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2006 年 8 月

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2006 年 8 月
「月刊 国際税務」2006 年 8 月号収録
Worldwide Tax Summary
Worldwide Tax Summary
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース
常任顧問 岡田 至康 監修
外国企業のリース取引にかかる所得に対する営業税免除規定の廃止(中国)
中国国家税務総局( SAT )は、外国企業が、中国にある動産のリースにより生じる利子および賃貸所
得に課税される営業税(business tax)を免税扱いとする通達 35(1997 年発効)を廃止する通達 62
(Circular 62)を発表した。
通達 35 の概要: 営業税規則では、中国において金融サービスおよび賃貸サービスを含むサービスの
供与は、5%の税率で営業税が課税される。しかしながら、1997 年1 月1 日付で発効した通達35 により、
外国企業が動産のリースから得る賃貸所得および利子所得については、外国の貸手企業(Foreign
lenders and lessors)が、中国に事務所(office)あるいは事業を行う一定の場所(place of business)を有し
ない場合は、その所得は免税対象とされている。
通達 62 の影響: 免税規定が廃止され、営業税 5%が課税されることで通達 35 の恩恵を受けていた企業
に追加の税務コストが発生することになる。外国貸手企業の利子および賃貸所得対して 10%の源泉税に
加え 5%の営業税が課せられることになる。所得の源泉国で徴収された源泉税については、おそらく引き
続き自国において外国税額控除を求めることができるが、営業税は、控除可能な所得税とみなされない
ため、そのまま税負担の増加につながる可能性がある。
なお、現時点では、通達 62 に基づく営業税の源泉徴収開始時期は明確に示されていない。
Source:PwC China Newsaert
外国領地であるラブアン諸島を源泉税規則の適用対象に指定(韓国)
韓国財政経済部(MOFE)は、外国企業が韓国政府が指定する外国領地に所在している場合、韓国を源
泉とする配当、利子、使用料およびキャピタルゲインなどの所得について、当該外国法人が租税条約の
締結国の居住法人であっても、租税条約による軽減税率ではなく、韓国の源泉税率を適用するという新
源泉税規則を 2006 年 7 月 1 日付で発効させた。政府は、この関連で、新源泉税規則を適用する初の外
国領地としてマレーシアのタックスヘイブンであるラブアンを指定した。
その結果、ラブアンに居住する外国投資家に支払う利子、配当、使用料は、支払時点において韓国の源
泉税率である 27.5%が適用されることになる。また、株式売却にかかるキャピタルゲインについては、キ
ャピタルゲインの 25%あるいは株式売却額の 10%のいずれか少ない額が所得税として源泉される。ただ
し、外国投資家が、韓国源泉とする所得や譲渡益の受益者(beneficial owner)として租税条約の適用を
受ける資格があると証明できる場合は、還付(ないし租税条約の恩典適用の事前承認)を税務当局に申
請できる。すなわち申請が承認された場合は、ラブアン居住の外国投資家は、利子は 15%、配当および
使用料は 10∼15%の源泉税が適用され、株式譲渡益については課税対象外となる。
また、事前申請を行っていない、あるいは事前承認のための文書化要件を満たしていない場合でも、ラ
ブアンに所在する当該外国会社が、当該所得の事実上の受益者であり、租税条約の軽減税率の恩典を
受けることができると当局に証明できる場合は、租税条約の適用を受けた場合との差額分について 3 年
以内に支払ったものにつき還付請求をすることができる。国税長官は、必要書類をそろえて申請書を提
出後 3 ヶ月以内に承認決定を行うことになっている。なお、政府機関、上場企業、株式の 50%以上が当該
外国企業と同じ国に居住する個人株主によって保有されている等の場合には、事前承認がそのまま認
められる。
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「月刊 国際税務」2006 年 8 月号収録
Worldwide Tax Summary
過去に本欄でも紹介のとおり、韓国におけるタックスヘイブン経由の直接投資の 74%をラブアン経由の
投資が占め、その金額は 89 億米ドルにのぼっている(2004 年統計)。ラブアン対策は、韓国政府のトリ
ーティーショッピング対策の優先課題となっており、最近行われた韓国およびマレーシアの租税条約改
定交渉では、ラブアンを同租税条約の適用除外とすることが検討されていた。
Source:PwC Korea Samil Commentary
不動産持分の譲渡を含む組織変更の税務上の取り扱いの変更案(米国)
内国歳入庁は、米国不動産持分(USRPI)の譲渡を含む組織変更の税務上の取り扱いを変更すると
発表した(Notice 2006-46)。新財務省規則によりUSRPIを有する外国法人が、外国法に基づいて
行う合併等(statutory merger or consolidation)に伴う譲渡益の非課税扱いの範囲が広がる。新財
務省規則は、遡及的に適用され、合併等の場合は2006年1月23日から、その他の取引については
2006年5月23日から適用される。ただし納税者はそれ以前に開始している時効の到来していない課
税に適用することも選択できる。
(背景)米国では、外国人による資産の処分から生じた譲渡益は、当該事業(trade or business)に
実質的に関連しない限り課税されない。ただし、USRPIの処分から生じる利益は、米国事業に関連
したものとみなされ課税対象とされる。(この規定は、1980年に改正税法にちなみ一般にFIRPTAと
呼ばれる。)
この規定の一部として財務省とIRSは1988年に財務省規則を発遣して非課税の組織再編の規定と
USRPIに関する規定の相互関係を明らかにした。この財務省規則では、USRPIの譲渡時の含み益
に対する米国当局の課税権限が維持され一定条件を満足するUSRPIは非課税として扱うとしてい
る。1988年の財務省規則は非常に詳細かつ複雑である。
2006年1月に発遣された財務省規則により、非課税の合併の範疇が拡大され、外国の法律に基づく
合併等も非課税の合併に含まれることとなった。これにより以前は米国内法に基づく合併のみが非
課税取引の対象であったが、外国法による合併等にも非課税扱いが認められた。
今回発表されたNotice2006-46によりFIRPTAの内容が変更され、米国外での組織変更や外国から
米国内への再編でもUSRPIの移転を非課税で行うことが可能となった。
Source:PwC US Newsalert より抜粋
PE の所得帰属問題に関する作業の遅延(OECD)
OECD の租税委員会は、PE(Permanent Establishment−恒久的施設)にかかる所得の帰属問題の作業
のレビューを終了した。その結果、プロジェクト完了時期を、2007 年1月を目処としていたが、実現可能
ではなくなったと発表した。今後、作業部会による見直し、および運用面での勧告に向けた検討がまだ
必要となっている。委員会は、今年四半期において、既に発表された PE の所得の帰属問題に関する検
討草案 Part I (一般的考察)、Part II(銀行業)、Part III(金融商品のグローバルトレーディング)について作
業部会報告書を発表する予定であり、その後、Part IV (保険業)についても改訂版の検討草案を発表す
ることを予定している。
Source:OECD
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「月刊 国際税務」2006 年 8 月号収録
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EU 合併指令と組織再編法改正草案(ドイツ)
2005 年 12 月 15 日に、EU 内の国をまたぐ合併指令が可決された。この指令は、加盟国間の国内法の違
いにより合併にかかるリスクと費用を増大させている現状を鑑み、EU 域内で統一した法的基盤を創出し
ようとするものであり、有限会社も対象となる。各加盟国は同指令に準拠した国内法を 2007 年 12 月 15
日までに成立させることが義務付けられている。
EU 合併指令の重要項目として下記が含まれている。
・ 合併の定義―合併会社の株式・持分を対価とする吸収合併ならびに新設合併、さらに 100%子会社
を被合併会社として 100%親会社を合併会社とするアップストリーム・マージャーが対象となる。
・ 国内法で合併可能とされる法人格同士の合併のみが認められる。
・ 商号、所在地、株式交換の比率、金銭等で行う対価の支払額、雇用関係に与える影響、存続会社の
定款、存続会社における従業員の経営参加権を定める手続き、存続会社が引き継ぐ資産と負債の
評価額、存続会社の決算基準日などを期した合併計画を作成し、公開する。
・ 合併の法的経済的側面の分析と理由、出資者、債権者および従業員への影響を記載した報告書を
作成し、合併決議を出資者、従業員代表者へ提示する。
・ 合併会社・被合併会社の全ての出資者が合意した場合を除き、独立監査人による報告書を作成し、
合併計画の監査を受ける。
・ 各加盟国で手続きが国内法に準拠しているかを確認する裁判所、公証人等の審査機関を任命し、
手続きが適法に行われたことを証明する証明書を発行する。
・ 合併が有効になる時点は、存続会社の所在する加盟国の国内法による。
・ 従業員の経営参加権は、欧州株式会社(SE)の規定が踏襲され、複数の加盟国で程度の異なる経
営参加権が認められている場合には、最も従業員に有利な経営参加権が保障される。
なお、ドイツ連邦法務省は、上記 EU 合併指令の発効に加え、2005 年 12 月に欧州司法裁判所が、ドイツ
の組織再編法が、ドイツの法人間の組織変更に限定しているため EU 法に抵触しているとの判決を下し
たことから、組織再編法の改正草案を作成し、意見を求める手続に入っている。この草案によれば、EU
加盟国の国境を越えた合併にも大部分において国内での合併と同様の規定が盛り込まれている。また
合併に関する EU 指令の会社法部分の規程内容が国内法に反映されており、また実務家からの組織再
編に関する要望を考慮した草案となっている。
Source:PwC ドイツ日本企業部ニュース Progress より抜粋
休眠会社等のコストは年間 12 億ポンド(英国)
プライスウォーターハウスクーパースによると、英国内の設立法人あるいは子会社約 160 万社の内、グ
ループ内で実務的な役割を果たしていないものが約 5 分の 1 あると見積もられ、それにより英国法人
(UK plc)が負担するコストは、毎年 12 億ポンド(約 2500 億円)以上に上るという。企業は、余剰会社や不
必要な子会社を消滅させること、つまり企業ストラクチャーの簡素化が当該法人に有益であるかどうか
検討すべきであり、そのメリットとして、グループ経営の透明性を高めることによる企業統治の徹底、不
要なコンプライアンスコストの削減、資本の株主への返還、再編による資産の存続会社への譲渡等が挙
げられる。
今や、複雑な企業のストラクチャーは、企業の負担となり、透明性や企業統治への事実上の障害になっ
ていると考えられている。明快で健全な財務諸表が強く求められることから、子会社の株式持合いや複
雑なネットワークに関連したリスクに焦点が当てられるようになり、したがって株主も、法人ストラクチャ
ーを見直し、明確な事業目的を持たない休眠会社の処分を通じて、簡素で透明度の高いストラクチャー
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「月刊 国際税務」2006 年 8 月号収録
Worldwide Tax Summary
を求めるようになっている。
Source:PwC UK Newsletter Essentials
本ニュースは、各国の税制改正の動向をお知らせする目的で、各国のプライスウォーターハウスク
ーパースが作成する速報ニュースや各国省庁等のホームページ掲載の情報等を抜粋してお伝えし
ています。制改正案の段階の情報が多いため、最終的な法制度につきましては、専門家にご確認く
ださるようお願いいたします。
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