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環境調和型潤滑油の実用化 に向けた添加剤の検討

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環境調和型潤滑油の実用化 に向けた添加剤の検討
平 成 14年 度 修 士 論 文
環境調和型潤滑油の実用化
に向けた添加剤の検討
Investigating of Additive Technology for Environmentally
Friendly Fluids Toward Practical Application
平 成 15年 3月
高知工科大学
工学研究科
基盤工学専攻
物 質 ・環 境 システム 工 学 コー ス
1055026
三村
和令
目次
Abstract
・・・2
1.
はじめに
・・・4
2.
植物油の化学構造と性質
3.
4.
2.1
植物油について
・・・6
2.2
植物油の主成分
・・・7
2.3
植物油の安定性
・・・9
2.4
植物油の性能向上の取り組み
・ ・ ・ 11
実験方法
3.1
基油と添加剤
・ ・ ・ 13
3.2
摩耗試験
・ ・ ・ 14
3.3
過酸化物価
3.4
酸化実験
・ ・ ・ 16
3.5
XPS 分 析
・ ・ ・ 17
(POV)・ 全 酸 価
(TAN)
実験結果
4.1
酸化防止剤無添加での酸化実験の結果
・ ・ ・ 18
4.2
酸化防止剤を添加した酸化実験の結果
・ ・ ・ 20
4.3
酸化防止剤と耐摩耗添加剤を併用した
・ ・ ・ 29
酸化実験の結果
5.
・ ・ ・ 15
・ ・ ・ 32
まとめ
・ ・ ・ 33
参考文献
参考資料
Asiatrib Abstract
・ ・ ・ 35
ト ラ イ ボ ロ ジ ス ト (投 稿 中 )
・ ・ ・ 37
-1-
Abstract
Ve g e t a b l e o i l s h a v e b e e n u s e d a s l u b r i c a t i n g f l u i d f r o m a n c i e n t
Egypt,
BC
1880.
R e c e n t l y,
they
are
recognized
as
ecologically
acceptable lubricating fluids. Therefore they are expected to apply
machines
where
exposure
dialkyldithiophosphates
of
lubricating
(ZDTP)
improve
oil
is
a
problem.
antiwear
Zinc
properties
of
vegetable oils. The additive performance depends on quality of the
base oil. Careful analyses of base oils revealed that peroxide affects
the additive response, whereas peroxides themselves do not promote
w e a r . Ve g e t a b l e o i l s h a v e u n s a t u r a t e d c a r b o n - c a r b o n b o n d s , w h i c h
are ready to undergo autoxidation.
In
this
work,
we
investigated
influence
of
degradation
products on performance of anti-wear additives. Our attention was
also paid to improve antiwear effect of additives by combination of
antioxidants.
Oxidation
test
of
vegetable
oil
was
performed
by
tracing peroxide value (POV) to understand the mechanism. Antiwear
properties of oxidized oil were evaluated by means of four-ball wear
test, which is regulated by ASTM D 4172. Peroxide value (POV) of the
oxidized sample was obtained by the iodometric titration.
We
found
that
POV
increases
rapidly
at
the
beginning
of
reaction. It reaches the maximum value of approximately 1500ppm
within 50 hours. Then it decreases to reach an equilibrium value of
400-500ppm within 200 hours. Decrease of POV can be explained by
the
conversion
equilibrium
of
stage,
peroxides
rate
of
into
peroxide
organic
oxides.
generation,
Then
and
the
at
the
rate
of
peroxide consumption are almost equal. Antioxidants were examined
to prevent the peroxide generation. Phenolic antioxidants and Zinc
dibutyldithiocarbamate (ZDTC) exhibit good results in preventing
peroxide generation, whereas aromatic amines and vitamin E gave
poor
results.
Almost
no
effect
on
-2-
antiwear
was
observed
with
antioxidant-free sample a n d V E-containing sample. PNA-containing
sample showed a little effect, however it is not an acceptable level.
Excellent wear reduction was observed with the oxidized sample in
the presence of phenolic antioxidants and ZDTC. The synergistic
effects of antioxidants with antiwear additives can be confirmed by
formulate better lubricants based on vegetable oils.
Keywords:
Ve g e t a b l e
oils,
Anti-wear
Auto-oxidation, Peroxides,
-3-
additives,
Antioxidants,
1.
は じめ に
人類は摩擦に関する問題を解決するために様々な工夫を行ってきた.
その 1 つの解決方法として潤滑油の使用が挙げられる.潤滑油は摩擦
によるエネルギーのロスや材料の消耗を防ぐために必要であり潤滑特
性 の 向 上 は 環 境 保 護 に 直 結 す る . 人 類 が 潤 滑 油 を 使 用 し た 歴 史 は
Fig.1 に 示 す , 古 代 エ ジ プ ト の 壁 画 か ら 伺 う こ と が 出 来 る
1).
壁画に
は石像を積載しているそりの下に潤滑油を供給している様子が描かれ
ている.この頃から重量物を効率よく運搬ために潤滑油を使用されて
い た こ と が 理 解 で き る . 紀 元 前 1400 年 頃 に な る と 荷 車 の 軸 受 部 分 に
植物油などの天然から得られる潤滑剤を使用されるようになった
1).
1 9 世 紀 以 降 は 石 油 化 学 工 業 の 発 展 に よ り ,現 在 で は 比 較 的 低 コ ス ト で
入手できる鉱油系潤滑油が多用されるようになった.近年では環境保
護の重要性が認識され,環境調和型潤滑油基油の有望株として植物油
が注目を集めている
2,3).
植物油はいくつかの潤滑油基油としてのふ
さわしい特徴を備えている.しかしながら,実用化には,耐摩耗性や
酸化安定性が不十分であり,添加剤技術による性能の向上が不可欠で
あ る . す で に 我 々 は ZDTP が 植 物 油 に 対 し て よ い 耐 摩 耗 性 を 示 す こ と
を確認した.植物油は不飽和結合を含んでおり自動酸化反応を受けて
過酸化物を生じる.そして,過酸化物がこの耐摩耗性を阻害すること
も見出した
4).
そ こ で , 過 酸 化 物 価 (POV)の 経 時 変 化 を 追 跡 し て 酸 化
実験を行い,酸化防止剤と耐摩耗添加剤の併用効果を検討した.
-4-
Fig.1 The first recorded tribologist
-5-
(2400B.C.Egypt)
2 . 植 物 油 の 化 学 構 造 と性 質
2.1
植 物 油 産 業 について
植物油の製造は,主として大豆,ナタネ,ゴマなどの油糧種子と呼
ばれる原料を、圧搾・抽出の過程を経て油と粕とに分離する工程であ
る 。我 が 国 の 植 物 油 の 総 供 給 量 は 年 間 約 2 , 4 0 0 , 0 0 0 t ( 2 0 0 1 年 ) で あ り ,
そ の う ち 国 内 生 産 が 約 1,800,000t で 海 外 か ら の 輸 入 は 約 600,000t
である
5).
また利用法としては
9 割が食用として利用されている.
Fig.2 に 示 す よ う に , 国 内 生 産 で は , ナ タ ネ 油 が 最 も 多 く 次 に 大 豆 油
で,この 2 種類で全体の 3 分の 2 を占めている。輸入される油では,
パーム油・パーム核油・やし油が多い.
1,000,000
Import
Domestic product
Supply,t
800,000
600,000
400,000
200,000
0
Other
Olive oil
Palm oil
Coconut oil
Sunflower oil
Corn oil
Sesame oil
Safflower oil
Rapeseed oil
Soybean oil
Fig.2 Supply of vegetable oil in 2001
-6-
2.2
植 物 油 の主 成 分
植 物 油 の 主 成 分 は 脂 肪 酸 ト リ グ リ セ リ ド で あ り 基 本 構 造 を Fig.3 に
示す.R は飽和または不飽和の炭化水素基で,この部分の構造が植物
油の物性に反映する.植物油を加水分解するとグリセリンとカルボン
酸が得られる.実際には,天然で得られる植物油は種々のカルボン酸
混 合 物 で 構 成 さ れ て い る . 天 然 の 植 物 油 は , Fig.4 の よ う な 形 で 異 な
るカルボン酸組成のエステル分子が存在したものである.すなわち,
天然の植物油は様々な種類のエステルが混合した化合物である.その
ため植物油の性質を述べる際には,加水分解した後に得られるカルボ
ン 酸 の 種 類 が 重 要 で あ る . 天 然 植 物 油 は カ ル ボ ン 酸 の 炭 素 数 が 4∼ 30
の間で構成されている.その中で潤滑油として期待されている植物油
の 炭 素 数 は 16 ま た は 18 が 大 部 分 で あ る . さ ら に , 分 子 内 の 不 飽 和 結
合の有無で飽和脂肪酸か不飽和脂肪酸に分類される.植物油を構成す
る 代 表 的 な カ ル ボ ン 酸 を Table 1 に 示 す . 表 中 の 「 Cn: m」 は 炭 素 数
n 個に対して不飽和結合が m 個あることを示している.
O
O
R
O
O
O
R
O
R
Fig.3 Structure of Triglyceride
-7-
O
O
O
O
O
O
Fig.4 Example of natural vegetable oils
Table 1 Representative fatty acid of vegetable oils
Name
Rational formula
Saturated fatty acid
octadecanoic acid
stearic acid
Unsaturated fatty acid
octadecenoic acid
oleic acid
octadecadienoic acid
linoleic acid
octadecatrienoic acid
linolenic acid
O 1
16
hexadecanoic acid
palmitic acid
C16:0
OH
O
18
C18:0
OH
9
18
O
1
OH
12
18
9
O 1
OH
18
15
12
9
C18:2
O 1
OH
-8-
C18:1
C18:3
2.3
植 物 油 の安 定 性
植物油は,不飽和脂肪酸の含有率が多いため潤滑油にとって最も重
要な物性の1つである流動性に優れている.しかしながら,不飽和脂
肪酸の存在は安定性にとっては不都合である.不飽和結合の存在によ
り酸化安定性が低下するのは,不飽和結合によって隣の炭素−水素結
合 が 活 性 化 さ れ る た め で あ る . Fig.5 に 示 す よ う に こ の 結 合 が 切 断 す
ることによってラジカル中間体が生じ,自動酸化反応を引き起こす.
ま た , も う 一 つ の 原 因 と し て Fig.5 に 示 す よ う に , 生 成 し た ラ ジ カ ル
は空気中の酸素と結合してパーオキサイドラジカルとなり,他の脂肪
酸の分子中より,不飽和結合のとなりにある炭素の部分から水素を引
き抜いて付加し,ハイドロパーオキサイドとなる
6).
ま た Fig.6 に 示
す , β − 水 素 脱 離 反 応 や Fig.7 に 示 す 加 水 分 解 も 植 物 油 の 安 定 性 を 考
えるうえで考慮する必要がある.これらは,グリセリン構造による分
解反応なので油脂を用いる限り根本的解決方法はない.
O
O
O
O
R
O
O
O
R
R
O
O
O
H
O
R
O
R
R
O
O
O
O
R
O
O
O
O
R
O
O
R
O
O
O
R
R
O
O
OH
O
O
Fig.5 Autoxidation
-9-
O
O
O
R
R
O
R
R
O
O
R
H
O
O
O
O
O
+
R
O
O
R
O
HO
R
O
R
R
Fig.6 ß- hydrogen elimination
O
O
OH
R
O
O
O
O
R
O
O
O
R
R
Fig.7 Hydrolysis
- 10 -
R
O
O
+
HO
R
2.4
植 物 油 の 性 能 向 上 の 取 り組 み
Fig.8 に 示 す と お り , 無 添 加 の 植 物 油 で は 4 種 類 と も 品 種 に よ る 差
は 見 ら れ ず ,DW は 0.3mm で あ っ た .ま た ,無 添 加 状 態 の 鉱 油 と 比 較
し て , 無 添 加 の 植 物 油 は 良 い 耐 摩 耗 性 を 示 し た . 各 植 物 油 に
ZDTP5mmol/kg 添 加 し た 結 果 を Fig.9 に 示 す . い ず れ の 試 料 に 対 し て
も耐摩耗性の向上が見られた.その中でもヒマワリ油が最も良い添加
剤 効 果 を 示 し た .こ の 結 果 を 油 中 に 含 ま れ る P O V の 違 い に よ る も の と
考 察 し た . 自 動 酸 化 反 応 に よ り 生 成 し た 過 酸 化 物 が ZDTP を 分 解 し て
耐摩耗効果の低いジスルフィドになることが知られている
7).
Fig.10
に示すとおり,実際にヒマワリ油中に含まれる過酸化物価を変化させ
た 試 料 と ZDTP の 添 加 剤 効 果 の 低 減 を 比 較 す る と 良 い 相 関 関 係 が 見 ら
れ た .無 添 加 の ヒ マ ワ リ 油 で は POV の 値 が 100∼ 900ppm の 間 で は 耐
摩 耗 性 が 変 化 し な か っ た の に 対 し て , ZDTP 5mmol/kg 添 加 の 試 料 で
は POV の 値 が 上 昇 す る こ と に よ り DW が 増 大 し た . こ の こ と よ り ,
0.6
0.4
0.2
Mineral
oil+Additive
Mineral oil
Sunflower
oil
Corn oil
Rapeseed
oil
0.0
Soybean oil
Delta wear,mm
過 酸 化 物 の 生 成 は ZDTP の 耐 摩 耗 性 を 低 減 す る こ と が わ か っ た .
Fig.8 Result of four ball test with vegetable oil and mineral oil
- 11 -
without AW
ZDTP, 5mmol/kg
Delta wear,mm
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
Soybean Rapeseed
Delta waer,mm
Fig.9 Results of four-ball test
Cone
with vegetable oil + ZDTP
without AW
0.4
Sunflower
ZDTP(5mmol/kg)
0.3
0.2
0.1
0
0
200
400
600
POV,ppm
800
Fig.10 Effect of POV on antiwear properties of ZDTP
- 12 -
1000
3. 実 験 方 法
3.1
基 油 と添 加 剤
本 稿 で 基 油 と し て 用 い た ナ タ ネ 油 の 物 性 を Table 2 に 示 す . 酸 化 防
止 剤 と し て 用 い た ,α - ト コ フ ェ ロ ー ル ( ビ タ ミ ン E ,V E ) ,2 , 6 - ジ - t e r t ブ チ ル -4-メ チ ル フ ェ ノ ー ル (DBPC), 4-4'-メ チ レ ン ビ ス (2,6-ジ -tertブ チ ル フ ェ ノ ー ル )(MBDBC), フ ェ ニ ル ナ フ チ ル ア ミ ン (PNA), ジ -nブ チ ル ジ チ オ カ ル バ ミ ン 酸 亜 鉛 (ZDTC)は す べ て 市 販 の 試 薬 で あ る .
ZDTP は 文 献 法 に 準 拠 し て 合 成 し た
8).こ
れらの添加剤の構造式と略号
を F i g . 11 に 示 す .
HO
HO
O
VE
DBPC
OH
N
HO
MBDBC
N
S
S
S
Zn
PNA
N
O
S
O
O
S
S
O
P
Zn P
S
S
ZDTC
ZDTP
Fig.11 Structure and abbreviations of additives
- 13 -
Table2 Propeties of Rapeseed Oil
Total acid number, mg KOH/g
Iodine value, g iodine per 100g sample
Peroxide value, ppm
Contents of erucic acid, %
Viscosity at 40 centigrade, mm2/s
Viscosity at 100 centigrade, mm2/s
Viscosity Idex, -
3.2
0.04
105.3
1.2
48.1
35.4
6.8
155
摩耗試験
試 料 の 耐 摩 耗 性 は 四 球 式 摩 耗 試 験 機 (ASTM D 4172)を 用 い て 評 価 し
た .そ の 実 験 条 件 を Table 3 に 示 す .試 験 片 を Fig.12 で 示 す よ う に 四
個の同一系の鋼球をピラミッド型に積み上げ,下の三個の鋼球を固定
し 上 の 一 個 の 鋼 球 を 回 転 さ せ る . 実 験 後 , 摩 耗 痕 径 (WSD)を 光 学 顕 微
鏡 を 用 い て 測 定 し た .実 験 は 2 回 以 上 行 い ,W S D の 差 が 0 . 0 6 m m 以 内
である結果の平均値を報告した.また試験片は,実験前にヘキサンと
ア セ ト ン で 1 0 分 間 ず つ 超 音 波 洗 浄 を 行 い ,1 回 の 実 験 ご と に 新 品 に 取
り 替 え た . 試 験 片 保 持 具 は 実 験 前 後 に ヘ キ サ ン , 2-プ ロ パ ノ ー ル , ア
セ ト ン の 順 に 1 0 分 ず つ 超 音 波 洗 浄 を 行 っ た .こ こ で は W S D と ヘ ル ツ
直 径 (0.299mm)の 差 で あ る
報告する
Delta wear(DW)を 用 い て 試 験 結 果 と し て
9).
Rotation
Road
Fig.12 Detail of four ball wear test
- 14 -
Table 3 Conditions for the Four Ball Test
Test ball
Operation parameters
Applied load, N
(Hertz contact stress, GPa)
(Hertz deformation indentation, mm)
Rotation, rpm
Sliding velocity, m/s
Oil temperature, ℃
Test duration, minute
Material
Diameter, mm
Hardness, HRc
Surface roughness Ra, µm
3.3
392
3.0
0.299
1.2E+03
0.80
75
60
SUJ2 (JIS)
12.7
62
4.0×10-2
過 酸 化 物 価 ( P O V ) ・全 酸 価 ( T A N )
試料の過酸化物に含まれる活性酸素の重量濃度を自動滴定装置(メ
ト ロ ノ ー ム 社 製 716DMS) を 用 い て ヨ ウ 素 還 元 滴 定 法 で 測 定 し た . 実
験 条 件 を Table 4 に 示 す . 滴 定 溶 媒 を 試 料 容 器 に 30ml 計 量 し , 試 料
油 と ヨ ウ 化 カ リ ウ ム KI 水 溶 液 2g を 加 え て 滴 定 装 置 に セ ッ ト し た . 1
分 間 静 置 し た 後 , 撹 拌 子 を 回 転 さ せ て 撹 拌 し な が ら , 滴 定 試 薬
0.01mol/l チ オ 硫 酸 ナ ト リ ウ ム 標 準 液 を 加 え た . 滴 定 は 試 料 毎 に ブ ラ
ンク測定を行い,2 回測定をした平均値を報告する.試料の全酸価
(TAN)は POV と 同 じ 滴 定 装 置 を 用 い て 測 定 し た .
Table4 Conditions for the POV measurement
Electrode
Combined massive Pt electrode
0.01mol/l Na2S2O3
Titrant
Measuring point density
Minimum increment , µl
Size of volume increment , ml/min
Signal drift , mV/min
Equilibration time , s
Temperature , ℃
EPC(Equivalence point criterion)
- 15 -
acetic acid/2-propanol 1:1
KI 150g/100ml solution
0
30 (blank 50)
max(60ml/min)
10
38 (blank 52)
25
5
3.4
酸化実験
Fig.13 に 示 し た 装 置 を 組 み 立 て , セ パ ラ ブ ル フ ラ ス コ に 200g の 試
料 を 入 れ て 油 温 を
100 ℃ ± 2 ℃ に 保 ち , 乾 燥 し た 混 合 空 気 を 流 量
200ml/min で 流 入 さ せ て 自 動 酸 化 反 応 を 行 っ た . 24 時 間 毎 に 7g ず つ
試 料 を 採 油 し POV を 測 定 し た .
Air
Fig.13 Detail of o x i d a t i o n t e s t
- 16 -
3.5
XPS 分 析
分 析 試 料 は 本 研 究 室 で 開 発 を 行 っ た 改 良 型 PV 式 摩 耗 試 験 機 で 摩 耗
試験を行い作製した
10).
そ の 試 験 条 件 を Table
5 に示す.この試験
機の特徴として,試験片の組み合わせを比較的に加工が容易な円柱と
直 方 体 を 用 い た . Fig.14 の よ う に 試 験 片 を 組 み 合 わ せ 試 験 を 行 っ た .
また,試験片はそのまま表面分析が行えるサイズに設計した.試験後
に 摩 耗 面 の 元 素 定 量 を X 線 光 電 子 分 光 分 析 法 (XPS 分 析 )を 使 用 し 分 析
を 行 っ た . 分 析 条 件 を Table
6 に示す.
Road
Rotation
Fig.14 Detail of P-V block test
Operation
parameters
Table 5 Conditions for the P-V Block Test
Applied load, N
(Hertz contact stress, GPa)
Rotation, rpm
Sliding velocity, m/s
Oil temperature, ℃
Test duration, minute
192
0.51
290
0.96
room temperature
20
Table 6 Conditions for the X-ray Photoelectron Spectroscopy
Monochromated-Al-karay
300W
φ0.4 ellipse (Silt: 3)
Test area, mm
2×0.8 (Silt: 5)
Photoelectron of detection angle
45°
Test depth, nm
4
X-ray source
- 17 -
4. 酸 化 実 験 の結 果
4.1 酸 化 防 止 剤 無 添 加
以前の研究より植物油の実用化を進める上で酸化安定性の向上は重
要であることがわかる.また植物油のように酸化安定性の低いもので
は,酸化の初期状態から観察する必要がある.そこで植物油を 3 章 4
項 で 示 し た 実 験 条 件 で 自 動 酸 化 さ せ て P O V の 経 時 変 化 を 観 察 し た .酸
化 防 止 剤 無 添 加 の 試 料 の 結 果 を Fig.15 に 示 す . POV は 反 応 開 始 と 同
時 に 急 激 に 上 昇 し ,約 50 時 間 で 1500ppm 付 近 ま で 増 加 し 極 大 に 達 し
た あ と は ゆ っ く り と 減 少 し 400∼ 500ppm 付 近 で 平 衡 状 態 と な っ た .
POV が 減 少 す る 理 由 は , 過 酸 化 物 が ア ル デ ヒ ド , ケ ト ン , カ ル ボ ン 酸
のなどの有機酸化物に変化したためと考えられる
7).
その後,酸化物
の 生 成 と P O V の 消 費 の 割 合 が 等 し く な り 平 衡 状 態 に 達 し た .平 衡 状 態
Peroxide value, ppm
に 達 し た 200 時 間 後 か ら 酸 化 試 料 の 全 酸 価 (TAN)が 上 昇 し た .
2000
RUN1
1500
RUN2
RUN3
1000
500
0
0
50 100 150 200 250 300 350 400
Reaction time, hour
Fig.15 POV trace during the oxidation test with additive-free
rapeseed oil
- 18 -
Fig.16 に 示 し た と お り , 本 試 験 条 件 で 酸 化 試 験 を 行 っ た 酸 化 試 料 に
ZDTP 5mmol/kg を 添 加 し た 結 果 は DW が 0.37mm で あ り , 無 添 加 新
油 の DW0.3mm と 比 較 し て 耐 摩 耗 性 が な い と 判 断 さ れ る .
Delta wear,mm
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
Fresh oil
Oxid. 240h +ZDTP
Fig.16 Results of four-ball test
- 19 -
with Oxid.240h+ZDTP
4 . 2 酸 化 防 止 剤 を添 加 した植 物 油 の 酸 化 実 験
そ こ で , 耐 摩 耗 性 と 酸 化 防 止 性 能 の 2 つ の 機 能 を 備 え て い る ZDTP
を 5mmol/kg 添 加 し た 植 物 油 の 酸 化 実 験 を 行 っ た .そ の 結 果 を Fig.17
に 示 す .Z D T P は 過 酸 化 物 の 生 成 を 抑 制 し 良 い 酸 化 防 止 性 能 を 示 し た .
し か し 2 4 0 時 間 反 応 後 の 酸 化 試 料 の D W は 0 . 1 8 m m で あ っ た .す で に
報 告 し た 最 適 条 件 で は DW は 0.1mm で あ る か ら , 満 足 の い く 結 果 で
Peroxide value, ppm
はなかった.
2000
RUN 1
1500
RUN 2
1000
500
0
0
50
100
150
Reaction time, hour
200
Fig. 17 POV trace during the oxidation test with ZDTP
- 20 -
250
上 述 と 同 様 の 条 件 で 試 料 に F i g . 11 に 挙 げ た 酸 化 防 止 剤 を 1 w t % 添 加
し 評 価 し た 結 果 を Fig.18 に 示 す . VE 添 加 の 試 料 で は ま っ た く 酸 化 防
止 剤 の 効 果 を 示 さ な か っ た .PNA 添 加 の 試 料 は ,無 添 加 の 試 料 よ り も
POV の 上 昇 が 若 干 緩 和 さ れ た . DBPC, MBDBC 添 加 の 試 料 の POV は
緩 や か に 上 昇 し , 240 時 間 以 内 で は 極 大 を 示 さ な か っ た . 両 者 は 同 じ
フ ェ ノ ー ル 系 の 酸 化 防 止 剤 で あ る が , DBPC は 昇 華 性 が あ る た め
F i g . 1 9 に 示 す と お り 実 験 結 果 の 再 現 性 は 余 り よ く な か っ た .そ れ に 対
し て M B D B C は F i g . 2 0 で 示 す と お り の 良 い 再 現 性 が 見 ら れ ,D B P C よ
り 効 果 的 と 判 断 さ れ る .ZDTC は ,240 時 間 反 応 さ せ て も POV の 上 昇
は 見 ら れ ず 最 も 良 い 酸 化 防 止 性 能 を 示 し た .こ れ ら の 240 時 間 反 応 後
の 酸 化 試 料 の TAN を 測 定 し た 結 果 を Table
7 に 示 す .P O V が 一 度 極
大 値 を 示 し た PNA と VE で は 7∼ 12mgKOH/g と 高 い 値 を 示 し た の に
対 し , 極 大 値 を 示 さ な か っ た
DBPC , MBDBC , ZDTC で は
0.1 ∼
Peroxide value, ppm
0.7mgKOH/g で 低 い 値 を 示 し た .
2000
VE
1500
PNA
DBPC
MBDBC
ZDTC
1000
500
0
0
50
100
150
Reaction time, hour
200
250
Fig.18 POV trace during the oxidation test with various
antioxidants
- 21 -
Peroxide value, ppm
2000
RUN 1
1500
RUN 2
1000
500
0
0
50
100
150
Reaction time, hour
200
250
Peroxide value, ppm
Fig.19 POV trace during the oxidation test with DBPC
2000
RUN 1
1500
RUN2
1000
500
0
0
50
100
150
Reaction time, hour
200
Fig.20 POV trace during the oxidation test with MBDBC
- 22 -
250
Table 7 POV amd TAN after oxidation test for 240 hour
Sample
POV, ppm
without antioxidants
VE
PNA
DBPC
MBDBC
ZDTC
470
220
393
367
363
0
TAN, mg KOH/g
0 hour
240 hour
9.35
0.04
12.8
0.04
7.25
0.05
0.16
0.05
0.58
0.04
0.69
0.05
酸 化 実 験 240 時 間 反 応 後 の 試 料 に ZDTP を 5mmol/kg 添 加 し て 耐 摩
耗 性 を 評 価 し た 結 果 を F i g . 2 1 に 示 す .酸 化 防 止 剤 無 添 加 と V E と P N A
の酸化試料では耐摩耗添加剤の効果が見られなかった.これに対して
POV の 値 が 極 大 値 に 達 し な か っ た DBPC, MBDBC, ZDTC の 酸 化 試
料 で の DW が 約 0.1mm で 良 い 耐 摩 耗 性 を 示 し て お り , 過 去 の デ ー タ
と 比 較 し て も 良 い 結 果 で あ る . 最 も 良 い 耐 摩 耗 性 を 示 し た ZDTC の 摩
耗 痕 の 写 真 を F i g . 2 2 に 示 す .Z D T C は 酸 化 防 止 性 と 耐 摩 耗 性 の 性 能 を
備えていることが知られており,初期状態でも若干の耐摩耗性を示し
た
11).
ま た ,240 時 間 の 酸 化 実 験 後 の 酸 化 試 料 で 耐 摩 耗 性 の 向 上 が 見
ら れ た .酸 化 試 料 ZDTC と 酸 化 試 料 ZDTC に ZDTP を 5mmol/kg 添 加
し た 試 料 の 摩 耗 試 験 後 の 表 面 を XPS 分 析 し た 結 果 を Fig.23∼ Fig.26
と T a b l e 8 に 示 す .ま た ,X P S 分 析 を 行 っ た 摩 耗 面 を F i g . 2 7 と F i g . 2 8
に 示 す .酸 化 試 料 ZDTC に ZDTP を 添 加 し た 試 料 で 摩 耗 面 に リ ン 酸 鉄
が 確 認 で き た . こ の こ と よ り ZDTP の リ ン が 耐 摩 耗 性 に 寄 与 し て い る
ことが理解できる
12∼ 15).Table
7 と Fig.21 を 比 較 す る と POV だ け
で は Z D T P の 耐 摩 耗 性 は 左 右 さ れ な い こ と が 理 解 で き る .F i g . 2 1 で 耐
摩 耗 性 の 悪 か っ た 酸 化 防 止 剤 無 添 加 , VE, PNA の 3 つ の 酸 化 試 料 で
は TAN が 高 い 値 を 示 し た . そ れ に 対 し , 耐 摩 耗 性 の 良 か っ た DBPC,
MBDBC, ZDTC の 酸 化 試 料 で は TAN は 低 い 値 を 示 し た . こ の 結 果 は
F i g . 1 8 で 示 し た 酸 化 実 験 で は ,P O V が 極 大 に 達 し た か 否 か で 区 別 で き
る . 有 機 酸 化 物 は ZDTP の 分 解 を 促 進 す る こ と が 知 ら れ て い る
- 23 -
7).
Delta wear, mm
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
ZDTC
MBDC
DBPC
PNA
VE
without
AO
Fig.21 Combination effect of antioxidants and ZDTP on
antiwear properties
ZDTC
Oxid. 0h
DW = 0.237 mm
(WSD = 0.536 mm)
ZDTC
Oxid. 240h
DW = 0.136 mm
(WSD = 0.445 mm)
ZDTC Oxid.
240h+ZDTP
DW = 0.085 mm
(WSD = 0.384 mm)
Fig.22 Morphology of worn surface (AO:ZDTC)
- 24 -
Table8 Results of XPS with oxid.240h ZDTC
Sample
oxid.ZDTC
oxid.ZDTC
+ZDTP
Test area
wear surface
(Silt: 3)
out of wear
surface (Silt: 5)
wear surface
(Silt: 3)
out of wear
surface (Silt: 5)
Unit
N (1s) S (2p) P (2p) Zn (2p3)
Atomic% 1.04
0.62
0.78
0.27
Atomic% 1.06
0.54
N.D.
0.40
Atomic%
N.D.
0.75
3.00
0.52
Atomic% 0.51
0.71
3.00
0.68
Fig.23 Result of XPS with Oxid.ZDTC+ZDTP (wear surface)
- 25 -
Fig.24 Result of XPS with Oxid.ZDTC+ZDTP (out of wear surface)
Fig.25 Result of XPS with Oxid.ZDTC (wear surface)
- 26 -
Fig.26 Result of XPS with Oxid.ZDTC (out of wear surface)
- 27 -
Oxid.240 ZDTP+ZDTC (200μm)
Oxid.240 ZDTP+ZDTC (50μm)
Fig.27 Morphology of worn surface Oxid. ZDTP+ZDTC
Oxid.240 ZDTC (200μm)
Oxid.240 ZDTC (50μm)
Fig.28 Morphology of worn surface Oxid. ZDTC
- 28 -
4.3
酸 化 防 止 剤 と耐 摩 耗 添 加 剤 を併 用 した植 物 油 の 酸 化 実 験
Z D T C + Z D T P ,D B P C + Z D T P ,M B D B C + Z D T P の 3 つ の 試 料 を 上 記 の
酸 化 実 験 で 評 価 し た 結 果 を F i g . 2 9 に 示 す .2 4 0 時 間 酸 化 試 験 後 の P O V
と TAN の 値 を 示 し た Table
9 より,すべての試料が過酸化物の生成
を抑制し,良い酸化防止性能を示した.
Table 9 POV amd TAN after oxidation test for 240 hour
Peroxide value, ppm
Sample
ZDTP
DBPC+ZDTP
MBDBC+ZDTP
ZDTC+ZDTP
POV, ppm
0
0
17
38
TAN, mg KOH/g
0.15
0.08
0.09
0.46
2000
ZDTC+ZDTP
DBPC+ZDTP
MBDBC+ZDTP
1500
1000
500
0
0
50
100
150
200
250
Reaction Time, hour
Fig.29 POV trace during the oxidation test with antioxidants
and ZDTP
- 29 -
240 時 間 反 応 後 の 酸 化 試 料 の 耐 摩 耗 性 を 評 価 し た 結 果 を Fig.30 に 示 す .
併 用 の 時 で は フ ェ ノ ー ル 系 酸 化 防 止 剤 と ZDTP を 添 加 し た 酸 化 試 料 の
方 が 良 い 結 果 を 示 し た . ZDTC+ZDTP の 併 用 で は 良 い 結 果 が 見 ら れ な
か っ た .そ の 理 由 は F i g . 3 1 に 示 し た Z D T P ,Z D T C + Z D T P ,Z D T C の 3
つ酸化試料の摩耗痕の写真を注意深く比較すると理解できる.酸化試
料 ZDTC+ZDTP と 酸 化 試 料 ZDTP を 比 較 す る と 同 等 の 耐 摩 耗 性 を 示 し ,
摩 耗 痕 の 形 状 も ほ ぼ 同 様 で あ っ た .酸 化 試 料 Z D T C + Z D T P と 酸 化 試 料
ZDTC を 比 較 す る と 摩 耗 痕 の 形 状 が 異 な っ て お り , ZDTC に 過 酸 化 物
の 影 響 が 見 ら れ な か っ た .こ れ ら の 結 果 よ り ZDTP が ZDTC よ り 先 に
消 耗 し た 為 に ,併 用 効 果 を 示 さ な か っ た と 考 察 し た .Fig.32 に 示 す よ
う に 酸 化 試 料 DBPC+ZDTP と 酸 化 試 料 MBDBC+ZDTP の 摩 耗 痕 は 平 滑
でよい耐摩耗性を示した.フェノール系酸化防止剤は,ラジカル捕捉
剤として知られている.自動酸化反応の機構は過酸化物の生成に先立
ってラジカルから生じると説明されている
7).
すなわちフェノール系
酸化防止剤はラジカルを捕捉して過酸化物の生成を抑制し,その結果
Delta wear, mm
ZDTP の 耐 摩 耗 性 を 持 続 さ せ た と 考 察 し た .
0.3
0.2
0.1
0.0
oxid.MBDBC+ZDTP
240h
oxid.DBPC+ZDTP
240h
oxid.ZDTC+ZDTP
240h
Fig.30 Effect of antioxidants on antiwear properties
- 30 -
ZDTP
Oxid. 240h
DW = 0.178 mm
(WSD = 0.477 mm)
ZDTC+ZDTP
Oxid. 240h
ZDTC
Oxid. 240h
DW = 0.184 mm
(WSD = 0.484 mm)
DW = 0.146 mm
(WSD = 0.445 mm)
Fig.31 Morphology of worn surface (AO+ZDTP)
DBPC+ZDTP
Oxid. 240h
MBDBC+ZDTP
Oxid. 240h
DW = 0.129 mm
(WSD = 0.428 mm)
DW = 0.136 mm
(WSD = 0.435 mm)
Fig.32 Morphology of worn surface (AO+ZDTP)
- 31 -
5 . まとめ
1.
植物油は自動酸化反応を受けやすく,本稿の実験条件では開始直
後 か ら P O V が 急 激 に 上 昇 し 極 大 値 を 示 し た 後 ,平 衡 状 態 に 達 し た .フ
ェ ノ ー ル 系 酸 化 防 止 剤 と ZDTC は 植 物 油 の 過 酸 化 物 の 生 成 を 抑 制 し た .
しかし,芳香族アミンとトコフェロールは酸化防止効果を示さなかっ
た.
2.
酸化防止剤により過酸化物の生成を抑制した酸化試料は良い耐摩
耗 添 加 剤 効 果 を 示 し た . POV が 極 大 を 一 度 示 し た 酸 化 試 料 は TAN の
上 昇 が 見 ら れ ,P O V の 値 が 低 く て も Z D T P は 耐 摩 耗 添 加 剤 効 果 を 示 さ
ない.酸化防止剤と耐摩耗添加剤を組み合わせることにより,耐摩耗
添加剤効果を向上させることが出来た.
3.
フ ェ ノ ー ル 系 酸 化 防 止 剤 と ZDTP を 併 用 す る こ と で 良 い 耐 摩 耗 性
を 示 し た . ZDTC は 単 独 で 酸 化 実 験 を し た 後 に ZDTP を 添 加 す る と 良
い 耐 摩 耗 性 を 示 し た が , ZDTP と 併 用 す る と 耐 摩 耗 性 添 加 剤 効 果 は フ
ェノール系よりも劣った.
以上の結果から植物油を環境調和型潤滑油の基油としての可能性を
見いだすことができた.しかしながら植物油は構造上の問題から鉱油
と比較して安定性が劣る.よって,すべての潤滑油を植物油に代替す
るのではなく,適材適所での活用が望ましい.
謝 辞
研究を通して社会人としての仕事の進め方や自己形成にいたる様々
なことを,心のこもったご指導ご鞭撻して頂いた高知工科大学物質・
環 境 シ ス テ ム 工 学 科 南 一 郎 助 教 授 に 心 か ら 感 謝 の 意 を 表 し ま す .ま た ,
終始にわたり助言やサポートをして頂いた
から感謝の意を表します.
- 32 -
Tribolab の メ ン バ ー に 心
参考文献
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- 34 -
参考資料
Asiatrib: October 21-24.2002
Synergistic effect of antioxidants and anti-wear additives for vegetable oils
Kazunori MIMURA 1, Syota MITSUMUNE 2, and Ichiro MINAMI 3
Kochi University of Technology,
185 Miyanokuchi Kami-gun Tosayamadacyo782-8502 Kochi, JAPAN
Although vegetable oils provide good lubricity, they still need optimization by certain additive technology for
practical applications. ZDTP improve antiwear properties of vegetable oils. However the additive performance
depends on quality of the base oil. Antioxidants were applied to prevent the auto-oxidation of vegetable oils. Good
synergistic effect of anti-wear and anti-oxidant additives was confirmed.
Keywords: Vegetable oils, Antiwear properties, Antioxidants, peroxide value
1. INTRODUCTION
Recently, vegetable oils have been recognized as
ecologically acceptable lubricating fluid. In our previous
work on improvement of vegetable oils as lubricating fluid,
we have found that certain additive technology may offer
practical solutions [1,2]. For example, friction modifiers and
antiwear additives much improve performance of vegetable
oils. However, vegetable oils are unstable when they are
compared to mineral based ones. Peroxides are generated
during the reaction. The intermediates show destructive
effect by decomposing antiwear additives. In this work, our
attention was paid to improve antiwear effect of additives by
inhibition of autoxidation during use.
2. EXPERIMENTAL
The properties of rapeseed oil are listed in Table 1.
Structure and abbreviations of additives are shown in Figure
1. The antiwear properties of vegetable oils were evaluated
by means of the four-ball test, which is regulated by ASTM
D 4172. The delta wear, which is the difference between the
wear scar diameter and the Hertz diameter, is reported [3].
Oxidation test was performed by the following procedure.
500g of rapeseed oil were placed in a round-bottomed flask,
fitted with a gas inlet tube and a condenser. Dry air was
introduced at 200m/min at 100℃. Then 10g of the resultant
oil were picked out at the scheduled sampling time. The
sample was subjected to the POV measurement and the
four-ball test.
Table 1
Properties of rapeseed oil
TAN , mg KOH/g
POV , ppm
0.04
309
Viscosity, mm^2/s
40℃
100℃
35.4
6.8
VI
155
- 35 -
Figure 1
Structure of the additives
3. RESULTS AND DISCUSSION
We previously reported that peroxides react with ZDTP to
give ineffective compounds as antiwear additives in mineral
oil solutions [4]. The same phenomena were observed in
vegetable oil solutions. As shown in Figure 2, additive effect
of ZDTP decreases with increase of POV. It has been
reported that peroxides may cause oxidative wear [5].
However, delta wear obtained by vegetable oil containing
peroxides less than 900 ppm, was approximately 0.3mm.
Therefore, peroxides themselves do not promote wear under
these conditions.
Figure 2
Effect of POV on antiwear with ZDTP
Figure 4
Results of the oxidation test
Figure 5
Effect of ZDTP on antiwear
As Figure 3 shows, POV increases rapidly at the beginning
of the reaction. The POV reaches the maximum value of
approximately 1500 ppm within 50 hours after the reaction
start. Then the value decreases to reach an equilibrium value
of 400-500ppm. Total acid number and viscosity of the
oxidized oil increased during the equilibrium stage.
4. CONCLUSIONS
Figure 3
Results of the oxidation test
Results with antioxidants at 1wt% are shown in the Figure
4. VE exhibited almost no effect in preventing generation of
peroxides. Rate of POV increase with PNA showed little
letted. The maximum value of POV in the presence of PNA
was approximately 1000ppm. Rate of POV increase with
DBPC-containing and MBDBC-containing sample was
much lower. The sample did not reach the maximum value
even after 240 hours reaction. ZDTC-containing gave
excellent results.
Figure 5 shows antiwear effects of ZDTP in the oils after
240 hours oxidation. Almost no effect on antiwear was
observed
with
antioxidant-free,
VE-containing
PNA-containing samples. Excellent wear reduction was
observed with DBPC, MBDBC, and ZDTC samples. Here
we achieved good synergy of antioxidant and antiwear
additives. No relationship between POV and wear
prevention can be find out from Figure 4 and Figure 5. It
seems to be inconsistent with the results presented by Figure
2. However, we understand that the phenomena are due to
difference of the oxidation stage. Figure 4 represents the
results at the initial stage of the oxidation, where contents of
organic oxides are negligible. On the contrary, Figure 5
represents “the equilibrium stage” where organic oxides are
present in the solution. As we have reported previously,
certain organic oxides promote decomposition of ZDTP [4].
- 36 -
1. DBPC, MBDBC and ZDTC inhibit formation of
peroxides, where as PNA and VE gave poor results.
2. At an initial oxidation stage, AW properties of ZDTP
depend on POV. Less content of peroxides are desirable
for good wear reduction.
3. At an equilibrium stage of oxidation, AW
properties of ZDTP depend not only on POV.
4. Combination of AO and AW additives may
provide practical lubricants.
5. ACKNOWLEDGEMENTS
The authors appreciate to NOF Corporation for providing
rapeseed oil.
6. REFERENCES
[1] I.Minami,H.S.Hong, N.C. Mathur,"Lubrication
Performance of Model Organic Compounds in
High Oleic Sunflower oil" Journal of Synthetic
Lubrication, vol.16, No.1, pp.3-12, 1999
[2] I.Minami,S.Mitsumune,"Antiwear Properties of
Phosphorous Containing Compounds in Vegetable Oils"
Tribology Letters, in press
[3] D.E.Weller,Jr.,J.M.Perez,"A Study of the Effect
of Chemical Structure on Friction and wear:
Part I- Synthetic Ester Base Fluids"Lubrication
Engineering, vol. 56, No11, pp. 39-44, 2000
[4] I.Minami,"Influence of Aldehydes in Make-up
Oils on Antioxidation Properties" Lubrication
Science, vol. 7, No4, pp. 319-321, 1996
[5] F.Rounds,"Effects of Hydroperoxides on Wearas Measured in Four-Ball Wear Tests" Trbology
Transactions, vol. 36, No2, pp. 297-303, 1993
論 文
三
植物油に対する耐摩耗添加剤と
酸化防止剤の併用効果
村
和
令
高知工科大学 大学院学生
(〒 782-8502 高 知 県 香 美 郡 土 佐 山 田 町 宮 ノ 口 185 )
南
高知工科大学
工学部
一
郎
物質・環境システム工学科
(同上)
Abstract
Vegetable oils are recognized as ecologically acceptable lubricating fluids. Therefore they are expected to
apply machines where exposureof lubricatingoil is a problem. Zinc dialkyldithiophosphates (ZDTP) improve
antiwear properties of vegetable oils. The additive performance depends on quality of the base oil. Careful
analyses of baseoilsrevealedthat peroxide affects the additiveresponse,whereasperoxidesthemselvesdonot
promote wear. Our attention was also paid to improve antiwear effect of additives by combination of
antioxidants. Oxidationtest of vegetableoilwasperformedbytracingperoxidevalue(POV) tounderstandthe
mechanism. We foundthat POVincreasesrapidlyatthebeginning ofreaction.Itreachesthemaximumvalue
of approximately 1500ppm within 50 hours. Then itdecreases to reach an equilibrium value of 400-500ppm
within 200 hours. Antioxidants wereexamined to preventtheperoxidegeneration. Phenolic antioxidants a n d
Zinc dibutyldithiocarbamate (ZDTC) exhibit good resultsinpreventingperoxidegeneration, whereas aromatic
aminesandvitamin E gave poor results. The synergisticeffectofantioxidantswithantiwearadditivescanbe
confirmedbyformulatebetterlubricantsbasedonvegetableoils.
けて過酸化物を生じる.そして,過酸化物がこ
1.はじめに
の耐摩耗性を阻害することも見出した
4)
.そこ
植物油は古代エジプトの時代から潤滑油とし
で,過酸化物価( POV)の経時変化に注目し酸化
て使用されてきた . 19 世紀以降は石油化学工
実験を行い,酸化防止剤と耐摩耗添加剤の併用
業の発展により,比較的低コストで入手できる
効果を検討した.
1)
鉱油系潤滑油が多用されるようになった.近年
では環境保護の重要性が認識され,環境調和型
2.
実験方法
2.1
基油と添加剤
潤滑油基油の有望株として植物油が注目を集め
ている
2, 3 )
.植物油はいくつかの潤滑油基油と
してのふさわしい特徴を備えている.しかしな
本稿で基油として用いたなたね油の物性を
がら,実用化には,耐摩耗性や酸化安定性が不
十分であり,添加剤技術による性能の向上が不
Table 1 に示す.酸化防止剤として用いた,α トコフェロール(ビタミン E ,VE ), 2,6- ジ -tert-
可欠である.すでに我々は ZDTP が植物油に対
ブ チ ル -4- メ チ ル フ ェ ノ ー ル ( DBPC ), 4-4'- メ チ
してよい耐摩耗性を示すことを確認した.植物
レ ン ビ ス ( 2,6-ジ -tert-ブ チ ル フ ェ ノ ー ル )
油は不飽和結合を含んでおり自動酸化反応を受
( MBDBC) , フ ェ ニ ル ナ フ チ ル ア ミ ン ( PNA ) ,
Synergistic Effect of AntioxidantsandAnti-wear Additives for Vegetable Oils
By Kazunori MIMURA , Graduate Student, Kochi University of Technology (185, Miyanokuchi, Tosayamada-cho, Kami-gun, Kochi
782-8502, E-mail :[email protected]), andIchiroMINAMI, Department ofMaterialsScience and Engineering,Faculty of
Engineering,KochiUniversityofTechnology (ditto)
keywords:vegetableoils,anti-wearadditives,antioxidants,peroxides,oxidaiton test
- 37 -
HO
Table 2 ConditionsfortheFourBallTest
HO
VE
Operation parameters
O
DBP C
OH
N
HO
N
S
S
Zn
S
O
S
O
O
S
S
O
P
Zn P
S
S
ZDTP
ZDTC
3.0
0.299
Rotation, rpm
P NA
N
392
(Hertz contact stress, GPa)
(Hertz deformation indentation, mm)
1.2E+03
Sliding velocity, m/s
0.80
Oil temperature, ℃
75
Test duration, minute
60
Material
Diameter, mm
Test ball
MB DBC
Applied load, N
SUJ2 (JIS)
12.7
Hardness, HRc
62
4.0×10-2
Surface roughness Ra, µm
Table3 Conditions for thePOVmeasurement
Fig.1 Structure and abbreviationoftheadditive
Electrode
Combined massive Pt electrode
Table1 propeties of rapeseed o i l
0.01mol/l Na2 S2 O 3
Titrant
acetic acid/2-propanol 1:1
KI 150g/100ml solution
Total acid number, mg KOH/g
Iodine value, g iodine per 100g sample
0.04
105.3
Peroxide value, ppm
Contents of erucic acid, %
Viscosity at 40 centigrade, mm2/s
1.2
48.1
35.4
Minimum increment , µl
Signal drift , mV/min
10
6.8
155
Equilibration time , s
38 (blank 52)
2
Viscosity at 100 centigrade, mm /s
Viscosity Idex, -
Measuring point density
0
30 (blank 50)
Size of volume increment , ml/min
max(60ml/min)
Temperature , ℃
25
EPC(Equivalence point criterion)
5
ジ -n- ブ チ ル ジ チ オ カ ル バ ミ ン 酸 亜 鉛 ( ZDTC ) は
Table4 Conditions for theP-VBlockTest
すべて市販の試薬である. ZDTP は 文 献 法 に 準
拠して合成した 5) . これらの添加剤の構造式と略
2.2
Operation
parameters
号を Fig.1 に示す.
摩耗試験
試 料 の 耐 摩 耗 性 は 四 球 式 摩 耗 試 験 機 ( ASTM
D 4172 ) を 用 い て 評 価 し た . そ の 実 験 条 件 を
Table 2 に示す.実験後,摩耗痕径( WSD ) を 光
Applied load, N
(Hertz contact stress, GPa)
Rotation, rpm
Sliding velocity, m/s
Oil temperature, ℃
Test duration, minute
192
0.51
290
0.96
room temperature
20
Table5ConditionsfortheX-rayPhotoelectronSpectroscopy
学顕微鏡を用いて測定した.実験は 2 回 以 上 行
い, WSD の 差 が 0.06mm 以内である結果の平均
値を報告した.また試験片は,実験前にヘキサ
ンとアセトンで 10 分間ずつ超音波洗浄を行い ,
X-ray source
Monochromated-Al-karay
300W
Test area, mm
φ 0.4 ellipse (Silt: 3)
2×0.8 (Silt: 5)
Photoelectron of detection angle
1 回の実験ごとに新品に取り替えた.試験片保
Test depth, nm
45°
4
持具は実験前後にヘキサン, 2-プ ロ パ ノ ー ル ,
アセトンの順に 10 分ずつ超音波洗浄を行った .
こ こ で は WSD と ヘ ル ツ 直 径 ( 0.299mm ) の 差 で
件 を Table 3 に 示 す . 滴 定 溶 媒 を 試 料 容 器 に
30ml 計量し,試料油とヨウ化カリウム KI 水溶
ある Delta wear ( DW )を用いて試験結果として報
液 2g を加えて滴定装置にセットした. 1 分間
告する .
静置した後 ,撹拌子を回転させて撹拌しながら,
2.3
滴 定 試 薬 0.01mol/l チ オ 硫 酸 ナ ト リ ウ ム 標 準 液
6)
過酸化物価(POV)・全酸価(TAN)
試料の過酸化物に含まれる活性酸素の重量濃
を加えた .滴定は試料毎にブランク測定を行い,
度を自動滴定装置( メトロノーム社製 716DMS)
2 回測定をした平均値を報告する.同じ滴定装
を用いてヨウ素還元滴定法で測定した.実験条
置を用い,試料の全酸価( TAN)を測定した.
- 38 -
酸化実験
セパラブルフラスコに 200g の 試 料 を 入 れ て
油温を 100 ℃± 2 ℃に保ち,乾燥した混合空気
を 流 量 200ml/min で流入させて自動酸化反応を
行った. 24 時間毎に 7g ずつ試料を採油し POV
を測定した.
2.5
XPS分析
2000
Peroxide value, ppm
2.4
RUN3
500
0
0
7)
PV 式摩耗試験機で摩耗試験を行い作製した .
50 100 150 200 250 300 350 400
Reaction time, hour
Fig.2 POVtrace during theoxidationtest
withadditive-freerapeseedoil
そ の 試 験 条 件 を Table 4 に 示 す . こ の 試 験 機
の特徴として,試験片の組み合わせを比較的に
加工が容易な円柱と直方体を用いた.また,試
0.4
Delta wear,mm
験片はそのまま表面分析が行えるサイズに設計
した.試験後に摩耗面の元素定量を X 線 光 電
子 分 光 分 析 法 ( XPS 分 析 ) を 使 用 し 分 析 を 行 っ
3.
RUN2
1000
分析試料は本研究室で開発を行った改良型
た.分析条件を Table
RUN1
1500
5 に示す.
実験結果
0.3
0.2
0.1
0.0
Fresh oil
すでに報告したとおり無添加の植物油では,
Fig.3
Oxid. 240h +ZDTP
Results offour-ball test withOxid.240h+ZDTP
品種による耐摩耗性の差は見られない.しかし
ながら, ZDTP の添加剤効果は基油の POV の 値
によって差が生じることがわかった 4) . こ れ に
そこで,耐摩耗性と酸化防止性能の 2 つ の 機
ついては,自動酸化反応により生成した過酸化
能を備えている ZDTP を 5mmol/kg 添 加 し た 植
物が ZDTP を分解して耐摩耗性の低いジスルフ
物油の酸化実験を行った.その結果を Fig.4 に
ィドになるためと考えられる .
示す.過酸化物の生成を抑制し良い酸化防止性
8)
そこで植物油を自動酸化させて POV の 経 時
能を示した.しかし 240 時間反応後の酸化試料
変化を観察した.酸化防止剤無添加の試料の結
の DW は 0.18mm であった.すでに報告した最
果を Fig.2 に示す. POV は反応開始と同時に急
適条件では DW は 0.1mm であるから,満足の
激に上昇し,約 50 時 間 で 1500ppm 付 近 ま で 増
いく結果ではなかった 4).
加し極大に達したあとはゆっくりと減少し 400
上述と同様の条件で試料に Fig.1 に 挙 げ た 酸
∼ 500ppm 付近で平衡状態となった. POV が 減
化防止剤を 1wt%添加し評価した結果を Fig.5 に
少する理由は ,過酸化物がアルデヒド ,ケトン ,
示 す . VE 添 加 の 試 料 で は ま っ た く 酸 化 防 止 剤
カルボン酸のなどの有機酸化物に変化したため
の 効 果 を 示 さ な か っ た . PNA 添 加 の 試 料 は ,
8)
と考えられる .その後,酸化物の生成と POV
の消費の割合が等しくなり平衡状態に達した.
無添加の試料よりも POV の 上 昇 が 若 干 緩 和 さ
れた. DBPC, MBDBC 添 加 の 試 料 の POV は緩
平衡状態に達した 200 時間後から酸化試料の全
やかに上昇し, 240 時 間 以 内 で は 極 大 を 示 さ な
酸価( TAN)が上昇した .Fig.3 に示したとおり ,
かった.両者は同じフェノール系の酸化防止剤
本試験条件で酸化試験を行った酸化試料に
で あ る が , DBPC は 昇 華 性 が あ る た め Fig.6 に
5mmol/kg を 添 加 し た 結 果 は DW が
示すとおり実験結果の再現性は余りよくなかっ
0.37mm で あ り , 無 添 加 新 油 の DW0.3mm と 比
た.それに対して MBDBC は Fig.7 で 示 す とお
較して耐摩耗性がないと判断される.
りの良い再現性が見られ, DBPC よ り 効 果 的 と
ZDTP
- 39 -
RUN 1
1500
RUN 2
1000
500
0
0
50
100
150
Reaction time, hour
2000
Peroxide value, ppm
Peroxide value, ppm
2000
200
500
0
250
0
1500
PNA
DBPC
MBDBC
ZDTC
1000
500
0
0
50
100
150
Reaction time, hour
200
0
50
100
150
Reaction time, hour
200
250
0.4
Delta wear, mm
240 hour
9.35
12.8
7.25
0.16
0.58
0.69
0.3
0.2
0.1
0.0
ZDTC
MBDBC
DBPC
PNA
0.05
0.05
0.04
0.05
RUN2
500
VE
470
220
393
367
363
0
250
1000
without
AO
without antioxidants
VE
PNA
DBPC
MBDBC
ZDTC
200
Fig.7 POV trace during theoxidationtestwithMBDBC
TAN, mg KOH/g
0 hour
0.04
0.04
150
RUN 1
1500
0
Table6 POV andTANaftertheoxidationtest
for 240hour
POV, ppm
100
Reaction time, hour
2000
250
Fig.5 POV traceduringthe oxidation test
withvariousantioxidants
Sample
50
Fig.6 POV trace during theoxidationtestwithDBPC
Peroxide value, ppm
Peroxide value, ppm
VE
RUN 2
1000
Fig.4 POVtraceduringtheoxidationtest with ZDTP
2000
RUN 1
1500
Fig.8 Conbinationeffectofantioxidantsand
ZDTPonantiwearproperties
判断される. ZDTC は , 240 時 間 反 応 さ せ て も
POV の 上 昇 は 見 ら れ ず 最 も 良 い 酸 化 防 止 性 能
か っ た . こ れ に 対 し て POV の 値 が 極 大 値 に 達
を示した.これらの 240 時間反応後の酸化試料
しなかった DBPC , MBDBC , ZDTC の 酸 化試料
の TAN を測定した結果を Table
6 に示す.POV
での DW が約 0.1mm で良い耐摩耗性を示して
が 一 度 極 大 値 を 示 し た PNA と VE で は 7 ∼
12mgKOH/g と 高 い 値 を 示 し た の に 対 し , 極 大
おり,過去のデータと比較しても良い結果であ
る.最も良い耐摩耗性を示した ZDTC の 摩 耗 痕
値を示さなかった DBPC , MBDBC , ZDTC で は
の 写 真 を Fig.9 に 示 す . ZDTC は 酸 化 防 止 性 と
0.1 ∼ 0.7mgKOH/g で低い値を示した.
耐摩耗性の性能を備えていることが知られてお
酸 化 実 験 240 時 間 反 応 後 の 試 料 に ZDTP を
り,初期状態でも若干の耐摩耗性を示した
9)
.
5mmol/kg 添 加 し て 耐 摩 耗 性 を 評 価 し た 結 果 を
ま た , 240 時間の酸化実験後の酸化試料で耐摩
Fig.8 に示す.酸化防止剤無添加と VE と PNA
耗性の向上が見られた.酸化試料 ZDTC と 酸 化
の酸化試料では耐摩耗添加剤の効果が見られな
試料 ZDTC に ZDTP を 5mmol/kg 添 加 し た 試 料
- 40 -
ZDTC
ZDTC Oxid.
ZDTC Oxid.
0h
240h
240h+ZDTP
DW = 0.237mm
(WSD = 0.536 mm)
DW = 0.146mm
DW = 0.085mm
(WSD = 0.445 mm )
(WSD = 0.384 mm)
Peroxide value, ppm
2000
1500
ZDTC+ZDTP
DBPC+ZDTP
MBDBC+ZDTP
1000
500
0
0
50
Fig.9 Morphologyofwornsurface(AO:ZDTC)
100
150
200
250
Reaction time, hour
Table7 ResultsofXPSwithoxid.240hZDTC
oxid.ZDTC
oxid.ZDTC
+ZDTP
Test area
wear surface
(Silt: 3)
out of wear
surface (Silt: 5)
wear surface
(Silt: 3)
out of wear
surface (Silt: 5)
Unit
Fig.10 POV traceduringtheoxidationtest
withantioxidants and ZDTP
N (1s) S (2p) P (2p) Zn (2p3)
Atomic% 1.04
0.62
0.78
0.27
Atomic% 1.06
0.54
N.D.
0.40
Atomic% N.D.
0.75
3.00
0.52
Atomic% 0.51
0.71
3.00
0.68
Delta wear, mm
Sample
0.3
0.2
0.1
0.0
した試料で摩耗面にリン酸鉄が確認できた.こ
のことより ZDTP のリンが耐摩耗性に寄与して
Fig.11 Effectofantioxidantsonantiwearproperties
いることが理解できる ∼ ) . Table 6 と Fig.8
を比較すると POV だけでは ZDTP の 耐 摩 耗 性
10
oxid.MBDBC+ZDTP
240h
Talbe 7 に示す.酸化試料 ZDTC に ZDTP を 添 加
oxid.DBPC+ZDTP
240h
oxid.ZDTC+ZDTP
240h
の 摩 耗 試 験 後 の 表 面 を XPS 分 析 し た 結 果 を
13
Table8 POVandTANafteroxidationtestfor240hour
は 左 右 さ れ な い こ と が 理 解 で き る . Fig.8 で 耐
Sample
ZDTP
DBPC+ZDTP
MBDBC+ZDTP
ZDTC+ZDTP
摩耗性の悪かった酸化防止剤無添加,VE , PNA
の 3 つの酸化試料では TAN が高い値を示した .
そ れ に 対 し , 耐 摩 耗 性 の 良 か っ た DBPC ,
MBDBC , ZDTC の酸化試料では TAN は 低 い 値
POV, ppm
0
0
17
38
TAN, mg KOH/g
0.15
0.08
0.09
0.46
を示した.この結果は Fig.5 で 示 し た 酸 化 実 験
で は , POV が 極 大 に 達 し た か 否 か で 区 別 で き
っ た . そ の 理 由 は Fig.12 に 示 し た ZDTP,
る.有機酸化物は ZDTP の分解を促進すること
ZDTC+ZDTP, ZDTC の 3 つ酸化試料の摩耗痕の
が知られている .
写真を注意深く比較すると理解できる.酸化試
8)
ZDTC+ZDTP, DBPC+ZDTP , MBDBC+ZDTP
料 ZDTC+ZDTP と 酸 化 試 料 ZDTP を比較すると
の 3 つの試料を上記の酸化実験で評価した結果
同等の耐摩耗性を示し,摩耗痕の形状もほぼ同
を Fig.10 に示す. 240 時間酸化試験後の POV と
TAN の値を示し た Table 8 より,すべての試
様であった.酸化試料 ZDTC+ZDTP と 酸 化 試 料
ZDTC を比較すると摩耗痕の形状が異なってお
料が過酸化物の生成を抑制し,良い酸化防止性
り ,ZDTC に過酸化物の影響が見られなかった .
能を示した. 240 時間反応後の酸化試料の耐摩
これらの結果より ZDTP が ZDTC よ り 先 に 消 耗
耗性を評価した結果を Fig.11 に示す.併用の時
した為に ,併用効果を示さなかったと考察した.
ではフェノール系酸化防止剤と ZDTP を 添 加 し
Fig.13 に示すように酸化試料 DBPC+ZDTP と酸
た酸化試料の方が良い結果を示した.
化試料 MBDBC+ZDTP の摩耗痕は平滑でよい耐
ZDTC+ZDTP の 併 用 で は 良 い 結 果 が 見 ら れ な か
摩耗性を示した.フェノール系酸化防止剤は,
- 41 -
フェノール系酸化防止剤と ZDTP を 併 用 す
3.
ることで良い耐摩耗性を示した. ZDTC は 単 独
で酸化実験をした後に ZDTP を添加すると良い
耐摩耗性を示したが, ZDTP と 併 用 す る と 耐 摩
ZDTP Oxid.
ZDTC+ZDTP Oxid.
ZDTC Oxid.
240h
240h
240h
DW = 0.178mm
(WSD = 0.477mm)
DW
= 0.184mm
DW
耗性添加剤効果はフェノール系よりも劣った.
謝 辞
= 0.146m m
(WSD = 0.445 mm )
(WSD = 0.484mm )
Fig.12 Morphologyofwornsurface(ZDTP+AO)
本研究は財団法人高知県産業振興センターに
よる研究成果育成型地域研究開発促進拠点支援
事業の成果である.実験試料の植物油を提供し
ていただいた日本油脂株式会社油化学研究所殿
に感謝を申し上げる.本稿の校正を協力してい
ただいた,梅原秀太君,林泰寿君に感謝を申し
DBPC+ZDTP
上げる.
MBDBC+ZDTP
Oxid. 240h
Oxid. 240h
DW = 0.129mm
DW = 0.136mm
(WSD = 0.428m m)
(WS D = 0.435mm)
文
献
Fig.13 Morphologyofwornsurface(ZDTP+AO)
1) D . DOWSON:History of Tribology2ndEdition, Professional
ラジカル捕捉剤として知られている.自動酸化
反応の機構は過酸化物の生成に先立ってラジカ
Engineering Publishing,(1998)32.
2) S. ASADAUSKAS, J. M . PEREZ & J. L . DUDA: Oxidative
8)
ルから生じると説明されている .すなわちフ
ェノール系酸化防止剤はラジカルを捕捉して過
Stability and Antiwear Properties of High Oleic Vegetable
酸化物の生成を抑制し,その結果 ZDTP の 耐 摩
3) S . L AWATE, K. LAL & C. HUANG: VegetableOilsStructure
Oils,LubricationEngineering,52,12(1996)877.
耗性を持続させたと考察した.
and Performance, TribologyDataHandbookeditedbyE.
R.Booser,CRCPress,(1997)103.
4.
まとめ
4) I.MINAMI & S . MITSUMUNE: AntiwearProperties of
PhosphorousContainingCompounds inVegetableOils,
1.
植物油は自動酸化反応を受けやすく,本稿
の 実 験 条 件 で は 開 始 直 後 か ら POV が 急 激 に 上
TribologyLetters,13,2(2002)95.
5) V. P . WYSTRACH , E . O . HOOK & G . L . M CHRISTOPHER:
昇し極大値を示した後,平衡状態に達した.フ
Basic Zinc Double Salts of O,O-Dialkyl Phosphorodithioic
ェノール系酸化防止剤と ZDTC は 植 物 油 の 過 酸
Acids,JournalofOrganicChemistry,21,6(1956)705.
化物の生成を抑制した.しかし,芳香族アミン
6) D . E . WELLER, J r . & J . M . PEREZ: A Study o f t h e E f f e c t o f
とトコフェロールは酸化防止効果を示さなかっ
Chemical Structure on Friction and Wear: Part I- Synthetic
た.
2. 酸 化 防 止 剤 に よ り 過 酸 化 物 の 生 成 を 抑 制 し
Ester Base Fluids, Lubrication Engineering, 56, 11 (2000)
た酸化試料は良い耐摩耗添加剤効果を示した.
7) 飯塚宏平・田上晴久・南一郎:耐摩耗性添加剤の評
POV が極大を一度示した酸化試料は TAN の 上
価方法の開発,トライボロジー会議予稿集 高 松
昇が見られ, POV の値が低くても ZDTP は 耐 摩
1999-10
耗添加剤効果を示さない.酸化防止剤と耐摩耗
39.
(1994)
249.
8) I.MINAMI: InfluenceofAldehydesinMake-upOilson
添加剤を組み合わせることにより,耐摩耗添加
Antioxidation Properties, Lubrication Science, 7, 4 (1996)
剤効果を向上させることが出来た.
319.
- 42 -
9)
A.B.VIPPER, O.P.PERENAGO ,A.K.KARAULOV,
Behavior of TCP in Different Atmospheres and Different
G.N.KUZ'MINA , O.A.MISHUK &T.A.Z AIMOVSKAYA:
BaseStocks,ASLE Trans.,13,(1970)203.
TribologicalPerformanceofMolybdenumandZinc
12) T. SAKURAI & K . SATO: ChemicalReactivityandLoad
DithiocarbamatesandDithiophosphates,Lubrication
Carrying Capacity of Lubricating Oils Containing Organic
Science,11,2(1999)187.
Phosphorus Compounds,ASLETrans.,13,(1970)252.
10) J. M . PEREZ , C. S. KU, P . PEI, B. E . HEGEMANN &
13) O. D . FAUT & D. R. W HEELER:OntheMechanismof
S.M.HSU :CharacterizationofTricresylphosphate
Lubrication by Tricresylphosphate (TCP)-The Coefficient
LubricatingFilms byMicro-FourierTransformInfrared
ofFrictionasaFunctionofTemperatureforTCPonM-50
Spectroscopy, STLE Tribology Trans., 33, 1 (1990) 131.
Steel,ASLE Trans.,26,3(1983)344.
11) I . L . GOLDBLATT & J. K . APPELDOORN: TheAntiwear
- 43 -
Fly UP