Y: 左右方向・Z: 上下方向)データに出力し、音
の到来方向を解析により求めることができる。
ダミーヘッドマイク
PC
ダミーヘッドマイク
アンプ類
三次元マイク
三次元マイク
ケーブル
バッテリー
インバーター
両耳データ(2ch) 3Dデータ(4ch)
7 解析方法
‡ 地下鉄駅構内音環境の時間的特性を抽出するため測定信号の自己相関
解析を行った。
‡ 自己相関解析は信号と時間シフトさせた信号自身との相関をシフト時間ご
とに計算するもので、繰り返しパターンの抽出に有効である。
初期ピーク振幅: ピッチの強さに相当
正規化自己相関関数
φp
∫
(τ ) =
T
−T
s (t ) s(t − τ )dt
∫
T
−T
s 2 (t )dt
s(t): 測定信号
2T: 積分時間 (= 0.5 s)
初期ピーク遅れ時間: ピッチに相当
4
8 等価音圧レベル
駅I(島式)
74
等価音圧レベル [dB]
75
73
等価音圧レベル
駅III(島式・
ホームドアつき)
駅II(相対式)
72
71
70
69
68
67
70
65
60
55
50
45
40
66
p1
p2
p3
p4
p5
p6
62.5
平均
125
250
受音点
500
1k
2k
4k
8k
16k
周波数 [Hz]
受音点ごとの等価音圧レベル
周波数ごとの等価音圧レベル
9 ピッチとピッチの強さ(受音点p3)
到着
停車
出発
80
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
2
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
φ1
φ1
1
0.5
0
出発
80
60
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0
10
20
30
40
50
time [s]
60
70
80
90
4
2
0
100
60
停車
出発
0
10
20
30
40
50
60
70
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0
10
20
30
40
50
60
70
0
10
20
30
40
50
60
70
4
2
0
1
1
0.5
0.5
0
到着
80
6
τ1 [ms]
4
0
停車
6
τ1 [ms]
τ1 [ms]
6
到着
φ1
60
100
LAeq [dB]
100
駅III(島式・
ホームドアつき)
駅II(相対式)
LAeq [dB]
LAeq [dB]
駅I(島式)
0
10
20
30
40
50
60
time [s]
70
80
90
100
0
time [s]
5
10 ピッチとピッチの強さ(全体)
駅II(相対式)
3.5
0.7
3
0.6
2.5
0.5
2
φ1
τ1 [ms]
駅I(島式)
駅III(島式・ホームドアつき)
0.4
1.5
0.3
1
0.2
0.5
0.1
0
0
p1
p2
p3
p4
p5
p6
平均
p1
p2
p3
p4
p5
p6
平均
受音点
受音点
11 まとめ1
‡ 等価音圧レベル(LAeq)について
‡ 電車が駅に入る際、出る際の走行音で大きくなり、駅停車中は構内アナウン
スがない限り一定である。
‡ 駅II(相対式)は駅I(島式)に比べてLAeqが低い。(容積の影響・線路配置)
‡ 駅III(島式ホームドアつき)では他の駅と比べてLAeqが低い。(ホームドアの
遮音性)
‡ ピッチ(τ1)について
‡ 駅I(島式)は1 – 2 ms(500 – 1 kHz)で安定している
‡ 駅II(相対式)は1 – 4 ms(250 – 1 kHz)で大きく変化している。
‡ 駅III (島式ホームドアつき)は1.25 ms (800 Hz)で安定している。
‡ ピッチ(φ1)の強さについて
‡ 駅II(相対式)は他の駅に比べてピッチが弱い(長い残響の影響)。
‡ 駅III(島式ホームドアつき)では他の駅に比べてピッチが強い(短い残響の影
響)
6
12 まとめ2
‡音環境の優れた地下鉄駅
‡相対式ホームのように室容積が大きく、アナウン
スの明瞭性を損なわないように残響を除去する
吸音処理がなされている駅
‡電車走行音を遮音し、アナウンスの明瞭性を向
上させるホームドアが設置されている駅
7
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