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飼料用米の保存試験
徳島畜研報 No.14(2015) 飼料用米の保存試験 横石 要 和也・馬木 康隆・福井 弘之 約 飼料用米の保管条件について、3種類の封緘方法(①フレコンバッグ、②ビニール、③ビニール +脱気処理)を試験した。同時に、保管温度による影響を調査するため、保管温度3水準(①常温、 ②30℃、③50℃)で試験した。その結果、ビニールで保存した場合は、何れの保管温度においても 虫害・カビは認められなかった。しかしながら、フレコンバッグで保存した場合は、常温で42週間 保管するとアワノメイガによる虫害が認められた。また、30℃で4週間以上保存すると、コクゾウ ムシとアワノメイガによる虫害およびカビの発生が認められた。飼料用米の品質劣化の指標として 過酸化物価(POV)を定期的に測定した結果、POVは保管温度および保管期間に比例して増加すると ともに、気密度の低いフレコンバッグ保管で顕著であった。以上の結果より、飼料用米を常温保管 する場合は、夏期の高温時期の虫害・カビ害や品質の劣化を抑制するために、内袋にビニールを入 れるのが望ましいと考えられた。 目 的 本試験では、現状の流通実績として最も多い乾 近年、自給飼料の増産や景観保持の観点から、 燥した飼料用米について、常温保管が可能な条件 水田を有効利用して、飼料用米の作付けが推進さ を見出すために、封緘方法と保管温度の影響につ れている。全国の飼料用米の作付け面積は、平成 いて試験した。 20年の9,089haから平成26年には33,881haと3倍以 上に増加している1)。 飼料用米の保管は、従来の食用米と同じく低温 材料および方法 1)材料:飼料用米(品種:あきたこまち、現地 倉庫での保管が望ましいと考えられる。しかしな 養鶏農家より入手) がら、飼料用米は輸入トウモロコシと同程度の流 2)封緘方法:表1に記載した3種類の保管袋に、 通価格水準(30円前後/kg)が求められることか 新規需要米を各10kg封入して保存試験を行った。 ら、より安価な保管方法が求められている。 例えば、未乾燥籾米を粉砕・加水し、内袋ビニ ール入りフレコンバッグに保管・調製するソフト グレインサイレージの技術が報告されている2)。 この保管方法では、乾燥コストが不要というメリ ットがある一方で、従来の乾燥米と比較して、サ イレージ調製の手間に加えて、乾物ベースでの流 3)保管温度・期間:各封緘条件にて、保存温度 通コストが高く、給与時のハンドリング等にも課 3水準にて以下の期間で保存試験を行った。 題は残されている。 ①常温、2013年11月2日~2014年9月17日(図1) 徳島畜研報 ②30℃、2013年11月2日~2014年1月30日 ③50℃、2013年11月2日~2013年12月30日 No.14(2015) 保管条件における水分変動は軽微であった。 以上のことから、飼料用米の水分は、食用米と 同じく14~15%まで乾燥処理しておけば、常温保 管中の水分変動による目減り等のリスクは低いと 推測された。 3)過酸化物価(POV) 表3に保管した飼料用米のPOVの経時変化を示し た。保存温度については、温度が高いほど、POV が上昇する傾向が認められた。常温で42週間保管 4)調査項目:目視(虫害・カビ)、水分(105℃、 した飼料用米のPOVは、およそ50℃で2週間保管ま 24時間)、過酸化物価 (POV)3)。 たは30℃で2ヶ月間保管したものと同程度となっ た。封緘方法については、空気を通すフレコンバ 結果および考察 ッグ袋保管においてPOVの上昇が顕著であった。 1)虫害・カビの発生 フレコンバッグ袋で42週間常温で保管した場合の ビニールで保存した場合は、何れの保管温度に 飼料用米のPOVは、17.3meq/kgだったが、ビニー おいても虫害・カビは認められなかった。フレコ ル袋では5.6meq/kgに抑えられた。飼料用米に含 ンバッグ袋保管では、30℃で4週間以上保管した まれる油脂は、給与された家畜に取り込まれ、肉 場合、コクゾウムシとアワノメイガによる虫害お や卵などの畜産物の脂肪酸組成に影響することが よびカビの発生が認められた(図2)。また、常温 多数報告されていることから2)、内袋にビニール で42週間保管した場合、アワノメイガの発生が認 袋を入れて保管することが望ましいと考えられ められた。 る。 以上のことから、虫害およびカビの防止には、 以上より、飼料用米を常温保管する場合は、夏 ビニール保管による空気遮断が効果的であると考 期の高温時期の虫害およびカビの発生や品質の劣 えられた。 化を抑制するために、内袋にビニール袋を入れる ことが効果的であると考えられた。 文 献 1)農林水産省.平成26年産新規需要米の都道府 県別の取組計画認定状況(9月15日時点).2014. 2)(独)農研機構.飼料用米の生産・給与技術マ ニュアル<2012年版>. 2013. 3)木村紀久ら.群馬県立産業技術センター研究 2)水分変動 表2に保管中の飼料米の水分変動を示した。フ レコンバッグ袋で50℃保管した場合は、保管1週 間後に約1%の水分低下が認められたが、その他の 報告.31-35. 2011. 徳島畜研報 No.14(2015)