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「目指せ全員得点!タッチ・バスケットボール」

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「目指せ全員得点!タッチ・バスケットボール」
札幌市立北九条小学校会場【公開Ⅰ】
日 時 平成 28 年 10 月 14 日(金)
児 童 札幌市立北九条小学校 5 年 2 組 36 名
授業者 村上 雅之
Ⅰ.単元 ボール運動
ゴール型
「目指せ全員得点!タッチ・バスケットボール」
Ⅱ.単元について
本学級の子どもたちは、体育の学習に対して意
欲は高い。しかし地域柄、放課後に体を動かす場
所が限られていることから、運動経験が少ない子
が多い。
バスケットボールは、パスやドリブル、シュー
トなどを駆使し、集団的な技能や戦術などを競い
合うところに楽しさを味わうことのできる運動
である。しかし、一般的なルールを子どもたちに
提示するだけでは、ゴール型の面白さを十分に味
わうことができるのは「運動経験の多い児童」
「技
能の高い児童」の一部だけになりやすい。
本単元では、単元の最初に「ドリブルなしの3
対2のメインゲーム」、単元の終盤に「ドリブル
ありの3対2のメインゲーム」で構成した。ねら
いをゴール型で身に付けさせたい「ボールを持た
ない時の動き」に焦点化し、多くの成功体験をも
とに、少しずつ攻撃側が難しくなる中でも、どの
子も身に付けた動きを行うことができることを
ねらっている。
また、「チーム全員でシュートを決める」とい
う目標を、子どもの願いから共有するとともに、
「得点×シュートを決めた人数」をチームの合計
得点とした。こうすることで、互いの動きを意識
し、声を掛け合いながら、チーム全員でシュート
を決める目標に向かうことができると考える。
さらに守備側のルールとして、相手にタッチを
することで、攻撃側のドリブルを止めることがで
きるようにした。ドリブルを止める守備の動きを
簡易化することで、どの子も安心して守備の動き
ができるようにしている。
Ⅲ.単元の目標
・ パスやシュートなどのボール操作をしたり、
ボールを受けるためにスペースに動いたりし
てゲームができるようにする。
【技能】
・ 運動に進んで取り組み、ルールを守り助け合
って運動をしたり、場や用具の安全に気を配
ったりすることができるようにする。
【態度】
・ 自分のチームの特徴に応じた作戦を立てるこ
とができるようにする。
【思考・判断】
Ⅳ.研究との関わり
視点1 子どもの自信につながる教師のかかわりと評価
本時は「ドリブルが止まった時に、ボールを持た
ない人はどう動けばいいのか。」を追求していく。
ゲームを行う児童には、様々な気付きが生まれる。
その気付きを学習カードから把握することで本時
の課題としていく。さらに、
「ドリブルが止まった
時」「ボールを持たない人」と焦点化することで、
目指す動きを明確にしていく。
運動しながら追求していく場面では、教師は児
童の良い動きを見付け称賛するだけではなく、良
い動きにつながる動きに対しても価値付けする。
また、動きの獲得が難しい児童に対しては、教師
も一緒に動くことで良いタイミングや動く大きさ
を子どもがつかめるような手だてをとっていく。
視点2 誰もが楽しい教材化
子どもたちは「シュートをたくさん決めたい。」
という願いをもっている。そしてそれがバスケッ
トボールの面白さである。
単元を通して、バスケットボールの面白さをど
の子も味わうことができるように、基礎的な技能
を身に付けるドリルゲームを設定した。
また、子どもの「シュートをたくさん決めたい」
という思いを実現しやすくするために、
「シュート
ゾーン」を設定した。ボールを保持してシュート
ゾーンに入ると、ディフェンスに邪魔されずにシ
ュートを打つことができる。これによりどの子も
時間的・空間的に余裕をもつことができ、願いが
実現すると考える。
視点3 個々の課題解決の場を明確にした学習過程
単元の最初でパスの有用性を、そして単元の中
盤ではドリブルの有用性を子どもが実感できる学
習過程の展開としている。第5時にはディフェン
スが2人になり、ドリブルが止められやすくなる
ことに子どもは課題意識をもち、本時の全体交流
の場面で解決するための動きを共有できるようし
ている。チームと個の課題を明確にする場を設定
して個の課題をチームで伝え合うことで、目指す
動きを明確にして「ゴールに向かう動き」と「ボ
ールを持っている人に近付く動き」を、獲得でき
るようにしている。そして、タスクゲームの時間
を十分に保障し、繰り返し行うことで、個の課題
を解決する糸口を見付けることができ、メインゲ
ームでの動きの中で課題解決を図れるようにする。
Ⅴ.本時の展開(6/7)
1 目標
ボールを持たない時に、空いているスペースに移動する動きを使いながらゲームをすることができるよ
うにする。
【技能】
2 展開
学 習 内 容
評価規準と指導の手だて等
<前時まで>
ドリルゲームや3対1のゲームで必要な技能や動き方を身に付けてきた。ドリブルをして得点するこ
とができていたが、前時に行った3対2のゲームでは、ドリブルをしてもディフェンスに守られ、シ
ュートチャンスが少なくなってきたことに問題意識をもち始めている。
○準備活動
【安全に関する配慮事項】
・挨拶、準備運動
○けがを防ぐために、適した服装
○ドリルゲーム(シュートゲーム、パスゲーム)
や用具の扱いについて十分に指
○全体交流
導する。
ドリブルして止められたから、
守りが2人だとドリブルが
シュートチャンスが減ってきたよ。
すぐに止められるよ。
○学習課題の把握
技能
シュートエリアに向
かってダッシュをし
よう。パスがもらえた
らシュート。
シュートエリアで
もらえなかったら、
ボールをもらいに
動こう。
ボールを持たない時に、空い
ているスペースに移動する動
きを使いながらゲームをする
ことができる。
〈評価方法〉
ゲームの中で、ドリブルが止
まった時に、空いているスペー
スに移動する動きができてい
るかを見取る。
(行動観察)
○個々の課題を明確にする場
ゴーの動きを意識
するよ。
素早く動いてパス
をもらうよ。
すぐにフォローす
るよ。
ボールマンが止ま
ったらダッシュ!
素早く動かないと
追いつかれる。
ボールマンに近付
いてフォロー!
もう一度動きを確
認しよう。
大きく動かないとパ
スを止められるね。
もっとゴールに近付
いた方がいいね。
「フォロー」でボー
ルマンの近くへ。
フリーでシュート
がうてたよ。
○タスクゲーム
○メインゲーム
ドリブルが止まっ
た!「ゴー」だ!
○整理活動
・振り返り、整理運動、後片付け、挨拶
【手だて】
○ 毎 時 間 のド リ ル ゲー ムを 通 し
て、パスやシュートの技能を高
めていく。
○前時までに3対1のゲームを行
うことで、ボールを持っている
時の動きとボールを持たない時
の動きを身に付けていく。
○全体交流では、ボールマンかど
うかの立場を明確にすること
で、動きを焦点化していく。
○ 全 体 交 流で 共 有 化し た動 き を
「ゴー」
「フォロー」と言葉で表
すことで、チームの仲間への声
かけを行いやすくする。
○タスクタイムやメインゲームで
は、スペースに向かって動いて
いる子の動きを価値付けてい
く。
Ⅵ.単元計画
1 評価規準
運動への態度
運動についての思考・判断
運動の技能
単
元
の
評
価
規
準
・運動に進んで取り組み、ルー ・自分のチームの特徴に応じた ・パスやシュートなどのボール
学
習
活
動
に
即
し
た
評
価
規
準
① 運動に適した服装や用具
ルを守り助け合って運動を
作戦を考えることができる。
操作をしたり、ボールを受け
したり、場や用具の安全に気
るためにスペースに動いた
を配ったりしようとしてい
りしてゲームができる。
る。
① ゲームの作戦やドリル
① ボールを持っている時に、
の正しい扱い方を意識し、
ゲームの進め方をチーム
シュート、パス、ドリブル
安全に気を配っている。
の特徴に合わせて選んで
を選んで攻めている。
② ゲーム前後の挨拶や握手、
友達への温かい声かけを
いる。
② ボールを持っている時の
している。
③ ルールを守り、公平な態度
で参加している。
② ボールを持たない時に、
ゴールに向かう動きや、
動きを考え、よい動きを選
ボールを持っている人に
んでいる。
近付く動きをしている。
③ ボールを持たない時の動
④ 友達と仲良く助け合って
ゲームに参加し、勝敗を受
きを考え、よい動きを選ん
でいる。
け入れている。
2
領域、及び、単元の全体構造
〈宝取り鬼〉
○鬼がいない場所を見
付けて、かわす動きを
することができる。
低
学
年
〈ボール遊び〉
○キャッチボールや的当て遊
びを通して、いろいろな
ボールを投げたり、捕った
りすることができる。
中
学
年
〈ポートボール、ラインサッカー〉
○基本的なボール操作やボールを持たないときの動きによって易しいゲームをすることができる。
○ボールを持たないときにパスをもらうために動いたりすることができる。
〈ボール投げゲーム、ボール蹴りゲーム〉
○ゲームの中でボールが飛んだり、転がっ
たりしてくるコースに入ることができ
る。
5年生
〈タッチ・バスケットボール〉
○簡易化されたゲームで、基本的なボール操作をするとともに、空いているスペースを見付けて攻めたり、
空いているスペースに動いてパスを受けたりすることができる。
高
学
年
ドリブルなしのゲームで守りを振り切
る動きや、空いているスペースを見付け
て攻める動きを身に付けていく。
ドリブルありのゲームで、味方の動きによっ
て、空いているスペースを見付けて攻めたり、
パスを受けたりすることを身に付けていく。
6年生
〈バスケットボール〉
○より一般的なルールに近付けたゲームの中で、基本的なボール操作をするとともに、空いているスペー
スを見付けて攻めたり、空いているスペースに動いてパスを受けたりすることができる。
3
指導と評価の計画
単元構成(7時間扱い)
1
次
ねらい:学習目標を立て、ドリブルなしの3対2のルールやドリルゲームについて理解する。
2
次
ボ
ー
ル
を
持
っ
て
い
る
時
の
動
き
を
高
め
る
3
次
ボ
ー
ル
を
持
っ
て
い
な
い
時
の
動
き
を
高
め
る
態度
判断
技能
評価
時
学
習
の
き
ま
り
や
行
い
方
を
知
る
ねらいと学習内容
思考
次
①②
1
3
行動観察
③④
たくさんシュート
を決めたいな。
2
方法
シュートエリアは
邪魔されないよ。
パ スが つ な がら
ないよ。
空いている味方
フ リー の 時 は声
にパスだ。
を出そう。
スペースに動いて
パスをもらおう。
①
①
行動観察
②
行動観察
学習カード
ねらい:チーム全員がシュートを決めるために、ボールを持っている時の動きを身に付ける。
4
②
ボールを持った
ら、まずシュート
をねらおう。
行動観察
学習カード
ディフェンスがいな
かったら、ドリブルで
ゴールに向かおう。
5
①
行動観察
ねらい:チーム全員がシュートを決めるために、ボールを持っていない時の動きを身に付ける。
6
③
行動観察
本
学習カード
時
シュートエリアに
向かってダッシュ
をしよう。
7
シュートエリアでも
らえなかったら、ボー
ルをもらいに動こう。
①②
③④
注)学習活動に即した評価規準は、前項の「1 単元の評価規準」に示している。
②
行動観察
学習カード
ゴール型「タッチ・バスケットボール」について
~ドリブルなしの3対2のルール~
シュートゾーン
○3対2のハーフコートゲーム。
○攻守を分離し、
4分間で攻守交替。
○技能が低い子でも安心してシュートできるように、シュー
デ
デ
トゾーンを2か所設定する。シュートゾーンに入ったとき
に、ディフェンスはシュートを邪魔することはできない。
○ゲームの停滞を防ぐため、シュートゾーンには、3秒以上
オ
オ
いてはいけないこととする。
オ
スタートゾーン
○チームの全員が得点を目指せるように、1ゴール2点。2
点×決めた人数=合計点数とする。
○3歩でトラベリング
○オフェンスが時間的、空間的に余裕をもてるように、ディフェンスは、オフェンスが保持しているボールを取
れない。
○ディフェンスはパスカットをすることができる。
○「得点が決まる」「リバウンドをディフェンスにとられる」
「パスカットをされる」
「トラベリングをしてしま
う」
「サイド&エンドラインクロス」のときは、スタートからやり直し。
○ディフェンスが、最後にボールに触ってサイドライン&エンドラインクロスした場合、出た場所からスローイ
ンでゲームを再開する。
○オフェンスは、
「いくぞー!」
「おー!」のかけ声で、攻撃をスタートする。
【このゲームで獲得させたいこと】
ゴール型において、運動の苦手な子どもが感じることの一つに、
「どこに動けばいいのか分からない。」と
いうものがある。そこで、まずは「ドリブルなし」というルールの簡易化を行う。ゲームの中の「ドリブル」
という要素を取り除くことで、子どもたちの思考を「パスをもらうために動かなければ」と目的を焦点化さ
せることができると考えた。全体交流を通して、空いているスペースや相手に応じて動くことを意識し、繰
り返し運動することで、
「ボールを持たない時の動き」を獲得していく。
この後の「ドリブルありの3対2」につなげるために、
「ボールを持っていない時は、パスをもらうために
動く」ことを確実に獲得させていきたい。
~ドリブルありの3対2のルール~
シュートゾーン
○基本的なルールは、ドリブルなしの3対2のゲームを同じ
である。
○オフェンスは、
「ドリブル」をすることができる。
デ
デ
○一度の保持につき、2度のドリブルで、ダブルドリブル。
○ディフェンスは、相手の体に触る「タッチ」によって、
そのドリブルを止めることができる。その際に、必ず
オ
オ
「タッチ!」と大きな声を出して周りに知らせる。
オ
スタートゾーン
○オフェンスは、タッチをされたらその場に止まる。
○ディフェンスは、タッチした相手から離れずに、そのままディフェンスを行う。
○ディフェンスは、相手がドリブルをしている時のみタッチを可能とし、ドリブルをしていない状態でタッチを
されたオフェンスは、その後もドリブルをすることができる。
○ディフェンスはパスカットすることができるが、ドリブルをカットすることはできない。
【このゲームで獲得させたいこと】
○ドリブルについて
ドリブルなしの3対2のゲームでは、空いているスペースや相手の状況に応じて、パスをもらうことをね
らっている。しかし、
「シュートをうって決める」ことを目的にしているが、ディフェンスの位置関係に意識
が向いてしまい、子どもの思考は「とにかく動いてパスをもらう」ことに終始してしまうと考えている。
そこで、
「ドリブルあり」のルールを取り入れることで、オフェンス側は、ゴールに向かっての移動が可能
になる。ディフェンスは、これまでボールを持っている人に対する守りの必要性がなかったが、これにより
その必要性が生まれてくる。オフェンスにとって、ドリブルによって攻めの選択肢が増えるとともに、
「意図
的に」スペースをつくり出すこともねらえるようになる。本時では、空いているスペースに向かう動きや、
意図的につくり出したスペースに向かう動きを獲得させたい。そして単元の終末では、こうした「意図的に
スペースをつくり出す作戦」を各チームが考えられるようにしていく。
○タッチについて
「技能の高い子どもだけがドリブルをしてボールを保持する状況からの脱却」「オフェンスとディフェン
スのパワーバランスの考慮」の2つをねらいとしている。
一度「タッチ」をされると、オフェンスは止まらなければいけないため、ドリブル技能の高い子どもだけ
がボールを保持するという状況を回避することができる。また、
「タッチ」というディフェンスの動作は、オ
フェンスがゴールへ進むのを防ぐことを易しくできる。
この2つのねらい含んだルールにより、上記の獲得させたいことを実現することができると考えている。
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